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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】吊戸装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/06 20060101AFI20220606BHJP
   E05F 7/04 20060101ALI20220606BHJP
   A61G 7/14 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
E05D15/06 119
E05D15/06 125Z
E05F7/04
A61G7/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017218997
(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公開番号】P2019090214
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】末光 伸行
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸一郎
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-339062(JP,A)
【文献】登録実用新案第3093473(JP,U)
【文献】実開昭62-091866(JP,U)
【文献】特表2008-531872(JP,A)
【文献】特開2009-215817(JP,A)
【文献】実開昭59-044428(JP,U)
【文献】国際公開第88/009159(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0201376(US,A1)
【文献】特開2002-295131(JP,A)
【文献】実開平01-109573(JP,U)
【文献】特開平11-115752(JP,A)
【文献】特開2001-090358(JP,A)
【文献】特開2019-002149(JP,A)
【文献】特開2012-024529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/06
E06B 3/46
A61G 7/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井側に支持されたレールと、該レールに沿って走行する吊具と、該吊具により前記レールに沿って移動可能に支持されるパネル体と、を備え、仕切部材により仕切られた空間同士を連通し、上方に前記レールに対して横切るように介護リフト装置を走行可能とするリフトレールが設置された通路を、前記パネル体を移動させることで開閉する吊戸装置であって、
前記吊具は、前記パネル体の幅方向のほぼ中央より前記パネル体の開方向側のみに固定されており、
前記パネル体は、前記吊具を支点とする該パネル体の閉方向の傾動を規制する支持手段として、該パネル体の閉方向側の下端のみに設けられ、床に当接する支持ローラまたは低摩擦部材を備えることを特徴とする吊戸装置。
【請求項2】
前記吊具は、前記パネル体の幅方向の開方向側に複数固定されていることを特徴とする請求項1に記載の吊戸装置。
【請求項3】
前記吊具は、前記パネル体の上端に固定されて上方に延びる支持部と、該支持部に軸支され、断面視略コ字状に形成された前記レールの内側に配置されたローラと、を備えて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の吊戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を繋ぐ通路を開閉する吊戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内空間は、壁等の仕切部材で複数の部屋に区画され、これら仕切られた部屋同士を通路により連通することで人の出入りが可能とされているとともに、仕切部材に通路を開閉する扉を設けることで部屋内のプライバシーが高められている。扉の一例としては、パネル体をレールに吊支させ幅方向に開閉操作することで通路を形成可能な、いわゆる吊戸装置がある。例えば、特許文献1の吊戸装置は、天井側に設置されるレールと、レールに沿って移動可能な複数の吊具と、幅方向の両端側にて吊具により吊支される吊戸と、を備えている。また、特許文献1の吊戸装置は、空間を仕切る仕切部材である間仕切パネル装置の一部を構成しており、門型に形成された間仕切パネル装置の本体部分に形成された通路に設置され、該通路を開閉可能としている。レールは、パネル体の幅方向の倍の寸法となっており、パネル体は通路の開状態では、間仕切パネル装置の本体部分に重なって収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3666443号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、屋内空間を構成する天井側には、梁や配管や照明等の構造物が下方に張り出している場合があり、このような構造物が存在する位置では、仕切部材に切り欠きや孔を形成することで、構造物に干渉しないように仕切部材を設置することになる。このような構造物が存在する位置において、特許文献1の吊戸装置を設置する場合にあっては、パネル体を吊支する吊具がパネル体の幅方向の両端側に配置されていることから、パネル体を開操作する際には、閉側の吊具はレールにおける通路の上方の幅方向の領域の端から端まで移動することになる。そのため、パネル体の開閉操作時において吊具が構造物に干渉しないためには、レールにおける通路の上方に位置する幅方向の全領域に構造物が位置しないように吊戸装置を設置する必要があり、吊戸装置の設置位置が制限されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、屋内空間を構成する天井側に構造物が下方に張り出している場合において、設置位置の自由度が高い吊戸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の吊戸装置は、
天井側に支持されたレールと、該レールに沿って走行する吊具と、該吊具により前記レールに沿って移動可能に支持されるパネル体と、を備え、仕切部材により仕切られた空間同士を連通し、上方に前記レールに対して横切るように介護リフト装置を走行可能とするリフトレールが設置された通路を、前記パネル体を移動させることで開閉する吊戸装置であって、
前記吊具は、前記パネル体の幅方向のほぼ中央より前記パネル体の開方向側のみに固定されており、
前記パネル体は、前記吊具を支点とする該パネル体の閉方向の傾動を規制する支持手段として、該パネル体の閉方向側の下端のみに設けられ、床に当接する支持ローラまたは低摩擦部材を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、パネル体をレールに吊支させる吊具が、パネル体の幅方向のほぼ中央よりパネル体の開方向側のみに固定され、方向側には配置されていないため、パネル体の上方における吊具の移動領域を通路の幅寸法より小さくすることができ、天井側の下方に張り出す構造物に干渉することなく吊具が移動可能となり、吊戸装置の設置位置が制限され難く、設置位置の自由度を高めることができる。
【0007】
前記吊具は、前記パネル体の幅方向の開方向側に複数固定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、パネル体の荷重を分散しパネル体を開閉方向に滑らかに移動させることができる。
【0008】
前記吊具は、前記パネル体の上端に固定されて上方に延びる支持部と、該支持部に軸支され、断面視略コ字状に形成された前記レールの内側に配置されたローラと、を備えて構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、パネル体の開方向側に配置されるローラユニットのローラが断面視略コ字状に形成されたレールの内側に下方から当接し、パネル体の中央側に配置されるローラユニットのローラがレールの内側に上方から当接することで、吊具がパネル体の開方向側に配置されることによる荷重バランスの偏りで生じるパネル体の傾動を規制でき、レールに対して安定して吊支させることができる。
【0009】
前記パネル体は、該パネル体の主面方向の傾動を規制する支持手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、支持手段により吊具がパネル体の開方向側に配置されることによる荷重バランスの偏りで生じるパネル体の傾動を規制し、レールに対して安定して吊支させることができる。
【0010】
リフトレールと該リフトレールに沿って走行可能な走行装置とを備えた介護リフト装置における前記リフトレールは、前記通路の上方、かつ前記レールに対して上面視交差するように設置されており、前記走行装置が前記レールを挟んで区画される空間の間で往復移動可能となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、レールに吊支されたパネル体の開閉方向の移動が、リフトレールに阻害されることがないばかりか、パネル体の閉状態では通路を通して走行装置を往復移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における吊戸装置を示す正面図である。
図2】同じく(a)はパネル体により通路を閉じた状態を示し、(b)はパネル体により通路を開けた状態を示す正面図である。
図3】同じく吊戸装置を示す側断面図である。
図4】同じくレールとリフトレールとの交差状態を示す見上げ図である。
図5】同じくレールとリフトレールとの交差状態を示す平断面図である。
図6】実施例2における吊戸装置のレール装置を示す一部を拡大した側断面図である。
図7】同じくパネル体の傾動時の吊支状態を示すイメージ図である。
図8】実施例2の変形例におけるパネル体の傾動時の吊支状態を示すイメージ図である。
図9】実施例3におけるパネル体の傾動時の吊支状態を示すイメージ図である。
図10】実施例4における吊戸装置のレール装置を示す一部を拡大した側断面図である。
図11】同じく吊戸装置を示す正面図である。
図12】同じくパネル体の傾動時の吊支状態を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る吊戸装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例に係る吊戸装置につき、図1から図5を参照して説明する。以下、図1の正面側を吊戸装置の前面側(正面側)として説明し、吊戸装置を正面側から見て左右を吊戸装置の幅方向(左右方向)として説明する。
【0014】
本実施例において、吊戸装置1は、病院の病室や介護施設等の屋内空間に設置される。図1に示されるように、屋内空間は、壁等の仕切部材2で複数の部屋に区画され、吊戸装置1は仕切部材2に形成された開口部2aを塞ぐように設置されており、後述するパネル体6を開操作することで、仕切部材2により仕切られた部屋(空間)R1,R2(図3参照)同士の間に人が通ることのできる通路E(図2参照)を形成できるようになっている。
【0015】
吊戸装置1は、床Fから天井Tに亘り立設される支柱3,3と、支柱3,3の上端に架設される上枠材4と、上枠材4の正面側に固定されるレール装置5と、レール装置5に吊支されるパネル体6と、上枠材4の下方に固定された戸袋パネル13と、を備えて構成されている。
【0016】
図2及び図3に示されるように、レール装置5は上枠材4に固定されるハンガーチャンネル7を備えている。ハンガーチャンネル7は下部に水平片7aを備え、この水平片7aの上には断面視略L字状のレール8が敷設されている。図3に示されるように、上枠材4を構成する板材4aの内側には、ハンガーチャンネル7を強固に固定するための補強材55が配置されており、ハンガーチャンネル7と補強材55とがネジ56,56により上枠材4を挟むように固定されている。
【0017】
図3に示されるように、レール8における正面側の起立片8bの上端は、後述するローラ10の溝部10aの円弧形状に対応する曲面形状に形成されて走行部8aを構成している。走行部8aの上には、パネル体6の上端に固定された吊具を構成する複数のローラユニット9A~9Cのローラ10A~10Cが位置しており、ローラユニット9A~9Cによりパネル体6が走行部8a上を幅方向に移動可能にレール8に吊支されている。レール8の開方向側の端部にはストッパ35が固定されており、パネル体6は開方向ではストッパ35により移動可能領域を規制され、閉方向では支柱3により移動可能領域を規制されている。
【0018】
ローラユニット9A~9Cは、同様の構成であるため、ここではローラユニット9Aのみ説明し、ローラユニット9B,9Cについての説明は省略する、ローラユニット9Aは、パネル体6の上端6aに固定されて上方に延びる支持部11と、支持部11に軸支されレール8の走行部8a上を走行可能なローラ10Aとから構成されている。ローラユニット9Aのローラ10Aは、外周面に亘り内向きに凹む円弧形状の溝部10aが形成されており、溝部10aが走行部8aを前後方向に挟むようにしてレール8上に位置する。
【0019】
また、図では詳述しないが、レール8の走行部8aは、パネル体6の閉方向に若干下向きに傾斜して設置されており、パネル体6が自重により閉方向に移動し、通路Eを閉じやすい構造となっている。図3に示されるように、パネル体6の下端には幅方向に渡って下向き略コ字状の溝6bが形成され、戸袋パネル13の通路E側の下端に取付けられたガイドローラ57に溝6bが遊嵌しており、パネル体6の前後方向の揺動が規制されている。
【0020】
また、レール装置5を構成するハンガーチャンネル7とレール8とは、欄間パネル12により被覆され、外部から視認できないようになっている。尚、ローラユニット9も同様に欄間パネル12に被覆される。図2では欄間パネル12を二点鎖線にて示している。
【0021】
図2(a)に示されるように、戸袋パネル13は、レール装置5の幅方向の全長のほぼ半分の幅寸法を備え、開口部2aの幅方向の半分の領域を閉塞している。図2(b)に示されるように、パネル体6は、戸袋パネル13側の端部の一部が戸袋パネル13に重なった状態で開口部2aにおける戸袋パネル13にて閉塞されていない残りの領域(通路E)を閉塞可能となっている。パネル体6は、ここでは詳述しないが、上下に延びる縦枠と左右に延びる横枠により構成された四方枠と四方枠に囲まれた透光性を有するガラス等で形成された板体とから主に構成されている。
【0022】
仕切部材2により仕切られた部屋R1または部屋R2には、図4に示されるように、リフトレール15がここでは図示しない固定手段により天井T(図1参照)に固定されており、リフトレール15には、該リフトレール15に沿って走行可能な走行装置16が吊支され、これらリフトレール15と走行装置16とにより介護リフト装置17が構成されている。尚、リフトレール15は通路Eよりも上方に位置していれば、天井Tに直接固定される構成に限らず、例えば上枠材4に固定されてもよい。
【0023】
介護リフト装置17は、寝たきり患者や介護が必要とされる移動困難者を部屋R1と部屋R2との間において移動させる際に、その移動を補助する装置である。患者や移動困難者には図示しないスリングシートを装着し、スリングシートをスリング18に吊り下げて使用する。介護リフト装置17の走行装置16は、ここでは詳述しないがリフトレール15に沿って走行可能な吊支装置19により吊支されている。また、走行装置16は、スリング18を巻き上げ可能となっており、走行装置16でスリングシートを吊り上げ、患者や移動困難者の体重を天井T側のリフトレール15で受けた状態で、患者や移動困難者の移動を容易に行えるようにしている。
【0024】
図4及び図5に示されるように、リフトレール15は、レール装置5と交差するように配置されている。詳しくは、リフトレール15は、通路Eの幅方向の略中央を通って仕切部材2により仕切られた部屋R1,R2間に亘り敷設され、その下方の開口15aが通路Eに連通している。これによれば、パネル体6を戸袋パネル13側に位置させた開状態において、走行装置16を仕切られた部屋R1,R2間を行き来させることができる。
【0025】
リフトレール15は、欄間パネル12に形成された下方に開放する切欠き12aと上枠材4に形成された下方に開放する切欠き4b内に配置され、ハンガーチャンネル7とレール8は、通路E側の幅方向のハンガーチャンネル7の端部7c及びレール8の端部8cがリフトレール15に近接した位置まで延設されている。つまり、ハンガーチャンネル7とレール8は、戸袋パネル13の上方からリフトレール15に干渉しない通路の幅方向の中央寄りまでの幅寸法を有している。
【0026】
図2に示されるように、パネル体6をレール8に吊支させるローラユニット9A~9Cは、パネル体6の幅方向の中央よりパネル体6の開方向側のみに固定されている。言い換えると、ローラユニット9A~9Cはパネル体6の方向側には配置されていないため、パネル体6の上方におけるローラユニット9A~9Cの移動領域を通路の幅寸法より小さくすることができ、天井T側の下方に張り出す構造物(ここではリフトレール15)に干渉することなくローラユニット9A~9Cが移動可能となり、吊戸装置1の設置位置が制限され難く、設置位置の自由度を高めることができる。
【0027】
また、パネル体6は、パネル体6の幅方向の中央よりパネル体6の幅方向側に固定された複数のローラユニット9A~9Cにより吊支されている。そのため、パネル体6の荷重を複数のローラ10A~10Cに分散でき、通路Eの開閉時においてパネル体6を滑らかに移動させることができる。
【0028】
また、パネル体6の幅方向の中央よりパネル体6の開方向側にローラユニット9A~9Cが偏って配置されることにより荷重バランスの偏りが生じるため、パネル体6の重量が大きい場合等には、最もパネル体6の中央側に配置されるローラユニット9Cを支点として方向側が下がるようにパネル体6が傾動する虞がある。そのため、パネル体6の閉方向の下端に床Fに当接するローラや低摩擦部材等の滑動部材(支持手段)を取付けることで、パネル体6の傾動を規制できるようにしてもよい。尚、このような滑動部材を取付けた場合には、パネル体6が走行部8aに形成された傾斜による自重により閉方向に移動する機能を失うことになるため、走行部8aは水平となるように設置することが好ましい。
【実施例2】
【0029】
次に、実施例2に係る吊戸装置につき、図6から図8を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0030】
図6に示されるように、レール装置25におけるハンガーチャンネル27の水平片27aの上には、断面視略C字状のレール28が敷設されている。レール28は、パネル体6の閉方向に若干下向傾斜する走行部28aを備えている。走行部28aは、上方に起立する起立片28bの上端により構成されている。また、レール28は起立片28bと対向するように起立片28bと対称形状の垂下片28cが形成されており、垂下片28cの下端が規制部28dを構成している。
【0031】
ローラユニット29Aのローラ20Aは、外周面に亘り内向きに凹む円弧形状の溝部20aが形成されており、ローラ20Aは走行部28aと規制部28dとの間に位置し、これら走行部28aと規制部28dとが溝部20a内に位置することで、ローラ20Aのレール28からの脱輪が防止されている。
【0032】
このようにレール28がローラ20を上下に挟むような構造であるため、図7に示されるように、荷重バランスの偏りによるパネル体6の傾動時には、最もパネル体6の開方向側に配置されるローラユニット29Aのローラ20Aがレール28の規制部28dに当接し、最もパネル体6の閉方向側に配置されるローラユニット29Cのローラ20Cがレール28の走行部28aに当接し、パネル体6の傾動が規制される。
【0033】
尚、図8に示される変形例のように、最もパネル体6の開方向側に配置されるローラユニット29Aの支持部21Aにおけるローラ20Aの軸芯22Aとパネル体6の上端6aとの上下方向の長さ寸法L1と、ローラユニット29Aに隣接するローラユニット29Bの支持部21Bにおけるローラ20Bの軸芯22Bとパネル体6の上端6aとの上下方向の長さ寸法L1とが、最もパネル体6の閉方向側に配置されるローラユニット29Cの支持部21Cにおけるローラ20Cの軸芯22Cとパネル体6の上端6aとの上下方向の長さ寸法L2に比べて長くなるように形成してもよい。
【0034】
これによれば、荷重バランスの偏りによるパネル体6の傾斜の影響を受け易いパネル体6の閉方向側に配置されるローラユニット29Cのローラ20Cの軸芯22Cとパネル体6の上端6aとの上下方向の長さ寸法L2を前述した長さ寸法L1に比べて短く形成しておくことで、パネル体6の傾斜を少なくできる。尚、予想される荷重バランスの偏りによるパネル体6の傾斜度合いに対応するように前述の長さ寸法L1と長さ寸法L2を設定しておくことで、パネル体6の傾斜分を相殺し、パネル体6を水平に吊支させることができる。
【0035】
また、パネル体6の傾動時におけるモーメントによる応力を複数のローラ20A,20Bに分散させ、ローラユニット29A,29Bやレール28の破損を防止するとともに、摩擦を減らしてパネル体6をスムーズに移動可能とすることができる。
【0036】
また、最もパネル体6の閉方向側に配置されるローラユニット29Cのローラ20Cと走行部28aとの接点である支点から、作用点となる最もパネル体6の開方向側に配置されるローラユニット29Aのローラ20Aと規制部28dとの接点との距離が長いほど、パネル体6の傾動に伴うモーメントは小さくなるため、ローラユニット29Aのローラ20Aは、パネル体6の幅方向における端部に出来る限り近接して配置されることが好ましい。更に、最もパネル体6の閉方向側に配置されるローラユニット29Cのローラ20Cもまた、モーメントを小さくするために出来る限りパネル体6の幅方向の中央の近傍に配置されることが好ましい。
【実施例3】
【0037】
次に、実施例3に係る吊戸装置につき、図9を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0038】
図9に示されるように、ローラユニット39Aは、支持部31と、支持部31に軸支され、支持部31と相対的に回動可能な板状の回動部材32と、回動部材32の長手方向の両端にそれぞれ軸支されるローラ30A,30Aとから主に構成されている。ローラユニット39Bも同様の構造である。
【0039】
パネル体6が傾斜した際には、最もパネル体6の開方向側に配置されるローラユニット39Aにおいては、レール28の規制部28dに開方向側のローラ30Aが押し付けられる反力で回動部材32が回動し、回動部材32に軸支されたローラ30A,30Aがレール28の規制部28dにそれぞれ当接する。一方の最もパネル体6の中央側に配置されるローラユニット39Bにおいては、レール28の走行部28aに中央側のローラ30Bが押し付けられる反力で回動部材32が回動し、回動部材32に軸支されたローラ30B,30Bがレール28の走行部28aにそれぞれ当接する。
【0040】
これによれば、パネル体6の傾斜に関わらず規制部28d及び走行部28aに、それぞれ複数のローラ30A,30A及びローラ30B,30Bを確実に当接させることができ、パネル体6の荷重やモーメントによる応力を分散した状態でパネル体6を吊支させることができるとともに、摩擦を減らしてパネル体6をスムーズに移動可能となる。
【実施例4】
【0041】
次に、実施例4に係る吊戸装置につき、図10から図12を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0042】
図10に示されるように、レール装置45は、上枠材4に固定されるハンガーチャンネル47と、ハンガーチャンネル47に固定されて敷設される断面視略C字状のレール48とから主に構成されている。
【0043】
レール48にパネル体6を吊支させる吊具49は、パネル体6の上端6aに固定されて上方に起立する支持部41と、支持部41の裏側に固定されてレール48の内部に配置される可動レール部42とを備える所謂サスペンションレールである。可動レール部42の上下端には後方に突出する突出片42a,42bが延設されており、突出片42a,42bとレール48の上下端から前方に突出する保持片48a,48bとの間に鋼球44,44,…が複数配置されている。尚、本実施例では、鋼球44,44,…は吊具49を構成するものとして説明する。
【0044】
可動レール部42の突出片42a,42bと、レール48の保持片48a,48bとは、それぞれ対向する面が鋼球44の球面に対応する円弧形状となっており、鋼球44を介して可動レール部42とレール48との前後方向の脱落が防止されている。レール48の下方側の保持片48bにおける鋼球44との当接部分が走行部50aとして機能し、レールの上方側の保持片48aにおける鋼球44との当接部分が規制部50dとして機能する。
【0045】
図11に示されるように、可動レール部42はパネル体6の開方向側の端部近傍からパネル体6の中央寄りまでの幅寸法を有している。
【0046】
可動レール部42の突出片42a,42bと、鋼球44と、レール48の保持片48a,48bとのそれぞれの対向箇所にはほぼ間隙がなく、常に当接した状態となっており、かつ可動レール部42はパネル体6の開方向側の端部近傍からパネル体6の中央寄りまでの幅寸法を有しているため、荷重バランスの偏りによるパネル体6の傾動が効果的に防止される。
【0047】
このようにレール48が可動レール部42を上下に挟むような構造であるため、図12に示されるように、荷重バランスの偏りによるパネル体6の傾動時には、最もパネル体6の閉方向側に配置される鋼球44Aとレール48の走行部50aとの間で荷重を受け、最もパネル体6の開方向側に配置される鋼球44Bとレール48の規制部50dとの間にモーメントによる応力を受ける。これら最もパネル体6の閉方向側に配置される鋼球44Aと最もパネル体6の開方向側に配置される鋼球44Bとに作用する応力は、幅方向に延びる一体構造の可動レール部42の幅方向の全体に分散されるため、可動レール部42の破損を防止することができる。また、可動レール部42は上下に延びる板体から構成されているため、最もパネル体6の閉方向側に配置される鋼球44Aと最もパネル体6の開方向側に配置される鋼球44Bとを介して上下方向に可動レール部42に挟圧するように作用する力は、強度の高い可動レール部42の上下方向で受けることができ、可動レール部42の撓みが防止され、パネル体6を水平に吊支することができる。
【0048】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施例では、パネル体6をレールに吊支する吊具として、ローラユニットやサスペンションレールとして説明したが、このような構成に限らず、レールにパネル体6を幅方向に移動可能に吊支できるものであればどのような構成であってもよい。
【0050】
また、前記実施例において吊戸装置1は、支柱3,3と上枠材4とを有し、上枠材4の前面にレール装置を固定する構成で説明したが、これに限らず、例えばレールは開口が通路Eに露出するように天井Tに埋設されていてもよい。
【0051】
また、パネル体6が開状態において仕切部材に重なるように収納される構成でもよく、この場合には吊戸装置1から戸袋パネル13が省略される。
【0052】
また、前記実施例では、天井T側の下方に張り出す構造物として、リフトレール15を例に説明したが、これに限らず、天井T側の下方に梁や配管や照明等の構造物が張り出している場合にも利用できることはいうまでもなく、本発明に係る吊戸装置を用いることで、構造物に干渉しないようにパネル体6を移動可能に吊支することができる。
【0053】
また、前記実施例においてパネル体6をレールに吊支する吊具は、パネル体6の幅方向のほぼ中央よりパネル体6の開方向側のみに固定されている構成としているが、屋内空間を構成する天井T側に構造物が下方に張り出している場合において、設置位置の自由度を高めるという目的から、吊具の幅方向における閉方向の端部がパネル体6の幅方向の中央の鉛直上方に若干重なる構成も含み得る。
【0054】
また、前記実施例においてパネル体6の傾動を規制する支持手段として、パネル体6の閉方向の下端に床Fに当接するローラや低摩擦部材等の滑動部材を取り付ける構成を例に挙げたが、これに限らず、支持手段は、パネル体6の開方向の上端6aからレールの下端に向けて突出するローラや低摩擦部材等の滑動部材等であってもよい。これによれば、床Fの凹凸の有無に関わらずパネル体6を水平に支持することができる。
【0055】
また、吊戸装置は仕切部材により仕切られた空間同士を連通する通路を開閉するものであり、前記実施例のように部屋R1と部屋R2との間に用いられる態様に限らず、例えば部屋と廊下等とを仕切る仕切部材の開口を塞ぐように設置して利用することもできる。
【0056】
また、前記実施例においては、リフトレール15は通路Eの幅方向の中央からパネル体6の閉方向側に寄って配置される態様で説明したが、通路Eの幅方向中央に配置してもよく、この場合レール及びパネル体6をレールに吊支する吊具は、リフトレール15の幅方向の寸法を考慮して、通路Eの閉状態における閉方向側の支柱3からレールの端部までの距離と、最も閉方向側の吊具の端部と当該支柱3との距離が設定される。
【符号の説明】
【0057】
1 吊戸装置
2 仕切部材
2a 開口部
3,3 支柱
4 上枠材
5 レール装置
6 パネル体
6a 上端
7 ハンガーチャンネル
7a 水平片
8 レール
8a 走行部
9A~9C ローラユニット
10A~10C ローラ
10a 溝部
11 支持部
12 欄間パネル
13 戸袋パネル
15 リフトレール
15a 開口
16 走行装置
17 介護リフト装置
20A~20C ローラ
20a 溝部
21A~21C 支持部
22A~21C 軸芯
25 レール装置
27 ハンガーチャンネル
27a 水平片
28 レール
28a 走行部
28d 規制部
29A~29C ローラユニット
30A,30A ローラ
31 支持部
32 回動部材
39A,39B ローラユニット
41 支持部
42 可動レール部
42a,42b 突出片
44 鋼球
45 レール装置
47 ハンガーチャンネル
48 レール
48a,48b 保持片
49 吊具
50a 走行部
50d 規制部
E 通路
F 床
L1,L2 長さ寸法
R1,R2 部屋
T 天井
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12