(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 3/04 20060101AFI20220606BHJP
A62C 5/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
A62C3/04
A62C5/02 A
(21)【出願番号】P 2017071941
(22)【出願日】2017-03-31
【審査請求日】2020-03-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 辰也
(72)【発明者】
【氏名】君島 宏樹
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】星名 真幸
【審判官】鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-190313(JP,A)
【文献】特表平6-510318(JP,A)
【文献】特開平10-118207(JP,A)
【文献】特開2008-142622(JP,A)
【文献】特開2002-85938(JP,A)
【文献】特開2011-167635(JP,A)
【文献】特開2000-126731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
E04F17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備において、前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、前記ゴミピット内に泡を放出し、悪臭源となるゴミを泡で覆うものであって、前記悪臭が発生した際に放出される前記泡は、泡薬剤に粘度の高い物質を添加することにより生成され、消火に使用される泡に比べ泡水溶液へ戻る還元時間の長いものである消火設備。
【請求項2】
ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備において、
前記ゴミピット内へ泡を放出する泡発生装置と、
前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、悪臭を検知するものであって、前記ゴミピット内に設けられた悪臭検知装置と、
前記悪臭検知装置により前記ゴミピット内の悪臭の発生が検知されたとき、前記泡発生装置から前記泡を放出し、悪臭源となるゴミを前記泡で覆うよう制御する制御部と、を備え
、
前記悪臭検知装置は、前記ゴミピット内にゴミがあるだけでは感知せず、悪臭と感じられる臭いがあるときに作動するものである、
消火設備。
【請求項3】
情報を表示する操作パネルを備え、
前記操作パネルには、前記悪臭検知装置により悪臭の発生が検知されたときに悪臭発生を表示する検知情報表示部が設けられ
、
前記検知情報表示部には、前記ゴミピット内で火災が検知された際、火災発生と火災番地とが表示され、
前記泡発生装置は、前記ゴミピット内で火災および悪臭の少なくとも一方が発生した際に泡を放出するものである、
請求項2に記載の消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴミピット内には色々なゴミが運び込まれるため、火災が自然発生的に生じる場合がある。このような火災を消火するため、一般に、ゴミピットには消火設備が設けられている。消火設備として、例えば、火災が発生した位置に向かって放水する放水銃を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。ゴミピットは、焼却設備の規模にもよるが、焼却前のゴミを収容できるように例えば数千~数万立法メートルの容量を有している。そのため、特許文献1に記載される消火設備は、このような大空間のゴミピットを複数の領域に分割して火災の発生を監視し、火災が発生している領域に放水することで効果的に消火を行うように構成されている。
【0003】
また、放水銃から放水される水に消火薬剤(水成膜薬剤)を添加することで、消火設備の消火能力を向上させた消火薬剤添加装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の消火薬剤添加装置は、消火薬剤タンクと消火用の配水管とを接続する配管経路上に電動バルブを備え、火災時に、電動バルブを開いて配水管に消火薬剤を注入する。このような消火薬剤添加装置を備えた消火設備は、プラスチック火災などの水だけでは消火しにくい火災に対して消火能力を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-118207号公報
【文献】特開2006-158544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、ゴミピット内には色々なゴミが運び込まれることから、ゴミの種類によっては、ゴミピット内に悪臭が発生することがある。しかしながら、上記の特許文献1および特許文献2のようにゴミピット内に消火設備を設置したものはあるが、特に悪臭に対する措置はとられていないのが実状である。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ゴミピット内の悪臭を防止する消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る消火設備は、ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備において、前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、前記ゴミピット内に泡を放出し、悪臭源となるゴミを泡で覆うものであって、前記悪臭が発生した際に放出される前記泡は、泡薬剤に粘度の高い物質を添加することにより生成され、消火に使用される泡に比べ泡水溶液へ戻る還元時間の長いものである。
また、本発明に係る消火設備は、ゴミピットに消火装置が設けられた消火設備において、前記ゴミピット内へ泡を放出する泡発生装置と、前記ゴミピット内に悪臭が発生した際、悪臭を検知するものであって、前記ゴミピット内に設けられた悪臭検知装置と、前記悪臭検知装置により前記ゴミピット内の悪臭の発生が検知されたとき、前記泡発生装置から前記泡を放出し、悪臭源となるゴミを前記泡で覆うよう制御する制御部と、を備え、前記悪臭検知装置は、前記ゴミピット内にゴミがあるだけでは感知せず、悪臭と感じられる臭いがあるときに作動するものである。
また、上記の消火設備は、情報を表示する操作パネルを備え、前記操作パネルには、前記悪臭検知装置により悪臭の発生が検知されたときに悪臭発生を表示する検知情報表示部が設けられ、前記検知情報表示部には、前記ゴミピット内で火災が検知された際、火災発生と火災番地とが表示され、前記泡発生装置は、前記ゴミピット内で火災および悪臭の少なくとも一方が発生した際に泡を放出するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、泡によってゴミの表面が覆われ、外気と悪臭源との間がたたれるため、ゴミピットの悪臭を断つことができる。
また、本発明において、消火設備には、泡または水を放出する消火装置が設けられているので、悪臭防止のために新たに追加する構造を最小限に抑えることができる。
また、本発明において、悪臭発生時に放出される泡は、泡薬剤に粘度の高い物質を添加して生成されるため、従来の消火用の泡に比べて、泡の安定性が高く水溶液に戻りにくいので、ゴミピット内の悪臭防止効果を持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る消火設備を設置したゴミピットの外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る操作パネルの画面を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る消火設備の全体構成を示す構成図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係るノズルの伸び出し位置と放射形状を対応させた説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る消火装置制御部が行う制御を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る消火設備を設置したゴミピットの概略構成図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る泡発生装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る消火設備1を設置したゴミピット2の外観斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る操作パネルを示す模式図である。
図1に示すように、消火設備1は、ゴミピット2に設けられ、火災検知装置11と、悪臭検知装置12と、消火装置3と、給水回路4と、添加回路5等とから構成される。
【0011】
ゴミピット2は、直方体形状の容器として形成され、図示しない投入口からゴミが投入される。ゴミピット2にはゴミを移動するクレーン21が設けられ、クレーン21は、ゴミピット2内に貯留されているゴミを、図示しない焼却炉へ搬送する。また、ゴミピット2の上部中央にはクレーン操作室22が配置され、クレーン操作室22の中には作業者が操作する操作盤23等が設置されている。クレーン21は手動操作と自動操作とが切替え可能に構成されており、手動運転時には、作業者は、操作盤23を介してクレーン21を前後方向(矢印X方向)、左右方向(矢印Y方向)および上下方向(矢印Z方向)に移動させることができる。
【0012】
消火装置3は、ゴミピット2の上部の側壁に設置され、例えば放水銃等で構成される。消火装置3は、給水回路4および添加回路5に接続され、双方の回路から供給される水および泡薬剤等により泡を生成し、ゴミピット2内に放出できるよう構成されている。給水回路4は、貯水槽44内の水を、第1配管R1を介して消火装置3に供給する回路である。添加回路5は、第1タンク51内の消火薬剤(泡薬剤)および第2タンク56内のジェルを、第2配管R2を介して消火装置3に供給する回路である。
【0013】
また消火設備1は、消火装置3を操作するための手動操作部39を備えている。手動操作部39には例えばジョイスティック等が設けられており、作業者は、消火装置3の手動運転時には、手動操作部39を介して消火装置3の照準制御および泡放出の制御等を行うことができる。消火装置3は、泡を放出するとき以外は、クレーン21の動作を妨げることがないようにゴミピット2の壁面内に収容されている。
【0014】
火災検知装置11は、ゴミピット2の天井面付近に設置され、例えば赤外線放射温度計等から構成される。火災検知装置11は、ゴミピット2内の表面温度を2次元平面的にスキャンするものである。具体的には、火災検知装置11は、ゴミピット2内の前後方向(矢印X方向)および左右方向(矢印Y方向)の平面を、複数の領域に分割して監視する。
【0015】
悪臭検知装置12は、悪臭を検知するものであり、
図1ではゴミピット2の側壁に配置されている。悪臭検知装置12は、ゴミピット2内の悪臭を検知するものであるため、例えば金属酸化物センサ等のような比較的感度の低い臭いセンサを使用するとよい。なお、悪臭検知装置12はゴミピット2の悪臭を検知できればどのような場所にいくつ設置されてもよい。ここで、悪臭検知装置12として感度の低いものとした理由は、ゴミピット2内がある程度臭気のある雰囲気であることを考慮したもので、ゴミピット2内にゴミがあるだけでは感知せず、悪臭と感じられる臭いがあるときに作動させるためである。
【0016】
図2には、クレーン操作室22に設置された操作パネル7aの画面が示されている。操作パネル7aには消火設備1の情報が表示され、作業者は、操作パネル7aを介して運転指令等を入力することができる。操作モード選択部71は、自動モード、半自動モードおよび手動モードの中から操作モードを選択するためのものである。番地指定部72は、例えばタッチパネルで構成され、ゴミピット2内を複数に分割した画面と番地とが対応づけて表示され、画面上の分割領域にタッチすることによってその番地が指定される。検知情報表示部73は、上記の火災検知装置11で火災を検知したときに火災発生と火災番地とを表示する。
図2では一例として火災発生が強調表示されるとともに10番地が表示され、作業者は、火災の発生と発生位置を知ることができる。また検知情報表示部73は、上記の悪臭検知装置12で悪臭を検知したときに悪臭発生を表示する。
【0017】
次に、
図3および
図4に基づき消火設備1の構成および機能について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る消火設備の全体構成を示す構成図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係るノズルの伸び出し位置と放射形状を対応させた説明図である。
【0018】
図3に示すように、消火装置3は、泡が放出されるノズル31、および混合機38等を備えている。混合機38は、給水回路4から供給される水と、添加回路5から供給される泡薬剤等とを混合し、泡水溶液にする。また、消火装置3は、図示しない旋回軸および俯仰軸を備え、モータによって各軸が駆動されることにより、ノズル31の旋回角または俯仰角が変更されるように構成されている。
【0019】
またノズル31は、
図4に示すように、ノズル長さ(ノズルストローク)が変わることでノズル31から放出する水または泡水溶液などの消火水の放射形状を切替える。円筒形状のノズル本体32内には、消火水の流れを規制する規制部材34が、支持板35にナットで固定して設けられている。また、ノズル本体32の放出口側の外周には、円筒形状の外筒33が配置されている。外筒33は、モータ36等によって駆動され、ノズル本体32に対する伸び出し位置が制御される。
図4(a)に示すように外筒33が伸び出した状態では、放射形状は棒状となり、放出する消火水の射程距離が長くなる。一方、
図4(b)に示すように外筒33が縮退した状態では、放射形状は噴霧状となり、放出する消火水の射程幅が広がる。なお図示しないが、ノズル31には、放出する消火水が泡水溶液である場合には、泡が生成されやすくなるように、別途、デフレクタまたはネットなどの発泡部材を設けて、外筒33と同様に可動させ、泡水溶液を発泡部材にぶつけることで、泡の生成を増やすようにしてもよい。
【0020】
給水回路4は、貯水槽44から水を汲み上げる給水ポンプ43と、電動弁等で構成される給水弁41と、給水ポンプ43を駆動するポンプモータ42等とをさらに備え、給水ポンプ43および給水弁41は、第1配管R1に設けられている。
【0021】
また、添加回路5において、泡薬剤を貯留する第1タンク51は第3配管R3を介して第2配管R2に接続され、ジェルを貯留する第2タンク56は第4配管R4を介して第2配管R2に接続されている。また添加回路5は、それぞれ電動弁等で構成された第1弁54および第2弁59を備える。第1弁54は第2配管R2に設けられ、開状態のときには、泡薬剤または泡薬剤とジェルの混合液が、第1配管R1に向かって流れる。第2弁59は第4配管R4に設けられ、開状態のときには、ジェルが、第2配管R2に向かって流れる。
【0022】
ここで、水に消火薬剤(泡薬剤)が添加されて生成する泡は、水に比べて消火性能が高められる。また、水に、泡薬剤と粘度の高い物質(例えばジェル)との混合液が添加されて生成する泡は、泡薬剤だけが添加されたものに比べて還元時間が長くなる。すなわち、消火設備1は、水などに比べて粘度の高いジェルを添加することにより、薬剤の粘性が高まり消失しにくい泡、つまり泡水溶液に戻りにくい安定性の高い泡を生成することができる。例えば、泡の水溶液への還元時間は、泡薬剤にジェルを添加することで150倍程度長くすることができる。ゴミピット2内に貯留されているゴミは、その後、焼却炉に移されて焼却されるので泡を除去する必要が無く、このような泡によれば、悪臭抑制の効果を持続することができる。また泡は、例えば消臭剤を含む液体等に比べてゴミに浸透しにくく、重力によりゴミの表面を伝って広がる。そのため、ゴミピットにおいて放出する場所の位置制御を行わずに泡を放出する場合であっても、悪臭源となるゴミの位置に泡が到達し易い。
【0023】
ここで還元時間について詳細に説明する。消防に関する省令において、泡消火薬剤については還元時間の定めがあり、そこには25%還元時間として定められている。25%還元時間とは、発泡する前の泡水溶液量の25%が、発泡した泡から泡水溶液に還元するまでの時間を〔分〕で表したものをいい、通常は、1~3分程度である。このような消火に使用される泡(消火泡という)に比べ、本実施形態で使用される悪臭拡散防止に使用する泡は、還元時間が10~100倍以上のものが使用される。一例として、泡を放出した数時間後において、放出した泡の75%については泡の状態が維持され、25%が泡水溶液に還元するような泡の持続性が高いものが、悪臭の遮蔽用の泡として放出される。
【0024】
消火設備1は、さらに、消火装置3を制御する消火装置制御部6を備える。消火装置制御部6は、主制御部61と、タイマー62と、照準制御部63と、給水制御部64と、添加制御部65と、記憶部66等とを有している。
【0025】
主制御部61は、火災検知装置11から、火災発生情報および火災発生位置情報を取得し、悪臭検知装置12から、悪臭発生情報を取得する。また主制御部61は、取得したこれらの情報に基づいて、所定時間ごとに火災および悪臭の発生を判定し、判定結果に応じて照準制御部63、給水制御部64、添加制御部65、および操作部7に信号を出力する。具体的には、主制御部61は、火災が発生しているときに、照準制御部63に対して火災発生位置情報を出力し、給水制御部64に給水開始命令を出力し、必要に応じて添加制御部65に火災発生時の添加命令を出力し、操作部7に火災発生および火災発生位置を示す情報を出力する。また主制御部61は、悪臭が発生しているときに、照準制御部63に対して悪臭発生を示す信号を出力し、給水制御部64に給水開始命令を出力し、悪臭発生時の添加制御部65に添加命令を出力し、操作部7に悪臭発生を示す情報を出力する。また主制御部61は、クレーン制御部20へ制御信号を出力するともに、クレーン制御部20から出力される信号を受信する。
【0026】
ここで、悪臭が発生しているとは、例えば、悪臭検知装置12の測定値が設定値以上になったとき、あるいは、作業者により操作部7を介して悪臭発生を示す入力があったとき等をいう。
【0027】
照準制御部63は、主制御部61から入力される火災発生位置情報に基づいて、消火装置3の照準制御および放射形状制御を行う。具体的には、照準制御部63は、俯仰角および旋回角を調整することにより照準制御を行い、
図2で示した特定の番地に放水を行うことができ、ノズルストロークを調整することにより放射形状制御を行う。また照準制御部63は、主制御部61から入力される悪臭発生を示す信号に基づいて、消火装置3の放射形状制御を行う。なお悪臭発生時においても、特定の番地に泡を放出できるように照準制御を行ってもよい。
【0028】
給水制御部64は、主制御部61からの入力される給水開始命令に基づいて給水ポンプ43およびポンプモータ42に対する駆動制御信号を出力するとともに、給水弁41の開閉制御を行う。添加制御部65は、主制御部61から入力される添加命令に基づいて、添加回路5の第1弁54および第2弁59の開閉制御を行う。
【0029】
記憶部66には、主制御部61と、照準制御部63と、給水制御部64と、添加制御部65等とにより参照される各種情報が記憶されている。また、操作部7は、作業者による各種操作指示を与えるものであり、また、各種情報を表示するものである。操作部7には、上述した操作盤23、手動操作部39および操作パネル7a等が含まれる。タイマー62は、主制御部61からの信号によって起動し、予め設定された時間になるとタイムアップ信号を主制御部61に対して出力する。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態1に係る消火装置制御部6が行う制御を示すフローチャートである。火災検知装置11は、ゴミピット2内の火災の発生を監視しており、検出した情報を消火装置制御部6に送信する。消火装置制御部6において、主制御部61は、火災検知装置11から受信した情報に基づき火災が発生しているか否かを判定する(ステップST101)。ここで、主制御部61は、例えば火災検知装置11での検知温度が設定温度を超える場合に、火災が発生していると判定する。主制御部61は、火災が発生している場合には(ステップST101:YES)、火災発生および火災発生位置を操作パネル7aに表示する(ステップST102)。また、照準制御部63は、発生位置に対応する制御データを記憶部66から取得し、消火装置3の旋回角、俯仰角およびノズルストローク等を制御する(ステップST103)。このとき、上記の旋回軸、俯仰軸および外筒33が、それぞれのモータを介して駆動される。また、添加制御部65は、火災発生時の弁制御を行う(ステップST104)。すなわち、第1弁54を開とし、第2弁59を閉とする。次に、給水制御部64は、給水弁41を開にし、ポンプモータ42により給水ポンプ43を駆動することで、第1配管R1に水を流通させる。このとき、第1弁54は開となっているので、消火用の薬剤が第1タンク51から第3配管R3および第2配管R2を介して第1配管R1の水流に吸い込まれるように添加される。これにより、泡の放出が開始される(ステップST105)。その後、主制御部61は、火災検知装置11から受信する情報に基づき、火災番地に変更があるか否かを所定のタイミングで判定し(ステップST106)、変更がある場合には(ステップST106:YES)、消火装置制御部6は、ステップST102~ステップST106を繰り返し、新たな火災位置の消火を行う。火災位置に変更がない場合には(ステップST106:NO)、主制御部61は、火災検知装置11から受信する検出情報に基づき泡の放出を終了するか否かの判定をする(ステップST107)。このとき、全体が鎮火し、火災検知装置11での検知温度が設定温度以下になっていれば、主制御部61は泡の放出を終了する(ステップST107:YES、ステップST108)。一方、検知温度がまだ設定温度を超えていれば、主制御部61は、泡の放出を続行し(ステップST107:NO)、ステップST106およびステップST107を繰り返す。なお、ここでは第1弁54を開放させて泡水溶液を放出する場合で説明したが、第1弁54を閉止しておき、水のみを放水して消火するようにしてもよい。
【0031】
悪臭検知装置12は、ゴミピット2内の悪臭の発生を監視しており、検出した情報を消火装置制御部6に送信する。上記のステップST101において、火災が発生していないと判定された場合(ステップST101:NO)、主制御部61は、悪臭検知装置12から受信した情報に基づき悪臭が発生しているか否かを判定する(ステップST111)。ここで、主制御部61は、例えば、悪臭検知装置12の測定値が設定値を超えている場合に悪臭が発生していると判定する。そして、悪臭が発生していない場合には(ステップST111:NO)、主制御部61はステップST101に戻り、火災信号が発生していないかの判定を行う。一方、悪臭が発生している場合(ステップST111:YES)、主制御部61は悪臭発生を操作パネル7aに表示する(ステップST112)。また、照準制御部63は、消火装置3のノズルストロークを制御する(ステップST113)。このとき、外筒33は、広範囲に泡を放出できるよう、モータ36を介して縮退した位置に移動される。添加制御部65は、悪臭発生時の弁制御を行う(ステップST114)。すなわち、添加制御部65は、第1弁54および第2弁59を開とする。次に、給水制御部64は、給水弁41を開にし、ポンプモータ42により給水ポンプ43を駆動することで、第1配管R1に水を流通させる。このとき、第1弁54および第2弁59はともに開となっているので、第3配管R3を介して第1タンク51の泡薬剤が、また、第4配管R4を介して第2タンク56のジェルが、第2配管R2を介して第1配管R1の水流へ添加される。これにより、泡の放出が開始される(ステップST115)。このとき放出される泡は、ジェルを含む泡水溶液から生成されたものであり、消火時に発生する泡よりも還元時間すなわち消失までの時間(泡水溶液に戻るまでの時間)が長い。その後、主制御部61は、泡の放出を終了するか否かを判定する(ステップST116)。このとき、主制御部61は、例えば、悪臭検知装置12から受信する測定値が設定値以下になっているときに泡の放出を終了する(ステップST116:YES、ステップST108)。一方、測定値が設定値を越えていれば、主制御部61は、泡の放出を続行し(ステップST116:NO)、ステップST116を繰り返す。
【0032】
なお、主制御部61は、ステップST116にて、泡の放出開始から所定時間が経過したときに泡の放出を終了するものでもよく、また操作室22から確認してゴミピット2内一面に泡が放出されたことを目視で確認できれば泡の放出を停止させてもよい。また、照準制御部63は、ステップST113にて、悪臭発生時に噴霧状に泡を放出する構成について説明したが、特にこれに限定されない。また、水への泡薬剤の混合方式として、一例として、水の通過によるベンチュリー作用により水に数パーセントの泡薬剤が混合される方式として説明したが泡薬剤と水との混合方式は特に限定されない。
【0033】
また、悪臭検知装置12は、ゴミピット2全体の臭気レベルをモニターする代わりに領域(番地)ごとにモニターし、消火装置制御部6は、ゴミピット2内の悪臭発生位置に局所的に泡を放出する構成であってもよい。この場合、悪臭検知装置12は、例えば、複数の臭いセンサを、ゴミピット2の天井等にサークル状あるいは上記の番地ごとに配置して構成する。そして、番地に関連づけられた各臭いセンサの検出情報に基づいて、主制御部61は、悪臭発生位置を照準制御部63に出力すればよい。
【0034】
あるいは、悪臭検知装置12は、1台の臭いセンサをクレーン21に配置したものであってもよい。臭気は空気中に拡散するため、一定の臭気レベルを有するゴミピット2内において悪臭が発生する位置を特定するのは困難であるが、このようにクレーン21に臭いセンサを設置した場合には、ゴミに接近して測定ができるため、悪臭発生位置は特定し易くなる。なおゴミピットの一般的な技術として、クレーンがゴミをつかんで移動する際、ゴミピットの番地毎に、どのくらいゴミがあるかというゴミ高さ情報がクレーンを上下方向に動かすときに計測され、そのゴミ高さ情報は記憶部66に記憶される。そして、ゴミ高さ情報をもとに消火装置3の照準制御が行われる。そこで、クレーンを移動させる際、ゴミピット2の番地毎にゴミ高さ情報と、その番地における臭いサンサの出力値を記憶させ、ゴミピット2の全エリア(番地)のデータがそろったら、臭いセンサの出力値が一番高い番地が、悪臭源があるものと判定するようにしてもよい。
【0035】
そして、悪臭の発生位置を特定できた場合には、消火設備1は、限られた領域にだけ泡を放出すればよいので、水、泡薬剤およびジェルの消費を抑えつつ、効率よく悪臭を断つことができる。また、照準制御部63は、特定された発生位置に応じて、
図4に示したような放射形状の切り替えを行えばよい。例えば、ゴミピット2内にて消火装置3の設置位置から離れた領域で悪臭が検知された場合に、照準制御部63は、泡を棒状に放出することで、噴霧状で放出させる場合よりも遠くに飛ばすことができ、悪臭発生位置まで泡を到達させることができる。
【0036】
以上のように、実施の形態1において、消火設備1は、ゴミピット2に消火装置3が設けられた消火設備1において、ゴミピット2内に悪臭が発生した際、ゴミピット2内に泡を放出し、悪臭源となるゴミを泡で覆うものである。
【0037】
これにより、消火設備1は、既存の消火装置3およびその回路等を利用して、悪臭が発生した際にゴミピット2内に泡を放出することができる。そして、悪臭源となるゴミの表面は泡で覆われるため、泡が形状を維持している間、悪臭の拡散が抑制でき、ゴミピット2およびゴミピット2周辺の環境が向上する。
【0038】
また、消火装置3は、ゴミピット2内に火災および悪臭の少なくとも一方が発生した際、泡を放出するものである。
【0039】
これにより、消火設備1は、悪臭が発生した際、消火用の消火装置3およびその回路等を使用して泡を発生し、放出することができる。このため、悪臭を抑えるための構造を新たに設ける必要がなく、泡を放出する制御を行えば安価に悪臭を断つことができる。
【0040】
また、悪臭が発生した際に放出される泡は、泡薬剤に粘土の高い物質を添加することにより生成され、消火に使用される泡に比べ泡水溶液へ戻る還元時間の長いものである。
【0041】
これにより、消火設備1は、悪臭が発生した際に、さらに例えばジェル等の粘度の高い物質を添加することによって消火用の泡薬剤に比べて還元時間が長い泡を生成することができる。したがって、特に悪臭発生時には、焼却炉に移されてゴミの焼却まで状態を維持できる泡が望まれるが、消火設備1は、このような泡により、悪臭防止効果を長時間持続することができる。
【0042】
ここで、消火装置3から放出する効率の良い泡の放出方法について説明する。泡は水に比べ軽いため遠くまで飛ばすことは難しい。このため消火装置3から泡を放出する場合は、消火装置3の近傍の番地に対して泡を噴霧状で放出する。そうすると、泡は流動性があるため、消火装置の近傍の番地からゴミ表面をつたって、ゴミピット2の全面にいきわたることになる。また、上述したように、ゴミは番地によって積み上げられた高さがゴミ高さ情報として記憶部66に記憶されている。泡の流動性を利用して、ゴミピット2内のゴミ全面を泡で覆う場合には、ゴミ高さが高い番地であって、かつ消火装置3の近い所にある番地を指定して、泡を放出することが望ましい。この場合は、山状に積まれたゴミの頂上部分をめがけて泡を放出すると、その頂上部分から下方に泡が流れて、ゴミピット2内のゴミ全面を泡で覆うことが可能となる。
【0043】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る消火設備を設置したゴミピットの概略構成図である。
図7は、本発明の実施の形態2に係る泡発生装置の構成を示す模式図である。以下、実施の形態2において、実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。
【0044】
図6に示すように、実施の形態2において、消火設備101は、消火装置103とは別に泡発生装置200を備え、消火装置103は、ゴミピット2内に火災が発生した際に水を放出し、泡発生装置200は、ゴミピット2内に悪臭が発した際に泡を放出する。
【0045】
図7に示すように、泡発生装置200は、筐体211と、泡水溶液Bを放射する放射ノズル212と、網213等とから構成される。放射ノズル212から噴出された泡水溶液Bは、網213に衝突する際に空気Aを吸い込むことで発泡する。なお、泡発生装置200は、泡を発生する機構を有していればどのような構造であってもよい。消火設備101は、
図7に示すような専用機を採用した場合、泡を大量に発生させることができるため、ゴミピット2内において広範囲のゴミを高速に泡で覆うことができる。
【0046】
貯水槽44の水は、給水ポンプ43等を介して、消火装置103および泡発生装置200にそれぞれ供給される。消火装置103は、第5配管R101を介して給水ポンプ43に接続され、第5配管R101には第1給水弁141が設けられている。泡発生装置200は、第6配管R201を介して給水ポンプ43に接続され、第6配管R201には第2給水弁241が設けられている。また、消火設備101は、実施の形態1の場合と同様に添加回路5を備えている。実施の形態2において、添加回路5の第2配管R2は第6配管R201にのみ接続されており、泡発生装置200には泡水溶液Bが供給される。
【0047】
そして、消火設備101は、ゴミピット2内に火災が発生した際に、第2給水弁241、第1弁54および第2弁59を閉とし、第1給水弁141を開とすることで、消火装置103から放水し、消火を行う。また消火設備101は、ゴミピット2内に悪臭が発生した際に、第1給水弁141を閉とし、第2給水弁241、第1弁54および第2弁59を開とすることで泡発生装置200から泡を放出する。ここで泡発生装置200は、例えば、泡の発泡倍率が500倍以上である高膨張泡消火装置と呼ばれるものを使用する。発泡倍率の高い泡を使用することで、ゴミピットのような防護面積の広い領域に対して、短時間で、ゴミの表面を泡で覆うことが可能となる。
【0048】
以上のように、実施の形態2においても、消火設備101は、実施の形態1の場合と同様に、ゴミピット2内に悪臭が発生した際、ゴミピット2内に泡を放出し、悪臭源となるゴミを泡で覆って悪臭の発生を断つことができる。また、消火設備101は、泡発生装置200および添加回路5を追加することで、既存の消火装置103の給水回路4および消火装置制御部6の一部を利用して、悪臭の発生を防止することができる。
【0049】
また、実施の形態2において、消火設備101は、泡を生成する泡発生装置200をさらに備え、消火装置103は、ゴミピット2内に火災が発生した際に水を放出し、泡発生装置200は、ゴミピット2内に悪臭が発生した際に泡を放出する。
【0050】
これより、消火設備101は、消火装置103と泡発生装置200とが分かれているので、泡発生装置200を泡発生専用器で構成し、泡を大量に高速で発生させることができる。そのため、消火設備101は、悪臭が発生した際、広範囲のゴミを速やかに泡で覆うことで、悪臭の拡散をさらに抑えることができる。
【0051】
なお、本発明の実施の形態は上記実施の形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、消火設備1、101が、悪臭検知装置12を備える場合について説明したが、操作部7等に手動スイッチを設け、手動スイッチが押下されたときに、ジェルが添加された泡が放出されるように構成されていてもよい。また、ゴミピット2はゴミが常時貯えられ、時間によって、悪臭が発生することが想定されるので、悪臭検知装置12を特に設けずに、タイマー制御により、定期的に泡を放出するようにしてもよい。またはゴミピット2は、ゴミの堆積量が増えると当然に悪臭が発生する可能性が高まることから、ゴミピット2内におけるゴミの高さ情報が所定値をこえたときに、泡を放出するようにしてもよい。
【0052】
また、消火設備1、101が2台の放水銃を備えている場合には、双方の放水銃で泡を放出するように構成するとよい。このような構成によれば、消火設備1、101は、ゴミピット2内において泡が散布されにくい領域を減らすことができ、悪臭発生を防止する確実性を高めることができる。
【0053】
また、添加回路5の構成は上記のものに限定されない。例えば、第1弁54を、第2配管R2に設ける替わりに第3配管R3に配置し、添加制御部65は、火災発生時には第1弁54を開にするとともに第2弁59を閉にし、悪臭発生時には第1弁54を開にするとともに第2弁59を開にするよう弁制御を行ってもよい。なお、泡薬剤にさらにジェルを添加したものを水と混合するようにしたが、予め、泡薬剤とジェルとを混合したものをタンクに貯蔵しておき、悪臭発生時にそのタンク内の薬剤と水とを混合して、泡を生成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,101 消火設備、2 ゴミピット、3,103 消火装置、4 給水回路、5 添加回路、6 消火装置制御部、7 操作部、7a 操作パネル、11 火災検知装置、12 悪臭検知装置、20 クレーン制御部、21 クレーン、22 クレーン操作室、23 操作盤、31 ノズル、32 ノズル本体、33 外筒、34 規制部材、35 支持板、36 モータ、38 混合機、39 手動操作部、41 給水弁、42 ポンプモータ、43 給水ポンプ、44 貯水槽、51 第1タンク、54 第1弁、56 第2タンク、59 第2弁、61 主制御部、62 タイマー、63 照準制御部、64 給水制御部、65 添加制御部、66 記憶部、71 操作モード選択部、72 番地指定部、73 検知情報表示部、141 第1給水弁、200 泡発生装置、211 筐体、212 放射ノズル、213 網、241 第2給水弁、A 空気、B 泡水溶液、R1 第1配管、R2 第2配管、R3 第3配管、R4 第4配管、R101 第5配管、R201 第6配管。