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特許7083576能動型騒音制御システム及び車載オーディオシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】能動型騒音制御システム及び車載オーディオシステム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20220606BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
G10K11/178
B60R11/02 M
B60R11/02 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018133739
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012917
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】田地 良輔
(72)【発明者】
【氏名】梶川 嘉延
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/029336(WO,A1)
【文献】米国特許第05381485(US,A)
【文献】特開2018-072770(JP,A)
【文献】特開平06-138888(JP,A)
【文献】特開2001-142469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音を低減する能動型騒音制御装置であって、
所定の騒音キャンセル位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するスピーカと、
前記騒音と前記キャンセル音との合成音をピックアップし、誤差信号として出力するマイクロフォンと、
前記スピーカから出力されるキャンセル音を生成するキャンセル音生成部とを有し、
前記キャンセル音生成部は、
前記騒音の騒音源が発生する騒音を表す信号である騒音信号を入力とする適応フィルタと、
前記適応フィルタの出力を入力とし、前記キャンセル音を出力する第1フィルタと、
前記適応フィルタの出力を入力とする第2フィルタとを有し、
前記適応フィルタは、前記マイクロフォンの出力と前記第2フィルタの出力の差をエラーとして、所定の適応アルゴリズムによって当該適応フィルタの伝達関数を更新し、
前記第1のフィルタには、第1フィルタ用伝達関数が設定されており、かつ、当該第1フィルタ用伝達関数は、所定の標準状態において、前記騒音信号に当該第1フィルタ用伝達関数を施した音を前記キャンセル音として前記キャンセル音生成部において生成したときに、前記騒音キャンセル位置において騒音がキャンセルされるように設定されており、
前記第2のフィルタには、第2フィルタ用伝達関数が設定されており、かつ、当該第2フィルタ用伝達関数は、前記所定の標準状態において、前記適応フィルタの伝達関数を入力をそのまま出力とする伝達関数としたときに、前記エラーが、前記騒音キャンセル位置に配置した仮想のマイクロフォンの出力となるように設定されていることを特徴とする能動型騒音制御装置。
【請求項2】
騒音を低減する能動型騒音制御装置であって、
所定の騒音キャンセル位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するスピーカと、
前記騒音と前記キャンセル音との合成音をピックアップし、誤差信号として出力するマイクロフォンと、
前記スピーカから出力されるキャンセル音を生成するキャンセル音生成部とを有し、
前記キャンセル音生成部は、
前記騒音の騒音源が発生する騒音を表す信号である騒音信号を入力とする適応フィルタと、
前記適応フィルタの出力を入力とし、前記キャンセル音を出力する第1フィルタと、
前記適応フィルタの出力を入力とする第2フィルタとを有し、
前記適応フィルタは、前記マイクロフォンの出力と前記第2フィルタの出力の差をエラーとして、所定の適応アルゴリズムによって当該適応フィルタの伝達関数を更新し、
前記第1のフィルタには、所定の学習処理によって学習された第1フィルタ用伝達関数が設定されており、前記第2のフィルタには、前記学習処理によって学習された第2フィルタ用伝達関数が設定されており、
前記第1フィルタ用伝達関数は、前記学習処理実行時点における、前記騒音源から前記騒音キャンセル位置までの伝達関数をV(z)、前記キャンセル音生成部から前記騒音キャンセル位置までの伝達関数をSv(z)として、"-V(z)/Sv(z)"であり、
前記第2フィルタ用伝達関数は、前記学習処理実行時点における、前記騒音源から前記マイクロフォンまでの伝達関数をP(z)、前記キャンセル音生成部から前記マイクロフォンまでの伝達関数をS(z)として、"P(z)-{V(z)/Sv(z)}S(z)"であることを特徴とする能動型騒音制御装置。
【請求項3】
騒音を低減する能動型騒音制御装置であって、
所定の騒音キャンセル位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するスピーカと、
前記騒音と前記キャンセル音との合成音をピックアップし、誤差信号として出力するマイクロフォンと、
前記スピーカから出力されるキャンセル音を生成するキャンセル音生成部とを有し、
前記キャンセル音生成部は、
前記騒音の騒音源が発生する騒音を表す信号である騒音信号を入力とする適応フィルタと、
前記適応フィルタの出力を入力とし、前記キャンセル音を出力する第1フィルタと、
前記適応フィルタの出力を入力とする第2フィルタとを有し、
前記適応フィルタは、前記マイクロフォンの出力と前記第2フィルタの出力の差をエラーとして、所定の適応アルゴリズムによって当該適応フィルタの伝達関数を更新し、
前記第1のフィルタには、所定の学習処理によって学習された第1フィルタ用伝達関数が設定されており、前記第2のフィルタには、前記学習処理によって学習された第2フィルタ用伝達関数が設定されており、
前記学習処理は、
前記キャンセル音生成部を、前記騒音信号に第1の伝達関数を施した音を前記キャンセル音として生成する第1学習部に置き換えた構成において、前記騒音キャンセル位置において騒音がキャンセルされる前記第1の伝達関数を、前記第1フィルタ用伝達関数として学習し、
前記キャンセル音生成部を、前記騒音信号に第1フィルタ用伝達関数を施した音を前記キャンセル音として生成する第2学習部に置き換えた構成において、前記マイクロフォンの出力と、前記騒音信号に第2の伝達関数を施した音との差が無くなる前記第2の伝達関数を前記第2フィルタ用伝達関数として学習する処理であることを特徴とする能動型騒音制御装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の能動型騒音制御装置であって、
前記学習処理を実行して、前記第1フィルタ用伝達関数を前記第1フィルタに設定し、前記第2フィルタ用伝達関数を第2フィルタに設定する学習処理実行部を有することを特徴とする能動型騒音制御装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の能動型騒音制御装置を備えた、自動車に搭載される車載オーディオシステムであって、
前記自動車の車内にオーディオを放射する、自動車の第1のシートに搭乗するユーザ用のオーディオ装置を備え、
前記騒音は前記オーディオ装置が放射するオーディオであり、
前記騒音信号は、前記オーディオ装置の音源が出力するオーディオ信号であり、
前記騒音キャンセル位置は、前記自動車の第2のシートに搭乗するユーザの耳の位置であり、
前記マイクロフォンは、前記第2のシートに搭乗したユーザの耳の位置の近傍となる位置に配置されていることを特徴とする車載オーディオシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を打ち消すキャンセル音を放射することにより騒音を低減する能動型騒音制御(ANC;Active Noise Control)の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
騒音を打ち消すキャンセル音を放射することにより騒音を低減する能動型騒音制御の技術としては、キャンセル音を放射するスピーカと、ユーザの耳の位置の近傍に配置したマイクロフォンと、騒音源で発生する騒音を疑似した信号に、設定した伝達関数を施してキャンセル音を生成する適応フィルタとを設け、適応フィルタにおいて、マイクロフォンの出力をエラー信号として伝達関数を設定することにより、ユーザの耳の位置の近傍のマイクロフォンの位置において騒音をキャンセルするキャンセル音が生成されるように伝達関数を適応的に設定する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、さらに、このような技術において、騒音源からユーザの耳の位置までの伝達関数と騒音源からマイクロフォンまでの伝達関数の差と、スピーカからユーザの耳の位置までの伝達関数とスピーカからマイクロフォンまでの伝達関数の差とを予め求めておき、求めておいた各伝達関数の差を用いて、ユーザの耳の位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を生成する伝達関数が適応フィルタにおいて設定されるように、エラー信号を補正する技術も知られている(同特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-195089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したユーザの耳の位置において騒音がキャンセルされる伝達関数が適応フィルタにおいて設定されるように、エラー信号を補正する技術によれば、予め求めた騒音源からユーザの耳の位置までの伝達関数と騒音源からマイクロフォンまでの伝達関数の差を用いてエラー信号を補正するため、騒音源からユーザの耳の位置までの伝達関数や、騒音源からマイクロフォンまでの伝達関数が変化すると、適応フィルタにおいて伝達関数を適切に設定することができなくなり、ユーザの耳の位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を生成できなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、ユーザの耳の位置の近傍に配置したマイクロフォンを用いて、ユーザの耳の位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を生成しスピーカから出力する能動型騒音制御システムにおいて、生成するキャンセル音を、騒音源からユーザの耳の位置までの伝達関数や騒音源からマイクロフォンまでの伝達関数の変化に適応させることを課題とする。
【0007】
また、本発明は、併せて、このような能動型騒音制御システムを適用した車載オーディオシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題達成のために、本発明は、騒音を低減する能動型騒音制御装置に、所定の騒音キャンセル位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するスピーカと、前記騒音と前記キャンセル音との合成音をピックアップし、誤差信号として出力するマイクロフォンと、前記スピーカから出力されるキャンセル音を生成するキャンセル音生成部とを備えたものである。ここで、前記キャンセル音生成部は、前記騒音の騒音源が発生する騒音を表す信号である騒音信号を入力とする適応フィルタと、前記適応フィルタの出力を入力とし、前記キャンセル音を出力する第1フィルタと、前記適応フィルタの出力を入力とする第2フィルタとを有する。また、前記適応フィルタは、前記マイクロフォンの出力と前記第2フィルタの出力の差をエラーとして、所定の適応アルゴリズムによって当該適応フィルタの伝達関数を更新する。そして、前記第1のフィルタには、第1フィルタ用伝達関数が設定されており、かつ、当該第1フィルタ用伝達関数は、所定の標準状態において、前記騒音信号に当該第1フィルタ用伝達関数を施した音を前記キャンセル音として前記キャンセル音生成部において生成したときに、前記騒音キャンセル位置において騒音がキャンセルされるように設定されている。また、前記第2のフィルタには、第2フィルタ用伝達関数が設定されており、かつ、当該第2フィルタ用伝達関数は、前記所定の標準状態において、前記適応フィルタの伝達関数を入力をそのまま出力とする伝達関数としたときに、前記エラーが、前記騒音キャンセル位置に配置した仮想のマイクロフォンの出力となるように設定されている。
【0009】
また、前記課題達成のために、本発明は、騒音を低減する能動型騒音制御装置に、所定の騒音キャンセル位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するスピーカと、前記騒音と前記キャンセル音との合成音をピックアップし、誤差信号として出力するマイクロフォンと、前記スピーカから出力されるキャンセル音を生成するキャンセル音生成部とを備えたものである。ここで、前記キャンセル音生成部は、前記騒音の騒音源が発生する騒音を表す信号である騒音信号を入力とする適応フィルタと、前記適応フィルタの出力を入力とし、前記キャンセル音を出力する第1フィルタと、前記適応フィルタの出力を入力とする第2フィルタとを有する。また、前記適応フィルタは、前記マイクロフォンの出力と前記第2フィルタの出力の差をエラーとして、所定の適応アルゴリズムによって当該適応フィルタの伝達関数を更新する。そして、前記第1のフィルタには、所定の学習処理によって学習された第1フィルタ用伝達関数が設定されており、前記第2のフィルタには、前記学習処理によって学習された第2フィルタ用伝達関数が設定されている。ここで、前記第1フィルタ用伝達関数は、前記学習処理実行時点における、前記騒音源から前記騒音キャンセル位置までの伝達関数をV(z)、前記キャンセル音生成部から前記騒音キャンセル位置までの伝達関数をSv(z)として、"-V(z)/Sv(z)"であり、前記第2フィルタ用伝達関数は、前記学習処理実行時点における、前記騒音源から前記マイクロフォンまでの伝達関数をP(z)、前記キャンセル音生成部から前記マイクロフォンまでの伝達関数をS(z)として、"P(z)-{V(z)/Sv(z)}S(z)"である。
【0010】
また、前記課題達成のために、本発明は、騒音を低減する能動型騒音制御装置に、所定の騒音キャンセル位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を出力するスピーカと、前記騒音と前記キャンセル音との合成音をピックアップし、誤差信号として出力するマイクロフォンと、前記スピーカから出力されるキャンセル音を生成するキャンセル音生成部とを備えたものである。ここで、前記キャンセル音生成部は、前記騒音の騒音源が発生する騒音を表す信号である騒音信号を入力とする適応フィルタと、前記適応フィルタの出力を入力とし、前記キャンセル音を出力する第1フィルタと、前記適応フィルタの出力を入力とする第2フィルタとを有する。また、前記適応フィルタは、前記マイクロフォンの出力と前記第2フィルタの出力の差をエラーとして、所定の適応アルゴリズムによって当該適応フィルタの伝達関数を更新する。そして、前記第1のフィルタには、所定の学習処理によって学習された第1フィルタ用伝達関数が設定されており、前記第2のフィルタには、前記学習処理によって学習された第2フィルタ用伝達関数が設定されている。ここで、前記学習処理は、前記キャンセル音生成部を、前記騒音信号に第1の伝達関数を施した音を前記キャンセル音として生成する第1学習部に置き換えた構成において、前記騒音キャンセル位置において騒音がキャンセルされる前記第1の伝達関数を、前記第1フィルタ用伝達関数として学習し、前記キャンセル音生成部を、前記騒音信号に第1フィルタ用伝達関数を施した音を前記キャンセル音として生成する第2学習部に置き換えた構成において、前記マイクロフォンの出力と、前記騒音信号に第2の伝達関数を施した音との差が無くなる前記第2の伝達関数を前記第2フィルタ用伝達関数として学習する処理である。
【0011】
ここで、以上のような前記第1のフィルタに学習処理によって学習された第1フィルタ用伝達関数が設定されており、前記第2のフィルタに学習処理によって学習された第2フィルタ用伝達関数が設定されている能動型騒音制御装置には、当該学習処理を実行して、前記第1フィルタ用伝達関数を前記第1フィルタに設定し、前記第2フィルタ用伝達関数を第2フィルタに設定する学習処理実行部を設けるようにしてもよい。
【0012】
ここで、本発明は、併せて、以上の能動型騒音制御装置を備えた、自動車に搭載される車載オーディオシステムも提供する。ここで、この車載オーディオシステムは、前記自動車の車内にオーディオを放射する、自動車の第1のシートに搭乗するユーザ用のオーディオ装置を備えている。そして、前記騒音は前記オーディオ装置が放射するオーディオであり、前記騒音信号は、前記オーディオ装置の音源が出力するオーディオ信号であり、前記騒音キャンセル位置は、前記自動車の第2のシートに搭乗するユーザの耳の位置であり、前記マイクロフォンは、前記第2のシートに搭乗したユーザの耳の位置の近傍となる位置に配置されている。
【0013】
以上のような能動型騒音制御装置や車載オーディオシステムによれば、後に詳述するように、騒音源から騒音キャンセル位置までの伝達関数と、騒音源からマイクロフォンまでの伝達関数が同様に変化しても、これに適応し、騒音キャンセル位置において、騒音をキャンセル音でキャンセルすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ユーザの耳の位置の近傍に配置したマイクロフォンを用いて、ユーザの耳の位置において騒音をキャンセルするキャンセル音を生成しスピーカから出力する能動型騒音制御システムにおいて、生成するキャンセル音を、騒音源からユーザの耳の位置までの伝達関数や騒音源からマイクロフォンまでの伝達関数の変化に適応させることができる。
【0015】
また、本発明によれば、このような能動型騒音制御システムを適用した車載オーディオシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るスピーカとマイクロフォンの配置を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係るフロント用キャンセル装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る学習の第1段階を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る学習の第2段階を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るフロント用キャンセル装置の他の構成例を示すブロック図である。
図7】本発明の実施形態に係るオーディオシステムの他の構成例を示すブロック図である。
図8】本発明の実施形態に係るオーディオシステムの他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、自動車に搭載されたオーディオシステムへの適用を例にとり説明する。
図1に、本実施形態に係るオーディオシステムの構成を示す。
図示するように、オーディオシステムは、フロント用音源装置11、フロント用信号処理部12、フロント用合成部13、フロント用スピーカ14、フロント用キャンセル装置15、フロント用マイクロフォン16を備えている。
【0018】
また、オーディオシステムは、リア用音源装置21、リア用信号処理部22、リア用合成部23、リア用スピーカ24、リア用キャンセル装置25、リア用マイクロフォン26を備えている。
【0019】
ここで、フロント用スピーカ14は、自動車のフロントシートに搭乗したユーザであるフロントユーザ用のスピーカであり、たとえば、図2aに示すように、フロントシートのヘッドレストの横の位置等に配置される。また、図2aに示すように、フロント用マイクロフォン16は、フロントシートのヘッドレスト等の、フロントシートに搭乗したユーザの耳の位置の近傍となる位置に配置されている。
【0020】
また、リア用スピーカ24は、自動車のリアシートに搭乗したユーザであるリアユーザ用のスピーカであり、たとえば、図2aに示すように、リアシートのヘッドレストの横の位置等に配置される。また、リア用マイクロフォン26は、図2aに示すように、リアシートのヘッドレスト等の、リアシートに搭乗したユーザの耳の位置の近傍となる位置に配置されている。
【0021】
図1に戻り、フロント用音源装置11は、ミュージックプレイヤやラジオ等の、フロントユーザが聴取するオーディオの音源となる装置であり、フロント用信号処理部12は、イコライザなどのフロント用音源装置11から出力されたオーディオに所定の信号処理を施し出力する装置である。
【0022】
また、リア用音源装置21は、ミュージックプレイヤやラジオ等の、リアユーザが聴取するオーディオの音源となる装置であり、リア用信号処理部22は、イコライザなどのリア用音源装置21から出力されたオーディオに所定の信号処理を施す装置である。
【0023】
そして、フロント用キャンセル装置15は、フロント用マイクロフォン16でピックアップした音声と、リア用音源装置21から出力されたオーディオとから、フロント用キャンセル音を生成して出力し、フロント用合成部13は、フロント用信号処理部12が出力するオーディオと、フロント用キャンセル装置15が出力するフロント用キャンセル音とを合成し、フロント用スピーカ14から出力する。
【0024】
また、リア用キャンセル装置25は、リア用マイクロフォン26でピックアップした音声と、フロント用音源装置11から出力されたオーディオとから、リア用キャンセル音を生成して出力し、リア用合成部23は、リア用信号処理部22が出力するオーディオと、リア用キャンセル装置25が出力するリア用キャンセル音とを合成し、リア用スピーカ24から出力する。
【0025】
ここで、リア用スピーカ24から伝達されるリア用音源装置21が音源のオーディオはフロントユーザにとって騒音であり、フロント用スピーカ14から伝達されるフロント用音源装置11が音源のオーディオはリアユーザにとって騒音となる。
【0026】
また、フロントユーザの耳の位置が、フロントユーザにとっての騒音をキャンセルすべき騒音キャンセル位置となり、リアユーザの耳の位置が、リアユーザにとっての騒音をキャンセルすべき騒音キャンセル位置となる。
【0027】
そして、フロント用キャンセル装置15が生成し出力するフロント用キャンセル音は、フロントユーザの耳の位置で、リア用スピーカ24から伝達されるオーディオ(騒音)をキャンセルする音であり、リア用キャンセル装置25が生成し出力するリア用キャンセル音は、リアユーザの耳の位置で、フロント用スピーカ14から伝達されるオーディオ(騒音)をキャンセルする音である。
【0028】
次に、フロント用キャンセル装置15の構成を図3に示す。
図示するように、フロント用キャンセル装置15は、可変フィルタ151、適応アルゴリズム実行部152、伝達モデル153、第1フィルタ154、第2フィルタ155、減算器156を備えている。
そして、予め行われる学習処理によって第1フィルタ154には伝達関数"-V(z)/Sv(z)"が設定されており、第2フィルタ155には、学習処理によって伝達関数"P(z)-{V(z)/Sv(z)}S(z)"が設定されている。
なお、この学習処理については後に詳述する。
【0029】
ただし、図1に示すように、A(z)V(z)は現在のリア用音源装置21からフロントユーザの耳までの伝達関数、A(z)P(z)は現在のリア用音源装置21からフロント用マイクロフォン16までの伝達関数、Sv(z)はフロント用キャンセル装置15からフロントユーザの耳までの伝達関数、S(z)はフロント用キャンセル装置15からフロント用マイクロフォン16までの伝達関数とする。
【0030】
また、V(z)は上述した学習処理実行時のリア用音源装置21からフロントユーザの耳までの伝達関数、P(z)は上述した学習処理実行時のリア用音源装置21からフロント用マイクロフォン16までの伝達関数とする。
ここで、リア用音源装置21からフロントユーザの耳までの伝達関数V(z)や、リア用音源装置21からフロント用マイクロフォン16までの伝達関数P(z)は、フロントシートやリアシートの移動やフロント用信号処理部12で行う信号処理の内容の変更(イコライザ設定の変更や、遅延時間の変更等)によって同様に変化し、A(z)は、この伝達関数の変化分を表す。
一方、フロント用キャンセル装置15からフロントユーザの耳までの伝達関数Sv(z)、フロント用キャンセル装置15からフロント用マイクロフォン16までの伝達関数S(z)は、フロント用スピーカ14とフロントユーザの耳の位置やフロント用マイクロフォン16との位置関係がおよそ一定であるので変化しないものとみなすことができる。
【0031】
さて、X(z)をリア用音源装置21が出力するオーディオ、FC(z)をフロント用キャンセル装置15が生成し出力するフロント用キャンセル音、H(z)を可変フィルタ151の伝達関数として、リア用音源装置21からフロント用キャンセル装置15に入力したオーディオX(z)は、可変フィルタ151と第1フィルタ154を通ってフロント用キャンセル音FC(z)として、フロント用合成部13を介してフロント用スピーカ14に出力される。
【0032】
また、リア用音源装置21からフロント用キャンセル装置15に入力したオーディオX(z)は、可変フィルタ151と第2フィルタ155とを通って減算器156に送られ、減算器156はフロント用マイクロフォン16でピックアップした音から第2フィルタ155の出力を減算し、エラーEH(z)として、適応アルゴリズム実行部152に出力する。
【0033】
次に、可変フィルタ151と適応アルゴリズム実行部152と伝達モデル153は(Filtered-X)適応フィルタを構成しており、伝達モデル153は、予め設定されている、フロント用キャンセル装置15からフロント用マイクロフォン16までの位相遅延等の伝搬特性S^(z)を、リア用音源装置21からフロント用キャンセル装置15に入力したオーディオX(z)に畳み込んで、適応アルゴリズム実行部152に入力する。
【0034】
そして、適応アルゴリズム実行部152は、伝達モデル153で伝搬特性S^(z)が畳み込まれたオーディオX(z)とエラーEH(z)とを入力として、NLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、エラーEH(z)が0となるように可変フィルタ151の伝達関数H(z)を設定する。
【0035】
ここで、フロント用マイクロフォン16でピックアップされる音は、フロント用マイクロフォン16の位置に伝達されるリア用音源装置21が音源のオーディオに、フロント用マイクロフォン16の位置に伝達されるフロント用キャンセル音を加算した
{A(z)P(z)}X(z)-{H(z)V(z)S(z)/Sv(z)}X(z)
であるので、
EH(z)=
{A(z)P(z)-H(z)V(z)S(z)/Sv(z)}X(z)-《H(z)[P(z)-{V(z)/Sv(z)}S(z)]》X(z)
となり、EH(z)が最小となるように可変フィルタ151の伝達関数H(z)を設定する適応アルゴリズムの実行により、
H(z)=A(z)
に、可変フィルタ151の伝達関数は設定される。
【0036】
そして、フロントユーザの耳の位置における、リア用音源装置21が音源のオーディオとフロント用キャンセル音との差Ev(z)は、フロントユーザの耳の位置に伝達されるリア用音源装置21が音源のオーディオに、フロントユーザの耳の位置に伝達されるフロント用キャンセル音を加算した
Ev(z)={A(z)V(z)}X(z)-{H(z)V(z)Sv(z)/Sv(z)}X(z)
となるので、
H(z)=A(z)のとき、
Ev(z)=0となる。
【0037】
したがって、以上のフロント用キャンセル装置15により、フロントユーザの耳の位置において、リア用音源装置21が音源のオーディオを、フロント用キャンセル音でキャンセルすることができる。
【0038】
また、以上のフロント用キャンセル装置15により、リア用音源装置21からフロントユーザの耳までの伝達関数が学習処理実行時のV(z)からA(z)V(z)に変化し、リア用音源装置21からフロント用マイクロフォン16までの伝達関数が学習処理実行時P(z)からA(z)P(z)に変化した場合、すなわち、リア用音源装置21からフロントユーザの耳までの伝達関数とリア用音源装置21からフロント用マイクロフォン16までの伝達関数が同様に変化した場合には、これに適応し、フロントユーザの耳の位置において、リア用音源装置21が音源のオーディオを、フロント用キャンセル音でキャンセルすることができる。
【0039】
次に、上述した、予め行う学習処理について説明する。
ここで、学習処理は、フロントシートやリアシートの位置や、リア用信号処理部22で行う信号処理の内容を所定の標準状態に設定して行う。
学習処理は、第1フィルタ154に伝達関数を設定する第1段階の学習処理と、第2フィルタ155に伝達関数を設定する第2段階の学習処理とを含む。
【0040】
第1段階の学習処理は、図4に示すように、図1のオーディオシステムのフロント用キャンセル装置15を第1学習ブロック40に置き換えた構成において行う。また、第1段階階の学習処理は、図2bに示すように、標準的にフロントユーザの耳となる位置に配置した学習用マイクロフォン400を用いて行う。ここで、学習用マイクロフォン400の標準的にフロントユーザの耳となる位置への配置は、たとえば、フロントシートに着座させたダミー人形の耳の位置に学習用マイクロフォン400を配置することにより実現する。
【0041】
第1学習ブロック40は、第2可変フィルタ41と第2適応アルゴリズム実行部42と、第2伝達モデル43を備えており、第2可変フィルタ41と第2適応アルゴリズム実行部42と第2伝達モデル43は、(Filtered-X)適応フィルタを構成している。
【0042】
いま、W(z)を第2可変フィルタ41の伝達関数として、リア用音源装置21から第1学習ブロック40に入力したオーディオX(z)は、第2可変フィルタ41を通ってフロント用キャンセル音FC(z)として、フロント用合成部13を介してフロント用スピーカ14に出力される。
【0043】
次に、第2伝達モデル43は、予め設定されているフロント用キャンセル装置15から学習用マイクロフォン400までの位相遅延等の伝搬特性Sv^(z)を、リア用音源装置21からフロント用キャンセル装置15に入力したオーディオX(z)に畳み込んで、第2適応アルゴリズム実行部42に入力する。
【0044】
また、第2適応アルゴリズム実行部42は、学習用マイクロフォン400でピックアップした音をエラーEW(z)として、第2伝達モデル43で伝搬特性Sv^(z)が畳み込まれたオーディオX(z)とエラーEW(z)とを入力として、NLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、エラーEW(z)が最小となるように第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)を設定する。
【0045】
フロントユーザの耳の位置に配置した学習用マイクロフォン400でピックアップされるエラーEW(z)は、フロントユーザの耳の位置に伝達されるリア用音源装置21が音源のオーディオに、フロントユーザの耳の位置に伝達されるフロント用キャンセル音を加算した
EW(z)={V(z)}X(z)+{W(z)Sv(z)}X(z)
となるので、EW(z)が0となるように第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)を設定する適応アルゴリズムの実行により、
W(z)=-V(z)/Sv(z)
に、第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)は設定される。
【0046】
ここで、このようにして得られた第1可変フィルタの伝達関数W(z)=-V(z)/Sv(z)は、標準的にフロントユーザの耳となる位置において、フロント用キャンセル音を生成するものとなる。
【0047】
次に、第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)が収束したならば、第1段階の学習処理を終了し、第1段階の学習処理で第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)として得られた"-V(z)/Sv(z)"を用いて第2段階の学習処理を行う。
【0048】
第2段階の学習処理は、図5に示すように、図1のオーディオシステムのフロント用キャンセル装置15を第2学習ブロック50に置き換えた構成において行う。
第2学習ブロック50は、第3可変フィルタ51と、第3適応アルゴリズム実行部52と、学習用フィルタ53と、第2減算器54を備えている。
ここで、第3可変フィルタ51と第3適応アルゴリズム実行部52は適応フィルタを構成している。
また、学習用フィルタ53には、伝達関数として、第1段階の学習処理で第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)として得られた"-V(z)/Sv(z)"を設定する。
いま、K(z)を第3可変フィルタ51の伝達関数として、リア用音源装置21から第2学習ブロック50に入力したオーディオX(z)は、学習用フィルタ53を通ってフロント用キャンセル音FC(z)として、フロント用合成部13を介してフロント用スピーカ14に出力される。
【0049】
また、オーディオX(z)は第3可変フィルタ51を通って第2減算器54に送られ、第2減算器54はフロント用マイクロフォン16でピックアップした音から第3可変フィルタ51の出力を減算し、エラーEK(z)として、第3適応アルゴリズム実行部52に出力する。
【0050】
そして、第3適応アルゴリズム実行部52は、NLMSやLMSなどの適応アルゴリズムを実行し、エラーEK(z)とオーディオX(z)とから、エラーEK(z)が0となるように第3可変フィルタ51の伝達関数K(z)を設定する。
【0051】
ここで、フロント用マイクロフォン16でピックアップされる音は、フロント用マイクロフォン16に伝達されるリア用音源装置21が音源のオーディオに、フロント用マイクロフォン16に伝達されるフロント用キャンセル音を加算した
{P(z)}X(z)-[{V(z)/Sv(z)}S(z)]X(z)
となるので、エラーEK(z)は、
EK(z)={P(z)}X(z)-[{V(z)/Sv(z)}S(z)]X(z)-{K(z)}X(z)
となり、
EK(z)が0となるように第3可変フィルタ51の伝達関数K(z)を設定する適応アルゴリズムの実行により、
K(z)=P(z)-{V(z)/Sv(z)}S(z)
に第3可変フィルタ51の伝達関数K(z)は設定される。
【0052】
次に、第3可変フィルタ51の伝達関数K(z)が収束したならば、第2段階の学習処理を終了する。
ここで、このようにして得られた第2可変フィルタ41の伝達関数K(z)=P(z)-{V(z)/Sv(z)}S(z)は、フロント用マイクロフォン16の出力から第2可変フィルタ41の出力を減算することにより、フロント用マイクロフォン16の出力を、フロントユーザの耳の位置に配置した仮想のマイクロフォンの出力に補正するものとなる。
【0053】
そして、第1段階の学習処理で第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)として得られた"-V(z)/Sv(z)"をフロント用キャンセル装置15の第1フィルタ154に設定し、第2段階の学習処理で第3可変フィルタ51の伝達関数K(z)として得られた"P(z)-{V(z)/Sv(z)}S(z)"をフロント用キャンセル装置15の第2フィルタ155に設定し学習処理を終了する。
【0054】
以上、学習処理について説明した。
ところで、フロント用キャンセル装置15には、以上の学習処理を行う機能を含めて構成するようにしてもよい。
すなわち、この場合には、図6に示すように、フロント用キャンセル装置15を、可変フィルタ151、適応アルゴリズム実行部152、伝達モデル153、減算器156、第2可変フィルタ41、第2適応アルゴリズム実行部42、第2伝達モデル43、第3可変フィルタ51、第3適応アルゴリズム実行部52より構成する。
【0055】
ここで、伝達モデル153にはフロント用キャンセル装置15からフロント用マイクロフォン16までの伝搬特性S^(z)を予め設定し、第2伝達モデル43には、フロント用キャンセル装置15から学習用マイクロフォン400までの伝搬特性Sv^(z)を予め設定する。
さて、リア用音源装置21からフロント用キャンセル装置15に入力したオーディオX(z)は、可変フィルタ151、伝達モデル153、第2伝達モデル43、第3適応アルゴリズム実行部52に入力する。
【0056】
伝達モデル153の出力は適応アルゴリズム実行部152に入力し、第2伝達モデル43の出力は第2適応アルゴリズム実行部42に入力する。
可変フィルタ151の出力は、第2可変フィルタ41に入力し、第2可変フィルタ41の出力はフロント用キャンセル音として、フロント用合成部13を介してフロント用スピーカ14に出力される。
【0057】
また、可変フィルタ151の出力は、第3可変フィルタ51に入力し、第3可変フィルタ51の出力は減算器156に入力する。減算器156は、フロント用マイクロフォン16の出力と第3可変フィルタ51の出力との差を、第3適応アルゴリズム実行部52と適応アルゴリズム実行部152に出力する。
【0058】
また、第2適応アルゴリズム実行部42は、学習用マイクロフォン400の出力を選択的に接続することができる。
ここで、このようなフロント用キャンセル装置15において、学習処理は以下のように行う。
すなわち、まず、第1段階の学習処理では、可変フィルタ151の伝達関数H(z)を信号をそのままスルーで通過する伝達関数に設定し、適応アルゴリズム実行部152の動作を停止した状態で、フロントシートのユーザの耳の位置に配置した学習用マイクロフォン400を第2適応アルゴリズム実行部42に接続し、第1適応アルゴリズム実行部に、学習用マイクロフォン400の出力をエラーEW(z)として、第2伝達モデル43で伝搬特性Sv^(z)が畳み込まれたオーディオX(z)とエラーEW(z)とから適応アルゴリズムを実行させエラーEW(z)が0となる伝達関数W(z)を第2可変フィルタ41に設定させる。
【0059】
そして、第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)が収束したならば、第2適応アルゴリズム実行部42の動作を停止させ、第2可変フィルタ41の伝達関数W(z)を固定する。
そして、次に、第2段階の学習処理では、可変フィルタ151の伝達関数H(z)を信号をそのままスルーで通過する伝達関数に設定し、適応アルゴリズム実行部152の動作と第2適応アルゴリズム実行部42の動作を停止した状態で、第3適応アルゴリズム実行部52に、減算器156の出力をエラーEK(z)として、エラーEK(z)とオーディオX(z)とから、適応アルゴリズムを実行させエラーEK(z)が0となる伝達関数K(z)を第3可変フィルタ51の伝達関数K(z)を設定させる。
【0060】
そして、第3可変フィルタ51の伝達関数K(z)が収束したならば第3適応アルゴリズム実行部52の動作を停止して、第2段階の学習処理を終了し、学習用マイクロフォン400を取り外し、第2適応アルゴリズム実行部42の動作と第3適応アルゴリズム実行部52の動作を停止したまま、適応アルゴリズム実行部152の動作を開始し、学習処理を完了する。
【0061】
次に、リア用キャンセル装置25について説明する。
リア用キャンセル装置25は、以上のフロント用キャンセル装置15の説明において、フロントとリアを交替したものとなる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上のオーディオシステムは、図7に示すように、フロント用キャンセル装置15に、リア用音源装置21の出力に代えてリア用信号処理部22の出力を入力し、フロント用キャンセル装置15においてリア用音源装置21の出力に代えてリア用信号処理部22の出力を用いて処理を行い、リア用キャンセル装置25に、フロント用音源装置11の出力に代えてフロント用信号処理部12の出力を入力し、リア用キャンセル装置25においてリア用音源装置21の出力に代えてフロント用信号処理部12の出力を用いて処理を行うように構成してもよい。
【0062】
また、以上のオーディオシステムは、当該オーディオシステムに、図8に示すように、フロント用音源装置11の出力を複数のフロント用のチャネルに分割するフロント用チャネル分割部81と、リア用音源装置21の出力を複数のリア用のチャネルに分割するリア用チャネル分割部82を設けると共に、フロント用のチャネルの各々に対してフロント用信号処理部12とフロント用合成部13とフロント用スピーカ14のセットを設け、リア用のチャネルの各々に対してリア用信号処理部22とリア用合成部23とリア用スピーカ24のセットを設けるようにしてもよい。
【0063】
なお、このように、複数のフロント用のチャネルの各々に対してフロント用信号処理部12とフロント用合成部13とフロント用スピーカ14のセットを設け、複数のリア用のチャネルの各々に対してリア用信号処理部22とリア用合成部23とリア用スピーカ24のセットを設ける場合には、図7に示したようにフロント用キャンセル装置15の入力をリア用音源装置21の出力に代えてリア用信号処理部22の出力としたり、リア用キャンセル装置25の入力をフロント用音源装置11の出力に代えてフロント用信号処理部12の出力とすると、各フロント用のチャネル毎のフロント用キャンセル装置15や各リア用のチャネル毎のリア用キャンセル装置25が必要となるので、図8に示すように、フロント用キャンセル装置15にはリア用音源装置21の出力を入力し、リア用キャンセル装置25にはフロント用音源装置11の出力を入力することが好ましい。
【0064】
また、以上の実施形態は、オーディオシステムへの適用を例にとり説明したが、本実施形態は、任意の騒音源の騒音のキャンセルに同様に適用することができる。
すなわち、たとえば、エンジンを音源とするエンジン音を騒音としてフロントユーザの耳の位置で騒音をキャンセルする場合には、別途設けたマイクロフォンでピックアップしたエンジン音を、リア用音源装置21の出力に代えてフロント用キャンセル装置に入力したり、別途設けた模擬音生成装置で生成したエンジン音を模擬した模擬音を、リア用音源装置21の出力に代えてフロント用キャンセル装置に入力するようにすればよい。
【符号の説明】
【0065】
11…フロント用音源装置、12…フロント用信号処理部、13…フロント用合成部、14…フロント用スピーカ、15…フロント用キャンセル装置、16…フロント用マイクロフォン、21…リア用音源装置、22…リア用信号処理部、23…リア用合成部、24…リア用スピーカ、25…リア用キャンセル装置、26…リア用マイクロフォン、40…第1学習ブロック、41…第2可変フィルタ、42…第2適応アルゴリズム実行部、43…第2伝達モデル、50…第2学習ブロック、51…第3可変フィルタ、52…第3適応アルゴリズム実行部、53…学習用フィルタ、54…第2減算器、81…フロント用チャネル分割部、82…リア用チャネル分割部、151…可変フィルタ、152…適応アルゴリズム実行部、153…伝達モデル、154…第1フィルタ、155…第2フィルタ、156…減算器、400…伝学習用マイクロフォン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8