(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】単独運転検出装置及び系統連系インバータ装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
H02J3/38 180
(21)【出願番号】P 2018123141
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】郭 中為
(72)【発明者】
【氏名】石渡 洋志
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012971(JP,A)
【文献】特開2011-200032(JP,A)
【文献】特開2012-085384(JP,A)
【文献】特開2015-107032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02M 7/42 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換する系統連系用のインバータが、電力系統から切り離されて単独運転となった時に、前記インバータと前記電力系統との間の系統電圧の高調波を検出し、無効電力をステップ状に注入するためのステップ注入発生条件が満たされていれば、前記電力系統に対し前記無効電力をステップ状に注入して系統周波数を急変させるステップ注入部と、
前記系統周波数の変化率に比例して前記無効電力の注入量を増加させて、前記系統周波数の変化を拡大することにより、前記系統周波数の異常を生じさせて単独運転を検出させる無効電力注入部と、
を有する単独運転検出装置であって、
制御目標の高調波位相角を含む高調波電流制御指令、設定力率、予め取得した前記インバータの高調波特性、及び位相角に基づき、前記設定力率に対する前記高調波の振幅及び位相角を算出し、前記高調波の目標指令と前記高調波の振幅及び位相角とのベクトル演算により、前記電力系統に対して注入する高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせる高調波注入部を、
設けたことを特徴とする単独運転検出装置。
【請求項2】
前記高調波注入部は、
前記設定力率に代えて、
前記単独運転の時に、前記電力系統に対して注入する前記高調波電流に対応する電流指令を用い、
前記電流指令に対する前記高調波の振幅及び位相角を算出する、
ことを特徴とする請求項1記載の単独運転検出装置。
【請求項3】
前記電力系統は、単相電力系統であり、
前記単相電力系統に対して3次高調波電流を注入する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の単独運転検出装置。
【請求項4】
前記電力系統は、三相電力系統であり、
前記三相電力系統に対して5次高調波電流を注入する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の単独運転検出装置。
【請求項5】
前記ステップ注入部は、前記系統電圧における高調波歪の変化を検出し、
前記無効電力注入部は、規定値以上、前記ステップ注入発生条件を満たさない前記高調波歪みの変化を検出した場合は前記無効電力の注入量を増加させる、
構成になっていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の単独運転検出装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の単独運転検出装置を、
備えることを特徴とする系統連系インバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源が電力系統から切り離されて単独運転をしているか否かを検出するための単独運転検出装置及びそれを備える系統連系インバータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、特許文献1及び非特許文献1、2等に記載された従来の系統連系インバータ装置の構成例を示す概略の機能ブロック図である。
太陽光発電(PV)等の直流電源1には、系統連系インバータ装置(例えば、三相系統連系インバータ装置)2が接続されている。三相系統連系インバータ装置2の出力側には、負荷装置3が分岐接続されると共に、変圧器4、遮断器5及び電力系統6(例えば、三相商用電力系統(3φ、200V))が直列に接続されている。系統連系インバータ装置2は、電力系統6に対して連系可能に接続され、直流電源1から供給される直流電力を三相交流電力に変換する装置である。系統連系インバータ装置2で変換された三相交流電力は、負荷装置3へ供給され、更に、余剰電力が、変圧器4及び遮断器5を介して電力系統6へ供給(逆潮流)される。
【0003】
系統連系インバータ装置2は、例えば、ステップ注入付き周波数フィードバック方式の単独運転検出装置20を備え、その単独運転検出装置20から供給されるスイッチング駆動信号S27により、スイッチング動作して電力変換を行う。この系統連系インバータ装置2は、直流/直流変換器(DC/DCコンバータ)11、電荷蓄積用のコンデンサ12、直流/交流変換器(DC/ACインバータ)13、インダクタ14及びコンデンサ15からなるLC形フィルタ回路、及び開閉器16を有している。
【0004】
DC/DCコンバータ11は、直流電源1から供給される直流電圧を所定の直流電圧に変換する装置であり、例えば、図示しない制御部から供給されるスイッチング駆動信号によりスイッチング動作して直流電圧を出力する回路により構成されている。DC/DCコンバータ11の出力側には、並列に接続されたコンデンサ12を介して、DC/ACインバータ13が接続されている。
DC/ACインバータ13は、単独運転検出装置20から供給されるスイッチング駆動信号S27によりスイッチング動作して、コンデンサ12に蓄積された電荷を三相交流電力に変換する装置であり、例えば、スイッチング駆動信号S27によりオン/オフ動作する複数のスイッチ素子を有するブリッジ回路により構成されている。DC/ACインバータ13の出力側には、インダクタ14及びコンデンサ15からなるLC形フィルタ回路が接続されている。
【0005】
LC形フィルタ回路は、インダクタ14及びコンデンサ15により、DC/ACインバータ13の出力電力から高調波成分を除去する回路であり、この出力側に、開閉器16が接続されている。開閉器16は、図示しない制御部の制御により、系統連系インバータ装置2の出力端子と負荷装置3及び電力系統6との間を開閉する装置であり、リレー等により構成されている。
インダクタ14とコンデンサ15との間には、そのインダクタ14を流れる交流のインバータ電流Iinvを計測する電流計測器(例えば、計器用変流器、以下これを「CT」という。)17が設けられている。インダクタ14及びコンデンサ15からなるLC形フィルタ回路からは、交流の出力電流Ioが出力される。このLC形フィルタ回路の出力側に接続された開閉器16と交流出力側との間には、交流の系統電圧Vacを計測する電圧計測器(例えば、計器用変圧器、以下これを「VT」という。)18が設けられている。CT17及びVT18の出力側には、単独運転検出装置20が接続されている。
【0006】
単独運転検出装置20は、例えば、電力系統6の停電時に、系統連系インバータ装置2がその電力系統6から遮断(解列)されない状態で単独運転を継続していると、本来無電圧であるべき電力系統6が充電され、保安や、電力供給の信頼度確保の面から問題が生じる恐れがあるため、系統連系インバータ装置2を停止させるために、その系統連系インバータ装置2の単独運転状態を検出する装置である。
単独運転検出装置20は、位相同期処理部21、無効電力をステップ状に注入するためのステップ注入部22、無効電力注入部23、加算部24、単独運転検出部25、高調波注入部26、及び電流制御処理部27を有し、例えば、ハードウェアとソフトウェアとにより構成されている。ハードウェアは、個別回路で構成され、ソフトウェアは、中央処理装置(CPU)によりプログラム制御されるプロセッサ等により構成されている。
【0007】
位相同期処理部21は、VT18で計測された系統電圧Vacの電圧計測値vacに基づき、周波数偏差の演算に用いる周波数を計測して同期信号φpllを求めるものであり、ハードウェアで構成された電圧計測回路21aと、ソフトウェアで構成された周波数計測処理部21b及び位相差計測同期処理部21cと、を有している。
電圧計測回路21aは、電圧計測値vacをデジタル信号に変換する回路であり、この出力側に、周波数計測処理部21bが接続されている。周波数計測処理部21bは、デジタル信号に変換された電圧計測値から、系統電圧Vacの系統周波数facを求めるものであり、この出力側に、位相差計測同期処理部21cが接続されている。位相差計測同期処理部21cは、求められた系統周波数facから同期信号φpllを求めるものであり、この出力側に、高調波注入部26及び電流制御処理部27が接続されている。
【0008】
ステップ注入部22は、単独運転発生時においても、系統連系インバータ装置2の出力電力及び負荷装置3の均衡(バランス)状態によって、周波数偏差が微小の条件において、VT18で計測された電圧計測値vacに基づき、系統周波数facの変化を促すための無効電力ステップ注入量S22を生成するものであり、ハードウェアで構成された第1、第2電圧計測回路22a,22bと、ソフトウェアで構成された基本波電圧演算部22c、高調波電圧演算部22d、ステップ注入発生条件判定部22e、及びステップ注入量算出部22fを有している。
第1、第2電圧計測回路22a,22bは、電圧計測値vacをデジタル信号に変換する回路であり、この出力側に、基本波電圧演算部22c及び高調波電圧演算部22dがそれぞれ接続されている。基本波電圧演算部22cは、第1電圧計測回路22aで変換されたデジタル信号の電圧計測値に基づき、離散フーリエ演算等によって、系統電圧Vacの基本波電圧値を算出するものであり、この出力側に、ステップ注入発生条件判定部22eが接続されている。高調波電圧演算部22dは、第2電圧計測回路22bで変換されたデジタル信号の電圧計測値に基づき、離散フーリエ演算等によって、系統電圧Vac中の高調波電圧値を算出するものであり、この出力側に、ステップ注入発生条件判定部22eが接続されている。
【0009】
ステップ注入発生条件判定部22eは、周波数計測処理部21bで求められた系統周波数fac、基本波電圧演算部22cで求められた基本波電圧値、及び高調波電圧演算部22dで求められた高調波電圧値に基づき、加算部24及び電流制御処理部27を介してDC/ACインバータ13の出力側へ、無効電力をステップ状に注入するためのステップ注入発生条件の判定を行い、このステップ注入判定結果をステップ注入量算出部22fへ与えるものである。ステップ注入発生条件は、次の第1条件及び第2条件の2つである。
【0010】
第1条件:周波数偏差が±0.01Hz以内(即ち、周波数不感帯0.01H以下)である。
第2条件:高調波電圧及び基本波電圧を監視し、高調波電圧がステップ注入発生条件(高調波電圧変動)を満たす、又は、基本波電圧がステップ注入発生条件(基本波電圧変動)を満たすことである。
【0011】
ステップ注入量算出部22fは、ステップ注入発生条件が満たされている場合、無効電力ステップ注入量S22を算出し、この無効電力ステップ注入量S22を、加算部24を介して電流制御処理部27へ与えるものである。
無効電力のステップ注入は、次の第1~第4による。
第1:注入時間は、3サイクル以下とする。
第2:注入量は、上限を0.1p.u.(=1per unit)とする。
第3:無効電力は、系統連系インバータ装置2から見て電流位相を遅らせる方向に注入する(周波数は低下方向)。
第4:無効電力のステップ注入は、前記ステップ注入発生条件を満たしてから系統周波数(周期)の半サイクル以内に行う。
【0012】
無効電力注入部23は、系統周波数facの変化率に比例して無効電力の注入量を増加させて、その系統周波数facの変化を拡大することにより、その系統周波数facの異常を生じさせて単独運転を検出させるものである。即ち、無効電力注入部23は、例えば、系統周波数facの偏差から、注入する無効電力注入量S23を算出し、加算部24を介して電流制御処理部27へ与え、系統周波数facの変化を促すものであり、ソフトウェアで構成された第1移動平均算出部23a、第2移動平均算出部23b、周波数偏差算出部23c、及び無効電力注入量算出部23dを有している。
第1、第2移動平均算出部23a,23bは、周波数計測処理部21bから与えられる系統周波数facの第1、第2移動平均を算出し、第1、第2移動平均算出結果をそれぞれ出力するものであり、この出力側に、周波数偏差算出部23cが接続されている。周波数偏差算出部23cは、第1、第2移動平均算出結果に基づいて、周波数偏差を算出するものであり、この出力側に、無効電力注入量算出部23dが接続されている。
【0013】
無効電力注入量算出部23dは、算出された周波数偏差に基づいて、周波数帰還量(フィードバック量)である無効電力注入量S23を算出するものであり、この出力側に、加算部24が接続されている。加算部24は、与えられた無効電力ステップ注入量S22と無効電力注入量S23とを加算して加算値S24を求めるものであり、この出力側に、電流制御処理部27が接続されている。
単独運転検出部25は、系統周波数facの変化によって単独運転の発生の有無を判定するものであり、ソフトウェアで構成された単独運転能動的方式判定部25a及び単独運転受動的方式判定部25bを有している。
【0014】
高調波注入部26は、同期信号φpllに基づいて高調波制御指令S26を生成し、この高調波制御指令S26を電流制御処理部27に与えて、DC/ACインバータ13の出力電流に高調波電流を注入し、電力系統6の停電時における高調波歪み変化に対してステップ注入発生条件を満足させ、系統連系インバータ装置2の出力電力と負荷装置3のバランス状態においてもステップ注入部22を動作させ、単独運転を確実に検出できるようにするものである。
電流制御処理部27は、位相同期処理部21の同期信号φpll、加算部24の加算値S24、及び高調波注入部26の高調波制御指令S26に基づき、スイッチング駆動信号S27を生成して、DC/ACインバータ13のスイッチング動作を制御するものである。
【0015】
このように構成される系統連系インバータ装置2では、直流電源1から供給された直流電圧が、DC/DCコンバータ11により所定の直流電圧に変換され、コンデンサ12に蓄積される。コンデンサ12に蓄積された電圧は、単独運転検出装置20から供給されたスイッチング駆動信号S27によってスイッチング動作するDC/ACインバータ13により、三相交流電圧に変換され、三相のインバータ電流Iinvが出力される。DC/ACインバータ13から出力された三相の交流電圧及びインバータ電流Iinvは、フィルタ回路のインダクタ14及びコンデンサ15によって高調波成分が除去される。
高調波成分が除去された三相交流の系統電圧Vac及び出力電流Ioは、開閉器16を介して負荷装置3及び電力系統6側へ出力される。電力系統6に停電等が発生すると、遮断器5がオフ状態になり、系統連系インバータ装置2が電力系統6から切り離されて単独運転状態となり、その系統連系インバータ装置2から出力された系統電圧Vac及び出力電流Ioが負荷装置3へ供給される。
【0016】
ここで、単独運転検出装置20では、以下の第1ステップ及び第2ステップの処理を行う。
第1ステップにおいて、直流電源1から供給される直流電力を交流電力に変換する系統連系インバータ装置2が、電力系統6から切り離されて単独運転となった時に、系統電圧Vacの高調波電圧を、VT18、第2電圧計測回路22b及び高調波電圧演算部22dにより検出する。この高調波電圧検出結果に基づき、ステップ注入発生条件判定部22eでは、無効電力をステップ状に注入するためのステップ注入発生条件が満たされているか否かのステップ注入判定を行い、ステップ注入発生条件が満たされていれば、ステップ注入量算出部22fから無効電力ステップ注入量S22が出力される。この無効電力ステップ注入量S22は、加算部24を介して電流制御処理部27へ与えられ、DC/ACインバータ13を通して電力系統側へ無効電力がステップ状に注入され、系統電圧Vacの系統周波数facが急変する。
【0017】
次に、第2ステップにおいて、無効電力注入部23は、系統周波数facの変化率に比例して無効電力の注入量を増加させて、系統周波数facの変化を拡大することにより、系統周波数facの異常を生じさせ、単独運転検出部25によって単独運転を検出させる。
【0018】
このような単独運転検出に関して、系統連系インバータ装置2と同じ配電線に接続されている負荷装置3とのバランス条件において、単独運転状態になった時の高調波電圧の変動を検出し、ステップ注入部22を動作させることにより、単独運転を検出する。高調波電圧の変化が閾値未満で、ステッフ注入部22が動作しない恐れがあるため、特許文献1の技術では、高調波注入部26により、系統連系インバータ装置2の出力側へ高調波注入を行い、単独運転となった時の高調波電圧を確実に変化させるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特許第6173978号公報(特開2016-12971号公報)
【非特許文献】
【0020】
【文献】日本電機工業会規格 JEM1498(2012.8.27制定)
【文献】日本電機工業会規格 JEM1505(2015.9.14制定)
【文献】日本電気協会「系統連系規程 JEAC 9701-2016」2017年追補版(その1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
近年、非特許文献3の系統連系規程追補版の発行により、低圧太陽光発電(低圧PV)の標準的な力率値(95%)が規定に追加され、電力系統側の高圧配電線の系統状況により個別に力率値を指定する場合があって、系統連系インバータ装置2から最低80%までの進み力率出力が求められている。
【0022】
図8及び
図9は、従来の系統連系インバータ装置2の課題の説明図である。
図8において、例えば、系統連系インバータ装置2の負荷装置3を、高調波電流の流れる容量負荷Cと線形負荷Rとで表す。系統連系インバータ装置2の出力電流Ioには、基本波電流i1と5次高調波電流i5とが含まれている。負荷装置3と遮断器5との間において、例えば、変圧器4の励磁電流等の系統側5次高調波電流ih5が分流する。
遮断器5がオフ状態になり、系統連系インバータ装置2が単独運転状態になると、基本波電流i1、5次高調波電流i5、及び系統側5次高調波電流ih5の逆位相の5次高調波電流―ih5が線形負荷Rに流れるため、高調波電圧の変化が発生する。
【0023】
図9において、系統連系インバータ装置2から出力される5次高調波電流i5(力率0.8,0.9,1.0)と、系統側5次高調波電流ih5と、その高調波電流ih5と逆位相の5次高調波電流―ih5と、が示されている。
交流電圧を基準位相とした場合、力率変化(例えば、力率0.8,0.9,1.0)に伴い、系統連系インバータ装置2から出力される5次高調波電流i5の位相角が大きく変化する。その5次高調波電流i5は、系統側5次高調波電流ih5と同位相になったり、逆位相になったりするため、系統連系インバータ装置2が単独運転になった時の高調波電圧の変化が、力率条件によって変化する。負荷装置3に流れる5次高調波電流i5,-ih5が小さくなった場合は、高調波電圧の変化が小さくなるため、ステップ注入発生条件の高調波変化を満足せずに、ステップ注入部22が動作しない恐れがある。
【0024】
このように、力率が変化した時に、系統連系インバータ装置2から出力される5次高調波電流i5の位相角が大きく変化するため、系統連系インバータ装置2が単独運転となった時の高調波電圧の変化が小さくなる場合がある。これにより、ステップ注入部22が動作しなくなる恐れがあるので、単独運転検出の性能保証ができなくなる、といった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の単独運転検出装置は、直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換する系統連系用のインバータが、電力系統から切り離されて単独運転となった時に、前記インバータと前記電力系統との間の系統電圧の高調波を検出し、無効電力をステップ状に注入するためのステップ注入発生条件が満たされていれば、前記電力系統に対し前記無効電力をステップ状に注入して系統周波数を急変させるステップ注入部と、前記系統周波数の変化率に比例して前記無効電力の注入量を増加させて、前記系統周波数の変化を拡大することにより、前記系統周波数の異常を生じさせて単独運転を検出させる無効電力注入部と、を有する単独運転検出装置であって、高調波注入部を設けたことを特徴とする。
前記高調波注入部は、制御目標の高調波位相角を含む高調波電流制御指令、設定力率、予め取得した前記インバータの高調波特性、及び位相角に基づき、前記設定力率に対する前記高調波の振幅及び位相角を算出し、前記高調波の目標指令と前記高調波の振幅及び位相角とのベクトル演算により、前記電力系統に対して注入する高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせる構成になっている。
【0026】
又、前記高調波注入部は、前記設定力率に代えて、前記単独運転の時に、前記電力系統に対して注入する前記高調波電流に対応する電流指令を用い、前記電流指令に対する前記高調波の振幅及び位相角を算出する構成にしても良い。
【0027】
本発明の系統連系インバータ装置は、前記単独運転検出装置を備えている。
【発明の効果】
【0028】
本発明の単独運転検出装置及びそれを備える系統連系インバータ装置によれば、高調波注入部を設け、設定力率又は電流指令に対する高調波の振幅及び位相角を算出し、高調波の目標指令と高調波の振幅及び位相角とのベクトル演算により、電力系統に対して注入する高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせる構成になっている。そのため、力率出力条件においても、例えば、三相電力系統の場合には、三相電力系統側の変圧器励磁電流等に同期した安定な5次高調波出力を行い、又、単相電力系統の場合には、単相電力系統側の変圧器励磁電流等に同期した安定な3次高調波出力を行い、単独運転検出を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施例1における三相系統連系インバータ装置の構成例を示す概略の機能ブロック図
【
図2】
図1中の5次高調波用のパラメータ算出部の構成を示す機能ブロック図
【
図3】本発明の実施例2における5次高調波用のパラメータ算出部の構成を示す機能ブロック図
【
図4】本発明の実施例3における単相系統連系インバータ装置の構成例を示す概略の機能ブロック図
【
図5】
図4中の3次高調波用のパラメータ算出部の構成を示す機能ブロック図
【
図6】本発明の実施例4における3次高調波用のパラメータ算出部の構成を示す機能ブロック図
【
図7】従来の系統連系インバータ装置の構成例を示す概略の機能ブロック図
【
図8】従来の系統連系インバータ装置の課題の説明図
【
図9】従来の系統連系インバータ装置の課題の説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0031】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における三相系統連系インバータ装置2Aの構成例を示す概略の機能ブロック図であり、
図7に示す従来の三相系統連系インバータ装置2と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例1の三相系統連系インバータ装置2Aは、全体の構成が、従来の三相系統連系インバータ装置2と同様であるが、従来の単独運転検出装置20と構成の異なる三相用の単独運転検出装置20Aが設けられている。
【0032】
本実施例1の単独運転検出装置20Aは、従来と同様のステップ注入部22、無効電力注入部23、加算部24及び図示しない単独運転検出部25と、従来とは機能の異なる位相同期処理部21A、5次高調波注入部26A及び電流制御処理部27Aと、を有している。
位相同期処理部21Aは、VT18で計測された電圧計測値vacに基づいて同期信号φpllを生成するものであり、例えば、ハードウェアで構成された電圧計測回路21aと、ソフトウェアで構成された瞬時位相角演算部21d、及び位相同期ループ(以下「PLL」という。)制御部21eと、を有している。電圧計測回路21aは、入力される電圧計測値vacをデジタル信号の電圧計測値に変換する回路であり、この出力側に、瞬時位相角演算部21dが接続されている。瞬時位相角演算部21dは、変換されたデジタル信号の電圧計測値に対し、瞬時位相角演算を行って位相角θ(t)を求めるものであり、この出力側に、PLL制御部21eが接続されている。PLL制御部21eは、位相角θ(t)に対し、位相同期制御を行って同期信号φpllを求め、この同期信号φpllを5次高調波注入部26A及び電流制御処理部27Aへ与えるものである。
【0033】
5次高調波注入部26Aは、設定力率λに対するパラメータである5次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出し、5次高調波の目標指令であるd軸電流制御指令(以下「id指令」という。)及びq軸電流制御指令(以下「iq指令」という。)と、その5次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlと、のベクトル演算により、三相電力系統6に対して注入する5次高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせるものであり、例えば、ソフトウェアで構成されている。
この5次高調波注入部26Aは、正弦波算出部26a、余弦波算出部26b、第1、第2、第3、第4、第5係数部26c,26d、26e,26f,26j、第1、第2減算部26g,26n、第1、第2加算部26h,26m、振幅値算出部26i、第1、第2乗算部26k,26l、及びパラメータ算出部30を有している。
【0034】
パラメータ算出部30は、設定力率λに対するパラメータとして5次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出するものである。正弦波算出部26aは、PLL制御部21eから与えられる同期信号φpllに基づき、角度(6・φpll)に対するsin演算を行ってsin(6・φpll)の値を算出するものであり、この出力側に、第1、第2係数部26c,26dが接続されている。余弦波算出部26bは、PLL制御部21eから与えられる同期信号φpllに基づき、角度(6・φpll)に対するcos演算を行ってcos(6・φpll)の値を算出するものであり、この出力側に、第3、第4係数部26e,26fが接続されている。
第1係数部26cは、パラメータ算出部30から与えられる位相角φctrlに対してsin演算を行って係数sin(φctrl)を求め、この係数sin(φctrl)をsin(6・φpll)の値に掛けて出力するものであり、この出力側に、第1減算部26gが接続されている。第2係数部26dは、位相角φctrlに対してcos演算を行って係数cos(φctrl)を求め、この係数cos(φctrl)をsin(6・φpll)の値に掛けて出力するものであり、この出力側に、第1加算部26hが接続されている。
【0035】
第3係数部26eは、位相角φctrlに対してsin演算を行って係数sin(φctrl)を求め、この係数sin(φctrl)をcos(6・φpll)の値に掛けて出力するものであり、この出力側に、第1加算部26hが接続されている。更に、第4係数部26fは、位相角φctrlに対してcos演算を行って係数cos(φctrl)を求め、この係数cos(φctrl)をcos(6・φpll)の値に掛けて出力するものであり、この出力側に、第1減算部26gが接続されている。
振幅値算出部26iは、id指令及びiq指令に基づき、d軸電流id及びq軸電流iqの振幅値√(id2+iq2)を算出するものであり、この出力側に、第5係数部26jが接続されている。第5係数部26jは、振幅値√(id2+iq2)に対して係数「kctrl」を掛けるものであり、この出力側に、第1、第2乗算部26k,26lが接続されている。
【0036】
第1乗算部26kには、第2加算部26mが接続されている。第2加算部20mは、入力されるid指令と第1乗算部26kの乗算結果とを加算してid調整値S26mを求めるものであり、この出力側に、電流制御処理部27Aが接続されている。第2乗算部26lには、第2減算部26nが接続されている。第2減算部26nは、入力されるiq指令から、第2乗算部26lの乗算結果を減算してiq調整値S26nを求めるものであり、この出力側に、電流制御処理部27Aが接続されている。
電流制御処理部27Aは、位相同期処理部21Aから与えられる同期信号φpllと、加算部24から与えられる加算値S24と、5次高調波注入部26Aから与えられるid調整値S26m及びiq調整値S26nと、に基づいてスイッチング駆動信号S27を生成し、DC/ACインバータ13のスイッチング動作を制御するものであり、例えば、ソフトウェアで構成されている。この電流制御処理部27Aは、三相/二相変換部27a、回転座標変換部27b、第1、第2減算部27c,27d、第1、第2電流制御部27e,27f、及び変調制御部27gを有している。
【0037】
三相/二相変換部27aは、CT17から出力される三相UVWの電流計測値iinvを固定座標系である二相のαβ座標系に変換するものであり、この出力側に、回転座標変換部27bが接続されている。回転座標変換部27bは、変換されたαβ座標系を回転座標のdq座標系に変換し、d軸電流id及びq軸電流iqを生成するものであり、この出力側に、第1、第2減算部27c,27dが接続されている。第1、第2減算部27c,27dの出力側には、第1、第2電流制御部27e,27fがそれぞれ接続されている。
第1電流制御部27eは、第1減算部27cの減算結果に対して比例積分(以下「PI」という。)等のフィートバック制御を行うものであり、この出力側に、変調制御部27gが接続されている。第2電流制御部27fは、第2減算部27dの減算結果に対してPI等のフィートバック制御を行うものであり、この出力側に、変調制御部27gが接続されている。
変調制御部27gは、第1、第2電流制御部27e,27fの制御結果に対してパルス幅変調(以下「PWM」という。)等の変調を行い、DC/ACインバータ13をスイッチング動作させるためのスイッチング駆動信号S27を生成するものである。
【0038】
図2は、
図1中の5次高調波用のパラメータ算出部30の構成を示す機能ブロック図である。
パラメータ算出部30は、制御目標となる位相角指令φexを含む高調波電流制御指令harm5ref、設定力率λ、予め取得したDC/ACインバータ13の高調波特性Aharm5_pcs、及び位相角φharm5_pcsを入力し、演算により、その設定力率λに対するパラメータとして高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出するものである。このパラメータ算出部30は、アークコサイン算出部31、第1、第2、第3係数部32,38,40、加算部33、余弦波算出部34、正弦波算出部35、第1、第2乗算部36,37、第1、第2減算部39,41、振幅値算出部42、及びアークタンジェント算出部43を有している。
アークコサイン算出部31は、入力される設定力率λに対してacos演算を行ってacos(λ)の値を算出するものであり、この出力側に、第1係数部32が接続されている。第1係数部32は、算出されたacos(λ)の値に対して係数「5」を掛けるものであり、この出力側に、加算部33が接続されている。加算部33は、入力されるDC/ACインバータ13の位相角φharm5_pcsと、係数部32の出力値と、を加算して位相角φpcs_pfを求めるものであり、この出力側に、余弦波算出部34及び正弦波算出部35が接続されている。
【0039】
余弦波算出部34は、位相角φpcs_pfに対してcos演算を行ってcos(φpcs_pf)の値を算出するものであり、この出力側に、第1乗算部36が接続されている。正弦波算出部35は、位相角φpcs_pfに対してsin演算を行ってsin(φpcs_pf)の値を算出するものであり、この出力側に、第2乗算部37が接続されている。
第1乗算部36は、入力されるDC/ACインバータ13の高調波特性Aharm5_pcsと、算出されたcos(φpcs_pf)の値と、を乗算するものであり、この出力側に、第1減算部39が接続されている。第2乗算部37は、入力される高調波特性Aharm5_pcsと、算出されたsin(φpcs_pf)の値と、を乗算するものであり、この出力側に、第2減算部41が接続されている。
【0040】
第2係数部38は、位相角指令φexに対しcos演算を行って係数cos(φex)を求め、この係数cos(φex)を、入力される高調波電流制御指令harm5refに掛けて、出力するものであり、この出力側に、第1減算部39が接続されている。第3係数部40は、位相角指令φexに対しsin演算を行って係数sin(φex)を求め、この係数sin(φex)を、入力される高調波電流制御指令harm5refに掛けて、出力するものであり、この出力側に、第2減算部41が接続されている。
第1減算部39は、第2係数部38の出力値から、第1乗算部36の乗算結果を減算し、x軸制御指令xharm5を求めるものであり、この出力側に、振幅値算出部42及びアークタンジェント算出部43が接続されている。第2減算部41は、第3係数部40の出力値から、第2乗算部37の乗算結果を減算し、y軸制御指令yharm5を求めるものであり、この出力側に、振幅値算出部42及びアークタンジェント算出部43が接続されている。
振幅値算出部42は、x軸制御指令xharm5及びy軸制御指令yharm5から振幅値√(x2+y2)を算出し、5次高調波の振幅kctrlを求めるものである。アークタンジェント算出部43は、x軸制御指令xharm5及びy軸制御指令yharm5からatan2(y,x)を算出し、5次高調波の位相角φctrlを求めるものである。
【0041】
(実施例1の系統連系インバータ装置2Aにおける全体の動作)
従来と同様に、本実施例1の三相系統連系インバータ装置2Aでは、直流電源1から供給された直流電圧が、DC/DCコンバータ11により所定の直流電圧に変換され、コンデンサ12に蓄積される。コンデンサ12に蓄積された電圧は、単独運転検出装置20Aから供給されるスイッチング駆動信号S27によってスイッチング動作するDC/ACインバータ13により、三相交流電圧に変換され、このDC/ACインバータ13から、三相のインバータ電流Iinvが出力される。DC/ACインバータ13から出力された三相の交流電圧及びインバータ電流Iinvは、フィルタ回路のインダクタ14及びコンデンサ15によって高調波成分が除去される。
高調波成分が除去された三相交流の系統電圧Vac及び出力電流Ioは、開閉器16を介して負荷装置3及び三相電力系統6側へ出力される。電力系統6に停電等が発生すると、遮断器5がオフ状態になり、系統連系インバータ装置2Aが電力系統6から切り離されて単独運転状態となり、その系統連系インバータ装置2Aから出力された系統電圧Vac及び出力電流Ioが負荷装置3へ供給される。
【0042】
(実施例1の単独運転検出装置20Aの動作)
従来と同様に、三相系統連系インバータ装置2Aと同じ配電線に接続されている負荷装置3とのバランス条件において、単独運転状態になった時の高調波電圧の変動を検出し、ステップ注入部22を動作させることにより、単独運転を検出する。高調波電圧の変化が閾値未満で、ステッフ注入部22が動作しない恐れがあるため、本実施例1では、5次高調波注入部26Aにより、以下のようにして、三相系統連系インバータ装置2Aの出力側へ高調波注入を行い、単独運転となった時の高調波電圧を確実に変化させるように制御している。
5次高調波注入部26Aにおいて、
図2のパラメータ算出部30には、制御目標の位相角指令φexを含む高調波電流制御指令harm5ref、設定力率λ、予め取得したDC/ACインバータ13の高調波特性Aharm5_pcs、及び位相角φharm5_pcsが入力される。
【0043】
入力された設定力率λから、アークコサイン算出部31により、その設定力率λのacos(λ)が算出され、第1係数部32により、そのacos(λ)に係数「5」が掛けられる。係数「5」が掛けられた値と、入力された位相角φharm5_pcsと、が加算部33で加算され、位相角φpcs_pfが求められる。求められた位相角φpcs_pfから、余弦波算出部34により、その位相角φpcs_pfのcos(φpcs_pf)が算出されると共に、正弦波算出部35により、その位相角φpcs_pfのsin(φpcs_pf)が算出される。算出されたcos(φpcs_pf)の値と、入力されたDC/ACインバータ13の高調波特性Aharm5_pcsの値と、が第1乗算部36で乗算される。更に、算出されたsin(φpcs_pf)の値と、高調波特性Aharm5_pcsの値と、が第2乗算部37で乗算される。
第2係数部38により、位相角指令φexがcos演算されて係数cos(φex)が求められ、この係数cos(φex)が、入力された高調波電流制御指令harm5refに掛けられて、第1減算部39へ出力される。第3係数部40により、位相角指令φexがsin演算されて係数sin(φex)が求められ、この係数sin(φex)が、入力された高調波電流制御指令harm5refに掛けられて、第2減算部41へ出力される。
【0044】
第1減算部39により、第2係数部38の出力値から、第1乗算部36の乗算結果が減算され、x軸制御指令xharm5が求められる。更に、第2減算部41により、第3係数部40の出力値から、第2乗算部37の乗算結果が減算され、y軸制御指令yharm5が求められる。求められたx軸制御指令xharm5及びy軸制御指令yharm5から、振幅値算出部42により、振幅値√(x
2+y
2)の演算が行われてパラメータの5次高調波の振幅kctrlが求められると共に、アークタンジェント算出部43により、atan2(y,x)が演算されてパラメータの5次高調波の位相角φctrlが求められる。
図1の5次高調波注入部26Aにおいて、求められたパラメータの5次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlの内、振幅kctrlは、第5係数部26jに与えられ、位相角φctrlは、第1、第2、第3、第4係数部26c,26d,26e,26fに与えられる。
【0045】
位相同期処理部21Aにおいて、VT18で計測された三相の電圧計測値vacは、電圧計測回路21aにより、デジタル信号の電圧計測値に変換される。変換されたデジタル信号の電圧計測値から、瞬時位相角演算部21dにより、瞬時位相角演算が行われて位相角θ(t)が求められる。求められた位相角θ(t)から、PLL制御部21eにより、位相同期制御が行われて同期信号φpllが求められ、5次高調波注入部26A及び電流制御処理部27Aへ与えられる。
5次高調波注入部26Aにおいて、PLL制御部21eから与えられた同期信号φpllから、正弦波算出部26aにより、sin(6・φpll)の値が算出されて、第1、第2係数部26c,26dへ与えられる。更に、同期信号φpllから、余弦波算出部26bにより、cos(6・φpll)の値が算出されて、第3、第4係数部26e,26fへ与えられる。
【0046】
第1係数部26cは、位相角φctrlのsin演算を行って係数sin(φctrl)を求め、この係数sin(φctrl)をsin(6・φpll)の値に掛けて、第1減算部26gへ出力する。第2係数部26dは、位相角φctrlのcos演算を行って係数cos(φctrl)を求め、この係数cos(φctrl)をsin(6・φpll)の値に掛けて、第1加算部26hへ出力する。
第3係数部26eは、位相角φctrlのsin演算を行って係数sin(φctrl)を求め、この係数sin(φctrl)をcos(6・φpll)の値に掛けて、第1加算部26hへ出力する。更に、第4係数部26fは、位相角φctrlのcos演算を行って係数cos(φctrl)を求め、この係数cos(φctrl)をcos(6・φpll)の値に掛けて、第1減算部26gへ出力する。
【0047】
第1減算部26gにより、第4係数部26fの出力値から、第1係数部26cの出力値が減算される。更に、第1加算部26hにより、第2係数部26dの出力値と第3係数部26eの出力値とが加算される。
5次高調波注入部26Aに入力されたid指令及びiq指令から、振幅値算出部26iにより、その振幅値√(id2+iq2)が算出され、第5係数部26jにより、係数「kctrl」が掛けられる。この掛けられた値と第1減算部26gの減算結果とが、第1乗算部26kで乗算され、更に、その掛けられた値と第1加算部26hの加算結果とが、第2乗算部26lで乗算される。第1乗算部26kの乗算結果とid指令とは、第2加算部26mで加算されてid調整値S26mが生成され、電流制御処理部27Aへ与えられる。更に、第2減算部26nにより、iq指令から第2乗算部26lの乗算結果が減算されて、iq調整値S26nが生成され、電流制御処理部27Aへ与えられる。
【0048】
電流制御処理部27Aにおいて、CT17で計測された三相UVWの電流計測値iinvから、三相/二相変換部27aにより、二相のαβ座標系に変換される。変換された二相のαβ座標系は、回転座標変換部27bにより、dq座標系に変換されてd軸電流id及びq軸電流iqが生成され、第1、第2減算部27c,27dへそれぞれ与えられる。第1減算部27cは、5次高調波注入部26A内の第2加算部26mから与えられたid調整値S26mから、d軸電流idの値を減算する。更に、第2減算部27dは、5次高調波注入部26A内の第2減算部26nから与えられたiq調整値S26nから、q軸電流iqの値を減算する。
第1減算部27cの減算結果から、第1電流制御部27eにより、PI等のフィートバック制御が行われ、更に、第2減算部27dの減算値から、第2電流制御部27fにより、PI等のフィートバック制御が行われる。第1、第2電流制御部27e,27fの制御結果から、変調制御部27gにより、PWM等の変調が行われ、スイッチング駆動信号S27が生成され、DC/ACインバータ13がスイッチング動作を行う。これにより、三相系統連系インバータ装置2Aの出力側へ高調波注入が行われ、単独運転となった時の高調波電圧が確実に変化する。
【0049】
(実施例1の効果)
本実施例1の単独運転検出装置20A及びそれを備えた三相系統連系インバータ装置2Aによれば、5次高調波注入部26Aを設け、パラメータ算出部30により、設定力率λに対するパラメータとして5次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出し、5次高調波の目標指令であるid指令及びiq指令と、5次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlと、のベクトル演算により、三相電力系統6に対して注入する5次高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせる構成になっている。そのため、力率出力条件においても、例えば、三相電力系統6側の変圧器4の励磁電流等に同期した安定な5次高調波出力を行い、単独運転検出を確実に行わせることができる。
【実施例2】
【0050】
(実施例2の構成)
図3は、本発明の実施例2における5次高調波用のパラメータ算出部30Aの構成を示す機能ブロック図であり、実施例1を示す
図2のパラメータ算出部30の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例2のパラメータ算出部30Aでは、実施例1のパラメータ算出部30中の設定力率λを入力するアークコサイン算出部31に代えて、電流指令であるd軸電流指令idref及びq軸電流指令iqrefを入力するアークタンジェント算出部31Aを設けた点が異なっている。本実施例2のアークタンジェント算出部31Aは、d軸電流指令idref及びq軸電流指令iqrefを入力し、角度(iqref,idref)のatan演算を行ってatan2(iqref,idref)の値を算出するものであり、この出力側に、実施例1と同様の第1係数部32が接続されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0051】
(実施例2の動作)
図3のパラメータ算出部30Aには、実施例1と同様の制御目標の位相角指令φexを含む高調波電流制御指令harm5ref、予め取得したDC/ACインバータ13の高調波特性Aharm5_pcs、及び位相角φharm5_pcsと、実施例1とは異なる電流指令であるd軸電流指令idref及びq軸電流指令iqrefと、が入力される。
入力されたd軸電流指令idref及びq軸電流指令iqrefから、アークタンジェント算出部31Aにより、atan演算が行われてatan2(iqref,idref)の値が算出され、第1係数部32により、係数「5」が掛けられる。係数「5」が掛けられた値と、入力された位相角φharm5_pcsの値と、が加算部33で加算され、位相角φpcs_pfが求められる。
【0052】
そして、実施例1と同様の動作により、振幅値算出部42により、振幅値√(x2+y2)の演算が行われて高調波の振幅kctrlが求められると共に、アークタンジェント算出部43により、atan2(y,x)の演算が行われて高調波の位相角φctrlが求められる。これにより、実施例1の5次高調波注入部26Aと同様の動作が行われる。
【0053】
(実施例2の効果)
本実施例2の単独運転検出装置20A及びそれを備える三相系統連系インバータ装置2Aによれば、5次高調波注入部26Aを設け、パラメータ算出部30Aにより、電流指令であるd軸電流指令idref及びq軸電流指令iqrefに対する5次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出し、5次高調波の目標指令であるid指令及びiq指令と、5次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlと、のベクトル演算により、三相電力系統6に対して注入する5次高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせる構成になっている。そのため、実施例1と同様に、力率出力条件においても、例えば、三相電力系統6側の変圧器4の励磁電流等に同期した安定な5次高調波出力を行い、単独運転検出を確実に行わせることができる。
【実施例3】
【0054】
(実施例3の構成)
図4は、本発明の実施例3における単相系統連系インバータ装置2Bの構成例を示す概略の機能ブロック図である。
本実施例3の単相系統連系インバータ装置2Bは、実施例1の
図1の三相系統連系インバータ装置2Aと略同様に、直流電源1に接続された単相用のDC/DCコンバータ11Bと、コンデンサ12Bと、DC/ACコンバータ13Bと、インダクタ14B及びコンデンサ15Bを有するLC形フィルタ回路と、開閉器16Bと、CT17Bと、VT18Bと、を備えている。
単相系統連系インバータ装置2Bの出力側には、実施例1と略同様に、単相用の負荷装置3B、変圧器4B、遮断器5B、及び単相電力系統6Bが接続されている。
単相系統連系インバータ装置2Bの単独運転を検出するための単相用の単独運転検出装置20Bは、実施例1と略同様に、位相同期処理部21B、ステップ注入部22B、無効電力注入部23B、加算部24B、図示しない単独運転検出部、3次高調波注入部26B、及び電流制御処理部27Bを有している。
【0055】
位相同期処理部21Bは、VT18で計測された単相電圧計測値vacに基づいて同期信号φpllを生成するものであり、実施例1の構成と異なり、例えば、ハードウェアで構成された電圧計測回路51と、ソフトウェアで構成されたPLL制御部52と、を有している。電圧計測回路51は、単相電圧計測値vacをデジタル信号の電圧計測値に変換する回路であり、この出力側に、PLL制御部52が接続されている。PLL制御部52は、電圧計測回路51で変換されたデジタル信号の電圧計測値に対して位相同期制御を行って同期信号φpllを求め、この同期信号φpllを3次高調波注入部26Bへ与えるものである。
3次高調波注入部26Bは、設定力率λに対するパラメータとして高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出し、高調波の目標指令である有効電流指令idref(以下「idref指令」という。)及び無効電流指令iqref(以下「iqref指令」という。)と、その高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlと、のベクトル演算により、単相電力系統6Bに対して注入する高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせるものである。
【0056】
この3次高調波注入部26Bは、第1、第2正弦波算出部61,62、余弦波算出部63、第1、第2、第3乗算部64,65,66、第1、第2加算部67,70、振幅値算出部68、係数部69、及びパラメータ算出部30Bを有し、例えば、ソフトウェアで構成されている。
パラメータ算出部30Bは、設定力率λに対するパラメータとして高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出するものである。第1正弦波算出部61は、角度(3・φpll+φctrl)のsin演算を行ってsin(3・φpll+φctrl)の値を算出するものである。第2正弦波算出部62は、角度(φpll)のsin演算を行ってsin(φpll)の値を算出するものである。余弦波算出部63は、角度(φpll)のcos演算を行ってcos(φpll)の値を算出するものである。第1、第2正弦波算出部61,62の出力側には、第1、第2乗算部64,65がそれぞれ接続されている。余弦波算出部63の出力側には、第3乗算部66が接続されている。第2、第3乗算部65,66の出力側には、第1加算部67が接続されている。第1加算部67及び第1乗算部64の出力側には、電流指令調整値S70を生成する第2加算部70が接続されている。
【0057】
idref指令及びiqref指令は、第2、第3乗算部65,66にそれぞれ入力されると共に、振幅値算出部68にも入力される。振幅値算出部68は、idref指令及びiqref指令に基づき、これらの振幅値√(idref2+iqref2)を算出するものであり、この出力側に、係数部69が接続されている。係数部69は、振幅値√(idref2+iqref2)に係数「kctrl」を掛けるものであり、この出力側に、第1乗算部64が接続されている。
電流制御処理部27Bは、3次高調波注入部26B内の第2加算部70から与えられる電流指令調整値S70に基づいてスイッチング駆動信号S27Bを生成し、単相用のDC/ACインバータ13Bのスイッチング動作を制御するものである。この電流制御処理部27Bは、減算部71、電流制御部72、及び変調制御部73を有し、例えば、ソフトウェアで構成されている。
減算部71は、電流指令調整値S70から、CT17Bの単相電流計測値iinvを減算するものであり、この出力側に、電流制御部72が接続されている。電流制御部72は、減算部71の減算結果に対してPI等のフィートバック制御を行うものであり、この出力側に、変調制御部73が接続されている。変調制御部73は、電流制御部72の制御結果に対してPWM等の変調を行い、単相用のDC/ACインバータ13Bをスイッチング動作させるためのスイッチング駆動信号S27Bを生成するものである。
【0058】
図5は、
図4中の3次高調波用のパラメータ算出部30Bの構成を示す機能ブロック図である。
パラメータ算出部30Bは、制御目標の位相角指令φexを含む高調波電流制御指令harm3ref、設定力率λ、予め取得したDC/ACインバータ13Bの高調波特性Aharm3_pcs、及び位相角φharm3_pcsを入力し、演算により、その設定力率λに対するパラメータである高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出するものである。このパラメータ算出部30Bは、
図2のパラメータ算出部30と略同様に、アークコサイン算出部31B、第1、第2、第3係数部32B,38B,40B、加算部33B、余弦波算出部34B、正弦波算出部35B、第1、第2乗算部36B,37B、第1、第2減算部39B,41B、振幅値算出部42B、及びアークタンジェント算出部43Bを有している。
【0059】
(実施例3の単相系統連系インバータ装置2Bにおける全体の動作)
本実施例3の単相系統連系インバータ装置2Bは、実施例1の三相系統連系インバータ装置2Aと略同様の動作を行う。
【0060】
(実施例3の単独運転検出装置20Bの動作)
実施例1の単独運転検出装置20A内の5次高調波注入部26Aと同様に、本実施例3の3次高調波注入部26Bにおいて、
図5のパラメータ算出部30Bには、制御目標の位相角指令φexを含む高調波電流制御指令harm3ref、設定力率λ、予め取得した単相用のDC/ACインバータ13Bの高調波特性Aharm3_pcs、及び位相角φharm3_pcsが入力される。
入力された設定力率λから、アークコサイン算出部31Bにより、acos演算が行われてacos(λ)の値が算出され、第1係数部32Bにより、そのacos(λ)の値に係数「3」が掛けられる。係数「3」が掛けられた値と、入力された位相角φharm3_pcsの値と、が加算部33Bで加算され、位相角φpcs_pfが求められる。
【0061】
求められた位相角φpcs_pfから、余弦波算出部34Bにより、cos演算が行われてcos(φpcs_pf)の値が算出されると共に、正弦波算出部35Bにより、sin演算が行われてsin(φpcs_pf)の値が算出される。算出されたcos(φpcs_pf)の値と、入力された単相用のDC/ACインバータ13Bの高調波特性Aharm3_pcsの値と、が第1乗算部36Bで乗算される。更に、算出されたsin(φpcs_pf)の値と、高調波特性Aharm3_pcsの値と、が第2乗算部37Bで乗算される。
第2係数部38Bは、位相角指令φexのcos演算を行って係数cos(φex)を求め、この係数cos(φex)を、入力された高調波電流制御指令harm3refに掛けて、第1減算部39Bへ出力する。第3係数部40Bは、位相角指令φexのsin演算を行って係数sin(φex)を求め、この係数sin(φex)を、入力された高調波電流制御指令harm3refに掛けて、第2減算部41Bへ出力する。
【0062】
第1減算部39Bにより、第2係数部38Bの出力値から、第1乗算部36Bの乗算結果が減算され、x軸制御指令xharm3が求められる。更に、第2減算部41Bにより、第3係数部40Bの出力値から、第2乗算部37Bの乗算結果が減算され、y軸制御指令yharm3が求められる。求められたx軸制御指令xharm3及びy軸制御指令yharm3から、振幅値算出部42Bにより、振幅値√(x
2+y
2)の演算が行われて高調波の振幅kctrlが求められると共に、アークタンジェント算出部43Bにより、atan2(y,x)が演算されて高調波の位相角φctrlが求められる。
求められた高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlの内、振幅kctrlは、
図4の3次高調波注入部26B内の係数部69に与えられ、位相角φctrlは、第1正弦波算出部61に与えられる。
【0063】
位相同期処理部21Bにおいて、VT18Bで計測された単相電圧計測値vacは、電圧計測回路51により、デジタル信号の電圧計測値に変換される。変換されたデジタル信号の電圧計測値から、PLL制御部52により、位相同期制御が行われて同期信号φpllが求められ、3次高調波注入部26Bへ与えられる。
3次高調波注入部26Bにおいて、PLL制御部52から与えられた同期信号φpllから、第1正弦波算出部61により、sin演算が行われてsin(3・φpll+φctrl)の値が算出され、第2正弦波算出部62により、sin演算が行われてsin(φpll)の値が算出される。更に、余弦波算出部63により、cos演算が行われてcos(φpll)の値が算出される。算出されたsin(φpll)の値と、入力されたidref指令と、が第2乗算部65で乗算される。更に、算出されたcos(φpll)の値と、入力されたiqref指令と、が第3乗算部66で乗算される。第2乗算部65の乗算結果と第3乗算部66の乗算結果とが、第1加算部67で加算される。
【0064】
入力されたidref指令及びiqref指令から、振幅値算出部68により、その振幅値√(idref2+iqref2)が算出され、係数部69により、係数「kctrl」が掛けられる。この掛けられた値とsin(3・φpll+φctrl)の値とが、第1乗算部64で乗算される。この第1乗算部64の乗算結果と第1加算部67の加算結果とが、第2加算部70で加算されて電流指令調整値S70が生成され、電流制御処理部27Bへ与えられる。
電流制御処理部27Bにおいて、減算部71により、電流指令調整値S70から、CT17Bで計測された単相電流計測値iinvが減算される。減算部71の減算結果から、電流制御部72により、PI等のフィートバック制御が行われる。電流制御部72の制御結果から、変調制御部73により、PWM等の変調が行われ、スイッチング駆動信号S27Bが生成され、単相用のDC/ACインバータ13Bがスイッチング動作を行う。これにより、単相系統連系インバータ装置2Bの出力側へ高調波注入が行われ、単独運転となった時の高調波電圧が確実に変化する。
【0065】
(実施例3の効果)
本実施例3の単独運転検出装置20B及びそれを備える単相系統連系インバータ装置2Bによれば、3次高調波注入部26Bを設け、パラメータ算出部30Bにより、設定力率λに対するパラメータである3次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出し、3次高調波の目標指令であるidref指令及びiqref指令と、3次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlと、のベクトル演算により、単相電力系統6Bに対して注入する3次高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせる構成になっている。そのため、力率出力条件においても、例えば、単相電力系統6B側の変圧器4Bの励磁電流等に同期した安定な3次高調波出力を行い、単独運転検出を確実に行わせることができる。
【実施例4】
【0066】
(実施例4の構成)
図6は、本発明の実施例4における3次高調波用のパラメータ算出部30Cの構成を示す機能ブロック図である。
本実施例4の3次高調波用のパラメータ算出部30Cは、制御目標の位相角指令φexを含む高調波電流制御指令harm3ref、電流指令であるidref指令とiqref指令、予め取得した単相用のDC/ACインバータ13Bの高調波特性Aharm3_pcs、及び位相角φharm3_pcsを入力し、演算により、その電流指令であるidref指令及びiqref指令に対するパラメータである三次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出するものである。
この3次高調波用のパラメータ算出部30Cは、
図3の5次高調波用のパラメータ算出部30Aと略同様に、アークコサイン算出部31C、第1、第2、第3係数部32C,38C,40C、加算部33C、余弦波算出部34C、正弦波算出部35C、第1、第2乗算部36C,37C、第1、第2減算部39C,41C、振幅値算出部42C、及びアークタンジェント算出部43Cを有している。
【0067】
(実施例4の動作)
図6のパラメータ算出部30Cでは、入力されたidref指令及びiqref指令から、アークタンジェント算出部31Cにより、atan演算が行われてatan2(iqref,idref)の値が算出され、第1係数部32Cにより、係数「3」が掛けられる。係数「3」が掛けられた値と、入力された位相角φharm3_pcsの値と、が加算部33Cで加算され、位相角φpcs_pfが求められる。
そして、実施例2の
図3と同様の動作により、振幅値算出部42Cにより、振幅値√(x
2+y
2)の演算が行われて3次高調波の振幅kctrlが求められると共に、アークタンジェント算出部43Cにより、atan2(y,x)の演算が行われて3次高調波の位相角φctrlが求められる。これにより、実施例3の3次高調波注入部26Bと同様の動作が行われる。
【0068】
(実施例4の効果)
本実施例4の単独運転検出装置20B及びそれを備える単相系統連系インバータ装置2Bによれば、3次高調波注入部26Bを設け、パラメータ算出部30Cにより、電流指令であるidref指令及びiqref指令に対するパラメータである3次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlを算出し、3次高調波の目標指令であるidref指令及びiqref指令と、3次高調波の振幅kctrl及び位相角φctrlと、のベクトル演算により、単相電力系統6Bに対して注入する3次高調波電流の振幅及び位相角を算出し、高調波制御を行わせる構成になっている。そのため、実施例3と同様に、力率出力条件においても、例えば、単相電力系統6B側の変圧器4Bの励磁電流等に同期した安定な3次高調波出力を行い、単独運転検出を確実に行わせることができる。
【0069】
(実施例1~4の変形例)
本発明は、上記実施例1~4に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(1)~(4)のようなものがある。
(1) 系統連系インバータ装置2,2A,2Bにおける電力変換部は、図示以外の構成に変更しても良い。例えば、インダクタ14,14B及びコンデンサ15,15BからなるLCフィルタ回路は、LCLフィルタ回路に置き換えても良い。又、DC/DCコンバータ11,11Bは、省略しても良い。
(2) CT17,17Bは、シャント抵抗等の他の電流計測器を使用しても良い。同様に、VT18,18Bは、抵抗分圧回路等の他の電圧計測器を使用しても良い。
(3) 単独運転制御装置20,20A,20Bにおいて、例えば、ステップ注入部22,22Bは、系統電圧Vacにおける高調波歪の変化を検出し、無効電力注入部23,23Bは、規定値以上、ステップ注入発生条件を満たさない高調波歪みの変化を検出した場合は無効電力の注入量を増加させるために、図示以外の他の構成に変更しても良い。
(4) 5次高調波注入部26A及び3次高調波注入部26Bは、図示以外の構成に変更しても良い。又、高調波注入部26の構成としては、5次高調波注入部26Aや3次高調波注入部26Bの構成の他に、他の次数の高調波注入構成に変更したり、或いは、付加したりしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 直流電源
2,2A,2B 系統連系インバータ装置
6,6B 電力系統
13,13B DC/ACインバータ
20,20A,20B 単独運転検出装置
21,21A,21B 位相同期処理部
22,22B ステップ注入部
23,23B 無効電力注入部
25 単独運転検出部
26 高調波注入部
26A 5次高調波注入部
26B 3次高調波注入部
27,27A,27B 電流制御処理部