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  • 特許-光電センサ及び物体検出方法 図1
  • 特許-光電センサ及び物体検出方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】光電センサ及び物体検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021001014
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2021110749
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】10 2020 100 452.4
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ケルプ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス メスナー
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0286009(US,A1)
【文献】特表平11-504498(JP,A)
【文献】特開2012-021878(JP,A)
【文献】特表2019-531491(JP,A)
【文献】特開2015-081921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(22)内の物体を検出するための光電センサ(10)、特にレーザスキャナであって、光線(28)を送出するための発光器(24)と、前記監視領域(22)内の物体により反射された光線(30)から受光信号を生成するための受光器(34)と、前記受光信号に基づいて前記物体に関する情報を取得するための制御及び評価ユニット(46)と、台座ユニット(14)と、前記監視領域(22)を周期的に走査するための、前記台座ユニット(14)に対して運動可能な走査ユニット(12)と、前記走査ユニット(12)を運動させるための中空シャフト(18)を有する駆動部(16)とを備え、前記台座ユニット(14)と前記走査ユニット(12)の間で前記中空シャフト(18)を通じて無線でデータ交換、特に前記受光信号又は該信号から導出されたデータの交換を行うために、前記走査ユニット(12)が第1のデータ伝送ユニット(42)を、そして前記台座ユニット(14)が第2のデータ伝送ユニット(44)を含む光電センサ(10)において、
前記第1のデータ伝送ユニット(42)と前記第2のデータ伝送ユニット(44)がマイクロ波信号を用いてデータ交換を行うためのマイクロ波ユニットとして構成されていること
前記第1のデータ伝送ユニット(42)及び/又は前記第2のデータ伝送ユニット(44)が直線偏波したマイクロ波信号を送信及び/又は受信するように構成されていること、及び
前記データ伝送ユニット(42、44)間の通信区間内に、直線偏波したマイクロ波信号を円偏波したマイクロ波信号に変換するための少なくとも1つの偏波器(58)が配置されていること
を特徴とする光電センサ(10)。
【請求項2】
前記第1のデータ伝送ユニット(42)及び/又は前記第2のデータ伝送ユニット(44)が統合型のマイクロ波通信チップを備えていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記中空シャフト(18)内に導波管(56)が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記偏波器(58)が前記中空シャフト(18)内に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ(10)。
【請求項5】
監視領域(22)内の物体を検出するための方法であって、光線(28)を送出し、前記監視領域(22)内の物体により反射された光線(30)から受光信号を生成し、前記物体に関する情報を取得するために前記受光信号を評価する方法であって、中空シャフト(18)を有する駆動部(16)を用いて走査ユニット(12)を台座ユニット(14)に対して運動させることにより前記監視領域(22)を周期的に走査し、前記走査ユニット(12)と前記台座ユニット(14)の間で第1のデータ伝送ユニット(42)と第2のデータ伝送ユニット(44)を用いて前記中空シャフト(18)を通じて無線でデータを交換する方法において、
前記第1のデータ伝送ユニット(42)と前記第2のデータ伝送ユニット(44)がマイクロ波信号を用いてデータを交換すること
前記第1のデータ伝送ユニット(42)及び/又は前記第2のデータ伝送ユニット(44)が直線偏波したマイクロ波信号を送信及び/又は受信すること、及び
少なくとも1つの偏波器(58)が、前記データ伝送ユニット(42、44)間の通信区間内で、直線偏波したマイクロ波信号を円偏波したマイクロ波信号に変換すること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1又は7のプレアンブルに記載の光電センサ及び物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水平方向に広い角度範囲を有する測定システムが必要となるような距離測定には光電式のシステム、特にレーザスキャナが適している。レーザスキャナでは、レーザにより生成された光線が偏向ユニットを用いて監視領域を塗りつぶすように周期的に掃引される。この光が監視領域内の物体の表面で反射され、スキャナ内で評価される。偏向ユニットの角度位置から物体の角度位置が推定され、更に光速を用いて光伝播時間からレーザスキャナと物体の間の距離が推定される。
【0003】
前記角度及び距離の情報を用いて監視領域内での物体の場所が2次元極座標で捕らえられる。これにより各物体の位置を算出したり、同じ物体を異なる場所で複数回検知することによりその輪郭を特定したりすることができる。このような測定での利用の他、レーザスキャナは危険の発生源(例えば危険な機械)を監視するための安全技術にも用いられる。このような安全用レーザスキャナは特許文献1から知られている。そのレーザスキャナでは、機械の稼働中に操作者が入ってはならない防護区域が監視される。操作者の脚等の防護区域への許可なき侵入を認識すると、レーザスキャナが機械の緊急停止を発動する。安全技術に用いられるセンサは特に高い信頼性で作動しなければならないため、例えば機械の安全に関する規格EN13849や非接触型防護装置(beruehrungslos wirkende Schutzeinrichtungen;BWS)に関する機器規格EN61496といった高い安全要求を満たさなければならない。
【0004】
レーザスキャナにおける監視平面の走査は通常、発射光線が回転中の回転ミラーに当たることにより達成される。発光器、受光器並びに付属の電子機器及び光学系は装置内に固定的に取り付けられており、一緒に回転運動を行うことはない。一方、回転ミラーを一緒に動く走査ユニットで置き換えることも知られている。例えば特許文献2では発光器と受光器を持つ測定ヘッド全体が回転する。
【0005】
回転式の測定ヘッドの場合、回転する部分へデータとエネルギーを伝送したり、回転する部分からデータを読み出したりする必要がある。そのために原理的には数多くの技術が考えられる。その一つとして高周波技術が考えられる。データ伝送のために搬送周波数の生成並びに変調及び復調を行うには例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)上のリソースが必要であり、他にも高周波フィルタ、近距離アンテナ、回路基板といった様々な部品が必要である。しかもある程度の電磁放射があり、逆に外部の電磁場に対する感度もある。エネルギー伝送とデータ伝送の間の相互作用によっても妨害が生じ得るが、その影響は周波数帯をうまく選ぶことにより軽減できる。
【0006】
高周波インターフェイスの複雑さは、アンテナとともに又はアンテナなしで高周波技術を全て統合した市販のマイクロ波チップにより基本的に低減することができる。しかしそのチップは非常に短い距離でしか機能せず、基礎モジュールと一又は複数の受発信モジュールとの間に必要な間隔を超えるのに十分ではない。
【0007】
BluetoothやWLAN等、一般に知られている通信プロトコルは国毎に固有の周波数認可が必要であり、しかもその射程はレーザスキャナ内部の単なる点対点の接続にとって不都合なまでに大きい一方、データ伝送速度は限定的なままである。換言すれば、このような汎用のプロトコルの性能及び要求はレーザスキャナ内での特別な状況にはあまり合っていない。
【0008】
特許文献3から、トランスの原理によりセンサの固定領域からエネルギーを供給される一方、データ伝送は電波により又は光路上で行われる回転可能な受発信ユニットを有するレーザスキャナが知られている。しかし、これらの無線インターフェイスについて、より詳しい説明はない。特許文献4は、多数の発光器及び受光器を備える回転可能なケーシングを有する複数光線型のレーザスキャナを提案している。それには無線通信が設けられているが、それについてもより詳しい説明はない。
【0009】
特許文献5には監視装置の構成要素間で電力及び光信号を伝送するためのシステムが記載されている。この装置では、2つのリングコアが互いに対して回転する一方、それらの中心にある開口を通じて光学的な伝送が行われる。
【0010】
特許文献6では、レーザスキャナの台座ユニット及び走査ユニット内にある2つの回路基板が互いに対して回転することで、走査ユニットに誘導的に給電を行うとともに容量的にデータ交換を行う。容量的なデータ伝送は回路基板同士が密接するような距離になければ信号損失が大きすぎるため機能せず、しかもデータ交換の帯域が広くなるとノイズ放射及びノイズ耐性に関して特別な要求が出てくる。
【0011】
特許文献7は無線の電力伝送を用いるレーザスキャナに関するものである。ここでも、伝送すべき電力を最適に調整する等のためにある種のデータ通信が行われる。しかしQi規格等、電力伝送の規格は広い帯域又は高いデータ伝送速度のために設計されておらず、適切ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】DE 43 40 756 A1
【文献】DE 197 57 849 B4
【文献】EP 2 388 619 A1
【文献】WO 2008/008970 A2
【文献】US 7 187 823 B2
【文献】EP 2 933 655 A1
【文献】CN 205986584 U
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
故に、本発明の課題は、静止部分と回転部分の間のデータ通信が改善された光電センサを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は請求項1又は7に記載の光電センサ及び物体検出方法により解決される。本センサは発光器を用いて光線を送出し、監視領域から戻ってくる光線を受光器内で受光信号に変換し、該信号を評価することで物体の属性を取得する。その際に好ましくは光伝播時間法で距離値が特定される。本センサはまた複数光線型とすること、つまり複数の発光器及び/又はビームスプリッタ等並びに複数の受光器又は一つの画素行列を用いて、複数の光線を送出して受光するものとすることもできる。
【0015】
監視領域を周期的に走査するため、走査ユニットがセンサの台座ユニットに対して運動又は回転する。好ましくはこの走査ユニットに発光器と受光器が収納されることで、該走査ユニットが運動又は回転可能な測定ヘッドとなる。その運動は中空シャフトを備える駆動部により作り出される。中空シャフトを通じた台座ユニットと走査ユニットの間の無線通信のために第1及び第2のデータ伝送ユニットが設けられている。データ交換は、いくつかのパラメータだけでなく、むしろ測定データそのものに関わるものであることが好ましい。また、何らかの処理段階を既に走査ユニット内に設け、その結果、実施形態に応じて受光信号そのもの又は極めて様々な段階の評価結果(例えば光伝播時間)を伝送するようにすることも考えられる。いずれにせよ測定に関係する大量のデータのためにそれに応じた広い帯域乃至はデータ伝送速度のインターフェイスが必要である。
【0016】
本発明の出発点となる基本思想はデータをマイクロ波により伝送することにある。そのために各データ伝送ユニットはマイクロ波ユニットとして構成されている。マイクロ波信号は中空シャフトの内部で伝送される。
【0017】
本発明の利点は、マイクロ波によれば利用できる帯域が広いため、中空シャフトの内部の非常に狭い空間上で、レーザスキャナの測定データのためにも十分な大量のデータを伝送できるということである。また、最低限の接続技術と僅かな数の必要な部品を用いて簡単で安価な構成を実現できる。更に、中空シャフト内に収めることにより遮蔽が成されるため、放射特性と電磁波に対する雑音感度が明らかに改善する。
【0018】
第1のデータ伝送ユニット及び/又は第2のデータ伝送ユニットは統合型のマイクロ波通信チップを備えていることが好ましい。この種のマイクロ波通信チップは完成部品(「シングルチップ」)として入手可能であり、具体的な使用のために(例えば制御及び評価ユニットのFPGA又はマイクロコントローラとの接続において)低コストで適応させることができる。あるいは各データ伝送ユニットの機能を制御及び評価ユニットの回路基板上、FPGA内又はマイクロコントローラ内に収めることが考えられる。
【0019】
好ましくは中空シャフト内に導波管が配置され、より好ましくは円形導波管として配置される。先に挙げたマイクロ波通信チップは元々数ミリメートルの射程しかなく、ほとんどの場合、台座ユニットと走査ユニットを接続するのに不十分である。導波管を用いることで所要の距離が克服される。導波管は台座ユニットに接続されて静止していてもよいし、走査ユニットと一緒に回転してもよい。いずれも反対側には台座ユニットと走査ユニットの間の運動を許容するために僅かな隙間を設けることが好ましい。導波管の外側にはデータ伝送装置から完全に独立したエネルギー伝送装置を配置することができる。原理的には、中空シャフト内に別個の導波管を配置する代わりに中空シャフトそのものを導波管として構成すること又は導波管として機能させることが考えられる。しかし、そうすると導波管のための柔軟性と構成上の自由度が低下し、例えば導波管の外側であって中空シャフトよりは内側に別個のエネルギー伝送装置を配置するといったことができなくなる。
【0020】
第1のデータ伝送ユニット及び/又は第2のデータ伝送ユニットは直線偏波したマイクロ波信号を送信及び/又は受信するように構成されていることが好ましい。これによりデータ伝送ユニット又はそのアンテナの構成を非常に簡素にすることができる。市販のマイクロ波通信チップも同様に直線偏波で作動する。
【0021】
データ伝送ユニット間の通信区間内、特に中空シャフト内に、直線偏波したマイクロ波信号を円偏波したマイクロ波信号に変換するための少なくとも1つの偏波器が配置されていることが好ましい。直線偏波したマイクロ波を用いる場合、台座ユニットと走査ユニットの間に相対運動があるため、回転位置によっては偏波方向が合わなくなるという問題が生じる。そうすると回転位置に依存した減衰が生じる。円偏波によりこのような回転位置への依存性がなくなり、それによりデータ伝送がはるかに頑強になる。
【0022】
第1のデータ伝送ユニット及び/又は第2のデータ伝送ユニットは円偏波したマイクロ波信号を送信及び/又は受信するように構成されていることが好ましい。これは、直線偏波したマイクロ波を偏波器に通して円偏波したマイクロ波に変換するという組み合わせに代わるものである。これにより偏波器を無くすことができる。その代わり、例えば互いに90度だけ捻転させた2つのアンテナを使用し、それに応じた給電を行う等、データ伝送ユニットがその分だけ複雑になる。
【0023】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0024】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】レーザスキャナの概略断面図。
図2】レーザスキャナの駆動部の中空シャフト内のマイクロ波伝送区間の拡大図。
図3】円偏波用の偏波器を追加した実施例における中空シャフト内のマイクロ波伝送区間を示す別の図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1はレーザスキャナ10の形態で実施された光電センサの概略断面図である。レーザスキャナ10は大きく分けて可動の走査ユニット12と台座ユニット14を含む。走査ユニット12は光学的な測定ヘッドである一方、台座ユニット14には給電部、評価用電子機器、接続部等、他の構成要素が収納されている。台座ユニット14は中空シャフト18を有する中空シャフト駆動部として構成された駆動部16を備えており、駆動中にはこれを用いて走査ユニット12に回転軸20を中心とした揺動又は回転運動をさせることで、監視領域22を周期的に走査する。
【0027】
走査ユニット12では発光器24が発光光学系26を用いて発射光線28を生成する。この光線は監視領域22内へ送出される。発射光線28が監視領域22内で物体に当たると、それに対応する光線が反射光線30としてレーザスキャナ10まで戻る。反射光線30は受光光学系32により受光器34へ導かれ、そこで電気的な受光信号に変換される。発光器24と受光器34は回路基板36上に収められている。これは別の回路基板38と接続されるか、あるいは例えば両者が一緒にフレキシブル回路基板として構成される。
【0028】
中空シャフト18を間に挟んで走査ユニット12の回路基板38と平行に台座ユニット14の回路基板40が設けられている。走査ユニット12と台座ユニット14の間で中空シャフト18を通じてマイクロ波を用いてデータを交換するため、2枚の回路基板38、40上には走査ユニット12の第1のデータ伝送ユニット42と台座ユニット14の第2のデータ伝送ユニット44が収められている。この通信チャネルを通じて台座ユニット14内の制御及び評価ユニット46が回路基板38と接続され、更に該基板を超えて回路基板36、更には発光器24及び受光器34と接続されている。制御及び評価の機能はこれらの構成要素36、38、40及び46の間でかなり自由に分配することができるが、以下では簡単のため制御及び評価ユニット46だけがそれを担うものとして説明する。従って走査ユニット12内での2枚の回路基板36、38への分割並びにそれらの配置及び向きも単なる模範例に過ぎない。例えば走査ユニット12内のそれらの箇所で評価のうち前処理又は生データの評価に関係する部分を行うようにしてもよい。走査ユニット12内で測定データの評価を全て行い、最終結果だけを送信することも考えられる。
【0029】
制御及び評価ユニット46は受光信号を評価し、駆動部16を制御し、走査ユニット12のその都度の角度位置を特定する角度測定ユニット(図示せず)から信号を受け取る。評価のため、検知された物体までの距離を光伝播時間法で測定することが好ましい。そのために、位相ベースのシステムでは発光器24の発射光が変調され、受光器34の受光信号との位相関係が評価される。また、パルスベースのシステムではある発光時点に短いパルスが送出され、受光信号からその受光時点が特定される。その場合、その都度単一の発射パルスから距離を測定する個別パルス法と、連続する多数のパルスを発射した後、その受光信号を集めて統計的に評価するパルス平均法の両方が考えられる。各発射光線28が送出されたときのその都度の角度位置も角度測定ユニットから同様に分かる。従って、各走査周期の完了毎、つまり走査ユニット12の回転毎に、角度及び距離を通じて、走査平面内にある全ての物点の2次元極座標が利用可能となる。複数の走査光線を用いる及び/又は仰角方向の走査運動を追加した別の実施形態では3次元座標も生じる。
【0030】
これらの測定結果はセンサインターフェイス48を通じて出力することができる。センサインターフェイス48又は別の接続部(図示せず)は逆にパラメータ設定用インターフェイスとしても利用される。安全技術に応用する場合、監視領域22内に設定することができる防護区域に不許可の侵入がないかが監視され、その結果、必要なら、ここでは安全に構成されているインターフェイス48(例えばOutput Signal Switching Device;OSSD)を通じて安全確保用の電源停止信号が出力される。レーザスキャナ10はケーシング50に収納されている。ケーシング50は回転軸20を取り囲む前面パネルを有するカバー52で上方に向かって閉鎖されている。
【0031】
図1のレーザスキャナ10は一実施例に過ぎない。本発明はレーザスキャナ10の具体的な構成にはあまり関係がなく、それよりも中空シャフト18を通じたマイクロ波によるデータ伝送に関するものである。これについては図2及び図3を参照してより詳しく説明する。図1に従ったレーザスキャナ10の具体的な設計に代えて、例えば受光レンズの中央に発光光学系を持つ二重レンズや、光線分割ミラーの使用等、単一光線方式の光電センサ又はレーザスキャナに関する他のそれ自体公知である如何なる配置も可能である。更に、複数の発光器及び/又は光線分割装置が複数の発射光線を生成し、それに対応する複数の受光器(特に、画素状に配置された、画像センサの複数の受光素子の形をしたもの)によりそれらの光線を受光する複数光線型のレーザスキャナも考えられる。また、1つのモジュールに複数の光線をまとめ、そのようなモジュールの多重配置によってより多くの光線を得ることも有利である。走査ユニット12内で回転する検出モジュールは光伝播時間測定なしで動作するもの(例えばカメラモジュール)としたり、レーダや超音波といった非光学的な検出原理を用いたりすることもできる。
【0032】
図2は回路基板38、40の間の通信区間とそれらのデータ伝送ユニット42、44を拡大図で示している。中空シャフト18は固定子54の内部において駆動部16の回転子となっている。従って、中空シャフト18を有する上側の回路基板38が回転する一方、固定子54を有する下側の回路基板40は静止している。データ伝送ユニット42、44の間でマイクロ波を伝送するため、中空シャフト18内に導波管56、特に円形導波管が設けられている。代案では中空シャフト18自体が既に導波管として機能する。
【0033】
データ伝送ユニット42、44は特に完全な統合型のマイクロ波チップである。これにより、完成した部品を利用できるという大きな利点がある他、周波数認可も各メーカーから引き継がれるため簡単になる。特に関心を引く周波数帯はライセンスフリーの60GHz又は122GHz付近の領域である。これらは、それ以外に利用されるより低い周波数領域における高い場の強度から大きく離れているため、電磁適合性(EMC)に関して有利であることが期待される。
【0034】
マイクロ波チップは統合型のアンテナを既に備えている。これにより配置が更にコンパクトになる。代案ではマイクロ波の生成、受信、変調及び復調のためのアンテナ及び回路が互いに分けられる。このようなアンテナは例えばパッチアンテナとして仕上げることができる。
【0035】
データ伝送ユニットに既存の統合型マイクロ波チップを用いる場合の欠点は射程が数ミリメートルと短いことであり、特に統合型アンテナの場合がそうである。しかし本発明ではそれが導波管56により克服される。
【0036】
図3は更に、別の実施形態における通信区間を示している。導波管56が走査ユニット12と一緒に回転できるように、台座ユニット14側にある下側の回路基板40に対して僅かな隙間gが設けられている。この配置を逆転させること、つまり導波管56を下側の回路基板40と接続して静止させてもよく、その場合は適切な隙間gを上側で回転する回路基板38に対して残すことが好ましい。
【0037】
直線偏波したマイクロ波を用いる場合、走査ユニット12の回転運動の過程でその向きが変わることにより問題が生じる。直線偏波したマイクロ波を最大限に伝送するために適したデータ伝送ユニット42、44の相互の角度位置は0度又は180度の2つだけである。一方、90度のずれがある場合は極めて大きな減衰が生じる。それは、マイクロ波がまさに間違った向きで受信されるから、例えば水平偏波したマイクロ波が入射してきたときに受信側のデータ伝送ユニット42又は44が垂直偏波したマイクロ波を受信する向きになっているからである。中間位置ではそれに応じた段階的な減衰が生じる。
【0038】
この問題は円偏波したマイクロ波を用いることにより解消できるものの、それには比較的複雑なアンテナ構造が必要である。特に、好適に用いられる完全な統合型のマイクロ波チップは直線偏波したマイクロ波を生成することが普通である。故に、少なくとも1つの偏波器58を使用し、それを中空シャフト56内に装入することが有利である。偏波器58は直線偏波した入射マイクロ波を円偏波したマイクロ波に変換する。そのため、データ伝送ユニット42、44自体は直線偏波したマイクロ波用の構成のままでよい。円偏波した関与部分と直線偏波した関与部分の間でマイクロ波の伝送を行うと約3dBの減衰が生じる。しかしこれは受け入れ可能である。何と言ってもこの組み合わせには、信号の目立った急落がなくなるという大きな利点がある。つまりデータ伝送が走査ユニット12の回転位置に依存しなくなり、とりわけ90度のずれがある場合の極端な減衰が防止されるのである。偏波器58を第1のデータ伝送ユニット42の近くに配置しているのは単なる模範例と理解すべきであり、代わりに偏波器58を第2のデータ伝送ユニット44の近くや、両者間のどこかに配置してもよい。複数の偏波器を用いることも考えられる。
図1
図2
図3