(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法
(51)【国際特許分類】
H02S 20/10 20140101AFI20220606BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
H02S20/10 J
H02S20/10 D
H02S20/10 C
H02S20/10 Q
E04G21/14
(21)【出願番号】P 2018133487
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-07-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月8日、「発破」NO.57 2018年、第35~38頁において、児島 郁男が本発明を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】599165968
【氏名又は名称】多摩火薬機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】児島 郁男
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018114621(DE,A1)
【文献】登録実用新案第3187754(JP,U)
【文献】特開2013-79488(JP,A)
【文献】特開2003-56147(JP,A)
【文献】特開2013-199791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/20、20/10
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物を含む斜面に芯材、縦材、横材からなる架台を設置し、前記斜面に前記架台を介して太陽光パネルを設置する障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法であって、
前記架台1セットで複数枚単位の太陽光パネルを支持するものとし、前記架台1セットに付き、前記芯材として所定の径及び長さを有し、上部にボルト通し孔を有する杭を4本又は6本、前記縦材として前記架台毎に長さを調整可能に所定の余長分を含む長さの2本一組の縦材、前記横材として複数枚単位の太陽光パネルの横方向の全長と略同じ長さを有し、太陽光パネルに設けられるボルト通し孔に合せて縫い付け用のボルト通し孔を有する2本一対の横材、前記2本一対の横材の仮組用に、太陽光パネルの外形と略同じ大きさのフレームからなり、前記各横材の前記ボルト通し孔に対応してボルト通し孔を有するダミーパネルを用い、
前記斜面で前記架台一つに付き縦方向に2箇所又は3箇所ずつ横方向に2列ずつ位置出しした杭位置に杭孔を穿ち、前記縦方向の杭位置のいずれかに障害物がある場合は、横方向の間隔は前記横材の長さの範囲内で、縦方向の間隔は前記縦材の長さの範囲内で、障害物を跨いだ又はかわした位置に杭孔を穿つ穿孔ステップと、
前記穿孔ステップにより穿孔した前記縦方向の各杭孔に杭を設置し、前記縦方向の各杭間に前記縦材を仮架設し、前記各横材間に前記ダミーパネルを相互の前記ボルト通し孔にボルトを通しナットを締結することにより取り付けて並列に仮固定した前記各横材を前記各縦材間に位置を調整して仮架設し、前記架台を仮組する架台仮組ステップと、
前記架台仮組ステップにより仮組した前記架台から、前記各杭のボルト通し孔の前記各縦材に対する接合位置、及び前記各縦材と前記各横材との接合位置をマーキングし、前記縦材に余長がない場合を除いて、前記縦材の余長分の切断位置をマーキングする架台マーキングステップと、
前記架台マーキングステップによりマーキングした架台を前記各杭孔に前記各杭を残して解体し、前記各縦材、前記各横材にマーキングした接合位置にボルト通し孔を穿ち、前記縦材の余長分をマーキングした切断位置で切断する架台現場加工ステップと、
前記架台現場加工ステップにより加工した前記縦材を前記縦方向の各杭間に架設し、前記ダミーパネルを取り付けた前記各横材を前記各縦材間に架設して、前記各杭と前記各縦材との接合位置となる両者の前記ボルト通し孔、前記各縦材と前記各横材との接合位置となる両者の前記ボルト通し孔を、それぞれ合せ、ボルトを通しナットを締結して、前記架台を組み立てるとともに、前記各杭孔の前記各杭を所定の高さに調整し前記各杭又は前記縦材若しくは前記横材に落下防止用治具を取り付けて前記各杭の高さを保持する架台組み立てステップと、
前記架台組み立てステップ後、前記各杭孔に膨張セメントミルクを充填し固化させて、前記各杭孔に前記杭を固定し、前記膨張セメントミルクの固化後、前記架台から前記落下防止用治具を取り外す杭固定ステップと、
前記杭固定ステップ後、前記一対の横材上に、前記ダミーパネルに代えて、太陽光パネルを複数枚単位で配置し、前記各横材の縫い付け用のボルト通し孔と前記各太陽光パネルのボルト通し孔との間にボルトを通しナットを締結することにより、前記各横材上に太陽光パネルを複数枚単位で縫い付ける太陽光パネル取付ステップと、
を有し、
以上のステップにより、太陽光パネルを障害物を含む斜面に設置する、
ことを特徴とする障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法。
【請求項2】
斜面の障害物がある位置に架台を設置する場合、穿孔ステップ、架台仮組ステップ、架台マーキングステップ、架台現場加工ステップ、架台組み立てステップを通し、各縦材を縦方向の各杭間に、障害物を跨いで又はかわして、前記各縦材の、一方又は両方が障害物のない位置に設置する架台の各縦材に比べて長い長さ、又は一方が他方に対して上下の位置をずらした配置、又は一方が他方に対して斜めとなる配置、又は両方が略ハの字形若しくは略逆ハの字形の配置、又はこれらを組み合わせた態様で架設する請求項1に記載の障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法。
【請求項3】
縦材に高耐食性めっき鋼板からなる山形鋼を使用し、横材に高耐食性めっき鋼板からなるZ形鋼を使用する請求項1又は2に記載の障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法。
【請求項4】
架台仮組ステップで、各杭と各縦材を、各縦材と各横材を、それぞれ、バイスにより固定保持する請求項1乃至3のいずれかに記載の障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法。
【請求項5】
架台現場加工ステップで、各横材にボルト通し孔をパンチ孔あけ機でパンチ抜きにより穿ち、縦材の余長分は切断機で切断する請求項1乃至4のいずれかに記載の障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山や丘などの斜面で、切り株、木の根、岩などの障害物を含む斜面に太陽光パネルを設置するのに用いる障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーが注目され、その一つの太陽光発電システムが多数建設された。その結果、太陽光発電システムを設置する用地は、機器の設置が容易な平坦な場所が少なくなり、機器の設置が困難な山、丘などの斜面が増える傾向にある。言い換えれば、太陽光発電システムの設置しやすい平地はほとんどなく、今残っているのは太陽光発電システムの取り付けにくい斜面や水面などがほとんどである。
山、丘などの斜面に太陽光発電システムを設置する場合、山、丘などの斜面は雑木や草が生い茂っているため、雑木の伐採、草刈の後の斜面に、多数の太陽光パネルを架台を介して設置することになる。このような斜面は平坦ではなく、切り株や木の根が多く、岩なども点在しており、平坦地に設置するような架台では施工が困難なことが多い。
【0003】
この種の太陽光パネル設置工法が特許文献1により提案されている。
この文献1の工法(太陽光パネルの架台及びその設置工法)では、太陽光パネルを支持する架台を、二本又は三本以上の縦桟に横桟を上下複数掛け渡して梯子形架台として形成し、この梯子形架台を斜面に設置し、この梯子形架台の少なくとも上端、中間、上端及び下端を接地して、これらの部分に固定用ブロックを取り付け、この固定用ブロックに固定棒を挿通して地中に刺し込み固定する。そして、この梯子形架台の中の仕切られた空間で太陽光パネルを支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の太陽光パネル設置工法では、架台を、二本又は三本以上の縦桟に横桟を上下複数掛け渡して梯子形架台として形成するため、架台の製作に要する資材が多く、これらの資材や機器機材を運搬する人力も多くなって、材料費や人件費が嵩み、コストが増大する、という問題がある。また、この工法のように、梯子形架台の少なくとも上端、中間、上端及び下端を接地して、これらの部分に固定用ブロックを取り付け、この固定用ブロックに固定棒を挿通して地中に刺し込み固定する手法では、山や丘などの雑木の伐採、草刈の後の斜面に切り株や地上を這う木の根、大きな岩などの障害物があると、これが架台の設置に干渉し、施工を困難にする、という問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種の太陽光パネル設置工法において、架台の製作に要する資材を少なくし、これらの資材や機器機材を運搬する人力も少なくして、材料費や人件費を含むコストの低減を図ること、山や丘などの雑木の伐採、草刈の後の斜面に切り株や地上を這う木の根、大きな岩などの障害物があっても、これが架台の設置に干渉することなく、施工を容易にすること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
障害物を含む斜面に芯材、縦材、横材からなる架台を設置し、前記斜面に前記架台を介して太陽光パネルを設置する障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法であって、
前記架台1セットで複数枚単位の太陽光パネルを支持するものとし、前記架台1セットに付き、前記芯材として所定の径及び長さを有し、上部にボルト通し孔を有する杭を4本又は6本、前記縦材として前記架台毎に長さを調整可能に所定の余長分を含む長さの2本一組の縦材、前記横材として複数枚単位の太陽光パネルの横方向の全長と略同じ長さを有し、太陽光パネルに設けられるボルト通し孔に合せて縫い付け用のボルト通し孔を有する2本一対の横材、前記2本一対の横材の仮組用に、太陽光パネルの外形と略同じ大きさのフレームからなり、前記各横材の前記ボルト通し孔に対応してボルト通し孔を有するダミーパネルを用い、
前記斜面で前記架台一つに付き縦方向に2箇所又は3箇所ずつ横方向に2列ずつ位置出しした杭位置に杭孔を穿ち、前記縦方向の杭位置のいずれかに障害物がある場合は、横方向の間隔は前記横材の長さの範囲内で、縦方向の間隔は前記縦材の長さの範囲内で、障害物を跨いだ又はかわした位置に杭孔を穿つ穿孔ステップと、
前記穿孔ステップにより穿孔した前記縦方向の各杭孔に杭を設置し、前記縦方向の各杭間に前記縦材を仮架設し、前記各横材間に前記ダミーパネルを相互の前記ボルト通し孔にボルトを通しナットを締結することにより取り付けて並列に仮固定した前記各横材を前記各縦材間に位置を調整して仮架設し、前記架台を仮組する架台仮組ステップと、
前記架台仮組ステップにより仮組した前記架台から、前記各杭のボルト通し孔の前記各縦材に対する接合位置、及び前記各縦材と前記各横材との接合位置をマーキングし、前記縦材に余長がない場合を除いて、前記縦材の余長分の切断位置をマーキングする架台マーキングステップと、
前記架台マーキングステップによりマーキングした架台を前記各杭孔に前記各杭を残して解体し、前記各縦材、前記各横材にマーキングした接合位置にボルト通し孔を穿ち、前記縦材の余長分をマーキングした切断位置で切断する架台現場加工ステップと、
前記架台現場加工ステップにより加工した前記縦材を前記縦方向の各杭間に架設し、前記ダミーパネルを取り付けた前記各横材を前記各縦材間に架設して、前記各杭と前記各縦材との接合位置となる両者の前記ボルト通し孔、前記各縦材と前記各横材との接合位置となる両者の前記ボルト通し孔を、それぞれ合せ、ボルトを通しナットを締結して、前記架台を組み立てるとともに、前記各杭孔の前記各杭を所定の高さに調整し前記各杭又は前記縦材若しくは前記横材に落下防止用治具を取り付けて前記各杭の高さを保持する架台組み立てステップと、
前記架台組み立てステップ後、前記各杭孔に膨張セメントミルクを充填し固化させて、前記各杭孔に前記杭を固定し、前記膨張セメントミルクの固化後、前記架台から前記落下防止用治具を取り外す杭固定ステップと、
前記杭固定ステップ後、前記一対の横材上に、前記ダミーパネルに代えて、太陽光パネルを複数枚単位で配置し、前記各横材の縫い付け用のボルト通し孔と前記各太陽光パネルのボルト通し孔との間にボルトを通しナットを締結することにより、前記各横材上に太陽光パネルを複数枚単位で縫い付ける太陽光パネル取付ステップと、
を有し、
以上のステップにより、太陽光パネルを障害物を含む斜面に設置する、
ことを要旨とする。
この工法では、斜面の障害物がある位置に架台を設置する場合、穿孔ステップ、架台仮組ステップ、架台マーキングステップ、架台現場加工ステップ、架台組み立てステップを通し、各縦材を縦方向の各杭間に、障害物を跨いで又はかわして、前記各縦材の、一方又は両方が障害物のない位置に設置する架台の各縦材に比べて長い長さ、又は一方が他方に対して上下の位置をずらした配置、又は一方が他方に対して斜めとなる配置、又は両方が略ハの字形若しくは略逆ハの字形の配置、又はこれらを組み合わせた態様で架設する。
この工法では、縦材に高耐食性めっき鋼板からなる山形鋼を使用し、横材に高耐食性めっき鋼板からなるZ形鋼を使用する。
この工法では、架台仮組ステップで、各杭と各縦材を、各縦材と各横材を、それぞれ、バイスにより固定保持する。
この工法では、架台現場加工ステップで、各横材にボルト通し孔をパンチ孔あけ機でパンチ抜きにより穿ち、縦材の余長分は切断機で切断する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法によれば、次のような本発明独自の格別な効果を奏する。
(1)架台1セットで複数枚単位の太陽光パネルを支持するものとし、架台1セットに付き、芯材として所定の径及び長さを有し、上部にボルト通し孔を有する杭を4本又は6本、縦材として架台毎に長さを調整可能に所定の余長分を含む長さの2本一組の縦材、横材として複数枚単位の太陽光パネルの横方向の全長と略同じ長さを有し、太陽光パネルに設けられるボルト通し孔に合せて縫い付け用のボルト通し孔を有する2本一対の横材、2本一対の横材の仮組用に、太陽光パネルの外形と略同じ大きさのフレームからなり、各横材のボルト通し孔に対応してボルト通し孔を有するダミーパネルを用い、ボルト、ナットにより組み立てるので、架台の製作に要する資材を少なくし、これらの資材や機器機材を運搬する人力も少なくして、材料費や人件費を含むコストの低減を図ることができる。
(2)穿孔ステップ、架台仮組ステップ、架台マーキングステップ、架台現場加工ステップ、架台組み立てステップ、杭固定ステップ、太陽光パネル取付ステップを通して、障害物を含む斜面上で各縦方向の各杭間に架設した一対の縦材上に、障害物がある場合は、これを跨いだ又はかわした一対の縦材上に、ダミーパネルで仮固定した一対の横材を架設して、この一対の横材にダミーパネルに代えて複数枚単位の太陽光パネルをボルトナットにより縫い付けるので、障害物を含む斜面での太陽光パネル設置の施工を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法を適用する障害物を含む斜面の状況を示す図
【
図6】同工法の架台組み立てステップ及び杭固定ステップを示す図
【
図8】同工法において特に架台の仮組み状態を示す図
【
図9】同工法において特に架台の組み立て状態を示す図
【
図10】同工法において特に太陽光パネルの設置状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1-
図7に障害物を含む斜面での太陽光パネル設置工法を示している。
この太陽光パネル設置工法は、障害物を含む斜面に芯材、縦材、横材からなる架台を設置し、斜面に架台を介して太陽光パネルを設置するもので、この工法では、架台1セットで複数枚単位の太陽光パネルを支持するものとし、架台1セットに付き、芯材として所定の径及び長さを有し、上部にボルト通し孔を有する杭を4本又は6本、縦材として架台毎に長さを調整可能に所定の余長分を含む長さの2本一組の縦材、横材として複数枚単位の太陽光パネルの横方向の全長と略同じ長さを有し、太陽光パネルに設けられるボルト通し孔に合せて縫い付け用のボルト通し孔(
図5の符号30)を有する2本一対の横材、2本一対の横材の仮組用に、太陽光パネルの外形と略同じ大きさのフレームからなり、各横材のボルト通し孔に対応してボルト通し孔を有するダミーパネルを用いる。
この場合、杭は鋼製の杭を使用し、ある程度の不陸に耐え得る部材強度とし、メッキ加工を施す。杭の上部には予めボルト通し孔を有するアタッチメントを溶接などにより取り付けておく。縦材には高耐食性めっき鋼板からなる山形鋼を使用し、横材には高耐食性めっき鋼板からなるZ形鋼を使用する。この横材の上に複数枚単位で太陽光パネルをボルトナットで縫い付けるので、予め、横材の平面状の上部に複数枚の太陽光パネルの設置位置毎に各太陽光パネルに設けられるボルト通し孔に合せてボルト通し孔をあけておく。ダミーパネルは鋼板からなる上部フレーム、下部フレーム、左右の側部フレームを1枚の太陽光パネルの外形と略同じ大きさの矩形状に接合するとともに、左右の側部フレーム間に上下部の各フレームと平行に鋼板からなる2本の補強フレームを接合して形成し、上部フレーム、下部フレームに太陽光パネルのボルト通し孔に対応させてボルト通し孔を穿設しておく。
また、この場合、架台の部材を少なくし、人力で運べるように、架台1つに付き3枚の太陽光パネルを横に並べて設置して1セットとすることを基本的な形とする。障害物のない斜面では、架台は2本一対の縦材上に2本一対の横材を正規の井桁状に組み、これを4本(必要に応じて6本)の杭で支持する構造とし、障害物のある斜面でもこれを基本とするが、障害物を回避するため、杭(杭孔)の位置、及び縦材の長さ、向きを任意に変化させて、一対の縦材と一対の横材を異形の井桁状に組んで対応する。
なお、縦約1.5m、横約1mの太陽光パネルをおよそ300枚、障害物を含む斜面に設置するものとした場合、3枚組の架台が100台必要で、この場合、杭(φ65mm、L=0.675m以上のもの)400本、縦材(およそ3mのもの)100本、横材(およそ3mのもの)200本、ボルトナット(M-10、M-8)必要とする組数、それぞれの数に割り増し分を加えて、用意する。100台の架台分としては少ない材料の数量と言える。
そして、この工法では、この少ない資材を使い、穿孔ステップ、架台仮組ステップ、架台マーキングステップ、架台現場加工ステップ、架台組み立てステップ、杭固定ステップ、太陽光パネル取付ステップを通して、障害物を含む斜面に多数(例えば100台)の架台を設置し、斜面に多数(例えば100枚)の架台を介して多数(例えば300枚)の太陽光パネルを設置する。
【0011】
(穿孔ステップ)
穿孔ステップにあっては、
図2に示すように、斜面で架台一つに付き縦方向に2箇所又は3箇所ずつ横方向に2列ずつ位置出しした杭位置に杭孔10を穿ち、縦方向の杭位置のいずれかに障害物がある場合は、横方向の間隔は横材の長さの範囲内で、縦方向の間隔は縦材の長さの範囲内で、障害物を跨いだ又はかわした位置に杭孔10を穿つ。
このステップでは、
図1に示すような雑木の伐採、草刈の後の斜面に、太陽光パネルを設置し得る範囲を特定し、この範囲に、まず、架台1台に付き4本(必要に応じて6本)の杭の位置を墨だしする。この墨だしに当たっては、基本的に架台一つの設置面に付き井桁状に組まれた架台の標準的な4支点(縦材と横材の4つの交点又はその近傍)の位置に合せて取るが、杭の位置に障害物がある場合は、その杭の位置を、横方向の間隔は横材の長さの範囲内で、縦方向の間隔は縦材の長さの範囲内で、障害物を跨いで又はかわして任意の位置に変更する。例えば、斜面上側の杭の位置に障害物があれば、その障害物の上側に杭の位置を取って障害物を跨ぎ、又はその障害物の左右方向に杭の位置を取って障害物をかわす。また、斜面下側の杭の位置に障害物があれば、その障害物の下側に杭の位置を取って障害物を跨ぎ、又はその障害物の左右方向に杭の位置を取って障害物をかわす。
このようにして障害物を含む斜面に杭の位置を決め、杭孔10を人力又はアタッチドリルなどでの機械掘りにより穿孔する。
【0012】
(架台仮組ステップ)
架台仮組ステップにあっては、
図3に示すように、穿孔ステップにより穿孔した縦方向の杭孔10に杭11を設置し、縦方向の各杭11間に縦材2を仮架設し、各横材3間にダミーパネル4を相互のボルト通し孔にボルト(M8)を通しナットを締結することにより取り付けて平行並列に仮固定した各横材3を各縦材2間に位置を調整して仮架設し、架台1を仮組する。
このステップでは、
図8に示すように、まず、穿孔ステップで穿孔した4つ(6つの場合もある。)の杭孔10に4本の杭11を差し込み、各縦方向の各杭11間に各縦材2を架け渡す。このとき、各杭11と各縦材2とをバイス(万力)により固定保持しておく。この場合、4つの杭孔10が架台1の標準的な4支点に対応していると、各縦材2は斜面での上下の位置を略同じくして略平行に架け渡される。そして、これら縦材2上にダミーパネル4で仮固定された各横材3を略直交させて架け渡す。各横材3の位置を調整後、各縦材2と各横材3をバイスにより固定保持する。このようにして架台1を正規の井桁状に組み立てる。また、この場合、4つの杭孔10の一部又は全部が障害物を跨ぐ又はかわしていると、各縦材2は、一方又は両方が障害物のない位置に設置する架台1の各縦材2に比べて長い長さ、又は一方が他方に対して(斜面での)上下の位置をずらした配置、又は一方が他方に対して斜めとなる配置、又は両方が略ハの字形若しくは略逆ハの字形の配置、又はこれらを組み合わせた態様になって架け渡される。そして、これら縦材2上にダミーパネル4で仮固定された各横材3を交差させて架け渡す。各横材3の位置を調整後、各縦材2と各横材3をバイスにより固定保持する。このようにして架台1を異形の井桁状に組み立てる。なお、各縦材2の必要スパンや各杭11の根入れ長、自由長は、予め太陽光パネル設置現場毎に決められる風荷重を基に、最大と最小のパネル設置角度から選定する。
【0013】
(架台マーキングステップ)
架台マーキングステップにあっては、
図4に示すように、架台仮組ステップにより仮組した架台1から、各杭11のボルト通し孔110の各縦材2に対する接合位置、各縦材2と各横材3との接合位置をマーキングし、縦材2に余長がない場合を除いて、縦材2の余長分の切断位置をマーキングする。
このステップでは、各縦材2の側面(この場合、山形鋼の垂直面)に各杭11のボルト通し孔110とボルトで固定する位置、各縦材2の上面(この場合、山形鋼の水平面)と各横材3の下面(この場合、Z形鋼の下部水平面)とのボルトで固定する位置をポンチなどでマーキングする。また、縦材2については、架台1が正規の井桁状に組み立てられる場合、各縦材2は各横材3とともに同じ長さになる。この場合、1本の縦材2が既述のとおりおよそ3mのものならば、2等分割することで、この架台1の2本分の縦材2が取れるので、架台1の組み立て前に1本の縦材2から2本分の縦材2を取ることで、各縦材2に余長分が生じない。この場合は、各縦材2に余長分の切断位置をマーキングする必要がない。これに対して、架台1が異形の井桁状に組み立てられる場合は、各縦材2は異なる長さになり、この場合、縦材2の一方又は両方に余長分が生じ、余長分を切断するため、縦材2の余長分の切断位置をマーキングする。
【0014】
(架台現場加工ステップ)
架台現場加工ステップにあっては、
図4、
図5に示すように、架台マーキングステップによりマーキングした架台1を各杭孔10に各杭11を残して解体し、各縦材2、各横材3にマーキングした接合位置にボルト通し孔21,22、32を穿ち、縦材の余長分をマーキングした切断位置で切断する。
このステップでは、各縦材2、各横材3にボルト通し孔21,22、32をパンチ孔あけ機でパンチ抜きにより穿ち、縦材2の余長分は切断機で切断する。
【0015】
(架台組み立てステップ)
架台組み立てステップにあっては、
図6に示すように、架台現場加工ステップにより加工した縦材2を縦方向の各杭11間に架設し、ダミーパネル4を取り付けた各横材3を各縦材2間に架設して、各杭11と各縦材2との接合位置となる両者のボルト通し孔110(
図4参照)、21(
図5参照)、各縦材2と各横材3との接合位置となる両者のボルト通し孔22、32(
図5参照)を、それぞれ合せ、ボルト(M10)を通しナットを締結して、架台を組み立てるとともに、各杭孔10の各杭11を所定の高さに調整し各杭11又は縦材2若しくは横材3に落下防止用治具5を取り付けて各杭11の高さを保持する。
このステップでは、
図9に示すように、各縦方向の各杭孔10に差し込んだ各縦方向の各杭11間に各縦材2を架け渡し、各杭11のボルト通し孔110と各縦材2のボルト通し孔21を合せ、これらのボルト通し孔110、21間にボルト(M10)を通しナットを締結して、両者を固定する。この場合、4つの杭孔10が架台1の標準的な4支点に対応していると、各縦材2は斜面での上下の位置を同じくして略平行に架け渡される。そして、これら略平行の縦材2上にダミーパネル4で仮固定された各横材3を略直交させて架け渡し、各縦材2と各横材3との接合位置となる両者のボルト通し孔22、32をそれぞれ合せて、これらのボルト通し孔22、32間にボルト(M10)を通しナットを締結する。このようにして架台1を正規の井桁状に組み立てる。また、この場合、4つの杭孔10の一部又は全部が障害物を跨ぐ又はかわしていると、各縦材2は、一方又は両方が障害物のない位置に設置する架台1の各縦材2に比べて長い長さ、又は一方が他方に対して(斜面での)上下の位置をずらした配置、又は一方が他方に対して斜めとなる配置、又は両方が略ハの字形若しくは略逆ハの字形の配置、又はこれらを組み合わせた態様になって架け渡される。そして、これら障害物を跨いだ又はかわした縦材2上にダミーパネル4で仮固定された各横材3を交差させて架け渡し、各縦材2と各横材3との接合位置となる両者のボルト通し孔22、32をそれぞれ合せて、これらのボルト通し孔22、32間にボルト(M10)を通しナットを締結する。このようにして架台1を異形の井桁状に組み立てる。架台1を組み立てたら、各杭孔10内の各杭11を施工現場で決められた所定の高さに調整し、各杭11の周面を挟んで杭孔10の周縁部に設置するはさみ形の(杭11を挟む部分に滑り止めのゴムを付けた)落下防止用治具5、又は縦材2若しくは横材3を支持する支柱形の落下防止用治具5を用いて、各杭孔10内の各杭11を所定の高さに保持する。
【0016】
(杭固定ステップ)
杭固定ステップにあっては、
図6に示すように、架台組み立てステップ後、各杭孔10に膨張セメントミルクを充填し固化させて、各杭孔10に杭11を固定し、膨張セメントミルクの固化後、架台1から落下防止用治具5を取り外す。
【0017】
(太陽光パネル取付ステップ)
太陽光パネル取付ステップにあっては、
図7に示すように、杭固定ステップ後、一対の横材3上に、ダミーパネル4に代えて、太陽光パネルSを複数枚単位で配置し、各横材3の縫い付け用のボルト通し孔30(
図5参照)と各太陽光パネルSのボルト通し孔との間にボルト(M8)を通しナットを締結することにより、各横材3上に太陽光パネルSを複数枚単位で縫い付ける。
このステップでは、
図9、
図10に示すように、各縦材2間にボルト止めにより設置固定してある一対の横材3からダミーパネル4を固定するボルト(M8)を取り外して、各横材3からダミーパネル4を撤去し、各横材3上に太陽光パネルSを複数枚単位、この場合、3枚単位で配置し、各横材3の縫い付け用のボルト通し孔30と各太陽光パネルSのボルト通し孔との間にボルト(M8)を通しナットに締結することにより、各横材3上に各太陽光パネルSを縫い付ける。
【0018】
以上のステップにより、太陽光パネルSを障害物を含む斜面に設置する。
【0019】
以上説明したように、この太陽光パネル設置工法では、架台1セットで複数枚単位の太陽光パネルを支持するものとし、架台1セットに付き、芯材として所定の径及び長さを有し、上部にボルト通し孔110を有する杭11を4本又は6本、縦材として架台毎に長さを調整可能に所定の余長分を含む長さの2本一組の縦材2、横材として複数枚単位の太陽光パネルの横方向の全長と略同じ長さを有し、太陽光パネルに設けられるボルト通し孔に合せて縫い付け用のボルト通し孔30を有する2本一対の横材3、2本一対の横材3の仮組用に、太陽光パネルの外形と略同じ大きさのフレームからなり、各横材3のボルト通し孔30に対応してボルト通し孔40を有するダミーパネル4を用い、ボルト、ナットにより組み立てるので、架台1の製作に要する資材を少なくし、これらの資材や機器機材を運搬する人力も少なくして、材料費や人件費を含むコストの低減を図ることができる。また、架台1の資材が少ない分だけ、架台1の組み立てに要する時間が短くなり、工期の短縮を図ることもできる。
また、この工法によれば、穿孔ステップで架台1の杭11の位置に杭孔10を穿ち、杭11の位置に切り株や木の根などの障害物がある場合は、障害物を跨いだ又はかわした位置に杭孔10を穿ち、続く架台仮組ステップ、架台マーキングステップ、架台現場加工ステップを通して、長さに余裕を持たせた縦材2を障害物のない場所でもある場所でも現場で必要な長さに切断し、縦材2、横材3に現場で位置決めした位置にボルト通し孔21,22、32をパンチ抜きして、次の架台組み立てステップで、杭孔10に挿入した杭11と縦材2、縦材2と横材3をボルト、ナットで直接固定するので、架台1を、障害物を含む斜面の現場の地盤状況に応じて、柔軟に組み立てて設置することができる。また、杭11、縦材2、横材3をボルト、ナットにより直接固定することで、溶接やガス切断がなく、各部材を傷めることがないので、ペンキなどの補修が不要となる。さらに、各横材2をダミーパネル4を介して仮固定して、各縦材2上に固定するので、各横材3間の間隔は太陽光パネルSと同じ大きさ、外形のダミーパネル4により保持されており、各横材3上にダミーパネル4に代えて太陽光パネルSを取り付ける際に、太陽光パネルSのボルト通し孔と各横材3のボルト通し孔30が合せやすい。そして、この架台組み立てステップから、杭固定ステップ、太陽光パネル取付ステップを通して、各縦方向の各杭11間に架設した一対の縦材2上に、障害物がある場合は、これを跨いだ又はかわした一対の縦材2上に、ダミーパネル4で仮固定した一対の横材3を架設して、この一対の横材3にダミーパネル4に代えて複数枚(3枚)単位の太陽光パネルSをボルト、ナットにより縫い付けるので、太陽光パネルSと各横材3との固定を容易にして、障害物を含む斜面での太陽光パネル設置の施工を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 架台
10 杭孔
11 杭
110 ボルト通し孔
2 縦材
21 ボルト通し孔
22 ボルト通し孔
3 横材
30 ボルト通し孔
32 ボルト通し孔
4 ダミーパネル
40 ボルト通し孔
5 落下防止用治具
S 太陽光パネル