(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】セメントキルン用燃料の製造方法及び製造プラント
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20220606BHJP
C04B 7/38 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
B09B3/40
C04B7/38
(21)【出願番号】P 2020125214
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591119624
【氏名又は名称】株式会社御池鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀匡
(72)【発明者】
【氏名】小林 由和
(72)【発明者】
【氏名】栗原 友良
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-194860(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0020572(KR,A)
【文献】特開2016-056409(JP,A)
【文献】特開2003-246994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/40
C04B 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の素材が混合された廃棄物である混合廃棄物を粗破砕する粗破砕工程と、
上記粗破砕工程で粗破砕された被処理物を、揺動選別機により軽量物と細粒物と重量物とに選別する揺動選別工程と、
上記揺動選別工程で選別された重量物を粉砕する重量物粉砕工程と、
上記重量物粉砕工程で粉砕された粉砕物と、上記揺動選別工程で選別された細粒物とが合流する合流工程と、
上記合流工程で合流した粉砕物と細粒物を、比重と寸法に応じて軽量物と細粒物と重量物に選別する比重差選別工程と、
上記比重差選別工程で選別された軽量物を、篩体で通過物と残留物に篩い分ける篩工程と、
上記篩工程で篩体上に残留した残留物を、第1燃料として収集する第1燃料収集工程と、
上記篩工程で篩体を通過した通過物を、セメントの材料として収集する材料収集工程と
を備えることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセメントキルン用燃料の製造方法において、
上記揺動選別工程の揺動選別機が、複数の透孔を有すると共に長手方向の両側に鋸状の係止歯が設けられた複数の短冊状篩体を水平面に対して傾斜させた姿勢で上下前後に揺動駆動すると共に、上記短冊状篩体の上側に後方から前方に向かって空気流を形成し、上記複数の短冊状篩体上に投入された被処理物を、上記短冊状篩体に対して長手方向の下端から落下する重量物と、上記係止歯又は空気流により傾斜方向の上側に送られて短冊状篩体の長手方向の上端から落下する軽量物と、上記短冊状篩体を通過する細粒物とに選別するように構成されていることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のセメントキルン用燃料の製造方法において、
上記揺動選別工程と重量物粉砕工程との間に、上記重量物から金属を取り除く金属除去工程を有することを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のセメントキルン用燃料の製造方法において、
上記篩工程の篩体は、可撓性を有して波状に振動するように形成されていることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のセメントキルン用燃料の製造方法において、
上記揺動選別工程で選別された軽量物を破砕する軽量物破砕工程と、
上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物を、風力選別機により軽量物と重量物に選別する風力選別工程と、
上記風力選別工程で選別された軽量物を第2燃料として収集する第2燃料収集工程と
を備えることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のセメントキルン用燃料の製造方法において、
上記揺動選別工程で選別された軽量物を破砕する軽量物破砕工程と、
上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物を、風力選別機により軽量物と重量物に選別する風力選別工程と、
上記風力選別工程で選別された軽量物を、光学式選別機により塩素含有物と塩素不含有物とに選別する光学選別工程と、
上記光学選別工程で選別された塩素不含有物を第3燃料として収集する第3燃料収集工程と
を備えることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のセメントキルン用燃料の製造方法において、
上記揺動選別工程で選別された軽量物を破砕する軽量物破砕工程と、
上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物を、少なくとも第1の被処理物と第2の被処理物に振り分ける振分工程と、
上記振分工程で振り分けられた第1の被処理物を、風力選別機により軽量物と重量物に選別する第1風力選別工程と、
上記第1風力選別工程で選別された軽量物を第2燃料として収集する第2燃料収集工程と、
上記振分工程で振り分けられた第2の被処理物を、風力選別機により軽量物と重量物に選別する第2風力選別工程と、
上記第2風力選別工程で選別された軽量物を、光学式選別機により塩素含有物と塩素不含有物とに選別する光学選別工程と、
上記光学選別工程で選別された塩素不含有物を第3燃料として収集する第3燃料収集工程と
を備えることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のセメントキルン用燃料の製造方法において、
上記光学選別工程で選別された塩素含有物を第4燃料として収集する第4燃料収集工程を備えることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項9】
請求項5乃至7のいずれかに記載のセメントキルン用燃料の製造方法において、
上記風力選別工程の風力選別機が、縦型のジグザグ状の管路の下部に被処理物を投入すると共に上記管路の下端に搬送空気を供給し、上記管路内を上方に向かう搬送空気の流れによって上記被処理物を搬送する途中にジグザグ状の内壁に衝突させて重量物と軽量物に分離し、上記重量物は上記管路の下端から排出する一方、上記軽量物は上記管路の上端から排出してサイクロンセパレータに導くように構成されていることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【請求項10】
2種類以上の素材が混合された廃棄物である混合廃棄物を粗破砕する粗破砕機と、
上記粗破砕機で粗破砕された被処理物を、軽量物と細粒物と重量物とに選別する揺動選別機と、
上記揺動選別機で選別された重量物を粉砕する重量物粉砕機と、
上記重量物粉砕機で粉砕された粉砕物と、上記揺動選別機で選別された細粒物とを、比重と寸法に応じて軽量物と細粒物と重量物に選別する比重差選別機と、
上記比重差選別機で選別された軽量物を、篩体で通過物と
第1燃料としての残留物に篩い分ける篩機と、
上記揺動選別機で選別された軽量物を破砕する軽量物破砕機と、
上記軽量物破砕機で破砕された被処理物を、
第2燃料としての軽量物と重量物に選別する風力選別機と
を備えることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造プラント。
【請求項11】
請求項
10に記載のセメントキルン用燃料の製造プラントにおいて、
上記風力選別機で選別された軽量物を、塩素含有物と塩素不含有物とに選別する光学式選別機を備えることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を材料とするセメントキルン用燃料の製造方法と、その製造プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポルトランドセメントの製造工程では、材料を焼成してクリンカを得る焼成工程において、廃プラスチックを燃料に用いている。焼成工程は、多くの場合、材料を予熱装置により数百℃で予熱した後、ロータリーキルンにより約1500℃で焼成している。このロータリーキルンの窯前から、粉砕した廃プラスチックを、主燃料である微粉炭に混合してロータリーキルン内に供給して燃焼させている(例えば、特許文献1参照)。廃プラスチックをロータリーキルンの窯前に投入することにより、主燃料の微粉炭の使用量を削減すると共に、廃棄物の有効利用を行っている。
【0003】
また、ポルトランドセメントの製造工程では、廃棄物の有効利用の一環として、廃タイヤを予熱装置に投入し、ゴムを燃焼させて燃料に使用すると共に、スチールワイヤをクリンカの材料として使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポルトランドセメントの製造工程で利用される廃プラスチックや廃タイヤは、素材毎に分別されて収集されたものが用いられている。このように分別収集された廃プラスチックや廃タイヤは、種々の用途の燃料や材料として、90%を超えるリサイクル率が達成されている。
【0006】
一方、例えば建設現場等で発生する混合廃棄物は、がれきや木材やプラスチックや金属等の多くの物質で構成されると共に、土砂等の汚れを伴うので再利用がされ難く、多くが埋め立てによる最終処分が行われている。素材毎に分別収集された廃棄物の大部分が有効利用されている状況において、混合廃棄物の有効利用が求められている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、混合廃棄物を用いたセメントキルン用燃料の製造を可能とするセメントキルン用燃料の製造方法及び製造プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のセメントキルン用燃料の製造方法は、混合廃棄物を粗破砕する粗破砕工程と、
上記粗破砕工程で粗破砕された被処理物を、揺動選別機により軽量物と細粒物と重量物とに選別する揺動選別工程と、
上記揺動選別工程で選別された重量物を粉砕する重量物粉砕工程と、
上記重量物粉砕工程で粉砕された粉砕物と、上記揺動選別工程で選別された細粒物とが合流する合流工程と、
上記合流工程で合流した粉砕物と細粒物を、比重と寸法に応じて軽量物と細粒物と重量物に選別する比重差選別工程と、
上記比重差選別工程で選別された軽量物を、篩体で通過物と残留物に篩い分ける篩工程と、
上記篩工程で篩体上に残留した残留物を、第1燃料として収集する第1燃料収集工程と、
上記篩工程で篩体を通過した通過物を、セメントの材料として収集する材料収集工程と
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、粗破砕工程で混合廃棄物が粗破砕され、上記粗破砕工程で粗破砕された被処理物が、揺動選別工程で揺動選別機により軽量物と細粒物と重量物とに選別される。上記揺動選別工程で選別された重量物が重量物粉砕工程で粉砕され、上記重量物粉砕工程で粉砕された粉砕物と、上記揺動選別工程で選別された細粒物とが、合流工程で合流する。上記合流工程で合流した粉砕物と細粒物が、比重差選別工程で比重と寸法に応じて軽量物と細粒物と重量物に選別される。上記比重差選別工程で選別された軽量物が、篩工程で、篩体上に残留する残留物と篩体を通過する通過物とに篩い分けられる。上記篩工程で篩い分けられた残留物が、第1燃料収集工程で第1燃料として収集される。この篩工程の残留物は、木や紙等の可燃物が主体であるため、燃料としてセメントキルンの窯前に投入することができる。また、上記篩工程で篩体を通過した通過物が、材料収集工程でセメントの材料として収集される。この篩工程の通過物は、砂やガラス粒が主体であるため、セメントの材料としてセメントキルンの窯尻に投入することができる。このように、従来は埋め立て処分が行われていた混合廃棄物に対して、粗破砕工程と、揺動選別工程と、重量物粉砕工程と、合流工程と、比重差選別工程と、篩工程と、第1燃料収集工程と、材料収集工程とを行うことにより、セメントキルン用の第1燃料と、セメントの材料を製造することができる。ここで、混合廃棄物とは、2種類以上の素材が混合された廃棄物であり、例えば、建設現場から排出された建設系混合廃棄物が該当する。
【0010】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法は、上記揺動選別工程の揺動選別機が、複数の透孔を有すると共に長手方向の両側に鋸状の係止歯が設けられた複数の短冊状篩体を水平面に対して傾斜させた姿勢で上下前後に揺動駆動すると共に、上記短冊状篩体の上側に後方から前方に向かって空気流を形成し、上記複数の短冊状篩体上に投入された被処理物を、上記短冊状篩体に対して長手方向の下端から落下する重量物と、上記係止歯又は空気流により傾斜方向の上側に送られて短冊状篩体の長手方向の上端から落下する軽量物と、上記短冊状篩体を通過する細粒物とに選別するように構成されている。
【0011】
上記実施形態によれば、揺動選別工程の揺動選別機が、複数の透孔を有すると共に長手方向の両側に鋸状の係止歯が設けられた複数の短冊状篩体を水平面に対して傾斜させた姿勢で上下前後に揺動駆動すると共に、上記短冊状篩体の上側に後方から前方に向かって空気流を形成するように形成されている。この揺動選別機の複数の短冊状篩体上に投入された被処理物は、上記短冊状篩体に対して長手方向の下端から落下する重量物と、上記係止歯又は空気流により傾斜方向の上側に送られて短冊状篩体の長手方向の上端から落下する軽量物と、上記短冊状篩体を通過する細粒物とに効果的に選別される。
【0012】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法は、上記揺動選別工程と重量物粉砕工程との間に、上記重量物から金属を取り除く金属除去工程を有する。
【0013】
上記実施形態によれば、揺動選別工程で選別された重量物が、金属除去工程で金属が取り除かれた後に、重量物粉砕工程で粉砕される。したがって、セメントキルンの第1燃料やセメントの材料に、金属が混入する不都合を防止できる。
【0014】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法は、上記篩工程の篩体は、可撓性を有して波状に振動するように形成されている。
【0015】
上記実施形態によれば、篩工程で、可撓性を有して波状に振動するように形成された篩体を用いることにより、篩体の目詰まりを抑制しながら被処理物を効果的に篩い分けることができる。その結果、第1燃料収集工程で収集される第1燃料と、材料収集工程で収集されるセメントの材料を、効果的に篩い分けることができる。
【0016】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法は、上記揺動選別工程で選別された軽量物を破砕する軽量物破砕工程と、
上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物を、風力選別機により軽量物と重量物に選別する風力選別工程と、
上記風力選別工程で選別された軽量物を第2燃料として収集する第2燃料収集工程と
を備える。
【0017】
上記実施形態によれば、揺動選別工程で選別された軽量物が、軽量物破砕工程で破砕される。上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物が、風力選別工程で風力選別機により軽量物と重量物に選別される。上記風力選別工程で選別された軽量物が、第2燃料収集工程で第2燃料として収集される。こうして第2燃料収集工程で収集された第2燃料は、プラスチック等の可燃物が主体であるため、塩素を含有しない場合はセメントキルンの窯前に投入することができ、塩素を含有する場合はセメントキルンの窯尻に投入することができる。
【0018】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法は、上記揺動選別工程で選別された軽量物を破砕する軽量物破砕工程と、
上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物を、風力選別機により軽量物と重量物に選別する風力選別工程と、
上記風力選別工程で選別された軽量物を、光学式選別機により塩素含有物と塩素不含有物とに選別する光学選別工程と、
上記光学選別工程で選別された塩素不含有物を第3燃料として収集する第3燃料収集工程と
を備える。
【0019】
上記実施形態によれば、揺動選別工程で選別された軽量物が、軽量物破砕工程で破砕される。上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物が、風力選別工程で風力選別機により軽量物と重量物に選別される。上記風力選別工程で選別された軽量物が、光学選別工程で光学式選別機により塩素含有物と塩素不含有物とに選別される。上記光学選別工程で選別された塩素不含有物が、第3燃料収集工程で第3燃料として収集される。こうして第3燃料収集工程で収集された第3燃料は、プラスチック等の可燃物が主体であると共に、塩素を含有しないので、セメントキルンの窯前に投入することができると共に、セメントキルンで焼成する材料への塩素の混入を防止できる。
【0020】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法は、上記揺動選別工程で選別された軽量物を破砕する軽量物破砕工程と、
上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物を、少なくとも第1の被処理物と第2の被処理物に振り分ける振分工程と、
上記振分工程で振り分けられた第1の被処理物を、風力選別機により軽量物と重量物に選別する第1風力選別工程と、
上記第1風力選別工程で選別された軽量物を第2燃料として収集する第2燃料収集工程と、
上記振分工程で振り分けられた第2の被処理物を、風力選別機により軽量物と重量物に選別する第2風力選別工程と、
上記第2風力選別工程で選別された軽量物を、光学式選別機により塩素含有物と塩素不含有物とに選別する光学選別工程と、
上記光学選別工程で選別された塩素不含有物を第3燃料として収集する第3燃料収集工程と
を備える。
【0021】
上記実施形態によれば、揺動選別工程で選別された軽量物が、軽量物破砕工程で破砕される。上記軽量物破砕工程で破砕された被処理物が、振分工程で少なくとも第1の被処理物と第2の被処理物に振り分けられる。上記振分工程で振り分けられた第1の被処理物が、第1風力選別工程で風力選別機により軽量物と重量物に選別される。上記第1風力選別工程で選別された軽量物が、第2燃料収集工程で第2燃料として収集される。上記振分工程で振り分けられた第2の被処理物が、第2風力選別工程で風力選別機により軽量物と重量物に選別される。上記第2風力選別工程で選別された軽量物が、光学選別工程で光学式選別機により塩素含有物と塩素不含有物とに選別される。上記光学選別工程で選別された塩素不含有物が、第3燃料収集工程で第3燃料として収集される。上記振分工程で第1の被処理物と第2の被処理物に振り分ける量を調節することにより、第1の被処理物に由来する第2燃料の収集量と、第2の被処理物に由来する第3燃料の収集量とを調節できる。したがって、揺動選別工程で選別された軽量物における塩素含有物の量や、塩素不含有物の需要等に対応して、第2燃料と第3燃料の製造量を適宜調節することができる。ここで、第2燃料は、揺動選別工程で選別された軽量物中に塩素含有物が実質的に存在しない場合は、セメントキルンの窯前に投入することができる。一方、揺動選別工程で選別された軽量物における塩素含有物が基準量を超える場合は、セメントキルンの窯尻に投入することができる。また、第3燃料は、塩素を含有しないので、揺動選別工程で選別された軽量物における塩素含有物の量にかかわらず、セメントキルンの窯前に投入することができる。
【0022】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法は、上記光学選別工程で選別された塩素含有物を第4燃料として収集する第4燃料収集工程を備えることを特徴とするセメントキルン用燃料の製造方法。
【0023】
上記実施形態によれば、光学選別工程で選別された塩素含有物が、第4燃料収集工程で第4燃料として収集される。この第4燃料は、セメントキルンの窯尻に投入することができる。
【0024】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法は、上記風力選別工程の風力選別機が、縦型のジグザグ状の管路の下部に被処理物を投入すると共に上記管路の下端に搬送空気を供給し、上記管路内を上方に向かう搬送空気の流れによって上記被処理物を搬送する途中にジグザグ状の内壁に衝突させて重量物と軽量物に分離し、上記重量物は上記管路の下端から排出する一方、上記軽量物は上記管路の上端から排出してサイクロンセパレータに導くように構成されている。
【0025】
上記実施形態によれば、風力選別工程の風力選別機が、縦型のジグザグ状の管路の下部に被処理物を投入すると共に上記管路の下端に搬送空気を供給するように形成されている。この風力選別機の管路の下部に投入された被処理物は、上記管路内を上方に向かう搬送空気の流れによって搬送される途中にジグザグ状の内壁に衝突して重量物と軽量物に分離する。上記重量物は上記管路の下端から排出される一方、上記軽量物は上記管路の上端から排出されてサイクロンセパレータに導かれる。管路の上端から排出されてサイクロンセパレータに導かれた軽量物は、搬送空気から分離されてサイクロンセパレータの下端から排出される。これにより、主にシート状のプラスチックで形成された軽量物が、異物等の重量物や付着物と効果的に分離され、良質の燃料として使用することが可能になる。
【0026】
本発明のセメントキルン用燃料の製造プラントは、混合廃棄物を粗破砕する粗破砕機と、
上記粗破砕機で粗破砕された被処理物を、軽量物と細粒物と重量物とに選別する揺動選別機と、
上記揺動選別機で選別された重量物を粉砕する重量物粉砕機と、
上記重量物粉砕機で粉砕された粉砕物と、上記揺動選別機で選別された細粒物とを、比重と寸法に応じて軽量物と細粒物と重量物に選別する比重差選別機と、
上記比重差選別機で選別された軽量物を、篩体で通過物と残留物に篩い分ける篩機とを備えることを特徴としている。
【0027】
上記構成によれば、粗破砕機により混合廃棄物が粗破砕され、上記粗破砕機で粗破砕された被処理物が、揺動選別機により軽量物と細粒物と重量物とに選別される。上記揺動選別機で選別された重量物が重量物粉砕機で粉砕される。上記重量物粉砕機で粉砕された粉砕物と、上記揺動選別機で選別された細粒物とが、比重差選別機で比重と寸法に応じて軽量物と細粒物と重量物に選別される。上記比重差選別機で選別された軽量物が、篩機により、篩体上に残留する残留物と篩体を通過する通過物とに篩い分けられる。上記篩機で篩い分けられた残留物は、木や紙等の可燃物が主体であるため、第1燃料として収集し、セメントキルンの窯前に投入することができる。また、上記篩機の篩体を通過した通過物は、砂やガラス粒が主体であるため、セメントの材料として収集し、セメントキルンの窯尻に投入することができる。このように、従来は埋め立て処分が行われていた混合廃棄物に対して、粗破砕機と、揺動選別機と、重量物粉砕機と、比重差選別機と、篩機とで処理を行うことにより、セメントキルン用の第1燃料と、セメントの材料を製造することができる。ここで、混合廃棄物とは、2種類以上の素材が混合された廃棄物であり、例えば、建設現場から排出された建設系混合廃棄物が該当する。
【0028】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造プラントは、上記揺動選別機で選別された軽量物を破砕する軽量物破砕機と、
上記軽量物破砕機で破砕された被処理物を、軽量物と重量物に選別する風力選別機と
を備える。
【0029】
上記実施形態によれば、揺動選別機で選別された軽量物が、軽量物破砕機で破砕される。上記軽量物破砕機で破砕された被処理物が、風力選別機により軽量物と重量物に選別される。上記風力選別機で選別された軽量物は、プラスチック等の可燃物が主体であるため、第2燃料として収集し、塩素の含有量に応じてセメントキルンの窯前又は窯尻に投入することができる。
【0030】
一実施形態のセメントキルン用燃料の製造プラントは、上記風力選別機で選別された軽量物を、塩素含有物と塩素不含有物とに選別する光学式選別機を備える。
【0031】
上記実施形態によれば、風力選別機で選別された軽量物が、光学式選別機により塩素含有物と塩素不含有物とに選別される。上記光学式選別機で選別された塩素不含有物は、プラスチック等の可燃物が主体であると共に塩素を含有しないので、第3燃料として収集し、セメントキルンの窯前に投入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態のセメントキルン用燃料の製造プラントを示すブロック図である。
【
図2】粗破砕・選別ラインと重量物粉砕ラインを示す模式図である。
【
図5】ベルトコンベヤの終端部を示す模式断面図である。
【
図9A】波動篩機の篩体の作動状態を示す部分断面図である。
【
図9B】
図9Aに続く篩体の作動状態を示す部分断面図である。
【
図9C】
図9Bに続く篩体の作動状態を示す部分断面図である。
【
図10】軽量物破砕ラインと風力選別ラインを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0034】
本発明の実施形態のセメントキルン用燃料の製造プラントは、本発明の実施形態のセメントキルン用燃料の製造方法を実施するものであり、混合廃棄物としての建設系混合廃棄物を用いて、ポルトランドセメントの製造工程で使用する燃料と材料を製造するものである。建設系混合廃棄物は、建造物の建設又は解体に伴って発生する廃棄物であり、コンクリート片、木屑、金属屑、廃石膏ボード、廃プラスチック、紙くず、ガラスや陶器の破片等の多くの材質が混在しているので再利用が困難であり、従来は埋め立て等による最終処分が行われていた。本実施形態のセメントキルン用燃料の製造プラントは、このように多くの材質が混在する混合廃棄物から、ポルトランドセメント等のセメントの製造工程においてセメントキルンで材料を焼成するために使用可能な燃料と材料を製造する。
【0035】
図1のブロック図に示すように、このセメントキルン用燃料の製造プラント1は、粗破砕・選別ライン2と、重量物粉砕ライン3と、比重差選別ライン4と、軽量物破砕ライン5と、風力選別ライン6と、光学選別ライン7とを備える。粗破砕・選別ライン2は、混合廃棄物が投入されて粗破砕と選別を行い、重量物、細粒物及び軽量物を形成する。重量物粉砕ライン3は、粗破砕・選別ライン2で形成された重量物を粉砕する。重量物粉砕ライン3で粉砕された重量物と、粗破砕・選別ライン2からの細粒物が合流され、比重差選別ライン4に投入されて、この比重差選別ライン4により比重差選別と篩い分けを行う。比重差選別ライン4により、土や砂等と、可燃物と、ダストに選別され、上記可燃物をセメントキルンの第1燃料として収集し、上記ダストをセメントの材料として収集する。一方、上記粗破砕・選別ライン2で選別された軽量物は、軽量物破砕ライン5で破砕され、風力選別ライン6で軽量物と重量物に選別される。風力選別ライン6で選別された軽量物の一部であるプラスチック及び紙が、第2燃料として収集される。一方、風力選別ライン6で収集された軽量物の他の部分は、光学選別ライン7で近赤外線による光学選別が行われ、塩素を含有しない非塩素系プラスチック及び紙と、塩素を含有する塩素系プラスチックに選別される。上記非塩素系プラスチック及び紙は、第3燃料として収集され、上記塩素系プラスチックは、第4燃料として収集される。以下、各ラインの構成と、各ラインで行われる工程の詳細を説明する。
【0036】
図2は、粗破砕・選別ライン2と重量物粉砕ライン3を示す模式図である。粗破砕・選別ライン2は、建設系混合廃棄物を受け入れ、受け入れた建設系混合廃棄物を粗破砕し、粗破砕した被処理物を、重量物と軽量物と細粒物に分別する。粗破砕・選別ライン2が受け入れる建設系混合廃棄物は、一定の寸法を超えるコンクリート塊や鉄骨屑等は、予め除去されている。
【0037】
粗破砕・選別ライン2では、まず、セメントキルン用燃料の製造プラント1に搬入されてヤードに載置された建設系混合廃棄物が、粗破砕機11に投入される。粗破砕機11は、混合廃棄物の粗破砕を行うものであり、多様な寸法の物質が混在する被処理物が、実質的に150mm以下の寸法に破砕される。この粗破砕機11による破砕工程が、粗破砕工程に該当する。粗破砕機11は、下方に狭くなった処理空間を形成する傾斜側板付きホッパを有したケーシング内に、回転駆動される2つのロータを収容して構成されている。ロータは、長手方向に向かうにつれて周方向に位相をずらして固定された複数の回転刃が周面に固定されており、水平方向に互いに平行に配列される。2つのロータは、互いに逆回りに回転駆動され、互いの間に被処理物を噛み込んで破砕するように形成されている。なお、粗破砕機11として、公知のハンマークラッシャーやロータリスクリュークラッシャーを用いてもよい。スクリュークラッシャーは、二軸型と一軸型のいずれでもよい。
【0038】
粗破砕機11のホッパの開口部には、粉塵吸引用のフードが設置されており、粗破砕機11に混合廃棄物が投入される際に生じる粉塵が、矢印V1で示すようにフードを通して吸引される。吸引された粉塵は、図示しないサイクロンセパレータと集塵機で収集されるようになっている。
【0039】
粗破砕機11によって粗破砕された廃棄物は、揺動選別機12に導かれる。揺動選別機12は、被処理物を、軽量物と、重量物と、細粒物に分別する。軽量物は、かさ比重が比較的小さいものであり、主に、シート状の紙や布やプラスチック、及び、繊維屑等の可燃物が多くを占める。重量物は、かさ比重が比較的大きいものであり、木片や、合成樹脂製の容器やボトル等の可燃物が含まれる。また、寸法の比較的大きい金属や陶器やガラス等の不燃物が含まれる。細粒物は、真比重が比較的大きくて小径のものであり、金属の粒や、陶器の粒や、土砂等が含まれる。
【0040】
揺動選別機12は、
図3の縦断面図に示すように、前側が後側よりも上方に位置するように傾斜して支持され、前側部分の上部が他の部分よりも突出して形成された大略箱状のケーシング36と、このケーシング36内に長手方向が傾斜して配列され、下方から上方に向かって被処理物に送りを掛けるように揺動する複数の短冊状の篩板37,37,37,・・・を備える。ケーシング36は、上部の長手方向の中央に設けられた投入口38と、下部の長手方向の一端側に設けられた重量物排出口39と、下部の長手方向の中央に設けられた細粒物排出口40と、この細粒物排出口40よりも上方に位置して長手方向の他端側に設けられた軽量物排出口41を有する。また、ケーシング36の後端部と上部に、ケーシング36内に空気流を形成する第1送風部50と第2送風部51が設けられている。
【0041】
ケーシング36の前側部分の上部には、ケーシング36内の空気を排出する排気口42が設けられている。ケーシング36の前端部36aの内側面は、後述する第1送風部50や第2送風部51からの空気が排気口42の方向に流れるように、法線が篩板37の延在する面よりも上方を向くように傾斜している。すなわち、ケーシング36の前端部36aの内側面が、少なくとも第1送風部50の吹き出しノズルから篩板37と平行の延長上の位置と、第2送風部51の吹き出しノズルから篩板37と平行の延長上の位置において、法線が篩板37の延長面に関して上方を向くように傾斜している。
【0042】
篩板37は、パンチングボードや格子板で形成された短冊状のスクリーンと、スクリーンの長手方向の両側に設けられた鋸歯部材を有する。スクリーンには、10mm以上35mm以下の寸法の複数の篩孔が設けられている。スクリーンの表面には、スクリーンの法線方向に立設されて幅方向に延びる複数の幅方向版が、スクリーンの長手方向に所定間隔を置いて配置されている。鋸歯部材は、長手方向視においてスクリーンと直角に立設され、側面視における上端縁が、急勾配の前側の峰と緩勾配の後側の峰とが交互に連なる鋸歯形状に形成されている。この篩板37は、長手方向の両端の近傍に夫々配置された偏心軸受ユニット43,44によって揺動可能に支持されている。偏心軸受ユニット43,44は、ケーシング36の下部の前寄りと後寄りに配置された支持梁45,47に支持されている。
【0043】
支持梁45,47は、偏心軸受ユニット43,44と共にケーシング36を支持しており、前側の支柱46と後側の支柱48によって夫々支持されている。前側の支柱46は、伸縮可能に形成され、この支柱46の伸縮長さを調節することにより、ケーシング36と篩板37の傾斜角度が調節可能になっている。
【0044】
上記篩板37の後側を支持する偏心軸受ユニット44に駆動力が入力される一方、上記篩板37の前側を支持する偏心軸受ユニット43は、篩板37の揺動時に従動するように形成されている。駆動側の偏心軸受ユニット44は、モータで回転駆動される円形状の偏心板と、この偏心板の外周を取り囲む短円筒形状の偏心旋回部材と、偏心板と偏心旋回部材との間に介在された転がり軸受とを有する。偏心板は駆動軸に固定され、この駆動軸には、複数の篩板37,37,37,・・・の偏心軸受ユニット44が共通して固定されている。従動側の偏心軸受ユニット43は、駆動側の偏心軸受ユニット44と同様の偏心板及び偏心旋回部材を有している。偏心板は、支持梁45上に回転自在に支持された支持軸に固定されている。駆動側の偏心軸受ユニット44は、駆動軸がモータで回転駆動されると、偏心板が駆動軸回りに偏心回転し、これ伴って偏心旋回部材が駆動軸を中心に偏心旋回する。これにより、偏心旋回部材に連結された篩板37が上下前後に揺動する。各篩板37は、隣接する篩板37に対して180度の位相差を有するように設定されている。したがって、ある篩板37が最上点に位置するときには、それに隣接する篩板37が最下点に位置するように動作する。
【0045】
ケーシング36の後端部に設けられた第1送風部50は、揺動駆動される篩板37の表面の近傍に、後方から前方に向かう空気流を形成し、篩板37による軽量物58の送り動作を補助するものである。この第1送風部50は、図示しない送風機に接続された送風管と、この送風管に接続されて幅方向に延びる細長の矩形状の開口を有する吹き出しノズルを含んで形成されている。第1送風部50は、ケーシング36の後端部の幅方向に2つ配置されている。
図3に示すように、この第1送風部50から矢印J1で示すように吹き出された風は、矢印K1で示すように、篩板37の表面の近傍を、この篩板37と略平行に流れる。
【0046】
ケーシング36の上部に設けられた第2送風部51は、ケーシング36内の投入口38の近傍に、投入口38の後側から前側に向かって空気流を形成し、この投入口38から投入される被処理物55を解すものである。この第2送風部51は、図示しない送風機に接続された送風管と、この送風管に接続されて幅方向に延びる細長の矩形状の開口を有する吹き出しノズルを含んで形成されている。吹き出しノズルの開口部分は、ケーシング36の平面視において、矩形状を有する投入口38の幅方向に延びる縁と平行に延在している。第2送風部51の吹き出しノズルは、ケーシング36の天面に、幅方向に2つ配置されている。
図3に示すように、この第2送風部51から矢印J2で示すように吹き出された風により、投入口38を縦断するように後側から前側に向かう空気流が形成される。この空気流は、ケーシング36の平面視において、篩板37の延在方向と平行をなしている。第2送風部51から吹き出された風は、投入口38の近傍を流れた後、矢印K2で示すように、篩板37の上方を、この篩板37と略平行に流れる。
【0047】
揺動選別機12が作動すると、上記構成の篩板37が揺動駆動され、矢印Eで示すように、投入口38からケーシング36内へ被処理物55が投入される。投入された被処理物は、第2送風部51からの風で解された後、揺動駆動される篩板37によって更に解される。解された被処理物のうち、土砂や釘等が篩板37の篩孔を通って下方に落下し、矢印Fで示すように、細粒物排出口40から細粒物57として排出される。また、投入された被処理物のうち、ガラス瓶やコンクリート片や石等が、篩板37の表面を重力によって転動又は滑動して後方に移動し、篩板37の後端縁から落下し、矢印Gで示すように、重量物排出口39から重量物56として排出される。ここで、重量物56は、金属片、陶器片、金物、空き缶、PETボトル、ブロック、石及び靴等の反発性のものである。また、投入された被処理物のうち、プラスチックシート、繊維屑及び紙等は、揺動駆動される篩板37による送り動作と、第1送風部50からの空気流によって篩板37上を前方に送られる。篩板37の前方に送られたプラスチックシート等は、前端縁から落下し、矢印Hで示すように、軽量物58として軽量物排出口41から排出される。ここで、軽量物58は、主に、繊維屑や紙やプラスチックのフィルム等のような非反発性のものである。こうして、被処理物55が、重量物56と、軽量物58と、細粒物57に選別される。すなわち、揺動選別機12による選別工程は、揺動選別工程に該当する。
【0048】
上記揺動選別機12の作動中に、第1送風部50と第2送風部51から供給された風は、ケーシング36内を流れて前端部36aの内側面に衝突し、矢印M1及びM2に示すように流れの方向が上方向きに変化する。こうして流れが上向きに変化した空気は、ケーシング36の前側部分の上部内に配置されたフィルタ52を通り、矢印Nで示すように、排気口42から排出される。フィルタ52は、ケーシング36の前側部分の上部の突出部の内側に、ケーシング36の内部を横断するように配置されており、複数のフラットバーが格子状に配置されて形成されている。なお、フィルタ52は、パンチングメタル又はエキスパンドメタル等の網状体で形成されてもよく、複数のフラットバーや丸棒を互いに平行に配列して形成されてもよい。このフィルタ52は、上方向きの空気によって軽量物58が流された場合に、空気流がフィルタ52を通過する際に軽量物58を捕集する。フィルタ52で捕集された軽量物58は、第1送風部50や第2送風部51による送風が停止したときに、フィルタ52から離れて落下し、軽量物排出口41から排出される。
【0049】
上記揺動選別機12の軽量物排出口41からは、第1送風部50と第2送風部51から供給された風の一部が排出される。この軽量物排出口41から排出された空気は、
図2の矢印V2で示すように、軽量物排出口41の近傍に配置されたフードを介して吸引される。また、上記揺動選別機12の排気口42から排出された空気は、
図2の矢印V3で示すように、図示しないダクトを介して吸引される。これらの軽量物排出口41と排気口42から吸引された空気は、図示しないサイクロンセパレータと集塵機に導かれ、粉塵が除去された後に、大気に放出されるようになっている。
【0050】
揺動選別機12によって選別された重量物56は、ベルトコンベヤ13で搬送される。このベルトコンベヤ13の上方には、磁選機14が配置されており、ベルトコンベヤ13で搬送されている重量物から鉄等の強磁性体が収集される。
図4は、磁選機14を模式的に示す断面図である。この磁選機14は、2つの主ローラ61,61と、2つのスナップローラ62と、これらの主ローラ61及びスナップローラ62を取り囲むように巻き回された無端の送りベルト63と、2つの主ローラ61,61の間に、送りベルト63の内側面に近接して配置された電磁石65を有する。送りベルト63の外側面には、幅方向に延びる複数の桟64が設けられている。この磁選機14は、ベルトコンベヤ13の搬送ベルトの上方に近接して配置され、送りベルト63を一方の主ローラ61で駆動すると共に電磁石65に電流を印加して作動させる。磁選機14が作動すると、電磁石65で生成される磁力により、ベルトコンベヤ13の搬送ベルト上の被処理物の中の強磁性体が吸引される。電磁石65に向かって吸引された強磁性体は送りベルト63に接触し、この送りベルト63の桟によって主ローラ61の側に送られて電磁石65から遠ざかる。電磁石65から遠ざかった磁性体は、電磁石65から受ける磁力が減少して送りベルト63から離脱し、強磁性体収集容器15に収集されるようになっている。
【0051】
ベルトコンベヤ13で搬送された被処理物は、磁選機14で強磁性体が除去された後、ベルトコンベヤ13の終端から排出される際に、このベルトコンベヤ13の終端部に設置されたプーリ型金属選別機16で、更に強磁性体が除去される。このプーリ型金属選別機16は、例えば木材に打ち込まれた釘のように、磁選機14では除去されない強磁性体を収集できる。また、磁選機14では選別されないアルミニウムや真鍮や銅等のような、強磁性体ではない金属を選別して取集できる。
【0052】
図5は、ベルトコンベヤ13の終端部を示す模式断面図である。
図5に示すように、ベルトコンベヤ13の終端部には、プーリ型金属選別機16が内蔵されている。このプーリ型金属選別機16は、周面にコンベヤベルト66が巻き掛けられたプーリ本体68と、このプーリ本体68の内側に回転可能に配置された磁石67を備える。プーリ本体68は、内側に磁石67を収容可能な室が形成されて円筒形状を有し、回転軸69の回りに回転自在に形成されている。磁石67は、概ね円筒形状を有し、周方向にN極とS極が交互に形成されており、矢印R1で示すように、回転軸69回りに高速で回転駆動されるように構成されている。
【0053】
上記ベルトコンベヤ13で搬送された被処理物は、ベルトコンベヤ13の終端に近づくと、被処理物中のアルミニウム、銅及び真鍮等の非磁性金属に、回転する磁石67による磁界の変動によって渦電流が生じる。この渦電流で生成される磁界と磁石67の磁界との反発力により、矢印Q1で示すように、磁石67から遠ざかる方向に非磁性金属が飛ばされる。過電流に起因して飛ばされた非磁性金属は、ベルトコンベヤ13の端部の下方であって、プーリ型金属選別機16から離れた位置に配置された非磁性金属収集容器18に収集される。一方、磁石67で吸引されないプラスチック、ゴム、砂及びコンクリート等の非金属は、重力によってコンベヤベルト66の端部から離脱する。コンベヤベルト66から離脱した被処理物は、矢印Pで示すように、ベルトコンベヤ13の端部の下方に落下し、重量物粉砕ライン3に導かれる。一方、被処理物中の鉄等の強磁性体は、磁石67に吸引され、コンベヤベルト66に張り付いた状態でプーリ本体68の外側を移動する。強磁性体は、プーリ本体68の外側を半周移動した後、コンベヤベルト66が鉛直下方に向く位置に達すると磁石67の磁力の影響が弱まり、その結果、矢印Q2で示すように重力によってコンベヤベルト66から離脱する。コンベヤベルト66から離脱した強磁性体は、コンベヤベルト66の進行方向の下方に配置された強磁性体収集容器17に収集される。このようにして、ベルトコンベヤ13上の被処理物から、強磁性金属と非磁性金属の両方が除去される。こうして、磁選機14とプーリ型金属選別機16によって金属除去工程が行われる。なお、金属除去工程は、磁選機14とプーリ型金属選別機16のいずれか一方で行ってもよい。
【0054】
重量物粉砕ライン3では、金属が除去された被処理物を粉砕する。この重量物粉砕ライン3では、被処理物がベルトフィーダ20に導かれ、このベルトフィーダ20から被処理物がベルトコンベヤ21に一定量排出される。ベルトコンベヤ21の上に排出された被処理物は、ベルトコンベヤ21上に設置された金属探知機22によって、金属の存在が検出される。金属探知機22によって被処理物中に金属が検出されると、検出された金属がベルトコンベヤ21から排出されるタイミングで、このベルトコンベヤ21の下流に配置された切り換えシュート23が作動し、検出された金属が金属収集容器24に投入される。金属以外の被処理物は、ベルトコンベヤ21から排出され、切り換えシュート23によって投入コンベヤ25に送られ、粉砕機26に投入される。
【0055】
粉砕機26は、投入口に連なる処理室の内側に、回転軸の周りに軸方向に複数個配列された円盤状の固定ディスクと、これらの固定ディスクの外周部に揺動自在に取り付けられた複数の揺動ハンマーを備える。この粉砕機26は、回転軸が回転駆動されると、固定ディスクの外周部に取り付けられた揺動ハンマーが揺動しながら回転し、この揺動ハンマーで被処理物を粉砕して概ね50mm以下の粒径に調整する。こうして、粉砕機26により重量物粉砕工程が行われる。粉砕機26で粉砕された被処理物は、重量物粉砕ライン3による工程が終了し、
図2及び
図6の矢印Aで示すように、比重差選別ライン4の受入供給機71に導かれる。この受入供給機71には、
図2及び
図6の矢印Bで示すように、揺動選別機12で選別された細粒物も導かれる。すなわち、粗破砕・選別ライン2で選別された重量物を重量物粉砕ライン3で処理してなる被処理物と、粗破砕・選別ライン2で選別された細粒物とが、比重差選別ライン4の受入供給機71で合流する。こうして、粉砕機26による重量物粉砕工程で粉砕された粉砕物と、揺動選別機12による揺動選別工程で選別された細粒物とが合流する合流工程が行われる。
【0056】
比重差選別ライン4は、上記粗破砕・選別ライン2で選別された重量物を重量物粉砕ライン3で処理してなる被処理物と、粗破砕・選別ライン2で選別された細粒物とを合流してなる被処理物に対して、比重差選別工程と篩工程を行う。
【0057】
比重差選別ライン4では、まず、粗破砕・選別ライン2で選別された重量物を重量物粉砕ライン3で処理してなる被処理物と、粗破砕・選別ライン2で選別された細粒物とが合流してなる被処理物を、受入供給機71から所定量ずつベルトコンベヤ72に排出する。受入供給機71から排出された被処理物は、ベルトコンベヤ72で搬送される途中で、磁選機73によって鉄等の強磁性体が収集される。この磁選機73は、粗破砕・選別ライン2で使用された磁選機14と同様のものを用いることができる。磁選機73によって収集された強磁性体は、強磁性体収集容器74に収集される。磁選機73で強磁性体が除去された被処理物は、ベルトコンベヤ72から比重差選別機75に投入される。
【0058】
図7は、比重差選別機75を示す模式断面図である。この比重差選別機75は、上部に被処理物の投入口82と排気口84を有すると共に、下部に軽量物排出口85と細粒物排出口86と重量物排出口87と給気口83を有するケーシング81と、このケーシング81内に配置され、一端を他端よりも下方に位置するように傾斜して揺動駆動される揺動網ユニット90と、ケーシング81内に給気口83を介して風を送る送風機88を有する。揺動網ユニット90は、1mm以上10mm以下の寸法の網目を有し、長手方向断面において、一端側の緩やかな傾斜角度の長辺と、他端側の急峻な傾斜角度の短辺とを交互に繰り返して形成された波状の波状網体91と、この波状網体91の両側に立設されて被処理物を波状網体91の延在方向に導くガイド壁92を有する。なお、波状網体91は、この波状網体91を通過して収集される細粒物の粒径に応じて、網目の寸法が1mm以上5mm以下であるのが好ましい。揺動網ユニット90は、ガイド壁92の両側かつ長手方向の一端側と他端側に連結された4個の弾性体リンク93によって、図示しないフレームに支持されている。弾性体リンク93は、金属製の棒部材93aと、この棒部材93aの両端に連結されたゴム製の接手93b,93bを有する。弾性体リンク93は、一方の接手93bが揺動網ユニット90のガイド壁92に固定され、他方の接手93bがフレームに固定されて、上記フレームに対して揺動網ユニット90を揺動可能に支持している。波状網体91の下部には、矢印R2周りにクランクアームが駆動されるクランク機構95が取り付けられている。この揺動網ユニット90は、弾性体リンク93で支持されてクランク機構95で駆動されることにより、矢印Sで示すように上下及び前後方向に揺動するようになっている。送風機88で生成される風は、矢印Tで示すように給気口83からケーシング81内に供給され、揺動網ユニット90の波状網体91を通過して上方に流れて、矢印100で示すように上部の排気口84からケーシング81の外部に排出される。
【0059】
上記比重差選別機75が作動すると、揺動網ユニット90が揺動駆動すると共に送風機88がケーシング81内に送風する状態で、投入口82に、矢印96で示すように被処理物が投入される。投入された被処理物は、揺動網ユニット90の波状網体91上に落下し、揺動網ユニット90の揺動運動により、軽量物が波状網体91上を傾斜の下方に向かって移動し、矢印97で示すように軽量物排出口85から排出される。被処理物のうちの細粒物は、揺動網ユニット90の波状網体91を通過し、矢印98で示すように細粒物排出口86から排出される。被処理物のうちの重量物は、波状網体91の揺動運動によって、波状網体91の上を傾斜の上方に向かって移動し、矢印99で示すように重量物排出口87から排出される。こうして、比重差選別機75により比重差選別工程が行われる。
【0060】
比重差選別機75の排気口84は、図示しないダクトに接続されており、
図6の矢印V4で示すように、ケーシング81内の空気が排出される。ダクトの下流には図示しないサイクロンセパレータとバグフィルタとブロワが接続されており、ケーシング81から排出された空気は、サイクロンセパレータとバグフィルタで塵が除去された後、大気に排出される。
【0061】
比重差選別機75で選別された被処理物のうちの重量物は、主に石等の不燃物である。また、比重差選別機75で選別された被処理物のうちの細粒物は、主に砂やガラス粒等の不燃物である。したがって、比重差選別機75で選別された重量物と細粒物は、
図6に示すように、土砂収集容器76に収集し、埋め立て等の最終処分を行う。
【0062】
比重差選別機75で選別された被処理物のうちの軽量物は、篩工程を行う篩機としての波動篩機77に導かれる。
図8は波動篩機77の側面図である。この波動篩機77は、被処理物の投入側である一端から他端に向かって下方に傾斜するように配置され、被処理物の移動通路を画定する側壁105aを長手方向の両側に有する本体フレーム105を備える。また、上記本体フレーム105の下部に連結され、本体フレーム105の長手方向、すなわち被処理物の移動方向に往復駆動される駆動フレーム106を備える。駆動フレーム106は、本体フレーム105に複数のリンク108で往復駆動可能に連結されている。本体フレーム105の一端の下部には、往復駆動機構109が設けられており、モータ110からプーリ及びベルトを介して伝達された回転力を往復直線運動に変換するクランク機構等で構成されている。往復駆動機構109で変換された往復直線運動は、駆動ロッド111によって駆動フレーム106に伝達される。往復駆動機構109から駆動ロッド111を介して伝達された往復直線運動により、駆動フレーム106が本体フレーム105に対して被処理物の移動方向に往復運動をする。本体フレーム105は、防振コイル107を介して支持構造物に支持されている。
【0063】
図9Aは波動篩機77に内蔵された篩体の一部を示す部分断面図である。波動篩機77の篩体は、ウレタンゴム等のエラストマーで形成された篩体114と、この篩体114が上端部に連結されて上記本体フレーム105の短手方向に延在すると共に、被処理物の移動方向である本体フレーム105の長手方向に互いに平行に配列された複数の網支持梁112,113を有する。網支持梁112,113は、駆動フレーム106に連結された可動網支持梁112と、本体フレーム105に連結された固定網支持梁113とで構成され、可動網支持梁112と固定網支持梁113とが交互に配列されている。可動網支持梁112は、駆動フレーム106の内側に架け渡された可動梁115に固定されている。固定網支持梁113は、本体フレーム105の下端縁から下方に突出する本体接続部材117に掛け渡された固定梁116に、固定されている。往復駆動機構109により駆動フレーム106が本体フレーム105に対して往復運動をすることにより、複数の可動網支持梁112が、複数の固定網支持梁113の相互間で往復運動をするように構成されている。篩体114は、可動網支持梁112の移動方向を長手方向とする細長の透孔を有し、透孔の寸法は、長手方向が50mmかつ短手方向が2mmに設定されている。この篩体114は、網支持梁112,113の動作で伸縮するに伴い、透孔の長手方向の寸法が変動する一方、短手方向の寸法が実質的に同一に保持される。
【0064】
図9B及び9Cは、波動篩機77の篩体の作動状態を示す部分断面図であり、
図9Bは
図9Aに続く状態を示し、
図9Cは
図9Bに続く状態を示している。まず、
図9Aにおいて、可動網支持梁112と固定網支持梁113は互いに等間隔の位置にあり、篩体114の隣り合う可動網支持梁112と固定網支持梁113の間の部分である梁間部は、いずれも同程度の撓み量である。往復駆動機構109の駆動力により駆動フレーム106が本体フレーム105に対して往復運動を行うと、可動網支持梁112が、隣接する一方の固定網支持梁113と他方の固定網支持梁113とに交互に接近するように往復運動を行う。これにより、
図9Bのように、可動網支持梁112が、隣接する2つの固定網支持梁113のうちの一方に接近すると、接近した側の篩体114の梁間部は更に撓む一方、遠ざかった側の篩体114の梁間部は伸長する。一方、
図9Cに示すように、可動網支持梁112が、隣接する2つの固定網支持梁113のうちの他方に接近すると、
図9Bにおいて伸長した篩体114の梁間部が撓む一方、
図9Bにおいて撓んだ篩体114の梁間部が伸長する。このように、可動網支持梁112が、被処理物の移動の上流側に位置する固定網支持梁113と、下流側に位置する固定網支持梁113とに交互に接近を繰り返すことにより、篩体114の梁間部が、撓みと伸長を、隣り合う梁間部が互いに逆位相で繰り返すように形成されている。
【0065】
上記篩体114の梁間部が撓みと伸長を繰り返す過程において、被処理物は、
図9Bに示すように、篩体114の梁間部が伸長して生じる反発力により矢印W1で示すように上方に跳躍し、篩体114の梁間部が撓むに伴って矢印X1で示すように下方に落下する。一方、可動網支持梁112が移動すると、被処理物は、
図9Bに示すように、伸長していた篩体114の梁間部が撓むに伴って矢印X2で示すように下方に落下し、撓んでいた篩体114の梁間部が伸長して生じる反発力により矢印W2で示すように上方に跳躍する。このように、可動網支持梁112が、下流側の固定網支持梁113と上流側の固定網支持梁113とに交互に接近するように移動することにより、篩体114の梁間部が伸長と撓みを繰り返し、篩体114上の被処理物が跳躍と落下を繰り返す。これにより、被処理物が効果的に解され、篩体114の透孔よりも小さい粒子は透孔を通過して、矢印Yで示すように篩体114の下方に落下する。一方、透孔よりも大きい粒子は篩体114の表面に残留して、矢印Uで示すように篩体114の傾斜の下り方向に移動する。この波動篩機77によれば、エラストマーで形成された篩体114が伸長と撓みを繰り返すことにより、特に、微粒子の水分割合が高くても、篩体114に付着させることなく、透孔を通過させることができ、また、篩体114の表面に沿って移動させることができる。
【0066】
上記波動篩機77の篩体114に残留した残留物は、波動篩機77の他端側に形成された排出口から排出される。この残留物は、紙や木等の可燃物であり、可燃物収集容器78に収集される。一方、波動篩機77の篩体114を通過した通過物は、石膏、砂及びガラス等のダストであり、ダスト収集容器79に収集される。
【0067】
上記波動篩機77の篩体114に残留して可燃物収集容器78に収集された可燃物は、不燃物や金属の混入量が大幅に低いので、セメントキルンの第1燃料として窯前に投入することができる。このように、上記可燃物を可燃物収集容器78に収集する工程は、第1燃料収集工程に該当する。一方、上記ダスト収集容器79に収集されたダストは、金属の混入量が大幅に低く、多くがケイ素化合物と硫酸カルシウムであるため、セメントキルンの焼成工程を経て製造されるセメントの材料として窯尻に投入することができる。このように、上記ダストをダスト収集容器78に収集する工程は、材料収集工程に該当する。
【0068】
このようにして、混合廃棄物を、粗破砕・選別ライン2と、重量物粉砕ライン3と、比重差選別ライン4とで処理することにより、セメントキルンでクリンカを焼成するための燃料と材料を製造することができる。
【0069】
上記粗破砕・選別ライン2において、揺動選別機12によって選別された軽量物58は、
図2に示すように、ベルトコンベヤ30で搬送される。このベルトコンベヤ30で搬送される被処理物は、搬送中に金属探知機31によって金属の存在が検出される。金属探知機31によって被処理物中に金属が検出されると、検出された金属がベルトコンベヤ30から排出されるタイミングで、このベルトコンベヤ30の下流に配置された切り換えシュート32が作動し、検出された金属が金属収集容器33に投入される。金属以外の被処理物である軽量物は、ベルトコンベヤ30から排出され、
図2の矢印Cで示すように、切り換えシュート32によって搬送先が切り換えられて、軽量物破砕ライン5に導かれる。
【0070】
軽量物破砕ライン5では、粗破砕・選別ライン2で選別されて金属が除去された軽量物が、破砕機120に投入される。この破砕機120は、投入口に連なる処理室の内側に、外周面に複数の回転刃が千鳥格子状又は螺旋状に配置されて回転駆動される円筒状の回転体と、上記回転刃が対向して通過する位置に配置された固定刃を有する。破砕機120の処理室内には、投入された被処理物を回転体に向かって押し込むプッシャが配置されている。この破砕機120は、投入口から投入された被処理物であるシート状のプラスチックや紙を、回転刃と固定刃のせん断作用によって破砕する。プッシャが被処理物を回転体に向かって押し込むことにより、被処理物のせん断が効果的に促進される。この破砕機120により、被処理物は50mm~80mm程度の寸法に破砕される。こうして、破砕機120により軽量物破砕工程が行われる。
【0071】
破砕機120で破砕された被処理物は振り分けコンベヤ121に導かれ、この振り分けコンベヤ121によって、風力選別ライン6に投入される。
【0072】
風力選別ライン6は、被処理物から風力選別によって異物を分離し、セメントキルンの燃料を製造する。この風力選別ライン6は、
図10に示すように、振り分けコンベヤ121の下流に接続された第1風力選別機122A及び第2風力選別機122Bと、これらの第1及び第2風力選別機122A,122Bの下流に夫々接続された第1サイクロンセパレータ123A及び第2サイクロンセパレータ123Bを有する。第1及び第2サイクロンセパレータ123A,123Bの吐出口には第1送風機124A及び第2送風機124Bの吸引側が夫々接続されており、これらの第1及び第2送風機124A,124Bの吐出側は、上記第1及び第2風力選別機122A,122Bの給気口に夫々接続されている。上記第1風力選別機122Aと第1サイクロンセパレータ123Aの間のダクトには分岐ダクトが設けられ、第1並列サイクロンセパレータ128Aの給気側に接続されている。この第1並列サイクロンセパレータ128Aの排気側は、第1サイクロンセパレータ123Aの排気側と第1送風機124Aの給気側の間のダクトに合流している。このようにして、第1サイクロンセパレータ123Aに、第1並列サイクロンセパレータ128Aが並列に接続されている。また、第2サイクロンセパレータ123Bに、第2並列サイクロンセパレータ128Bが並列に接続されている。
【0073】
上記第1サイクロンセパレータ123Aの分離物の排出口には、排出された被処理物を圧縮して梱包する第1梱包装置126が接続されている。また、上記第1並列サイクロンセパレータ128Aの分離物の排出口と、上記第2並列サイクロンセパレータ128Bの分離物の排出口には、排出された被処理物を圧縮して梱包する第2梱包装置129が接続されている。上記第2サイクロンセパレータ123Bの分離物の排出口には、排出された被処理物を2方向に切り換えて排出する切り換えコンベヤ132が接続されている。
【0074】
図11は、第1及び第2風力選別機122A,122Bの構造を模式的に示すと共に、第1及び第2サイクロンセパレータ123A,123Bと第1及び第2送風機124A,124Bとの接続回路を示す模式図である。
【0075】
図11に示すように、第1及び第2風力選別機122A,122Bは、上下方向にジグザグ状に延在するジグザグ管路135と、このジグザグ管路135の下部に設けられた被処理物の供給口135aと、上記ジグザグ管路135の下端に連なって形成された給気口135bを有する。上記供給口135aから矢印136で示すように連続的に供給された破砕物が、給気口135bを通して第1及び第2送風機124A,124Bから供給された空気によりジグザグ管路135中を下から上に流される。このジグザグ管路135を流れる過程で、プラスチック等の軽量物と、ガラスや石等の重量物とに選別される。ジグザグ管路135を流れた空気流は、上端部から排出されて第1及び第2サイクロンセパレータ123A,123Bまで軽量物を搬送する。軽量可燃物を搬送した空気は、第1及び第2サイクロンセパレータ123A,123Bで軽量物が分離された後に、第1及び第2送風機124A,124Bに吸引される。軽量物は、矢印139で示すように、ロータリーシール弁を介して、第1及び第2サイクロンセパレータ123A,123Bの下端の排出口から排出され。重量物は、矢印140で示すようにジグザグ管路135の下部から排出され、異物として第1及び第2異物収集容器125A,125Bに収集される。こうして、第1及び第2風力選別機122A,122Bにより風力選別工程が行われる。
【0076】
上記第1風力選別機122Aで異物が除去されて第1サイクロンセパレータ123Aで収集された被処理物は、主にシート状のプラスチックや紙等である。第1サイクロンセパレータ123Aで収集された被処理物は、第1梱包装置126によって梱包され、梱包物127が完成する。梱包物127中のプラスチックや紙は、第2燃料として使用される。こうして、第1風力選別機122Aで選別された軽量物を第1梱包装置126で梱包する工程は、第2燃料収集工程に該当する。
【0077】
また、上記第1及び第2風力選別機122A,122Bで選別されて分岐ダクトに導かれ、第1及び第2並列サイクロンセパレータ128A,128Bで収集された被処理物は、第1サイクロンセパレータ123Aと同様に、主にシート状のプラスチックや紙等である。第1及び第2並列サイクロンセパレータ128A,128Bで収集された被処理物は、第2梱包装置129によって梱包され、梱包物130が完成する。梱包物130中のプラスチックや紙は、梱包物127中のものと同様に第2燃料として使用される。こうして、第1及び第2風力選別機122A,122Bで選別された軽量物を第2梱包装置129で梱包する工程は、第2燃料収集工程に該当する。
【0078】
上記梱包物127,130中のプラスチックや紙等で構成される第2燃料は、セメントキルンの燃料として使用でき、塩素を含有しない場合はセメントキルンの窯前に投入でき、塩素を含有する場合はセメントキルンの窯尻に投入できる。
【0079】
上記第2風力選別機122Bで異物が除去されて第2サイクロンセパレータ123Bで収集された被処理物は、切り換えコンベヤ132に投入される。切り換えコンベヤ132は、投入された被処理物を、第1梱包装置126と、光学選別ライン7側とのいずれかに切り換えて供給する。切り換えコンベヤ132で第1梱包装置126に切り換えられた場合、第2サイクロンセパレータ123Bで収集された被処理物は、第1サイクロンセパレータ123Aで収集された被処理物と共に第1梱包装置126によって梱包され、梱包物127が製造される。切り換えコンベヤ132で光学選別ライン7に切り換えられた場合、第2サイクロンセパレータ123Bで収集された被処理物は、
図10の矢印Dで示すように切り換えコンベヤ132から排出され、
図12の光学選別ライン7の振動フィーダ141に供給される。
【0080】
光学選別ライン7は、風力選別ライン6で選別された被処理物に対して、塩素成分の有無に基づいて選別を行う。この光学選別ライン7は、
図12に示すように、風力選別ライン6の切り換えコンベヤ132から被処理物が投入される振動フィーダ141と、振動フィーダ141によって被処理物が供給される第1光学式選別機142Aと、第1光学式選別機142Aで選別された被処理物が導かれる第2光学式選別機142Bを備える。
【0081】
振動フィーダ141は、被処理物の保持と排出を行うトラフが振動することにより、トラフ上の被処理物を安定して排出する。振動フィーダ141から排出された被処理物は、第1光学式選別機142Aのコンベヤに投入され、塩素を含有する被処理物である塩素含有物と、塩素を含有しない被処理物である塩素不含有物とに選別される。
【0082】
図13は、第1及び第2光学式選別機142A,142Bを示す模式断面図である。この第1及び第2光学式選別機142A,142Bは、投入された被処理物を搬送する搬送コンベヤ151と、この搬送コンベヤ151の終端部の近傍に配置され、被処理物に電磁波としての近赤外線を照射し、その反射波を受ける光学ユニット152と、被処理物に圧縮空気を噴射する噴射部としてのエアガン153と、光学ユニット152及びエアガン153に接続された制御部154を備える。エアガン153は、圧縮空気を供給するコンプレッサユニット155に接続されている。光学ユニット152は、搬送コンベヤ151上の被処理物に近赤外線を照射する電磁波照射部としての近赤外線照射装置156と、被処理物で反射された近赤外線の反射波を受ける反射波検出部としての近赤外線カメラ157を有する。近赤外線照射装置156は、搬送コンベヤ151のベルトの進行方向の前後から近赤外線を出射する一対の発光装置が、搬送コンベヤ151のベルトの幅方向に複数個配列されて形成されている。近赤外線照射装置156の各対の発光装置の間に、下方からの近赤外線を受光するように、近赤外線カメラ157のレンズが配置されている。
【0083】
この第1及び第2光学式選別機142A,142Bは、被処理物が搬送コンベヤ151で搬送され、光学ユニット152の下方に達すると、光学ユニット152の近赤外線照射装置156が近赤外線を被処理物に照射し、照射された近赤外線が被処理物で反射してなる反射波を、近赤外線カメラ157のレンズが受ける。近赤外線カメラ157は、近赤外線の反射波を受け、近赤外線の反射波の波長及び強度を表す情報を制御部154に出力する。制御部154は、近赤外線カメラ157から入力された情報に基づき、個々の被処理物からの反射波の波長及び強度を解析し、スペクトル分布に基づいて被処理物の材料を判別する。被処理物の材料が塩化ビニル等の塩素含有物であると判別すると、制御部154は、この被処理物を除去する。すなわち、塩素含有物の被処理物が搬送コンベヤ151の終端に達するタイミングで、制御部154がエアガン153に作動信号Zを出力してエアガン153を作動させ、圧縮空気を塩素含有物の被処理物に向けて噴射する。圧縮空気を受けた被処理物は吹き飛ばされて、矢印162で示すように、搬送コンベヤ151の終端から遠い側の塩素含有物排出口158から排出される。塩素を含有しない塩素不含有物の被処理物は、搬送コンベヤ151の終端から下方に落下して、搬送コンベヤ151の終端に近い側に設けられた塩素不含有物排出口159から排出される。このように、第1及び第2光学式選別機142A,142Bによって光学選別工程が行われる。
【0084】
上記第1光学式選別機142Aで選別された塩素含有物は、第1塩素含有物収集容器146に収容される。上記第1光学式選別機142Aで選別された塩素不含有物は、第2光学式選別機142Bに投入される。第2光学式選別機142Bでは、第1光学式選別機142Aで塩素不含有物と判断された被処理物の材料を、近赤外線の反射スペクトルに基づいて再度分析し、残留している塩素含有物を除去する。第2光学式選別機142Bで選別された塩素含有物は、第2塩素含有物収集容器145に収容される。第2光学式選別機142Bで選別された塩素不含有物は、塩素不含有物収集容器144に収容される。
【0085】
上記塩素不含有物収集容器144に収集された被処理物は、非塩素系プラスチックや紙等の可燃物であり、非塩素系プラスチックの主要なものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン等である。上記塩素不含有物収集容器144に収集された被処理物は、実質的に塩素を含有しない可燃物であるので、クリンカを製造するセメントキルンの窯前に第3燃料として投入することができる。ここで、塩素不含有物収集容器144に収集された塩素不含有物は、第3燃料として使用する前に、粉砕機によって寸法を10~30mmに低減するのが好ましく、また、10mm以下の寸法に低減してもよい。塩素不含有物の寸法を低減することにより、セメントキルンの窯前に第3燃料として投入されたときに、窯前のバーナによって迅速に加熱されて燃焼し、高い発熱量が得られる。こうして、第1及び第2光学式選別機142A,142Bで選別された塩素不含有物を塩素不含有物収集容器144に収集する工程は、第3燃料収集工程に該当する。
【0086】
上記第1及び第2塩素含有物収集容器145,146に収集された被処理物は、塩素を含有する塩素系プラスチックであり、主要なものはポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等である。上記第1及び第2塩素含有物収集容器146,145に収集された被処理物は、塩素を含有する可燃物であるので、クリンカを製造するセメントキルンの窯尻に第4燃料として投入することができる。ここで、塩素含有物である第4燃料をセメントキルンの窯尻に投入するときは、石灰等のセメントクリンカの材料と共に投入するのが好ましい。こうして、第1及び第2光学式選別機142A,142Bで選別された塩素含有物を第1及び第2塩素含有物収集容器145,146に収集する工程は、第4燃料収集工程に該当する。
【0087】
このように、本実施形態のセメントキルン用燃料の製造プラント1によれば、混合廃棄物に対して、粗破砕・選別ライン2で粗破砕工程と揺動選別工程を行い、重量物粉砕ライン3で重量物粉砕工程を行い、比重差選別ライン4で合流工程、比重差選別工程及び篩工程を行うことにより、第1燃料収集工程によってセメントキルンの第1燃料を得ることができると共に、材料収集工程によってセメントの材料を得ることができる。また、上記実施形態のセメントキルン用燃料の製造プラント1によれば、粗破砕・選別ライン2で粗破砕工程と揺動選別工程を行い、軽量物破砕ライン5で軽量物破砕工程を行い、風力選別ライン6で風力選別工程を行うことにより、第2燃料収集工程によってセメントキルンの第2燃料を得ることができる。また、上記実施形態のセメントキルン用燃料の製造プラント1によれば、粗破砕・選別ライン2で粗破砕工程と揺動選別工程を行い、軽量物破砕ライン5で軽量物破砕工程を行い、風力選別ライン6で風力選別工程を行い、光学選別ライン7で光学選別工程を行うことにより、第3燃料収集工程によってセメントキルンの第3燃料を得ることができ、また、第4燃料収集工程によってセメントキルンの第4燃料を得ることができる。その結果、従来は埋め立て等による最終処分を行っていた建設系混合廃棄物を有効に利用することができる。
【0088】
上記実施形態において、風力選別ライン6は第1風力選別機122A及び第2風力選別機122Bを備えたが、風力選別機は1つでもよい。この場合、1つの風力選別機で選別した軽量物を第2燃料として収集してもよい。また、1つの風力選別機の下流側に光学式選別機を配置して、第3燃料と第4燃料を製造してもよい。また、第1並列サイクロンセパレータ128Aと第2並列サイクロンセパレータ128Bは、いずれか一方又は両方を設けなくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態において、光学選別ライン7は、第1光学式選別機142Aと第2光学式選別機142Bを備えたが、第1光学式選別機142Aのみを設けてもよい。この場合、第1光学式選別機142Aで選別した塩素不含有物を第3燃料として収集し、塩素含有物を第4燃料として収集すればよい。
【0090】
また、上記実施形態において、建設系混合廃棄物を用いてセメントキルンの燃料を製造したが、他の産業から排出される混合廃棄物を用いてもよい。
【0091】
また、上記実施形態において、ポルトランドセメントの製造工程で用いる燃料と材料を製造したが、焼成工程が必要な他のセメントの製造工程で用いる燃料と材料を製造してもよい。
【0092】
本発明のセメントキルン用燃料の製造プラントは、セメントキルンに近接した位置に設置してもよく、あるいは、セメントキルンから離れた位置に設置してもよい。
【0093】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 セメントキルン用燃料の製造プラント
2 粗破砕・選別ライン
3 重量物粉砕ライン
4 比重差選別ライン
5 軽量物破砕ライン
6 風力選別ライン
7 光学選別ライン
11 粗破砕機
12揺動選別機
13,21,30,72 ベルトコンベヤ
14,73 磁選機
16 プーリ型金属選別機
20 ベルトフィーダ
22,31 金属探知機
23,32 切り換えシュート
25 投入コンベヤ
26 粉砕機
71 受入供給機
75 比重差選別機
77 波動篩機
120破砕機
121 振り分けコンベヤ
122A 第1風力選別機
122B 第2風力選別機
123A 第1サイクロンセパレータ
123B 第2サイクロンセパレータ
124A 第1送風機
124B 第2送風機
126 第1梱包装置
128A 第1並列サイクロンセパレータ
128B 第2並列サイクロンセパレータ
129 第2梱包装置
132 切り換えコンベヤ
141 振動フィーダ
142A 第1光学式選別機
142B 第2光学式選別機