(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】位置測定装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
G01D5/245 110J
(21)【出願番号】P 2021000810
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】519427239
【氏名又は名称】眞鍋 三男
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 三男
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-309868(JP,A)
【文献】特開2011-237370(JP,A)
【文献】実開昭50-124352(JP,U)
【文献】特開2008-203044(JP,A)
【文献】特開2000-258107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
H02K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸方向を揃えて測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、
複数の前記電磁誘導線のうちいずれかを順次選択し、選択した前記電磁誘導線に電流を流す選択部とを含むスライダと、
前記測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体と、
前記マーカ導体が配置されたスケールと、
前記マーカ導体に誘導起電力が発生したときに、前記選択部によって選択されていた前記電磁誘導線の前記スライダにおける検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する制御部と、
前記スケールに配置されたコード導体であって、前記測定軸方向に交わる方向に蛇行しながら前記測定軸方向に進み、前記マーカ導体に対応するアブソリュート位置を、電磁誘導によって示すコード導体と、を備え、
前記制御部は、
前記コード導体に発生した誘導起電力が示すコードに基づいて前記アブソリュート位置を求め、
前記検出位置と前記アブソリュート位置とに基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定することを特徴とする位置測定装置。
【請求項2】
延伸方向を揃えて測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、
複数の前記電磁誘導線のうちいずれかを順次選択し、選択した前記電磁誘導線に電流を流す選択部とを含むスライダと、
前記測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体と、
前記マーカ導体が配置されたスケールと、
前記マーカ導体に誘導起電力が発生したときに、前記選択部によって選択されていた前記電磁誘導線の前記スライダにおける検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する制御部と、を備え、
前記マーカ導体が形成する往路と復路との間の間隔は、複数の前記電磁誘導線の配置間隔よりも大きく、
前記制御部は、
前記マーカ導体に発生した誘導起電力の時間波形のゼロクロスポイントに基づいて、前記検出位置を求めることを特徴とする位置測定装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の位置測定装置において、
前記制御部は、
複数の前記電磁誘導線のうちいずれかに順次交流電流が流れることによって、前記マーカ導体に離散的に発生した誘導起電力の大きさを時間軸上で内挿することで、前記時間波形を求めることを特徴とする位置測定装置。
【請求項4】
測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体と、
前記マーカ導体が配置されたスケールと、
前記マーカ導体にマーカ交流電流を流すマーカ用電力源と、
スライダであって、延伸方向を揃えて前記測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、複数の前記電磁誘導線のうち、前記マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した電磁誘導線を検出する検出部と、を備えるスライダと、
前記マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した前記電磁誘導線の前記スライダにおける検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する制御部と、
前記スケールに配置されたコード導体であって、前記測定軸方向に交わる方向に蛇行しながら前記測定軸方向に進み、前記マーカ導体に対応するアブソリュート位置を、電磁誘導によって示すコード導体と、
前記コード導体にコード交流電流を流すコード用電力源と、を有し、
前記制御部は、
前記コード交流電流によって複数の前記電磁誘導線のそれぞれに発生した誘導起電力が示すコードに基づいて前記アブソリュート位置を求め、
前記検出位置と前記アブソリュート位置とに基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定することを特徴とする位置測定装置。
【請求項5】
測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体と、
前記マーカ導体が配置されたスケールと、
前記マーカ導体にマーカ交流電流を流すマーカ用電力源と、
スライダであって、延伸方向を揃えて前記測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、複数の前記電磁誘導線のうち、前記マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した電磁誘導線を検出する検出部と、を備えるスライダと、
前記マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した前記電磁誘導線の前記スライダにおける検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する制御部と、を備え、
前記マーカ導体が形成する往路と復路との間の間隔は、複数の前記電磁誘導線の配置間隔よりも大きく、
前記制御部は、
前記マーカ交流電流によって複数の前記電磁誘導線に発生した誘導起電力に基づく空間波形のゼロクロスポイントに基づいて、前記検出位置を求めることを特徴とする位置測定装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の位置測定装置において、
前記制御部は、
前記マーカ導体が形成する往路と復路との間にある複数の前記電磁誘導線に発生した誘導起電力の大きさを前記測定軸上で内挿することで、前記空間波形を求めることを特徴とする位置測定装置。
【請求項7】
請求項1
または請求項
4に記載の位置測定装置において、
前記測定軸方向に所定の間隔で配置された複数の前記マーカ導体を備え、
前記コード導体は、
複数の前記マーカ導体のうち少なくとも1つに対して設けられており、
前記制御部は、
前記検出位置の変化に基づいて、複数の前記マーカ導体のうち現時点で前記検出位置が求められている現時点マーカ導体が、複数の前記マーカ導体のうち前記アブソリュート位置が求められた基準マーカ導体から離れて何番目の前記マーカ導体に対応するかを判定し、その判定結果と、前記アブソリュート位置および前記検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定することを特徴とする位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置測定装置に関し、特に、電磁誘導を利用した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業分野およびサービス業分野において用いられる製造装置、測定装置等は、処理対象物やセンサを移動させる可動部を備えている。可動部の動作を制御するため、このような装置には可動部の位置を測定する位置測定装置が用いられている。例えば、工作機械には、加工対象物がテーブルの上に載せられ、加工対象物の所望の位置にドリルが接触するようにテーブルまたはドリルを移動させるものがある。可動部としてのテーブルまたはドリルの位置を測定するため、工作機械には位置測定装置としてリニアエンコーダが設けられる。
【0003】
リニアエンコーダには、例えば、光学式や電磁誘導式のリニアエンコーダがある。光学式のリニアエンコーダでは、複数の目盛(マーカ)が直線状に配列されたスケールが可動部に固定され、光センサによって各マーカが検出される。リニアエンコーダは、検出されたマーカの位置に基づいてスケールの位置を測定する。電磁誘導式のリニアエンコーダでは、複数の磁石が直線状に配列されたスケール、あるいはコイルが配置されたスケールが可動部に固定され、磁気センサによって各磁石またはコイルの各ループ区間が検出される。リニアエンコーダは、検出された磁石またはループ区間の位置に基づいてスケールの位置を測定する。
【0004】
以下の特許文献1には、電磁誘導式のリニアエンコーダが記載されている。特許文献3には、光学式のリニアエンコーダが記載されている。特許文献2には、電磁誘導式および光学式のいずれにも構成し得るリニアエンコーダが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-145858号公報
【文献】特開2011-232074号公報
【文献】特開2010-145201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のリニアエンコーダには、光センサまたは磁気センサが、時間的に連続なアナログ信号に対する処理によってスケールの位置を測定するものがある。このようなアナログ信号に対する処理では、ノイズによって測定分解能が低下することがある。また、光学式のリニアエンコーダでは、スケールに異物が付着した場合には、センサがマーカを光学的に検出することが困難となったり測定誤差が生じたりする場合がある。
【0007】
本発明は、測定精度を向上させた位置測定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、延伸方向を揃えて測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、複数の前記電磁誘導線のうちいずれかを順次選択し、選択した前記電磁誘導線に電流を流す選択部とを含むスライダと、前記測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体と、前記マーカ導体が配置されたスケールと、前記マーカ導体に誘導起電力が発生したときに、前記選択部によって選択されていた前記電磁誘導線の前記スライダにおける検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する制御部と、前記スケールに配置されたコード導体であって、前記測定軸方向に交わる方向に蛇行しながら前記測定軸方向に進み、前記マーカ導体に対応するアブソリュート位置を、電磁誘導によって示すコード導体と、を備え、前記制御部は、前記コード導体に発生した誘導起電力が示すコードに基づいて前記アブソリュート位置を求め、前記検出位置と前記アブソリュート位置とに基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、延伸方向を揃えて測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、複数の前記電磁誘導線のうちいずれかを順次選択し、選択した前記電磁誘導線に電流を流す選択部とを含むスライダと、前記測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体と、前記マーカ導体が配置されたスケールと、前記マーカ導体に誘導起電力が発生したときに、前記選択部によって選択されていた前記電磁誘導線の前記スライダにおける検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する制御部と、を備え、前記マーカ導体が形成する往路と復路との間の間隔は、複数の前記電磁誘導線の配置間隔よりも大きく、前記制御部は、前記マーカ導体に発生した誘導起電力の時間波形のゼロクロスポイントに基づいて、前記検出位置を求めることを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記制御部は、複数の前記電磁誘導線のうちいずれかに順次交流電流が流れることによって、前記マーカ導体に離散的に発生した誘導起電力の大きさを時間軸上で内挿することで、前記時間波形を求める。
【0012】
また、本発明は、測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体と、前記マーカ導体が配置されたスケールと、前記マーカ導体にマーカ交流電流を流すマーカ用電力源と、スライダであって、延伸方向を揃えて前記測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、複数の前記電磁誘導線のうち、前記マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した電磁誘導線を検出する検出部と、を備えるスライダと、前記マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した前記電磁誘導線の前記スライダにおける検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する制御部と、前記スケールに配置されたコード導体であって、前記測定軸方向に交わる方向に蛇行しながら前記測定軸方向に進み、前記マーカ導体に対応するアブソリュート位置を、電磁誘導によって示すコード導体と、前記コード導体にコード交流電流を流すコード用電力源と、を有し、前記制御部は、前記コード交流電流によって複数の前記電磁誘導線のそれぞれに発生した誘導起電力が示すコードに基づいて前記アブソリュート位置を求め、前記検出位置と前記アブソリュート位置とに基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体と、前記マーカ導体が配置されたスケールと、前記マーカ導体にマーカ交流電流を流すマーカ用電力源と、スライダであって、延伸方向を揃えて前記測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、複数の前記電磁誘導線のうち、前記マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した電磁誘導線を検出する検出部と、を備えるスライダと、前記マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した前記電磁誘導線の前記スライダにおける検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する制御部と、を備え、 前記マーカ導体が形成する往路と復路との間の間隔は、複数の前記電磁誘導線の配置間隔よりも大きく、前記制御部は、前記マーカ交流電流によって複数の前記電磁誘導線に発生した誘導起電力に基づく空間波形のゼロクロスポイントに基づいて、前記検出位置を求めることを特徴とする。
【0015】
望ましくは、前記制御部は、前記マーカ導体が形成する往路と復路との間にある複数の前記電磁誘導線に発生した誘導起電力の大きさを前記測定軸上で内挿することで、前記空間波形を求める。
【0016】
望ましくは、前記測定軸方向に所定の間隔で配置された複数の前記マーカ導体を備え、前記コード導体は、複数の前記マーカ導体のうち少なくとも1つに対して設けられており、前記制御部は、前記検出位置の変化に基づいて、複数の前記マーカ導体のうち現時点で前記検出位置が求められている現時点マーカ導体が、複数の前記マーカ導体のうち前記アブソリュート位置が求められた基準マーカ導体から離れて何番目の前記マーカ導体に対応するかを判定し、その判定結果と、前記アブソリュート位置および前記検出位置に基づいて、前記スライダと前記スケールとの位置関係を測定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定精度を向上させた位置測定装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係るリニアエンコーダの構成を示す図である。
【
図5】応用実施形態に係るリニアエンコーダの構成を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係るリニアエンコーダの構成を示す図である。
【
図8】応用実施形態に係るリニアエンコーダの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の事項については同一の符号を付してその説明を簡略化する。また、本明細書における「上」「下」「左」「右」等の方向を示す用語は、図面における方向を示す。これらの方向を示す用語は、構成を説明するための便宜上のものであり、各構成要素を配置する際の姿勢を限定するものではない。以下の説明では、本発明の実施形態に係るリニアエンコーダ(位置測定装置)が、可動テーブルを備える工作機械に用いられる例について述べる。ただし、本発明に係る位置測定装置は、工作機械の他、その他の製造装置、測定装置、ロボット等に用いられてもよい。この場合、位置測定装置は、搭載先の装置における可動部材を測定対象物とし、可動部材の位置を測定する。
【0020】
図1には、本発明の実施形態に係るリニアエンコーダ100の構成が示されている。リニアエンコーダ100は、スライダ10、スケール12、マーカアンプ28、コードアンプ30および制御部32を備えている。スライダ10には、右方向をx軸正方向(測定軸方向)とし、上方向をy軸正方向とするxy座標系が定義されている。スライダ10は、工作機械における非可動な固定部材に固定されている。x=0の位置は、工作機械の固定部材における基準位置となる。
【0021】
スケール12は、移動方向であるx軸方向に延伸する帯状部材14、帯状部材14上に配置されたマーカパターン16およびコードパターン22を備えている。帯状部材14は、剛性の材料や可撓性の材料によって形成されてよい。マーカパターン16およびコードパターン22は導体によって形成される。帯状部材14は可動テーブルに固定されており、矢印34で示されているように、可動テーブルと共にx軸方向に移動する。スケール12には、y軸方向に伸びる基準線LZが定められており、スケール12の位置は基準線LZのx軸座標値として定義される。スケール12が固定された可動テーブルの位置も同様に、基準線LZのx軸座標値として定義される。なお、基準線LZは仮想的な直線であり、必ずしも帯状部材14に表記されていなくてもよい。
【0022】
マーカパターン16は、複数のマーカ導体18と、x軸方向に延びるマーカ接続線20を備えている。複数のマーカ導体18はマーカ接続線20によって直列に接続され、マーカパターン16が形成されている。各マーカ導体18は、マーカ接続線20からy軸正方向に延びる往路と、往路の先端からx軸正方向に延びる先端路と、先端路からy軸負方向に延びる復路とを含んでいる。なお、「往路」および「復路」の用語は、構造を説明するための便宜上のものであり、電圧や電流の極性を限定するものではない。後述する他の実施形態における往路および復路についても同様である。
【0023】
複数のマーカ導体18は、x軸方向に等しい間隔を隔てて配置されている。マーカパターン16の左端は接地され、マーカパターン16の右端は、バッファアンプとしてのマーカアンプ28の入力端子に接続されている。マーカアンプ28の出力端子は、制御部32に接続されている。
【0024】
コードパターン22は、複数のコード導体24と、x軸方向に延びるコード接続線26によって構成されている。複数のコード導体24は、複数のマーカ導体18に対応して設けられている。すなわち、各マーカ導体18の左右に、各マーカ導体18に対応するコード導体24が配置されている。各コード導体24は、y軸方向に蛇行しながらx軸方向に進むパターンを描く。複数のコード導体24がコード接続線26によって直列に接続され、コードパターン22が形成されている。コードパターン22の左端は接地され、コードパターン22の右端は、バッファアンプとしてのコードアンプ30の入力端子に接続されている。コードアンプ30の出力端子は、制御部32に接続されている。
【0025】
スライダ10とコード導体24との電磁誘導によって、アブソリュートコードが制御部32に与えられる。コード導体24が電磁誘導によって示すアブソリュートコードは、コード導体24の直近の右側または左側に配置されたマーカ導体18に対応するアブソリュート位置を表す。アブソリュート位置は、例えば、マーカ導体18が仮にx=0の位置にあるとした場合における基準線LZのx軸座標値として定義される。マーカ導体18の位置は、例えば、マーカ導体18の往路と復路との間の中央の位置として定義される。
【0026】
スライダ10は、交流磁界が発生する励磁面をマーカパターン16およびコードパターン22側に向けて、スケール12よりも手前側に配置されている。スライダ10の励磁面には、交流磁界を発生するための複数の電磁誘導線が配置されている。
【0027】
マーカパターン16は、スライダ10から与えられた交流磁界に応じた誘導起電力をマーカアンプ28に出力し、マーカアンプ28は誘導起電力に基づくマーカ信号を制御部32に出力する。コードパターン22は、スライダ10から与えられた交流磁界に応じた誘導起電力をコードアンプ30に出力し、コードアンプ30は誘導起電力に基づくコード信号を制御部32に出力する。制御部32は、プログラムに応じて演算処理を実行するプロセッサによって構成されてよい。制御部32は、マーカ信号およびコード信号に基づいてスケール12の位置を求める。
【0028】
図2にはスケール12の構成が示されている。この図は、リニアエンコーダ100の動作を説明するために、2つのマーカ導体18-1および18-2と1つのコード導体24を模式的に示したものである。2つのマーカ導体18-1および18-2は、マーカ間隔dを隔てて配置されている。マーカ間隔dは、例えば、50mm以上100mm以下であってよい。各マーカ導体18は、マーカ接続線20からy軸正方向に延びる往路1と、往路1の先端からx軸正方向に延びる先端路2と、先端路2からy軸負方向に延びる復路3とを含んでいる。往路1と復路3との間隔(先端路2の長さ)は、0.1mm以上2mm以下であってよい。マーカ導体18-1の左側の端は、マーカ接続線20-1によって接地されている。マーカ導体18-1の右側の端と、マーカ導体18-2の左側の端との間は、マーカ接続線20-2によって接続されている。マーカ導体18-2の右側の端は、マーカ接続線20-3によってマーカアンプ28の入力端子に接続されている。
【0029】
コード導体24の左端は、コード接続線26-1によって接地されている。コード導体24は、y軸方向に蛇行しながらx軸正方向に進む。具体的には、コード接続線26-1からy軸負方向に延びる往路4と、往路4の先端からx軸正方向に延びる先端路5と、先端路5からy軸正方向に延びる復路6によって形成される往復経路が、x軸方向に複数個配置されている。複数個の往復経路は底辺路7によって直列接続されている。コード導体24が示す2進数であるアブソリュートコードの1および0に応じて、往復経路の配置間隔が定められている。例えば、2進数の1に短い底辺路7が対応付けられ、2進数の0に長い底辺路7が対応付けられる。コード導体24の右端は、コード接続線26-2によってコードアンプ30の入力端子に接続されている。
【0030】
図3には、スライダ10の構成が示されている。スライダ10は、選択部40およびn本の電磁誘導線S1~Snを備えている。選択部40は、n個のスイッチW1~Wnおよび交流電力源42を備えている。電磁誘導線S1~Snのそれぞれは、y軸方向に延伸方向を揃えてx軸方向に所定の配置間隔δを隔てて並べられている。
【0031】
配置間隔δは、マーカ導体18が形成する往路1および復路3との間の間隔よりも小さい。すなわち、マーカ導体18が形成する往路1と復路3との間の間隔は、配置間隔δよりも大きい。電磁誘導線S1と電磁誘導線Snとの間の距離は、マーカ間隔dよりも短く、例えば、50mmより長く、100mm未満であってよい。nは1000以上であってよい。電磁誘導線S1はx=0の位置に配置されている。
【0032】
iを1~nのうちのいずれかの整数として、電磁誘導線Siの下端は接地され、上端はスイッチWiの一端に接続されている。スイッチWiの他端は、交流電力源42の出力端子に接続されている。交流電力源42は、スイッチWiがオンとなっているときに、電磁誘導線Siに交流電流を流す。交流電力源42は、矩形の時間波形を示す電流を電磁誘導線Siに流してもよいし、正弦波の時間波形を示す電流を電磁誘導線Siに流してもよい。
【0033】
制御部32は、時間経過と共に順次、スイッチW1~Wnのうち1つを選択し、選択したスイッチを所定時間だけオンする。例えば、制御部32は、スイッチW1、W2、・・・・・・Wn、W1、W2、・・・・・・Wn、W1、W2、・・・・・・の順序で巡回的にスイッチを選択し、選択したスイッチをオンにする。制御部32は、1つのスイッチがオンになっているときは、他のスイッチがオンにならないように各スイッチWiを制御する。これによって、電磁誘導線S1、S2、・・・・・・Sn、S1、S2、・・・・・・Sn、S1、S2、・・・・・・の順序で、巡回的に交流電流が流れる。交流電流が流れている電磁誘導線の周囲には、交流磁界が発生する。
【0034】
電磁誘導線S1~Snのうち交流電流が流れている電磁誘導線の近傍にマーカ導体18が位置している場合、マーカ導体18に誘導起電力が発生し、マーカパターン16からマーカアンプ28に誘導起電力が出力される(
図1)。
図4には、時間経過と共にスイッチW1~Wnのうち1つが順次選択され、電磁誘導線S1~Snに順次交流電流が流れる場合に、マーカアンプ28から出力されるマーカ信号VMが示されている。横軸は時間tを示し縦軸はマーカ信号VMのレベルを示す。また、時間軸に対応させてx軸が示されている。この図に示されている例では、マーカ導体18の往路1がx=Xαの位置にあり、マーカ導体18の復路3がx=Xβの位置にある。選択部40による選択動作によって、時刻t1、t2、t3、・・・・・t29には、それぞれ、x=x1、x2、x3、・・・・・x29の位置にある電磁誘導線に交流電流が流れる。
【0035】
マーカ信号MVは、x=x1、x2、x3、・・・・・x29の位置にある電磁誘導線に、それぞれ、時刻t=t1、t2、t3・・・・・t29に発生した誘導起電力に基づく離散的な信号である。マーカ信号MVの離散値は電磁誘導波形44上にある。電磁誘導波形44は、横軸を時間軸としたときは誘導起電力の時間波形と捉えられ、横軸をx軸としたときは、誘導起電力の空間波形として捉えられる。電磁誘導波形44は、マーカ導体18の往路1があるx=Xαの位置で負の極大値を有し、マーカ導体18の復路3があるx=Xβの位置で正の極大値を有する。そして、マーカ導体18の往路1と復路3との間に挟まれる位置で0となる。ここで、電磁誘導波形44の極性は、誘導起電力の位相を示す。すなわち、電磁誘導波形44の極性が正から負に変化すること、または負から正に変化することは、誘導起電力の位相が180°反転することを意味する。また、電磁誘導波形44は、マーカパターン16の形状や、マーカパターン16が配置される向きに応じて正負が逆転し得る。
【0036】
制御部32は、マーカ信号MVの離散値を補間(内挿)した補間マーカ信号を求め、補間マーカ信号が0となるゼロクロスポイントの位置をマーカ導体18の位置x=XMとして求める。
【0037】
次に、コード導体24について、
図2および
図3を参照して説明する。電磁誘導線S1~Snのうち交流電流が流れている電磁誘導線の近傍にコード導体24が位置している場合、コード導体24に誘導起電力が発生し、コードパターン22からコードアンプ30に誘導起電力が出力される。コードアンプ30は、誘導起電力に基づいてコード信号を制御部32に出力する。制御部32は、コード信号からアブソリュートコードを抽出し、アブソリュートコードに基づいてアブソリュート位置x=Xaを求める。なお、本実施形態においては、1つのマーカ導体18に対して1対のコード導体24が設けられている。制御部32は、スライダ10およびスケール12(マーカ導体18およびコード導体24)の位置関係に応じて、1対のコード導体24のうちいずれか一方に基づくコード信号からアブソリュートコードを抽出してよい。
【0038】
制御部32は、(数1)に示されているように、アブソリュート位置x=Xaにマーカ位置x=XMを加算することで、x軸座標値で表された基準線LZの位置、すなわち、可動テーブルの位置x=Uを求める。
【0039】
(数1)U=Xa+XM
【0040】
可動テーブルがx軸方向に移動した場合、これと共にスケール12もx軸方向に移動する。スケール12が移動したことによって、制御部32が検出するマーカ導体18が、別のマーカ導体18に入れ替わったときは、先に検出したマーカ導体18に基づいて基準線LZの位置を求める処理と同様の処理によって、新たに検出したマーカ導体18に基づいて基準線LZの位置を求める。このような処理によって、制御部32は、可動テーブルがx軸方向に移動したときにおいても、順次、x座標値で表された基準線LZの位置、すなわち、可動テーブルの位置を求める。
【0041】
このように、本発明の第1実施形態に係るリニアエンコーダ100は、基本的な構成としてスライダ10、マーカ導体18、スケール12および制御部32を備えている。スライダ10は、延伸方向を揃えて測定軸方向に並べられた複数の電磁誘導線S1~Snと、選択部40とを含む。選択部40は、複数の電磁誘導線S1~Snのうちいずれかを順次選択し、選択した電磁誘導線に電流を流す。マーカ導体18は、x軸方向(測定軸方向)に交わるy軸方向に往路および復路を形成する。スケール12にはマーカ導体18が配置されている。制御部32は、マーカ導体18に誘導起電力が発生したときに、選択部40によって選択されていた電磁誘導線のスライダ10における検出位置に基づいて、スライダ10とスケール12との位置関係を測定する。
【0042】
また、リニアエンコーダ100は、スケール12に配置されたコード導体24を備えている。コード導体24は、x軸方向に交わるy軸方向に蛇行しながらx軸方向に進み、マーカ導体18に対応するアブソリュート位置を電磁誘導によって示す。制御部32は、コード導体24に発生した誘導起電力が示すコードに基づいてアブソリュート位置を求める。制御部32は、さらに、上記の検出位置とアブソリュート位置とに基づいて、スライダ10とスケール12との位置関係を測定する。
【0043】
本実施形態に係るリニアエンコーダ100では、電磁誘導を用いてマーカ導体18の位置が測定される。そのため、非磁性体の異物によって測定精度が低下する可能性が低くなる。また、本実施形態に係るリニアエンコーダ100では、マーカ導体18の往路の位置と、マーカ導体18の復路の位置との間における電磁誘導波形が、マーカ信号VMに対する内挿によって求められる。さらに、電磁誘導波形のゼロクロスポイントに基づいて、マーカ導体18の位置が測定される。これによって、マーカ導体18の往路および復路の位置を離散的に測定する場合に比べて、測定分解能が向上する。
【0044】
上記では、マーカ導体18が検出される度にアブソリュートコードを読み取り、マーカ導体18が検出される度に、マーカ位置およびアブソリュート位置を求める処理について説明した。このような処理の他、スケールの移動によって、測定開始時に検出されたマーカ導体18とは異なるマーカ導体18が検出されている場合についても、測定開始時に求められたアブソリュート位置を用いる処理が実行されてもよい。
【0045】
この場合、制御部32は、測定開始時に検出されたマーカ導体18を基準マーカ導体とし、現時点で検出されている現時点マーカ導体が、基準マーカ導体から離れて何番目のマーカ導体18に対応するかを判定する。制御部32は、現時点マーカ導体が基準マーカ導体からx軸負方向に離れてC番目であると判定したときは、(数2)に示されているように、測定開始時に求められたアブソリュート位置x=Xaに、マーカ導体18の間隔dのC倍を加算し、さらに、現時点マーカ導体のマーカ位置x=XMを加算することで基準線LZの位置x=Uを求める。ここで、マーカカウント値Cは正の整数、負の整数、または0である。
【0046】
(数2)U=Xa+C・d+XM
【0047】
制御部32は、このような処理を具体的に次のように実行してよい。スライダ10にはx軸方向の検出範囲XL≦x≦XHがあるものとする。
図1~
図4に示されている例ではXL=0である。制御部32は、測定開始時に検出されたマーカ導体18に対応するアブソリュートコードを読み込み、アブソリュート位置x=Xaを求めると共に、測定開始時のマーカカウント値をC=0とする。
【0048】
制御部32は、マーカ導体18を検出した後、マーカ信号のゼロクロスポイントの位置の変化に基づいてマーカ導体18の位置を追跡する。制御部32は、マーカ導体18のx座標値が増加してXHに達した後に、XLに戻って再び増加したときは、Cを1だけ増加させる。一方、制御部32は、マーカのx座標値が減少してXLに達した後に、XHに戻って再び減少したときは、Cを1だけ減少させる。制御部32は、現時点でXL≦x≦XHの範囲で検出されているマーカ導体18のマーカ位置x=XM、測定開始時に読み込んだアブソリュート位置x=Xa、現時点におけるマーカカウント値Cおよびマーカの間隔dを用いて、基準線LZの位置U=Xa+C・d+XMを求める。
【0049】
このように、制御部32は、マーカ導体18のx座標値で表される検出位置(マーカ位置XM)の変化に基づいて、現時点で検出位置が求められた現時点マーカ導体が、先にアブソリュート位置が求められた基準マーカ導体から離れて何番目のマーカ導体18に対応するかを判定する。制御部32は、現時点マーカ導体が基準マーカ導体からx軸負方向に離れてC番目であると判定したときは、判定結果(マーカカウント値C)、先に求められたアブソリュート位置Xaおよび検出位置XMに基づいて、測定対象物としての可動テーブルの位置(基準線LZの位置)U=Xa+C・d+XMを測定する。
【0050】
このような処理によれば、制御部32は、アブソリュートコードを読み込む処理を1度行うのみでよく、新たにマーカ導体18が検出される度にアブソリュートコードを読み込まなくてもよい。これによって、基準線LZの位置、すなわち、測定対象物の位置が迅速に求められる。
【0051】
なお、工作機械が動作しているときに制御部32は、現時点のマーカカウント値Cおよびアブソリュート位置Xaを記憶する。工作機械の電源がオフにされた後、再びオンにされたときは、制御部32は、新たに検出された現時点マーカ導体について得られたマーカ位置XMと、先に記憶したマーカカウント値Cおよびアブソリュート位置Xaに(数2)を適用して基準線LZの位置x=Uを求める。また、一般に工作機械は、異常が発生した際にアラームを発生し、動作を停止する設計となっている。工作機械がアラーム発生と共に停止し、再び動作を開始したときには、工作機械の電源が一旦オフにされ、再びオンにされたときと同様の処理によって、制御部32は基準線LZの位置x=Uを求める。
【0052】
上記では、スライダ10によって1つのマーカ導体18が励磁および検出されるようにマーカの間隔dが定められた実施形態について説明した。スライダ10においては、2つ以上のマーカ導体18が励磁および検出されてもよい。
図5には、第1実施形態についての応用実施形態に係るリニアエンコーダ102が示されている。リニアエンコーダ102では、スライダ10によって4個のマーカ導体18-1~18-4が励磁および検出される。帯状部材14には、複数のマーカ導体18および複数対のコード導体24がx軸方向に沿って配列されている。
【0053】
マーカパターン52におけるマーカ導体18の間隔は、
図1に示されるマーカ導体18の間隔よりも狭くてもよい。また、コードパターン54におけるコード導体24の間隔もまた、
図1に示されるコード導体24の間隔よりも狭くてもよい。スライダ10の励磁面の形状および大きさは、4個のマーカ導体18-1~18-4および4対のコード導体24-1~24-4に対向する形状および大きさであってよい。スライダ10は、4個のマーカ導体18-1~18-4に発生した誘導起電力をマーカアンプ28に出力し、各コード導体24-1~24-4に発生した誘導起電力をコードアンプ30に出力する。マーカアンプ28はマーカ信号を制御部32に出力し、コードアンプ30はコード信号を制御部32に出力する。
【0054】
測定開始時において、制御部32は、検出下にあるコード導体のうちいずれかからアブソリュートコードを読み込み、アブソリュート位置x=Xaを求める。ここでは、x座標値が最も小さいマーカ導体18-1に対応するコード導体24-1からアブソリュートコードを読み込む例について説明する。
【0055】
制御部32は、コードアンプ30から出力されたコード信号に基づいてアブソリュートコードを読み取り、アブソリュート位置x=Xaを求める。また、マーカ導体18-1~18-4のそれぞれのマーカ位置x=XM1、x=XM2、x=XM3、x=XM4を求める。制御部32は、アブソリュート位置x=Xa、マーカ位置x=XM1、x=XM2、x=XM3、x=XM4およびマーカ導体18の間隔Dに基づいて、基準線LZの仮位置U1、U2、U3およびU4を求める。すなわち、仮位置U1、U2、U3およびU4は、(数3)~(数6)に従って求められる。
【0056】
(数3)U1=Xa+XM1
(数4)U2=Xa+XM2-D
(数5)U3=Xa+XM3-2D
(数6)U4=Xa+XM4-3D
【0057】
(数4)~(数6)における「-D」、「-2D」、「-3D」は、アブソリュートコードが読み込まれたマーカ導体18-1からのマーカ導体18-2~18-4の距離を負極性にしたものであり、マーカ導体18-1に対応するアブソリュート位置x=Xaが求められたことに対する補正値である。制御部32は、仮位置U1、U2、U3およびU4の加算平均値に基づいて、基準線LZの位置を求める。基準線LZの位置x=Uは、(数7)に従って求められる。
【0058】
(数7)U=(U1+U2+U3+U4)/4
【0059】
このように、複数のマーカ導体18に基づいて複数の仮位置を求め、複数の仮位置の加算平均値に基づいて、基準線LZの位置、すなわち、可動テーブルの位置を求めることで、可動テーブルの位置の測定精度が向上する。
【0060】
上記では、x座標値が最も小さいマーカ導体18-1に対応するアブソリュートコードを読み込む例について説明した。その他のマーカ導体18-2~18-4のうちいずれかに対応するアブソリュートコードを読み込む処理が実行されてもよい。この場合、各マーカ導体18によって求められたマーカ位置に、アブソリュートコードが読み込まれたマーカ導体18によって求められたマーカ位置からの補正値が加算または減算され、各マーカ導体18に基づく基準線LZの仮位置が求められる。
【0061】
また、上記では、スライダ10によって4個のマーカ導体18-1~18-4が検出されるスケール50およびスライダ10が示された。スライダ10によって検出されるマーカ導体18の個数は任意である。複数のマーカ導体18がスライダ10によって検出される場合には、制御部32は、複数のマーカ導体18のうちいずれかに対応するアブソリュートコードを読み込む。制御部32は、各マーカ導体18のマーカ位置に補正値を加算し、各マーカ導体18に基づく基準線LZの仮位置を求める。制御部32は、各マーカ導体18に基づく基準線LZの仮位置の加算平均値に基づいて、基準線LZの位置を求める。
【0062】
なお、
図2に示されたマーカ導体18の間隔d、および
図5に示されたマーカ導体18の間隔Dは、スライダ10における電磁誘導線の本数で表現した場合に、1000本以上であってよい。マーカ位置が求められる分解能は、マーカ導体18の往路および復路の間におけるマーカ信号のゼロクロスポイントを求めるときの分解能に相当するため、基準線LZの位置が高い分解能で求められる。
【0063】
図6には本発明の第2実施形態に係るリニアエンコーダ102が示されている。リニアエンコーダ102は、マーカパターン16に電流を流すマーカ用電力源60と、コードパターン22に電流を流すコード用電力源62が設けられたものである。本実施形態に係るリニアエンコーダ102では、第1実施形態に係るリニアエンコーダ100におけるマーカアンプ28およびコードアンプ30が、それぞれ、マーカ用電力源60およびコード用電力源62に置き換えられている。また、スライダ10および制御部32が、それぞれ、スライダ64および制御部70に置き換えられている。交流磁界を発生する励磁デバイスとしての機能をスライダ10が有するのに対し、スライダ64は交流磁界を検出するセンサとしての機能を有している。
【0064】
制御部70は、プログラムを実行するプロセッサによって構成されてよい。制御部70は、マーカ用電力源60およびコード用電力源62を制御し、マーカパターン16およびコードパターン22に時分割で交流電流を流す。すなわち、制御部70は、マーカ位置を測定するマーカ位置測定時間帯に、マーカ用電力源60を制御してマーカパターン16に交流電流(マーカ交流電流)を流す。また、制御部70は、アブソリュート位置を測定するアブソリュート位置測定時間帯に、コード用電力源62を制御してコードパターン22に交流電流(コード交流電流)を流す。マーカ位置測定時間帯とアブソリュート位置測定時間帯は、時間軸上で重なることがない異なる時間帯である。
【0065】
図7には、スライダ64の構成が示されている。スライダ64は、検出部66およびn本の電磁誘導線S1~Snを備えている。検出部66は、n個のスイッチW1~Wnおよびマーカ/コードアンプ68を備えている。電磁誘導線S1~Snのそれぞれは、y軸方向に延伸方向を揃えてx軸方向に所定の配置間隔δを隔てて並べられている。このように、スライダ64は、
図3に示される第1実施形態に係るスライダ10における交流電力源42を、マーカ/コードアンプ68に置き換えた構成を有している。
【0066】
制御部70は、時間経過と共に順次、スイッチW1~Wnのうち1つを選択し、選択したスイッチを所定時間だけオンする。例えば、制御部70は、スイッチW1、W2、・・・・・・Wn、W1、W2、・・・・・・Wn、W1、W2、・・・・・・の順序で巡回的にスイッチを選択し、選択したスイッチをオンにする。制御部70は、1つのスイッチがオンになっているときは、他のスイッチがオンにならないように各スイッチWiを制御する。
【0067】
マーカ位置測定時間帯において、スイッチW1、W2、・・・・・・WnのうちオンになっているスイッチWjに接続されている電磁誘導線Sjの近傍にマーカ導体18があるときは、電磁誘導線Sjに誘導起電力が発生する。したがって、マーカ位置測定時間帯には、電磁誘導線S1、S2、・・・・・・Snに順に発生する誘導起電力に基づいて、マーカ/コードアンプ68はマーカ信号を制御部32に出力する。
【0068】
アブソリュート位置測定時間帯において、スイッチW1、W2、・・・・・・WnのうちオンになっているスイッチWjに接続されている電磁誘導線Sjの近傍にコード導体24があるときは、電磁誘導線Sjに誘導起電力が発生する。したがって、アブソリュート位置測定時間帯には、電磁誘導線S1、S2、・・・・・・Snに順に発生する誘導起電力に基づいて、マーカ/コードアンプ68はコード信号を制御部32に出力する。
【0069】
制御部70は、第1実施形態と同様の処理によって、上記(数1)に従い、マーカ信号およびコード信号に基づいてマーカ位置およびアブソリュート位置を求め、スケール12における基準線LZの位置、すなわち、可動テーブルの位置を求める。
【0070】
制御部70は、上記(数2)に基づいて可動テーブルの位置を求めてもよい。すなわち、制御部70は、測定開始時に検出されたマーカ導体18を基準マーカ導体とし、現時点で検出されている現時点マーカ導体が、基準マーカ導体から離れて何番目のマーカ導体18に対応するかを判定する。制御部70は、現時点マーカ導体が基準マーカ導体からx軸負方向に離れてC番目であると判定したときは、(数2)に示されているように、測定開始時に求められたアブソリュート位置x=Xaに、マーカ導体18の間隔dのC倍を加算し、さらに、現時点マーカ導体のマーカ位置x=XMを加算することで基準線LZの位置x=Uを求める。
【0071】
このように、第2実施形態に係るリニアエンコーダ104は、測定軸方向に交わる方向に往路および復路を形成するマーカ導体18と、マーカ導体18が配置されたスケール12と、マーカ導体18にマーカ交流電流を流すマーカ用電力源60と、スライダ64と、制御部70とを備えている。スライダ64は、延伸方向を揃えてx軸方向(測定軸方向)に並べられた複数の電磁誘導線S1~Snと、複数の電磁誘導線S1~Snのうち、マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した電磁誘導線を検出する検出部66とを備える。制御部70は、マーカ交流電流によって誘導起電力が発生した電磁誘導線のスライダ64における検出位置に基づいて、スライダ64とスケール12との位置関係を測定する。
【0072】
また、リニアエンコーダ104は、スケール12に配置されたコード導体24と、コード導体24にコード交流電流を流すコード用電力源62とを有する。コード導体24は、x軸方向に交わる方向に蛇行しながらx軸方向に進み、マーカ導体18に対応するアブソリュート位置を電磁誘導によって示す。制御部70は、コード交流電流によって複数の電磁誘導線S1~Snのそれぞれに発生した誘導起電力が示すコードに基づいてアブソリュート位置を求め、検出位置とアブソリュート位置とに基づいて、スライダ64とスケール12との位置関係を測定する。
【0073】
図8には、第2実施形態についての応用実施形態に係るリニアエンコーダ106が示されている。本応用実施形態に係るリニアエンコーダ106は、
図5に示されるリニアエンコーダ102におけるマーカアンプ28およびコードアンプ30が、それぞれ、交流電力源であるマーカ用電力源60およびコード用電力源62に置き換えられている。また、スライダ10および制御部32が、それぞれ、スライダ64および制御部70に置き換えられている。
【0074】
制御部70は、マーカ位置測定時間帯にマーカ用電力源60を制御してマーカパターン52に交流電流を流す。また、制御部70は、アブソリュート位置測定時間帯に、コード用電力源62を制御してコードパターン54に交流電流を流す。制御部70は、マーカ位置測定時間帯にスライダ64から出力されるマーカ信号に基づいてマーカ位置を求め、アブソリュート位置測定時間帯にスライダ64から出力されるコード信号に基づいてアブソリュート位置を求める。マーカ位置およびアブソリュート位置に基づいて、可動テーブルの位置を求める処理は、
図5に示されたリニアエンコーダ102と同様である。
【0075】
上記では、マーカ導体18およびコード導体24が帯状部材14に設けられた実施形態について説明した。マーカ導体18およびコード導体24は、測定対象物に直接設けられ、測定対象物がスケールとしての機能を有してもよい。
【0076】
上記では、スケールが測定対象物としての可動テーブルに固定され、スライダが固定部材に固定されたリニアエンコーダについて説明した。スケール上の基準線LZの位置は、スライダ上に定義されたx軸における座標値によって求められる。リニアエンコーダでは、スケールが固定部材に固定され、スライダが測定対象物に固定されてもよい。マーカ導体およびコード導体は、固定部材に直接設けられ、固定部材がスケールとしての機能を有してもよい。
【0077】
この場合、リニアエンコーダは、スケールの基準線LZを基準としたスライダの位置を求める。
図1、
図5、
図6および
図8に示されているように、固定部材上には、x軸と同一の方向に向けられたu軸が定義される。スライダの位置は、xy座標系の原点のu軸上の位置、すなわちu軸座標値によって表される。制御部(32,70)は、スケール12が測定対象物に固定された上記の各実施形態における処理と同様の処理を実行する。制御部(32,70)は、上記の実施形態と同様の処理によって求められた基準線LZのx軸座標値x=Uに対し、u軸座標値u=-Uとしてスライダの位置を求める。
【0078】
このように、本発明の実施形態に係る位置測定装置は、スライダとスケールとの位置関係を求めるものである。すなわち、本発明の実施形態に係る位置測定装置は、スライダの位置を基準としたスケールの位置を求めてもよいし、スケールの位置を基準としたスライダの位置を求めてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,4 往路、2,5 先端路、3,6 復路、10,64 スライダ、12,50 スケール、14 帯状部材、16,52 マーカパターン、18,18-1~18-4 マーカ導体、20,20-1~20-3 マーカ接続線、22,54 コードパターン、24,24-1~24-4 コード導体、26,26-1,26-2 コード接続線、28 マーカアンプ、30 コードアンプ、32,70 制御部、34 移動方向を示す矢印、40 選択部、42 交流電力源、44 電磁誘導波形、60 マーカ用電力源、62 コード用電力源、66 検出部、68 マーカ/コードアンプ、LZ 基準線、S1~Sn 電磁誘導線、W1~Wn スイッチ。
【要約】
【課題】本発明は、測定精度を向上させた位置測定装置を実現することを目的とする。
【解決手段】リニアエンコーダ100は、スライダ10、マーカ導体18、スケール12および制御部32を備えている。スライダ10は、延伸方向を揃えてx軸方向に並べられた複数の電磁誘導線と、選択部40とを含む。選択部は、複数の電磁誘導線のうちいずれかを順次選択し、選択した電磁誘導線に電流を流す。マーカ導体18は、x軸方向に交わるy軸方向に往路および復路を形成する。スケール12にはマーカ導体18が配置されている。制御部32は、マーカ導体18に誘導起電力が発生したときに、選択部40によって選択されていた電磁誘導線のスライダ10における検出位置に基づいて、スライダ10とスケール12との位置関係を測定する。
【選択図】
図2