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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】PTPシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20220606BHJP
   A61J 1/03 20060101ALI20220606BHJP
   B65B 9/04 20060101ALI20220606BHJP
   B65B 47/02 20060101ALI20220606BHJP
   B65B 57/00 20060101ALI20220606BHJP
   B65B 61/02 20060101ALI20220606BHJP
   B65B 61/06 20060101ALI20220606BHJP
   A61K 9/44 20060101ALN20220606BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
A61J1/03 370
B65B9/04
B65B47/02
B65B57/00 H
B65B61/02
B65B61/06
A61K9/44
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018139725
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020014694
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-02-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】細田 一也
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 憲彦
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】宮部 愛子
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第0915014(EP,A1)
【文献】特開2005-211578(JP,A)
【文献】国際公開第2005/004797(WO,A2)
【文献】特開2017-158947(JP,A)
【文献】特開平3-148430(JP,A)
【文献】特表2003-506415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるPTPシートの製造方法であって、
搬送される帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成工程と、
前記ポケット部に錠剤を充填する充填工程と、
前記ポケット部に錠剤が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着工程と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のPTPフィルムからPTPシートを切離す切離工程とを備え、
前記充填工程では、錠剤を吸着搬送しつつ、インクジェット印刷装置によって該錠剤の表面及び裏面のうちの一方の面のみに印刷を施すことで、複数の文字、数字、記号又は図形を含む印刷部を形成するとともに、該印刷部の形成された側の面が前記ポケット部と対向するように該ポケット部へと該錠剤が充填され、
錠剤には予め平坦な底壁面を具備する凹部が形成されており、前記充填工程において前記凹部内の前記平坦な底壁面に前記印刷部が包含されるように形成されることで、錠剤及び前記ポケット部は、該ポケット部へと該錠剤を充填した状態において、前記印刷部と前記ポケット部とが接触しないような関係とされており、
前記凹部の形状と前記印刷部の形状とが同一ではないことを特徴とするPTPシートの製造方法。
【請求項2】
前記充填工程は、錠剤における少なくとも前記凹部の形成された側の面を撮像して画像データを得る工程を含み、
前記充填工程においては、前記画像データに基づいて、前記凹部内の前記平坦な底壁面に印刷を施すように前記インクジェット印刷装置が制御されることを特徴とする請求項1に記載のPTPシートの製造方法。
【請求項3】
前記凹部は、錠剤の側面に非連通の状態とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のPTPシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷の施された錠剤を収容してなるPTPシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品等の分野において用いられるブリスタシートとしてPTP(プレススルーパック)シートが知られている。PTPシートは、錠剤が収容されるポケット部を有する容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとを備えている。
【0003】
PTPシートは、搬送される帯状の容器フィルムに対しポケット部を形成する工程、該ポケット部に錠剤を充填する工程、該ポケット部の開口側を密封するように容器フィルムに対し帯状のカバーフィルムを取着する工程、容器フィルム及びカバーフィルムからなる帯状のPTPフィルムをPTPシート単位に打ち抜く工程等を経て製造される。
【0004】
近年では、インクジェット方式の印刷装置を用いて、文字や記号などの識別情報を印刷することにより印刷部の形成された錠剤も見受けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1のような錠剤印刷装置を用いて事前に印刷を行った錠剤を多数、PTP包装機のホッパ(錠剤貯留部)へ投入し、ここから順次、ポケット部に充填してPTPシートを製造していくような場合には、例えばホッパ内や供給シュート内など、錠剤がポケット部に充填されるまでの間に、錠剤の印刷部が擦れたり欠けたりして印刷内容が不明瞭になるおそれがある。特に口腔内崩壊錠のような脆い錠剤の場合には、このような不具合がより顕著となるおそれがある。
【0006】
これに対し、錠剤に印刷する機能を有したPTP包装機なども見受けられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-164488号公報
【文献】実開昭50-118262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2のように、供給ドラムによってポケット部へ錠剤を順次搬送し充填していく過程において錠剤に対し印刷が行われた場合、印刷形成されたばかりの印刷部が、インクの乾く間もなく直ちにポケット部やカバーフィルムと接触することとなる。そのため、印刷部がポケット部等と擦れることで、印刷内容が不明瞭になってしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷部における外観品質の低下抑制を図ることができるPTPシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0011】
手段1.容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容されるとともに、該ポケット部を塞ぐように前記容器フィルムに対しカバーフィルムが取着されてなるPTPシートの製造方法であって、
搬送される帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成工程と、
前記ポケット部に錠剤を充填する充填工程と、
前記ポケット部に錠剤が充填された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着工程と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着されてなる帯状のPTPフィルムからPTPシートを切離す切離工程とを備え、
前記充填工程では、錠剤を吸着搬送しつつ、インクジェット印刷装置によって該錠剤の表面及び裏面のうちの一方の面のみに印刷を施すことで、複数の文字、数字、記号又は図形を含む印刷部を形成するとともに、該印刷部の形成された側の面が前記ポケット部と対向するように該ポケット部へと該錠剤が充填され、
錠剤には予め平坦な底壁面を具備する凹部が形成されており、前記充填工程において前記凹部内の前記平坦な底壁面に前記印刷部が包含されるように形成されることで、錠剤及び前記ポケット部は、該ポケット部へと該錠剤を充填した状態において、前記印刷部と前記ポケット部とが接触しないような関係とされており、
前記凹部の形状と前記印刷部の形状とが同一ではないことを特徴とするPTPシートの製造方法。
【0012】
印刷内容が不明瞭になることを防止するためには、ポケット部やカバーフィルムに対する印刷部の擦れを防止することが有用である。印刷部の擦れを防止する手法としては、例えば、段のように、凹部を形成するとともに該凹部内に印刷部を設けるように錠剤を設計するなど、ポケット部へと錠剤を充填し容器フィルムへとカバーフィルムを取着した状態において、ポケット部及びカバーフィルムの双方へと印刷部が接触しないような関係となるように、錠剤、ポケット部及びカバーフィルムを設計することが考えられる。
【0013】
しかしながら、カバーフィルムは、通常、柔らかく変形しやすい。そのため、カバーフィルムへと印刷部が接触しないような関係となるように錠剤等を設計したとしても、製造工程で生じる衝撃や振動などによりカバーフィルムが変形する(例えば振れ動く)ことで、印刷部にカバーフィルムが接触してしまうおそれがある。
【0014】
この点、上記手段1によれば、錠剤及びポケット部は、ポケット部へと錠剤を充填した状態において、錠剤に形成された印刷部とポケット部とが接触しないような関係に設計されている。さらに、充填工程では、錠剤の表面及び裏面のうちの一方の面側のみに印刷部が形成され、この印刷部の形成された側の面がポケット部と対向するように錠剤が充填される。ここで、ポケット部は、カバーフィルムに比べて剛性を有する材料からなり、製造工程で生じる衝撃や振動等によって変形することはない。そのため、例えば凹部内に印刷部を形成して印刷部とポケット部とが接触しないような関係に設計することで、印刷部がポケット部に当たってしまうことをより確実に回避できる。一方、変形の懸念されるカバーフィルム側には印刷部が形成されないため、カバーフィルムとの接触に伴う印刷部の擦れが生じることはない。これらの結果、印刷内容が不明瞭になることをより確実に防止でき、印刷部における外観品質の低下抑制を効果的に図ることができる。
【0015】
また、上記手段1によれば、インクが十分に乾く前にポケット部へと錠剤を充填することができるため、錠剤搬送速度(充填速度)の高速化(例えば1秒当たり100個以上の錠剤を包装すること)の要請に十分応えることが可能となり、ひいては生産速度の高速化を図ることができる。
【0017】
また、上記手段1によれば、ポケット部の形状設計などを特段行うことなく、印刷部とポケット部とが接触しないような関係にすることが容易に可能となる。
【0018】
また、インクジェット印刷装置においては、風(気流)の影響を受けることで噴射するインクが流されて、印刷品質が低下してしまうといった不具合が懸念されるところであるが、この点、上記手段によれば、凹部内に印刷が施されるため、錠剤(特に凹部を形成する部位)が風よけとして機能することとなる。そのため、風の影響による上記不具合の発生を効果的に抑えることができ、良好な印刷品質をより確実に得ることができる。
【0019】
手段.前記充填工程は、錠剤における少なくとも前記凹部の形成された側の面を撮像して画像データを得る工程を含み、
前記充填工程においては、前記画像データに基づいて、前記凹部内の前記平坦な底壁面に印刷を施すように前記インクジェット印刷装置が制御されることを特徴とする手段に記載のPTPシートの製造方法。
【0020】
上記手段によれば、撮像工程にて取得した画像データを基に、印刷前に印刷対象となる錠剤における凹部の位置や向きなどを把握することができ、インクジェット印刷装置によって凹部の位置や向きなどに合わせた適切な印刷を施すことができる。
【0021】
手段.前記凹部は、錠剤の側面に非連通の状態とされていることを特徴とする手段1又は2に記載のPTPシートの製造方法。
【0022】
上記手段によれば、凹部の周囲全周に錠剤部分が存在した(凹部の底壁面全周が囲まれた)状態となる。そのため、ポケット部に対する印刷部の接触が極めて生じにくくなり、印刷部における外観品質の低下抑制を一層効果的に図ることができる。また、凹部周囲の錠剤部分による風よけとしての機能がより効果的に発揮されることとなり、風の影響による印刷不具合の発生を一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】PTPシートを示す斜視図である。
図2】PTPシートの部分拡大断面図である。
図3】表面側から見たときの錠剤の斜視図である。
図4】裏面側から見たときの錠剤の斜視図である。
図5】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
図6】錠剤充填装置の概略構成を示す部分断面模式図である。
図7】ロータリドラム及び固定バルブを示す一部破断斜視図である。
図8】ロータリドラム及び固定バルブを示す一部破断斜視図である。
図9】吸着部を示すロータリドラムの部分拡大断面図である。
図10】PTPフィルムを示す斜視図である。
図11】PTPシートの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まずPTPシートの構成について詳しく説明する。
【0029】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0030】
本実施形態における容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明の熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。容器フィルム3は、比較的厚肉であって十分な剛性を有するものである一方、カバーフィルム4は非常に薄肉であって振動や衝撃などにより容易に変形し得るものである。尚、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
【0031】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(図10参照)がシート状に打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。
【0032】
本実施形態における錠剤5は、平面視円形状をなす円盤状の素錠であって、側面5Aと、該側面5Aを挟む表面5B及び裏面5Cとを有した構成となっている。また、側面5Aは、表面5Bとの境界部を面取りするテーパ部5Dと、裏面5Cの境界部を面取りするテーパ部5Eとを備えている。
【0033】
さらに、図3及び図4に示すように、錠剤5の裏表両面には、凹部5Fが形成されている。より詳しくは、錠剤5の表面5B及び裏面5Cのそれぞれには、平面視矩形状をなす2つの凹部5Fが設けられており、これら凹部5Fは、表面5Bの中心を挟む位置にて平行に並んでいる。本実施形態において、表面5B側に設けられた各凹部5Fの形状及び位置関係は、裏面5C側に設けられた各凹部5Fの形状及び位置関係と同一とされている。
【0034】
また、本実施形態において、凹部5Fは、それぞれ錠剤5の側面5Aに非連通の状態とされており、凹部5Fの周囲全周に錠剤5の構成部分が存在する(凹部5Fの底壁面の全周が側壁で囲まれた)状態となっている。尚、凹部5Fの深さは、例えば0.5mm以上とされており、また、凹部5Fの底壁面は平坦面となっている。
【0035】
加えて、表面5B側における凹部5Fの底壁面には、錠剤5に関する製品情報を示す文字や記号、数字、図形などがインクジェット印刷されてなる印刷部5Jが形成されている。印刷部5Jは、錠剤5における文字や数字等が印刷された部位であり、凹部5F内にのみ設けられている。本実施形態において、印刷部5Jは、図3に示す例において、所定の文字と所定の数字とが印刷されてなる。尚、錠剤5に関する製品情報としては、「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」及び「ロット番号」などを挙げることができる。
【0036】
一方、裏面5C側における凹部5Fの底壁面には、印刷部5Jは形成されないように構成されている。従って、本実施形態における錠剤5は、表面5B側のみに印刷部5Jを有する構成となっている。
【0037】
尚、本実施形態においては、表面5B及び裏面5Cの相違は印刷部5Jが存在するか否かという点のみであるところ、便宜上、印刷部5Jが形成された側の面を表面5Bとし、印刷部5Jが形成されていない側の面を裏面5Cとしている。勿論、印刷部5Jが形成された側の面を裏面5Cとし、印刷部5Jが形成されていない側の面を表面5Bとしてもよい。
【0038】
また、錠剤5は、印刷部5Jの形成された側の面である表面5Bがポケット部2と対向する状態で該ポケット部2へと充填されている(図2参照)。そして、凹部5F内に印刷部5Jが形成されることで、設計上、錠剤5に形成された印刷部5Jと該錠剤5の充填されたポケット部2とが接触しないような関係となっている。
【0039】
次に、上記PTPシート1を製造するPTP包装機10の概略構成について図5を参照して説明する。
【0040】
図5に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0041】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0042】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0043】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、錠剤充填装置21及び検査装置22が順に配設されている。
【0044】
錠剤充填装置21は、ポケット部2に錠剤5を充填する充填手段としての機能を有する。錠剤充填装置21は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送動作と同期して錠剤5を吸着搬送し、各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。錠剤充填装置21の詳細については後述する。
【0045】
検査装置22は、例えば錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、錠剤5の異常の有無、ポケット部2への異物混入の有無など、主として錠剤不良に関する検査を行う。
【0046】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24によって加熱ロール25の方へと案内されている。
【0047】
加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。
【0048】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0049】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0050】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する機能を有する。また、刻印装置34はPTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。
【0051】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜く機能を有する。
【0052】
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される。但し、上記検査装置22によって不良品と判定されたPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0053】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。尚、連続送りロール36は従動ロールが圧接されており、不要フィルム部42を挟持しながら搬送動作を行う。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0054】
尚、上記各ロール14,20,28,31,32などは、そのロール表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、間欠送りロール14等の表面には、ポケット部2が収容される窪みが形成されているため、ポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2が間欠送りロール14等の各窪みに収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0055】
次いで、錠剤充填装置21の構成について図面を参照して詳しく説明する。図6は錠剤充填装置21の概略構成を示す部分断面模式図である。
【0056】
図6に示すように、錠剤充填装置21は、錠剤5の供給経路に沿って上流側より順に、貯留部45、供給シュート46、第一ロータリドラム47、第二ロータリドラム48及び第三ロータリドラム49を備えている。さらに、錠剤充填装置21は、第一ロータリドラム47に対応して撮像装置51を備え、第三ロータリドラム49に対応して印刷装置61を備えている。尚、錠剤充填装置21の各機構部(貯留部45、供給シュート46、ロータリドラム47,48,49、撮像装置51、印刷装置61)は、制御装置71により駆動制御される。
【0057】
次いで、錠剤充填装置21の各機構部及び制御装置71について詳しく説明する。
【0058】
貯留部45は、多数の錠剤5を貯留可能に構成されるとともに、ここから供給シュート46へ錠剤5が順次供給されるように構成されている。貯留部45に貯留される錠剤5は、前記凹部5Fが既に形成させたものであるが、印刷部5Jは未形成である。
【0059】
供給シュート46は、水平搬送される容器フィルム3の幅方向(図6の紙面奥行方向)における各ポケット部2の位置に対応して、それぞれ設けられている。つまり、本実施形態では、容器フィルム3の幅方向に沿って5本の供給シュート46が並設されている。各供給シュート46は、筒状をなし、錠剤5を横姿勢で鉛直方向に一列に積載できるよう構成されている。
【0060】
また、各供給シュート46は、その下側開口部が第一ロータリドラム47に近接するように配置されている。より詳しくは、各供給シュート46の下側開口部は、第一ロータリドラム47の回転方向に沿って、第一ロータリドラム47の後述する回転軸54の真上位置よりも若干下流側にずれた所定位置に近接配置されている。
【0061】
各供給シュート46の下側開口部の近傍には、該下側開口部を開閉可能なシャッタ46Aが設けられている。そして、シャッタ46Aが開閉動作を行うことにより、供給シュート46から錠剤5を1錠ずつ自然落下させ、第一ロータリドラム47へ供給することができるようになっている。尚、第一ロータリドラム47へと供給される錠剤5における凹部5Fの向きは様々であり、一定ではない。
【0062】
次に、第一ロータリドラム47、第二ロータリドラム48及び第三ロータリドラム49について説明する。尚、第一ロータリドラム47、第二ロータリドラム48及び第三ロータリドラム49は同一構成であるため、ここでは「ロータリドラム47,48,49」と総称して説明する。
【0063】
ロータリドラム47,48,49は、円筒形状をなし、回転可能に軸支されている。ロータリドラム47,48,49は、その回転軸54が容器フィルム3の幅方向に平行となるように配置されている。尚、回転軸54は、図示しないモータ等の駆動手段に対し直接又は間接に連結されており、該モータによって回転駆動される。そして、ロータリドラム47,48,49は、回転軸54の回転とともに一体回転する。
【0064】
図7,8に示すように、ロータリドラム47,48,49の外周面には、錠剤5を吸着保持するための吸着部55Aが多数形成されている。吸着部55Aは、ロータリドラム47,48,49の周方向及び軸方向に所定間隔で規則的に配列されている。本実施形態では、容器フィルム3の幅方向における各ポケット部2の位置に対応して、ロータリドラム47,48,49の軸方向に等間隔で5つの吸着部55Aが設けられている。そして、この軸方向に並ぶ5つの吸着部55Aからなる列(以下、「吸着部55A列」という)がロータリドラム47,48,49の周方向に等間隔で7列設けられている。さらに、ロータリドラム47,48,49の周方向に対する吸着部55Aの形成間隔(ピッチ)は、容器フィルム3の搬送方向(図6の右向き方向)に対するポケット部2の形成間隔と同一間隔となっている。
【0065】
各吸着部55Aは、ロータリドラム47,48,49の径方向に見た平面視で、略円形状をなし、錠剤5を収容可能な大きさを有している。また、各吸着部55Aは、ロータリドラム47,48,49の径方向に沿った断面視で略円弧状をなしている(図9参照)。つまり、各吸着部55Aは、ロータリドラム47,48,49の外周面において略球面状に窪んだ凹部となっている。
【0066】
本実施形態では、錠剤5を吸着部55Aにより吸着保持した状態において、錠剤5のテーパ部5D又はテーパ部5Eが吸着部55Aに接触し、錠剤5のうち凹部5Fを形成する部位が吸着部55Aと非接触の状態となるように構成されている(図9参照)。また、錠剤5を吸着部55Aにより吸着保持した状態では、錠剤5の一部(本実施形態では半分程度)がロータリドラム47,48,49の外周面より突出するようになっている。
【0067】
さらに、各吸着部55Aの底部中央には、ロータリドラム47,48,49の径方向に沿って形成された吸引孔55Bが開口している。また、ロータリドラム47,48,49内には、各吸着部55A列それぞれに対応するように軸方向に沿って延びる複数の通気路55Cが設けられている。つまり、本実施形態では、ロータリドラム47,48,49の回転方向に等間隔で7本の通気路55Cが設けられている。
【0068】
各通気路55Cは、ロータリドラム47,48,49の軸方向に並ぶ5つの吸引孔55Bと連通している。また、各通気路55Cは、ロータリドラム47,48,49の軸方向一端側の側面に開口している。そして、このロータリドラム47,48,49の軸方向一端側の側面(通気路55Cが開口した側面)には、該側面を覆うようにして円板状の固定バルブ56が設けられている。
【0069】
固定バルブ56内には、負圧空間部A1と、大気開放空間部A2とが形成されている。両空間部A1,A2は、それぞれロータリドラム47,48,49の回転方向に沿って円弧状に湾曲され、ロータリドラム47,48,49の軸方向一端側の側面と対向する対向面側に開口している(図7参照)。
【0070】
負圧空間部A1は、ロータリドラム47,48,49が所定方向(図6の各矢印方向)に回転するのに伴い位置変化する各通気路55C(並びに、これに連通する吸引孔55B及び吸着部55A)が、回転軸54の略真上位置から略真下位置までを移動する間、継続して連通可能となる範囲に形成されている。さらに、負圧空間部A1は、固定バルブ56に形成された貫通孔56Aを介して、所定の真空ポンプ(図示略)に接続されている。
【0071】
従って、真空ポンプが作動状態にある場合には、貫通孔56Aを介して負圧空間部A1内の空気が吸引され、負圧空間部A1内は常に真空引きされた状態(負圧が供給された状態)となる。ひいては、ロータリドラム47,48,49の回転に伴い、負圧空間部A1と連通する所定位置の通気路55Cも同様に真空引きされた状態となる。これにより、これらの通気路55Cと連通した吸着部55Aに収容された錠剤5を吸引し、各吸着部55Aに吸着させることができる。
【0072】
このように吸着部55Aに吸着された錠剤5は、ロータリドラム47,48,49の回転に伴い回転軸54の略真上付近から略真下付近までを移送される間、吸着部55Aから脱落することなく、吸着部55Aに保持される。
【0073】
大気開放空間部A2は、ロータリドラム47,48,49が所定方向(図6の各矢印方向)に回転するのに伴い位置変化する各通気路55C(並びに、これに連通する吸引孔55B及び吸着部55A)が、回転軸54の略真下位置から略真上位置までを移動する間、継続して連通可能となる範囲に形成されている。大気開放空間部A2は、固定バルブ56に形成された貫通孔56Bを介して、常に大気に開放された状態となっている。
【0074】
上記構成の下、第一ロータリドラム47、第二ロータリドラム48及び第三ロータリドラム49は、鉛直方向に互いに近接するように配置されている。さらに、第三ロータリドラム49は、水平搬送される容器フィルム3と近接するように配置されている。
【0075】
また、第一ロータリドラム47、第二ロータリドラム48及び第三ロータリドラム49は、PTP包装機10による容器フィルム3の搬送動作と同期するように、同一の回転速度でそれぞれ所定方向(図6の各矢印方向)に常時連続回転するよう前記制御装置71により駆動制御される。本実施形態では、図6の紙面上において、第一ロータリドラム47及び第三ロータリドラム49はそれぞれ反時計回り方向に連続回転し、第二ロータリドラム48は時計回り方向に連続回転する。
【0076】
尚、第一ロータリドラム47、第二ロータリドラム48及び第三ロータリドラム49には、それぞれ図示しないエンコーダが設けられており、該エンコーダから前記制御装置71へ回転角度に関する信号が所定時間毎に出力される。これにより、前記制御装置71は、第一ロータリドラム47、第二ロータリドラム48及び第三ロータリドラム49の回転位置を把握可能であり、ひいては吸着搬送される錠剤5の位置を把握できるようになっている。
【0077】
また、第一ロータリドラム47の真下位置かつ第二ロータリドラム48の真上位置にあたる第三ポジションP3を、第一ロータリドラム47の吸着部55Aが通過するタイミングと、第二ロータリドラム48の吸着部55Aが通過するタイミングとが一致するように設定されている。
【0078】
同様に、第二ロータリドラム48の真下位置かつ第三ロータリドラム49の真上位置にあたる第四ポジションP4を、第二ロータリドラム48の吸着部55Aが通過するタイミングと、第三ロータリドラム49の吸着部55Aが通過するタイミングとが一致するように設定されている。
【0079】
さらに、第三ロータリドラム49の真下位置にあたる第六ポジションP6を、第三ロータリドラム49の吸着部55Aが通過するタイミングと、容器フィルム3のポケット部2が通過するタイミングとが一致するように設定されている。
【0080】
次に、撮像装置51について説明する。本実施形態では、撮像装置51としてCCDカメラが採用されている。勿論、これに限らず、CMOSカメラを採用してもよい。
【0081】
撮像装置51は、その撮像範囲が第一ロータリドラム47の軸方向に並ぶ5つの錠剤5(吸着部55A)を1回で撮像可能な範囲となっている。これに代えて、各ロータリドラム47,48,49の軸方向に並ぶ5つの錠剤5(吸着部55A)それぞれに対応して撮像手段(カメラ)を設けた構成としてもよい。
【0082】
撮像装置51は、第一ロータリドラム47によって吸着搬送される錠剤5のうち吸着部55Aによって吸着されていない面(非吸着面)側を撮像する。尚、後述するように、錠剤5のうち撮像装置51による撮像対象となる面側に印刷部5Jが形成されるため、結果的に、撮像装置51は、錠剤5の表面5B側を撮像することになる。撮像装置51により得られた画像データは、前記制御装置71に入力される。
【0083】
次いで、印刷装置61について説明する。印刷装置61は、それぞれ所定のインクジェット方式(例えばピエゾ方式やサーマル方式)の印刷ヘッドを用いて錠剤5に対し非接触で印刷を行うことのできる公知の錠剤印刷装置である。印刷装置61によれば、印刷ヘッドに設けられた複数の吐出ノズルから可食性インクの液滴を吐出し、錠剤5に対し文字や記号などの識別情報を印刷することができる。
【0084】
印刷装置61は、第三ロータリドラム49の側方位置にあたる第五ポジションP5に配置されており、該第三ロータリドラム49の軸方向に並ぶ5つの吸着部55A(錠剤5)に対応して5つの印刷ヘッドを有している。そして、印刷装置61は、第三ロータリドラム49により吸着搬送されて第五ポジションP5を通過する各錠剤5に向けて各印刷ヘッドからインクを吐出し、非接触で印刷を行う。尚、印刷装置61による印刷対象は、錠剤5のうち撮像装置51による撮像対象となる面側である。
【0085】
制御装置71は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM、情報を長期記憶するための記憶媒体(例えばハードディスク等)などを備えている。制御装置71は、CPUが所定のプログラムを実行することによって、印刷装置61などの錠剤充填装置21の各機構部に関する制御処理を実行する。
【0086】
また、本実施形態において、前記記憶媒体には、例えば、文字や数字等の印刷パターンの向きを0度から179度の範囲で1度ずつ回転させた180通りの印刷データが登録されている。制御装置71は、登録された印刷データと、撮像装置51により得られた画像データとに基づき、印刷装置61の動作を制御する。
【0087】
詳述すると、制御装置71は、得られた画像データに基づき、凹部5Fの位置及び向きに関する情報(「位置角度情報」と称す)を取得する。位置角度情報は、所定の基準位置に対する凹部5Fの中心のX方向及びY方向に沿った位置ずれ量や、所定の基準線に対する凹部5Fの傾斜角度などの情報を含む。その上で、制御装置71は、取得した位置角度情報に基づき、印刷装置61における印刷条件をそれぞれ設定する。
【0088】
すなわち、制御装置71は、前記記憶媒体に登録された複数の印刷データの中から、得られた位置角度情報における傾斜角度に適合するものを選択する。例えば、傾斜角度が90度である場合、制御装置71は、複数の印刷データの中から、文字や数字等の印刷パターンの向きを90度回転させたものを選択する。
【0089】
さらに、制御装置71は、得られた位置角度情報における位置ずれ量から印刷位置を決定する。例えば、制御装置71は、予め設定された通常印刷位置からこの位置ずれ量に対応する分だけずらした位置を印刷位置として決定する。そして、制御装置71は、印刷条件として、選択した印刷データ及び決定した印刷位置を設定する。
【0090】
その上で、制御装置71は、設定した印刷条件に基づき、凹部5F内に印刷を施すように印刷装置61を制御する。これにより、錠剤5における凹部5F内の所定位置に印刷部5Jが正確に形成されることとなる。
【0091】
次に、容器フィルム3のポケット部2に錠剤5を充填する充填工程を中心として、PTPシート1の製造工程(製造方法)について図11のフローチャートを参照して説明する。
【0092】
まず、ステップS1のポケット部形成工程において、加熱装置15によって比較的柔軟になった容器フィルム3に対し、ポケット部形成装置16によってポケット部2を順次形成していく。
【0093】
次いで、ステップS2の充填工程において、形成されたポケット部2へと錠剤5を充填する。充填工程S2では、まず、第一ロータリドラム47の回転に伴い移動する空の吸着部55Aが所定の第一ポジションP1(図6参照)に到達する所定のタイミングで、シャッタ46Aを開閉動作させる。第一ポジションP1は、供給シュート46からの錠剤5の落下位置に相当するポジションである。
【0094】
シャッタ46Aの開閉動作により、供給シュート46から錠剤5が1つ落下し、第一ポジションP1へ移動してきた吸着部55Aに収容される。このとき、錠剤5を収容した吸着部55Aに係る通気路55Cは負圧空間部A1と連通した状態となっているため、該錠剤5は吸着保持された状態となる。その結果、ステップS21の第一搬送工程、すなわち、第一ロータリドラム47によって錠剤5を吸着しつつ、該錠剤5を搬送する工程が開始される。
【0095】
尚、供給シュート46においては、1つの錠剤5が落下すると、その上の錠剤5が下側開口部まで降下して、シャッタ46Aにより落下が阻止された状態となる。また、吸着部55Aによって吸着される錠剤5の一方面が「吸着面」となり、第一ロータリドラム47の外側を向いた錠剤5の他方面が「非吸着面」となる。
【0096】
次いで、ステップS22の撮像工程において、第一ロータリドラム47により吸着搬送される錠剤5が所定の第二ポジションP2(図6参照)に到達する所定のタイミングで撮像装置51を作動させる。これにより、撮像装置51は、第一ロータリドラム47によって吸着搬送されて第二ポジションP2を通過する錠剤5の非吸着面側を撮像する。撮像により得られた画像データは、制御装置71へと入力される。
【0097】
そして、撮像装置51によって撮像された錠剤5が、第一ロータリドラム47の回転に伴い、さらに搬送され、該第一ロータリドラム47の真下位置かつ第二ロータリドラム48の真上位置にあたる第三ポジションP3へと至ると、該錠剤5を吸着する吸着部55Aに係る通気路55Cが大気開放空間部A2と連通した状態となる。その結果、該錠剤5の吸着保持が解除される。これにより、第一ロータリドラム47の吸着部55Aから錠剤5が落下し、第三ポジションP3に位置する第二ロータリドラム48の吸着部55Aへ受け渡されることとなる。
【0098】
このとき、錠剤5を収容した第二ロータリドラム48の吸着部55Aに係る通気路55Cは負圧空間部A1と連通した状態となっているため、該錠剤5は吸着保持された状態となる。その結果、ステップS23の第二搬送工程、すなわち、第二ロータリドラム48により錠剤5を吸着しつつ、該錠剤5を搬送する工程が開始される。
【0099】
尚、第一ロータリドラム47から第二ロータリドラム48への受渡し時に、錠剤5は回転したり傾いたりすることがほとんど生じずに、ほぼ同じ姿勢で受渡される。また、第一ロータリドラム47から第二ロータリドラム48への錠剤5の受渡しにより、該錠剤5は表裏反転した状態となる。
【0100】
そして、第二ロータリドラム48に受け渡された錠剤5は、第二ロータリドラム48の回転に伴い、さらに搬送され、該第二ロータリドラム48の真下位置かつ第三ロータリドラム49の真上位置にあたる第四ポジションP4へと至ると、該錠剤5を吸着保持する吸着部55Aに係る通気路55Cが大気開放空間部A2と連通し、該錠剤5の吸着保持が解除される。
【0101】
これにより、第二ロータリドラム48の吸着部55Aから錠剤5が落下し、第四ポジションP4に位置する第三ロータリドラム49の吸着部55Aへ受け渡されることとなる。また、第四ポジションP4にて錠剤5を収容した第三ロータリドラム49の吸着部55Aに係る通気路55Cが負圧空間部A1と連通した状態となるため、該錠剤5を吸着保持した状態となる。その結果、ステップS24の第三搬送工程、すなわち、第三ロータリドラム49により錠剤5を吸着しつつ、該錠剤5を搬送する工程が開始される。
【0102】
尚、第二ロータリドラム48から第三ロータリドラム49への受渡し時に、錠剤5は回転したり傾いたりすることがほとんど生じずに、ほぼ同じ姿勢で受渡される。そのため、1の錠剤5に関し、第一ロータリドラム47によって搬送する際における非吸着面側の凹部5Fの向きや位置と、第三ロータリドラム49によって搬送する際における非吸着面側の凹部5Fの向きや位置とはほぼ同じものとなる。また、上記同様、第二ロータリドラム48から第三ロータリドラム49への錠剤5の受渡しにより、該錠剤5は表裏反転した状態となる。
【0103】
次いで、ステップS25の印刷工程が行われる。すなわち、錠剤5が、第三ロータリドラム49の回転に伴い、さらに搬送され、第五ポジションP5に到達する所定のタイミングとなると、制御装置71により設定された印刷条件に基づき、印刷装置61を作動させる。これにより、第五ポジションP5を通過する錠剤5の非吸着面の凹部5F内に印刷が施され、印刷部5Jが形成される。
【0104】
尚、制御装置71は、撮像装置51により得られた画像データに基づき印刷条件を設定する。上記の通り、1の錠剤5に関し、非吸着面側の凹部5Fの向きや位置は、第一ロータリドラム47による搬送中と、第三ロータリドラム49による搬送中とにおいてほぼ同じものとなる。そのため、撮像装置51により得られた画像データに基づく印刷条件を用いることで、第三ロータリドラム49によって搬送される錠剤5における凹部5Fの向きや位置に合わせた印刷を施すことができ、ひいては適切な印刷部5Jを形成することができる。
【0105】
その後、第三ロータリドラム49の回転に伴い、吸着部55Aに吸着保持された錠剤5は、該第三ロータリドラム49の真下位置にあたる第六ポジションP6へ向け移動する。
【0106】
そして、ステップS26の錠剤投入工程が行われる。すなわち、吸着部55Aに吸着保持された錠剤5が第六ポジションP6に到達すると、第三ロータリドラム49の外周面より突出した錠剤5の一部が、該第六ポジションP6に位置する容器フィルム3のポケット部2内に入り込む。同時に、該錠剤5を吸着している第三ロータリドラム49の吸着部55Aに係る通気路55Cが大気開放空間部A2と連通し、該錠剤5の吸着保持が解除される。これにより、第三ロータリドラム49の吸着部55Aから錠剤5がポケット部2へと落下し、ポケット部2へと錠剤5が充填されることとなる。このとき、印刷部5Jの形成された側の面(表面5B)がポケット部2と対向するように、ポケット部2へと錠剤5が充填される。
【0107】
充填工程S2に続いては、ステップS3の取着工程が行われる。取着工程S3では、前記両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれることで、容器フィルム3にカバーフィルム4が取着され、PTPフィルム6が得られる。
【0108】
そして、スリット形成装置33や刻印装置34による処理がPTPフィルム6に施された後、ステップS4の切離工程が行われることで、PTPシート1の製造工程が終了する。切離工程S4では、シート打抜装置37によりPTPフィルム6が打抜かれて、PTPフィルム6からPTPシート1が切離されることで、PTPシート1が製造される。
【0109】
以上詳述したように、本実施形態によれば、錠剤5及びポケット部2は、ポケット部2へと錠剤5を充填した状態において、設計上、錠剤5に形成された印刷部5Jとポケット部2とが接触しないような関係とされている。さらに、充填工程S2では、錠剤5の表面5B側のみに印刷部5Jが形成され、この印刷部5Jの形成された側の面(表面5B)がポケット部2と対向するように錠剤5が充填される。ここで、ポケット部2は、カバーフィルム4に比べて剛性を有する材料からなり、製造工程で生じる衝撃や振動等によって変形することはない。そのため、上記のような関係に設計することで、印刷部5Jがポケット部2に当たってしまうことをより確実に回避できる。一方、変形の懸念されるカバーフィルム4側には印刷部5Jが形成されないため、カバーフィルム4との接触に伴う印刷部5Jの擦れが生じることはない。これらの結果、印刷内容が不明瞭になることをより確実に防止でき、印刷部5Jにおける外観品質の低下抑制を効果的に図ることができる。
【0110】
また、インクが十分に乾く前にポケット部2へと錠剤5を充填することができるため、錠剤搬送速度(充填速度)の高速化(例えば1秒当たり100個以上の錠剤を包装すること)の要請に十分応えることが可能となり、ひいては生産速度の高速化を図ることができる。
【0111】
さらに、錠剤5に凹部5Fを形成することによって、印刷部5Jとポケット部2とが接触しないような関係とされている。そのため、ポケット部2の形状設計などを特段行うことなく、印刷部5Jとポケット部2とが接触しないような関係にすることが容易に可能となる。
【0112】
また、印刷装置61はインクジェット印刷装置であり、風(気流)の影響を受けることで噴射するインクが流されて、印刷品質が低下してしまうといった不具合が懸念されるところであるが、本実施形態では、凹部5F内に印刷が施されるため、錠剤5(特に凹部5Fを形成する部位)が風よけとして機能することとなる。そのため、風の影響による上記不具合の発生を効果的に抑えることができ、良好な印刷品質をより確実に得ることができる。
【0113】
加えて、本実施形態によれば、撮像工程S22にて取得した画像データを基に、印刷前に印刷対象となる錠剤5における凹部5Fの位置や向きなどを把握することができ、印刷装置61によって凹部5Fの位置や向きなどに合わせた適切な印刷を施すことができる。
【0114】
また、凹部5Fは側面5Aに非連通の状態となるため、凹部5Fの周囲全周に錠剤部分が存在した(凹部5Fの底壁面全周が囲まれた)状態となる。そのため、ポケット部2に対する印刷部5Jの接触が極めて生じにくくなり、印刷部5Jにおける外観品質の低下抑制を一層効果的に図ることができる。さらに、凹部5Fの周囲の錠剤部分による風よけとしての機能がより効果的に発揮されることとなり、風の影響による印刷不具合の発生を一層確実に防止することができる。
【0115】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0116】
(a)上記実施形態においては、凹部5F内に印刷部5Jが形成されることで、設計上、錠剤5に形成された印刷部5Jと該錠剤5の充填されたポケット部2とが接触しないような関係とされているが、その他の手法を用いることによって、このような関係となるように設計してもよい。例えば、実開昭55-1655号公報に記載された手法(ポケット部2に錠剤5よりも小さな補助ポケット部を設け、該補助ポケット部と印刷面とを対向させる手法)など、ポケット部2の構造を工夫する手法によって、上記のような関係となるように設計してもよい。この場合、錠剤5に凹部5Fを形成せずとも、本発明の効果を奏し得る。勿論、錠剤5及びポケット部2の双方を工夫することによって上記のような関係となるように設計してもよい。
【0117】
(b)上記実施形態では、錠剤5として、平面視円形状をなす円盤状の素錠(円盤形状の平錠)が例示されているが、錠剤の種別や形状等については、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば錠剤には、医薬のみならず、飲食用に用いられる錠剤なども含まれる。また、錠剤には、素錠のみならず、糖衣錠やフィルムコーティング錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠などが含まれるのは勿論のこと、硬カプセルや軟カプセルなどの各種カプセル錠なども含まれる。さらに、錠剤の形状に関しては、例えば平面視円形状のみならず、平面視多角形状、平面視楕円形状、平面視長円形状等であってもよい。
【0118】
(c)PTPシート1におけるポケット部2の配列や個数に関しては、上記実施形態(2列、10個)に何ら限定されるものではなく、例えば3列12個のポケット部を有するタイプをはじめ、様々な配列、個数からなるPTPシートを採用することができる。
【0119】
また、上記実施形態において、PTPフィルム6は、その幅方向に沿って1シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、その幅方向に沿って複数シート分に対応する数のポケット部2が配列された構成であってもよい。
【0120】
(d)錠剤5の搬送手段の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、搬送手段として円筒形状のロータリドラム47等を用いたが、これに限らず、例えば無端の搬送ベルトなどを用いた構成としてもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、錠剤5が吸着部55Aに吸着保持されている状態において、錠剤5のテーパ部5D又はテーパ部5Eが吸着部55Aの内周面に接触するように構成されているが、錠剤5の表面5B又は裏面5Cのうち凹部5Fの形成箇所を除いた部位が吸着部55Aの内周面に接触するように構成してもよい。
【0122】
(e)上記実施形態では、表面5B側及び裏面5C側のそれぞれに凹部5Fが設けられているが、表面5B側及び裏面5C側のうちの一方のみに凹部5Fを設けることとしてもよい。この場合、例えば供給シュート46に配列される錠剤5の向きを揃えること等により対応することができる。
【0123】
また、表面5B側及び裏面5C側のそれぞれに凹部5Fを設ける場合において、凹部5Fの数や形状などを表面5B側と裏面5C側とで異なるものとなるように構成してもよい。この場合、撮像装置51や印刷装置61の数や配置を適宜変更することで対応することができる。
【0124】
さらに、凹部5Fの形状は平面視矩形状に限られず、適宜変更してもよい。例えば、凹部を平面視円形状や平面視楕円形状、平面視多角形状などとしてもよい。また、錠剤5における凹部の底壁面が傾斜面状あるいは湾曲形面状をなすように構成してもよい。
【0125】
加えて、表面5B側及び裏面5C側のそれぞれに凹部を設ける場合、表面5B側の凹部と裏面5C側の凹部との位置関係を適宜変更してもよい。例えば、平面視したときに、表面5B側の凹部と裏面5C側の凹部とが重ならない位置関係となるように構成してもよい。この場合には、錠剤5の過度の薄肉化を防止することができ、充填時などにおける錠剤5の破損防止を図ることができる。
【0126】
(f)上記実施形態において、撮像装置51は、第一ロータリドラム47に対応して設けられているが、撮像装置51を第三ロータリドラム49(例えば、第四ポジションP4と第五ポジションP5との間)に対応して設け、撮像装置51によって、印刷装置61の上流に位置する錠剤5を撮像するように構成してもよい。尚、この場合には、第一ロータリドラム47及び第二ロータリドラム48を省略し、供給シュート46から第三ロータリドラム49へと錠剤5が供給されるように構成してもよい。
【0127】
また、表面5Bに設けられる凹部5Fと、裏面5Cに設けられる凹部5Fとが一定の位置関係で形成される場合には、錠剤5のうち印刷対象となる面側とは反対の面側を撮像し、得られた画像データに基づき、凹部5F内に印刷を施すときの印刷条件を設定してもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、5A…側面、5B…表面、5C…裏面、5F…凹部、5J…印刷部、6…PTPフィルム、61…印刷装置(インクジェット印刷装置)、S1…ポケット部形成工程、S2…充填工程、S3…取着工程、S4…切離工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11