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特許7083595高反復モチーフを備えたDNA配列を効率的かつ特異的に標的とするレアカットエンドヌクレアーゼの設計
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  • 特許-高反復モチーフを備えたDNA配列を効率的かつ特異的に標的とするレアカットエンドヌクレアーゼの設計 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】高反復モチーフを備えたDNA配列を効率的かつ特異的に標的とするレアカットエンドヌクレアーゼの設計
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220606BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220606BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20220606BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220606BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220606BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220606BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220606BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C12N15/09 100
A61K31/7088 ZNA
A61K38/46
A61K48/00
A61P25/14
A61P43/00 111
C12N5/10
C12N9/16 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2016525897
(86)(22)【出願日】2014-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2016-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2014072833
(87)【国際公開番号】W WO2015059265
(87)【国際公開日】2015-04-30
【審査請求日】2017-09-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】PA201370623
(32)【優先日】2013-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】512213549
【氏名又は名称】セレクティス
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】8 rue de la Croix Jarry, 75013 Paris, France
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ デュシャトー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ジュレイラ
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】吉森 晃
【審判官】長井 啓子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/130824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
PubMed
REGISTRY/CAPlus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプレット反復を含む遺伝子中のポリヌクレオチドトリプレット反復を短縮するために、細胞中で使用するレアカットエンドヌクレアーゼであって、前記レアカットエンドヌクレアーゼは(i)トリプレット反復配列に隣接する少なくとも10核酸塩基を含み、且つ、前記トリプレット反復配列内の少なくとも5核酸塩基を含む標的配列を認識するTALE結合ドメインと(ii)前記トリプレット反復配列内を特異的に切断するエンドヌクレアーゼドメインとを含むキメラエンドヌクレアーゼである、レアカットエンドヌクレアーゼ。
【請求項2】
前記エンドヌクレアーゼドメインが、I-TevI、NucA、ColE7又はFok-1からなる群から選択される、請求項1に記載のレアカットエンドヌクレアーゼ。
【請求項3】
前記標的配列が、配列番号1~配列番号3からなる群から選択される配列内に存在する、請求項1に記載のレアカットエンドヌクレアーゼ。
【請求項4】
トリプレット反復病の治療又は予防のための、請求項1~3のいずれか1項に記載のレアカットエンドヌクレアーゼ。
【請求項5】
ハンチントン病を治療又は予防するための、請求項1~3のいずれか1項に記載のレアカットエンドヌクレアーゼ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のレアカットエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項8】
請求項1~いずれか1項に記載の少なくとも1つのレアカットエンドヌクレアーゼ、又は、請求項に記載のポリヌクレオチド又は請求項記載のベクターを含む、医薬組成物。
【請求項9】
生細胞内のトリプレット反復を含む遺伝子内のトリプレット反復配列をin vitroで短縮させる方法であって、
(a)トリプレット反復配列に隣接する領域を含む標的配列を選択し;
(b)前記標的配列に結合することができ、かつ前記トリプレット反復配列を切断することができるレアカットエンドヌクレアーゼを提供し、ここで前記レアカットエンドヌクレアーゼは(i)トリプレット反復配列に隣接する少なくとも10核酸塩基を含み、且つ、前記トリプレット反復配列内の少なくとも5核酸塩基を含む標的配列を認識するTALE結合ドメインと(ii)前記トリプレット反復配列内を特異的に切断するエンドヌクレアーゼドメインとを含むキメラエンドヌクレアーゼである;
(c)前記細胞へ、前記レアカットエンドヌクレアーゼを導入し;
その結果、前記DNA結合ヌクレアーゼがトリプレット反復配列内の切断を誘導し、前記トリプレット反復配列の短縮を行う修復工程を誘導する、方法。
【請求項10】
前記トリプレット反復配列の短縮を行う修復工程が、SSA(一本鎖アニーリング)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レアカットエンドヌクレアーゼが、請求項1~5のいずれか1項に記載のものである、細胞の遺伝子配列内のトリプレット反復配列を短縮させる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つのレアカットエンドヌクレアーゼ、又は、請求項6に記載のポリヌクレオチド又は請求項7に記載のベクターを含む、単離細胞。
【請求項13】
哺乳動物細胞である、請求項12に記載の単離細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、遺伝子編集ツール及びその使用の分野である。特定の遺伝性疾患、特に、ハンチントン病などのいわゆる「トリプレットリピート病」の起源である、染色体中の高反復モチーフを短縮するために設計されたレアカットエンドヌクレアーゼの技術に関する。本発明は、反復モチーフを短縮する方法、反復障害を受けた遺伝子中の反復モチーフを短縮するために使用するレアカットエンドヌクレアーゼ、それをコードするポリヌクレオチド及びベクター、並びに、得られた医薬組成物を包含する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1990年代初頭以来、不安定なヌクレオチド(マイクロサテライト)反復の拡大、特にトリヌクレオチド反復が、特定のヒト疾患の新たな潜在的な突然変異メカニズムとして同定された。長年にわたり、いくつかの追加の進行性及び神経筋疾患が、トリヌクレオチド反復の挿入又は重複のいずれか、並びに、不安定なテトラ-、ペンタ-、ヘキサヌクレオチド、及びそれより長い反復に起因することが同定された(Mirkin 2007)。このポリヌクレオチド反復の挿入又は重複は、タンパク質の機能欠損、障害につながる機能のRNA毒性の増加又は機能のタンパク質毒性の増加を誘導しうる。このような障害の例としては、ハンチントン病、遺伝性運動失調、脆弱X症候群、遺伝性筋ジストロフィーに共通の筋緊張性ジストロフィー、優性遺伝性運動失調群、及び、ごく最近としては、前頭側頭型認知症/筋萎縮性側索硬化症の高頻度の原因であるC9ORF72遺伝子中の不安定なヘキサヌクレオチドリピートを含んでいる((DeJesus-Hernandez, Mackenzie et al.2011;Renton, Majounie et al.2011)(総説(Nelson,Orr et al.2013)を参照)。
【0003】
ほとんどの反復拡張障害の治療の選択肢は、非常に限られている。様々な神経変性疾患のために想定されている最も魅力的な治療戦略の一つは、遺伝子治療である。実際に、拡大した反復の発現を遮断するためのいくつかの戦略が開発されている。特に、細胞内のRNA干渉技術を用いた変異体遺伝子をサイレンシングが、タンパク質又はRNAの毒性作用を防止するために実用化されている(Wang,Liu et al.2005;Machida,Okada et al.2006;DiFiglia,Sena-Esteves et al.2007)。しかし、基本的にはRNA干渉の設計は、正常配列と反復拡大配列との区別できず、変異体及び野生型遺伝子の両方を、同時に減少させる(Caplen,Taylor et al.2002)。しかしながら、ハンチンチンタンパク質は広範に発現しており、脳における神経機能及び生存に必要とされる(Duyao,Auerbach et al.1995; Dragatsis,Levine et al.2000)。このように、影響しない野生型タンパク質の発現を残す一方で、変異遺伝子の特異的発現を低減することが重要である。
【0004】
近年、ジンクフィンガータンパク質は、ハンチントン病の原因であるハンチンチン遺伝子のポリトリヌクレオチド反復に結合するように設計された。ジンクフィンガーは、短い反復配列と比較して、好ましくは反復拡大したハンチンチン遺伝子を抑制するための最適な立体構造を得るための適切なリンカーを有する長鎖へと鎖状に連結された。この戦略は、野生型遺伝子と比較して変異体遺伝子発現をより効率的に抑制することができる。しかしながら、その抑制は、遺伝子治療のタンパク質レベルを減少させるのに十分であるかどうかは知られていない(Garriga-Canut,Agustin-Pavon et al、国際出願:国際公開第2013/130824号)。
【0005】
以前の研究(Richard,Dujon et al.1999)は、反復配列内での切断事象の誘導が、トリヌクレオチド反復配列の短縮と関連していたことを示唆しており、それは、2つの異なるメカニズムによって説明され得る:(1)ブレークの両端は、テンプレートに侵入するために利用可能であるが、それらは、テンプレートに相同の反復配列を運搬するので、テンプレート内の任意の場所に侵入することが可能である;又は、(2)一端のみがテンプレートに侵入し、新たに合成された鎖はそのテンプレートから外れるが、反復を含む他端とアニールすることが可能である(Richard,Dujon et al.1999)。しかし、ゲノム内の高頻度の反復配列が原因で、該反復配列に特異的となるように設計された、操作されたDNA結合ヌクレアーゼは、ヒトゲノム全体のいくつかの位置で、オフサイト突然変異誘発を誘導する可能性がある。したがって、所望のゲノム位置の反復配列のみを切断する能力が非常に望ましい。
【0006】
上記の弱点を克服するために、本発明者らは、DNA結合ヌクレアーゼを使用して、拡大したポリヌクレオチド反復の数を減少させ、一方でゲノムの完全性及び補正された遺伝子の機能は維持する、遺伝子治療戦略を開発した。この戦略は、主に、トリプレット反復障害に関連する反復配列を特異的に標的とするゲノム配列の選択を伴うDNA結合ヌクレアーゼの設計に依存している。
【発明の概要】
【0007】
一般的な態様において、本発明は、好ましくは、反復疾患を受けた特定の遺伝子における、ポリヌクレオチド反復を短縮するために使用するレアカットエンドヌクレアーゼに関する。特に、レアカットエンドヌクレアーゼは、反復配列を特異的に切断するように操作されており、該レアカットエンドヌクレアーゼは反復配列に隣接する領域を含む標的配列を認識することを特徴とする。本発明は、特定の領域の高度に反復したモチーフ内の短縮を誘導するために使用されるレアカットエンドヌクレアーゼを設計する方法に関する。好ましくは、該レアカットエンドヌクレアーゼは、レアカットエンドヌクレアーゼが特異的に選択された標的配列に結合して、反復配列を切断するように、反復配列に隣接する領域を含む配列を標的とする。反復配列の切断は、特定の遺伝子内の反復配列の短縮へと導く修復プロセスを誘導し、このように、おおよそ野生型の構成へと拡張した反復配列を減少することを誘導する。好ましくは、該レアカットエンドヌクレアーゼは、ガイドRNAが反復配列に隣接する領域を含む標的配列にハイブリダイズすることを特徴とする反復配列を特異的に切断するCas9-ガイドRNA複合体である。好ましくは、該レアカットエンドヌクレアーゼは、モジュ-ル型DNA結合ヌクレアーゼであって、TALE、MBBBD、エンドヌクレアーゼの触媒ドメインに融合したジンクフィンガー(ZF)ドメイン等のDNA結合ドメインを含んでいる。該DNA結合ヌクレアーゼは、単量体又は二量体として作用しうる。二量体のDNA結合ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼの触媒ドメインに融合した反復配列に隣接する配列に結合可能な第一のDNA結合ドメイン、及び、ヌクレアーゼ触媒ドメインに融合した反復配列に結合可能な第二のDNA結合ドメインを含む(図1を参照)。二量体として作用する該ヌクレアーゼ触媒ドメインは、好ましくは、FokI触媒ドメインである。本発明のレアカットエンドヌクレアーゼは、高度に反復したモチーフ領域を短縮することによって、ハンチントン病等の反復疾患を治療又は予防するために特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】反復配列を特異的に切断するために操作されたTALEヌクレアーゼの略図。
図2】反復配列を特異的に切断するように操作された二量体TALEヌクレアーゼの使用の概略図。一方のTALEヌクレアーゼハーフドメインは、反復配列に隣接する領域を含む標的配列を認識するように操作され、他方のTALEヌクレアーゼハーフドメインは、二量体TALEヌクレアーゼが反復配列を切断するように、反復配列内の標的配列を認識するように操作されている。反復配列の切断は、一本鎖アニーリング(SSA)プロセス等の修復プロセスを誘発し、その結果、反復の短縮を生じる。
図3】反復配列を特異的に切断するように操作された単量体TALEヌクレアーゼの使用の概略図。反復配列を特異的に切断するよう操作された単量体TALEヌクレアーゼは、反復配列に隣接する領域を含む標的配列を認識する。反復配列の切断は、一本鎖アニーリング(SSA)プロセス等の修復プロセスを誘発し、その結果、反復の短縮を生じる。
図4】反復配列を特異的に切断するように操作されたCas9-ガイドRNA複合体の使用の概略図。ガイドRNAは、Cas9-ガイドRNA複合体が反復配列を切断するように、反復配列に隣接する領域を含む標的配列を特異的に認識するように操作されている。反復配列の切断は、一本鎖アニーリング(SSA)プロセス等の修復プロセスを誘発し、その結果、反復の短縮を生じる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
表1:2つのTALEN対が標的とする配列のリスト。反復配列に隣接するTALENが標的とする16塩基対配列(位置T0は省略されている)には下線が引かれている。
【0010】
表2:以前記載されている(国際PCT出願 国際公開第2004/067736及び (Epinat, Arnould et al.2003; Chames, Epinat et al. 2005; Arnould, Chames et al.2006; Smith, Grizot et al.2006))37℃における発明者らの酵母SSAアッセイでのTALENの活性。-は、検出可能な活性が無いことを表す。+は弱い活性を示す。++は高い活性を表す。n.a.は使用可能なデータがないことを示す。
【0011】
本発明の説明
本明細書に特異的に定義しない限り、使用される全ての技術的及び科学的用語は、遺伝子療法、生化学、遺伝学、及び分子生物学の分野における当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0012】
本発明の実施は、他に指示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来の技術を採用し、それは、当該分野の技術の範囲内である。このような技術は、文献中に十分に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Frederick M. AUSUBEL, 2000,Wiley and son Inc,Library of Congress,USA); Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Third Edition(Sambrook et al,2001,Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press); Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait ed.,1984); Mullis et al.米国特許第4683195号明細書; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries&S.J.Higgins eds.1984); Transcription And Translation (B. D. Hames&S.J.Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney, Alan R.Liss,Inc.,1987); Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986); B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984); the series,Methods In ENZYMOLOGY(J.Abelson and M.Simon,eds.-in-chief,Academic Press,Inc.,New York),specifically,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.) and Vol.185,“Gene Expression Technology”(D.Goeddel,ed.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker,eds.,Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986);及び、Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照すること。
【0013】
ポリヌクレオチド反復を短縮するために使用する操作されたレアカットエンドヌクレアーゼ
本発明は、特異的に反復配列を認識し、切断することができるレアカットエンドヌクレアーゼに関する。オフサイト標的化を回避するために、本発明者らは、反復配列を特異的に切断するレアカットエンドヌクレアーゼを操作するものであって、該レアカットエンドヌクレアーゼは、反復配列に隣接する領域を含む標的配列を認識することを特徴としている。反復配列の切断は、好ましくは反復障害を受けた遺伝子中に存在する、ポリヌクレオチド反復の短縮を導く修復プロセスを誘発する。特定の実施形態において、本発明は、特異的に反復配列を切断するレアカットエンドヌクレアーゼを操作する方法に関する。特に、該方法は、以下の工程を含む:(a)反復配列に隣接する領域を含む標的配列を選択すること;(b)該標的配列を認識し、反復配列を切断することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを操作すること。
【0014】
本発明の標的配列は、染色体、エピソーム、ミトコンドリア若しくは葉緑体ゲノム等の細胞小器官ゲノム、又は、例えば感染ウイルスゲノム、プラスミド、エピソーム、トランスポゾン等の遺伝物質の本体に独立して存在しうる遺伝物質中に存在しうる。標的核酸配列は、遺伝子のコード配列中、例えば、リーダー配列、トレーラー配列若しくはイントロン等の転写される非コード配列中、又は、コード配列の上流又は下流のいずれかの非転写配列内に存在しうる。核酸標的配列は、該標的の一つの鎖の5’から3’の配列により定義される。特に、標的配列は、反復配列の一部とそれに隣接する配列を含む。
【0015】
反復配列は、トリヌクレオチド反復であり得、しかし、テトラ-、ペンタ-、又はヘキサヌクレオチドでもありうる。非限定的な例としては、該反復配列は、(CGC)n、(GAA)n、(CTG)n、(CCTG)n、(CGG)n、(ATTCT)n、(CAG)nであり得、ここで、nが、1~20000、好ましくは、10~15000、好ましくは、20以上を含み得る(総説を参照:(Orr and Zoghbi 2007))。該標的配列は、少なくとも3、好ましくは少なくとも4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチドを含む反復配列の一部を含む。
【0016】
反復配列に隣接する領域は、レアカットエンドヌクレアーゼによって特異的に認識されるのに十分長くする必要がある。反復配列に隣接する領域は、少なくとも5ヌクレオチド、好ましくは少なくとも6、7、8、9、10、11、12、15ヌクレオチドを含む。より好ましい実施形態において、該隣接配列は、5~10個のヌクレオチドを含む。隣接配列は、反復配列に対して5’又は3’領域に存在しうる。該標的配列は、好ましくは、不安定なリピートの拡大が神経障害を引き起こしうる遺伝子配列内に存在する。非限定的な例として、該遺伝子配列は、以下からなる群から選択することができる:(CGG)n反復単位を含む脆弱X精神遅滞1遺伝子(FMR1、MIM番号:309550、NG_007529.1)の5’非翻訳領域(UTR)配列; (CCG)n反復単位を含む脆弱X精神遅滞2遺伝子(FMR2、MIM番号:300806、NG_016313.1)の5’UTR配列、(GAA)n反復単位を含むフリードライヒ失調症1遺伝子(FRDA、MIM番号:606829、NG_008845.2)の第1イントロン; (CTG)n反復単位を含む筋緊張性ジストロフィータンパク質キナーゼ遺伝子(DMPK、MIM番号605377、NG_009784.1)の3’UTR配列; (CCTG)n反復単位を含むジンクフィンガー9遺伝子(ZNF9、MIM番号:602668、NG_011902.1)の第1イントロン; (CAG)n反復単位を含むアタキシン8(ATXN8、MIM番号:613289、GenBank:DQ641254.1); (CTG)n反復単位を含むアタキシン8反対鎖(ATXN8OS、MIM番号:603680、NR_002717.2); (CAGT)n反復単位を含むアタキシン10遺伝子(ATXN10、MIM番号:611150、NG_016212.1)のイントロン9; (CAG)n反復単位を含むタンパク質ホスファターゼ2調節サブユニットBベータ遺伝子(PPP2R2B、MIM番号:604325、NG_011570.1)の5’UTR配列; (CAG)n反復単位を含むハンチンチン遺伝子(HTT、MIM番号:613004、NG_009378.1)のN末端; (CAG)n反復単位を含むアタキシン1(ATXN1、MIM番号:601556、NG_011571.1); (CAG)n反復を含むアタキシン2(ATXN2;MIM番号:601517、NG_011572.1); (CAG)n反復単位を含むアタキシン3(ATXN3、MIM番号:607047、NG_008198.1); (CAG)n反復単位を含むカルシウムチャネル電位依存性P/Q型α-1Aサブユニット遺伝子(CACNA1A、MIM番号:601011、NC_000019.9)のエクソン47; (CAG)n反復単位を含むアタキシン7(ATXN7、MIM番号:607640、NG_008227.1); (CAG)n及び/又は(CAA)n反復単位を含むTATAボックス結合タンパク質遺伝子(TBP、MIM番号:60075、NG_008165.1); (CAG)n反復単位を含む脊髄及びアンドロゲン受容体遺伝子(AR、MIM番号:313700、NG_009014.2)のエクソン1; (CAG)n反復単位を含むアトロフィン1遺伝子(ATN1、MIM番号:607462、NG_008047.1)及びその相同体。
【0017】
より好ましい実施形態では、該標的配列は、ハンチンチンタンパク質をコードする配列(配列番号1)内、好ましくは、ハンチンチンタンパク質のN末端部をコードする配列内(配列番号2)にて選択されるものであって、より好ましくは、標的配列は、配列番号3内にて選択される。
【0018】
「レアカットエンドヌクレアーゼ」 (rare-cutting endonuclease)とは、DNA又はRNA分子、好ましくはDNA分子内の核酸の間の結合の加水分解(切断)を触媒することができる任意の野生型又は変異体酵素を意味する。レアカットエンドヌクレアーゼは、高度に特異的であり、長さ10~45塩基対(bp)の範囲、通常、長さが10~35塩基対の範囲の核酸標的部位を認識する。本発明のエンドヌクレアーゼは、さらに「標的配列」と呼ばれる、特異的なポリヌクレオチド配列における核酸を認識して切断する。レアカットエンドヌクレアーゼは、特異的なポリヌクレオチド配列において認識し、一本鎖又は二本鎖ブレーク (break)を認識し、生成することができる。
【0019】
本発明に係るレアカットエンドヌクレアーゼはCas9エンドヌクレアーゼであり得る。最近、II型原核生物のCRISPR(クラスター定間隔ショートパリンドロームリピート(Clustered Regularly Interspaced Short palindromic Repeats))適応免疫系(総説を参照(Sorek, Lawrence et al. 2013))から、RNAガイドCas9ヌクレアーゼ(Gasiunas, Barrangou et al.2012; Jinek,Chylinski et al.2012; Cong,Ran et al.2013; Mali,Yang et al.2013)を基礎とした、新しいゲノム工学ツールが開発されている。CRISPR関連(CAS)システムは、細菌で最初に発見され、外来DNA、ウイルス又はプラスミドに対する防御として機能する。CRISPR媒介ゲノム工学は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる、短い配列モチーフにしばしば隣接する標的配列を選択することにより、最初は進行する。標的配列の選択に続き、この標的配列に相補的な特異的crRNAが操作される。CRISPRタイプIIシステムで必要とされるトランス活性化crRNA(tracrRNA)は、crRNAと対になり、提供されるCas9タンパク質に結合した。Cas9は、分子アンカーとして機能し、tracRNAとcRNAの塩基対形成を促進する(Deltcheva,Chylinski et al.2011)。この三元複合体において、二重のtracrRNA:crRNA構造は、同族の標的配列にエンドヌクレアーゼCas9を導くガイドRNAとして機能する。本発明において、ガイドRNAは、反復配列に隣接する領域を含む標的配列にハイブリダイズすることができる。Cas9-tracrRNA:crRNA複合体による標的の認識は、標的配列とcrRNA間の相同性に対する標的配列をスキャンすることによって開始される。標的配列-crRNAの相補性に加えて、DNAのターゲティングは、プロトスペーサーに隣接する短いモチーフ(プロトスペーサー隣接モチーフ-PAM)の存在を必要とする。二重RNAと標的配列との間のペアリング後、Cas9は、その後、PAMモチーフの3塩基上流で、平滑末端二本鎖切断を導入する(Garneau,Dupuis et al.2010)。本発明によれば、二重RNA(ガイドRNA)と反復配列に隣接する領域を含む標的配列とのハイブリダイゼーションに続き、Cas9は反復配列を切断する(図4参照)。
【0020】
レアカットエンドヌクレアーゼはまた、メガヌクレアーゼの名称で知られているホーミングエンドヌクレアーゼでもあり得る。このようなホーミングエンドヌクレアーゼは、当該技術でよく知られている(Stoddard 2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼは、DNA標的配列を認識し、一本鎖又は二本鎖切断を生成する。ホーミングエンドヌクレアーゼは、高度に特異的であり、長さ12~45塩基対(bp)の範囲、通常は、長さ14~40bp対の範囲でDNA標的部位を認識する。本発明のホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、HNHエンドヌクレアーゼ、又はGIY-YIGエンドヌクレアーゼに相当しうる。本発明の好ましいホーミングエンドヌクレアーゼは、I-CreI変異型でありうる。「変異体」エンドヌクレアーゼ、すなわち、自然に自然界には存在せず、遺伝子工学的に又はランダム突然変異誘発により得られるエンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼによって認識されるものとは異なるDNA配列に結合することができる(国際出願 国際公開第2006/097854号を参照)。
【0021】
該レアカットエンドヌクレアーゼは、モジュール型DNA結合ヌクレアーゼ又はキメラエンドヌクレアーゼでありうる。キメラエンドヌクレアーゼ又はモジュ-ル型DNA結合ヌクレアーゼとは、エンドヌクレアーゼの少なくとも一つの触媒ドメイン、及び、核酸標的配列を特定する少なくとも一つのDNA結合ドメイン又はタンパク質を含む、任意の融合タンパク質を意味する。
【0022】
DNA結合ドメインは、一般に、二本鎖又は一本鎖ポリヌクレオチドを認識する少なくとも1つのモチーフを含む、独立して折り畳まれたポリペプチドタンパク質ドメインによって形成されたRNA又はDNA結合ドメインである。該核酸結合ドメインは、好ましくは、標的配列と名付けられる特異的な核酸配列を認識する。そのようなポリペプチドの多くは当技術分野において記載され、特異的な核酸配列に結合する能力を有する。このような結合ドメインは、非限定的な例としては、ヘリックスターンヘリックスドメイン、ロイシンジッパードメイン、翼状ヘリックスドメイン、ヘリックス-ループ-ヘリックスドメイン、HMGボックスドメイン、免疫グロブリンドメイン、B3ドメイン又は操作されたジンクフィンガードメインをしばしば含む。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、DNA結合ドメインは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)に由来するものであって、ここで、配列特異性は、ザントモナス又はラルストニア細菌タンパク質に由来する一連の33~35アミノ酸反復によって駆動される。これらの反復は、塩基対との相互作用を特定する2つのアミノ酸の位置によって、本質的に異なっている(Boch,Scholze et al.2009; Moscou and Bogdanove 2009)。DNA標的中の各塩基対は、単一反復によって接触されており、反復の2つの変異アミノ酸(いわゆる、反復可変ジペプチド、RVD)の結果、特異性を有する。TALE結合ドメインは、さらに、標的配列の第一のチミン塩基(T0)の要件を担当するN末端トランスロケーションドメイン、及び、核局在化シグナル(NLS)を含むC末端ドメインを含んでもよい。TALE核酸結合ドメインは、一般に、TALE反復配列を複数備えた、操作されたコアTALE骨格に相当し、それぞれの反復は、TALE認識部位のそれぞれのヌクレオチド塩基に対して特異的なRVDを含んでいる。本発明において、該コア骨格の各TALE反復配列は、30~42アミノ酸からなり、より好ましくは33又は34であって、ここで、ポジション12及び13に位置する2つの重要なアミノ酸(いわゆる、反復可変ジペプチド(epeat ariable ipeptide)、RVD)は、該TALE結合部位配列の1ヌクレオチドの認識を仲介する;等価な2つの重要なアミノ酸は、33又は34アミノ酸長より伸びたTALE反復配列にて、特別に12及び13以外のポジションに配置することができる。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識に関連したRVDは、Cを認識するためにはHD、TALEを認識するためにはNG、Aを認識するためにはNI、G又はAを認識するためにはNNである。別の実施形態では、ヌクレオチドA、T、C及びGに対するその特異性を調節するために、特に、この特異性を高めるために、重要なアミノ酸12及び13は変異されうる。他のアミノ酸残基により、任意の20種類の天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸の誘導体が意図される。
【0024】
TALE核酸結合ドメインは、通常、8~30のTALE反復配列を含む。より好ましくは、本発明の該コア骨格は、8~20のTALE反復配列を含む;また、より好ましくは15TALE反復配列である。それはまた、該TALE反復配列のセットのC末端に位置する20個のアミノ酸からなる追加の単一切断TALE反復配列、すなわち、追加のC末端ハーフTALE反復配列を含む。本発明のTALE核酸結合ドメインは、好ましくは、配列番号4及び配列番号5からなる群より選択される核酸配列を含む。別の実施形態では、該設計されたTALE結合ドメインは、配列番号4及び配列番号5からなる群より選択される核酸配列と、少なくとも80%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0025】
他の操作されたDNA結合ドメインは、モジュール式塩基対塩基(base-per-base)特異的核酸結合ドメイン(MBBBD)(PCT/US2013/051783)である。該MBBBDは、新たに同定されたタンパク質、すなわち、最近シークエンスされた内部共生真菌 バークホルデリア リゾキシニカ(Burkholderia Rhizoxinica)のゲノム由来の、EAV36_BURRH、E5AW43_BURRH、E5AW45_BURRH及びE5AW46_BURRHタンパク質から、例えば、作製されうる。MBBBDタンパク質は、塩基特異的である、約31~33個のアミノ酸のモジュールを含む。これらのモジュールは、ザントモナスTALE共通反復と40%未満の配列同一性を示すものであって、一方で、それらは、それ以上のポリペプチドの配列変動を示す。それらを一緒に組み合わせた場合、これらのモジュールポリペプチドは、ザントモナスTAL-ヌクレアーゼと全く同様の方法で、特定の核酸配列を標的とすることが可能である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、該DNA結合ドメインは、10~30個のモジュール、好ましくは、16~20個のモジュールを含む、操作されたMBBBD結合ドメインである。バークホルデリア及びザントモナス由来の上記タンパク質とは異なるドメイン(モジュール、N及びC末端)は、特異的な核酸配列に対する結合特性を有する新規なタンパク質又は骨格を操作するのに有用である。特に、操作されたMBBBDの付加的なN末端及びC末端ドメインは、非限定的な例として、天然のTALE様AvrBs3、PthXo1、AvrHah1、PthA、Tal1cから得ることができる。
【0027】
「TALEヌクレアーゼ」又は「MBBBDヌクレアーゼ」は、典型的にはエンドヌクレアーゼの触媒ドメインと、転写活性化因子様エフェクタータンパク質(TALE)又はMBBBD結合ドメイン由来のDNA結合ドメインとを融合して得られる操作されたタンパク質を指す。このような触媒ドメインは、好ましくは、ヌクレアーゼドメイン、より好ましくは例えばI-TevI、ColE7、NUCA及びFok-Iなどの、エンドヌクレアーゼ活性を有するドメインである。特定の実施形態では、該ヌクレアーゼは、単量体TALEヌクレアーゼ又はMBBBDヌクレアーゼである。単量体ヌクレアーゼは、国際公開第2012/138927に記載されたI-TevIの触媒ドメインと操作されたDNA結合ドメインとの融合物のような、特異的に認識し及び切断するための二量体化を必要としないヌクレアーゼである(図3参照)。別の特定の実施形態では、該レアカットエンドヌクレアーゼは、二量体TALEヌクレアーゼ又はMBBBDヌクレアーゼであって、好ましくは、FokIに融合したDNA結合ドメインを含む(図1参照)。該二量体ヌクレアーゼは、反復配列内における切断事象を誘導するように、反復配列に隣接する領域を含む標的配列に結合する能力を有する第一のDNA結合ヌクレアーゼと、反復配列内の標的配列に結合する能力を有する第二のDNA結合ヌクレアーゼとを含む(図2参照)。TALE-ヌクレアーゼは、既に記載されており、遺伝子標的化及び遺伝子改変を刺激するために使用されている(Boch,Scholze et al.2009; Moscou and Bogdanove 2009; Christian,Cermak et al.2010)。このような操作されたTALE-ヌクレアーゼは、商品名TALEN(商標)(セレクティス、8ルー・デ・ラ・クロワジャリー、75013パリ、フランス)にて市販されている。
【0028】
別の態様において、本発明はまた、本明細書で開示されたレアカットエンドヌクレアーゼに関するものであって、好ましくは、上記の方法によって得られるレアカットエンドヌクレアーゼに関する。好ましい実施形態において、本発明は、配列番号8、配列番号10及び配列番号15からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは、80%、85%、90%、95%同一性を有するレアカットエンドヌクレアーゼに関する。
【0029】
ポリヌクレオチド、ベクター:
本発明はまた、本発明の上記レアカットエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクターに関する。好ましい実施形態において、本発明は、配列番号9、配列番号11及び配列番号16からなる群から選択される核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号9、配列番号11及び配列番号16からなる群から選択される核酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%又は99%の配列同一性を有する。
【0030】
ポリヌクレオチドは、発現カセット又は発現ベクター(例えば、細菌宿主細胞に導入するためのプラスミド、又は、昆虫宿主細胞のトランスフェクション用のバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、又は、哺乳動物宿主細胞のトランスフェクション用のレンチウイルスのようなプラスミド若しくはウイルスベクター)であってもよい。
【0031】
特定の実施形態では、別の核酸配列は、2Aペプチドをコードする配列のようなリボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含んだ1ポリヌクレオチド又はベクターに含まれうる。ピコルナウイルスのアフトウイルスサブグループで同定された2Aペプチドは、コドンでコードされる2つのアミノ酸間のペプチド結合を形成することなく、あるコドンから隣のコドンへとリボソーム「スキップ」を引き起こす((Donnelly and Elliott 2001; Donnelly,Luke et al.2001; Atkins,Wills et al.2007; Doronina,Wu et al.2008)参照)。「コドン」は、一つのアミノ酸残基へとリボソームによって翻訳されるmRNA(又はDNA分子のセンス鎖上)の3つのヌクレオチドを意味する。したがって、ポリペプチドがフレーム内にある2Aオリゴペプチド配列によって分離されている場合、mRNA中の単一の連続オープンリーディングフレームから2つのポリペプチドが合成される。このようなリボソームスキップ機構は、当技術分野で周知であり、単一のメッセンジャーRNAによってコードされたいくつかのタンパク質の発現のためのいくつかのベクターで使用されることが知られている。
【0032】
当業者は、遺伝コードの同義性の観点から、かなりの配列変化がこれらのポリヌクレオチド分子間で可能であることを認識するであろう。好ましくは、本発明の核酸配列は、哺乳動物細胞における発現用に、好ましくは、ヒト細胞における発現用に、コドン最適化される。コドン最適化とは、所定の種の高発現する遺伝子で一般的にまれなコドン対象配列を、所定の種で高発現する遺伝子で一般的に高頻度に存在するコドンへと置換することを指し、そのようなコドンは、置換されたコドンとしてアミノ酸をコードする。
【0033】
反復障害を受ける反復配列を短縮する方法
別の態様において、本発明はまた、生細胞中へ反復障害を受けた遺伝子配列内の反復配列を短縮する方法に関する。この方法は、以下の工程を含む:(a)反復配列に隣接する領域を含む標的配列の選択すること;(b)該標的配列に結合し、反復配列を切断することができる少なくとも1つのレアカットエンドヌクレアーゼの提供すること;(c)レアカットエンドヌクレアーゼを該細胞へと導入すること、及び、(d)レアカットエンドヌクレアーゼを遺伝子配列へと接触させ、その結果、レアカットエンドヌクレアーゼが反復配列を切断し、反復配列の切断を行う修復工程を誘導すること。好ましい実施形態では、該修復工程は、一本鎖アニーリング(single strand annealing)(SSA)である。一本鎖アニーリング(SSA)は、同じ方向に向けられた2つの反復配列間において切断がなされる場合、開始される工程である。一本鎖領域は、相補鎖が互いにアニールできるように、反復配列に伸展するブレークに隣接して形成される。このアニールした中間体は、一本鎖尾部を消化して遊離させ、ギャップを充填するアニール工程によって処理されうる。特定の実施形態において、当該方法は、細胞内で、本発明の標的配列に結合することができるレアカットエンドヌクレアーゼを発現することを包含する。より特定の実施形態において、当該方法は、上述のレアカットエンドヌクレアーゼをコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを細胞へと形質転換すること、及び、該細胞へ該ポリヌクレオチドを発現することを含む。
【0034】
上記の方法は、細胞中にレアカットエンドヌクレアーゼを導入することを含む。非限定的な例として、レアカットエンドヌクレアーゼを、一プラスミド性ベクターにコードされた導入遺伝子として導入することができる。該プラスミドベクターはまた、該ベクターが導入された細胞の同定及び/又は選択するために提供される選択マーカーを含むことができる。
【0035】
ポリペプチドは、細胞内に該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入した結果として、細胞内のイン・サイチュ(in situ)で合成することができる。あるいは、該ポリペプチドは、細胞外で製造した後、そこに導入することができる。細胞へポリヌクレオチド構築物を導入する方法は当技術分野で公知であり、非限定的な例としては、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに組み込む安定な形質転換法、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに組み込まない一過性形質転換法、及び、ウイルス媒介法を含む。該ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えばレトロウイルス、アデノウイルス)、リポソームなどにより細胞に導入してもよい。例えば、一過性形質転換法は、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション又は微粒子銃を含む。該ポリヌクレオチドは、細胞内で発現される観点から、ベクター、より好ましくはプラスミド又はウイルスに含まれていてもよい。
【0036】
本発明はまた、上記段落に記載の方法で得られる感受性のある単離された細胞又は細胞株にも関する。特に、該単離された細胞は、上述の、少なくとも一つのレアカットエンドヌクレアーゼを含む。別の実施形態では、該単離された細胞は、反復拡張配列の減少を含む。好ましい実施形態では、該単離された細胞は、哺乳動物細胞である。
【0037】
適用
別の態様では、本発明に係る該レアカットエンドヌクレアーゼは、不安定な反復拡大に起因する疾患を治療又は予防するために使用することができるものであって、非限定的な例として:脆弱X症候群(FRAXA)、脆弱XE症候群(FRAXE)、フリードライヒ失調症(FRDA)、筋緊張性ジストロフィー(DM1)、脆弱X-関連振戦運動失調症候群(FXTAS)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)などのCAGリピート病、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症1型、歯状核赤核-淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubal-pallidoluysian atrophy)、マシャド・ジョセフ病、脊髄小脳失調症2、脊髄小脳失調症6型及び脊髄小脳失調7型がある。本発明のレアカットエンドヌクレアーゼは、好ましくは、ハンチントン病を治療するために使用される。該レアカットエンドヌクレアーゼは、例えば、ウイルスベクターを使用して(インビボで)被験体に直接投与することができる。該レアカットエンドヌクレアーゼは、全身投与(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は頭蓋内注入)又は局所適用によって投与することができる。あるいは、該レアカットエンドヌクレアーゼは、インビトロで細胞を処置するために使用することができ、次いで、修飾された細胞は、通常、ベクターを取り込んだ細胞の選択した後(エクスビボ)、被験者に投与される。
【0038】
本発明はまた、反復配列に特異的な本発明のレアカットエンドヌクレアーゼを含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、細胞内の特異的な反復配列を短縮するために使用することができる。医薬的に許容される担体は、投与される特定の組成物によって、並びに、組成物を投与するために使用される特定の方法によって部分的に決定される。したがって、利用可能な医薬組成物の適切な製剤は多種多様である。
【0039】
本発明の方法及び組成物は、インビトロ及びインビボモデル、例えば、反復障害の動物モデルの設計と実装に有用であり、これらの障害の研究を可能にする。インビトロモデルに適した非限定的な例としては、線維芽細胞を含む任意の生物由来の細胞又は細胞株が含まれる。動物モデルに使用する好適な動物の非限定的な例としては、無脊椎動物(線虫、ショウジョウバエ)、げっ歯類(例えば、ラット又はマウス)、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)が含まれる。
【0040】
定義
以上の説明において、多くの用語が広範囲に使用されている。以下の定義は、本実施形態の理解を容易にするために提供される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」は、1以上を意味してもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、値が、値を決定するために使用される方法に対する誤差の固有の変動、又は実験間に存在する変動を含むことを示す。
【0043】
-ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は、一文字コードに応じて本明細書中に指定され、例えば、QはGln又はグルタミン残基を意味し、RはArg又はアルギニン残基を意味し、DはAsp又はアスパラギン酸残基を意味する。
【0044】
-アミノ酸置換は、一つのアミノ酸残基を他と置換することを意味し、例えば、ペプチド配列中のアルギニン残基をグルタミン残基に置換することが、アミノ酸置換である。
【0045】
-ヌクレオチドは、以下のように指定されている:一文字コードは、ヌクレオシドの塩基を指定するために使用される:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドについて、rはg又はa(プリンヌクレオチド)を表し、kはg又はtを表し、sはg又はcを表し、wはa又はtを表し、mはa又はcを表し、yはt又はc(ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a又はtを表し、vはg、a又はcを表し、bはg、t又はcを表し、hはa、t又はcを表し、nはg、a、t又はcを表す。
【0046】
-本明細書で使用される場合、「核酸」又は「核酸分子」は、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)などのヌクレオチド及び/又はポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成されたフラグメント、並びに、連結、切断、エンドヌクレアーゼ作用、及びエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成されたフラグメントを意味する。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチドである単量体(例えばDNAやRNAのような)、又は天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドの鏡像異性体)、又は両者の組み合わせで構成することができる。修飾ヌクレオチドは、糖部分及び/又はピリミジン若しくはプリン塩基部分に変化を有し得る。糖修飾は、例えば、1つ以上のヒドロキシル基と、ハロゲン、アルキル基、アミン及びアジド基、又は、エーテル若しくはエステルとして官能化できる糖との置換を含む。さらに、糖部分全体を、アザ糖及び炭素環式糖類似体など立体的かつ電子的に類似の構造で置換することができる。塩基部分の修飾の例としては、アルキル化プリン及びピリミジン、アシル化プリン又はピリミジン、又は他の周知の複素環式置換基が含まれる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合又はそのような結合の類似体によって連結することができる。核酸は一本鎖又は二本鎖のいずれかでありうる。
【0047】
-「遺伝子」とは、遺伝の基本単位を意味し、染色体に沿って直線的に配列されたDNA部分から構成され、特定のタンパク質又はタンパク質の部分をコードする。遺伝子は、典型的には、プロモーター、5’非翻訳領域、一つ以上のコード配列(エクソン)、任意のイントロン、3’非翻訳領域を含む。遺伝子はさらに、ターミネーター、エンハンサー及び/又はサイレンサーを含んでもよい。
【0048】
-用語「切断」は、ポリヌクレオチドの共有結合骨格の破壊を指す。切断は、これらに限定されないが、ホスホジエステル結合の酵素的又は化学的加水分解を含む様々な方法によって開始されうる。一本鎖切断及び二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は、2つの異なる一本鎖切断事象の結果として起こり得る。二本鎖DNA、RNA、又はDNA/RNAハイブリッドの切断は、平滑末端又は千鳥状末端(staggered ends)のいずれかの産生をもたらしうる。
【0049】
-「触媒ドメイン」とは、該酵素の活性部位を含む酵素のタンパク質ドメイン又はモジュールを意味している。活性部位は、基質の触媒作用が発生する該酵素の一部を意味する。酵素(それらの触媒ドメインではない)は、それらが触媒する反応に従って分類及び命名されている。酵素委託番号(EC番号)は、それらが触媒する化学反応に基づく、酵素に対する数分類10方式である。
【0050】
-本発明によれば、「相同な」とは、アミノ酸の第一の配列に関して、該第一のアミノ酸配列と少なくとも60%又は少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の相同性を有し、同様の生物学的活性を有する任意のアミノ酸配列を意味する。
【0051】
配列相同性は、当業者の分野で一般的に使用される任意の方法によって同定することができる。種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを二つの配列間の同一性を計算するために使用してもよく、GCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン大学、マジソン、ウィスコンシン州)の一部として利用できるFASTA又はBLASTを含み、例えば、デフォルトの設定で使用することができる。
【0052】
-「同一性」とは、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性を指す。同一性は、比較のために整列され得る各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較した配列中の位置が同じ塩基で占められる場合、分子はその位置で同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列により共有される位置における同一又は一致するヌクレオチド数の関数である。種々のアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを二つの配列間の同一性を計算するために使用してもよく、GCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン大学、マジソン、ウィスコンシン州)の一部として利用できるFASTA又はBLASTを含み、例えば、デフォルトの設定で使用することができる。
【0053】
-「ハイブリダイゼーション配列」は、標準的な低ストリンジェントの条件下で、他のオリゴヌクレオチドの一つにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドの配列の一部を意味する。このような条件とは、例えば、25%ホルムアミド、4×SSC、50mMのNaH2PO4/Na2HPO4緩衝液を含有する緩衝液; pH7.0、5×デンハルト、1mM EDTA、1mg/mL DNA + 20~200ng/mLの試験するプローブ(約20~200ng/mL)を使用しての、室温、2時間であり得る。これは、文献において提供されるように、配列内の相補的塩基の数、及び、室温におけるG-C含有量を用いて、ハイブリダイゼーションの標準的な計算によって予測することができる。好ましくは、ハイブリダイゼーション配列は、鎖間のワトソン-クリック塩基対合に依存する2つの核酸鎖間の相互の相補性に従った相補であり、すなわち、アデニンとチミン(A-T)ヌクレオチド及びグアニンとシトシン(GC)ヌクレオチド間の固有の塩基対合である。正確な塩基対形成は、標準及び修飾ヌクレオシドの間の塩基対合、及び、修飾ヌクレオシド官の塩基対合を含むワトソン-クリック対合と等しいものであり、修飾ヌクレオシドは、ワトソン-クリック塩基対合に沿った適切な標準ヌクレオシドへ置換することができる。一本鎖オリゴヌクレオチドの相補配列は、反応条件下で、2つの一本鎖オリゴヌクレオチドの間の特異的及び安定なハイブリダイゼーションを支持する任意の長さでありうる。
【0054】
-「送達ベクター」又は「送達ベクター(複数)」は、接触した細胞(すなわち、「接触している」)の中に入れるため、細胞内又は細胞内コンパートメントへ、本発明で必要な薬剤/化学物質及び分子(タンパク質又は核酸)を送達するために、本発明において使用することができる任意の送達ベクターを意図している。限定されるものではないが、リポソーム送達ベクター、ウイルス送達ベクター、薬物送達ベクター、化学担体、ポリマー担体、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、マイクロバブル(超音波造影剤)、ナノ粒子、エマルジョン又は他の適切な転写ベクターを含む。これらの送達ベクターは、分子、化学物質、巨大分子(遺伝子、タンパク質)、又は、プラスミドのような他のベクター、ディアトス社で開発されたペプチドの送達を可能にする。これらの場合において、送達ベクターは分子担体である。「送達ベクター」又は「送達ベクター(複数)」は、トランスフェクションを実施するための送達する方法を意図している。
【0055】
-用語「ベクター」又は「ベクター(複数)」は、連結された別の核酸を輸送できる核酸分子を指す。本発明において、「ベクター」は、これらに限定されないが、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、又は、染色体、非染色体、半合成若しくは合成核酸からなる線状若しくは環状DNA又はRNA分子を含む。好ましいベクターは、自律複製(エピソームベクター)及び/又はそれらが連結されている核酸の発現(発現ベクター)が可能なものである。多数の適切なベクターは、当業者に公知であって、市販されている。
【0056】
-ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ関連ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス等のマイナス鎖RNAウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹及びセンダイ)、ピコルナウイルス及びアルファウイルス等のプラス鎖RNAウイルス、及び、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)、及びポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘及びカナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルス、を含む。他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例としては、トリ白血病-肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルス、を含む(Coffin,J.M.,Retroviridae: The viruses and their replication,In Fundamental Virology,Third Edition,B.N.Fields,et al.,Eds.,Lippincott-Raven Publishers,Philadelphia,1996)。
【0057】
-細胞又は細胞(複数)は、任意の原核生物又は真核生物の生細胞、インビトロ培養用のこれらの生物由来の細胞株、動物又は植物起源の初代細胞を意味する。
【0058】
-「初代細胞」又は「初代細胞(複数)」とは、生体組織(すなわち、生検材料)から直接取得され、インビトロ生育用に確立されることを目的とした細胞であって、連続腫瘍形成する又は人工的に不死化した細胞株と比較して、ほとんど集団倍加を起こさず、それゆえ、それらの由来とする組織の主要な機能的な構成要素及び特性をより表している。これらの細胞は、このように、それらが参照するインビボの状態に対するより価値あるモデルを表す。
【0059】
本発明の枠において、「真核細胞」は、真菌、植物又は動物細胞、又は、以下に列挙する生物由来であり、かつ、インビトロ培養のために確立された細胞株をいう。
【0060】
より好ましくは、動物細胞は、ヒト属、ラッタス属、ハツカネズミ属、イノシシ属、ウシ属、ダニオ(Danio)属、イヌ属、ネコ属、ウマ属、サルモ属、タイヘイヨウサケ属、ガルス属、シチメンチョウ属、ショウジョウバエ属、線虫属である。より好ましくは、動物細胞は、ホモサピエンス種、ラット種、ハツカネズミ種、イノシシ種、ウシ種、ゼブラフィッシュ種、ハイイロオオカミ種、ネコ種、ウマ種、ライセイヨウサケ種、ニジマス種、ニワトリ種、シチメンチョウ種、キイロショウジョウバエ種、線虫種である。
【0061】
本発明においては、細胞は、哺乳動物細胞、魚類細胞、昆虫細胞、又は、インビトロ培養用に生体組織から直接採取した細胞株、又は、生体組織から直接採取してインビトロ培養用に確立した初代細胞であってもよい。非限定的な例として、細胞株は、CHO-K1細胞、HEK293細胞、Caco2細胞、U2-OS細胞、NIH3T3細胞、NSO細胞、SP2細胞、CHO-S細胞、DG44細胞、K-562細胞、U-937細胞、MRC5細胞、IMR90細胞、Jurkat細胞、HepG2細胞、HeLa細胞、HT-1080細胞、HCT-116細胞、Hu-h7細胞、HUVEC細胞、Molt4細胞からなる群から選択することができる。また、本発明の範囲には、幹細胞及び誘導多能性幹細胞(iPS)も包含する。
【0062】
すべてのこれらの細胞株は、細胞株モデルを提供することための本発明の方法によって改変されうる。
【0063】
-本明細書で使用される用語「被験体」は、非ヒト霊長類及びヒトを含む動物界の全てのメンバーを含む。
【実施例
【0064】
TALE骨格におけるRVD配列コレクションのクローニング
これらの実験で使用される2つのTALE骨格(pCLS9303及びpCLS9312、配列番号4及び5)は、C末端及びN末端ドメインの間に、二つのBsmBI制限部位を含んでいる。反復トリヌクレオチドに隣接する領域を標的とする個々の反復配列(配列番号6~7)は、受信プラスミド用にII型制限酵素BsmBIを使用し、挿入されるRVD配列用にBbvI及びSfaNIを使用して、pCLS9303にサグクローニングし、pCLS9984とpCLS16715へと誘導した(配列番号8をコードした配列番号9、及び、配列番号10をコードした配列番号11)。反復トリヌクレオチドを標的とする個々の反復配列(配列番号14)は、受信プラスミド用にII型制限酵素BsmBIを使用し、挿入されるRVD配列用にBbvI及びSfaNIを使用して、pCLS9996にサグクローニングし、pCLS9996を誘導した(配列番号15をコードする配列番号16)。各個々のクローンの単クローンのDNA配列は、DNAシークエンシングにより評価した。
【0065】
酵母におけるTALEヌクレアーゼ活性
TALEN(商標) DNA標的配列を含む2つの酵母標的レポータープラスミドを前述のように構築した(国際PCT出願 国際公開2004/067736号、及び、Epinat,Arnould et al.2003; Chames,Epinat et al.2005; Arnould,Chames et al.2006; Smith, Grizot et al.2006)。TALEN(商標)ペア(pCLS9984/pCLS9996及びpCLS16715/pCLS9996)は、以前記載されている(国際PCT出願 国際公開2004/067736号、及び、Epinat,Arnould et al.2003; Chames,Epinat et al.2005; Arnould,Chames et al.2006; Smith, Grizot et al.2006)我々の酵母SSAアッセイにおいて、両方の標的(配列番号12~13、表1)に対して、37℃及び30℃で試験した。それらの標的に対するTALEN(商標)切断活性レベルを、表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
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図1
図2
図3
図4
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