(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】射出装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/60 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
B29C45/60
(21)【出願番号】P 2018065240
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-11-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】両角 智人
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-269810(JP,A)
【文献】実開昭49-019066(JP,U)
【文献】特開昭61-100427(JP,A)
【文献】特開平05-057767(JP,A)
【文献】特開2017-056655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00- 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内において回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
前記スクリュを回転させる回転手段と、
前記スクリュを進退させる進退手段と、を備え、
前記スクリュは、
一体に回転するスクリュヘッド、シールリング、およびフライトスクリュと、
非共回りの逆流防止リングと、を有し、
前記スクリュヘッドは、
前記フライトスクリュのフライトに沿って形成される螺旋状の溝とは逆向きの螺旋状に形成されるヘッド溝部を有し、
前記逆流防止リングと向かい合う前記スクリュヘッドの対向面は、前記スクリュの回転方向前側ほど前記逆流防止リングから離れ、前記スクリュの回転方向後側ほど前記逆流防止リングに近づくように傾いたテーパを有する、
射出装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の射出装置を備える、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置および射出成形機に関し、特に、射出装置のスクリュの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッド本体部と、軸方向へ変位自在に装填される逆流防止リング(特許文献1ではリングバルブと称する。)と、シールリング(特許文献1ではシートリングと称する。)と、を備えるスクリュヘッド装置が開示されている。スクリュヘッド装置は、計量時において、逆流防止リングが前方へ移動し、逆流防止リングの前端がヘッド本体部の後端に当接して樹脂流路用空間を開放する。また、射出時において、逆流防止リングが後方へ移動し、逆流防止リングの後端がシールリングの前端に当接して樹脂流路用空間を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヘッド本体部に対して逆流防止リングが自由に回転できる非共回りタイプのスクリュヘッド装置は、計量時において、ヘッド本体部の後端と逆流防止リングの前端が接触した状態でヘッド本体部が回転するため、摺動面に摩耗が生じる。特に、高粘度の樹脂を使用してハイサイクルで成形する場合、逆流防止リングをヘッド本体部に押し付ける力が大きくなり、また、接触回数も増えるので、摩耗が促進されるという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ヘッド本体部と逆流防止リングとの接触面における摩耗を抑制する射出装置および射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様の射出装置は、
シリンダと、前記シリンダ内において回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、前記スクリュを回転させる回転手段と、前記スクリュを進退させる進退手段と、を備え、前記スクリュは、一体に回転するスクリュヘッド、シールリング、およびフライトスクリュと、非共回りの逆流防止リングと、を有し、前記スクリュヘッドは、前記フライトスクリュのフライトに沿って形成される螺旋状の溝とは逆向きの螺旋状に形成されるヘッド溝部を有し、前記逆流防止リングと向かい合う前記スクリュヘッドの対向面は、前記スクリュの回転方向前側ほど前記逆流防止リングから離れ、前記スクリュの回転方向後側ほど前記逆流防止リングに近づくように傾いたテーパを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘッド本体部と逆流防止リングとの接触面における摩耗を抑制する射出装置および射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図5】計量工程開始前のスクリュヘッド装置の状態を示す側面図である。
【
図6】計量工程開始前のスクリュヘッド装置の状態を示す断面図である。
【
図7】計量工程開始時のスクリュヘッド装置の状態を示す側面図である。
【
図8】計量工程開始時のスクリュヘッド装置の状態を示す断面図である。
【
図9】計量工程中のスクリュヘッド装置の状態を示す側面図である。
【
図10】計量工程中のスクリュヘッド装置の状態を示す断面図である。
【
図11】第2実施形態のスクリュヘッド装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
≪第1実施形態≫
(射出成形機)
図1は、第1実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、第1実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図1及び図2において、X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直な方向である。X方向およびY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機10の幅方向である。
図1及び図2に示すように、射出成形機10は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700と、フレーム900とを有する。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0011】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中左方向)を後方として説明する。
【0012】
型締装置100は、金型装置800の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
【0013】
固定プラテン110は、フレーム900に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0014】
可動プラテン120は、フレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされる。フレーム900上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0015】
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型810と可動金型820とで金型装置800が構成される。
【0016】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレーム900上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレーム900上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0017】
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレーム900に対し固定され、トグルサポート130がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレーム900に対し固定され、固定プラテン110がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0018】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0019】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0020】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0021】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0022】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0023】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0024】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
【0025】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0026】
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間801の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0027】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0028】
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0029】
型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0030】
尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0031】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0032】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0033】
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0034】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0035】
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0036】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0037】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0038】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0039】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0040】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(
図1および
図2中左方向)を後方として説明する。
【0041】
エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
【0042】
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
【0043】
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0044】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配設される可動部材830と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0045】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
【0046】
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0047】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中右方向)を後方として説明する。
【0048】
射出装置300は、フレーム900に対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置800に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
【0049】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0050】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(
図1および
図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0051】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0052】
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0053】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング339が進退自在に取付けられる。
【0054】
逆流防止リング339は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0055】
一方、逆流防止リング339は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0056】
なお、本実施形態の逆流防止リング339は、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプである。
【0057】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0058】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0059】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
【0060】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0061】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。
【0062】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0063】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0064】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0065】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0066】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
【0067】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0068】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0069】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0070】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(
図1および
図2中右方向)を後方として説明する。
【0071】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0072】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0073】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0074】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0075】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0076】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0077】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0078】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1及び図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0079】
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
【0080】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。型締工程の終了は型開工程の開始と一致する。尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0081】
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
【0082】
操作画面は、射出成形機10の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
【0083】
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0084】
(シリンダおよびノズルの構造)
図3は、シリンダ310およびスクリュ330の断面図である。なお、
図3では、成形サイクルにおいて、スクリュ330が最も後退したときの状態で図示している。
【0085】
スクリュ330は、シリンダ310の内部において進退自在に且つ回転自在に配設される。スクリュ330は、前端から後方に向けて、スクリュヘッド331、シールリング334、およびフライトスクリュ335をこの順で有する。スクリュヘッド331およびシールリング334は、フライトスクリュ335と共に回転し、フライトスクリュ335と共に進退する。
【0086】
スクリュヘッド331は、先細り形状のヘッド本体部332と、ヘッド本体部332の後端面とシールリング334の前端面とを連結するロッド部333とを有する。ロッド部333の前端はヘッド本体部332の後端面よりも小さく、ロッド部333の後端はシールリング334の前端面よりも小さい。ヘッド本体部332の後端面は、
図3ではシリンダ310の軸方向に対し垂直とされるが、斜めとされてもよい。
【0087】
フライトスクリュ335は、回転軸336と、回転軸336の外周に螺旋状に設けられるフライト337とを有する。フライト337に沿って螺旋状の溝338が形成される。計量モータ340を駆動してフライトスクリュ335を回転させると、フライトスクリュ335の溝338に沿って成形材料が前方に送られる。
【0088】
フライトスクリュ335は、後端から前方に向けて、第1区間Z1、第2区間Z2、および第3区間Z3をこの順で有する。第1区間Z1は、成形材料の固相が存在する区間である。第2区間Z2は、成形材料の固相と液相の両方が存在する区間である。第3区間Z3は、成形材料の液相が存在する区間である。
【0089】
溝338の深さは、第1区間Z1で深く、第3区間Z3で浅く、第2区間Z2において上流側から下流側に向かうほど浅い。この場合、第1区間Z1は供給部、第2区間Z2は圧縮部、第3区間Z3は計量部とも呼ばれる。尚、溝338の深さは一定でもよい。
【0090】
スクリュ330は、スクリュヘッド331のロッド部333の周囲に逆流防止リング339を有する。逆流防止リング339は、リング状に形成され、ロッド部333が挿し通される貫通穴を有する。逆流防止リング339は、ロッド部333に沿って、シールリング334の前端面に接触する閉塞位置(
図2参照)と、スクリュヘッド331のヘッド本体部332の後端面に接触する開放位置(
図1および
図3参照)との間を移動する。なお、逆流防止リング339は、フライトスクリュ335と共に回転しない非共回りタイプである。
【0091】
射出モータ350を駆動してフライトスクリュ335を前進させると、スクリュヘッド331の前方に蓄積される成形材料の圧力によって逆流防止リング339は後方に押される。これにより、逆流防止リング339は、ロッド部333に沿って閉塞位置まで移動し、スクリュヘッド331の前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0092】
一方、計量モータ340を駆動してフライトスクリュ335を回転させると、フライトスクリュ335に形成される螺旋状の溝338に沿って成形材料が送られ、その成形材料の圧力によって逆流防止リング339は前方に押される。これにより、逆流防止リング339は、ロッド部333に沿って開放位置まで移動し、スクリュヘッド331の前方に成形材料が送られる。
【0093】
(スクリュヘッド装置の形状)
図4は、スクリュヘッド装置の斜視図である。なお、スクリュヘッド331、シールリング334、逆流防止リング339の組をスクリュヘッド装置と称するものとする。また、
図4において、計量工程の際にスクリュ330が回転する方向を回転方向Rで図示している。即ち、計量工程において、スクリュヘッド331は、スクリュヘッド331の先端側から見て時計回りに回転する。
【0094】
ヘッド本体部332には、螺旋状のヘッド溝部332aが形成されている。ここで、
図3に示すように、フライトスクリュ335の螺旋状の溝338と、ヘッド本体部332の螺旋状のヘッド溝部332aとは、回転方向が逆向きとなっている。
【0095】
即ち、スクリュ330は、スクリュヘッド331の先端側から見て、時計回り(回転方向R)に回転する。フライトスクリュ335の溝338は、スクリュヘッド331の先端側から見て、反時計回りに回転しながらノズル320の方向に前進するように右ねじの向きで形成されている。一方、ヘッド溝部332aは、スクリュヘッド331の先端側から見て、時計回り(回転方向R)に回転しながらノズル320の方向に前進するように左ねじの向きで形成されている。なお、スクリュ330はスクリュヘッド331の先端側から見て反時計回りに回転し、フライトスクリュ335の溝338はスクリュヘッド331の先端側から見て時計回りに回転しながらノズル320の方向に前進するように左ねじの向きで形成され、ヘッド溝部332aはスクリュヘッド331の先端側から見て反時計回りに回転しながらノズル320の方向に前進するように右ねじの向きで形成される構成であってもよい。
【0096】
また、ヘッド溝部332aを形成する側面のうち逆流防止リング339の前端面と向かい合う面を溝部側面332bと称するものとする。溝部側面332bは、回転方向Rの前側ほど逆流防止リング対向面339cから離れる方向に傾いて形成されている。また、ヘッド本体部332の後端には、逆流防止リング339と向かい合うヘッド対向面332cが形成されている。また、逆流防止リング339の前端には、ヘッド本体部332と向かい合う逆流防止リング対向面339cが形成されている。
【0097】
次に、
図5から
図10を用いてスクリュヘッド装置における逆流防止リング339の動作について説明する。
【0098】
図5は、計量工程開始前のスクリュヘッド装置の状態を示す側面図である。
図6は、計量工程開始前のスクリュヘッド装置の状態を示す断面図である。なお、
図6(及び後述する
図8、
図10)において、ロッド部333の断面は、回転中心よりも上側において螺旋状のヘッド溝部332aに沿って切断した断面図として模式的に流路を図示しており、回転中心よりも下側においてヘッド溝部332aが設けられていない位置に沿って切断した断面図として模式的に図示している。
【0099】
また、
図6に示すように、逆流防止リング339の後端には、シールリング334と接する逆流防止リング当接面339dが形成されている。また、シールリング334の前端には、逆流防止リング339と接するシールリング当接面334dが形成されている。なお、逆流防止リング当接面339dおよびシールリング当接面334dは
図6に示すように径方向に対して傾斜するテーパ面となっていてもよく、回転軸に対して垂直な面であってもよい。
【0100】
計量工程開始前のスクリュヘッド装置の状態は、前回の成形サイクルの保圧工程が完了した後の状態であり、逆流防止リング当接面339dとシールリング当接面334dが当接して、成形材料の流路を閉塞している。
【0101】
図7は、計量工程開始時のスクリュヘッド装置の状態を示す側面図である。
図8は、計量工程開始時のスクリュヘッド装置の状態を示す断面図である。
【0102】
計量工程においては、計量モータ340によりスクリュ330を回転させる。フライトスクリュ335の回転により成形材料が送られ、その成形材料の圧力によって逆流防止リング339は前方に力F1で押される。なお、流動する成形材料のスクリュヘッド装置における圧力損失が大きくなるほど、逆流防止リング339を押す力F1も大きくなる。これにより、逆流防止リング339は前方へと移動し、逆流防止リング当接面339dとシールリング当接面334dとの間の流路を開くとともに、ヘッド対向面332cと逆流防止リング対向面339c間の隙間を狭める。
【0103】
このため、成形材料は、黒矢印で示すように、シリンダ310の内周とシールリング334の外周との間、逆流防止リング当接面339dとシールリング当接面334dとの間の流路、逆流防止リング339の内周とスクリュヘッド331(ロッド部333)の外周との間を通って、ヘッド溝部332aへと流れる。そして、スクリュヘッド331の前方に成形材料が送られる。
【0104】
一方、ヘッド本体部332には、フライトスクリュ335の溝338とは逆向きのヘッド溝部332aが形成されている。このため、溝部側面332bは、回転方向Rで回転する際、溝部側面332bと逆流防止リング対向面339cとの間が狭くなるような向きで形成されている。また、回転方向Rにおいて、ヘッド対向面332cの前側に溝部側面332bが形成されている。
【0105】
これにより、回転方向Rで回転する溝部側面332bは、ヘッド溝部332aの内部の成形材料の一部を、ヘッド対向面332cと逆流防止リング対向面339cとの隙間に送り込むように機能する。また、溝部側面332bは、逆流防止リング対向面339cに対して、回転方向の前側が広く後側が狭くなるように傾斜しているので、くさび効果により、逆流防止リング339がヘッド本体部332に近づくほど、換言すれば、ヘッド対向面332cと逆流防止リング対向面339cとの間の隙間が狭くなるほど、逆流防止リング339を押し返す力F2も大きくなる。
【0106】
図9は、計量工程中のスクリュヘッド装置の状態を示す側面図である。
図10は、計量工程中のスクリュヘッド装置の状態を示す断面図である。
【0107】
図9および
図10に示すように、成形材料の流れにより逆流防止リング339を押す力F1と、くさび効果により逆流防止リング339を押し返す力F2とが、つり合った状態となる。このため、計量工程において、ヘッド対向面332cと逆流防止リング対向面339cとは接触しない状態でスクリュ330を回転させることができる。
【0108】
なお、つり合った状態となる位置まで逆流防止リング339の移動する経路は限定するものではない。例えば、逆流防止リング339は、成形材料の流れによる押す力F1で前方へと移動し、逆流防止リング対向面339cがヘッド対向面332cと接した後に、くさび効果による押し返す力F2で後方へと戻るように移動してもよい。また、逆流防止リング339は、成形材料の流れによる押す力F1で前方へと移動し、成形材料の流れによる押す力F1とくさび効果による押し返す力F2がつり合う位置まで移動してもよい。
【0109】
以上、第1実施形態の構成によれば、スクリュ330を回転させる計量工程時において、ヘッド溝部332aを設けることにより、逆流防止リング339をシールリング334の方向に押し返す力F2を発生させることができる。この押し返す力F2により、逆流防止リング339の逆流防止リング対向面339cがヘッド本体部332のヘッド対向面332cから離間した状態とすることができる。このため、計量工程の際、フライトスクリュ335と共に回転するスクリュヘッド331のヘッド対向面332cと、非共回りの逆流防止リング339の逆流防止リング対向面339cとが摺動して摩耗することを抑制することができる。
【0110】
特に、粘性の高い成形材料を用いた場合、逆流防止リング339をスクリュヘッド331の方向に押す力F1も大きくなるため、計量工程時にスクリュヘッドと逆流防止リングが摺動する従来の構成においては、面圧も高くなり摩耗が促進される。また、ハイサイクルで成形する場合は、摺動距離も増えるため摩耗が促進される。これに対し、第1実施形態の構成によれば、逆流防止リング339をスクリュヘッド331から離間させることにより、粘性の高い成形材料を用いたり、ハイサイクルで成形する場合であっても、摩耗を抑制することができる。
【0111】
また、従来の構成においては、摩耗を抑制するために逆流防止リング339やスクリュヘッド331の材料に耐摩耗性の高い材料を用いていた。これに対し、第1実施形態の構成によれば、耐摩耗性の高い材料を用いなくても摩耗を抑制することができるので、逆流防止リング339やスクリュヘッド331の材料の選択性が拡大し、例えば、コストダウンを図ることができる。
【0112】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る射出成形機について説明する。第2実施形態に係る射出成形機は、第1実施形態に係る射出成形機と比較して、スクリュヘッド331のヘッド本体部332の形状が異なっている。その他の形状は同様であり重複する説明を省略する。
図11は、第2実施形態のスクリュヘッド装置の側面図である。
【0113】
第2実施形態のスクリュヘッド331Aは、ヘッド本体部332Aと、ロッド部333とを有している。また、ヘッド本体部332Aには、フライトスクリュ335の溝338と回転方向が逆向きの螺旋状のヘッド溝部332aが形成されている。
【0114】
また、ヘッド溝部332aを形成する側面のうち逆流防止リング339の前端面と向かい合う面を溝部側面332bと称するものとする。また、ヘッド本体部332の後端には、逆流防止リング339と向かい合うヘッド対向面332c2が形成されている。
【0115】
ここで、ヘッド対向面332c2は、回転方向Rの前側ほど逆流防止リング対向面339cから離れ、回転方向Rの後側ほど逆流防止リング対向面339cに近づくように傾いたテーパ面として形成されている。即ち、ヘッド対向面332c2と逆流防止リング対向面339cとの隙間は、回転方向Rの前側ほど広く、回転方向Rの後側ほど狭くなる。これにより、回転方向Rで回転するヘッド対向面332c2と逆流防止リング対向面339cとの関係においても、くさび効果により逆流防止リング339をシールリング334の方向に押し返す力を発生させることができる。
【0116】
以上、第2実施形態の構成によれば、スクリュ330を回転させる計量工程時において、ヘッド溝部332aおよびテーパ面であるヘッド対向面332c2を設けることにより、逆流防止リング339をシールリング334の方向に押し返す力を発生させることができる。このため、計量工程の際、フライトスクリュ335と共に回転するスクリュヘッド331のヘッド対向面332cと、非共回りの逆流防止リング339の逆流防止リング対向面339cとが摺動して摩耗することを抑制することができる。
【0117】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0118】
10 射出成形機
340 計量モータ(回転手段)
350 射出モータ(進退手段)
300 射出装置
310 シリンダ
320 ノズル
330 スクリュ
331,331A スクリュヘッド
332,332A ヘッド本体部
333 ロッド部
334 シールリング
335 フライトスクリュ
336 回転軸
337 フライト
338 溝
339 逆流防止リング
332a ヘッド溝部
332b 溝部側面
332c,332c2 ヘッド対向面
339c 逆流防止リング対向面
339d 逆流防止リング当接面
334d シールリング当接面