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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】免震構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220606BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
E04H9/02 331E
F16F15/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020088791
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183764
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-01-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520178342
【氏名又は名称】株式会社MASA LABO
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】新熊 一生
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-256667(JP,A)
【文献】特開2010-156166(JP,A)
【文献】特開2002-070358(JP,A)
【文献】特開2003-082880(JP,A)
【文献】特開2010-189999(JP,A)
【文献】特開2015-218472(JP,A)
【文献】特開2000-054685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 15/00 -15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と、基礎上に立設する複数の柱と、土台材とを構造材とする木造建築物の免震構造であって、
柱の下部間に水平に土台材を配置する柱勝ち構造であり、
柱の下端と基礎との間に設ける免震部を有する、
木造建築物の免震構造。
【請求項2】
請求項1に記載の木造建築物の免震構造において、
免震部は、柱又は基礎のいずれか一方の構造材に設ける球面体と、他方の構造材に設ける受け部と、からなり、
球面体は、一方の構造材から他方の構造材に対して突出する球面を有し、
受け部は、球面体と接触する面が、球面に沿う方向に湾曲していることを特徴とする、
木造建築物の免震構造。
【請求項3】
請求項2に記載の木造建築物の免震構造において、
前記受け部は、上面が湾曲した皿状体を基礎上に載置して構成することを特徴とする、
木造建築物の免震構造。
【請求項4】
請求項2に記載の木造建築物の免震構造において、
前記受け部は、上面が湾曲した皿状体を基礎に埋設して構成することを特徴とする、
木造建築物の免震構造。
【請求項5】
請求項2に記載の木造建築物の免震構造において、
前記受け部は、基礎の上面を凹陥して構成することを特徴とする、
木造建築物の免震構造。
【請求項6】
請求項1に記載の木造建築物の免震構造において、
免震部は、すべり支承であることを特徴とする、
木造建築物の免震構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の木造建築物の免震構造において、
一部の柱の下端と基礎との間に設ける免震部に代えて、摩擦材からなる減衰部材を設けることを特徴とする、
木造建築物の免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物における免震構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の免震構造として、基礎と土台の間に免震装置を設ける構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-232091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来知られた免震構造は、複数の免震装置で土台より上部の構造の荷重を受けること、ならびに上部構造の一体性を確保するため、高い剛性を有する鉄骨架台等が必要となる。
しかし、剛性の高い鉄骨架台は高価であり、免震構造の普及の弊害となっているという問題がある。
また、免震装置の構成が複雑なため高価であることも、免震構造の普及の弊害となっている。
【0005】
本発明は、簡易な構成で低コストな免震構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、基礎と、基礎上に立設する複数の柱と、土台材とを構造材とする木造建築物の免震構造であって、柱の下部間に水平に土台材を配置する柱勝ち構造であり、柱の下端と基礎との間に設ける免震部を有する、木造建築物の免震構造を提供する。
本願の第2発明は、第1発明の木造建築物の免震構造において、免震部は、柱又は基礎のいずれか一方の構造材に設ける球面体と、他方の構造材に設ける受け部と、からなり、球面体は、一方の構造材から他方の構造材に対して突出する球面を有し、受け部は、球面体と接触する面が、球面に沿う方向に湾曲していることを特徴とする、木造建築物の免震構造を提供する。
本願の第3発明は、第2発明の木造建築物の免震構造において、前記受け部は、上面が湾曲した皿状体を基礎上に載置して構成することを特徴とする、木造建築物の免震構造を提供する。
本願の第4発明は、第2発明の木造建築物の免震構造において、前記受け部は、上面が湾曲した皿状体を基礎に埋設して構成することを特徴とする、木造建築物の免震構造を提供する。
本願の第5発明は、第2発明の木造建築物の免震構造において、前記受け部は、基礎の上面を凹陥して構成することを特徴とする、木造建築物の免震構造を提供する。
本願の第6発明は、第1発明の木造建築物の免震構造において、免震部は、すべり支承であることを特徴とする、木造建築物の免震構造を提供する。
本願の第7発明は、第1発明乃至第6発明のいずれかの木造建築物の免震構造において、一部の柱の下端と基礎との間に設ける免震部に代えて、摩擦材からなる減衰部材を設けることを特徴とする、木造建築物の免震構造を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)免震部を設ける一部の柱に建築物の荷重を集中させることで、転倒を抑制するカウンターウェイトを大きくでき、また、免震部の個数も減らせるため、安価となる。
(2)免震部は、球面体と受け部とを組み合わせた簡易な構成であり、安価である。
(3)免震部を球面体で構成することにより、上部構造の自重によって元の位置に復元されるため、別途、復元機構を設ける必要がない。
(4)皿状体を埋設又は基礎の上面を凹陥して受け部を形成し、受け部の端縁を基礎の上面と同一平面とすることにより、柱が受け部42の範囲から外れるような振動であっても、柱下部を、平坦であり強度の高いコンクリート製の基礎で連続して支持することで、大振動時のフェールセーフとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1の免震構造の説明図
図2】本発明の免震部の説明図
図3】本発明の実施例1の免震構造の作用状態の説明図
図4】束に免震部を設けた状態の説明図
図5】その他実施例に係る免震部の説明図(1)
図6】その他実施例に係る免震部の説明図(2)
図7】その他実施例に係る免震部の説明図(3)
図8】その他実施例に係る免震部の説明図(4)
図9】減衰部材を設ける場合の免震構造の説明図
図10】減衰部材の説明図(1)
図11】減衰部材の説明図(2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の免震構造を詳細に説明する。
【0010】
[実施例1]
(1)本発明の対象となる建築物の構造
本発明の免震構造の対象となる建築物は、基礎1と、基礎1上に立設する複数の柱2を構造材として含む木造建築物である(図1)。
基礎1は一体性の確保に優れたベタ基礎が好適である。
立設した柱2の下部間には、土台材3を水平に配置して柱勝ちとし、柱2と土台材3とを強固に固定することにより、上部構造を一体とする。
土台材3上には、柱2以外の管柱5を設置してもよい。
【0011】
(2)免震部4
免震部4は、基礎1と柱2との間に設けることにより、基礎1から柱2及び建築物の上部構造に伝達する振動を低減するものである。
免震部4を設ける一部の柱2に建築物の荷重を集中させることで、転倒を抑制するカウンターウェイトを大きくでき、また、免震部4の個数も減らせるため、安価となる。
【0012】
(2.1)免震部4の形態
免震部4は、柱2の下端に設ける球面体41と、基礎1に設ける受け部42と、からなる(図2)。
球面体41は下面を球面状としたステンレスやアルミニウム製の部材であり、中実が好ましい。また、球面体41は上面に柱2の下端に嵌合する嵌合孔を有する。
受け部42の上面は、球面体41に沿う方向に湾曲した球面状である。
受け部42は、ステンレス製の皿状体であり、基礎1上に載置して構成する。
球面体41と受け部42それぞれの接触面は、低摩擦係数かつ耐久性を確保することができる表面処理を行う。
免震部4は、球面体41と受け部42とを組み合わせた簡易な構成であり、安価である。
受け部42の上面に球面体41を設けた柱2を載置し、受け部42により柱2及び球面体41を受けることで、受け部42の上面に沿った方向に柱2が移動可能となる。
【0013】
(3)免震構造の作用
地震時には、球面体41が受け部42上を移動することにより、柱2及び建築物の上部構造に基礎1から伝達する振動を低減する(図3)。
立設した柱2の下部間には土台材3を配置し、柱2と土台材3とは強固に固定されている。
このため、地震時に球面体41が受け部42上を移動する際に、上部構造は水平状態を保持したまま、球面体41が受け部42の球面に沿って移動する。
受け部42を球面状に形成することにより、振動が収まると、建築物の上部構造の自重により球面体41が受け部42の中央に戻ることで、上部構造も元の位置に復元される。
上部構造の自重によって元の位置に復元されるため、別途、復元機構を設ける必要がない。
【0014】
[その他の実施例]
(1)束を有する場合
土台材3の下部に束31を有する建築物の場合、基礎1と束31との間に免震部4を設ける(図4)。
束31を有することで建築物の荷重が分散され、免震部4を小さくすることができる。
(2)免震部4のその他の形態
実施例1では、免震部4は皿状体を基礎1上に載置して構成したが、基礎1に皿状体を埋設して構成してもよい(図5)。このとき、皿状体は、湾曲した上面の端縁が基礎1の上面と同一平面となるように構成する。
受け部42の端縁が基礎1の上面と同一平面であるため、柱2が受け部42の範囲から外れるような振動であっても、柱2下部を、平坦であり強度の高いコンクリート製の基礎1で連続して支持できるため、大振動時のフェールセーフとなる。
【0015】
また、免震部4は、基礎1の上面を凹陥して形成してもよい(図6)。このとき、湾曲した上面を樹脂によりコーティングしたり、上面に沿ってステンレス板を配置したりしてもよい。
コンクリート製の基礎1の上面を凹陥するため、樹脂によるコーティングやステンレス板であっても基礎1のコンクリートの材料特性と合わせることで、上部構造を支持可能な強度の受け部42となるため、皿状体に比べて安価に受け部42を構築することができる。
そして、基礎1の上面を凹陥するため、受け部42の端縁が基礎1の上面と同一平面となり、上述の実施例のフェールセーフの効果も有する。
【0016】
さらに、免震部4は受け部42を平面状としてもよいし、球面体41と受け部42に代えてすべり支承43を用いてもよい(図7)。
受け部42を平面状とする場合や、すべり支承を用いる場合、上部構造は水平方向に移動する。このため、別途復元機構を設ける。
復元機構としては、バネやゴム、油圧や空気圧で作動するジャッキ、磁石等、従来知られているものを用いる。
【0017】
この他、免震部4は、柱2の下端に設ける球面体41を基礎1の上面に設け、受け部42を柱2の下端に設けてもよい(図8)。
【0018】
(2)減衰部材6の設置
上記実施例は、全ての柱2の下に免震部4を設けたが、複数の免震部4のうちの一部を、減衰部材6に変更してもよい(図9)。
減衰部材6は、柱2の下端に設ける球面体61と、基礎1の上面に設け、又は基礎1に埋設する受け部62と、からなる(図10)。
球面体61は実施例1の球面体41と同様に下面を球面状としたステンレスやアルミニウム製の部材であり、中実が好ましい。また、球面体61は上面に柱2の下端に嵌合する嵌合孔を有する。
受け部62は実施例1の受け部42の上面を表面処理により摩擦係数を大きくし、又は上面に摩擦材を配置して構成する。
減衰部材6は、振動によって球面体61が受け部62上を移動すると、球面体61と受け部62間の摩擦によって振動のエネルギーを摩擦熱に変換する。このため、減衰部材6を設けることにより、早く振動を抑えることができる。
また、免震部4の形態により上部構造が水平に移動する場合には、減衰部材6は、受け部42を平板状の摩擦材としたものや、柱2の下面と基礎1の上面にそれぞれ配置する平板状の摩擦材を組み合わせたものとする(図11)。
【符号の説明】
【0019】
1 基礎
2 柱
3 土台材
31 束
4 免震部
41 球面体
42 受け部
43 すべり支承
5 管柱
6 減衰部材
61 球面体
62 受け部
63 摩擦材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11