(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】低侵襲性心臓弁修復用の縫合糸取り付け装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/062 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
A61B17/062
(21)【出願番号】P 2021500510
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(86)【国際出願番号】 US2019023876
(87)【国際公開番号】W WO2019183626
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-10-16
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520367728
【氏名又は名称】ネオコード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NEOCHORD,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】カフェズ、レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガーソン、ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】シフレ、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】エドミンストン、ダリル
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0093023(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0228223(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0161035(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0030242(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0105751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0188873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 17/94
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の鼓動している心臓の弁尖に縫合糸を挿入することによって心臓弁を修復するように構成された縫合糸取り付けカテーテルであって、
近位端と、遠位端と、100cmを超える長さとを有する、概して可撓性を有するカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の前記遠位端に動作可能に取り付けられる縫合糸取り付け組立体であって、
クランプ顎の一部を画定するレールと、
前記レールにヒンジ式に動作可能に取り付けられる遠位側クランプ顎と、
前記レールに動作可能に取り付けられる近位側クランプ顎と、を有して、前記レールが、前記クランプ顎の前記近位側クランプ顎と前記遠位側クランプ顎との間の距離を調整するために、前記近位側クランプ顎および前記遠位側クランプ顎のうち少なくとも一方が、前記近位側クランプ顎および前記遠位側クランプ顎のうち他方に対して選択的にスライド可能であることを可能にする、縫合糸取り付け組立体と、
前記カテーテル本体内で選択的にスライド可能な針であって、前記近位側クランプ顎と前記遠位側クランプ顎との間に前記弁尖が捕捉されたときに、前記弁尖を貫通し、前記弁尖を通じて前記縫合糸を挿入するように構成された針と、
前記カテーテル本体の前記近位端に動作可能に取り付けられた制御ハンドルであって、
前記カテーテル本体の前記遠位端を選択的に操縦するように前記カテーテル本体に動作可能に接続された操縦機構と、
前記クランプ顎に動作可能に接続された顎アクチュエータと、
前記針に動作可能に接続された針アクチュエータと、を有する制御ハンドルと、
を備える、縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項2】
前記遠位側クランプ顎は、前記レールに対する第1位置と前記レールに対する第2位置との間で旋回するように構成される、
請求項1に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項3】
前記第1位置において、前記遠位側クランプ顎は、前記レールに対して概して長手方向に並び、
前記第2位置において、前記遠位側クランプ顎は、前記レールに対して概して斜めになるように配向される、
請求項2に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項4】
前記第1位置において、前記遠位側クランプ顎は、前記レールに対して鈍角に配向され、
前記第2位置において、前記遠位側クランプ顎は、前記レールに対して鋭角に配向される、
請求項3に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項5】
前記遠位側クランプ顎は、前記制御ハンドルにある遠位側顎制御部の作動によって、前記レールに対して旋回される、
請求項2に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項6】
前記遠位側顎制御部は、前記遠位側顎制御部から前記カテーテル本体を通って前記遠位側クランプ顎まで延びる可撓性部材を選択的に動かして、前記遠位側クランプ顎を旋回させる、
請求項5に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項7】
前記可撓性部材がワイヤを含む、
請求項6に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項8】
前記針によって回収されるように構成された縫合糸をさらに備える、
請求項1に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項9】
前記遠位側クランプ顎は1以上の
遠位側柱部および1以上の中間タブを含み、
前記1以上の
遠位側柱部および前記1以上の中間タブは、前記縫合糸を、前記針によって引っ掛けられる位置において、張力がかかった状態で前記遠位側クランプ顎に保持する、
請求項8に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項10】
前記縫合糸取り付け組立体は、前記カテーテル本体よりも可撓性が低い、
請求項1に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項11】
前記縫合糸取り付けカテーテルが、前記患者の前記鼓動する心臓の右心房への血管系アクセスおよび前記患者の前記鼓動する心臓の前記右心房と左心房との間の経中隔アクセスを介して、前記患者の心臓の前記左心房に挿入されるように構成される、
請求項1に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項12】
前記遠位側クランプ顎は、前記顎アクチュエータを使用して、前記近位側クランプ顎内にある通路内で前記レールをスライドすることによって、前記近位側クランプ顎に対して選択的にスライド可能である、
請求項1に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項13】
前記通路内に配置されたレールロックをさらに備え、
前記レールロックは、前記レールが遠位側にスライドして前記通路の外に完全に出ることを防止するように構成される、
請求項12に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項14】
前記近位側
クランプ顎は、前記カテーテル本体に対して長手方向において静止している、
請求項12に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項15】
前記近位側クランプ顎は、前記遠位側クランプ顎に対して選択的に手動でスライド可能である、
請求項1に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項16】
前記近位側クランプ顎は、前記顎アクチュエータを使用して、前記レールに沿って前記近位側クランプ顎がスライドすることによってスライド可能である、
請求項1に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項17】
前記近位側クランプ顎および前記遠位側クランプ顎のうち一方から延びるワイヤループをさらに備え、
前記ワイヤループは、前記近位側クランプ顎および前記遠位側クランプ顎のうち前記ワイヤループが延びている方の捕捉領域を効果的に増大させるように構成される、
請求項1に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項18】
前記ワイヤループは、前記近位側クランプ顎から延びる、
請求項
17に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【請求項19】
前記ワイヤループは、前記近位側クランプ顎および前記遠位側クランプ顎のうちの前記一方が送達カテーテルの外に延ばされると、折り畳み位置から拡張位置に自動的に移行するように構成される、
請求項18に記載の縫合糸取り付けカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫合糸の低侵襲性送達に関する。より具体的には、開示された実施形態は、鼓動している心臓内の揺れ動くまたは逸脱している弁尖に対する人工腱索としての縫合糸の取り付けに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の心臓内の僧帽弁および三尖弁は、弁口(弁輪)、2つ(僧帽弁用)または3つ(三尖弁用)の弁尖、および弁下組織を含む。弁下組織は複数の腱索を含み、これら腱索は可動性を有する弁尖を心室内の筋肉構造(乳頭筋)に接続している。腱索の破裂または伸長は弁尖の部分的または全般的な逸脱をもたらし、これにより、僧帽弁(または三尖弁)の弁閉鎖不全が引き起こされる。一般的に、僧帽弁閉鎖不全を外科的に矯正するために、弁の逸脱セグメントと乳頭筋との間に人工腱索(通常4-0または5-0のゴアテックス(登録商標)の縫合糸)を埋め込む技術が使用される。
【0003】
この処置は、伝統的には、一般的に胸骨正中切開によって行われる開心手術であり、大動脈クロスクランプおよび心臓停止による心肺バイパスが必要であった。このような開心手術を行うと、胸骨正中切開または右開胸術によって生じる大きな開口部により、外科医は左房切開を通して直接僧帽弁を見ることができ、外科用器具の操作、切除された組織の除去、および/または心臓内への取り付けのための房切開による人工腱索の導入のために、胸腔内の心臓の外側近くに両手を配置して手技を行うことができる。しかしながら、これらの侵襲的な開心手術は、高度の外傷、合併症の重大なリスク、長期の入院、および回復期間における痛みを患者にもたらす。さらに、心臓弁手術は多くの患者に有益な結果をもたらすものの、そのような外科手術から利益を得るかもしれない他の多くの人々は、そのような技術がもたらすトラウマとリスクを引き受けることができないか、または引き受けたがらない。
【0004】
心臓を鼓動させたままで行われる、低侵襲性の胸腔鏡下での心臓弁修復のための技術も開発されてきた。参照により本明細書に組み込まれるスペツィアーリ(Speziali)の米国特許第8,465,500号は、胸腔鏡下での心臓弁修復方法および装置を開示している。スペツィアーリが教示する胸腔鏡下での心臓弁の修復方法および装置は、停止した心臓に開心して手術を施す代わりに、経食道心エコー検査(TEE)と組み合わせた光ファイバ技術を、鼓動している心臓に対する低侵襲性の外科手術中の可視化技術として利用する。これらの技術より最近の技術は特許文献1および特許文献2に開示されており、これら特許文献1,2は、心腔に入り、弁尖に移動し、弁尖を捕捉し、適切な捕捉を確認し、僧帽弁閉鎖不全(MR)修復の一部として縫合糸を送達する統合装置を開示している。これらの低侵襲性の修復は、通常、肋骨のアクセスポイントの間の小さな穴を通して行われ、その後、心臓の尖部を通して心室に穴が開けられる。これらの処置は、開心処置よりも患者の侵襲性とリスクははるかに低いものの、依然としてかなりの回復時間と痛みを伴う。
【0005】
低侵襲性の縫合糸送達システムは、失血を最小限に抑え、回復時間と痛みを減らすために、開腹手術または心室外壁への切開を必要とすることなく、鼓動する心臓に対する処置で弁尖を縫合できる点で有利である。そのために、特許文献3および特許文献4、並びに特許文献5および特許文献6を含む、血管内アクセスを使用した心臓弁修復への様々なアプローチが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,758,393号明細書
【文献】米国特許第9,192,374号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0118151号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0035757明細書
【文献】米国特許第7,635,386号明細書
【文献】米国特許第8,545,551号明細書
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、人工腱索としての縫合糸を心臓弁尖に挿入することによって、血管経由で心臓にアクセスし、経カテーテルによる心臓弁の修復を実行するための低侵襲性のシステムおよび方法が開示される。他の実施形態では、そのようなシステムおよび方法は、例えば、弁尖を接合するために、弁尖を接合された位置に保持する1以上の縫合糸を挿入するか、または縫合糸を挿入して裂傷を修復することにより、逸脱した弁尖の端を対側の弁尖に固定する修復(edge to edge repair)のような、他の心臓弁修復処置で使用することができる。
【0008】
一の実施形態では、患者の鼓動する心臓の弁尖に縫合糸を挿入することによって心臓弁を修復するように構成された縫合糸取り付けカテーテルは、ハンドル制御部と、可撓性を有するカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端にある縫合糸取り付け組立体と、を含む。縫合糸取り付け組立体は、レールにヒンジ式に取り付けられた遠位側クランプ顎と近位側クランプ顎との間にレールを含むことができる。近位側クランプ顎または遠位側クランプ顎のうち一方は、近位側クランプ顎と遠位側クランプ顎との間の距離を調整するために、制御ハンドルの顎アクチュエータを使用して、他方に対してレール上で選択的にスライド可能である。近位側クランプ顎と遠位側クランプ顎との間に弁尖が捕捉されたときに弁尖を穿刺して縫合糸を挿入するために、針は、近位側のハンドル制御部の針アクチュエータを使用してカテーテル本体内で選択的にスライド可能である。
【0009】
本明細書では、システム、装置、および方法の様々な実施形態が説明されている。これらの実施形態は、例としてのみ与えられており、本発明の範囲を限定することを意図していない。さらに、説明された実施形態の様々な特徴は、多くの追加の実施形態を生成するために様々な方法で組み合わせることができることを理解されたい。さらに、様々な材料、寸法、形状、埋め込み位置などが開示された実施形態での使用について説明されているが、これら開示以外のものも、本発明の範囲を超えるない範囲で利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、添付の図面に関連する本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮すると、より完全に理解され得る。
【
図1A】一実施形態に係る縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図1B】一実施形態に係る縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図1C】一実施形態に係る縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図4A】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置を通る1以上の縫合糸の経路指定の概略図。
【
図4B】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置を通る1以上の縫合糸の経路指定の概略図。
【
図5A】一実施形態に係る、1以上の縫合糸を弁尖に挿入するための一連のステップを示す図。
【
図5B】一実施形態に係る、1以上の縫合糸を弁尖に挿入するための一連のステップを示す図。
【
図5C】一実施形態に係る、1以上の縫合糸を弁尖に挿入するための一連のステップを示す図。
【
図5D】一実施形態に係る、1以上の縫合糸を弁尖に挿入するための一連のステップを示す図。
【
図6】一実施形態に係る、1以上の縫合糸を弁尖に挿入するための方法のステップのフローチャート。
【
図7】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図8A】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図8B】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図8C】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図8D】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図8E】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図8F】一実施形態に係る、縫合糸取り付け装置の遠位端を示す図。
【
図9A】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図9B】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図10A】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図10B】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図10C】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図11A】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図11B】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図11C】遠位側捕捉組立体のための針の実施形態を示す図。
【
図12A】複数の実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体の様々な構成要素を示す図。
【
図12B】複数の実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体の様々な構成要素を示す図。
【
図12C】複数の実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体の様々な構成要素を示す図。
【
図12D】複数の実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体の様々な構成要素を示す図。
【
図12E】複数の実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体の様々な構成要素を示す図。
【
図12F】複数の実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体の様々な構成要素を示す図。
【
図13A】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図13B】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図13C】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図13D】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図13E】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉組立体を示す図。
【
図14A】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図14B】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図14C】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図14D】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図14E】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図14F】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図14G】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図14H】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図15A】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図15B】一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルの制御ハンドルを示す図。
【
図16】一実施形態に係る、患者の鼓動する心臓の中に弁尖捕捉カテーテルを挿入するための方法の概略図。
【
図17A】一実施形態に係る、患者の鼓動している心臓に縫合糸を挿入して人工腱索として機能させる方法の様々なステップを示す図。
【
図17B】一実施形態に係る、患者の鼓動している心臓に縫合糸を挿入して人工腱索として機能させる方法の様々なステップを示す図。
【
図17C】一実施形態に係る、患者の鼓動している心臓に縫合糸を挿入して人工腱索として機能させる方法の様々なステップを示す図。
【
図17D】一実施形態に係る、患者の鼓動している心臓に縫合糸を挿入して人工腱索として機能させる方法の様々なステップを示す図。
【
図17E】一実施形態に係る、患者の鼓動している心臓に縫合糸を挿入して人工腱索として機能させる方法の様々なステップを示す図。
【
図17F】一実施形態に係る、患者の鼓動している心臓に縫合糸を挿入して人工腱索として機能させる方法の様々なステップを示す図。
【
図17G】一実施形態に係る、患者の鼓動している心臓に縫合糸を挿入して人工腱索として機能させる方法の様々なステップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、様々な変更および代替の形態が可能であるが、その詳細は、図面に例として示されており、また詳細に説明される。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本発明を限定することではないことを理解されたい。それどころか、本発明の思想および範囲の内にあるすべての変更例、等価物、および代替物を網羅することを意図している。
【0012】
本出願は、上述したように、僧帽弁閉鎖不全を治療するために低侵襲的な方法で患者の鼓動している心臓に使用することができる様々な装置および方法を説明する。本明細書に記載の複数の実施形態を使用して、弁尖の逸脱を防止するとともに弁尖の接合を促進するために、弁尖の逸脱を抑制することができる。他の実施形態では、そのようなシステムおよび方法は、例えば、弁尖を接合するために、弁尖を接合された位置に保持する1以上の縫合糸を挿入するか、または縫合糸を挿入して裂傷を修復することにより、逸脱した弁尖の端を対側の弁尖に固定する修復(edge to edge repair)のような、他の心臓弁修復処置で使用することができる。
【0013】
図1A~
図1Cは、一実施形態に係る縫合糸取り付け装置100の遠位端102を示す。縫合糸取り付け装置100は、弁尖取り付けカテーテルとして構成することができ、遠位端102は、弁尖取り付けカテーテルの遠位側捕捉部である。複数の実施形態では、カテーテルは、鼠径部から送達シースを通じて患者に挿入されるように構成され、送達シースは、下大静脈を通って右心房まで延び、そして経中隔穿刺を通って左心房まで延びる。カテーテルは、送達シースを通って延びる長さの軸または本体104を有し、遠位端102が患者の体内で送達シースの遠位端まで遠位側に延びることを許容しており、また、送達シースの近位端まで近位側に延びており、カテーテルの近位端では、医師がカテーテルの近位端に取り付けられた制御ハンドルにアクセスできるようになっている。そのような実施形態において、カテーテルの本体104は可撓性を有してもよい。
【0014】
複数の実施形態では、カテーテル本体の総作動延長は、約130cmから140cmの間であってもよい。典型的な患者では、この長さがあれば、送達システムのカテーテルおよび制御ハンドルの長さを含めて、カテーテルを鼠径部から心臓内まで前進させることができる。カテーテルは、可撓性を有してもよく、中隔の穿刺位置および患者の特定の解剖学的構造に応じて、例えば、直径2.286cm(0.9インチ)の湾曲部など、直径1.905cm(0.75インチ)~3.81cm(1.5インチ)の湾曲部の周りで屈曲できるように構成することができる。他の複数の実施形態では、非常に背が低いまたは非常に背の高い患者に対応するために、総作動延長は約100cmから170cmの間であってもよい。
【0015】
複数の実施形態では、送達システムの外に前進した装置の遠位端102の作動延長は、約3cmから6cmの間であってもよい。遠位端102は概ね剛性であってもよいが、本明細書に記載されるように、装置がヒンジ式の遠位側顎によって送達システムを通って前進させられるときに、いくらかの柔軟性が提供される。この柔軟性により、遠位端は、送達システムの内径内で1.905cm(0.75インチ)~3.81cm(1.5インチ)の範囲の湾曲部を通過することができ、いくつかの実施形態では、送達システムの内径は約5~6mmであってもよい。
【0016】
複数の実施形態では、カテーテルの軸または本体は、可撓性とともに軸方向における剛性およびねじれ剛性を有するために、ステンレス鋼編組およびコイル強化ナイロンまたはポリウレタンの組み合わせから構成される。本明細書で説明するクランプ顎のような遠位端の構成要素は、例えば、医療用のポリマーまたは機械加工されたステンレス鋼で構成することができる。
【0017】
本明細書で説明するように、カテーテル100の遠位端102は、遠位側顎106および近位側顎108と、それら顎を処置される部分に応じてそれぞれ対応する位置の間で作動させる機構と、を含む。遠位側顎106は、レール110にヒンジ式に取り付けられている。近位側顎108は、レール110に沿って選択的にスライド可能であり、そこから上向きに延びるワイヤとして構成されたループ109を含むことができる。複数の実施形態において、ワイヤループ109は、例えばニチノールなどの形状記憶材料から形成することができる。動作中、遠位側顎106は、
図1Aに示される第1位置と
図1B~1Cに示される第2位置との間で選択的に作動され得る。近位側顎108は、
図1A~1Bに示される第1位置である近位位置と
図1Cに示される第2位置である遠位位置との間でレール110に沿って選択的にスライドすることができる。別の実施形態では、近位側顎108は、その軸方向の動きを固定することができ、遠位側顎106が取り付けられたレール110は、近位側顎と遠位側顎との間の距離を効果的に増加させるために、固定された近位側顎に対して第1位置から第2位置まで遠位側にスライドすることができる。
【0018】
次に、
図2A~
図2Bも参照して、一実施形態に係る、遠位側顎106に関するさらなる詳細を説明する。遠位側顎106は、複数の段付き隆起部112を有する弁尖クランプ面を含み、これら段付き隆起部112は、顎が弁尖をクランプして保持する能力を高めるように構成されている。さらに、遠位側顎106は、レール開口114と、遠位側顎106を貫通して延びる一対の整列した開口部116とを含む。レール開口114は、レール110の遠位端を受け入れるように構成され(
図1Aを参照)、開口部116は、レール110の対応する開口部を貫通するように延びて、遠位側顎106とレール110との間のヒンジ式の取付部を形成するピンまたはロッドなどを受け入れるように構成される。さらに、遠位側顎106は、一対のクランプ面開口118を含む。クランプ面開口118の一部は、遠位側顎106を完全に貫通して延在するが、別の部分は、棚部120の存在により途中までしか延在しない。遠位側柱部122は、各棚部120から上方に延び、遠位側開口部124は、各棚部120を通って延びる。さらに、クランプ面開口118の各々は、一対の中間タブ126を画定する。また、凹部内開口130は棚部128を通って延び、棚部128は2つの開口118の間に延在する。
【0019】
次に
図3を参照して、近位側クランプ顎108の実施形態に関するさらなる詳細を説明する。近位側顎108は、近位側顎108がレール110に沿って選択的にスライドすることを可能にするように、レール110(
図1Aを参照)の形状に一致するレール開口132を含む。さらに、近位側顎108は遠位側クランプ面134を含み、遠位側クランプ面134は、遠位側クランプ面134を貫通する1対の細長いスロット136を有する。細長いスロット136の各々は、縫合糸スロット138および針穴140の両方を画定する。さらに、アクチュエータ開口部142は、近位側顎108を貫通するように画定される。
【0020】
再び
図1A~
図1Cを参照すると、上述のように、遠位側顎106は、少なくとも2つの位置の間で作動され得る。第1位置である送達位置は、
図1Aに示されており、レール110に対して鈍角(すなわち、90度と180度の間の角度)で配置されている遠位側顎106を含む。図示の実施形態では、遠位側顎106は、レールに対して約120度に配置される。送達位置は、遠位端102が送達システムを通じて使用箇所(すなわち、弁尖に隣接する)に送達される構成である。第2位置であるクランプ位置は、
図1B~
図1Cに示されており、レール110に対して直角または鋭角(90度未満)で配置された遠位側顎106を含む。図示の実施形態では、顎106がレール110に対して約60度の角度で配置されるように、遠位側顎106は、第1位置に対して約90度で作動されるようになっている。クランプ位置は、顎106が弁尖より下に配置されたときに、顎の表面が弁尖に接触し、弁尖を捕捉するために弁尖を安定させることができるように、遠位側顎106が移動する位置である。
【0021】
送達位置とクランプ位置との間における遠位側顎106の作動は、可撓性部材144によって達成される。複数の実施形態において、可撓性部材144はニチノールワイヤであってもよい。可撓性部材144は、カテーテルの軸または本体104およびレール110を通る管腔146を通って延びて、レール110の遠位面において管腔146を出ることができる。可撓性部材144の遠位端は、遠位側顎106に取り付けられている。
図1B~
図1Cではそのように示されていないものの、複数の実施形態において、可撓性部材144は、1以上の遠位側開口部124を通じて遠位側顎106に取り付けることができる。この可撓性部材144が管腔146からさらに延ばされると、遠位側顎106へのその接続は、顎を第1位置である送達位置から送達し、第2位置であるクランプ位置へと移動させ、このクランプ位置で、顎を弁尖の下面に接触させることができる。遠位側顎106は、可撓性部材144を引っ張ることにより、送達位置に戻すことができる。可撓性部材144は、装置の近位端に配置されたアクチュエータのスライド運動で制御することができる。
【0022】
図1Cに示すように、近位側顎108は可撓性を有する近位側顎アクチュエータロッド148で作動され、近位側顎アクチュエータロッド148は近位側顎108のアクチュエータ開口部142に接続している。アクチュエータロッド148を押して装置の近位端のアクチュエータ制御部を動かし、近位側顎108をレール110に沿って前進させて、近位側顎108と遠位側顎106との間の距離を縮めると、その間に弁尖をクランプすることができる。近位側顎108にあるワイヤループ109は、両方の顎がクランプ位置に作動されたときに、遠位側顎106と(弁尖の反対側で)ほぼ対になるように構成される。近位側顎108が、遠位側顎106まで前進して作動された遠位側顎106との間に弁尖を挟むと、弁尖への潜在的な損傷を最小限にしつつ、顎の間の弁尖を安定させる圧力を提供する。いくつかの実施形態では、近位側顎108の遠位側クランピング面は、クランピング位置での遠位側顎106の角度(すなわち、図示の実施形態では約60度)に一致するように角度を付けることができる。
【0023】
上述した顎の構成は、多くの利点を有する。利点の1つは、より大きな遠位側顎がより容易に送達され得る第1の構成と、弁尖を捕捉して保持するための、より大きな顎が採用される第2の異なる構成とを提供することにより、比較的大きな表面積が顎のクランプ部分に含まれることを可能にすることである。別の利点は、ヒンジ式の接続により装置の曲げられない部分の長さが短くなる一方で、大きな顎の開口距離が可能になることである。これは、血管系および中隔穿刺を通じた僧帽弁への送達に必要とされる小さな半径を通ってシステムが前進させられている間に、必要に応じてヒンジ式の遠位側顎を動かすことによってなされる。
【0024】
図4A~
図4Bは、1以上の縫合糸が装置100を通じて送られ得る態様の実施形態の概略図を示す。
図4Bは、明確性を確保するために、近位側顎108および遠位側顎106、並びに単一の縫合糸10の図示を省略した装置を示す。
図4Aは、装置100内で並んで運ばれる一対の縫合糸10を示す。各縫合糸は、同一であるが横並びの態様で装置を通って経路指定されるので、単一の縫合糸10の経路指定についてのみ、詳細に説明する。複数の実施形態において、1以上の縫合糸は、最終使用者(すなわち、外科医)に届けられる前に、予めカテーテル内に設置しておくことができる。
【0025】
縫合糸10は、装置100を通る連続したループで構成され得る。遠位側顎を通る縫合糸10の経路指定は、縫合糸の遠位端側の第1ループ12の部分を、遠位側顎106の弁尖クランプ面側の遠位側柱部122の周りに固定することによって行われる。そして、縫合糸10は、柱部の両側から、遠位側クランプ顎106の中間タブ126の反対側の周りに延びて、近位側顎108の縫合糸スロット138を通り、次にカテーテルの本体104を貫通して延びる縫合糸通路内に延びる。カテーテル本体104の各縫合糸通路内において、縫合糸10の対になって延びる部分が折り返されることによって生じる縫合糸10の近位側の二重のループ14は、別個のループした縫合糸20で保持され、縫合糸20は、縫合糸10の張力を維持して縫合糸10をカテーテル本体104の所定の位置に維持するように、ばね22によって近位側制御ハンドル150内に接続されている。縫合糸の近位端側の第2ループ16は、二重になった箇所14から針支持管152の周りにループするまで遠位側に延び、針は針支持管152を通って弁尖を貫通するように前進し、縫合糸は針支持管152を通って弁尖の周囲に挿入される。
【0026】
図4Bに概略的に示される、装置100の近位側制御機構150は、装置の制御部への快適なアクセスを可能にする本体からなる。別個のループした縫合糸20は、ループ20の一端がばね22によってハンドル150に固定されており、ループ20の他端が係合解除可能な接続部24に固定されている。
図5Aに示すように、針154は、制御機構150を通って延びており、針の近位端は、針154の快適なアクセスおよび制御を可能にするハンドル156を含む。また、制御ハンドルは、2つのスライド制御部(図示せず)を収納している。第1スライド制御部は、カテーテル本体104内の管腔を通って延びる可撓性部材144のような遠位側顎アクチュエータに接続されている。制御ハンドル150に対する第1スライダの遠位側における相対的な動きは、遠位側顎108を作動させる。第2スライド制御部は、カテーテル本体104を通って近位側顎108に向けて延びる可撓性ロッド148によって接続されている。制御ハンドル150に対する第2のスライダの遠位側における相対的な動きは、近位側顎108を作動させる。弁尖捕捉カテーテルの遠位端における制御要素の近位側の制御に関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる、2018年3月23日出願の米国仮特許出願第62/647,162号に記載されている。
【0027】
図5A~
図5Dは、装置100を使用して1以上の縫合糸を弁尖に挿入する実施形態の一連のステップを示し、
図6は、そのシーケンスに対応する方法ステップ200のフローチャートを示す。
図5A~
図5Dは、明確性を確保するために、遠位側顎106および近位側顎108の図示を省略した装置100を示す。ステップ202において、装置は送達システムを通じて挿入されるが、このとき、遠位側顎は作動しておらず、第1の送達構成になっている。複数の実施形態では、僧帽弁に隣接する心臓へのアクセスは、本明細書に記載されるように経脈管的に実施できる。そのようなアクセスに関するさらなる詳細は、上記で参照により組み込まれた米国仮特許出願第62/647,162号に記載されている。複数の実施形態において、装置は、装置内に装填された2つの縫合糸10とともに挿入されるが、
図5A~
図5Dでは、明確性を確保するために、単一の縫合糸10のみが図示されている。
【0028】
装置の遠位側顎は、送達システムを出た後、ステップ204で僧帽弁の下方に前進させられ、遠位側顎は、ステップ206で作動され、弁尖に接触する角度まで顎を動かす。装置が弁尖取り付けの所望の箇所に配置された後、システムは、ステップ208で、弁に対して、下側の(遠位側の)顎が弁尖の下面に接触するまで上方に動かされる。そして、ステップ210で、近位側顎は、弁尖が2つの顎の間でクランプされて安定するまで、レールに沿ってスライドすることによって作動される。
【0029】
弁尖30が2つの顎の間で安定すると、針154がステップ212で前進して弁尖を穿刺し、遠位側顎の開口部を通して、および遠位側顎の柱部と中間タブの周りに配置された縫合糸セグメントの間に延びる。次に、
図5Aに示すように、ステップ214で針154が後退させられ、これにより縫合糸が針の一部であるフックと係合する。これにより、遠位側の縫合糸ループ12が遠位側顎の遠位側柱部から引き離され、針は、
図5Bに示すように、ステップ216で弁尖30の穿刺を通して縫合糸ループを引っ張ることができる。中間タブ126の角度形状により、縫合糸の遠位側部分は中間タブ126の周りに巻き付けられたままであり、縫合糸のこの遠位側部分が弁尖の遠位側に接触しないようになっている。これにより、弁尖を損傷する可能性のある力を弁尖に加えることなく、縫合糸を締めることができる。弁尖30の近位側にある針154および針のフック内にある遠位側の縫合糸ループ12により、二重のループ14の周りにループされた別個の縫合糸20を介した近位側の縫合糸ループ16への係合解放可能な接続部24は、ステップ218において制御ハンドル内で解放される。次に、ステップ220で針154をさらに後退させると、近位側のループ16がシステム内で遠位側に向けて引っ張られる。針154内にある遠位側の縫合糸ループ12が露出した状態で針154がシステムから完全に引き出される時点で、結果として生じるガースヒッチ結び(girth hitch knot)26は、
図5Cに示すようにシステムの遠位端で締め込まれるのに非常に近い。結び目26を締め込むための最後のステップ222は、
図5Dに示されるように、固定された遠位側のループ12が針管から遠位側に引っ張られ、結び目26が弁尖に固定されることを可能にするときである。
【0030】
結び目26が弁尖30上でいったん締め込まれると、ステップ224で、送達システムを後退させることができる。そうするために、近位側顎が解放されて近位側に向けて移動すると、弁尖のクランプが解除される。その後、遠位側顎は作動しない。遠位側顎の角度の変化により、縫合糸が遠位側顎の中間タブ126から解放され、それによりシステムが弁尖から完全に分離される。その後、カテーテルを送達システム内に後退させることもできるし、あるいは、システムを弁尖に沿って別の位置に移動させて上記一連のシーケンスを繰り返せば、追加の第2縫合糸を送達することもできる。1以上の縫合糸がいったん弁尖に取り付けられると、縫合糸は、適切な弁機能のための適切な長さおよび/または張力を提供するように調整されたり、固定されたりすることができる。
【0031】
図7は、一実施形態に係る弁尖捕捉カテーテル302の別の遠位端を示す。この実施形態では、近位側顎308は静止しており、長手方向における適所に固定されている。レール310は、
図8A~
図8Dに関して以下でより詳細に説明するように、近位側顎308と遠位側顎306との間の距離を調整して弁尖の捕捉を助けるようにスライド可能であってもよい。弁尖捕捉カテーテル102と同様に、遠位側顎306は、弁尖捕捉を助けるためにも旋回可能であってもよい。各針322は、針を針管腔325の遠位側の適所に保持するキーイングワイヤ323を含むことができる。一の実施形態では、キーイングワイヤ323を前方に向けて付勢するとともに針322を後方に向けて付勢して針を所定の位置に保ち、針322が前方に押されると、ワイヤ323が針322の経路から外れる。別の実施形態では、ばねによる付勢を利用することなく、ワイヤに取り付けられた装置の近位側ハンドル上の制御要素などを用いて、キーイングワイヤ323を後退させることができる。以下でより詳細に説明するように、この実施形態は、適切な弁尖の捕捉の確認を支援するための、近位側顎108の遠位側クランプ面334の光ファイバ通路に配置された2組の光ファイバケーブル359(各々が1本の伝送ファイバと1本の戻りファイバを含む)を示す。さらに、図示の実施形態は、以下でより詳細に説明するように、安定化ループ314を含む。弁尖捕捉カテーテル302は、さらに、本明細書に開示される他の実施形態に関して説明される任意の特徴を含むことができる。
【0032】
図8A~
図8Dは、一実施形態に係る弁尖捕捉カテーテル402の別の遠位端を示す。この実施形態は、単一の縫合糸および単一の針454のみを運ぶように構成することができ、光ファイバ通路457内に一対の光ファイバ459を有することができる。遠位側顎406は、レール410にヒンジ式に取り付けることができる。レール410は、顎408,410の間の離間距離を調整するために、近位側顎408に対してスライド可能であってもよい。
図8C~
図8Dを参照すると、レール410は、制限された長さを有し、近位側クランプ顎408内に画定されたレール通路409内で近位側ハンドルからスライドレール410まで制御可能なハイポチューブ(図示せず)に接続することができる。さらに、近位側顎408は、レール410上のロック機構と機械的に相互作用して、レール410がレール通路409から完全に外に出るように遠位側に移動するのを防止することができるロックタブ411を含むことができる。複数の実施形態において、レール410は、2つの顎を開かないようにするばね力で閉鎖位置に向かって近位側に付勢することができ、これにより、弁尖がいったん捕捉されると、2つの顎が弁尖の周りにクランプされたままになる。
図8Aを参照すると、弁尖と係合するために針454が移動する近位側顎408に沿った針通路415は、弁尖端の上方で弁尖を十分に刺し通すことを確実にするために上向きの角度で傾斜させることができる。さらに、弁尖捕捉カテーテル402は、本明細書に開示される他の実施形態に関して説明される任意の特徴を含むことができる。
【0033】
図8E~
図8Fは、例示の目的で、弁尖捕捉カテーテル402を含む、本明細書に開示される任意の弁尖捕捉カテーテルの遠位側捕捉顎に縫合糸を送ることができる方法に関する代替形態を示す。
図8Eを参照すると、この実施形態では、縫合糸10は近位側クランプ顎408の管腔438から延び、縫合糸の各糸11は近位側クランプ顎408の片側の通路473の周りに延びる。そして、糸は上方に延び、針454による回収のために遠位側クランプ顎でループを形成する。縫合糸10は近位側ハンドル制御部に戻るように延び、そこで針による回収のために適切な張力を維持することができる。この実施形態では、縫合糸管腔438は、縫合糸10が針454の上方から近位側クランプ顎408から現れるように、針454の上方に配置される。ここで
図8Fを参照すると、この実施形態では、縫合糸10は、針454の下方にある近位側クランプ顎408の下部にある管腔438から延びており、針454を含む針管452の周りに巻き付いている。そして、両方の縫合糸端部11は、近位側クランプ顎408の片側の同じ通路473に沿って、遠位側クランプ顎406まで延びる。また次に、縫合糸10は、近位側ハンドル制御部に戻るように延びることができる。針454による縫合糸捕捉のために、縫合糸10は作動手段によって針管452から解放され、作動手段は、例えば、チューブに取り付けられて同チューブを引き出す制御機構か、縫合糸をチューブ上に保持してその後後退させられるワイヤのようなものである。これら実施形態の各々において、縫合糸10は、例えば、上記の遠位側柱部122および中間タブ126のような特徴を含む様々な手段によって、近位側顎に保持されることができる。
【0034】
図8E~
図8Fの両方の実施形態は、例えば、
図4Bに関する装置の縫合糸経路指定および張力付与の態様を非常に単純化して示している。これらの実施形態における縫合糸10は、もはや半分に折り返されておらず、ハンドルに戻るように延びることができるので、別個のループ縫合糸20および係合解除可能な接続部24、並びに
図8Eの実施形態における針管152の周りの近位端縫合糸ループ16は必要ではなくなる。
【0035】
図9A~
図12Eは、弁尖捕捉カテーテルのための遠位側弁尖捕捉組立体1102の追加の実施形態の様々な態様を示す。
図9A~
図9Bを参照すると、弁尖捕捉組立体1102は、概して、軸1106と、そこから延びる近位側クランプ顎1108と、遠位側クランプ顎1110と、ノーズコーン1112とを含むことができる。一の実施形態では、遠位側クランプ顎1110は静止しており、近位側クランプ顎1108は、遠位側クランプ顎1110との間に弁尖を捕捉するために、遠位側クランプ顎1110に対して長手方向にスライド可能である。別の実施形態では、近位側クランプ顎1108は静止しており、遠位側クランプ顎1110はスライド可能である。ノーズコーン1112は、以下でさらに詳細に論じられるように、遠位側クランプ顎1110に対してスライド可能であり、縫合糸の保持および捕捉を助ける。
【0036】
図10A~
図10Cを参照すると、いくつかの実施形態では、弁尖捕捉組立体1102は、1以上の弁尖安定化ループ1114を含むことができる。安定化ループ1114は対向する二端を有するワイヤを備えることができ、このワイヤは、近位側クランプ顎1108および/または遠位側クランプ顎1110の中またはそれに隣接する開口部1116から延びており、それらの間にループ形状を形成している。複数の安定化ループ1114は、弁尖を捕捉する時間および効率を増加させるために、弁尖に接触のための追加の領域を提供する。さらに、安定化ループ1114は、針および縫合糸が弁尖を通過するときに、弁尖に対する追加の支持を提供する。一の実施形態では、
図10A~
図10Cに示されるように、両方の顎上に安定化ループ1114がある。別の実施形態では、例えば
図11A~
図11Bに示されるように、遠位側クランプ顎1110上にのみ安定化ループ1114がある。
【0037】
1以上の安定化ループ1114は、挿入中にガイドカテーテル内に入るとき、例えば
図10Aに示されるように、弁尖捕捉組立体1102の形状に一致するように折り畳み可能であってもよい。弁尖捕獲組立体1102がガイドカテーテルから延ばされると、1以上の安定化ループは、作動力を必要とせずに
図8Cに示されるような位置に外向きに受動的に動いて、弁尖を捕捉および支持するための拡張された面を提供することができる。一の実施形態では、これは、例えばニチノールのような形状記憶材料の安定化ループを構築することによって達成することができる。縫合糸の展開に続いて、弁尖捕捉組立体1102がガイドカテーテル内に引き戻されると、例えば
図8Bに示されるように、安定化ループは再び折り畳むことができる。このようにして、安定化ループ1114は、装置の外形サイズを増大させることなく、2つの顎の捕捉面のサイズを効果的に増大させる。いくつかの実施形態では、近位側クランプ顎1108、遠位側クランプ顎1110、および/またはノーズコーン1112は、対応する安定化ループ1114を折り畳み位置に収容および/または保持する1以上の凹部1118、溝1120などを含むことができる。
【0038】
さらなる実施形態では、上記の安定化要素は、ワイヤループではなく材料の固体部分で構成することができ、それはループ1114と同じ領域を包含する。そのような安定化要素は、同様に、装置の外形を増大させないように折り畳み可能である一方で、装置の有効な捕捉領域を増大させるのに有用である。そのような要素は、安定化ループと同様の可撓性を有する自己作動要素であってもよいし、また、他の実施形態では、近位側ハンドル制御部に向けて延びるとともに近位側ハンドル制御部から作動する、スライド要素またはスライドロッドへの接続によって作動されるようにしてもよい。そのような安定化要素は、いくつかの実施形態では、近位側ハンドル制御部またはヒンジのばね力によって作動されるようなスライド要素によって、弁尖と接触させることを可能にしたり、弁尖に対する接触を解除することを可能にしたりするように、ヒンジ結合されてもよい。
【0039】
上記のように、1以上の安定化ループ1114または安定化要素は、クランプ顎1108,1110のみと比較して、捕捉表面積を大幅に増加させることができる。一の実施形態では、顎の対向するクランプ面によって画定されるクランプ顎の捕捉表面積は約18mm2であり、1以上の安定化ループが展開されるとき、顎とループの組み合わせによって提供される捕捉面積は約52.19mm2であり、この約290%の増加により、捕捉表面積は2倍以上であって3倍近くになる。さらに、安定化ループは折り畳み可能であるため、装置の外形を大きくすることなく、この大きな表面積を得ることができる。例えば、記載された実施形態では、装置の外形または直径は18フレンチであるが、本明細書に記載されている経尖端心臓弁修復装置は、28フレンチの直径を有することができる。
【0040】
さらに、弁尖捕捉組立体1102は、捕捉された弁尖を穿刺して、弁尖を通して縫合糸を引くように構成された1以上の針を含み得る。
図11A~
図11Bは、一対の針1122を有する実施形態を示し、各針1122は、近位側クランプ顎1108の対応する通路1124から延びるようにそれぞれ構成されている。
図11Cに見られるように、一の実施形態では、各針1122は、傾斜部1128を有する針端部1126と、ノッチ1130を形成するフックとを含むことができる。これらの特徴により、針端部1126は、弁尖を貫通して縫合糸を回収するために引き抜かれ、弁尖を通して縫合糸を引っ張った後に、遠位側クランプ顎1110を横切るように張力をかけられた縫合糸を通過して前進することができる。針端部1126が前進すると、針1122の傾斜部1128が縫合糸に接触し、縫合糸を外すことなく通過するにつれて、縫合糸をわずかに移動させる。針1122が回収されると、縫合糸はノッチ1130と位置合わせされ、ノッチ1130内に捕捉される。そのような針を用いた弁尖を通した縫合糸の回収に関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0364875号に記載されている。
【0041】
図12A~
図12Fには、弁尖捕捉組立体1102の実施形態の様々な構成要素に関するさらなる詳細が示されている。
図12Aには軸1106が示され、
図12Bには軸1106の遠位端1132から延びるように構成された近位側クランプ顎1108が示されている。
図12Cには、近位側クランプ顎1108の保持凹部1134内に着座する縫合糸保持部1107が示されている。
図12Eおよび
図12Fには、遠位側クランプ顎1110および対応するノーズコーン1112がそれぞれ示されており、ノーズコーン1112は、遠位側クランプ顎1110の遠位端1136に配置されるように構成されている。
【0042】
ここで、
図12Aを参照すると、軸1106は、概ね円筒形の本体1138と、本体1138を通って軸の遠位端1132まで延びる複数の通路または管腔とを画定する。軸の本体1138は、軸1106が患者の脈管構造内のガイドカテーテルを通して送られることを可能にするために、可撓性材料で構成される。複数の通路は1以上の針通路1125を含むことができ、針1122は、軸の近位端から針通路1125に挿入されて、軸1125の遠位端1132から外へと延びるようになっているとともに、針1122は、縫合糸を保持した後に針通路1125を通じて引き抜かれるようになっている。以下でより詳細に説明されるように、針通路1125に隣接する縫合糸保持ロッド通路1140は、縫合糸保持部1107まで延びるロッドを案内するように構成され、このロッドは縫合糸保持部1107の位置を制御する。縫合糸通路1142は、縫合糸が針1122によって回収される前に、装置を通じて縫合糸1101を収容および案内するように構成される。さらに、これら通路は、ノーズコーン制御通路1144を含むことができ、複数のロッドは、ノーズコーン制御通路1144を通じてノーズコーン1112まで延びて、ノーズコーン1112の位置を制御する複数のロッドはノーズコーン制御通路1144を通じて案内される。いくつかの実施形態では、軸1106は通路または管腔をさらに含むことができ、以下に記載されるように、近位側クランプ顎1108の動きを制御するための1または複数のロッドは、この通路または管腔を通じて延びることができる。あるいは、近位側クランプ顎制御ロッドは、
図12Aに示されている複数の通路の間にある1以上の開放領域を通る態様で、軸を通じて延びることができる。さらに、いくつかの実施形態では、軸1106は、可撓性軸1106に構造的に補強するための1以上の安定化ロッド1141を含む。
【0043】
図12Bには、近位側クランプ顎1108の実施形態が示されている。近位側クランプ顎1108は、近位側軸本体1150および近位側顎本体1152を含む。本体1150および顎1152は、軸1106の形状を部分的に確認することができ、遠位のクランプ顎1110と接合されるほぼ平坦な底面1151を含む。近位側顎本体1152は保持凹部1134を含み、保持凹部1134は、近位側縫合糸保持部1107(
図10Cにより詳細に示される)を受容するように構成されている。針通路1124は、軸1106の針通路1125と整列されており、近位側軸本体1150および近位側顎本体1152を通って延びる。保持ロッド通路1141は、本体1150を通って延在し、軸1106の保持ロッド通路1140と整列されており、以下に記載されるように、縫合糸保持部107を制御するために使用される縫合糸保持ロッド1159を収容する。近位側顎本体1152は、遠位側に面するクランプ面1156を画定し、さらに、クランプ面1156に沿って針通路1124から延びるスロット1158を画定する。
【0044】
図12Cは、近位側クランプ顎1106の保持凹部1134内に配置されるように構成された縫合糸保持部1107の実施形態を示している。例えば
図12Dに示されるように、縫合糸保持部1107は針通路1155を含み、針通路1155は、針1125の通過を可能にするように構成されるとともに、1以上の縫合糸保持ロッド1159に接続するように構成される。さらに
図12Dに見られるように、縫合糸1101のループ1103は、縫合糸保持部1107に隣接して配置されてもよく、針1122が縫合糸を回収する前に、縫合糸1101のループ1103を所定の位置に固定するために、クランプ1109によって近位側クランプ顎1108の保持凹部1134内にクランプされてもよい。以下で説明するように、縫合糸保持部1107は、ロッド1159を介して近位側に移動することで、縫合糸1101を解放することができる。
【0045】
図12Eには、遠位側クランプ顎1110の実施形態が示されている。遠位側クランプ顎は、顎軸1109およびクランプ本体1160を含む。顎軸1109は、近位側クランプ顎1108の底面1151と接続するように、ほぼ円筒形の外形を形成する。クランプ本体1160は、近位側に向いたクランプ面1162と針通路1165とを含み、針通路1165は、針1121がクランプ本体1160を通って移動できるように針通路1124,1125,1155と整列されている。また、縫合糸管腔1172はクランプ本体1160を通して画定され、スロット1176は針通路1165と縫合糸通路1168との間でクランプ本体1160を貫通して延びることができる。縫合糸管腔1172は、顎軸1109を通って内部に延在し、軸1106を通して縫合糸管腔1142と整列されていてもよい。スロット1176は、顎軸1109の縫合糸通路1173と接合されていてもよい。
【0046】
図12Fに示される実施形態のように、ノーズコーン1112は、一対のノーズコーン制御ロッド1166によって、遠位側クランプ顎1110に対して選択的に配置することができ、一対のノーズコーン制御ロッド1166は、軸1106内のノーズコーン制御通路1144を通って延びて、顎ノーズコーン通路1164の中に入って顎ノーズコーン通路1164を通じて延び、顎軸1109および遠位側クランプ顎1160のクランプ本体1160を通る。ノーズコーン制御ロッド1166は、対応するノーズコーン通路1174内でノーズコーン1112に取り付けられており、遠位側クランプ顎1110に対するノーズコーン1112の相対的な位置決めの制御を可能にする。さらに、ノーズコーン1112は複数の縫合糸ロッド1170を含むことができ、複数の縫合糸ロッド1170は、遠位側クランプ顎1110のクランプ本体1160内の対応する縫合糸ロッド通路1168内に選択的に配置することができる。他の複数の実施形態では、ノーズコーン1112は、作動時のばね力によって、および/または、遠位側クランプ顎1110へのヒンジ式の取り付けによって、開くことができる。図示の実施形態におけるノーズコーン1112は、弁尖捕捉カテーテルの最遠位端となる位置に置かれるため、概して円錐形状を有し、送達システムおよび心臓に挿入されるときに外傷を与えないような形状になっている。ただし、ノーズコーンの主要な機能は、縫合糸を針と係合させて所定の位置に保持することであるので、ノーズコーンは異なる形状を備えることができ、いくつかの実施形態では、遠位側クランプ顎1110のクランプ本体1160に対して遠位側ではなく近位側に配置されてもよい。
【0047】
図13A~
図13Eは、さらに、一実施形態において、縫合糸1101を回収する前に、縫合糸1101が、弁尖捕捉カテーテル1100の遠位側捕捉組立体1102によって収容される態様の詳細に示す。縫合糸1101は、縫合糸保持部1107に隣接する保持凹部1134内の縫合糸ループ1103と、遠位側クランプ顎1110とノーズコーン1112との間で遠位側クランプ顎1110の遠位端1136に隣接する一対の縫合糸1105とを含む。縫合糸ループ1103は、縫合糸保持部1107によって保持凹部1134内に保持され、2本の縫合糸のうち第1の糸1105aは遠位側クランプ顎1110の遠位端1136にあるスロット1176を通って通路1173に沿って延び、それらはノーズコーン1112の縫合糸ロッド1170の周りに張力をかけた状態で巻かれて、針1122による捕捉を助ける。縫合糸のこれら糸1105は、ノーズコーン1112と遠位側クランプ顎1110の遠位端1136との間の圧縮により、縫合糸ロッド1170の周りの適所に保持される。(これらの図においては、明確性を確保するために、ノーズコーンは遠位側クランプ顎1110からずれて示されているが、記載された初期構成では、縫合糸ロッド1170は、縫合糸ロッド1101がその間にしっかりと保持された状態で縫合糸ロッド通路1168に挿入される。)。次に、縫合糸の第2の糸1105bは、遠位側クランプ顎1110の内部縫合糸管腔1172を通って戻り、その後、軸1106内の縫合糸通路1142を通って送られる(
図12Aを参照)。代替の実施形態では、縫合糸は、単一の縫合糸の糸の端にある縫合糸のループからなることができる。そのような一のループは、特に、単一の糸がループ/弁尖から弁尖の下方のアンカーポイントまで延びた状態で、弁尖の縁の周りへの固定を可能にするようにサイズが決定される。
【0048】
弁尖が顎1108,1110の間に捕捉された後、針1122の針端部1126は、上記のように、縫合糸1101のそばを過ぎて針通路1124,1125,1155,1165を通って前進し、その後、針端部1126のノッチ1130内で縫合糸1101を回収するために後退させられる。そして、ノーズコーン1112は遠位側に前進して、そこに保持されている縫合糸端部1105を解放し、縫合糸端部1155は針1122によって縫合糸ループ1103を通して引き戻される。次に、縫合糸保持部1107が近位側に後退させられて縫合糸ループ1103を解放し、縫合糸端部105がさらに引き出されて装置が外に出されると、ループ1103は弁尖の周りにガースヒッチ結びで締め込まれる。心臓弁尖周りでのそのような結び目の形成に関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0290582号に記載されている。
【0049】
図14A~
図14Gは、一実施形態に係る、弁尖捕捉カテーテルのための近位側ハンドル制御部1104を示す。近位側ハンドル制御部1104は、遠位側弁尖捕捉組立体1102を制御および操作するために使用され、ハンドル本体1180および縫合糸保持部制御部1182と、ノーズコーン制御部1184およびクランプ顎制御部1186とを含むことができる。針1122は、装置を通して挿入され、針制御装置1188で手動制御することができる。
図14B~
図14Gは、明確性を確保するために、各図から装置の一部を取り除いた装置を示している。
【0050】
図14B~
図14Dは、ハンドル1104内の様々な制御要素間の相互関係をさらに示すために、ハンドル本体1180の一部が取り除かれたハンドル1104を示す。クランプ顎制御部またはレバー1186および縫合糸保持部制御部またはレバー1182の各々は可動レバー支持部1192,1194に個別に接続され、可動レバー支持部1192,1194は、各制御レバーによって制御される対応するロッドを別々に制御する。クランプ顎レバー1186はレバー本体1190を含み、縫合糸保持レバー1182はレバー本体1190上に着座し、縫合糸保持レバー支持部1194はレバー本体1190を通って延びる。さらに、支持体1192,1194の各々は開口部を含み、針管腔1125は開口部を通じて延び、これにより、縫合糸保持レバー182および締付け顎レバー1186は針管腔1125から独立してスライドしたり移動したりすることができる。以下に見られるように、クランプ顎レバー1186は、クランプ顎レバー支持部1192が縫合糸保持レバー支持部1194(例えば、
図14Fを参照)に接触する前に、比較的短い距離だけ遠位側に移動することができ、これにより、近位側顎1108および縫合糸保持部1107は、互いに調和して遠位側に移動する。これにより、近位側顎1108が弁尖を把持するために前進させられるときに、縫合糸保持部1107によってしっかりとクランプされた縫合糸ループ1103を維持するという利点を提供する。
【0051】
図14Eは、ノーズコーンの制御部またはレバー1184に関連する要素を示している。ノーズコーンの制御部またはレバー1184は、ノーズコーン制御ロッド1166に操作可能に接続されて、遠位側クランプ顎1100に対してノーズコーン1112を前進および後退させる。縫合糸管腔1142は、ノーズコーンレバー1184の一部を通って、2つのノーズ制御ロッド1166の間に延びている(
図12Aを参照)。ノーズコーンレバー1184は、ノーズ制御ロッド1166を動かすように操作されると、縫合糸管腔1142に沿ってスライドするので、縫合糸管腔1142はノーズコーンレバー1184によって制御されない。ノーズコーン1112を遠位側顎1110から離してそれらの間に空間を作ることにより、縫合糸1101を、上述のようにノーズコーン1112の縫合糸ロッド1170の周囲から解放することができる。
【0052】
図14Fには、縫合糸保持レバー1182に関するさらなる詳細が示されている。縫合糸保持レバー1182は、縫合糸保持ロッド1159に動作可能に接続されて、近位側クランプ顎1108の縫合糸保持凹部1134内で近位側縫合糸ループ保持部1107を動かす。図示の実施形態では、縫合糸保持ロッド1159は、縫合糸保持レバー支持部1194の基部に付けられている。縫合糸保持レバー1182を遠位側に動かして、縫合糸保持ロッド1159を介して縫合糸保持部1107を前進させることにより、上記のように縫合糸ループ1103をしっかりとクランプすることができる。その後に縫合糸保持部レベル1182が近位側に移動することにより、縫合糸保持部1107が近位側に移動し、これにより、上記のように、縫合糸ループを解放して、弁尖の縁の周りでガースヒッチ結びが締め込まれることが可能になる。
【0053】
図14Gは、近位側クランプ顎1108を制御するために使用されるクランプ顎レバー1186に関するさらなる詳細を示している。レバー本体1190は開口1196を含み、縫合糸保持レバー支持部1194は開口1196を通じて延び、開口1196はレバー支持部1194の部分よりも大きく、レバー支持部1194は開口1196を通って延びて縫合糸保持レバー1182が独立して動くことを可能にする。クランプ顎ロッド1187は、クランプ顎レバー支持部1192から近位側クランプ顎1108まで延びており、クランプ顎レバー186の遠位側および近位側への移動に対応して、顎1108が移動するようになっている。図示の実施形態では、クランプ顎レバー支持部1192と縫合糸保持レバー支持部1194との間にはばね1198が配置されている。これにより、近位側クランプ顎1108が近位側に向けて付勢されており、ばねの付勢力に抗したクランプ顎レバー1186の遠位側への移動によって顎1108,1110間の空間を閉じられ、レバー1186が解放されると近位側クランプ顎1108が自動的により開いた位置に向けて近位側に戻るようになっている。これに対応して、ばね1198は、縫合糸保持レバー1196を遠位側に付勢している。別の実施形態では、近位側クランプ顎1108は、遠位側クランプ顎1110に対して閉じる位置に向けて遠位側に付勢されており、その結果、クランプ顎レバー1186が作動させられると2つの顎が開き、その後、レバー1186が開放されると2つの顎が自動的に閉じるようになっている。
【0054】
図14Hに示されるように、針1122は、針管腔1125を通って延びており、針ハンドル1188を用いて使用者によって手動制御される。針ハンドル1188は、ハンドル1104の開口1189の形状と一致するように構成された非対称形状を備えている(
図14Cを併せて参照)。これにより、(上記のように)作動したときに針1122が縫合糸を捕捉するための正しい向きになることが保証される。
【0055】
いくつかの実施形態では、装置を通る1以上の通路は、光ファイバ捕捉確認要素を代わりに収容するか、光ファイバ捕捉確認要素を追加で組み込むようにしてもよい。そのような実施形態では、1対以上の伝送および戻りファイバが装置を通り、捕捉確認システムが、弁尖の表面が光ファイバ対に対面しているときには第1の色を表示し、弁尖が内面で光ファイバ対に対面していないときには第2の色(例えば、血液の色)を表示することにより、弁尖が2つのクランプ顎の間で把持されているかどうかの二値表示を提供できるようにする。
図12A~
図12Bは、そのような一実施形態を示す。
図15Aを参照すると、1以上の光ファイバ通路1157は、近位側クランプ顎1108のクランプ面1156にあるスロット1158に沿って提供され得る。
図15Bに示されるように、近位側ハンドル制御部のハンドル本体1280に1以上の表示灯1281を提供して、通路1257を通って延びる光ファイバから2つのクランプ顎の間に弁尖が捕捉されているかどうかの1以上の指標を提供することができる。患者の鼓動する心臓における弁尖の光ファイバでの捕捉確認に関するさらなる詳細は、以前に参照により本明細書に組み込まれた米国特許第8,465,500号および米国特許第8,758,393号に記載されている。
【0056】
様々な実施形態では、本明細書で説明されるような弁尖捕捉カテーテルは、弁尖修復のために経脈管的に心臓にアクセスするように構成される。
図16は、僧帽弁10にアクセスする弁尖捕捉カテーテルを含む心臓弁修復システムのためのアクセスアプローチの実施形態の概略図を示す。
図16は、大腿静脈を介して心臓の内部にアクセスするガイドカテーテル14を示す。いくつかの実施形態では、そのようなシステムは、外側ガイドカテーテルおよび内側ガイドカテーテルをさらに含むことができる。そのような実施形態では、外側ガイドカテーテルは、患者の鼠径部において大腿静脈に挿入され、大腿静脈を通って下大静脈19に前進し、次に右心房16に前進することができる。様々な実施形態では、外側ガイドカテーテルは、単一面で操縦可能であってもよく、24フレンチの外径を有してもよい。次に、適切な穿刺器具を使用して中隔18を穿刺し、外側ガイドカテーテルを中隔18内に、または中隔18を通って左心房20内に前進させることができる。次に、内側ガイドカテーテルを、外側ガイドカテーテルを通って左心房20内に軸方向に前進させることができる。いくつかの実施形態では、内側ガイドカテーテルには、2通りの操縦方法があり、僧帽弁10よりも優れた安定した位置を確立するとともに、以下に記載するように弁尖捕捉カテーテル100(
図16には示されていない)の弁尖を修復するための動作のための所望の軌道を提供するために、外側ガイドカテーテルと共に、および/または、外側ガイドカテーテルを超えて操作することができる。
【0057】
図17A~
図17Gには、本明細書で説明されるように、弁尖捕捉カテーテル102,1102を用いて縫合糸を弁尖に挿入することによって心臓弁を修復する方法の様々なステップの概略図が示されている。一の実施形態では、弁尖捕捉カテーテル1102には、上記のように配置された縫合糸が事前に装填される。
図17Aを参照すると、例えば
図14に関して上述したように、右心房への経中隔アクセスが得られた後、弁尖捕捉カテーテル1102は僧帽弁10より上位に配置される。遠位側捕捉組立体がガイドカテーテル14から延ばされると、安定化ループ1114は、ガイドカテーテル14によって拘束されなくなるため、折り畳まれた位置からその延ばされた位置に自動的に移行する。遠位側捕捉組立体1102がさらに前進すると、
図17Bに示すように、遠位側クランプ顎1110および近位側クランプ顎1108が弁尖11の周りに配置され、安定化ループ1114が、顎1108,1110の間にある弁尖11の案内および拘束を助ける。そして、
図17Cに示されるように、弁尖11を顎1108,1110の間にクランプするようにクランプ顎レバー1186を作動させることにより、近位側クランプ顎1110を前進させることができる。
【0058】
ここで
図17Dを参照すると、弁尖11が顎1108,1110の間にしっかりとクランプされると、針1122は、弁尖を穿刺するために装置の近位端で針レバー1188を用いて作動されることができる。次に、針1122は、上述のように、弁尖11を通って後退させられて、縫合糸1101を回収する。そうすると、近位側顎1108を後退させることができ、
図17Fに示すように、遠位側捕捉組立体1102は、弁尖11を通って延びる縫合糸のループにより弁尖11から係合解除される。すると、遠位側捕捉組立体1102はガイドカテーテル14内に引き込むことができるようになる。
図17Gに見られるように、ガイドループ14に接触すると、安定化ループ1114は弁尖捕捉カテーテル100の形状に一致するように自動的に折り畳まれ、ガイドカテーテル14を通して弁尖捕捉カテーテル1102を身体から引き抜くことができるようになる。続いて、縫合糸ループから弁尖を通って延びる縫合糸の自由端を心臓に固定することができる。
【0059】
本明細書では僧帽弁に関して具体的に説明しているが、本明細書で説明される装置は、三尖弁および大動脈弁のような他の機能不全の弁を治療するために使用できることを理解されたい。さらに、本出願に記載される装置は、経尖端アプローチ(例えば、左心室の先端を通じて)および経大腿的アプローチ(大腿静脈を介して)のような経血管アプローチを含む、当該分野で公知の様々なアクセスアプローチを介して患者の鼓動する心臓に埋め込むことができることが理解されるべきである。採用することができる経尖端アクセスアプローチの一例は、以前に参照により本明細書に組み込まれた米国特許第9,044,221号に記載されている。採用することができる経血管アクセスアプローチの一例は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2013/0035757号に記載されている。このアクセスアプローチの多様性により、手術のためのアクセス箇所を患者のニーズに合わせて調整することが可能になる。
【0060】
複数のシステム、複数の装置、および複数の方法の様々な実施形態が本明細書で説明されてきた。これらの実施形態は、単に例として示されており、本発明の範囲を限定することを意図しない。さらに、記載された実施形態の様々な特徴は、多くの追加の実施形態を生成するために様々な方法で組み合わせ可能であることが理解されるべきである。さらに、様々な材料、寸法、形状、埋め込み位置などが開示された実施形態での使用について説明されてきたが、開示された構成以外の他の構成も本発明の範囲を超えることなく利用可能である。
【0061】
関連分野の当業者であれば、本明細書の主題が、上記の任意の個々の実施形態に示されるよりも少ない特徴を含み得ることを認識するであろう。本明細書で説明される複数の実施形態は、本明細書の主題の様々な特徴を組み合わせることができる方法の完全な提示であることを意味するものではない。したがって、複数の実施形態は、特徴の相互に排他的な組み合わせではなく、むしろ、様々な実施形態は、当業者によって理解されるように、異なる個々の実施形態から選択された異なる個々の特徴の組み合わせを含むことができる。さらに、一の実施形態に関して説明された複数の要素は、別段の記載がない限り、そのような実施形態で説明されていない場合でも、他の実施形態で実装することができる。
【0062】
従属クレームは、複数のクレームにおいて1以上の他のクレームとの特定の組み合わせを指す場合があるが、他の複数の実施形態は、従属クレームと他の各従属クレームの主題との組み合わせ、または、1以上の機能と他の従属または独立クレームとの組み合わせを含むこともできる。そのような組み合わせは、特定の組み合わせが意図しないと述べられていない限り、本明細書で提案される。
【0063】
クレームを解釈する目的で、米国特許法第112条(f)の規定は、特定の用語「手段」または「ステップ」がクレームに記載されていない限り、適用されるべきではない。
上記の文書の参照による組み込みは、本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように制限される。さらに、上記の文書の参照による組み込みは、文書に含まれる請求項が参照により本明細書に組み込まれないように制限される。さらに、上記の文書の参照による組み込みは、文書に提供される定義が本明細書に明示的に含まれない限り、参照により本明細書に組み込まれないように、制限される。