(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20220606BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
G09F9/00 350Z
G02F1/1333
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2018207114
(22)【出願日】2018-11-02
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】伊谷 隆
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221276(JP,A)
【文献】特開2007-034890(JP,A)
【文献】特開2009-175701(JP,A)
【文献】特開2010-125719(JP,A)
【文献】特開2012-008305(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0074359(US,A1)
【文献】特開平10-161087(JP,A)
【文献】特開2016-164633(JP,A)
【文献】特開2012-088606(JP,A)
【文献】特開2009-229964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K35/00-37/06
G02F1/133-1/1334
1/1339-1/1341
1/1347
G09F9/00
H01L27/32
51/50
H05B33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示モジュールと、前記表示モジュールの前方に位置する透光性の表面パネルとを有する表示装置において、
前記表示モジュールは枠状筐体に保持され、前記枠状筐体は金属板で形成されて、前記
表示モジュールの側部を覆う側板部と、前記表示モジュールの前面の周囲部分を覆う前板部と、を有し、
前記枠状筐体の前記前板部が存在しない少なくとも中央領域で、前記表示モジュールと前記表面パネルとが透光性の第1接着剤で接合され、前記前板部の背面と前記表示モジュールとが第2接着剤で接合され、前記前板部の前面と前記表面パネルとが第3接着剤で接合されており、
前記表示モジュールが連続面となる前面を有し、前記第1接着剤と前記第2接着剤が、前記表示モジュールの同じ前記前面に接触し、前記第1接着剤と前記第3接着剤が、前記表面パネルの背面に接触し、
前記第1接着剤と前記第2接着剤と前記第3接着剤および前記前板部が、前記表示モジュールの前記前面と前記表面パネルの前記背面との間に挟まれており、
前記表示モジュールに対する剥離強度は、前記第2接着剤が前記第1接着剤よりも高く、前記表面パネルに対する剥離強度は、前記第3接着剤が前記第1接着剤よりも高いことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1接着剤と前記第2接着剤は、同系の接着剤が使用される請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記表面パネルは、熱膨張係数が相違する少なくとも2種の板材が接合されて構成されている
請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表面パネルは、ガラス板と、前記ガラス板の前面に接合された透光性の合成樹脂板、とを有する
請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示モジュールの側部と前記枠状筐体の前記側板部とが凹凸嵌合されて、前記表示モジュールが前記枠状筐体に保持されている
請求項1ないし4のいずれかに記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示モジュールの前方に表面パネルが接合された構造で、例えば車載用として使用される表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、表示装置に関する発明が記載されている。
この表示装置は、LCDパネルと、LCDパネルを収納するケースとしての機能を有するバックライトユニットと、バックライトユニットに組み付けられたベゼルとを有している。ベゼルは、前方に向く開口部を有し、開口部の周囲部分がLCDパネルの前方を覆っている。LCDパネルの前方に前面パネルが配置されており、LCDパネルの前面ならびにベゼルの前面と、前面パネルとが、OCR(透明光学弾性樹脂)によって全面貼合されている。
【0003】
ベゼルの開口端の内側に、ダム樹脂が介在している。さらに、樹脂ダムよりも外周側において、LCDパネルの前面とベゼルとの間に樹脂流動抑制部材が設けられている。ダム樹脂と樹脂流動抑制部材を設けることで、製造工程において未硬化状態のOCRがLCDパネル内に入り込むのを防止し、さらに、樹脂流動抑制部材を設けることで、未硬化状態の樹脂ダムが、LCDパネル内に流れ込むのを防止できるようにしている。
【0004】
特許文献1の段落[0046]に記載されているように、樹脂流動抑制部材はベゼルの裏面に接着剤を介して配置されている。また、段落[0049]に記載されているように、樹脂流動抑制部材は、ウレタンスポンジやPVAスポンジなどの立体網目構造からなるブロック体、または不織布や脂取りフィルムで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された表示装置では、樹脂流動抑制部材が、ベゼルの裏面に接着剤を介して貼り付けられてはいるが、LCDパネルの前面には接着されておらず、LCDパネルの前方でベゼルが自由に変形できる状態となっている。そのため、使用環境の温度変化などで、前面パネルに反りが発生すると、この前面パネルとOCRを介して接合されているベゼルが、前記反りに追従して前方に向けて変形しやすくなっており、前面パネルとLCDパネルとの間に位置しているOCRが剥離方向に破壊される現象が生じやすくなる。この現象が生じると、表示画面の周囲部分で、LCDパネルと前面パネルとの間に空気層が形成されて、表示画面の外観を劣化させることになる。
【0007】
また、樹脂流動抑制部材は、ウレタンスポンジやPVAスポンジなどのような流動状態の樹脂を含浸しやすい材料で形成され、さらに樹脂流動抑制部材がLCDパネルに接着されていない。そのため、樹脂の流動を抑制する効果が十分ではなく、製造工程において未硬化状態のOCRや未硬化状態の樹脂ダムがLCDパネル内に流入するのを抑制する効果を十分に発揮できるものではない。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、表面パネルに反りを生じさせる応力が発生したとしても、枠状筐体(ベゼル)が前方へ変形するのを規制して、表面パネルが表示モジュールから剥がれるのを防止することができ、さらに、未硬化の接着剤(OCR)が表示モジュールに入り込むのを防止する効果を高めることができる表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表示モジュールと、前記表示モジュールの前方に位置する透光性の表面パネルとを有する表示装置において、
前記表示モジュールは枠状筐体に保持され、前記枠状筐体は金属板で形成されて、前記表示モジュールの側部を覆う側板部と、前記表示モジュールの前面の周囲部分を覆う前板部と、を有し、
前記枠状筐体の前記前板部が存在しない少なくとも中央領域で、前記表示モジュールと前記表面パネルとが透光性の第1接着剤で接合され、前記前板部の背面と前記表示モジュールとが第2接着剤で接合され、前記前板部の前面と前記表面パネルとが第3接着剤で接合されており、
前記表示モジュールが連続面となる前面を有し、前記第1接着剤と前記第2接着剤が、前記表示モジュールの同じ前記前面に接触し、前記第1接着剤と前記第3接着剤が、前記表面パネルの背面に接触し、
前記第1接着剤と前記第2接着剤と前記第3接着剤および前記前板部が、前記表示モジュールの前記前面と前記表面パネルの前記背面との間に挟まれており、
前記表示モジュールに対する剥離強度は、前記第2接着剤が前記第1接着剤よりも高く、前記表面パネルに対する剥離強度は、前記第3接着剤が前記第1接着剤よりも高いことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の表示装置は、前記第1接着剤と前記第2接着剤として、同系の接着剤が使用されることが好ましい。
【0012】
本発明の表示装置は、前記表面パネルが、熱膨張係数が相違する少なくとも2種の板材が接合されて構成されているものとして構成できる。
【0013】
例えば、前記表面パネルは、ガラス板と、前記ガラス板の前面に接合された透光性の合成樹脂板、とを有する。
【0014】
本発明の表示装置は、例えば、前記表示モジュールの側部と前記枠状筐体の前記側板部とが凹凸嵌合されて、前記表示モジュールが前記枠状筐体に保持されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表示装置は、枠状筐体の前板と表示モジュールの前面とが第2接着剤で接合されており、第2接着剤の剥離強度が、表示モジュールと表面パネルとを接合している透光性の第1接着剤の剥離強度よりも高くなっている。枠状筐体の前板部が第2接着剤を介して表面パネルに強固に固定されているため、表面パネルに反りを生じさせる応力が発生しても、前板部が前方に向けて変形しにくくなり、表面パネルの反りの発生と枠状筐体の変形を抑制することができる。そのため、表示モジュールの前面と表面パネルとの間の第1接着剤に剥離力による破壊が生じにくくなり、表示モジュールと表面パネルとの間に空気層が介在する課題が生じにくくなる。
【0016】
本発明の表示装置では、表面パネルが、熱膨張係数が相違する少なくとも2種の板材が接合されたものであって、温度変化により反りが発生しやすいものであっても、表面パネルの反りの発生を効果的に抑制できる。そのため、表面パネルを、ガラス板と透光性の合成樹脂板とが接合された構造にし、表面パネルの強度を高めることが可能である。
【0017】
また、枠状筐体の前板部と表示モジュールとの隙間が第2接着剤で確実に塞がれているため、製造工程において、硬化前の第1接着剤が、表示モジュール内に流れ込みにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の表示装置を示す分解斜視図、
【
図2】本発明の実施形態の表示装置を、組み立てられている状態で、
図1のA-A線で切断した断面図、
【
図3】(A)は、
図2に示す断面図の左側部分を拡大して示す部分拡大断面図、(B)は、本発明の実施形態の表示装置を、組み立てられている状態で、
図1のB-B線で切断した部分拡大断面図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に本発明の実施形態の表示装置1の分解斜視図が示され、
図2に
図1の表示装置1をA-A線で切断した断面図が示されている。
図3(A)(B)には表示装置1の部分拡大断面図が示されている。表示装置1は車載用である。
図1と
図2に示すように、表示装置1は、表示モジュール2と、表示モジュール2を保持する枠状筐体3、および表示モジュール2の前方を覆う表面パネル4を有している。
【0020】
図3(B)に示すように、表示モジュール2は、合成樹脂材料などで形成されたモジュールケース21を有しており、モジュールケース21に表示セル22とその背部側に対向するバックライトユニット23とが保持されている。表示セル22は、透過型のカラー液晶表示セルである。バックライトユニット23は、LEDなどの光源と、光源からの光を表示セル22の背部に導く導光体などで構成されている。バックライトユニット23から発せられる照明光により表示セル22の表示画像が前方に向けて照らされる。なお、表示モジュール2は、エレクトロルミネッセンス表示セルを有するものであってもよい。
【0021】
枠状筐体3は板金加工で成形されたものであり、厚さが0.1~0.5mm程度のステンレス鋼板で形成されている。実施形態では厚さが0.3mmである。なお、枠状筐体3は、ステンレス鋼板の他に、圧延鋼板などの各種金属板、あるいは合成樹脂材料で形成することが可能である。
図1に示すように、表示モジュール2および枠状筐体3は平面でみたときに四角形であり、実施形態では長方形である。
図2と
図3(A)(B)に示すように、枠状筐体3は、表示モジュール2の4つの側部2aを覆う側板部31と、表示モジュール2の前面2bの周囲部分を枠状に覆う前板部32とを有している。側板部31と前板部32はほぼ直角に曲げられている。前板部32は、四角形の開口窓を形成する開口端33を有している。開口端33で囲まれる開口窓が、表示モジュール2の表示画面とほぼ一致している。実施形態では、枠形状の前板部32が、表示モジュール2の前面2bの縁部に沿って、四角形で連続して形成されているが、前板部32のいずれかの箇所に切欠きや穴などの欠損部が形成されていてもよい。
【0022】
図3(B)に示すように、表示モジュール2の側部2aに、モジュールケース21から一体に突出する掛止突部21aが一体に形成され、枠状筐体3の側板部31に掛止穴31aが形成されており、掛止突部21aと掛止穴31aとが凹凸嵌合されている。
図1に示すように、掛止突部21aと掛止穴31aの凹凸嵌合部は、表示モジュール2および枠状筐体3の4辺のそれぞれに2か所ずつ設けられている。この合計8か所の凹凸嵌合部によって、表示モジュール2が枠状筐体3に保持されている。表示モジュール2と枠状筐体3が凹凸嵌合で固定されているため、表示装置1の組立が容易である。
【0023】
表示モジュール2および枠状筐体3の前方に表面パネル4が設けられている。表面パネル4は、熱膨張係数が相違する少なくとも2つの透光性の板材料が重ねられて構成されている。実施形態の表示装置1では、前方にポリカーボネート樹脂などの透光性の合成樹脂板41が、背部側にガラス板42が重ねられている。合成樹脂板41とガラス板42は、OCR(光学接着剤)またはOCA(光学粘着シート)によって接合(貼合)されている。ガラス板42の形状と寸法は、枠状筐体3の前板部32の形状および寸法に一致している。合成樹脂板41はガラス板42も大きく、合成樹脂板41のそれぞれの縁部は、ガラス板42の4辺のそれぞれから突出する大きさである。
【0024】
図3(A)(B)に示すように、合成樹脂板41の背面41aに加飾層(遮光層)43が形成されている。加飾層43は、黒色などの濃色の印刷層であり、枠状筐体3の前板部32を覆うように枠形状に形成されている。
図3(A)に示すように、表面パネル4は、加飾層43が形成されている領域が非透光領域12であり、加飾層43を有していない中央領域が透光領域11である。透光領域11は、枠状筐体3の開口端33よりもやや内側に位置し、表示モジュール2で生成される表示画像を映し出せるように配置されている。
【0025】
図3(A)(B)に示すように、枠状筐体3の前板部32が存在しない開口窓(中央領域)を少なくとも含む範囲で、表示モジュール2の前面2bと、ガラス板42の背面42aとが透光性の第1接着剤5を介して接合(貼合)されている。第1接着剤5は、透過視認性が良好な光学接着剤(OCR)であり、シリコーン系接着剤またはアクリル系接着剤などである。第1接着剤5は2液混合硬化型、または紫外線硬化型などが使用される。また、第1接着剤5の光学接着剤(OCR)として、シリコーン系やアクリル系などの粘着剤を使用することもできる。
【0026】
図3(A)(B)に示すように、枠状筐体3の前板部32の背面32aと表示モジュール2の前面2bとが第2接着剤6によって接合(貼合)されている。第2接着剤6は、シリコーン系やアクリル系などであり、自然硬化型あるいは熱硬化型または紫外線硬化型などが使用可能である。表示モジュール2の前面2bに対する硬化後の第2接着剤6の剥離強度は、前面2bに対する硬化後の第1接着剤5の剥離強度よりも高い。例えば、第1接着剤5の剥離強度が約0.1N/mm
2のときに、第2接着剤6の剥離強度は0.4~1.0N/mm
2程度であり、第2接着剤6の剥離強度は第1接着剤5の剥離強度の4倍以上が好ましい。実施形態の表示装置1では、第2接着剤6の剥離強度が約0.6N/mm
2である。
【0027】
図3(A)(B)に示すように、枠状筐体3の前板部32の前面32bと、ガラス板42の背面42aとが、第3接着剤7で接合(貼合)されている。第3接着剤7は、シリコーン系やアクリル系などであり、自然硬化型あるいは熱硬化型または紫外線硬化型などが使用可能である。ガラス板42に対する第3接着剤7の剥離強度は、ガラス板42に対する第1接着剤5の剥離強度よりも高く設定される。なお、第3接着剤7は第2接着剤6と同じものを使用することが好ましい。枠状筐体3の前板部32の前面32bと、ガラス板42の背面42aとの隙間内では、第3接着剤7よりも内側(中心側)に、防漏材8が介在している。防漏材8はシリコーン系ゴムなどの各種エラストマー材料で形成された弾性部材である。防漏材8は、ガラス板42の背面42aに接着剤で固定されている。第3接着剤7によって前板部32にガラス板42が接着された状態で、防漏材8は前後方向に圧縮された状態で、前板部32の前面32bと、ガラス板42の背面42aとの隙間内に挟まれている。
【0028】
図3(A)(B)に示すように、この表示装置1では、第1接着剤5よりも剥離強度の高い第2接着剤6によって、表示モジュール2の前面2bに、枠状筐体3の前板部32が強固に固定されており、同じく、第1接着剤5よりも剥離強度の高い第3接着剤7によって、前板部32の前面32bに、表面パネル4のガラス板42が強固に固定されている。枠状筐体3は厚さが0.1~0.5mm程度の薄いステンレス鋼板で形成されて、表示装置1の全体の薄型化と軽量化に寄与しているが、枠状筐体3の前板部32が、ガラス板42と強固に固定されているため、ガラス板42によって、薄い金属板で形成されている枠状筐体3の強度が補強されている。これにより、表示装置1の全体の平面強度が高くなって、表示モジュール2が車体などに固定される際にねじ止めなどによる外力を受けても、表示装置1が歪みにくく、表示セル22の歪みを防止でき、表示品質を高く維持することができる。
【0029】
この表示装置1は、自動車の車室内に設置されて使用されるため、使用環境の温度変化が激しく、表面パネル4に熱応力が発生しやすい。特に、表面パネル4が、熱膨張係数の相違する2つの板材が接合されているものであると、使用環境温度の変化に起因する熱応力が大きくなる。実施形態の表示装置1の表面パネル4は、前面側の合成樹脂板41と背面側のガラス板42とが接合された構造である。そのため、温度変化により発生する熱応力が大きく、低温になると、表面パネル4に、その縁部が前方へ向かう反りを発生させる曲げ応力が作用する。しかし、ガラス板42の縁部が、第3接着剤7によって、枠状筐体3の前板部32に強固に接着され、さらに第2接着剤6によって、前板部32が表示モジュール2の前面2bに強固に接着されているため、表面パネル4の熱応力が大きくなっても、枠状筐体3の形状を維持でき、表面パネル4の変形を防止できる。そのため、表示モジュール2の前面2bと、表面パネル4の背面42aとの距離を一定に保つことができる。
【0030】
図4に比較例の表示装置101が示されている。
比較例の表示装置101は、表示モジュール2と枠状筐体3の構造および寸法が
図3(A)(B)に示す表示装置1と同じであり、表面パネル4の構造と寸法も
図3(A)(B)に示す表示装置1と同じである。
図4に示す表示装置101は、表示モジュール2の前面2bとガラス板42とが第1接着剤5で接合され、枠状筐体3の前板部32の前面とガラス板42とが第3接着剤7で接合されている。ただし、表示モジュール2の前面2bと前板部32との間に第2接着剤6が設けられていない点で、実施形態の表示装置1と相違している。
【0031】
図4に示す比較例の表示装置101が、低温の環境下に置かれると、表面パネル4に、その縁部が前方に向く反りB1を生じさせようとする応力が発生し、この応力が第3接着剤7を介して枠状筐体3の前板部32に伝達される。前板部32は表示モジュール2の前面2bに固定されていないため、図において反時計方向の反りB2を発生する。この反りB2が発生すると、領域Pにおいて第1接着剤5が表示モジュール2の前面2bから剥離するように破損し、領域Pに空気層が形成されて、前方から見たときに、透光領域11の外観が劣化し、表示品質が低下することになる。
【0032】
これに対し、
図3(A)(B)に示す実施形態の表示装置1では、第1接着剤5よりも剥離強度の高い第2接着剤6によって、枠状筐体3の前板部32が表示モジュール2の前面2bに強固に固定されている。そのため、低温環境に置かれて、表面パネル4に
図4に示す反りB1を発生させようとする大きな応力が作用しても、強固に固定されている前板部32に大きな反りB2が発生することがなく、その結果として表面パネル4に大きな反りB1が発生しない。よって、実施形態の表示装置1では、
図4に示す領域Pにおいて、第1接着剤5が表示モジュール2の前面2bから剥離する現象が生じにくくなる。
【0033】
実施形態の表示装置1と比較例の表示装置101において温度環境試験を行った。
表示装置1および表示装置101は、枠状筐体3を板厚が0.3mmのステンレス鋼板で形成した。表示モジュール2の前面2bに対する剥離強度は、第1接着剤5が約0.1N/mm
2で、第2接着剤が約0.6N/mm
2であった。実施形態の表示装置1と比較例の表示装置101を-40℃の環境に置いたところ、比較例の表示装置101では、表面パネル4の反りB1による変位量が0.2mm以上となったが、実施形態の表示装置1では、表面パネル4の反りB1による変位量が、最大でも0.1mm未満であった。比較例の表示装置101では、-40℃の環境下に72時間程度置くと、
図4に示す領域Pに剥離が発生したが、実施形態の表示装置1では剥離が発生しなかった。また実施形態の表示装置1に対し、環境温度を-40℃とプラス85℃とに交互に変化させるヒートショック試験を500時間行ったが、領域Pでの剥離は発生しなかった。
【0034】
図3(A)(B)に示す本発明の実施形態の表示装置1では、第2接着剤6が、表示モジュール2の前面2bと、前板部32の背面32aの双方に固着されているため、表示モジュール2の前面2bと前板部32の背面32aとの隙間が完全に塞がれる。そのため、製造工程において硬化前の第1接着剤5が前記隙間から表示モジュール2の内部に浸入するのを防止する効果を高めることができる。さらに、第1接着剤5と第2接着剤6を同系の接着剤とすると、第1接着剤5と第2接着剤6との接触部に不要な化学反応が発生するのを防止することができる。例えば、第1接着剤5と第2接着剤6は、同じシリコーン系が使用され、または同じアクリル系が使用される。また、防漏材8もシリコーン系であるため、第1接着剤5と接触し続けても劣化が生じにくい。
【符号の説明】
【0035】
1 表示装置
2 表示モジュール
3 枠状筐体
4 表面パネル
5 第1接着剤
6 第2接着剤
7 第3接着剤
8 防漏材
21 モジュールケース
21a 掛止突部
22 表示セル
23 バックライトユニット
31 側板部
31a 掛止穴
32 前板部
41 合成樹脂板
42 ガラス板