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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】射出成形金型及び射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/33 20060101AFI20220606BHJP
   B29C 45/06 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
B29C45/33
B29C45/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021086658
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2021-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143983
【氏名又は名称】株式会社三▲しゅう▼プレシジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】角谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 孝誠
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-025554(JP,A)
【文献】特開平08-174596(JP,A)
【文献】特開2012-152928(JP,A)
【文献】特開2002-264170(JP,A)
【文献】中国実用新案第206614761(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーティング面で分離される固定金型と可動金型とからなる金型であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする射出成形金型。
(1A)前記可動金型は、パーティング面に沿って開閉するスライドコアと、前記固定金型と可動金型とを型締め又は型開きするに際して、前記スライドコアを開閉方向に移動させるスライドコア受けとを備えていること。
(1)前記スライドコア受けは、前記スライドコアの開閉方向に直交すると共に前記パーティング面に沿って伸びる同一軸線上に所定間隔をあけて設置される一対の挟持部材と、該一対の挟持部材を互いに近接させる方向に付勢する一対の付勢部材とを、前記固定金型に対面する側に備えていること。
(1)固定金型設置側の所定位置に、前記一対の付勢部材の付勢力に抗して前記一対の挟持部材の間に割り込んで前記間隔を押し広げ得る厚さを有すると共に、前記一対の挟持部材の各先端を受け入れ可能な深さの凹部が両側面に形成された割り込み部材が設置されていること。
(1)前記凹部は、型締め状態において前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記一対の挟持部材の先端を受け入れると共に、当該型締め状態から型開きを開始したときに前記一対の挟持部材を前記スライドコアを開かせる方向へと前記スライドコア受けを誘導するテーパ面を備えていること。
(1)前記一対の挟持部材の各先端部には、前記スライドコアを開閉方向に移動させることなく、前記付勢部材の付勢力に抗して前記割り込み部材の側面への乗り上げを誘導する乗り上げ誘導面が形成されていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型。
(2A)前記スライドコア受けには、固定金型設置側に突設され、前記一対の挟持部材を出没可能に収容する突出部が備えられていること。
(2B)固定金型設置側の所定位置で前記突出部に当接し得る様に設置された当接部材を備えていること。
(2C)前記当接部材と前記突出部との当接部分には、型締め動作に伴って前記スライドコア受けを前記スライドコアを閉じる方向に移動させると共に、型締め完了時に前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記当接部材と前記突出部とを当接させた状態となるテーパ面が備えられていること。
【請求項3】
パーティング面で分離される固定金型と可動金型とを、第1の樹脂による1次成形を行う1次側と第2の樹脂による2次成形を行う2次側のそれぞれに備えさせ、前記パーティング面で分離した状態にて、1次側の可動金型を2次側の固定金型に対面させると共に2次側の可動金型を1次側の固定金型に対面させた状態へと可動側の金型を回転させる可動型回転機構を備える射出成形装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする射出成形装置。
(3A)前記可動金型は、パーティング面に沿って開閉するスライドコアと、前記固定金型と可動金型とを型締め又は型開きするに際して、前記スライドコアを開閉方向に移動させるスライドコア受けとを備えていること。
(3B)前記スライドコア受けは、前記スライドコアの開閉方向に直交すると共に前記パーティング面に沿って伸びる同一軸線上に所定間隔をあけて設置される一対の挟持部材と、該一対の挟持部材を互いに近接させる方向に付勢する一対の付勢部材とを、前記固定金型に対面する側に備えていること。
(3C)前記スライドコア受けには、固定金型設置側に突設され、前記一対の挟持部材を出没可能に収容する突出部が備えられていること。
(3D)固定金型設置側の2次側の所定位置に、前記一対の付勢部材の付勢力に抗して前記一対の挟持部材の間に割り込み得る厚さを有すると共に、前記一対の挟持部材の各先端を受け入れ可能な深さの凹部が両側面に形成された割り込み部材が設置されていること。
(3E)前記凹部は、型締め状態において前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記一対の挟持部材の先端を受け入れると共に、当該型締め状態から型開きを開始したときに前記一対の挟持部材を前記スライドコアを開かせる方向へと前記スライドコア受けを誘導するテーパ面を備えていること。
(3F)前記一対の挟持部材の各先端部には、前記スライドコアを開閉方向に移動させることなく、前記付勢部材の付勢力に抗して前記割り込み部材の側面への乗り上げを誘導する乗り上げ誘導面が形成されていること。
(3G)固定金型設置側の1次側の所定位置に、前記突出部に当接し得る様に設置された当接部材を備えていること。
(3H)前記当接部材と前記突出部との当接部分には、型締め動作に伴って前記スライドコア受けを前記スライドコアを閉じる方向に移動させると共に、型締め完了時に前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記当接部材と前記突出部とを当接させた状態となるテーパ面が備えられていること。
(3I)固定金型設置側の所定位置に、前記突出部に当接し、型締め動作に伴って前記スライドコア受けを前記スライドコアを閉じる方向に移動させるテーパ面を備えた当接部材が設置され、前記テーパ面は、型締め完了時に前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記スライドコア受けの突出部に対して当接した状態となる様に形成されていること。
【請求項4】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項3に記載の射出成形装置。
(4)前記当接部材と前記突出部との当接部分に備えられるテーパ面と前記割り込み部材のテーパ面は、型締め動作又は型開き動作に際して前記一対の挟持部材に対して当接する範囲が、前記スライドコアが前記パーティング面に沿って開閉方向に移動する距離と設計上一致する様に設定されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬質材を射出して握り部とステム部と芯部とからなる本体部を一体的に成形する1次成形と、軟質材を射出して本体部の芯部の外周部に多数のブラシ毛からなるブラシ部を成形する2次成形とからなる、歯間ブラシの成形方法および成形装置の提案や(特許文献1)、掻き取り部を把持部よりも軟質の可撓性素材で形成した耳かきの成形装置の提案(特許文献2)がなされている。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、固定金型と、可動金型と、可動金型のパーティング面側に設けられている成形治具とを備え、1次成形側に本体部を成形するための凹部が、2次成形側にブラシ部を成形するための凹部が形成されている。成形治具は可動金型のパーティング面から必要量だけ突き出した状態で180°回転可能に構成され、1次成形用凹部から本体部を突き出して2次成形位置へと回転して2次成形用凹部に収容する動作を実行し、駆動軸を中心として対称となる第1,第2の治具部材を備えることにより、1次成形と2次成形とを実質的に同時に行うことができるように構成されている。
【0004】
特許文献1の成形装置においては、成形用凹部は、パーティング面に沿って成形治具の回転軸に直交する方向に伸びる様に形成されていて、固定金型には、握り部の第2の部分成形用の凹部に硬質材射出用の1次成形用のスプルが、ブラシ部成形用の凹部に軟質材射出用のスプルがそれぞれ形成されている。
【0005】
特許文献2に記載の装置は、1次成形用キャビティが上面に形成され且つ1次成形用キャビティに対応する側面部に凹部を有している一対のコア本体と、スライド入れ子と、バックコアとを備え、型開きの際に、アンギュラーピンによってスライド入れ子をスライドさせると同時にエアシリンダによって下側プレートをスライドさせることによって上側ブロックと下側ブロックを斜面同士でスライドさせて上側プレートを上方向に移動させるのと連動してバックコアを上方向に移動させ、2次成形用キャビティの一面側を形成する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-152928(0015~0031、図3図5
【文献】特開2015-19876(0039~0043、図12図17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2の成形装置でより多くの成形体を製造しようとすると金型の大型化等の問題が懸念される。特に、スライドコアを開閉する機構において動力源やスライドコア以外の構成部品を開閉方向に移動させる構造によるスペースの改善が求められる。
【0008】
そこで、本発明は、スライドコア付き金型を備える射出成形装置の大型化を抑制することを第1の目的とし、加えて、二色成形体を効率よく製造することをさらなる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するためになされた本発明の射出成形金型は、パーティング面で分離される固定金型と可動金型とからなる金型であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(1A)前記可動金型は、パーティング面に沿って開閉するスライドコアと、前記固定金型と可動金型とを型締め又は型開きするに際して、前記スライドコアを開閉方向に移動させるスライドコア受けとを備えていること。
(1)前記スライドコア受けは、前記スライドコアの開閉方向に直交すると共に前記パーティング面に沿って伸びる同一軸線上に所定間隔をあけて設置される一対の挟持部材と、該一対の挟持部材を互いに近接させる方向に付勢する一対の付勢部材とを、前記固定金型に対面する側に備えていること。
(1)固定金型設置側の所定位置に、前記一対の付勢部材の付勢力に抗して前記一対の挟持部材の間に割り込んで前記間隔を押し広げ得る厚さを有すると共に、前記一対の挟持部材の各先端を受け入れ可能な深さの凹部が両側面に形成された割り込み部材が設置されていること。
(1)前記凹部は、型締め状態において前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記一対の挟持部材の先端を受け入れると共に、当該型締め状態から型開きを開始したときに前記一対の挟持部材を前記スライドコアを開かせる方向へと前記スライドコア受けを誘導するテーパ面を備えていること。
(1)前記一対の挟持部材の各先端部には、前記スライドコアを開閉方向に移動させることなく、前記付勢部材の付勢力に抗して前記割り込み部材の側面への乗り上げを誘導する乗り上げ誘導面が形成されていること。
分離される固定金型と可動金型とからなり、前記可動金型がスライドコア受けの移動に伴って前記パーティング面に沿って開閉されるスライドコアを備える金型であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の射出成形金型によれば、射出成形が完了して型開きをする際、一対の挟持部材が割り込み部材のテーパ面に誘導されて可動金型のスライドコアを開く。射出成形を実行するためにスライドコアを閉じた状態とした可動金型を型締めする際には、一対の挟持部材は先端部の乗り上げ誘導面の作用により、スライドコアを閉じた状態のままで割り込み部材の側面に乗り上げる。そして、型締めが完了すると一対の挟持部材は割り込み部材の凹部に嵌まり込み、スライドコアをしっかりと閉じた状態が維持される。
【0011】
ここで、本発明の射出成形金型は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(2A)前記スライドコア受けには、固定金型設置側に突設され、前記一対の挟持部材を出没可能に収容する突出部が備えられていること。
(2B)固定金型設置側の所定位置で前記突出部に当接し得る様に設置された当接部材を備えていること。
(2C)前記当接部材と前記突出部との当接部分には、型締め動作に伴って前記スライドコア受けを前記スライドコアを閉じる方向に移動させると共に、型締め完了時に前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記当接部材と前記突出部とを当接させた状態となるテーパ面が備えられていること。
【0012】
かかる構成をも備えた射出成形金型によれば、型開きによって開いた状態の可動金型のスライドコアを閉じるべきタイミングになったとき、当該可動金型のスライドコア受けに突設された突出部を当接部材に当接させ得る位置へと可動金型を移動させて型締め動作を実行する。すると、当接部材と突出部との当接部分に備えられたテーパ面の作用により、スライドコア受けがスライドコアを閉じる方向へ押し動かされ、当該位置での型締め完了時にはスライドコアを閉じた状態とすることができる。この状態から型開きを行った場合、スライドコア受けの突出部は、当接部材から離間する方向に移動するから、可動金型のスライドコアを閉じた状態を維持したままで型開きすることができる。こうしてスライドコアを閉じた可動金型を割り込み部材が一対の挟持部材の間に割り込み得る位置へと移動させて型締め動作を実行すれば、当該型締め動作の完了時には、次の射出成形のためのキャビティを形成する状態となる。なお、スライドコア受けの突出部と固定金型設置側の当接部材との当接部分は、両方に同じ傾斜角度のテーパ面を備えさせてもよいし、いずれか一方にだけテーパ面を備えさせてもよい。両方にテーパ面を備えさせる方が、スライドコアの開閉動作が安定し、スライドコアの閉じ位置を安定させる。
【0013】
上記第1の目的に加えてさらなる目的をも達成するためになされた本発明の射出成形装置は、パーティング面で分離される固定金型と可動金型とを、第1の樹脂による1次成形を行う1次側と第2の樹脂による2次成形を行う2次側のそれぞれに備えさせ、前記パーティング面で分離した状態にて、1次側の可動金型を2次側の固定金型に対面させると共に2次側の可動金型を1次側の固定金型に対面させた状態へと可動側の金型を回転させる可動型回転機構を備える射出成形装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(3A)前記可動金型は、パーティング面に沿って開閉するスライドコアと、前記固定金型と可動金型とを型締め又は型開きするに際して、前記スライドコアを開閉方向に移動させるスライドコア受けとを備えていること。
(3B)前記スライドコア受けは、前記スライドコアの開閉方向に直交すると共に前記パーティング面に沿って伸びる同一軸線上に所定間隔をあけて設置される一対の挟持部材と、該一対の挟持部材を互いに近接させる方向に付勢する一対の付勢部材とを、前記固定金型に対面する側に備えていること。
(3C)前記スライドコア受けには、固定金型設置側に突設され、前記一対の挟持部材を出没可能に収容する突出部が備えられていること。
(3D)固定金型設置側の2次側の所定位置に、前記一対の付勢部材の付勢力に抗して前記一対の挟持部材の間に割り込み得る厚さを有すると共に、前記一対の挟持部材の各先端を受け入れ可能な深さの凹部が両側面に形成された割り込み部材が設置されていること。(3E)前記凹部は、型締め状態において前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記一対の挟持部材の先端を受け入れると共に、当該型締め状態から型開きを開始したときに前記一対の挟持部材を前記スライドコアを開かせる方向へと前記スライドコア受けを誘導するテーパ面を備えていること。
(3F)前記一対の挟持部材の各先端部には、前記スライドコアを開閉方向に移動させることなく、前記付勢部材の付勢力に抗して前記割り込み部材の側面への乗り上げを誘導する乗り上げ誘導面が形成されていること。
(3)固定金型設置側の1次側の所定位置に、前記突出部に当接し得る様に設置された当接部材を備えていること。
(3)前記当接部材と前記突出部との当接部分には、型締め動作に伴って前記スライドコア受けを前記スライドコアを閉じる方向に移動させると共に、型締め完了時に前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記当接部材と前記突出部とを当接させた状態となるテーパ面が備えられていること。
(3)固定金型設置側の所定位置に、前記突出部に当接し、型締め動作に伴って前記スライドコア受けを前記スライドコアを閉じる方向に移動させるテーパ面を備えた当接部材が設置され、前記テーパ面は、型締め完了時に前記スライドコアを閉じた位置に維持する様に前記スライドコア受けの突出部に対して当接した状態となる様に形成されていること。
【0014】
本発明の射出成形装置によれば、型締め動作を実行するとき、1次側においてはスライドコア受けの突出部が当接部材との当接部分に形成されたテーパ面の作用によって可動金型のスライドコアを閉じた状態へと移動させ、2次側においては一対の挟持部材が割り込み部材の凹部に嵌まり込んで可動金型のスライドコアを閉じた状態へと移動させる。従って、1次成形と2次成形を並行して実施することができる。その後、樹脂の固化を待ってから型開きすると、1次側においてはスライドコアの突出部は当接部材から離間する方向に移動し、2次側においては一対の挟持部材が割り込み部材の凹部のテーパ面に誘導されてスライドコアを開く方向に移動する。この結果、1次側は可動金型のスライドコアが閉じたままの状態、2次側は可動金型のスライドコアを開いた状態となる様に型開きを実施することができる。その後、可動型回転機構を作動させ、1次側の可動金型を2次側の固定金型に対面させると共に2次側の可動金型を1次側の固定金型に対面させた状態へと可動側の金型を回転させる。そして、型締めを実行すると、スライドコアを開いた状態で1次側に回転移動された可動金型は、スライドコア受けの突出部が当接部材との当接部分に形成されたテーパ面に押されてスライドコアを閉じながら型締め動作が進行し、スライドコアを閉じた状態で2次側に回転移動された可動金型は、一対の挟持部材が割り込み部材の側面に乗り上げながら型締め動作が進行する。そして、型締めが完了すると、1次側2次側共に可動金型のスライドコアが閉じた状態となり、次の1次成形及び2次成形を実施可能な状態となる。なお、スライドコア受けの突出部と固定金型設置側の当接部材との当接部分は、両方に同じ傾斜角度のテーパ面を備えさせてもよいし、いずれか一方にだけテーパ面を備えさせてもよい。両方にテーパ面を備えさせる方が、スライドコアの開閉動作が安定し、スライドコアの閉じ位置を安定させる。
【0015】
ここで、本発明の射出成形装置は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(4)前記当接部材と前記突出部との当接部分に備えられるテーパ面と前記割り込み部材のテーパ面は、型締め動作又は型開き動作に際して前記一対の挟持部材に対して当接する範囲が、前記スライドコアが前記パーティング面に沿って開閉方向に移動する距離と設計上一致する様に設定されていること。
【0016】
かかる構成をも備えた射出成形装置によれば、1次側において型締め時に可動側スライドコアを閉じる動作と、2次側において型開き時に可動側スライドコアを開く動作とを精度よく実現することができる。
【0017】
この射出成形装置は、さらに、以下の構成をも備えたものとして構成することができる。
(5A)前記固定金型と前記可動金型がそれぞれパーティング面に沿って開閉するスライドコアを備え、前記各スライドコアには、型締め状態の合わせ面に、前記パーティング面に対して直交する方向に伸びる態様のキャビティを形成するための凹所が形成されていること。
(5B)前記第2の樹脂を射出する部分は、前記固定金型のスライドコアの凹所に備えられていること。
(5C)前記1次成形体が、前記パーティング面に直交する方向に伸びる軸部材と、該軸部材の一部から膨出する膨出部とを備え、前記可動金型のスライドコア同士の合わせ面には、前記膨出部を封じ込める態様の凹所が形成されていること。
(5D)前記1次成形体が、前記軸部材を複数本備え、前記膨出部が前記複数本の軸部材同士を前記パーティング面に沿って連結する連結部材であること。
【0018】
かかる構成をも備えた射出成形装置によれば、固定金型と可動金型が、それぞれパーティング面に沿って開閉するスライドコアを備え、このスライドコアには、型締め時の合わせ面に、パーティング面に対して直交する方向に伸びる態様のキャビティを形成するための凹所が形成され、しかも、第2の樹脂を射出する部分は固定金型のスライドコアの凹所に備えられている。この結果、1次成形を終えた後、固定金型のスライドコアだけ開いて可動金型のスライドコアを閉じたままとすることにより、1次成形体をパーティング面に直交する方向に伸びた状態で可動金型のスライドコアに保持させたままで型開きを実行することができる。この状態で、1次側の可動金型を2次側の固定金型に対面させた状態とした後に型締めを行うことにより、1次成形体を取り出すことなく2次成形のためのキャビティに1次成形体をセットすることができる。そして、2次成形が完了して型開きする際には、2次側においては固定側,可動側共にスライドコアを開くことで2次成形体の取り出しを実施することができる。こうして2次成形体の取り出しが完了してスライドコアを開いた状態となっている可動金型を1次側の固定金型に対面させ、型閉じすると共に、固定側及び可動側の各金型のスライドコアを閉じてやれば、再び1次成形を実行可能な状態となる。この間の可動金型のスライドコアの開閉は、一対の挟持部材及び一対の付勢部材と、1次側の当接部材及び2次側の割り込み部材とによって型締め型開きの動作に伴ってメカニカルに実施される。よって、可動金型のスライドコアの開閉が1次側と2次側とで異なる動作とするために動力源を要するアクチュエータを用いる必要がない。そして、キャビティをパーティング面に沿って伸びるのではなくパーティング面に直交して伸びる様に形成することによるパーティング面上でのキャビティ面積を縮小する作用効果と合わせて金型の大型化を抑制しつつ、二色成形体を効率よく製造することを可能にするという特有かつ顕著な作用効果を存分に発揮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スライドコア付き金型を備える射出成形装置の大型化を抑制することができる。加えて、二色成形体を効率よく製造することも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例において成形対象とし得る二色成形体を例示した斜視図である。
図2】実施例を2次側の可動側スライドコアの開閉機構として適用可能な成形装置を例示し、(A)は型締め状態の断面図、(B)は型開き状態の断面図、(C)は可動側を回転さる状態の断面図、(D)は可動側を回転させた後の型締め状態の断面図である。
図3】実施例を2次側の可動側スライドコアの開閉機構として適用可能な成形装置を例示し、(A)はロータリーテーブルに対する可動金型の取り付け状態を示す正面図、(B)は2次側における型締め状態とした金型の断面図、(C)は1次側における型締め状態とした金型の断面図である。
図4】実施例を2次側の可動側スライドコアの開閉機構として適用可能な成形装置を例示し、(A)は1次側キャビティが形成された状態の分解斜視図、(B)は2次側キャビティが形成された状態の分解斜視図である。
図5】実施例を2次側の可動側スライドコアの開閉機構として適用可能な成形装置成形装置による成形手順を例示し、(A)は金型を閉じて1次側及び2次側においてそれぞれ樹脂を射出して成形を実施する様子の断面図、(B)は固定側スライドコアを開いた状態の断面図、(C)は可動金型を移動させて型開きした状態の断面図である。
図6】実施例を2次側の可動側スライドコアの開閉機構として適用可能な成形装置による成形手順を例示し、(A)は2次側の可動側スライドコアだけを開いた状態の断面図、(B)は2次側から成形体を取り出す様子の断面図、(C)は型開き位置において可動金型を回転させた状態の断面図である。
図7】実施例としての2次側の可動側スライドコアを開閉させるメカニカルな機構を示し、(A)は型締め状態の要部斜視図、(B)は型開き状態の要部斜視図、(C)はフックピンの斜視図である。
図8】実施例において2次側型開きを実施する様子を示し、(A1)は型締め状態の側面図、(A2)は型開きの途中の状態の側面図、(A3)は型開きを完了した状態の側面図、(B1)は8a-8a断面図、(B2)は8b-8b断面図、(B3)は8c-8c断面図である。
図9】実施例において2次側型締めを実施する様子を示し、(A1)は型開き状態の側面図、(A2)は型締めの途中の状態の側面図、(A3)は型締めを完了した状態の側面図、(B1)は9a-9a断面図、(B2)は9b-9b断面図、(B3)は9c-9c断面図である。
図10】実施例において1次側型締めを実施する様子を示し、(A1)は型開き状態の側面図、(A2)は型締めの途中の状態の側面図、(A3)は型締めを完了した状態の側面図、(B1)は10a-10a断面図、(B2)は10b-10b断面図、(B3)は10c-10c断面図である。
図11】実施例において1次側型開きを実施する様子を示し、(A1)は型締め状態の側面図、(A2)は型開きの途中の状態の側面図、(A3)は型開きを完了した状態の側面図、(B1)は11a-11a断面図、(B2)は11b-11b断面図、(B3)は11c-11c断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態として、具体的な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
本実施例において製造し得る二色成形体100は、図1に示す様に、太径軸部101,101,101と、細径軸部102,102,102と、太径軸部101同士の間を連結する薄肉連結部103,103と、被覆部104,104,104とを備える。太径軸部101,101,101、細径軸部102,102,102、及び薄肉連結部103,103は、硬質樹脂を射出して一体成形した1次成形体であり、被覆部104,104,104は軟質樹脂を射出して細径軸部102,102,102の先端から所定範囲の表面に溶融一体化させた2次成形体である。
【0023】
本実施例を2次側の可動側スライドコアの開閉機構として適用可能な射出成形機1は、図2に示す様に、成形機本体2と、ロータリーテーブル3と、成形金型10とを備えている。成形金型10は、成形機本体2側に取り付けられた固定金型20A,20Bと、ロータリーテーブル3側に取り付けられた可動金型40A,40Bとからなり、ロータリーテーブル3の軸方向動作によって型締め・型開きされる。固定金型20Aは1次成形を行うためのものであり、固定金型20Bは2次成形を行うためのものであって、キャビティの形状が異なっている。一方、可動金型40A,40Bのキャビティは同一形状である。ロータリーテーブル3は型開き位置にて180度単位で回転し、回転前に1次側の固定金型20Aと対面していた可動金型40Aを2次側の固定金型20Bに対面させた状態とする。このとき、回転前に2次側の固定金型20Bと対面していた可動金型40Bは1次側の固定金型20Aに対面した状態となる。その後、ロータリーテーブル3を型締め位置へと移動させる。
【0024】
可動金型40A,40Bは、図3(A)に示す様に、ロータリーテーブル3の成形機本体2に対面する側において、回転中心に対して対称位置となり固定金型20A,20Bに対面する様に取り付けられる。固定金型20A,20Bは成形機本体2のロータリーテーブル3に対面する側において、同様にロータリーテーブル3の回転中心に対して対称位置となり、可動金型40A,40Bに対面する様に取り付けられている。
【0025】
固定金型20A,20Bは、図3(B),(C)に示す様に、成形機本体2に固定される固定側コアブロック21A,21Bと、各一対のスライドコア受け22A,22B及びスライドコア23A,23Bと、から構成されている。可動金型40A,40Bは、図3(B),(C)に示す様に、ロータリーテーブル3に固定される可動側コアブロック41A,41Bと、各一対のスライドコア受け42A,42B及びスライドコア43A,43Bと、から構成されている。
【0026】
1次側においては、図4(A)に示す様に、固定側スライドコア23Aと可動側スライドコア43A(43B)とによって硬質樹脂による1次成形体を形成するための1次側キャビティCAが形成されている。2次側においては、図4(B)に示す様に、固定側スライドコア23Bと可動側スライドコア43A(43B)とによって硬質樹脂による1次成形体を収容すると共に軟質樹脂による2次成形体を成形するための凹所を備える2次側キャビティCBが形成されている。図示の様に、2次側キャビティCAにおける2次成形用の凹所は固定金型スライドコア23Bにだけ形成され、可動側スライドコア43A,43Bには形成されない。また、可動側スライドコア43A(43B)に形成される凹所は、太径軸部101及び薄肉連結部103を封じ込める態様となっている。これにより、可動側スライドコア43A(43B)を閉じた状態にあっては1次成形体100Aは脱落防止がなされた状態となる。
【0027】
ここで、1次側キャビティCA、2次側キャビティCBを、固定金型20A,20Bと可動金型40A,40Bのパーティング面に対して直交する方向に伸びる様に形成したことが本実施例を2次側の可動側スライドコアの開閉機構として適用可能な射出成形機1の特徴的構成の一つである。
【0028】
次に、実施例を2次側の可動側スライドコアの開閉機構として適用可能な射出成形機1を用いて2色成形を実施する手順について説明する。図5(A)に示す様に、1次側、2次側の金型を閉じた状態で1次側では樹脂Aを、2次側では樹脂Bをキャビティ内に射出する。図は、1次側では固定金型20Aと可動金型40Aが、2次側では固定金型20Bと可動金型40Bが、それぞれパーティング面を形成するパーティングラインPLで型締めされた状態において、1次側キャビティに樹脂Aを射出して1次成形体100Aの成形を行うと同時に、2次側のキャビティにセットされている1次成形体の先端部に樹脂Bを射出して二色成形体100の成形を行う状態を示している。
【0029】
射出した樹脂A,Bが固化して型開き可能な状態になったら、図5(B)に示す様に、1次側においては固定側のスライドコア23A,23Aを開き、2次側においても固定側のスライドコア23B,23Bを開く。このとき、固定金型20A,20Bと可動金型40A,40Bは型締め状態のままである。
【0030】
その後、ロータリーテーブル3を型開き位置へと移動させ、図5(C)に示す様に、パーティングラインPLを開く。このとき、可動金型40A,40Bについてはスライドコア43A,43Bは閉じたままとなっている。従って、図5(C)に示す様に、1次成形体100A、二色成形体100のいずれもが、可動金型40A,40Bのスライドコア43A,43Bによって保持された状態で型開きが実行されることとなる。
【0031】
次に、パーティングラインPLを開いた型開き状態で、図6(A)に示す様に、2次側に対面している可動金型40Bについてだけ、スライドコア43B,43Bを開く。続いて、図6(B)に示す様に、2次成形の完了した二色成形体100の取り出しを実行する。このとき、1次側に対面している可動金型40Aについてはスライドコア43A,43Aを閉じたままであるから、1次成形体100Aは可動金型40Aに保持されたままとなっている。
【0032】
こうして2次成形の完了した二色成形体100の取り出しが終わったら、ロータリーテーブル3を180度回転させる。これにより、図6(C)に示す様に、1次成形体100Aを保持した可動金型40Aが2次側の固定金型20Bに対面し、二色成形体100の取り出しが完了した可動金型40Bが1次側の固定金型20Aに対面する状態となる。
【0033】
以下、型締めを行い、1次側,2次側のキャビティCA,CBを形成した後、図5(A)~(C)、図6(A)~(C)の手順を繰り返し実行する。
【0034】
ここで、固定側のスライドコア23A,23Bは、型開きと同時に開き始め、型締めと同時に閉じ始める様に動作させてもよいことから、動力源を必要としないアンギュラピンを用いることができる。
【0035】
一方、可動側のスライドコア43A,43Bについては、2次側位置での型開きの際にだけ開き、1次側位置での型開きの際には閉じたままとする必要がある。また、可動側のスライドコア43A,43Bは、1次側位置での型締めの際には開いた状態から閉じた状態に動作させる必要がある。この様な動作をアンギュラピンで実行することは困難である。
【0036】
可動側のスライドコア43A,43Bに上述した様な1次側と2次側で独立した動作を実行させる手段としてはエアシリンダ、モータ、ソレノイド等のアクチュエータを用いる方法が考えられるが、成形機の大型化を抑制する観点ではメカニカルな機構が望まれる。そこで、可動側のスライドコア43A,43Bの開閉において「アクチュエータを用いることなく上述した動作を実行するため」のメカニカルな機構について、以下、実施例として、それを説明する。
【0037】
このメカニカルな機構は、2次側においては型開きに連動して可動側スライドコアを開くと共に型締めに連動して可動側スライドコアを閉じ、1次側においては型締めに連動して可動側スライドコアを閉じるが型開きの際には可動側スライドコアを閉じたままとするためのメカニカルな機構に関するものである。
【0038】
図7(A),(B)に示す様に、可動側スライドコア受け142には、固定金型に対面する側に取り付けられたピン受けブロック151,151と、このピン受けブロック151,151の内面に互いに対面する様に取り付けられたコイルスプリング152,152と、コイルスプリング152,152によって互いに接近する方向に付勢された状態で取り付けられるフックピン153,153と、が備えられている。より具体的には、フックピン153,153は、スライドコア43A(43B)の開閉方向に直交すると共にパーティング面に沿って伸びる同一軸線上に所定間隔をあけた状態となっている。各フックピン153には、図7(C)に示す様に、先端面を面取りしたテーパ面153a,153bが形成されている。この可動側スライドコア受け142は、上述のロータリーテーブル(3)に対して可動側コアブロック(41A,41B)を介して取り付けられる。
【0039】
可動側スライドコア受け142は、ピン受けブロック151,151の内側部分に、フックピン153,153を出没させる貫通孔を備えたフックピン挿通部143,143が突設されている。このフックピン挿通部143,143の背面側はテーパ面144,144とされている。このテーパ面144,144は、後述するアンギュラカム171の凹部172のテーパ面173、固定側コアブロック21Aのテーパ面183と同じ角度とされている。
【0040】
また、成形機本体(2)の2次側には、図7(A),(B)に示す様に、アンギュラカム171を装着した固定側コアブロック21Bが取り付けられている。アンギュラカム171は、固定側コアブロック21Bに対して、型締め時に可動側スライドコア受け142のフックピン153,153の間に割り込んで押し広げ得る厚さを有し、可動側スライドコア受け142には割り込み位置に対応する受入溝155が形成されている。このアンギュラカム171の両側面には、フックピン153,153を侵入させた状態にて型開きする際に、可動側スライドコア(23A,23B)を開く方向へと可動側スライドコア受け142を移動させる所定形状の凹部172,172が形成されている。
【0041】
次に、型開きの際の可動側スライドコア受け142の動作を図8図9に基づいて説明する。なお、図8図9において、「直線L1」は成形機本体(3)の端面位置、「直線L2」は可動側コアブロック(41A,41B)の端面位置、「直線L3」は可動側スライドコア(43A,43B)の閉じ位置、「直線L4」は可動側スライドコア(43A,43B)の開き位置、をそれぞれ表している。
【0042】
型締め状態にあっては、図8(A1),(B1)に示す様に、フックピン153がアンギュラカム171の凹部172の最奥部まで侵入した状態となっている。この状態にあっては、可動側スライドコア(43A,43B)は閉じた状態となっている。
【0043】
型開きを開始すると、フックピン153がアンギュラカム171の凹部172のテーパ面173に沿って移動し始め、可動側スライドコア受け142を開く方向へと移動させ始める。図8(A2),(B2)~図8(A3),(B3)に示す様に、フックピン153が凹部172のテーパ面173の末端まで移動した後は、可動側スライドコア受け142はそのままの位置で型開き位置まで移動する。これにより、図6(A),(B)で説明した二色成形体100の取り出しが可能となる。この2次側における型開きの動作の間に、可動側スライドコア受け142は、閉じ位置から開き位置までの距離△OCだけ移動している。この距離△OCは、凹部172のテーパ面173に対するフックピン153の型閉じ位置における当接位置からテーパ面173の末端位置までの水平距離△OCによって規定される。
【0044】
その後、図6(C)で説明した様に、ロータリーテーブル3を180度回転させることにより、1次側の固定金型20Aに対面していた可動金型40Aが可動側スライドコア43A,43Aを閉じた状態で2次側の固定金型20Bに対面し、2次側の固側定金型20Bに対面していた可動金型40Bが可動側スライドコア43B,43Bを開いた状態で1次側の固定金型20Aに対面した状態となる。
【0045】
次に、図5(A)で説明した成形を行うための型締め動作が行われる。型締め前の状態は、図9(A1),(B1)に示す様に、可動側スライドコア受け142は直線L3の閉じ位置になっている。この状態からロータリーテーブル(3)を成形機本体(2)へと接近させていくと、図9(A2),(B2)に示す様に、ある高さでアンギュラカム171がフックピン153,153の間に割り込み始める。この割り込み始めの位置には凹部172,172の窪みは存在しないから、フックピン153,153は、先端のテーパ面の作用によってコイルバネ152,152を収縮させながらアンギュラカム171の両側表面に乗り上げた状態となる。このとき、可動側スライドコア受け142は直線L3で示した閉じ位置のままである。
【0046】
その後、ロータリーテーブル(3)を成形機本体(2)にさらに接近させて型締め位置まで移動させると、図9(A3),(B3)に示す様に、フックピン153,153は凹部172,172の最奥部に収まった状態となる。可動側スライドコア受け142は、型締め開始から型締め完了までの間、直線L3で示した閉じ位置のままとなる。
【0047】
次に、1次側での型締め型開きの動作を、図10図11に基づいて説明する。なお、図10においても、図8図9と同じく、「直線L1」は成形機本体(3)の端面位置、「直線L2」は可動側コアブロック(41A,41B)の端面位置、「直線L3」は可動側スライドコア(43A,43B)の閉じ位置、「直線L4」は可動側スライドコア(43A,43B)の開き位置、をそれぞれ表している。
【0048】
1次側は、図10図11に示す様に、固定側コアブロック21Aだけが備えられている。なお、固定側コアブロック21Aのパーティングライン側には、アンギュラカム171の凹部172のテーパ面173、及びフックピン挿通部143のテーパ面144と同じ角度のテーパ面183が形成されている。また、1次側の固定側コアブロック21Aは、そのテーパ面183がアンギュラカム171の凹部172のテーパ面よりもやや外側位置となる様に、その端面が、2次側の固定側コアブロック21Bの端面よりも外側に位置する様にされている。
【0049】
図6(C)で説明した状態からの1次側における型締め動作を図10に基づいて説明する。型締め前の状態では、図10(A1),(B1)に示す様に、可動側スライドコア受け142は直線L4の開き位置になっている。この状態からロータリーテーブル(3)を成形機本体(2)へと接近させていくと、図10(A2),(B2)に示す様に、ある高さでフックピン挿通部143,143のテーパ面144,144が固定側コアブロック21Aのテーパ面183に当接し、開いた状態の可動側スライドコア(43A,43B)を閉じる方向へと移動させ始める。そして、型締め状態が完了すると、図10(A3),(B3)に示す様に、フックピン挿通部143,143はテーパ面183の上部に位置し、可動側スライドコア(43A,43B)を閉じた状態とする。
【0050】
この1次側における型締め動作の間に、可動側スライドコア受け142は、開き位置から閉じ位置までの距離△OCだけ移動している。この距離△OCは、固定側コアブロック21Aのテーパ面183の末端位置から型締め完了時にフックピン挿通部143が当接している位置までの水平距離△OCによって規定される。
【0051】
次に、図5(C)で説明した型開きの際の1次側の動作を図11に基づいて説明する。型開き前の状態では、図11(A1),(B1)に示す様に、可動側スライドコア受け142は直線L3の開じ位置になっている。この状態からロータリーテーブル(3)を成形機本体(2)から離れる方向へ移動させていく。この型開き動作においては、図10(A2),(B2),(A3),(B3)に示す様に、フックピン挿通部143,143はそのままの位置で可動側スライドコア受け142の移動が行われる。この結果、1次側に回転されてきた可動側スライドコア(43A,43B)は、開くことなく閉じたままで型開きが実行されることとなる。
【0052】
以上、発明を実施するための実施例を説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、二色成形に限らず、単一種類の樹脂による射出成形機に本発明を適用しても構わない。その場合、固定金型の設置位置には割り込み部材を設置し、可動側を所定角度回転させた位置には当接部材を設置し、型開きして可動側のスライドコアを開いて成形品を取り出した後に可動側を所定角度回転させて仮の型締め動作を実行して可動側のスライドコアを閉じ、その後、可動金型を固定金型に対面させる位置に回転させて型締めを行って出成形を実行するといった動作により、アクチュエータを用いることなく、可動側のスライドコアの開閉を実行することができるからである。また、実施例では、フックピン153の先端部を面取りしたテーパ面によって乗り上げ誘導面を構成したが、先端部を半球状とした球面によって乗り上げ誘導面を形成することもできる。実施例では、スライドコア受けの突出部(フックピン挿通部)と固定金型設置側の当接部材(固定側コアブロック21A)との当接部分を、両方に同じ傾斜角度のテーパ面を備えさせてが、いずれか一方にだけテーパ面を備えさせてもよい。なお、実施例の様に、両方にテーパ面を備えさせる方が、スライドコアの開閉動作が安定し、スライドコアの閉じ位置を安定させる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
射出成形に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・射出成形機、2・・・成形機本体、3・・・ロータリーテーブル、10・・・成形金型、20A,20B・・・固定金型、21A,21B・・・固定側コアブロック、22A,22B・・・スライドコア受け、23A,23B・・・スライドコア、40A,40B・・・可動金型、41A,41B・・・可動側コアブロック、42A,42B・・・スライドコア受け、43A,43B・・・スライドコア、100・・・二色成形体、100A・・・1次成形体、101・・・太径軸部、102・・・細径軸部、103・・・薄肉連結部、104・・・被覆部、142・・・可動側スライドコア受け、143・・・フックピン挿通部、144・・・テーパ面、151・・・ピン受けブロック、152・・・コイルスプリング、153・・・フックピン、153a,153b・・・テーパ面、155・・・受入溝、171・・・アンギュラカム、172・・・凹部、173・・・テーパ面、183・・・テーパ面、CA・・・1次側キャビティ、CB・・・2次側キャビティ、PL・・・パーティングライン。
【要約】
【課題】金型の大型化を招くことなく多くの二色成形体を効率よく製造する。
【解決手段】スライドコアの開閉方向に直交すると共にパーティング面に沿って伸びる同一軸線上に所定間隔をあけ、コイルスプリング152,152により互いに接近する方向に付勢された状態のフックピン153,153を備えると共に、2次側の固定側コアブロックに対して、型締め時にフックピン間に割り込んで押し広げ得る厚さを有し、型開きする際にフックピンをスライドコアを開く方向へ移動させる形状の凹部172,172が両側面に形成されたアンギュラカム171を装着する。フックピンは、型開き動作によって凹部のテーパ゜面に誘導されてスライドコアを開く方向に移動する一方、スライドコアを閉じた状態で型締めする際には、先端部のテーパ面の誘導作用によってアンギュラカムに乗り上げ、スライドコアを閉じたままの型締めを実行することできる。
【選択図】 図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11