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特許7083710金属粒子分散液の製造方法、金属粒子分散液、及び被膜付基材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】金属粒子分散液の製造方法、金属粒子分散液、及び被膜付基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20220606BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20220606BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220606BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20220606BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220606BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F9/24 B
B22F9/24 C
B22F9/24 D
B22F9/24 E
B22F9/24 G
B22F9/24 Z
B05D7/24 303C
B01J13/00 B
H01B13/00 501Z
C09D5/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018124875
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020002444
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
(72)【発明者】
【氏名】小松 通郎
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206750(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080662(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00
B05D 7/24
B01J 13/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機安定化剤を含まない液の中で金属塩を還元して金属粒子を調製する工程と、
前記金属粒子を洗浄する工程と、
を有し、
平均気泡径が40nm~10μmの、窒素及び希ガスの少なくとも1種の非酸化性ガスからなる微小気泡が、前記液に含まれることを特徴とする金属粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄に使用する洗浄液が、予め不活性ガスをバブリングして酸素を除去したバブリング液、及び、前記微小気泡を含む液の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の金属粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記金属塩が、4族、5族、6族、8族、9族、10族、11族、13族、14族及び15族から選ばれる金属の塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法により調製された金属粒子分散液を用いて、金属粒子を含む塗布液を作製する工程と、
基材上に前記塗布液を塗布して、被膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする被膜付基材の製造方法。
【請求項5】
平均気泡径が40nm~10μmの、窒素及び希ガスの少なくとも1種の非酸化性ガスからなる微小気泡を含む液中に金属粒子が分散し、酸化還元電位が0~300mVであり、前記金属粒子の炭素含有量が、0.1質量%以下であることを特徴とする金属粒子分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料等に有用な金属粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子は、触媒材料、半導体材料、導電性材料等として各種用途に用いられている。例えば、導電性材料は、各種電子デバイスの電極、回路、帯電防止用透明被膜、電磁波遮蔽用透明被膜、コンデンサ用電極等に用いられている(非特許文献1参照)。
【0003】
このような金属粒子の製造方法として、有機溶剤中で金属塩を還元して金属粒子を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、この有機溶剤を用いる方法で得られる金属粒子は、導電性が低いという問題がある。
【0004】
そこで、導電性のより高い金属粒子を得るべく、水中で金属粒子分散液を製造することも試みられている。例えば、溶媒に不活性ガスを流通させながら有機安定化剤を使用して、金属粒子にクエン酸被覆層を設け、耐酸化性能を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、金属粒子の酸化やイオン化を抑制するには不充分であり、安定した金属粒子分散液を得ることが難しい。また、有機物で被覆されているため、導電性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-281781号公報
【文献】特開2008-075181号公報
【文献】特開2010-189681号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】金属および半導体ナノ粒子の科学」編著者・公益社団法人日本化学会、発行者・曽根良介、発行所・(株)化学同人(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、導電性が高く、保存安定性が高い金属粒子分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
平均気泡径が40nm~10μmの微小気泡を含み、かつ有機安定化剤を含まない液中で、金属塩の還元反応(粒子調製工程)を行う。次いで、この金属塩を還元して得た金属粒子を洗浄液で洗浄して塩を除去(洗浄工程)することによって、金属粒子の酸化やイオン化を抑制して、保存安定性が飛躍的に向上(長期化)する金属粒子分散液が得られる。
【0009】
金属塩の還元反応時において、この微小気泡を含む液を使用することで、有機安定化剤がなくとも金属粒子が凝集せずに、粒子の分散性が高く、保存安定性が高い金属粒子分散液が得られることを見出した。さらに、この液中には有機安定化剤が含まれず、得られた分散液を用いた被膜付基材の金属粒子は有機物で被覆されないため、高い導電性能を示すことを見出した。
【発明の効果】
【0010】
金属粒子の酸化やイオン化が抑制された保存安定性が高い金属粒子分散液を得られる。また、この金属粒子分散液を用いた被膜付基材は、高い導電性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の金属粒子分散液の製造方法は、微小気泡(マイクロナノバブル)を含み、かつ有機安定化剤を含まない液(以下、反応液ということがある)中で金属塩を還元して金属粒子を調製する粒子調製工程と、粒子調製工程で調製した金属粒子を洗浄液で洗浄する洗浄工程とを有する。
この製造方法は、上記各工程の前後に他の工程を有していてもよい。例えば、洗浄工程の後に、粗大粒子を除去する粗大粒子除去工程を有していてもよい。
【0012】
本発明に使用する微小気泡を含む液(微小気泡を含むバブリング液を含む)は、従来の不活性ガスによる脱気(脱酸素)処理水よりも溶存酸素濃度が高く、酸化還元電位も高い。このため、微小気泡を含む液の使用は、より酸化されやすい条件となるので、微小気泡を含む液を還元反応に用いることは、一般的には好ましくないと考えられる。また、有機安定化剤については、金属塩や金属粒子に吸着して、分散安定性を高める機能がある。このため、金属塩の還元反応において、有機安定化剤が存在しないと、金属粒子が凝集し、金属粒子分散液の安定性も低下するので、一般的には好ましくないと考えられる。
ところが、意外にも、この微小気泡を含む液を用いて金属塩の還元反応を行うと、有機安定化剤が存在しなくても、金属塩の分散性が高く、製造される金属粒子分散液の金属粒子が高い収率で得られ、金属粒子の分散性や保存安定性が向上することを見出した。また、この金属粒子分散液を使用した塗布液のポットライフも向上することを見出した。さらに、この塗布液を用いて作製した被膜付基材は、高い導電性(低い表面抵抗値)を有することを見出した。この導電性能は、微小気泡存在下、還元反応時に有機安定化剤を使用しない方が高性能であることを見出した。これらの理由は、よく分からないが、反応液中に含まれる微小気泡によって、金属粒子が酸化されずに、金属として存在するための保護作用があるためと推察している。加えて、金属塩の還元反応において、有機安定化剤が存在しないため、有機安定化剤が金属塩や金属粒子に吸着することはない。その結果、得られた金属粒子分散液、それを使用した塗布液および被膜付基材中の金属粒子は、有機安定化剤に由来する有機物で被覆されないため、導電性能が向上していると考えている。
【0013】
また、上述の金属塩の還元反応(粒子調製工程)での液と、金属塩を還元して得た金属粒子の洗浄(洗浄工程)での洗浄液の両方で微小気泡を含む液を使用することで、より高い収率で金属粒子が得られ、金属粒子分散液の保存安定性が向上し、この金属粒子分散液を使用した塗布液のポットライフがさらに向上することを見出した。
以下に、金属粒子分散液の製造方法について説明する。
【0014】
[金属粒子分散液の製造方法]
〈粒子調製工程〉
反応液中で、還元剤と金属塩とを混合して金属粒子を調製する。反応液としては、有機安定化剤を含まず、微小気泡を含む液を用いるのであれば、有機溶媒であっても、水であってもよい。ただし、水の場合に、効果がより発揮される。
反応液中に酸素等の酸化性ガスが存在すると、金属が酸化するおそれがある。このため、反応液及び反応液が接する空間において、酸化性ガスを可能な限り減じることが望ましい。本工程は、酸化性ガスの混入を抑制するため、Nガスや希ガス等の不活性ガスによってパージした状態で行うことが好ましい。
ここで、酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、炭酸ガス、一酸化窒素、一酸化二窒素、二酸化窒素、フッ素、塩素、二酸化塩素、三フッ化窒素、三フッ化塩素、四塩化珪素、二フッ化酸素、ペルクロリルフルオリド等が例示される。
【0015】
還元反応において、もし反応液中に有機安定化剤が存在すると、金属塩に有機安定化剤が吸着されるため、金属塩の分散性が向上し、金属塩の還元もスムーズに行われる。また、有機安定化剤は、金属塩が還元されて得られた金属粒子に吸着して、金属粒子分散液の分散性安定性が向上する。このため、この金属粒子分散液を使用した塗布液のポットライフも向上する。ところが、金属粒子表面が有機物に被覆されるため、この金属粒子を使用した被膜の導電性は、有機安定化剤を使用していないものに比べて低下するおそれがある。
この有機安定化剤は、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、ポリアクリル酸、カルボン酸化合物等が例示される。
【0016】
本工程の反応液は、酸化還元電位(ORP)が、-50mV以下が好ましく、-100mV以下がより好ましい。また、pHが、2.5~10.5が好ましく、2.7~10.0がより好ましい。この酸化還元電位及びpHの範囲内で金属塩の還元を行うことにより、金属粒子の生成がスムーズに行われる。また、反応温度は、10~80℃が好ましい。
【0017】
《微小気泡》
微小気泡は、好ましくは平均気泡径が40nm~10μmの微小気泡(マイクロナノバブル)である。かかる微小気泡は、気泡径が40~100nm(0.1μm)のいわゆるナノバブル、及び気泡径が0.1~10μmのいわゆるマイクロバブルの少なくとも一方を含むものであり、両者を含むものが好ましい。微小気泡の平均気泡径の上限は、500nmが好ましく、350nmがより好ましく、200nmがさらに好ましい。また、微小気泡の平均気泡径の下限は、50nmが好ましく、60nmがより好ましく、65nmがさらに好ましい。
【0018】
微小気泡の含有量は、本発明の効果を有効に発揮すべく、1.0×10個/mL以上が好ましく、1.0×10個/mL以上がより好ましく、1.0×10個/mL以上がさらに好ましい。その上限は特に制限はないが、1.0×1011個/mLが好ましく、5.0×1010個/mLがより好ましく、1.0×1010個/mLがさらに好ましい。
【0019】
微小気泡の平均気泡径及び気泡個数は、液中の気泡のブラウン運動移動速度を、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)で解析して求められる。例えば、Malvern社製「ナノサイト NS300」で測定できる。
【0020】
微小気泡を形成する気体は、非酸化性ガスが好ましい。具体的には、窒素、水素、及び希ガスの少なくとも1種が好ましい。
【0021】
《金属塩》
金属粒子の原料となる金属塩は、周期表の4族、5族、6族、8族、9族、10族、11族、13族、14族及び15族から選ばれる金属の塩が用いられる。塩の種類としては、例えば、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0022】
好ましい金属元素は、4族ではTi、5族ではTa、6族ではW、8族ではRu、9族ではCo、Rh、10族ではNi、Pd、Pt、11族ではCu、Ag、Au、13族ではAl、In、14族ではSn、15族ではSbが例示される。この製造方法は、AuやAg以外の酸化されやすい金属にも適用可能である。
【0023】
《還元剤》
粒子調製工程における還元反応は、通常、還元剤を用いる。
還元剤は、例えば、硫酸第一鉄、NaBH、ヒドラジン、水素、アルコール、次亜リン酸ナトリウム、LiBH、LiAlH、ジボランが挙げられる。
【0024】
還元剤の使用量は、金属塩の還元性によっても異なるが、金属塩1モルに対し、0.5~10モルが好ましく、1~5モルがより好ましい。ここで、還元剤が金属塩1モルに対し0.5モル未満の場合は、還元が不充分となり、所望の金属粒子が得られない場合がある。逆に、還元剤が金属塩1モルに対し10モルを超えると、必要以上に粒子径の大きな金属粒子が生成する場合がある。
【0025】
《pH調整剤》
粒子調製工程の反応液は、上記のように、pHが2.5~10.5になるように、pH調整剤を用いて調整しても良い。pH調整剤は、鉱酸、有機酸が適している。
ここで、有機酸を使用する場合、その分子量が大きいものは、金属粒子への有機物被覆のおそれがあるため、炭素数が1~3の低分子量のものが好ましい。その使用量は、金属塩1モルに対して0.5モル未満が好ましい。
【0026】
〈洗浄工程〉
洗浄工程では、粒子調製工程で調製した金属粒子を洗浄液で洗浄する。ここで、脱塩が行われる。この塩とは、金属塩の還元処理によって生じた金属粒子以外の物質であり、反応液中にイオンとして存在する。具体的には、ナトリウム、鉄等の金属イオンや、ホウ素イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、有機酸イオン等が例示される。この洗浄工程では、カルボン酸化合物等の金属イオンと錯体を形成する有機安定化剤を使用しても構わない。それは、例えば、還元剤として硫酸第一鉄のような金属を含む還元剤を使用した場合、この還元剤の金属イオンと有機安定化剤とが錯体を形成して、効率よく還元剤を除去できるためである。
【0027】
洗浄液は、水やアルコールが適しており、その他の成分を含んでいてもよい。この洗浄液は、予め不活性ガスをバブリングして酸素を除去したバブリング液及び微小気泡を含有した液の少なくとも一方を用いることが好ましい。特に、微小気泡を含む液を用いることが好ましい。微小気泡を含む液の詳細は、上記粒子調製工程で用いた微小気泡を含む液(反応液)と同様である。また、洗浄後に製造された金属粒子分散液も微小気泡を含むことが好ましい。
【0028】
微小気泡を含む洗浄液で金属粒子を洗浄することにより、金属粒子のイオン化や酸化を防止して、金属粒子分散液の保存安定性及びこの金属粒子分散液を使用した塗布液のポットライフを飛躍的に向上できる。また、製造される金属粒子の分散性が向上し、最終的な分散液中の塩や有機安定化剤に由来する有機物の量を低減できる。したがって、被膜にした際、金属粒子同士がより直接的に接触し、粒子境界の抵抗が小さくなり、結果として、高い導電性を有する被膜を形成できる。
【0029】
洗浄方法は、限外ろ過膜法やデカンテーション法が例示される。洗浄によって、硝酸イオン、硫酸イオン等の不純分を除去できる。さらに、イオン交換樹脂を用いて精製することが好ましい。
【0030】
微小気泡を含む液を用いると、十分に不純分を除去でき、後のイオン交換樹脂による処理の簡略化(樹脂量の低減)も図れるため、効率的に金属粒子を製造できる。また、洗浄回数を減らすことも可能であり、これによっても効率的に金属粒子を製造できる。このような洗浄工程の簡略化により、金属粒子のロスが少なくなり、収率を向上できる。さらに、洗浄工程の簡略化によって、金属粒子の酸化の誘発が抑制されるので、この金属粒子を用いて形成した被膜は導電性が高くなる。
【0031】
〈粗大粒子除去工程〉
洗浄工程の後、遠心分離等により、粗大粒子を除去することが好ましい。
【0032】
また、本発明は、上述の製造方法により調製された金属粒子分散液に関する。以下に、これについて説明をする。
[金属粒子分散液]
本発明の金属粒子分散液は、微小気泡を含む液中に金属粒子が分散していることを特徴とする。微小気泡を含む液の詳細は、上記粒子調製工程で用いた微小気泡を含む液(反応液)と同様である。また、金属粒子としては、周期表の4族、5族、6族、8族、9族、10族、11族、13族、14族、15族の金属粒子が挙げられる。金属粒子は、複数種を混合して用いてもよい。この金属粒子分散液は、上記の製造方法により製造できる。
分散媒は、水や有機溶媒が適している。ここで、有機溶媒は、特に種類を選ばないが、塗布液としての加工のしやすさや被膜付基材の製造のしやすさからアルコール類が好ましく、メタノールやエタノールがより好ましい。
【0033】
金属粒子分散液の保存安定性は、不活性ガスでバブリングした溶媒のみを使用して製造された場合、その金属種にもよるが、通常、数時間~1ヶ月程度である。これに対し、本発明の金属粒子分散液の保存安定性は3ヶ月を超える。これは、単に気泡が存在する場合の作用とは異なり、微小気泡と金属粒子との間で何らかの作用が働いているためと考えられる。
【0034】
なお、現状の技術では、金属粒子と微小気泡が共存している分散液のまま、微小気泡の平均気泡径や気泡個数を測定することは困難である。このため、金属粒子を限外濾過膜で取り除き、この濾液に含まれる微小気泡を測定することにより、微小気泡の平均気泡径及び気泡個数を求める。すなわち、本発明の平均気泡径及び気泡個数は、分画分子量4000の限外濾過膜を通過した濾液を測定したものをいう。
【0035】
金属粒子分散液の酸化還元電位(ORP)は、0~300mVが好ましく、100~250mVがより好ましい。ここで、ORPが0mV未満の場合は、還元場にあるため金属粒子の分散性が不安定になる場合がある。逆に、ORPが300mVを超える場合は、金属粒子が酸化される場合がある。
また、pHは、通常、4.0~7.0であり、4.5~6.5が好ましい。ここで、pHが4.0未満の場合は、イオンの状態で存在し、金属粒子が得られない場合がある。逆に、pHが7.0を超える場合は、塩濃度が高いため、金属粒子が凝集する場合がある。
【0036】
金属粒子分散液の電気伝導度は、10~500μS/cmが好ましく、50~300μS/cmがより好ましい。ここで、電気伝導度が10μS/cm未満の場合は、分散剤が少なく保存安定性が低下する(寿命が短い)場合がある。逆に、電気伝導度が500μS/cmを超える場合は、塩濃度が高くなるため、保存安定性が低下する場合がある。また、導電膜を形成しても導電性が悪化する場合がある。
【0037】
金属粒子分散液の不純分の各々の含有量は、金属粒子に対して、100ppm以下が好ましく、80ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。ここで、100ppmを超えると、塩濃度が高くなるため、保存安定性が低下する場合がある。また、導電膜を形成しても導電性が悪化する場合がある。金属粒子分散液の不純分は、金属粒子と分散媒および有機安定化剤以外の物質である。これは、金属塩の還元処理によって生じた金属粒子以外の物質で、反応液中にイオンとして存在する。具体的には、ナトリウムや鉄等の金属イオンやホウ素イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が例示される。特に、ナトリウムと鉄の金属イオンは、導電性から見て、ナトリウムが10ppm以下、鉄が50ppm以下の両方を満足することが好ましい。
【0038】
また、金属粒子分散液に含まれる金属粒子の炭素含有量は、金属粒子に対して0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。
この金属粒子に含有される炭素は、金属塩、還元剤、pH調整剤、洗浄液、溶媒等の有機化合物に由来する。これには、金属粒子分散液の製造のために、意図的に添加されたものの他、原料等に不可避的に存在するものも含まれる。特に、金属粒子分散液に、前述の有機安定化剤が含まれていると、金属粒子表面が有機物で被覆されるため、被膜にした場合、導電性が低下するおそれがある。このような有機物に由来する炭素含有量は、後述のように、C(カーボン)量を分析することで求めることができる。
【0039】
この金属粒子分散液に含まれる金属粒子の平均粒子径は、3~200nmが好ましく、5~70nmがより好ましい。平均粒子径が3~200nmであれば、透明性の高い導電性被膜を得ることができる。
金属粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡写真を撮影し、任意の500個の粒子について、粒子径を測定し、その平均値として得る。
【0040】
本発明の金属粒子分散液は、金属粒子の酸化やイオン化を抑制できる。したがって、水系においても、従来実現できなかった長期の保存安定性が実現できる。また、この金属粒子分散液を使用した塗布液でも従来実現できなかった長期のポットライフが実現できる。さらに、この金属粒子分散液は、酸化物粒子の含有量が非常に少なく、導電性の高い被膜の製造が可能である。ここで、金属粒子分散液中の金属酸化物は、X線回折で確認することができる。この金属酸化物はX線回折で検出されないことが好ましい。その含有量は、粒子に対して、500ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、100ppm以下がさらに好ましい。もし、金属酸化物の含有量が500ppmを超えると、分散液の保存安定性が低下し、粒子が凝集して析出するおそれがある。また、金属粒子がイオン化してしまうと、液中で粒子として存在せず、これを塗布液として使用しても所望の被膜は得られない。
【0041】
また、本発明は、上述の金属粒子分散液を用いた塗布液を基材上に塗布することを特徴とする被膜付基材の製造方法に関する。以下に、これらについて説明をする。
[塗布液の製造方法]
本発明の金属粒子分散液に含まれる金属粒子を用いて被膜形成用塗布液が製造できる。被膜形成用塗布液には、従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0042】
[被膜付基材の製造方法]
被膜付基材の製造は、この塗布液を基材上に塗布した後、乾燥し、必要に応じて焼成を行う。
【0043】
基材は、ガラス、プラスチック、セラミック、金属等からなるフィルム状、シート状等の基材が例示される。塗布液の塗布方法は、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法等が例示される。被膜の膜厚は、30~300nm程度が好ましく、50~200nm程度がより好ましい。
【0044】
乾燥温度は、例えば常温~90℃程度の温度である。焼成温度は、例えば120~900℃程度であり、150~350℃程度であってもよい。本発明の分散液に含まれる金属粒子は有機安定化剤等の有機物の付着が、金属粒子に対して炭素含有量が0.1質量%以下と、少ないため、例えば400℃以上といった高温で焼成して有機物を除去する必要がない。これにより、高温焼成による金属粒子の凝集、融着を防止できるとともに、得られる被膜のへーズの劣化を抑制できる。
【0045】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明の金属粒子分散液の製造方法について説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例
【0046】
[実施例1]
〈粒子調製工程〉
旋回流方式のバブル発生装置(株式会社Ligaric製 HYK-20-SD)で超純水とNを接触させて、Nマイクロナノバブル水(平均気泡径70nm、気泡個数2.4億個/mL、pH5.79、電気伝導度1.17μS/cm、DO1.70ppm、ORP330mV)を準備した。
マイクロナノバブル水600gに硫酸第一鉄7水和物180gを溶解し、溶液A1を調製した。
【0047】
マイクロナノバブル水600gに硝酸銅(II)3水和物76gを溶解し、溶液B1を調製した。その後、溶液B1に溶液A1を添加し、10時間攪拌して得られた分散液から金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0048】
〈洗浄工程〉
粒子調製工程と同様にして、Nマイクロナノバブル水を準備した。
マイクロナノバブル水200gに、上記分離回収した金属粒子を浸漬して洗浄(脱塩)した後、再度遠心分離により分離回収した。
【0049】
〈金属粒子分散液の調製〉
ICP分析で上記分離回収した金属粒子の金属濃度を定量し、Nマイクロナノバブル水を用いて金属換算で濃度が2.5質量%の金属粒子水分散液を調製した。その後、両性イオン交換樹脂10gを用いて脱イオンを行い、金属換算で濃度が2.5質量%の黒茶色の金属粒子分散液P1を得た。
【0050】
[微小気泡の平均気泡径と気泡個数]
金属粒子分散液P1中の微小気泡については、この金属粒子分散液を限外濾過膜(旭化成製SEP-1013分画分子量4000)で濾過して金属粒子を取り除き、濾液中の微小気泡の平均気泡径と気泡個数を測定した。微小気泡の平均気泡径及び気泡個数は、液中の気泡のブラウン運動移動速度を、ナノ粒子トラッキング解析法を用いて測定した。具体的には、測定試料(溶液A1、溶液B1又は金属粒子分散液P1の濾液)約20mLを吸引させながら測定機器(Malvern社製「ナノサイト NS300」)に注入し、ナノ粒子トラッキング解析法にて測定した。なお、マイクロナノバブル水は、濾過処理をせずに、そのまま上記方法で測定した。
【0051】
粒子調製工程で還元後の溶液の物性(pH、ORP)、最終的に得られた金属粒子分散液の物性(pH、ORP、金属粒子の収率、微小気泡の平均気泡径と気泡個数、金属の一次粒子の平均粒子径、金属の二次粒子の平均粒子径、金属粒子の含有量(金属濃度)、C(カーボン)量、不純分(Na、Fe、Na、B、SO、NO)含有量)を表1に示した。また、金属粒子分散液中の金属および金属酸化物の有無、金属粒子分散液の保存安定性を表2に示した(以下の実施例、比較例も同様)。
【0052】
[電気伝導度]
電気伝導度は、交流2電極法によって測定した。具体的には、pHメーター(堀場製作所製F-74 、電極型番3551-10D)を導電率測定モードにて、測定する液に電極を浸漬させて求めた。なお、バブリング水、マイクロナノバブル水、金属粒子分散液の各液温は25℃に調整した。
【0053】
[酸化還元電位(ORP)]
酸化還元電位(Oxidation Reduction Potential)は、pHメーター(堀場製作所製F-74、電極型番9300-10D)の設定をORP測定モードにて、電極を測定する液に電極を浸漬させて求めた。なお、バブリング水、マイクロナノバブル水、金属粒子分散液の各液温は25℃に調整した。
【0054】
[溶存酸素濃度 (DO)]
溶存酸素(Dissolved Oxygen)濃度は、隔膜式ガルバニ電池法によって測定した。具体的には、pHメーター(堀場製作所製OM-51 、電極型番9520-10D)を導電率測定モードにて、測定する液に電極を浸漬させて大気圧下で求めた。なお、バブリング水、マイクロナノバブル水、金属粒子分散液の各液温は25℃に調整した。
[粒子の収率]
金属粒子の収率は、金属粒子分散液中の金属量をICPで測定した金属分散液中の金属濃度から算出し、これを仕込みの金属塩から計算される理論上の金属量で割ったものに100を乗じて求めた。
【0055】
[一次粒子の平均粒子径]
金属粒子の平均粒子径は、画像解析法により測定した。具体的には、透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H-800)により、金属粒子分散液を電子顕微鏡用銅セルのコロジオン膜上で乾燥して、倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の500個の粒子について、その粒子径を測定し、その平均値を金属粒子の平均粒子径とした。
【0056】
[二次粒子の平均粒子径]
金属粒子分散液をそのままセルに入れ、マイクロトラック法にて測定し、その平均値(D50)を金属粒子の平均粒子径とした。
【0057】
[ICP分析]
各元素の質量分析は、誘導結合プラズマ分光分析装置にて化学分析を行った。具体的には、金属粒子分散液を濃硝酸に溶解して、水で濃度10~100質量ppmに調整した溶液を島津製作所(株)製 SEQUENTIAL PLASMA SPECTROMETER(ICPS-8100)にて分析した。
【0058】
[C(カーボン)量測定]
金属粒子中の炭素含有量は、金属粒子分散液を100℃で乾燥させ、炭素硫黄分析装置(HORIBA製 EMIA-320V)を用いて測定した。
【0059】
[イオンクロマト分析]
金属粒子分散液を、超純水を用いて100倍希釈して、イオン交換クロマトグラフ(東ソー製 TSKgel SuperQ-5PW)を用いて、SO、NOの濃度を測定した。
【0060】
[X線回折による金属酸化物の有無の確認]
金属粒子分散液を溶液のまま、X線回折による解析を行い、金属酸化物の存在の有無を確認した。試料のX線回折による定性分析は、RIGAKU(株)製X-RAY DIFFRACT METER(SmartLab)にて行った。具体的には、試料をセルに入れ装置にセットし、管電圧45.0kV、管電流200.0mA、対陰極Cu、測定範囲:開始角度~終了角度(2θ)5.000°~70.000°、スキャンスピード5.000°/minにて測定した。
金属酸化物のピークが観察されなかった場合:○
金属酸化物のピークが観察された場合 :×
【0061】
[保存安定性]
25℃で保管した金属粒子分散液のX線回折(XRD)による金属粒子の酸化の有無および導電性の変化を確認した。
【0062】
〈塗布液および被膜付基材の作製〉
得られた金属粒子分散液P1をエタノールで0.5質量%に希釈し、塗布液を作製した。これをスピンコート法でガラスに塗布し、ついで窒素雰囲気下で、200℃で30分間焼成し、被膜付基材を作製した。この被膜付基材の導電性(表面抵抗)をローレスタ(三菱化学製 NSCPプローブ)で測定した。また、被膜の一部をカッターナイフで剥離させ段差をつくり、レーザー顕微鏡でこの段差を測定し、これを膜厚とした。これらの結果を表2に示した(以下の実施例、比較例も同様)。
【0063】
[実施例2]
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
実施例1の洗浄工程で、Nマイクロナノバブル水の代わりに、Nマイクロナノバブル水を用いて調製した濃度20質量%のクエン酸3ナトリウム水溶液200gを使用した以外は実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液P2を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液P2を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0064】
[実施例3]
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
超純水(pH(25℃、以下同じ)6.32、電気伝導度0.05μS/cm、溶存酸素量(DO)6.17ppm、酸化還元電位(ORP)350mV)をNにてバブリングを1時間行い、溶存酸素を除去したNバブリング水(pH6.6、電気伝導度0.6μS/cm、DO0.6ppm、ORP260mV)を準備した。
実施例1の洗浄工程で、Nマイクロナノバブル水の代わりに、Nバブリング水を使用した以外は実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液P3を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液P3を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0065】
[実施例4]
〈粒子調製工程〉
マイクロナノバブル水500gに硫酸第一鉄7水和物100gを溶解し、溶液A4を調製した。
【0066】
マイクロナノバブル水300gに硝酸銀(I)57gを溶解し、溶液B4を調製した。その後、溶液B4に溶液A4を添加し、10時間攪拌して得られた分散液から、金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0067】
〈洗浄工程〉
マイクロナノバブル水を用いて調製した濃度20質量%のクエン酸3ナトリウム水溶液200gに、上記分離回収した金属粒子を浸漬して洗浄(脱塩)した後、再度遠心分離により分離回収した。
【0068】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液P4を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液P4を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0069】
[実施例5]
〈粒子調製工程〉
マイクロナノバブル水450gに硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO6HO)(関東化学(株)製)50gを溶解し、溶液A5を調製した。
【0070】
マイクロナノバブル水1000gに水素化ホウ素ナトリウム(還元剤)50gを溶解し、溶液B5を調製した。溶液A5を撹拌しながら、溶液B5を添加し、1時間攪拌した。このとき、液が緑色から黒色に変化した。得られた分散液から金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0071】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
実施例1の洗浄工程以降同様にして、黒色の金属粒子分散液P5を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液P5を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0072】
[実施例6]
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
マイクロナノバブル水600gに硝酸パラジウム(II)2水和物9.1gを溶解し、溶液B6を調製した。
溶液B1の代わりに溶液B6を使用した以外は実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液P6を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液P6を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0073】
[比較例1]
〈粒子調製工程〉
実施例3の洗浄工程に記載の方法と同様にして、Nバブリング水を準備した。
バブリング水930gにクエン酸3ナトリウム2水和物(有機安定化剤)400gを溶解し、溶液(RS1-1)を調製した。
バブリング水600gに硫酸第一鉄7水和物(還元剤)180gを溶解し、溶液(RS1-2)を調製した。
溶液(RS1-1)と溶液(RS1-2)とを混合して30分間攪拌し、溶液RA1を調製した。
【0074】
バブリング水600gに硝酸銅(II)3水和物76gを溶解し、溶液RB1を調製した。その後、溶液RB1に溶液RA1を添加し、10時間攪拌して得られた分散液から、金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0075】
〈洗浄工程〉
バブリング水を用いて調製した濃度20質量%のクエン酸3ナトリウム水溶液200gに、上記分離回収した金属粒子を浸漬して洗浄(脱塩)した後、再度遠心分離により分離回収した。
【0076】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
マイクロナノバブル水の代わりに、Nバブリング水を使用した以外は実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP1を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP1を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0077】
[比較例2]
〈粒子調製工程〉
マイクロナノバブル水の代わりにNバブリング水を使用した以外は、実施例1と同様にして得られた分散液から、金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0078】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
洗浄工程以降、比較例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP2を得た。
しかしながら、この分散液はすぐに沈殿を生じ、塗布液および被膜付基材の作製は出来なかった。
【0079】
[比較例3]
〈粒子調製工程〉
バブリング水930gにクエン酸3ナトリウム2水和物400gを溶解し、溶液(RS3-1)を調製した。
バブリング水500gに硫酸第一鉄7水和物100gを溶解し、溶液(RS3-2)を調製した。
溶液(RS3-1)と溶液(RS3-2)とを混合して30分間攪拌し、溶液RA3を調製した。
【0080】
溶液A4の代わりに溶液RA3を使用し、Nマイクロナノバブル水の代わりにNバブリング水を使用した以外は実施例4と同様にして得られた分散液から、金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0081】
〈洗浄工程〉
バブリング水を用いて調製した濃度30質量%のクエン酸3ナトリウム水溶液200gに、上記分離回収した金属粒子を浸漬して洗浄(脱塩)した後、遠心分離により分離回収した。次いで、同様にNバブリング水を用いて調製した濃度20質量%のクエン酸3ナトリウム水溶液200gに、上記分離回収した金属粒子を浸漬して洗浄(脱塩)した後、再度遠心分離により分離回収した。
【0082】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
比較例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP3を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP3を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0083】
[比較例4]
〈粒子調製工程〉
バブリング水450gに硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO6HO)(関東化学(株)製)50gと、クエン酸水和物(有機安定化剤)(キシダ化学(株)製)0.5gを溶解し、溶液RA4を調製した。
【0084】
溶液A5の代わりに溶液RA4を使用し、Nマイクロナノバブル水の代わりにNバブリング水を使用した以外は、実施例5と同様にした。このとき、液が緑色から黒色に変化した。得られた分散液から金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0085】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
洗浄工程以降、比較例1と同様にして、黒色の金属粒子分散液RP4を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP4を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0086】
[比較例5]
〈粒子調製工程〉
比較例1の溶液RA1と同様にして、溶液RA5を調製した。
【0087】
溶液A6の代わりに溶液RA5を使用し、Nマイクロナノバブル水の代わりにNバブリング水を使用した以外は、実施例6と同様にして得られた分散液から、金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0088】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
洗浄工程以降、比較例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP5を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP5を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0089】
[比較例6]
〈粒子調製工程〉
バブリング水の代わりにNマイクロナノバブル水を使用する以外は、比較例1と同様にして、粒子調製を行った。
【0090】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
洗浄工程以降、実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP6を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP6を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0091】
[比較例7]
〈粒子調製工程〉
バブリング水の代わりにNマイクロナノバブル水を使用する以外は、比較例1と同様にして、粒子調製を行った。
【0092】
〈洗浄工程〉
比較例1と同様にした。
【0093】
〈金属粒子分散液の調製、および被膜付基材の作製〉
実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP7を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP7を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0094】
[比較例8]
〈粒子調製〉
比較例1と同様にして、粒子調製を行った。
【0095】
〈洗浄工程〉
バブリング水の代わりにNマイクロナノバブル水を用いた以外は、比較例1と同様にした。
【0096】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
比較例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP8を得た。金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP8を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0097】
[比較例9]
〈粒子調製〉
比較例2と同様にして、粒子調製を行った。
【0098】
〈洗浄工程〉
バブリング水の代わりにNマイクロナノバブル水を用いた以外は、比較例1と同様にした。
【0099】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP9を得た。
しかしながら、この分散液はすぐに沈殿を生じ、塗布液および被膜付基材の作製は出来なかった。
【0100】
[比較例10]
〈粒子調製工程〉
実施例1と同様にして、Nマイクロナノバブル水を準備した。
マイクロナノバブル水930gにクエン酸3ナトリウム2水和物400gを溶解し、溶液(RS10-1)を調製した。
マイクロナノバブル水500gに硫酸第一鉄7水和物100gを溶解し、溶液(RS10-2)を調製した。
溶液(RS10-1)と溶液(RS10-2)とを混合して30分間攪拌し、溶液RA10を調製した。
溶液A4の代わりに溶液RA10を使用した以外は、実施例4と同様にして得られた分散液から、金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0101】
〈洗浄工程〉
バブリング水の代わりにNマイクロナノバブル水を使用した以外は、比較例3と同様にした。
【0102】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP10を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP10を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0103】
[比較例11]
〈粒子調製工程〉
バブリング水の代わりにNマイクロナノバブル水を使用した以外は、比較例4と同様にした。このとき、液が緑色から黒色に変化した。得られた分散液から金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0104】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
洗浄工程以降、実施例1と同様にして、黒色の金属粒子分散液RP11を得た。金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP11を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0105】
[比較例12]
〈粒子調製工程〉
バブリング水の代わりにNマイクロナノバブル水を使用した以外は、比較例5と同様にして得られた分散液から、金属粒子を遠心分離機により分離回収した。
【0106】
〈金属粒子分散液の調製、塗布液および被膜付基材の作製〉
洗浄工程以降、実施例1と同様にして、黒茶色の金属粒子分散液RP12を得た。
金属粒子分散液P1の代わりに金属粒子分散液RP12を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗布液および被膜付基材を作製し、評価した。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の金属粒子分散液は、導電性被膜の形成等に用いることができることから、産業上有用である。