(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】実装データ管理装置、部品実装システム、実装データ管理方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
H05K13/08 Z
(21)【出願番号】P 2018137422
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】横田 幸治
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-228474(JP,A)
【文献】特開2016-018940(JP,A)
【文献】特開2018-063973(JP,A)
【文献】特開平06-074909(JP,A)
【文献】特開平11-340700(JP,A)
【文献】特開2010-199564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0189340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルに保持した部品をカメラで撮像した画像に基づき前記部品を認識する部品認識処理を、前記部品を撮像する際に前記部品に照射する光の強度および前記画像に写る前記部品の抽出に使用される閾値の少なくとも一方を含む実装データに応じて実行することで部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機で使用される前記実装データを保存する記憶部と、
前記実装データに調整が実行されると、調整された前記実装データを監視対象に選定し、前記監視対象の前記実装データを用いた
前記部品認識処理の成否を監視対象実績として記録した結果に基づき、前記監視対象の前記実装データを前記記憶部に保存するか否かを決定する実績監視部と
、
前記記憶部に保存された前記実装データを用いた前記部品認識処理の結果を認識履歴として前記実装データと関連付けて前記記憶部に記録する履歴管理部と
を備え、
前記部品認識処理で前記画像が撮像されると、前記履歴管理部は、当該画像を受信して、受信した当該画像を撮像した前記部品認識処理で使用された前記実装データと関連付けて前記記憶部に記録する実装データ管理装置。
【請求項2】
前記実績監視部は、前記監視対象の前記実装データを用いた前記
部品認識処理の試行回数がNa回(Naは2以上の整数)以上であって前記監視対象実績が示す前記
部品認識処理の成功率が所定率以上であるという保存条件が満たされる場合には、前記監視対象の前記実装データを前記記憶部に保存する一方、前記保存条件が満たされない場合には、前記監視対象の前記実装データを前記記憶部に保存しない請求項1に記載の実装データ管理装置。
【請求項3】
前記部品実装機は、生産予定枚数の前記基板に対して前記部品実装を実行する基板生産を複数回実行し、
前記実績監視部は、前記監視対象に選定した前記実装データを用いた前記
部品認識処理の試行回数が一の前記基板生産で前記Na回に満たない場合には、一の前記基板生産で前記監視対象に選定した前記実装データを、次の前記基板生産で前記監視対象に継続して選定する請求項2に記載の実装データ管理装置。
【請求項4】
前記履歴管理部は、前記実装データに調整が実行された場合には、当該調整の対象となった前記実装データを用いて当該調整の直前に試行されたNb回(Nbは1以上の整数)の前記部品認識処理の結果を前記認識履歴から除外する請求項
1ないし3のいずれか一項に記載の実装データ管理装置。
【請求項5】
ノズルに保持した部品をカメラで撮像した画像に基づき前記部品を認識する部品認識処理を、前記部品を撮像する際に前記部品に照射する光の強度および前記画像に写る前記部品の抽出に使用される閾値の少なくとも一方を含む実装データに応じて実行することで前記部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機で使用される前記実装データを保存する記憶部と、
前記実装データに調整が実行されると、調整された前記実装データを監視対象に選定し、前記監視対象の前記実装データを用いた前記部品認識処理の成否を監視対象実績として記録した結果に基づき、前記監視対象の前記実装データを前記記憶部に保存するか否かを決定する実績監視部と、
前記記憶部に保存された前記実装データを用いた前記部品認識処理の結果で撮像された前記画像を前記実装データと関連付けて前記記憶部に記録する履歴管理部と、
互いに関連付けられた前記実装データと前記画像とを対応付けて表示するユーザインターフェースと
を備え、
前記ユーザインターフェースは、失敗した前記部品認識処理で撮像された前記画像と、前記記憶部に保存された複数の前記実装データのうち、ユーザにより選択された前記実装データに関連付けられた前記画像とを表示する実装データ管理装置。
【請求項6】
ノズルに保持した部品をカメラで撮像した画像に基づき前記部品を認識する部品認識処理を、前記部品を撮像する際に前記部品に照射する光の強度および前記画像に写る前記部品の抽出に使用される閾値の少なくとも一方を含む実装データに応じて実行することで前記部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機で使用される前記実装データを保存する記憶部と、
前記実装データに調整が実行されると、調整された前記実装データを監視対象に選定し、前記監視対象の前記実装データを用いた前記部品認識処理の成否を監視対象実績として記録した結果に基づき、前記監視対象の前記実装データを前記記憶部に保存するか否かを決定する実績監視部と、
前記記憶部に保存された前記実装データを用いた前記部品認識処理の結果で撮像された前記画像を前記実装データと関連付けて前記記憶部に記録する履歴管理部と、
互いに関連付けられた前記実装データと前記画像とを対応付けて表示するユーザインターフェースと
を備え、
前記記憶部に保存された複数の前記実装データのそれぞれを用いて、失敗した前記部品認識処理で撮像された前記画像から前記部品の認識を試行した結果に基づいて、前記実装データを選択する選択処理部をさらに備え、
前記ユーザインターフェースは、前記選択処理部が選択した前記実装データを表示する実装データ管理装置。
【請求項7】
実装データに応じた所定動作を実行することで部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機と、
請求項
1ないし6のいずれか一項に記載の実装データ管理装置と
を備える部品実装システム。
【請求項8】
ノズルに保持した部品をカメラで撮像した画像に基づき前記部品を認識する部品認識処理を、前記部品を撮像する際に前記部品に照射する光の強度および前記画像に写る前記部品の抽出に使用される閾値の少なくとも一方を含む実装データに応じて実行することで部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機で使用される前記実装データに調整が実行されると、調整された前記実装データを監視対象に選定する工程と、
前記監視対象の前記実装データを用いた
前記部品認識処理の成否を監視対象実績として記録する工程と、
前記監視対象の前記実装データを記憶部に保存するか否かを前記監視対象実績に基づき決定する工程と
、
前記記憶部に保存された前記実装データを用いた前記部品認識処理の結果を認識履歴として前記実装データと関連付けて、履歴管理部が前記記憶部に記録する工程と
を備え
、
前記部品認識処理で前記画像が撮像されると、前記履歴管理部は、当該画像を受信して、受信した当該画像を撮像した前記部品認識処理で使用された前記実装データと関連付けて前記記憶部に記録する実装データ管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、実装データに応じた所定動作を実行することで部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機で使用される実装データを管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、部品実装機は、部品の寸法を示す部品データ等を含む実装データを使用して、基板に部品を実装する。また、部品実装中に不具合が生じた場合には、例えばユーザによって実装データの調整が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、実装データの調整が必ずしも適切に実行されるとは限らない。これに対して、実装データの管理は、実装データを記憶部に予め保存し、実行予定の部品実装に応じた実装データを記憶部から適宜読み出すことで行われる。そのため、不適切な調整が実行された実装データを記憶部に保存することは、実装データの管理の観点から好ましくない。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、不適切な調整が実行された実装データが記憶部に保存されるのを抑制可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る実装データ管理装置は、実装データに応じた所定動作を実行することで部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機で使用される実装データを保存する記憶部と、実装データに調整が実行されると、調整された実装データを監視対象に選定し、監視対象の実装データを用いた所定動作の成否を監視対象実績として記録した結果に基づき、監視対象の実装データを記憶部に保存するか否かを決定する実績監視部とを備える。
【0007】
本発明に係る実装データ管理方法は、実装データに応じた所定動作を実行することで部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機で使用される実装データに調整が実行されると、調整された実装データを監視対象に選定する工程と、監視対象の実装データを用いた所定動作の成否を監視対象実績として記録する工程と、監視対象の実装データを記憶部に保存するか否かを監視対象実績に基づき決定する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(実装データ管理装置、実装データ管理方法)では、実装データに調整が実行されると、調整された実装データが監視対象に選定され、監視対象の実装データを用いた所定動作の成否が監視対象実績として記録される。そして、この監視対象実績に基づき、監視対象の実装データを記憶部に保存するか否かが決定される。このように、監視対象実績に基づき実装データの保存の適否を判断してから実装データを保存することができるため、不適切な調整が実行された実装データが記憶部に保存されるのを抑制することが可能となっている。
【0009】
また、実績監視部は、監視対象の実装データを用いた所定動作の試行回数がNa回(Naは2以上の整数)以上であって監視対象実績が示す所定動作の成功率が所定率以上であるという保存条件が満たされる場合には、監視対象の実装データを記憶部に保存する一方、保存条件が満たされない場合には、監視対象の実装データを記憶部に保存しないように、実装データ管理装置を構成しても良い。このように、保存条件に基づき実装データの保存の適否を判断することで、適切な調整が実行された実装データを記憶部に保存する一方、不適切な調整が実行された実装データが記憶部に保存されるのを抑制することができる。
【0010】
また、部品実装機は、生産予定枚数の基板に対して部品実装を実行する基板生産を複数回実行し、実績監視部は、監視対象に選定した実装データを用いた所定動作の試行回数が一の基板生産でNa回に満たない場合には、一の基板生産で監視対象に選定した実装データを、次の基板生産で監視対象に継続して選定するように、実装データ管理装置を構成しても良い。かかる構成では、一の基板生産において、監視対象の実装データを使用した所定動作の試行回数がNa回に満たない場合には、次の基板生産で、この実装データが引き続き監視対象に選定される。したがって、Na回の所定動作を試行した実績に基づいて、監視対象の実装データを記憶部に保存するかを適切に決定することができる。
【0011】
また、部品実装機は、ノズルに保持した部品をカメラで撮像した画像に基づき部品を認識する部品認識処理を所定動作として部品実装において実行し、実装データは、部品を撮像する際に部品に照射する光の強度および画像に写る部品の抽出に使用される閾値の少なくとも一方を含み、実績監視部は、部品認識処理の成否を監視対象実績として記録するように、実装データ管理装置を構成しても良い。かかる構成では、適切な実装データを記憶部から読み出して部品認識処理を実行することが可能となり、部品認識処理の失敗頻度を抑制することが可能となる。
【0012】
また、記憶部に保存された実装データを用いた部品認識処理の結果を認識履歴として実装データと関連付けて記憶部に記録する履歴管理部をさらに備えるように、実装データ管理装置を構成しても良い。かかる構成では、記憶部に保存された実装データの信頼性を、認識履歴に基づき把握することができる。
【0013】
ところで、実装データの調整は、当該実装データを用いた部品認識処理の失敗が頻発したような際に行われる。このような部品認識処理の失敗の頻発は、実装データと部品とのマッチングが悪いことに要因がある。一方、この実装データは、他の部品と良好なマッチングを有する可能性がある。そのため、マッチングの悪い部品を認識した結果を、この実装データの認識履歴に加えることは、この実装データの信頼性を不当に下げることになる。そこで、履歴管理部は、実装データに調整が実行された場合には、当該調整の対象となった実装データを用いて当該調整の直前に試行されたNb回(Nbは1以上の整数)の部品認識処理の結果を認識履歴から除外するように、実装データ管理装置を構成しても良い。これによって、実装データの信頼性を不当に下げてしまうことを抑制できる。
【0014】
また、履歴管理部は、部品認識処理で撮像された画像を実装データに関連付けて記憶部に記録するように、実装データ管理装置を構成しても良い。これによって、部品認識処理で使用する実装データを、この実装データを用いた部品認識処理で過去に撮像された画像に基づき決定するといったことが可能となる。
【0015】
また、互いに関連付けられた実装データと画像とを対応付けて表示するユーザインターフェースをさらに備えるように、実装データ管理装置を構成しても良い。これによって、ユーザは、画像を視認しつつ、部品認識処理で使用する実装データを決定することができる。
【0016】
また、ユーザインターフェースは、失敗した部品認識処理で撮像された画像と、記憶部に保存された複数の実装データのうち、ユーザにより選択された実装データに関連付けられた画像とを表示するように、実装データ管理装置を構成しても良い。かかる構成では、ユーザは、失敗した部品認識処理で撮像された画像に類似する画像と関連付けられた実装データを探索することができる。
【0017】
また、記憶部に保存された複数の実装データのそれぞれを用いて、失敗した部品認識処理で撮像された画像から部品の認識を試行した結果に基づいて、実装データを選択する選択処理部をさらに備え、ユーザインターフェースは、選択処理部が選択した実装データを表示するように、実装データ管理装置を構成しても良い。かかる構成では、ユーザによる実装データの選択を支援して、ユーザの作業負担を軽減することができる。
【0018】
本発明に係る部品実装システムは、実装データに応じた所定動作を実行することで部品を基板に実装する部品実装を実行する部品実装機と、上記の実装データ管理装置とを備える。したがって、不適切な調整が実行された実装データが記憶部に保存されるのを抑制することが可能となっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、不適切な調整が実行された実装データが記憶部に保存されるのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る部品実装システムが備える部品実装機を模式的に示す部分平面図。
【
図2】本発明に係る部品実装システムが備える電気的構成を示すブロック図。
【
図3】
図1の部品実装機が備える部品認識カメラの構成の一例を模式的に示す図。
【
図4】UIでの認識パラメータの表示態様の一例を模式的に示す図。
【
図5】UIでの認識パラメータの表示態様の一例を模式的に示す図。
【
図6】生産予定枚数の基板に対して部品実装を実行する基板生産の一例を示す図。
【
図7】認識パラメータの保存管理の一例を示すフローチャート。
【
図8】UIに表示される認識パラメータの選択画面の一例を模式的に示す図。
【
図9】認識パラメータの選択支援の一例を示すフローチャート。
【
図10】
図9のフローチャートの実行結果としてUIに示される画面の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係る部品実装システムが備える部品実装機を模式的に示す部分平面図である。
図1では、Z方向を鉛直方向とするXYZ直交座標を適宜示す。また、
図2は本発明に係る部品実装システムが備える電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、部品実装システム1は、部品実装機10と、部品実装機10を管理するサーバコンピュータ9を備える。
【0022】
部品実装機10は、装置全体を統括的に制御するコントローラ100を備える。コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)で構成されたプロセッサである演算部110およびHDD(Hard Disk Drive)で構成された記憶部120を有するコンピュータである。さらに、コントローラ100は、部品実装機10の駆動系を制御する駆動制御部130と、部品実装機10の撮像系を制御する撮像制御部140と、サーバコンピュータ9との通信を行う通信部150とを有する。
【0023】
演算部110は記憶部120に記憶される実装プログラムに従って駆動制御部130および撮像制御部140を制御することで、実装プログラムが規定する手順で部品Pを基板Bに実装する。この際、演算部110は撮像制御部140が部品認識カメラ5により部品Pを撮像した画像Imに基づき、部品Pの実装を制御する。また、部品認識カメラ5が撮像した部品Pの画像Imは、後に詳述するように、通信部150によってサーバコンピュータ9に送信される。
【0024】
図1に示すように、部品実装機10は、基台11の上に設けられた一対のコンベア12、12を備える。そして、部品実装機10は、コンベア12によりX方向(基板搬送方向)の上流側から実装処理位置(
図1の基板Bの位置)に搬入した基板Bに対して部品Pを実装し、部品Pの実装を完了した基板B(部品実装基板B)をコンベア12により実装処理位置からX方向の下流側へ搬出する。
【0025】
この部品実装機10では、X方向に直交するY方向に平行な一対のY軸レール21、21と、Y方向に平行なY軸ボールネジ22と、Y軸ボールネジ22を回転駆動するY軸モータMy(サーボモータ)とが設けられ、X方向に平行なX軸レール23が一対のY軸レール21、21にY方向に移動可能に支持された状態でY軸ボールネジ22のナットに固定されている。X軸レール23には、X方向に平行なX軸ボールネジ24と、X軸ボールネジ24を回転駆動するX軸モータMx(サーボモータ)とが取り付けられており、ヘッドユニット20がX軸レール23にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ24のナットに固定されている。
【0026】
したがって、
図2の駆動制御部130は、Y軸モータMyおよびX軸モータMxを制御することで、ヘッドユニット20の移動を制御することができる。つまり、駆動制御部130は、Y軸モータMyによりY軸ボールネジ22を回転させてヘッドユニット20をY方向に移動させ、X軸モータMxによりX軸ボールネジ24を回転させてヘッドユニット20をX方向に移動させる。
【0027】
図1に示すように、一対のコンベア12、12のY方向の両側それぞれでは、2つの部品供給部3がX方向に並んでいる。各部品供給部3に対しては、複数のテープフィーダ31がX方向に並んで着脱可能に装着されている。テープフィーダ31はY方向に延設されており、Y方向におけるヘッドユニット20側の先端部に部品供給箇所32を有する。そして、集積回路、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品Pを所定間隔おきに収納したテープが巻き付けられた部品供給リールが各テープフィーダ31に対して配置され、テープフィーダ31には、部品供給リールから引き出されたテープが装填されている。そして、テープフィーダ31は、テープをヘッドユニット20側へ向けてY方向に間欠的に送り出す。これによって、テープ内の部品PがY方向(フィード方向)に送り出されて、テープフィーダ31の部品供給箇所32に順番に供給される。
【0028】
図1に示すように、ヘッドユニット20は、いわゆるロータリ型の実装ヘッド4を有する。つまり、実装ヘッド4は、回転軸を中心に円周状に等角度間隔で配列された複数(8個)のノズル41を有し、複数のノズル41は回転軸を中心に回転可能である。そして、実装ヘッド4は、各ノズル41により部品Pの吸着・実装を行う。具体的には、実装ヘッド4はテープフィーダ31の上方へ移動して、テープフィーダ31により部品供給箇所32に供給された部品Pをノズル41により吸着(ピックアップ)する。実装ヘッド4はこうして部品Pを保持した状態で、実装処理位置の基板Bの上方に移動して基板Bに部品Pを実装する。こうして、部品Pを吸着して基板Bに実装する部品実装が部品実装機10により実行される。
【0029】
さらに、部品実装機10では、上方を向いて基台11に取り付けられた部品認識カメラ5が、Y方向における部品供給部3とコンベア12との間に配置されている。部品認識カメラ5は、上方に位置する実装ヘッド4のノズル41に吸着された部品Pを、その撮像範囲F(視野)に収めつつ下方から撮像する。そして、撮像制御部140は、部品認識カメラ5が部品Pを撮像することで取得した部品Pの画像Imに基づき、ノズル41に吸着される部品Pを認識して、ノズル41による部品Pの吸着状態や、ノズル41に対する部品Pの位置等を判定する。
【0030】
図3は
図1の部品実装機が備える部品認識カメラの構成の一例を模式的に示す図である。部品認識カメラ5は、撮像範囲F内の部品Pに対して光を照射する光照射部51と、光照射部51により光が照射された部品Pを下方から撮像する撮像部55と、光照射部51および撮像部55を支持するハウジング59とを有する。ハウジング59の上部には凹部591が形成され、凹部591の底部にZ方向へ開口するスリット592が設けられている。また、ハウジング59内のスリット592より下方には、内部空間593が設けられている。
【0031】
光照射部51は、メイン照明511、サイド照明512および同軸照明513を有する。メイン照明511、サイド照明512および同軸照明513のそれぞれは、複数のLED(Light Emitting Diode)を二次元的に配列した構成を有する。メイン照明511は、凹部591の内壁のうち下側に配置されて、斜め下方から部品Pに光を照射し、サイド照明512は凹部591の内壁のうちメイン照明511より上側に配置されて、側方から部品Pに光を照射する。また、同軸照明513は、内部空間593の内壁に配置され、ビームスプリッタ57を介して、下方から部品Pに光を照射する。つまり、ハウジング59の内部空間593にはビームスプリッタ57が配置されており、同軸照明513から射出された光は、ビームスプリッタ57で反射されてから、スリット592を通過して部品Pに照射される。かかる光照射部51は、撮像制御部140の制御に基づき、部品Pに対して照射する光の明るさ(照明レベル)を8段階(1/8~8/8)で変更できる。
【0032】
また、撮像部55は、ハウジング59の内部空間593に配置され、スリット592に下方から対向している。スリット592と撮像部55との間にはビームスプリッタ57が配置されており、撮像部55は、光照射部51により照らされた部品Pにより反射されてから、スリット592およびビームスプリッタ57を通過した光を撮像する。この撮像部55は、COMS(Complementary MOS)イメージセンサあるいはCCD(Charge-Coupled
Device)イメージセンサ等の固体撮像素子で構成されたエリアセンサ551と、その光軸O5がZ方向に平行となるように配置されたレンズ552とを有する。そして、レンズ552が撮像範囲F内の部品Pにより反射された光をエリアセンサ551に結像することで、部品Pの画像Imがエリアセンサ551により撮像される。
【0033】
図2の撮像制御部140は、かかる部品認識カメラ5を用いて部品認識処理を実行する。つまり、ノズル41に吸着された部品Pが部品認識カメラ5の撮像範囲Fに到達すると、撮像制御部140は、部品Pに応じた照明レベルの光を光照射部51から部品Pに照射しつつ、撮像部55により部品Pを撮像する。撮像制御部140は、こうして部品Pを撮像することで取得された画像Imを、エリアセンサ551から取得する。さらに、撮像制御部140は、光照射部51から照射した光の照明レベルに応じた輝度閾値によって、画像Imの各画素の輝度を二値化することで、画像Imに対してエッジ検出を実行する。これによって、画像Imに含まれる部品P(の画像)が抽出される。さらに、撮像制御部140は、こうして抽出された部品Pと、部品Pが満たすべき部品Pの構成に関する条件(部品関連条件)とを比較して、抽出された部品Pが有する値が許容範囲内であるか否かを部品関連条件の各項目について判断する。ここで、部品関連条件とは、部品Pの形状、部品Pのサイズ、部品Pの電極の位置および部品Pの電極のサイズ等の部品Pの構成を示す項目を含む。そして、撮像制御部140は、抽出された部品Pの部品関連条件の各値が許容範囲内であれば、ノズル41による部品Pの吸着状態が良好であると判定する一方、これらの値のいずれかが許容範囲外であれば、ノズル41による部品Pの吸着状態が不良であると判定する。
【0034】
演算部110は、撮像制御部140による部品認識処理の結果、良好と判定された場合(すなわち、部品認識処理に成功した場合)には、撮像制御部140によって部品Pを基板Bの上方へ移動させて、部品Pを基板Bに実装する。一方、演算部110は、撮像制御部140による部品認識処理の結果、不良と判定された場合(すなわち、部品認識処理に失敗した場合)には、図示を省略する廃棄場所に部品Pを廃棄する。
【0035】
このような部品認識処理を実行するためには、部品関連条件、輝度関連条件(照明レベル、輝度閾値)および認識アルゴリズムといった認識パラメータが必要となる。かかる認識パラメータは、部品認識処理の開始前に予め撮像制御部140に設定されており、撮像制御部140はこれに基づき部品認識処理を実行する。特に、この実施形態では、認識パラメータの管理がサーバコンピュータ9によって行われる。
【0036】
図2に示すように、サーバコンピュータ9は、CPUおよびRAMで構成されたプロセッサである演算部91と、HDDで構成された記憶部92と、例えばタッチパネルディスプレイ等で構成されたUI(User Interface)93と、部品実装機10の通信部150と通信を実行する通信部94とを備える。演算部91は、認識パラメータの管理に要する演算処理を実行する他に、部品実装機10での認識パラメータの使用状態等を含む部品実装機10のステータスを、通信部94を介して取得する。
【0037】
この演算部91は、部品Pの種類毎に認識パラメータを記憶部92に記憶する。また、演算部91は、通信部93が部品実装機10から順次受信した画像Imを、当該画像Imを撮像した部品認識処理で使用された認識パラメータと関連付けて記憶部92に記憶する。さらに、この実施形態では、演算部91は、部品認識処理の成否の結果を、通信部94を介して部品実装機10から受信して、当該部品認識処理で用いられた認識パラメータと関連付けて記憶部92に記憶する。また、UI93は、ユーザの操作に応じて、記憶部92に記憶された認識パラメータを一覧で表示することができる。したがって、ユーザは、UI93に表示された認識パラメータの一覧から選択した認識パラメータを、通信部94を介して部品実装システム1の撮像制御部140に設定して、部品認識処理で用いることができる。
【0038】
図4および
図5はUIでの認識パラメータの表示態様の一例を模式的に示す図である。
図4の例では、UI93は、所定のメーカIDで識別されるメーカにより製造されたボールグリッドの部品Pに対する部品認識処理で使用された10個の認識パラメータのそれぞれについて、各種情報を表示する。具体的には、記憶部92に保存された日(保存日)、部品認識処理の成功率(認識成功率)、ノズル41による吸着の成功率(吸着成功率)、および部品認識処理の試行回数を示すカウント値が表示されている。これら10個の認識パラメータは、同一種類(ボールグリッド)の部品Pに対する部品認識処理で過去に使用されたものであり、照明レベルおよび輝度閾値の少なくとも一方が互いに異なる。
【0039】
そして、
図4に示す画面の番号1~10で識別される10個の認識パラメータのうちから、一の認識パラメータがユーザにより選択されると、UI93は、
図5に示す画面をポップアップにより表示する。
図5の例では、番号10の認識パラメータに関する情報が表示されている。具体的には、番号10の認識パラメータを用いた部品認識処理の成功率(認識成功率)、ノズル41による吸着の成功率(吸着成功率)、および番号10の認識パラメータを用いた部品認識処理の試行回数を示すカウント値が表示されている。また、番号10の認識パラメータに含まれる照明レベルと輝度閾値とが表示されている。さらに、番号10の認識パラメータを用いた部品認識処理で撮像した画像Im(例えば最新の画像Im)が表示されている。
【0040】
続いては、部品実装システム1の部品実装機10で実行される基板生産について、
図6を用いて具体的に説明する。ここで、
図6は生産予定枚数の基板に対して部品実装を実行する基板生産の一例を示す図である。部品実装機10は、
図6の基板生産を、断続的に複数回実行することができる。なお、部品実装機10がこの基板生産を開始する前に、当該基板生産で基板Bに実装する各種の部品Pについて、認識パラメータがユーザによって予め撮像制御部140に設定されているものとする。
【0041】
ステップS101では、コンベア12が基板Bを部品実装機10に搬入する。そして、実装ヘッド4がノズル41によってテープフィーダ31の部品供給箇所32から部品Pを吸着すると(ステップS102)、実装ヘッド4は部品認識カメラ5の上方へ部品Pを移動させる。そして、部品認識カメラ5は、当該部品Pに対応する認識パラメータが示す照明レベルの光を当該部品Pに照射しつつ、撮像範囲F内の当該部品Pを撮像する(ステップS103)。こうして得られた部品Pの画像Imは撮像制御部140に送信され、撮像制御部140は当該部品に対応する認識パラメータが示す輝度閾値によって画像Imから部品Pを抽出する(ステップS104)。そして、ステップS105では、部品Pの抽出結果に基づき、ノズル41による部品Pの吸着状態の良否が判定される。
【0042】
なお、ステップS103で得られた部品Pの画像Imは、上述の通りサーバコンピュータ9に送信される。そして、サーバコンピュータ9では、演算部91は、通信部94が部品実装機10から受信した画像Imを、当該画像Imを撮像した部品認識処理で使用された認識パラメータに関連付けて記憶部92に記憶する。こうして、当該認識パラメータを用いた部品認識処理で撮像された画像Imが記憶部92に蓄積される。
【0043】
ステップS106では、部品認識処理の成否(すなわち吸着状態の良否)が判断される。部品認識処理に失敗した場合(ステップ106で「NO」の場合)には、演算部110が通信部150を介してサーバコンピュータ9に認識失敗を通知して(ステップS107)、ステップS102に戻る。一方、部品認識処理に成功した場合(ステップS106で「YES」の場合)には、演算部110が通信部150を介してサーバコンピュータ9に認識成功を通知し(ステップS108)、実装ヘッド4が部品Pを基板Bに実装する(ステップS109)。
【0044】
なお、サーバコンピュータ9は、ステップS107、S108で部品実装機10から受信した部品認識処理の成否結果を、当該部品認識処理で使用された認識パラメータと関連付けて、認識履歴として記憶部92に記憶する。その結果、
図4および
図5で例示した関連項目が更新されることとなる。
【0045】
ステップS110では、ステップS101で搬入した基板Bの部品Pの実装が完了したか否かが判断され、実装が未完である場合(ステップS110で「NO」の場合)にはステップS102に戻る一方、実装が完了した場合(ステップS110で「YES」の場合)には、コンベア12が基板Bを部品実装機10から搬出する(ステップS111)。ステップS112では、生産予定枚数の基板Bに対する部品Pの実装が完了したか否が判断され、未完の場合(ステップS112で「NO」の場合)にはステップS101に戻る一方、完了の場合(ステップS112で「YES」の場合)には
図6の基板生産を終了する。
【0046】
ところで、上述の部品実装では、例えば部品認識処理の失敗が所定の頻度以上に発生したような場合には、ユーザにエラーが報知される。そして、ユーザは、部品実装機10に設けられたUIあるいはサーバコンピュータ9のUI93を操作することで、当該部品認識処理で使用された認識パラメータの照明レベルや輝度閾値を調整することができる。ただし、このような認識パラメータの調整が必ずしも適切とは限らない。したがって、調整後の認識パラメータを直ちに記憶部92に保存すると、不適切な認識パラメータが記憶部92に混在して、認識パラメータの設定作業が困難になる可能性がある。そこで、サーバコンピュータ9は、
図7のフローチャートに従って認識パラメータの保存を管理する。
【0047】
図7は認識パラメータの保存管理の一例を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは、サーバコンピュータ9の演算部91の演算によって実行される。ステップS201では、部品実装機10が
図6の基板生産を開始したか否かが確認される。基板生産の開始が確認されると(ステップS201で「YES」)、部品実装機10で部品認識処理に使用中の認識パラメータの調整が実行されたか否かが確認される(ステップS202)。
【0048】
認識パラメータの調整が実行されていない場合(ステップS202で「NO」の場合)には、部品実装機10が
図6の基板生産を終了したかが確認される(ステップS203)。基板生産が継続している場合(ステップS203で「NO」の場合)には、ステップS202に戻る一方、基板生産が終了した場合(ステップS203で「YES」の場合)には
図7のパラメータ保存管理を終了する。
【0049】
一方、認識パラメータの調整が実行された場合(ステップS202で「YES」の場合)には、調整の対象となった認識パラメータを用いて調整の直前に試行されたNb回(Nbは1以上の整数)の部品認識処理の結果(すなわち、
図6のステップS107、S108で受信した成否結果)が認識履歴から除外される(ステップS204)。また、調整された認識パラメータが監視対象に選定される(ステップS205)。ステップS206では、監視対象の認識パラメータ(すなわち、調整された認識パラメータ)を用いた部品認識処理の成否を通信部94が部品実装機10から受信したが確認される。部品認識処理の成否を受信していない場合(ステップS206で「NO」の場合)には、ステップS208に進む。
【0050】
一方、部品認識処理の成否を受信した場合(ステップS206で「YES」の場合)には、ステップS207を実行してからステップS208に進む。このステップS207では、受信した成否が監視対象実績として記憶部92に記録される。これによって、調整された認識パラメータが監視対象となってから、当該認識パラメータを用いた部品認識処理の成否が監視対象実績として記憶部92に蓄積されていくこととなる。
【0051】
ステップS208では、部品実装機10が基板生産を終了したかが確認される。基板生産が継続している場合(ステップS208で「NO」の場合)には、ステップS206に戻る。一方、基板生産が終了した場合(ステップS208で「YES」の場合)には、監視対象の認識パラメータが保存条件を満たすか否かを確認することで、当該認識パラメータの保存の適否を判断する(ステップS209)。具体的には、保存条件は、監視対象の認識パラメータを用いた部品認識処理の試行回数がNa回(Naは2以上の整数)以上であって監視対象実績が示す部品認識処理の成功率が所定率以上であることを求める。例えば、試行回数Naを1000に設定し、所定率を99.5%に設定することができる。
【0052】
保存条件が満たされる場合(ステップS209で「YES」の場合)には、監視対象の認識パラメータが記憶部92に保存され(ステップS210)、
図7のパラメータ保存管理を終了する。これによって、例えば
図4の表示において、この認識パラメータに関する各項目が番号11に対応付けられつつ加わることとなる。また、ステップS210では、保存された認識パラメータが監視対象から外される。
【0053】
保存条件が満たされない場合(ステップS209で「NO」の場合)には、演算部91は、監視対象の認識パラメータを継続して監視対象に選定するか否かを、UI93を用いてユーザに問い合わせる。ユーザは、例えば部品認識処理の成功率が所定率以上ではあるが、部品認識処理の試行回数がNa未満である場合には選定を継続する一方、部品認識処理の成功率が所定率未満である場合には選定を継続しないといった判断を行うことができる。そして、監視対象への選定を継続する旨がユーザによりUI93に入力された場合(ステップS211で「YES」の場合)には、ステップS205で監視対象に認定された認識パラメータを、継続して監視対象に選定し(ステップS212)、
図7のパラメータ保存管理を終了する。これによって、次の基板生産において、当該認識パラメータは監視対象に継続して設定され、ステップS206~S214が実行されることとなる。
【0054】
一方、監視対象への選定を継続しない旨がユーザによりUI93に入力された場合(ステップS211で「NO」の場合)には、ステップS205で監視対象に認定された認識パラメータが監視対象から外される(ステップS213)。そして、当該認識パラメータの値(すなわち、照明レベルおよび輝度閾値のうち調整された値)が調整前の値に戻されて(ステップS214)、
図7のパラメータ保存管理を終了する。
【0055】
以上のように構成された実施形態では、認識パラメータ(実装データ)に調整が実行されると、調整された認識パラメータが監視対象に選定され(ステップS205)、監視対象の認識パラメータを用いた部品認識処理の成否が監視対象実績として記録される(ステップS207)。そして、この監視対象実績に基づき、監視対象の認識パラメータを記憶部92に保存するか否かが決定される(ステップS209)。このように、監視対象実績に基づき認識パラメータの保存の適否を判断してから当該認識パラメータを保存することができるため、不適切な調整が実行された認識パラメータが記憶部92に保存されるのを抑制することが可能となっている。
【0056】
また、演算部91は、監視対象の認識パラメータを用いた部品認識処理の試行回数がNa回以上であって監視対象実績が示す部品認識処理の成功率が所定率以上であるという保存条件が満たされる場合には、監視対象の認識パラメータを記憶部92に保存する(ステップS209、S210)。一方、演算部91は、保存条件が満たされない場合には、監視対象の認識パラメータを記憶部92に保存しない(ステップS209)。このように、保存条件に基づき認識パラメータの保存の適否を判断することで、適切な調整が実行された認識パラメータを記憶部92に保存する一方、不適切な調整が実行された認識パラメータが記憶部92に保存されるのを抑制することができる。
【0057】
また、部品実装機10は、生産予定枚数の基板Bに対して部品実装を実行する基板生産を複数回実行する。これに対して、演算部91は、監視対象に選定した認識パラメータを用いた部品認識処理の試行回数が一の基板生産でNa回に満たない場合には、一の基板生産で監視対象に選定した認識パラメータを、次の基板生産で監視対象に継続して選定する(ステップS212)。かかる構成では、一の基板生産において、監視対象の認識パラメータを使用した部品認識処理の試行回数がNa回に満たない場合には、次の基板生産で、この部品認識パラメータが引き続き監視対象に選定される。したがって、十分な回数の部品認識処理を試行した実績に基づいて、監視対象の認識パラメータを記憶部92に保存するか否かを、適切に決定することができる。
【0058】
また、演算部91は、記憶部92に保存された認識パラメータを用いた部品認識処理の結果が認識履歴(認識成功率やカウント値)として認識パラメータと関連付けて記憶部92に記録する。かかる構成では、例えばユーザは、記憶部92に保存された認識パラメータの信頼性を、認識履歴に基づき把握することができる。
【0059】
ちなみに、認識パラメータの調整は、当該認識パラメータを用いた部品認識処理の失敗が頻発したような際に行われる。このような部品認識処理の失敗の頻発は、認識パラメータと部品Pとのマッチングが悪いことに要因がある。一方、この認識パラメータは、他の部品Pと良好なマッチングを有する可能性がある。特に、この実施形態では、認識パラメータの調整が実行された場合には、この認識パラメータを用いた部品認識処理の成否実績に基づき保存の適否を判断してから記憶部92に保存するといった管理を行うため、記憶部92に保存されている認識パラメータは一定の信頼性を有すると評価できる。そのため、たまたまマッチングが悪かった部品Pに対する認識結果を、この認識パラメータの認識履歴に加えることは、この認識パラメータの信頼性を不当に下げることになる。そこで、演算部91は、認識パラメータに調整が実行された場合には、調整の対象となった認識パラメータを用いて調整の直前に試行されたNb回の部品認識処理の結果(すなわち、
図6のステップS107、S108で受信した成否結果)を認識履歴から除外する(ステップS204)。これによって、実装データの信頼性を不当に下げてしまうことを抑制できる。
【0060】
また、演算部91は、部品認識処理で撮像された画像Imを、当該部品認識処理で使用された認識パラメータに関連付けて記憶部92に記憶する。これによって、部品認識処理で使用する認識パラメータを、この認識パラメータを用いた部品認識処理で過去に撮像された画像Imに基づき決定するといったことが可能となる。
【0061】
また、UI93は、互いに関連付けられた認識パラメータと画像Imと対応付けて表示する。これによって、ユーザは、画像Imを視認しつつ、部品認識処理で使用する認識パラメータを決定することができる。
【0062】
ところで、上記実施形態では、部品認識処理の失敗が頻発したような場合に、ユーザはこの部品認識処理に使用された認識パラメータを調整する。一方、ユーザは、認識パラメータの調整ではなく、記憶部92に保存された他の認識パラメータを選択して使用することで、対応することもできる。続いては、かかる変形例について説明する。なお、変形例の説明は、上記の実施形態との差異点について主に行い、共通点については適宜省略する。ただし、上記の実施形態と共通する構成を具備することで、同様の効果が奏されることは言うまでもない。
【0063】
図8はUIに表示される認識パラメータの選択画面の一例を模式的に示す図である。この変形例では、部品認識処理の失敗が所定の頻度以上に発生すると、ユーザにエラーが報知されるとともに、
図4に示した画面と
図8に示す画面とがUI93に表示される。
図8の画面おいて、「現パラメータ」との表記に対応付けられた部品Pの画像Imは、現時点で撮像制御部140に設定されている認識パラメータに関連付けられて記憶部92に記憶されている画像Imであり、「失敗画像」との表記に対応付けられた部品Pの画像Imは、エラーを報知する直前の失敗した部品認識処理で撮像された画像Imである。さらに、
図8の画面では、現時点で設定されている認識パラメータについて、
図5のポップアップ画面に相当する画面が表示される(
図8の左下)。
【0064】
また、「選択パラメータ」との表記に対応付けられた部品Pの画像Imは、ユーザが
図4の一覧から選択した認識パラメータに関連付けられて記憶部92に記憶されている画像Imである。つまり、ユーザが
図4の一覧のうちから一の認識パラメータを選択すると、当該一の認識パラメータに関連付けられた画像Imが表示される。さらに、
図8の画面では、ユーザにより選択されている認識パラメータについて、
図5のポップアップ画面に相当する画面が表示される(
図8の右下)。
【0065】
このような実施形態によれば、ユーザは、選択する認識パラメータを順次変更することで、「選択パラメータ」に表示される画像Imが、「失敗画像」に表示される画像Imに類似する認識パラメータを探索できる。そして、ユーザは、撮像制御部140に設定する認識パラメータを、現時点の認識パラメータから、画像Imが失敗画像に類似する認識パラメータに変更することができる。
【0066】
あるいは、作業者がより簡便に認識パラメータを選択できるように、支援することも可能である。この変形例について、
図9を参照しつつ説明する。
図9は認識パラメータの選択支援の一例を示すフローチャートであり、
図10は
図9のフローチャートの実行結果としてUIに示される画面の一例を模式的に示す図である。
図9のフローチャートは、演算部91の演算処理によって実行される。上述のように、演算部91は、現時点で撮像制御部140に設定されている認識パラメータを用いた部品認識処理で撮像された部品Pの画像Imを記憶部92に蓄積している。そこで、
図9の認識パラメータの選択支援は、これらの画像Imを利用して行われる。
【0067】
ステップS301では、記憶部92に保存された、設定中の認識パラメータ以外の認識パラメータを識別する番号Mpがゼロにリセットされる。つまり、
図4の例を挙げると、番号10の認識パラメータが設定中である場合には、番号10の認識パラメータと同一種類の部品Pに対応する1~9番の認識パラメータを識別可能なように番号Mpが設定され、これがゼロにリセットされる。さらに、ステップS301では、現時点で設定中の認識パラメータを用いた部品認識処理で撮像されて記憶部92に蓄積された画像Imを識別する番号Miがゼロにリセットされる。そして、ステップS302では、パラメータ識別番号Mpがインクリメントされ、ステップS303では、画像識別番号Miがインクリメントされる。
【0068】
ステップS304では、現時点で設定中の認識パラメータの照明レベルと、Mp番目の認識パラメータの照明レベルとの差に応じて、Mi番目の画像Imの輝度を調整する画像処理を行う。これによって、Mp番目の認識パラメータの照明レベルでMi番目の画像Imに含まれる部品Pを撮像した画像Imに相当する擬似画像Iqを生成することができる。ステップS305では、Mp番目の認識パラメータの輝度閾値を用いて擬似画像Iqから部品Pのエッジが検出され、ステップS306では、この部品Pのエッジに基づき部品Pの認識が試行される。そして、ステップS307では、ステップS306での部品Pの認識の成否が記憶部92に保存される。
【0069】
ステップS308では、画像識別番号Miが最大値Mix(画像Imの個数に相当)に一致したかが判断される。画像識別番号Miが最大値Mix未満の場合(ステップS308で「NO」の場合)には、ステップS303に戻って画像識別番号Miをインクリメントしてから、ステップS304~S307が実行される。こうして、画像識別番号Miが最大値Mixに一致するまで(すなわち、ステップS308で「YES」と判断されるまで)、ステップS303~S307が実行される。これによって、設定中の認識パラメータを用いた部品認識処理で撮像された全ての画像Imに対して、Mp番目の認識パラメータによる擬似的な部品認識処理が実行され、その結果が保存される。
【0070】
ステップS309では、Mp番目の認識パラメータによる擬似的な部品認識処理の実行結果が示す成功率が、推定認識成功率として算出される。ステップS310では、パラメータ識別番号Mpが最大値Mpx(設定中の認識パラメータ以外の認識パラメータの個数に相当)に一致したかが判断される。パラメータ識別番号Mpが最大値Mpx未満の場合(ステップS310で「NO」の場合)には、ステップS302に戻ってパラメータ識別番号Mpをインクリメントしてから、ステップS303~309が実行される。これによって、Mpx個の認識パラメータのそれぞれについて推定認識成功率を算出することができる。そして、ステップS311で、
図10に示すように、例えば推定認識成功率が上位3個の認識パラメータが選択されて、一覧で表示・推奨され、
図9のパラメータ選択支援が終了する。
【0071】
かかる変形例では、演算部91は、記憶部92に保存された複数の認識パラメータのそれぞれを用いて、失敗した部品認識処理で撮像された画像Imから部品Pの認識を試行した結果に基づいて、認識パラメータを選択する。そして、UI93は、演算部91が選択した認識パラメータを表示する。したがって、ユーザによる認識パラメータの選択を支援して、ユーザの作業負担を軽減することができる。
【0072】
このように本実施形態では、部品実装システム1が本発明の「部品実装システム」の一例に相当し、部品実装機10が本発明の「部品実装機」の一例に相当し、部品Pが本発明の「部品」の一例に相当し、基板Bが本発明の「基板」の一例に相当し、ノズル41が本発明の「ノズル」の一例に相当し、部品認識カメラ5が本発明の「カメラ」の一例に相当し、画像Imが本発明の「画像」の一例に相当し、認識パラメータが本発明の「実装データ」の一例に相当し、照明レベルが本発明の「光の強度」の一例に相当し、輝度閾値が本発明の「閾値」の一例に相当し、ステップS103~S105の部品認識処理が本発明の「所定動作」および「部品認識処理」の一例に相当し、
図6の基板生産が本発明の「基板生産」の一例に相当し、サーバコンピュータ9が本発明の「実装データ管理装置」の一例に相当し、演算部91が本発明の「実績監視部」「履歴管理部」および「選択処理部」それぞれの一例として機能し、記憶部92が本発明の「記憶部」の一例に相当し、UI93が本発明の「ユーザインターフェース」の一例に相当する。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、認識パラメータの調整をユーザが行っている。しかしながら、認識パラメータの調整を演算部91によって自動的に行っても良い。例えば、調整対象の認識パラメータの輝度閾値を変化させつつ、失敗した部品認識処理で撮像した画像に対して部品Pの認識を試行することで、認識パラメータの輝度閾値を調整できる。
【0074】
また、基板生産を開始する前の認識パラメータの撮像制御部140への設定は、ユーザによらず、演算部91が自動で行っても良い。
【0075】
また、ステップS211で監視対象への選定を継続するか否かの判断を、演算部91により自動で行っても良い。具体的には、例えば部品認識処理の成功率が所定率以上ではあるが、部品認識処理の試行回数がNa未満である場合には選定を継続する一方、部品認識処理の成功率が所定率未満である場合には選定を継続しないといった判断基準で、ステップS211の判断を行うことができる。
【0076】
また、調整対象は、照明レベルおよび輝度閾値の両方に限られず、いずれか一方でも良い。あるいは、調整対象は、照明レベルおよび輝度閾値以外のものであっても良い。
【0077】
また、画像Imから部品Pを抽出する方法は上記の例に限られず、例えば画像Imと背景画像とに基づく背景差分法によって部品Pを抽出しても良い。この場合、照明レベルと背景差分法で用いる閾値との組み合わせが輝度関連情報となる。
【0078】
また、部品認識カメラ5で使用される光学センサは、上述のエリアセンサに限られず、ラインセンサでも良い。
【0079】
また、実装ヘッド4の構成もロータリ型に限られず、ノズル41がX方向に平行に並ぶインライン型でも良い。
【符号の説明】
【0080】
1…部品実装システム
10…部品実装機
41…ノズル
5…部品認識カメラ(カメラ)
9…サーバコンピュータ
91…演算部(実績監視部、履歴管理部、選択処理部)
92…記憶部
93…UI(ユーザインターフェース)
B…基板
P…部品
Im…画像
S103~S105…部品認識処理(所定動作)