(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】鋼板セルの設置方法および鋼板セル
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
E02B3/06
(21)【出願番号】P 2018020997
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮本 卓次郎
(72)【発明者】
【氏名】正木 洋二
(72)【発明者】
【氏名】松野 進
(72)【発明者】
【氏名】中西 文雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 和之
(72)【発明者】
【氏名】能地 優
(72)【発明者】
【氏名】澤井 力
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-204965(JP,A)
【文献】特開昭61-130512(JP,A)
【文献】特開2013-249689(JP,A)
【文献】特開2002-212930(JP,A)
【文献】特開2013-111547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0094623(US,A1)
【文献】特開2008-223316(JP,A)
【文献】特許第4778460(JP,B2)
【文献】特開平10-054018(JP,A)
【文献】特開平02-058631(JP,A)
【文献】実公昭44-000207(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のセル本体を有し、水底地盤の床掘部に形成された敷石部に設置される鋼板セルの設置方法であって、
前記セル本体を軸方向が鉛直方向となる状態で前記敷石部の上面に設置する本体設置工程と、
前記本体設置工程の後、前記セル本体の底部の開口を底蓋によって閉塞する閉塞工程と、
前記閉塞工程の後、前記セル本体の内部に中詰材を充填する中詰め工程と、
前記床堀部を埋め戻す埋め戻し工程とを備え
、
前記セル本体の底部の端面には、内径が前記セル本体の内径よりも小さい環状のベース板が予め固定されており、
前記本体設置工程では、前記ベース板が前記敷石部の上面に接するように前記セル本体を設置し、
前記閉塞工程では、前記底蓋を前記ベース板の上面に設置することによって前記セル本体の底部の開口を閉塞する
ことを特徴とする鋼板セルの設置方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の鋼板セルの設置方法において、
前記底蓋は、前記セル本体の内径よりも小さく且つ前記ベース板の内径よりも大きい外径を有する円板状に形成され
ている
ことを特徴とする鋼板セルの設置方法。
【請求項3】
請求項
1に記載の鋼板セルの設置方法において、
前記底蓋は、外径が前記ベース板の内径よりも小さい円板部材と、円環状の板部材がその周方向に分割された複数の分割体とを有し、
前記閉塞工程では、前記円板部材を前記ベース板の内側において前記敷石部の上面に設置し、その後、前記複数の分割体を、前記円板部材の上面と前記ベース板の上面とに跨るように設置し、且つ、互いに隣り合う前記分割体同士が接するように前記円板部材の周方向に配列することによって、前記セル本体の底部の開口を閉塞する
ことを特徴とする鋼板セルの設置方法。
【請求項4】
請求項
2または
3に記載の鋼板セルの設置方法において、
前記閉塞工程の後であって前記中詰め工程の前に、前記セル本体の内部に水を供給して該内部の水位を増加させる水位増加工程を備えている
ことを特徴とする鋼板セルの設置方法。
【請求項5】
請求項
2または
3に記載の鋼板セルの設置方法において、
前記セル本体は、該セル本体の軸方向に延びると共に前記セル本体の内周面から突出して設けられた補剛材を有しており、
前記ベース板は、内縁部が前記補剛材よりも内方に位置している
ことを特徴とする鋼板セルの設置方法。
【請求項6】
請求項
1に記載の鋼板セルの設置方法において、
前記底蓋は、ヒンジ部と、該ヒンジ部にそれぞれ接続された2つの回動体とを有し、互いに閉じた状態の前記2つの回動体が回動して互いに開くことによって、前記セル本体の底部の開口を閉塞するように構成されている
ことを特徴とする鋼板セルの設置方法。
【請求項7】
円筒状のセル本体を有し、水底地盤の床掘部に形成された敷石部に設置される鋼板セルの設置方法であって、
前記セル本体の軸方向視の外形よりも大きい板状の底蓋を前記敷石部の上面に設置する蓋設置工程と、
前記蓋設置工程の後、前記セル本体を軸方向が鉛直方向となる状態で前記底蓋の上面に設置することにより、前記セル本体の底部の開口が前記底蓋によって閉塞される本体設置工程と、
前記本体設置工程の後、前記セル本体の内部に中詰材を充填する中詰め工程と、
前記床堀部を埋め戻す埋め戻し工程とを備え
、
前記セル本体の底部の端面には、内径が前記セル本体の内径よりも小さい環状のベース板が予め固定されており、
前記本体設置工程では、前記ベース板が前記底蓋の上面に接するように前記セル本体を設置する
ことを特徴とする鋼板セルの設置方法。
【請求項8】
水底地盤の床掘部に形成された敷石部に設置され、該設置後に前記床堀部が埋め戻しされる鋼板セルであって、
軸方向が鉛直方向となる状態で、前記敷石部の上面に設置される円筒状のセル本体と、
前記セル本体が設置された後であって前記セル本体の内部に中詰材が充填される前に、前記セル本体の底部の開口を閉塞する底蓋とを備え
、
前記セル本体の底部の端面には、内径が前記セル本体の内径よりも小さい環状に形成され、前記敷石部に接するベース板が設けられており、
前記底蓋は、前記セル本体の内径よりも小さく且つ前記ベース板の内径よりも大きい外径を有する円板状に形成され、前記ベース板の上面に設置されることによって前記セル本体の底部の開口を閉塞するように構成されている
ことを特徴とする鋼板セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、鋼板セルの設置方法および鋼板セルに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板セルの設置方法として、例えば特許文献1に開示されているように、掘削した海底地盤に鋼板セルを配置した後、その周辺を埋め戻して根入れを行う、いわゆる床掘式の工法が知られている。この特許文献1では、掘削した海底地盤に敷石層を形成し、敷石層の上に円筒状の鋼板セルを配置する。そして、鋼板セルの周辺を埋め戻して根入れを行うと共に、鋼板セルの内部に中詰材を充填する。中詰材の充填によって、潮流や波浪による鋼板セルの移動や変形が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した鋼板セルの設置方法または構成では、鋼板セルから中詰材が流出する場合がある。即ち、敷石層の隙間から粒度の細かい中詰材が流出する。さらには、敷石層の隙間を介して鋼板セルの内外が連通しているため、潮位変動により敷石層の隙間を通じて内外の海水の流れが生じる。これにより、中詰材が流出し易くなる。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、鋼板セル内の中詰材の流出を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、円筒状のセル本体を有し、水底地盤の床掘部に形成された敷石部に設置される鋼板セルの設置方法に係るものである。本願の鋼板セルの設置方法は、本体設置工程と、閉塞工程と、中詰め工程と、埋め戻し工程とを備えている。前記本体設置工程は、前記セル本体を軸方向が鉛直方向となる状態で前記敷石部の上面に設置する工程である。前記閉塞工程は、前記本体設置工程の後、前記セル本体の底部の開口を底蓋によって閉塞する工程である。前記中詰め工程は、前記閉塞工程の後、前記セル本体の内部に中詰材を充填する工程である。前記埋め戻し工程は、前記床堀部を埋め戻す工程である。
【0007】
また、本願に開示の技術は、水底地盤の床掘部に形成された敷石部に設置され、該設置後に前記床堀部が埋め戻しされる鋼板セルに係るものである。本願の鋼板セルは、セル本体と、底蓋とを備えている。前記セル本体は、軸方向が鉛直方向となる状態で、前記敷石部の上面に設置される円筒状のものである。前記底蓋は、前記セル本体が設置された後であって前記セル本体の内部に中詰材が充填される前に、前記セル本体の底部の開口を閉塞するものである。
【発明の効果】
【0008】
本願の鋼板セルの設置方法または鋼板セルによれば、鋼板セル内の中詰材の流出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る鋼板セルの設置構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の変形例1に係る鋼板セルの設置構造を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1の変形例2に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の変形例2に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例2に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態1の変形例3に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例4に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態1の変形例5に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態1の変形例5に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る鋼板セルの設置方法の一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
(実施形態1)
本実施形態の鋼板セルは、護岸、岸壁、防波堤等の構築に利用されるものであり、いわゆる根入れ式のものである。
図1は、鋼板セル10が据え付けられた状態を表す鋼板セル10の設置構造1について示す図である。
【0012】
図1に示すように、鋼板セル10は、水底地盤2(例えば、海底地盤)の床堀部3に設置される。床堀部3は、水底地盤2の表面が掘削されて成る凹部であり、敷石部4が形成されている。敷石部4は、粒度が比較的大きなズリ等が敷き詰められている。鋼板セル10は、敷石部4の上面に設置される。床堀部3における鋼板セル10の周辺は、埋め戻し部5となっている。埋め戻し部5は、鋼板セル10の設置完了後に、埋め戻し材によって埋め戻しされる。
【0013】
鋼板セル10は、セル本体11と、ベース板12と、底蓋13とを備えている。
【0014】
セル本体11は、円筒状に形成された鋼製部材である。セル本体11は、軸方向が鉛直方向(上下方向)となる状態で、敷石部4の上面に設置される(載せ置かれる)ものである。ベース板12は、円環状の板部材である。ベース板12の外径は、セル本体11の外径よりも大きい、ベース板12の内径は、セル本体11の内径よりも小さい。ベース板12は、セル本体11の底部(下部)の端面に設けられている。つまり、ベース板12は、外縁部がセル本体11よりも外方に突出し(張り出し)ており、内縁部がセル本体11よりも内方に突出し(張り出し)ている。セル本体11は、ベース板12の下面が敷石部4の上面に接する状態で敷石部4に設置されている。
【0015】
底蓋13は、セル本体11が敷石部4に設置された後であってセル本体11の内部に中詰材14が充填される前に、セル本体11の底部の開口を閉塞するものである。ここで、上述したようにセル本体11の底部の端面には円環状のベース板12が設けられているため、セル本体11の底部の開口はベース板12の開口12aとなる。
【0016】
具体的に、底蓋13は円板状に形成されている。底蓋13の外径は、セル本体11の内径よりも小さく且つベース板12の内径(開口12aの径)よりも大きい。底蓋13は、セル本体11の内部において、ベース板12の上面に設置される(載せ置かれる)ことによってベース板12の開口12a(即ち、セル本体11の底部の開口)を閉塞するように構成されている。なお、本実施形態の底蓋13は、ベース板12の上面に置かれているだけであり、ベース板12を含め他の部材とボルトや溶接等の接合手段によって固定されているものではない。ただし、本願に開示の技術はこれに限らず、底蓋はボルトや溶接等で固定されるものであってもよい。
【0017】
また
図4に示すように、セル本体11は、多数の補剛材11aを有している。補剛材11aは、セル本体11の内周面に設けられており、セル本体11の周方向において等間隔で設けられている。補剛材11aは、セル本体11の軸方向に延びると共にセル本体11の内周面から突出している。ベース板12は、内縁部が補剛材11aよりも内方に位置している。つまり、ベース板12の内縁部は、補剛材11aの先端よりも内方に張り出している。こうして補剛材11aよりも内方に張り出しているベース板12の上面に、底蓋13が設置されている。
【0018】
中詰材14は、底蓋13によってベース板12の開口12aが閉塞された後に、セル本体11の内部に充填されるものである。中詰材14は、土砂等の粒度が比較的小さい(敷石部4の敷石よりも粒度が小さい)ものである。
【0019】
セル本体11の上端部には、蓋コンクリート15が設けられている。蓋コンクリート15は、円板状に形成されており、外径がセル本体11の内径と略同等であり、セル本体11の上部の端面と面一に設けられている。蓋コンクリート15は、中詰材14がセル本体11の上部から流出しないように、セル本体11の上部の開口を閉塞する蓋の機能を有している。また、蓋コンクリート15は護岸等の上面の一部を構成している。
【0020】
〈鋼板セルの設置方法〉
上述のように構成された鋼板セル10の設置方法について
図1~
図5を参照しながら説明する。鋼板セル10の設置方法は、本体設置工程と、閉塞工程と、水位増加工程と、中詰め工程と、埋め戻し工程とを備えると共に、これらの工程に先立って行われる前工程(準備工程)を備えている。
【0021】
先ず、前工程では、水底地盤2の表面が掘削されて凹状の床堀部3が形成される。そして、床堀部3において、敷石が敷き詰められて敷石部4が形成される。敷石部4の上面はなるべく平坦に均される。
【0022】
前工程が終了すると、本体設置工程が行われる。本体設置工程は、
図2に示すように、予め底部の端面にベース板12が固定されたセル本体11を、軸方向が鉛直方向となる状態で敷石部4の上面に設置する工程である。つまり、セル本体11の軸方向に沿ってセル本体11およびベース板12を水中に沈めていき、ベース板12を敷石部4の上面に接触させて設置する。その際、セル本体11の底部の開口(即ち、ベース板12の開口12a)は閉塞されていないため、浮力や水圧の影響を殆ど受けることなく、セル本体11およびベース板12を沈めることができる。
【0023】
こうしてセル本体11が設置された状態では、セル本体11の内外が敷石部4の隙間を介して連通している。そのため、セル本体11の内部の水位と外部の水位と(セル本体11の内外の水位)は同一となる。
【0024】
本体設置工程に続いて、閉塞工程が行われる。閉塞工程は、セル本体11の底部の開口を底蓋13によって閉塞する工程である。具体的には、
図3および
図4に示すように、底蓋13がセル本体11の内部に沈められ、底蓋13がベース板12の上面に設置されることによって、セル本体11の底部の開口が閉塞される。この状態では、セル本体11の底部において内外の連通が底蓋13によって遮断される。なお、この状態ではセル本体11の内外の水位は変わらず同一である。
【0025】
閉塞工程に続いて、水位増加工程が行われる。水位増加工程は、セル本体11の内部に水を供給して内部の水位(以下、内水位ともいう。)を増加させる工程である。具体的には、
図3に示すように、セル本体11の外部の水が、ポンプ等によってセル本体11の内部に供給される(
図3に示す矢印を参照)。上述したようにセル本体11の底部では内外の連通が底蓋13によって遮断されているため、その状態でセル本体11の内部に水が供給されると、セル本体11の内水位が増加(上昇)する。セル本体11内への水の供給は、例えば、内水位がセル本体11の上端付近に到達するまで行われる。
【0026】
こうして、セル本体11の内水位が増加すると、セル本体11内の水圧が増加する。つまり、セル本体11内において下向きへ作用する水圧および径方向外方へ作用する水圧が増加する。下向きの水圧が増加することにより、セル本体11の移動が抑制されると共に、底蓋13とベース板12とがより密着する。また、径方向外方へ作用する水圧が増加することにより、セル本体11の変形や移動が抑制される。
【0027】
水位増加工程に続いて、中詰め工程が行われる。中詰め工程は、
図5に示すように、セル本体11の内部に中詰材14を投入して充填する工程である。中詰め工程では、セル本体11の底部の開口(ベース板12の開口12a)が底蓋13によって閉塞されているため、セル本体11内に投入された中詰材14が開口12aから敷石部4を介して外部へ流出することはない。中詰材14は、セル本体11の上端よりも少し低い位置まで充填される。
【0028】
中詰め工程に続いて、埋め戻し工程が行われる。埋め戻し工程は、床堀部3を埋め戻すと共に、蓋コンクリート15を設置する工程である。具体的には、
図1に示すように、床堀部3の埋め戻し部5が埋め戻し材(例えば、敷石部4と同様の敷石)で埋め戻される。こうして床堀部3が埋め戻しされることで、鋼板セル10の根入れが行われる。また、セル本体11の上端部において中詰材14の上面にコンクリートが打設されることにより蓋コンクリート15が形成され、セル本体11の上端が閉塞される。
【0029】
以上のように、上記実施形態1の鋼板セル10は、軸方向が鉛直方向となる状態で敷石部4の上面に設置される円筒状のセル本体11と、セル本体11が設置された後であってセル本体11の内部に中詰材14が充填される前に、セル本体11の底部の開口(ベース板12の開口12a)を閉塞する底蓋13とを備えている。
【0030】
また、上記実施形態1の鋼板セル10の設置方法は、円筒状のセル本体11を軸方向が鉛直方向となる状態で敷石部4の上面に設置し(本体設置工程)、次いで、セル本体11の底部の開口を底蓋13によって閉塞し(閉塞工程)、次いで、セル本体11の内部に中詰材14を充填する(中詰め工程)ようにした。
【0031】
上記の構成によれば、セル本体11を水中に沈める際、セル本体11の底部の開口は開放されているため、浮力や水圧の影響を殆ど受けることなく、セル本体11を水中に沈めることができる。そして、中詰材14をセル本体11内に充填する際、セル本体11の底部の開口は底蓋13によって閉塞されているため、中詰材14の外部への流出を抑制することができる。
【0032】
また、上記実施形態1では、セル本体11の底部の端面に、内径がセル本体11の内径よりも小さい環状に形成され、敷石部4に接するベース板12が設けられている。この構成によれば、敷石部4に設置されたセル本体11の姿勢を安定させることができる。
【0033】
また、上記実施形態1において、底蓋13は、セル本体11の内径よりも小さく且つベース板12の内径よりも大きい外径を有する円板状に形成されている。さらに、底蓋13は、ベース板12の上面に設置されることによってセル本体11の底部の開口を閉塞する。この構成によれば、セル本体11が敷石部4に設置された後であっても、簡易な方法でセル本体11の底部の開口を閉塞することができる。
【0034】
さらに、上記実施形態1では、セル本体11は、その軸方向に延びると共にセル本体11の内周面から突出して設けられた補剛材11aを有しており、ベース板12は、内縁部が補剛材11aよりも内方に位置している。この構成によれば、セル本体11の剛性を向上させつつも、確実に底蓋13をベース板12の上面に設置することができる。
【0035】
また、上記実施形態1では、閉塞工程に続いて、セル本体11の内部に水を供給して該内部の水位を増加させるようにした(水位増加工程)。この構成によれば、セル本体11内において下向きへ作用する水圧および径方向外方へ作用する水圧が増加する。下向きの水圧が増加することにより、底蓋13とベース板12とをより密着させることができる。そのため、中詰材14の流出を一層抑制することができる。
【0036】
また、径方向外方へ作用する水圧が増加するとことにより、中詰材14の充填が完了するまでにおいて、波浪によって引き起こされるセル本体11の変形を抑制することができる。また、下向きへ作用する水圧が増加することにより、中詰材14の充填が完了するまでにおいて、潮流や波浪によって引き起こされるセル本体11の移動を抑制することができる。
【0037】
(実施形態1の変形例1)
本変形例は、上記実施形態1のセル本体11の内部および床堀部3において、水中コンクリートを打設するようにした。
【0038】
具体的には、
図6に示すように、セル本体11内において底部側(即ち、底蓋13側)には水中コンクリート17が打設され、上部側には上記実施形態1と同様に中詰材18が充填される。こうしてセル本体11内の底部側に水中コンクリート17を打設することにより、セル本体11の底部の開口をより閉塞することができ、それによって、中詰材18の流出をより抑制することができる。このように、本変形例の中詰め工程では、先ずセル本体11内の底部側に水中コンクリート17が打設され、その後、中詰材18が充填される。なお、セル本体11の底部の開口が底蓋13によって閉塞されているので、水中コンクリート17の打設の際、硬化前コンクリートが流出するのを抑制することができる。
【0039】
また、床堀部3の埋め戻し部6において水中コンクリートが打設される。セル本体11の底部の開口が閉塞されていることから、セル本体11の底部において内外の水の流れは生じない。そのため、水中コンクリートの施工を容易に行うことができる。したがって、例えば上記実施形態1のように敷石を敷き詰める場合に比べて、埋め戻しを容易に行うことができる。このように、本変形例の埋め戻し工程では、埋め戻し材として水中コンクリートが用いられる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態1と同様である。
【0040】
(実施形態1の変形例2)
本変形例は、上記実施形態1において底蓋の構成を変更するようにした。
図7~
図9に示すように、本変形例の底蓋20は、2つの回動体21と、ヒンジ部22と、ワイヤロープ23とを備えている。
【0041】
ヒンジ部22は、ベース板12の径方向に延びる軸状に形成されている。ヒンジ部22は、長さがセル本体11の内径よりも短く且つベース板12の内径よりも長い。ヒンジ部22は、両端がベース板12の上面に固定されている。2つの回動体21は、それぞれ、略半円状の板部材であり、ヒンジ部22に回動自在に接続されている。ワイヤロープ23は、2つの回動体21のそれぞれに懸けられている。詳しくは、ワイヤロープ23は、一端はセル本体11の底部側の端部に設けられ、他端は回動体21の先端を介してセル本体11の外部の例えば船に繋がっている。
【0042】
底蓋20は、互いに閉じた状態の2つの回動体21が回動して互いに開くことによって、セル本体11の底部の開口(開口12a)を閉塞するように構成されている。具体的に、底蓋20は、予め陸上でセル本体11の内部に取り付けられている。また、底蓋20は、2つの回動体21が互いに接近して閉じた状態(
図7および
図8に示す状態)でセル本体11に取り付けられている。底蓋20は、上述した本体設置工程において、セル本体11と共に、水中に沈められ、セル本体11が敷石部4に設置される(
図7参照)。その際、セル本体11の底部の開口(開口12a)は閉塞されていないため、浮力や水圧の影響を受けることはない。
【0043】
続く閉塞工程では、底蓋20によってセル本体11の底部の開口(開口12a)が閉塞される。具体的に、底蓋20は、船によってワイヤロープ23が引っ張られる。ワイヤロープ23は、船によって引っ張られるのに伴って、セル本体11の内周面に近づく。一方、ワイヤロープ23がセル本体11の内周面に近づくにつれて、2つの回動体21はそれぞれ
図7に示す矢印の方向に回動する。そして、2つの回動体21は、略90度回動すると、ベース板12の上面に接して停止する。これにより、2つの回動体21は、互いに離隔して開いた状態(
図9に示す状態)になり、セル本体11の底部の開口(開口12a)を閉塞する。なお、この状態では、ワイヤロープ23はセル本体11の内周面に沿って延びている。
【0044】
このように、本変形例では、底蓋20をセル本体11と共に水中に沈めるため、後から底蓋20だけを水中に沈める必要がない。また、底蓋20をセル本体11と共に水中に沈めるにも拘わらず、開口12aを開いた状態で行うことができるため、浮力や水圧の影響を受けにくい。また、底蓋20は、回動体21が閉じた状態(即ち、縦長の状態)で沈められるため、浮力や水圧の影響をより受けにくい。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態1と同様である。なお、本変形例において、回動体21を回動させる方法は上述したものに限らない。
【0045】
(実施形態1の変形例3)
本変形例は、
図10に示すように、上記実施形態1において底蓋の構成を変更するようにした。つまり、上記実施形態1の底蓋13は平らな円板状に形成されているのに対し、本変形例の底蓋25は、略中央が上方へ撓んだ円板状に形成されている。言い換えれば、底蓋25は略中央が上方へ突出するように湾曲している。底蓋25の外径は、セル本体11の内径よりも小さく且つベース板12の内径(開口12aの径)よりも大きい。
【0046】
本変形例の閉塞工程では、上述した底蓋25が、セル本体11の内部に沈められ、ベース板12の上面に設置される。つまり、底蓋25の縁部26がベース板12の上面と接する。続いて、閉塞工程では、重し27が底蓋25の湾曲部の上に載せられる。そうすると、底蓋25は、湾曲部が重し27の重量によって下方に変位し、それに伴って縁部26が径方向外方へ拡がる(変位する)。こうして、底蓋25はベース板12の上面において所定の位置に設置され、これによって、セル本体11の底部の開口(開口12a)が閉塞される。
【0047】
このように、本変形例の閉塞工程では、底蓋25の湾曲部を下方へ変形させて縁部26を外方へ拡げることにより、底蓋25を所定の位置に設置する。重し27は、例えば砕石や上述した中詰材等が用いられる。以上の閉塞工程の後、上述した水位増加工程が行われる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態1と同様である。
【0048】
(実施形態1の変形例4)
本変形例は、
図11に示すように、上記実施形態1において底蓋の構成を変更するようにした。本変形例の底蓋30は、上記変形例3の底蓋と同様の形状を有している。即ち、底蓋30は略中央が上方へ突出するように湾曲している。また、底蓋30の外径は、セル本体11の内径よりも小さく且つベース板12の内径(開口12aの径)よりも大きい。
【0049】
本変形例の閉塞工程では、上述した底蓋30が、セル本体11の内部に沈められ、ベース板12の上面に設置される。続いて、閉塞工程では、底蓋30の縁部31が径方向外方へ引っ張られて拡がり、それに伴って底蓋30の湾曲部が下方に変位する。こうして、底蓋30はベース板12の上面において所定の位置に設置され、これによって、セル本体11の底部の開口(開口12a)が閉塞される。
【0050】
図11に示すように、底蓋30の縁部31には、ワイヤロープ32の一端が接続されている。ワイヤロープ32の他端は、セル本体11の内周面に設けられた転向部33を介してセル本体11の外部の例えば船に繋がっている。ワイヤロープ32は縁部31の周方向において等間隔に複数接続されており、転向部33はそれぞれのワイヤロープ32に対応して複数設けられている。閉塞工程では、ワイヤロープ32が船によって引っ張られることにより、底蓋30の縁部31は径方向外方へ引っ張られる。
【0051】
このように、本変形例の閉塞工程では、底蓋30の縁部31を外方へ引っ張ることにより、底蓋を所定の位置に設置する。以上の閉塞工程の後、上述した水位増加工程が行われる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態1と同様である。以上のように、上記変形例3および変形例4では、底蓋は、ある程度変形する材質で形成されており、水中に沈められた後に変形させることによりセル本体11の底部の開口を閉塞するようにしている。
【0052】
(実施形態1の変形例5)
本変形例は、上記実施形態1において底蓋の構成を変更するようにした。
図12および
図13に示すように、本変形例の底蓋35は、1つの円板部材36と、複数(本変形例では、8つ)の分割体37とを備えている。
【0053】
円板部材36は、平らな円板状に形成されており、ベース板12の内側(開口12a)において敷石部4の上面に設置されている(載せ置かれている)。円板部材36は、外径がベース板12の内径(開口12aの径)よりも小さく形成され、厚さがベース板12の厚さと略同じである。円板部材36は、敷石部4の上面に沿って延びる状態で設置されている。
【0054】
分割体37は、円環状の板部材(以下、環状部材という。)が、その周方向に8つに分割されたものである(
図13参照)。つまり、分割体37は、上記環状部材を径方向に切断し8つに分割したものである。上記環状部材の外径は、セル本体11の内径よりも小さく且つベース板12の内径(開口12aの径)よりも大きい。上記環状部材の内径は、円板部材36の外径よりも小さい。8つの分割体37は、円板部材36の外縁部において周方向に配列され、円板部材36の上面とベース板12の上面とに跨って設置されている。8つの分割体37は、互いに隣り合う分割体37同士が接した状態で設置されている(
図13参照)。こうして、セル本体11の底部の開口(開口12a)が底蓋35によって閉塞される。
【0055】
本変形例の閉塞工程では、円板部材36が、セル本体11の内部に沈められ、敷石部4の上面に設置される。つまり、円板部材36はベース板12の内側(開口12a)の略中央に設置される。続いて、閉塞工程では、8つの分割体37が、1つずつ順番に、セル本体11の内部に沈められて所定の位置に設置される。
【0056】
具体的には、先ず、1つめの分割体37が、円板部材36の上面とベース板12の上面とに跨るように設置される。そして、分割体37を円板部材36の径方向(
図12および
図13に矢印で示す方向)にスライドさせることにより、分割体37の位置(径方向位置)が調整され、分割体37が所定の位置に設置される。続いて、2つめの分割体37が、1つめの分割体37と隣り合う所定の位置に設置される。つまり、2つ目の分割体37は、円板部材36の上面とベース板12の上面とに跨り、且つ、1つめの分割体37と接する所定の位置に設置される。こうして、3つめ以降の分割体37も順に、既に設置された分割体37と隣り合う所定の位置に設置される。なお、2つめ以降の分割体37についてもスライドさせることによって位置が調整される。
【0057】
こうして、全て(8つ)の分割体37が所定の位置に設置されると、上記環状部材が形成され、セル本体11の底部の開口が底蓋35によって閉塞される。以上の閉塞工程の後、上述した水位増加工程が行われる。このように、本変形例では、底蓋35を円板部材36と8つの分割体37とに分けて、それぞれを沈めて所定の位置に設置するようにした。そのため、単体の底蓋を沈めて設置する場合に比べて、容易に底蓋35を沈めて所定の位置に設置することができる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態1と同様である。なお、本変形例において、分割体37の数は上述した以外の複数であってもよいことは勿論である。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態は、上記実施形態1において底蓋の構成を変更すると共に、セル本体および底蓋の設置順序を変更するようにしたものである。
【0059】
図14に示すように、本実施形態の底蓋40は、上記実施形態1と同様、セル本体11の底部の開口(ベース板12の開口12a)を閉塞するものである。底蓋40は、セル本体11の軸方向視の外形よりも大きい板状に形成されている。セル本体11の軸方向視の外形とは、セル本体11を
図14に示す状態において上方から視たときの最大の外形を意味し、ベース板12の外形である。より詳しくは、底蓋40は、外径がベース板12の外径よりも大きい円板状に形成されている。底蓋40は、水平に延びる状態で敷石部4の上面に設置されている。セル本体11は、軸方向が鉛直方向となる状態で底蓋40の上面に設置されている。つまり、セル本体11は、ベース板12の下面が底蓋40の上面に接する状態で設置されている。こうして、セル本体11の底部の開口は底蓋40によって閉塞されている。
【0060】
本実施形態において、鋼板セル10の設置方法は、蓋設置工程と、本体設置工程と、水位増加工程と、中詰め工程と、埋め戻し工程とを備えると共に、これらの工程に先立って行われる前工程(準備工程)とを備えている。ここでは、上記実施形態1と異なる蓋設置工程および本体設置工程について説明する。
【0061】
本実施形態では、前工程が終了すると、蓋設置工程が行われる。蓋設置工程は、
図14に示すように、上述した底蓋40を敷石部4の上面に設置する工程である。蓋設置工程に続いて、本体設置工程が行われる。本体設置工程は、
図14に示すように、セル本体11を軸方向が鉛直方向となる状態で底蓋40の上面に設置する工程である。また、本体設置工程は、セル本体11を底蓋40に設置することにより、セル本体11の底部の開口(ベース板12の開口12a)が底蓋40によって閉塞される工程である。なお、
図14は、前工程、蓋設置工程および本体設置工程が終了した状態を示す。
【0062】
つまり、本体設置工程では、セル本体11の軸方向に沿ってセル本体11およびベース板12を水中に沈めていき、ベース板12を底蓋40の上面に接触させて設置する。その際、上記実施形態1と同様、セル本体11の底部の開口は閉塞されていないため、浮力や水圧の影響を殆ど受けることなく、セル本体11を沈めることができる。そして、セル本体11が底蓋40に設置された状態では、セル本体11の内外の連通が底蓋40によって遮断される。また、セル本体11の内外の水位は同一である。本体設置工程が終了すると、上記実施形態1と同様に、水位増加工程、中詰め工程および埋め戻し工程が順に行われる。
【0063】
このように、本実施形態によれば、セル本体11の外形よりも大きい底蓋40の上面にセル本体11を設置することによってセル本体11の底部の開口が閉塞される。そのため、セル本体11の設置位置についてそれ程高い精度は要求されず、容易にセル本体11の底部の開口を底蓋40によって閉塞することができる。その他の構成、作用および効果は、上記実施形態1と同様である。
【0064】
なお、上記実施形態および変形例では、底蓋とベース板との間にゴム等のシール部材を介在させるようにしてもよい。その場合、上記実施形態1および変形例では、シール部材は底蓋の下面に固定してもよいし、ベース板の上面に固定するようにしてもよい。また、上記実施形態2では、シール部材は底蓋の上面に固定してもよいし、ベース板の下面に固定してもよい。なお、上記変形例2では、回動体とベース板との間にシール部材を介在させてもよい。この構成によれば、底蓋とベース板との間の水密性が向上し、中詰材の流出をより抑制することができる。
【0065】
また、上記実施形態1および2において、底蓋の材質を、透水性を有するもの(例えば、樹脂)としてもよい。より詳しくは、底蓋の材質は、水の通過は許容するが、中詰め材の通過は阻止し得るものとしてもよい。その場合、水位増加工程は不要である。
【0066】
また、上記実施形態および変形例では、水位増加工程を省略するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本願に開示の技術は、鋼板セルの設置方法および鋼板セルについて有用である。
【符号の説明】
【0068】
2 水底地盤
3 床堀部
4 敷石部
10 鋼板セル
11 セル本体
11a 補剛材
12 ベース板
12a 開口(セル本体の底部の開口)
13,20,25,30,35,40 底蓋
14,18 中詰材
21 回動体
22 ヒンジ部
36 円板部材
37 分割体