IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本フイルコン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-工業用二層織物 図1
  • 特許-工業用二層織物 図2
  • 特許-工業用二層織物 図3
  • 特許-工業用二層織物 図4
  • 特許-工業用二層織物 図5
  • 特許-工業用二層織物 図6
  • 特許-工業用二層織物 図7
  • 特許-工業用二層織物 図8
  • 特許-工業用二層織物 図9
  • 特許-工業用二層織物 図10
  • 特許-工業用二層織物 図11
  • 特許-工業用二層織物 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】工業用二層織物
(51)【国際特許分類】
   D21F 1/10 20060101AFI20220606BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20220606BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
D21F1/10
D03D11/00 Z
D03D1/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018024874
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019137954
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000229818
【氏名又は名称】日本フイルコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 晋也
(72)【発明者】
【氏名】梁井 英之
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00144530(EP,A2)
【文献】特開2012-117169(JP,A)
【文献】特開2012-117170(JP,A)
【文献】特表2007-520639(JP,A)
【文献】特表2013-501153(JP,A)
【文献】特開2004-036052(JP,A)
【文献】特開2004-068168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00
D03D 1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる下面側織物とが経糸接結された工業用二層織物において、
前記上面側経糸の少なくとも1本以上が経糸接結糸として機能しており、
前記上面側織物において前記上面側経糸は2本一組となって畝織されており、
前記上面側経糸と下面側経糸の本数の比率が2:1であり、
前記2本一組となっている上面側経糸のうち経糸接結糸を含まない組は、全ての糸が並列して畝織されていることを特徴とする工業用二層織物。
【請求項2】
上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる下面側織物とが経糸接結された工業用二層織物において、
前記上面側経糸の少なくとも1本以上が経糸接結糸として機能しており、
前記上面側織物において前記上面側経糸は2本一組となって畝織されており、
前記上面側経糸と下面側経糸の本数の比率が2:1であり、
前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組は、一部の糸が並列して畝織されていることを特徴とする工業用二層織物。
【請求項3】
前記2本一組となっている上面側経糸のうち2本とも経糸接結糸である組は、並列することによって協働して畝織されていることを特徴とする請求項1に記載された工業用二層織物。
【請求項4】
前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組において、経糸接結糸でない上面側経糸が上面側緯糸を織り込んで形成するナックルの数に対して、経糸接結糸である上面側経糸が上面側緯糸を織り込んで形成されて経糸接結糸でない上面側経糸に並列するナックルの数が、50%以上となることを特徴とする請求項に記載された工業用二層織物。
【請求項5】
前記上面側経糸の線径は全て同じであり、又、前記下面側経糸の線径は全て同じであり、更に、下面側経糸の線径が上面側経糸の線径の150~300%であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された工業用二層織物。
【請求項6】
前記上面側織物を構成する経糸における縦密度が40~60%であり、かつ、前記下面側織物を構成する経糸における縦密度が40~55%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載された工業用二層織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期脱水を抑えて脱水スピードを調節しつつ、内部構造を低保水とし脱水量を上げることができる工業用二層織物に関する。特に工業用二層織物の基本特性である耐摩耗性、脱水性、ワイヤーマークが転写しくい表面平滑性に優れた高速抄紙機に対応し得る工業用二層織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工業用二層織物として経糸、緯糸で製織したものが広く使用されており、例えば製紙用織物や搬送用ベルト、ろ布等があり、それぞれ用途や使用環境に適した織物特性が要求されている。これらの織物のうち、織物の網目を利用して原料の脱水等を行う製紙工程で使用される抄紙用織物での要求は特に厳しい。例えば、紙に織物のワイヤーマークが転写しにくい表面平滑性に優れた織物、また原料に含まれる余分な水分を十分且つ均一に脱水するための脱水性、過酷な環境下でも好適に使用できる程度の剛性、耐摩耗性を持ち合わせ、更に良好な紙を製造するために必要な条件を長期間持続することのできる織物が要求されている。その他にも繊維支持性、製紙の歩留まりの向上、寸法安定性、走行安定性等が要求されている。さらに近年では抄紙マシンが高速化しているため、それに伴い抄紙用織物への要求も一段と厳しいものとなっている。
【0003】
工業用織物の中でも最も要求が厳しい抄紙用織物について説明すれば、現行のほとんどの工業用織物の要求とその解決について理解できる。そこで、以下、抄紙用織物を一例に挙げて説明する。
近年では抄紙マシンの高速化に伴い、織物の脱水性と保水性の相関関係の重要性が高まり、加えて原料の抜けや高い歩留りも要求されている。そのため従来の抄紙用織物には存在しない、上下層の目開きと内部空間を持たせる必要がある。脱水性と保水性を調節するために、経糸接結を使用した織物としては、特許文献1に開示されている技術が知られていた。かかる技術は、経糸の一部を上面側層と下面側層を織り合せる接結糸として機能する地糸とした二層織物であり、組になった縦糸接結糸が上面側経糸組織と下面側経糸組織を補完し合い、各々の表面組織を形成するため、表面平滑性や接結強度にも優れた織物となっていた。
【0004】
又、均一な脱水性を目的として、上面側経糸と経糸接結糸からなる組を配置した二層織物が特許文献2に開示されている。この織物は、上下面を織り合せる経糸接結糸の上面側ナックルと上面側経糸組織を組み合わせることで、表面に均一な組織を形成したものである。この織物は、前記2本の経糸が協働して表面に経糸1本分の組織を形成しているため組織の崩れはないものの、経糸の一方又は両方ともに経糸事態の組織を崩さなければならず、それらが上下面側を行き来する際に交差部が形成され、且つ経糸は2本組となって経糸1本分として配置されるが、経糸2本分は経糸1本分のライン上に重ならず横に並んだ状態になるため、経糸接糸が上面側緯糸を織り込む付近で網目を塞いでしまい、部分的にワイヤーの脱水特性が変化することでワイヤーマークの発生原因となる可能性があった。
又かかる織物は、上面側層から下面側層まで完全に貫通する脱水孔が全面に配置されるため、脱水性は良好であるが、強力なバキューム等によって、ワイヤー上のシート原料が織物に刺さり込んだり、繊維や填料等の抜けが発生し、脱水マークの発生が顕著になることが知られていた。
【0005】
又、網厚を薄くすることによって、保水量を軽減する効果が得られるが、糸径を細くして網厚を薄くした場合、網目が細かくなりすぎて、脱水性が劣化することが危惧されていた。
他方、縦糸オンスタックを構造を採用した場合、脱水スピードが速くなるのであるが、初期脱水を抑制するため横糸密度を高く設定すると、脱水性を抑制する結果となる。
更に、上面側の織物を構成する経糸を下面側の織物を構成する経糸より、糸径を細くして網厚を抑制することが検討できるが、このような場合、上下異線径の二層織物については、表面側の経糸の空間を裏面側に対して大きくなるため、脱水抑制と網厚抑制の両立が困難となっていた。
【0006】
一方、特許文献3には、脱水量を調整するための技術が開示されている。かかるぎ技術を採用することによって、2本の上面側経糸と接結糸とを組み合わせて経糸1本分の組織を形成することによって、上下の経糸2本が入れ替わったり協働したりすることがで表面組織を崩すという問題点を解決し、上下網を経糸によって接結し、脱水マークの発生やワイヤーマークの発生を抑制することとした。
しかしながら、かかる技術は網の剛性を確保等するために、上側側経糸と下面側経糸が上下に配置された組織を複数箇所に設ける必要がある為、下網を構成する経糸に比較して上網を構成する経糸の構成比率が上がりすぎる。
すなわち、特許文献3に開示された技術は、上面側経糸に比較し、下面側経糸の経糸本数が少ない事に起因する織物の剛性不足と織物が伸びやすいという問題点を解決するものである。そして、上面側経糸2本一組の下側に下面側経糸が存在する箇所と、下面側経糸が存在しない箇所が存在するため、脱水経路にムラが生じ、それに起因する脱水マークの発生という問題点が危惧される。
本発明者は、従来技術における上記問題点を解決するため、上下の縦糸空間率をより近接させることによって、横糸線径による密度差を設定することも可能とし、組織的な特徴(横糸上下比率等)も付加し得る織物を開発すべく、鋭意検討を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-36052号公報
【文献】特開2004-68168号公報
【文献】特開2012-117169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水特性及び表面平滑性に優れた織物を提供することを目的とする。
また本発明は、糸径の選択によって脱水特性を調節するということができる工業用二層織物を提供することを目的とする。
又、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和し、横糸密度を大きく向上させることが可能となる織物を提供することを目的とする。
また本発明は、織物内部を上下する接結糸の糸径を細くし、一般的な経糸接結によって形成された織物内部における脱水ムラの発生を最小限に抑えることができる優れた織物を提供することを目的とする。
また本発明は、網厚を厚くすることなく脱水速度の調節を可能とする織物を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、上面側織物を2本の畝織によって織目を適度に塞ぎ、表裏の目開きにおける過剰な通水量の差を抑制し、脱水スピードを制御することができる織物を提供することを目的とする。
更に本発明は、ペアとなる2本の経糸のうち少なくとも一本を接結糸とすることによって、組織構造と接結組織構造の両方を備えることとなり、上面側織物を構成するもう一本の上面側経糸によって、接結部の織組織の崩れを最小限に抑えることができる織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る工業用二層織物は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
(1)上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる下面側織物とが経糸接結された工業用二層織物において、前記上面側経糸の少なくとも1本以上が経糸接結糸として機能しており、前記上面側織物において前記上面側経糸は2本一組となって畝織されており、前記上面側経糸と下面側経糸の比率が2:1であることを特徴とする工業用二層織物である。
本発明は上記の構成を採用することによって、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、好適な脱水特性等を得ることができる。特に本発明は、上下経糸比率が2:1であることから、上面側経糸2本一組の下側に下面側経糸が必ず存在することになるため、脱水経路のムラと、脱水マークの発生等を予防することができる。
【0011】
(2)前記2本一組となっている上面側経糸のうち経糸接結糸を含まない組は、全ての糸が並列して畝織されていることを特徴とする上記(1)に記載された工業用二層織物である。
(3)前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組は、一部の糸が並列して畝織されていることを特徴とする上記(1)に記載された工業用二層織物である。
(4)前記2本一組となっている上面側経糸のうち2本とも経糸接結糸である組は、並列することによって協働して畝織されていることを特徴とする上記(1)に記載された工業用二層織物である。
ここで並列することによって協働とは、隣接する経糸接結糸における表面側に現れるナックルの一部が並列して畝織されており、他のナックルは一本の経糸接結糸によって形成されている状態を示している。また、一本の経糸接結糸によって形成されるナックルは、並列して畝織されている部分で入れ替わる点に特徴を有する。
(5)前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組が、50%以上の糸が並列して畝織されていることを特徴とする上記(3)に記載された工業用二層織物である。
かかる発明における割合は、上面側織物の表面に現れるナックルの数によって求められる数値である。例えば、2本一組を構成する一本の上面側経糸が6つのナックルを有しており、他の上面側経糸が3つのナックルを有している場合は、50%の糸が並列して畝織されていることになる。
【0012】
(6)前記上面側経糸の線径は全て同じであり、又、前記下面側経糸の線径は全て同じであり、更に、下面側経糸の線径が上面側経糸の線径の150~300%であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれか一に記載された工業用二層織物である。 本発明は上記構成を採用することによって、より優れた剛性と伸び耐性を得ることができる。(7)前記上面側織物を構成する経糸における縦密度が40~60%であり、かつ、前記下面側織物を構成する経糸における縦密度が40~55%であることを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれか一に記載された工業用二層織物である。
ここで縦密度とは、織物を構成する経糸の空間に対する占有率のことである。40%未満では、脱水や被抄物の脱落等の問題が生じる危険性がある。一方、上面側織物を構成する経糸における縦密度が60%を超えると、又は下面側織物を構成する経糸における縦密度が55%を超えると、脱水性の劣化、目詰まり等の問題が生じる危険性がある。本発明は上記構成を採用することによって、より優れた脱水特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上面側織物の表面の一部又は全部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供する効果を奏する。
また本発明は、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節するという効果を奏することができる。
又、2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることが可能となる。
また本発明は、下面側経糸に比較して上面側経糸の糸径を細くし、畝織を構成する片方の経糸で接結することによって、織物内部を上下する接結糸の糸径を細くできるため、一般的な経糸接結によって形成された織物内部における脱水ムラの発生を最小限に抑えることができるという優れた効果を奏する。又、上面側経糸の糸径を細くすることによって、網厚を維持したまま脱水速度の調節が可能となる。
【0014】
また本発明は、高い脱水性を得るために上下の経糸をオンスタック構造とした場合、上面側織物を2本の畝織によって織目を適度に塞ぎ、表裏の目開きにおける過剰な通水量の差を抑制することができるため、脱水スピードを制御することができるという優れた効果を奏する。
更に本発明は、ペアとなる2本の経糸のうち少なくとも一本を接結糸とすることによって、組織構造と接結組織構造の両方を備えることとなり、上面側織物を構成するもう一本の上面側経糸によって、接結部の織組織の崩れを最小限に抑えることもできるという効果を奏する。
すなわち本発明は、縦糸を2本の畝織とすることによって、扁平糸の特徴と、表面組織構造及び接結構造の3つの機能を発揮する工業用二層織物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る完全組織を示す意匠図である。
図2】本発明の実施形態1に係る経糸の状態を示す意匠図である。
図3】本発明の実施形態2に係る完全組織を示す意匠図である。
図4】本発明の実施形態2に係る経糸の状態を示す意匠図である。
図5】本発明の実施形態3に係る完全組織を示す意匠図である。
図6】本発明の実施形態3に係る経糸の状態を示す意匠図である。
図7】本発明の実施形態4に係る完全組織を示す意匠図である。
図8】本発明の実施形態4に係る経糸の状態を示す意匠図である。
図9】本発明の実施形態5に係る完全組織を示す意匠図である。
図10】本発明の実施形態5に係る経糸の状態を示す意匠図である。
図11】本発明の実施形態6に係る完全組織を示す意匠図である。
図12】本発明の実施形態7に係る完全組織を示す意匠図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る工業用二層織物の実施形態を説明する。以下に示す実施形態は、本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
本発明に係る工業用二層織物は、上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる下面側織物とが経糸接結された織物に関する。本発明に係る工業用二層織物は、前記上面側経糸の少なくとも1本以上が経糸接結糸として機能しており、前記上面側織物において前記上面側経糸は2本一組となって畝織されている。そして、前記上面側経糸と下面側経糸の比率が2:1であることを特徴とする。
【0017】
本発明に使用される糸は用途によって選択すればよいが、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロ、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属等が使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じてさまざまな物質をブレンドしたり含有させた糸を使用しても良い。抄紙用ワイヤーとしては一般的には、上面側経糸、下面側経糸、下経地糸接結糸、上面側緯糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、耐摩耗性が要求される下面側緯糸にはポリエステルモノフィラメントとポリアミドモノフィラメントを交互に配置する等、交織するのが剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上できて好ましい。
【0018】
又、本発明において、前記2本一組となっている上面側経糸のうち経糸接結糸を含まない組は、全ての糸を並列して畝織しても良い。また本発明に係る工業用二層織物は、前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組が、一部の糸を並列して畝織しても良い。更に本発明に係る工業用二層織物は、前記2本一組となっている上面側経糸のうち2本とも経糸接結糸である組が、並列することによって協働して畝織されていても良い。
又、本発明に係る工業用二層織物は、前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組が、50%以上の糸を並列して畝織しても良い。このように構成することによって、表面組織を扁平糸の如く形成することができるため、厚みを抑えた二層織物を得ることができる。又、厚みを増やすことなく、網目を小さく調整することができるため、従来にない脱水特性を付与することができる。又、2本の経糸に織り込まれる緯糸は、ナックルによる張力が緩和されるため、横糸密度を上げることが可能となる。
そして本発明は、2本の経糸で織組織を構成し、かつ接結する構造を有するため、接結糸は、一組の2本のうちの1本が組織構造と接結組織構造の両方を備えることになり、表面側を構成する他の1本の糸により、接結部の織組織に御崩れを最小に抑えることができる。
【0019】
又、本発明に係る工業用二層織物は、前記上面側経糸の線径は全て同じであり、又、前記下面側経糸の線径は全て同じであり、更に、下面側経糸の線径が上面側経糸の線径の150~300%に構成してもよい。このように構成することによって、二層の接結を比較的細い経糸2本で構成する畝織の片方の糸で接結することができるため、織物内部を上下する接結糸の線径は通常の経糸接結を構成する経糸より細い糸で構成することができる。したがって、部分的な脱水ムラの発生を最小限に抑止することができる。更に、従来は織物を形成する糸径を細くして網厚を制御していたが、上下異線径の二層織物の場合、表面側の経糸の空間は裏面に対し大きくなり、脱水抑制と網厚抑制の両立が困難であった。本発明は、細い経糸を構成することによって、網厚を維持したまま脱水速度の調節が可能となった。
更に本発明に係る工業用二層織物は、前記上面側織物を構成する経糸における縦密度を40~60%、かつ、前記下面側織物を構成する経糸における縦密度を40~55%になるように構成しても良い。
【0020】
又、本発明において、2本組からなる上面側経糸組織における経糸の線径を、1本組からなる上面側経糸組織における経糸の線径より細いものを使用しても良い。2本組の線径を細くすることにより、ナックル形成時に緯糸に掛かる力を1本組と同程度にすることができ、表面平滑性、繊維支持性等を向上させる事ができる。また、線材と合わせて線径を選択することで線径を調節することもできるため、線径、線材は適宜選択できる。
又、本発明において、オンスタック構造を採用しても良い。オンスタック構造とすることによって、高い脱水性を得ることができ、一方、表面組織が畝織であるため、2本の糸で縦目を適度に塞ぎ、表裏の目開きに過剰な差を抑えることができるため、脱水スピードを制御することができる。
【0021】
次に本発明の工業用二層織物に係る実施形態を図面に則して説明する。図1図12は本発明の工業用二層織物に係る一例を示す意匠図である。意匠図とは織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3・・・で示した。緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1’、2’、3’・・・で示した。上面側に配置される糸は、Uの記号を付してある。又、下面側に配置される糸には、Lの記号を付してある。接結糸は上面側経糸であり、Ubの記号を付してある。配置比率によって上面側緯糸と下面側緯糸が上下に配置されている場合と、上面側緯糸のみの場合がある。また、×印は上面側経糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、△印は接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示し、○印は下面側経糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。同じ数字が付された上面側経糸と下面側経糸及び上面側緯糸と下面側緯糸は上下に重なって配置されている。緯糸については配置比率から一部上面側緯糸の下に下面側緯糸が配置されていないところもある。意匠図では糸が上下に正確に重なって配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物で多少ずれて配置されても構わない。
【0022】
実施形態1
図1は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1の意匠図である。本実施形態1に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。 又、前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組は、表面に並行して50%のナックルを形成している。
【0023】
具体的には図2に示す如く、上面側経糸1Uと2Ub、3Uと4Ub,5Uと6Ub,7Uと8Ub,9Uと10Ub,11Uと12Ub、13Uと14Ub,15Uと16Ubは2本組となって上面側織物の組織を形成している。上面側経糸1Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸2Ubは、上面側緯糸1’Uの上側、上面側緯糸2’Uの下、上面側緯糸3’Uの上、下面側緯糸8’Uの下を通り、上面側緯糸11’Uの上を通っている。上面側経糸3Uは、2/2の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸4Ubは、下面側緯糸1’Lの下側を通り、上面側緯糸5’U,6’Uの上、上面側緯糸7’U,8’Uの下、上面側緯糸9’U,10’Uの上を通り、上面側緯糸11’U,12’Uの下を通っている。上面側経糸5Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸6Ubは、上面側緯糸1’Uの下側、下面側緯糸5’Lの下を通り、上面側緯糸8’U,10’U,12’Uの上を通っている。上面側経糸7Uは、2/2の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸8Ubは、上面側緯糸1’U,2’Uの下、上面側緯糸3’U,4’Uの上、上面側緯糸5’U,6’Uの下、上面側緯糸7’Uの上、下面側緯糸10’Lの下側を通り、上面側緯糸12’Uの上を通っている。
【0024】
又、上面側経糸9Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸10Ubは、上面側緯糸1’Uの下側、下面側緯糸2’Lの下を通り、上面側緯糸5’U,7’U,9’U,11’Uの上を通っている。上面側経糸11Uは、2/2の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸12Ubは、上面側緯糸1’U,2’Uの上、上面側緯糸3’U,4’Uの下、上面側緯糸5’の上を通って、下面側緯糸7’Lの下、上面側緯糸10’Uの上側を通っている。上面側経糸13Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸14Ubは、上面側緯糸2’U,4’U,6’U,8’Uの上側を通り、下面側緯糸11’Lの下を通り、上面側緯糸8’U,10’U,12’Uの上を通っている。上面側経糸15Uは、2/2の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸16Ubは、上面側緯糸1’U,2’U,3’Uの下、下面側緯糸4’Lの下を通り、上面側緯糸7’U,8’Uの上、上面側緯糸9’U,10’Uの下、上面側緯糸11’U,12’Uの上側を通っている。
【0025】
本実施形態1は、上面側織物の表面の一部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供することができる。
また本実施形態1に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。
更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
【0026】
実施形態2
図3は本発明の工業用二層織物に係る実施形態2の意匠図である。本実施形態2に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
【0027】
具体的には図4に示す如く、上面側経糸1Uと2Ub、3Uと4Ub,5Uと6Ub,7Uと8Ub,9Uと10Ub,11Uと12Ub、13Uと14Ub,15Uと16Ubは2本組となって上面側織物の組織を形成している。上面側経糸1Uは、1/3の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸2Ubは、上面側緯糸1’U,5’Uの上側、下面側緯糸8’Lの下を通っている。上面側経糸3Uは、1/3の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸4Ubは、下面側緯糸1’Lの下側を通り、上面側緯糸6’U,10’Uの上を通っている。上面側経糸5Uは、1/3の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸6Ubは、下面側緯糸5’Lの下側、上面側緯糸8’U,12’Uの上を通っている。上面側経糸7Uは、1/3の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸8Ubは、上面側緯糸3’U,7’Uの上を通り、下面側緯糸10’Lの下側を通っている。
【0028】
又、上面側経糸9Uは、1/3の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸10Ubは、下面側緯糸2’Lの下を通り、上面側緯糸5’U,9’Uの上を通っている。上面側経糸11Uは、1/3の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸12Ubは、上面側緯糸2’Uの上、下面側緯糸7’Lの下、上面側緯糸10’Uの上側を通っている。上面側経糸13Uは、1/3の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸14Ubは、上面側緯糸4’U,8’Uの上側を通り、下面側緯糸11’Lの下を通っている。上面側経糸15Uは、1/3の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸16Ubは、下面側緯糸4’Lの下を通り、上面側緯糸7’U,11’Uの上側を通っている。
【0029】
本実施形態2は、上面側織物の表面の一部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供することができる。
又、本実施形態2に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
【0030】
実施形態3
図5は本発明の工業用二層織物に係る実施形態3の意匠図である。本実施形態3に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
【0031】
具体的には図6に示す如く、上面側経糸1Uと2Ub、3Uと4Ub,5Uと6Ub,7Uと8Ub,9Uと10Ub,11Uと12Ub、13Uと14Ub,15Uと16Ubは2本組となって上面側織物の組織を形成している。上面側経糸1Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸2Ubは、上面側緯糸1’U,3’Uの上側、下面側緯糸8’Lの下を通り、上面側緯糸11’Uの上を通っている。上面側経糸3Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸4Ubは、下面側緯糸1’Lの下側を通り、上面側緯糸4’U,6’U,8’U,10’Uの上を通っている。上面側経糸5Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸6Ubは、上面側緯糸1’Uの上、下面側緯糸5’Lの下側、上面側緯糸9’U,11’Uの上を通っている。上面側経糸7Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸8Ubは、上面側緯糸2’U,4’U,6’Uの上を通り、下面側緯糸10’Lの下側を通っている。
【0032】
又、上面側経糸9Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸10Ubは、下面側緯糸2’Lの下を通り、上面側緯糸5’U,7’U,9’U,11’Uの上を通っている。上面側経糸11Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸12Ubは、上面側緯糸2’U,4’Uの上、下面側緯糸7’Lの下、上面側緯糸10’U,12’Uの上側を通っている。上面側経糸13Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸14Ubは、上面側緯糸3’U,5’U,7’Uの上側を通り、下面側緯糸11’Lの下を通っている。上面側経糸15Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸16Ubは、下面側緯糸4’Lの下を通り、上面側緯糸8’U,10’U,12’Uの上側を通っている。
【0033】
本実施形態3は、上面側織物の表面の一部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供することができる。
又、本実施形態3に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
【0034】
実施形態4
図7は本発明の工業用二層織物に係る実施形態4の意匠図である。本実施形態4に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は4:3である。 具体的には図8に示す如く、上面側経糸1Uと2Ub、3Uと4Ub,5Uと6Ub,7Uと8Ub,9Uと10Ub,11Uと12Ubは2本組となって上面側織物の組織を形成している。
【0035】
上面側経糸1Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸2Ubは、下面側緯糸1’Lの下を通り、上面側緯糸5’U,7’Uの上を通っている。上面側経糸3Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸4Ubは、下面側緯糸2’Lの下側を通り、上面側緯糸4’U,6’Uの上を通っている。上面側経糸5Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸6Ubは、上面側緯糸1’Uの上、下面側緯糸3’Lの下側、上面側緯糸7’Uの上を通っている。上面側経糸7Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸8Ubは、上面側緯糸2’Uの上を通り、下面側緯糸5’Lの下側を通り、上面側緯糸8’Uの上を通っている。又、上面側経糸9Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸10Ubは、上面側緯糸1’U,3’Uの上を通り、下面側緯糸6’Lの下を通っている。上面側経糸11Uは、1/1の平織を形成している。それと組になる経糸接結糸12Ubは、上面側緯糸2’U,4’Uの上、下面側緯糸7’Lの下を通っている。
【0036】
本実施形態4は、上面側織物の表面の一部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供することができる。
又、本実施形態4に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
【0037】
実施形態5
図9は本発明の工業用二層織物に係る実施形態5の意匠図である。本実施形態5に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
具体的には図10に示す如く、上面側経糸1Uと2Ub、3Uと4Ub,5Uと6Ub,7Uと8Ub,9Uと10Ub,11Uと12Ubは2本組となって上面側織物の組織を形成している。
【0038】
上面側経糸1Uは、1/2の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸2Ubは、上面側緯糸1’U,4’Uの上を通り、下面側緯糸8’Lの下を通っている。上面側経糸3Uは、1/2の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸4Ubは、上面側緯糸2’U,5’Uの上を通り、下面側緯糸7’Lの下側を通っている。上面側経糸5Uは、1/2の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸6Ubは、上面側緯糸3’Uの上、下面側緯糸5’Lの下側、上面側緯糸9’Uの上を通っている。上面側経糸7Uは、1/2の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸8Ubは、上面側緯糸1’Uの上を通り、下面側緯糸4’Lの下側を通り、上面側緯糸7’Uの上を通っている。又、上面側経糸9Uは、1/2の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸10Ubは、下面側緯糸2’Lの下を通り、上面側緯糸5’U,8’Uの上を通っている。上面側経糸11Uは、1/2の綾織を形成している。それと組になる経糸接結糸12Ubは、下面側緯糸1’Lの下を通り、上面側緯糸3’U,6’Uの上を通っている。
【0039】
本実施形態5は、上面側織物の表面の一部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供することができる。
又、本実施形態5に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
【0040】
実施形態6
図11は、本発明の工業用二層織物に係る実施形態6の意匠図である。本実施形態6に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
図11に示す如く、本実施形態6に係る工業用二層織物は、上面側経糸1Uと経糸接結糸2Ub、上面側経糸3Uと経糸接結糸4Ub、上面側経糸5Uと経糸接結糸6Ub、上面側経糸7Uと経糸接結糸8Ub、上面側経糸9Uと経糸接結糸10Ub、上面側経糸11Uと経糸接結糸12Ub、上面側経糸13Uと経糸接結糸14Ub、上面側経糸15Uと経糸接結糸16Ubとを一組ずつとして構成されている。
本実施形態6は、上面側織物の表面の一部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供することができる。
又、本実施形態6に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
【0041】
実施形態7
図12は本発明の工業用二層織物に係る実施形態7の意匠図である。本実施形態7に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、2本とも経糸接結糸で形成されている。また経糸接結糸は、並列することによって協働して畝織されている点に特徴を有する。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
具体的には図12に示す如く、上面側経糸1Ubと2Ub、3Uと4U,5Ubと6Ub,7Uと8U,9Ubと10Ub,11Uと12Uは2本組となって上面側織物の組織を形成している。上面側経糸1Ubは、上面側緯糸1’U,3’U,5’U,7’Uの上側を通り、下面側緯糸10’Lの下側を通り、上面側緯糸13’U,15’U,17’Uの上を通っている。それと組になる経糸接結糸2Ubは、上面側緯糸5’U,7’U,9’U,11’U,13’U,15’Uの上側を通り、下面側緯糸1’Lの下を通っている。隣接する経糸接結糸1Ub及び2Ubは、表面側に現れるナックルの一部(5’U,7’U及び13’U,15’U)において並列して畝織されている。また、経糸接結糸1Ub及び2Ubは、上記の並列して畝織されている部分で入れ替わっている。
又、上面側経糸3U、4Uの組は、全ての糸が並列して畝織されており、下面側経糸3Lは、下面側緯糸2’L及び11’Lの下側を通っている。
上面側経糸5Ubは、上面側緯糸7’U,9’U,11’U,13’U,15’U,17’U,1’Uの上側を通り、下面側緯糸4’Lの下側を通っている。それと組になる経糸接結糸6Ubは、上面側緯糸17’U,1’U,3’U,5’U,7’U,9’Uの上側を通り、下面側緯糸13’Lの下を通っている。隣接する経糸接結糸5Ub及び6Ubは、表面側に現れるナックルの一部(7’U,9’U及び17’U,1’U)において並列して畝織されている。また、経糸接結糸5Ub及び6Ubは、上記の並列して畝織されている部分で入れ替わっている。
【0042】
又、上面側経糸7U、8Uの組は、全ての糸が並列して畝織されており、下面側経糸7Lは、下面側緯糸5’L及び14’Lの下側を通っている。
上面側経糸9Ubは、上面側緯糸1’U,3’U,5’U,7’U,9’U,11’U,13’Uの上側を通り、下面側緯糸16’Lの下側を通っている。それと組になる経糸接結糸10Ubは、上面側緯糸11’U,13’U,15’U,17’U,1’U,3’Uの上側を通り、下面側緯糸7’Lの下を通っている。隣接する経糸接結糸9Ub及び10Ubは、表面側に現れるナックルの一部(1’U,3’U及び11’U,13’U)において並列して畝織されている。また、経糸接結糸9Ub及び10Ubは、上記の並列して畝織されている部分で入れ替わっている。
又、上面側経糸11U、12Uの組は、全ての糸が並列して畝織されており、下面側経糸11Lは、下面側緯糸8’L及び17’Lの下側を通っている。
【0043】
本実施形態7は、上面側織物の表面の一部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供することができる。
又、本実施形態7に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1~16 経糸
1’~18’ 緯糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12