(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】コネクティングロッド
(51)【国際特許分類】
F16C 7/02 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
F16C7/02
(21)【出願番号】P 2019062445
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西田 英朗
(72)【発明者】
【氏名】門脇 剛
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0216658(US,A1)
【文献】英国特許出願公告第1019803(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 7/00
F02B 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に設けられピストンピンが嵌合される小端部と、他端に設けられクランクシャフトが嵌合される大端部と、前記小端部と前記大端部とを接続するコラム部と、を備えるコネクティングロッドであって、
前記コラム部の前記大端部側に位置する一断面において、前記クランクシャフトの軸方向における前記コラム部の中央部の少なくとも一部の剛性が、前記コラム部の端部の剛性より小さ
く、
前記クランクシャフトの軸方向を前記コラム部の幅方向と定義し、
前記コラム部の幅方向の一方側の端縁を幅方向0%位置、前記コラム部の幅方向の他方側の端縁を幅方向100%位置と定義した場合に、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置における剛性の平均値が、前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置における剛性の平均値よりも小さく、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置には、前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置よりも、単位体積当たりで占有率が高い中空部が形成され、
前記コラム部の前記一断面において、前記コラム部の幅方向と直交する方向である前記コラム部の高さ方向の両側に給油孔が形成されていることを特徴とするコネクティングロッド。
【請求項2】
一端に設けられピストンピンが嵌合される小端部と、他端に設けられクランクシャフトが嵌合される大端部と、前記小端部と前記大端部とを接続するコラム部と、を備えるコネクティングロッドであって、
前記コラム部の前記大端部側に位置する一断面において、前記クランクシャフトの軸方向における前記コラム部の中央部の少なくとも一部の剛性が、前記コラム部の端部の剛性より小さく、
前記クランクシャフトの軸方向を前記コラム部の幅方向と定義し、
前記コラム部の幅方向の一方側の端縁を幅方向0%位置、前記コラム部の幅方向の他方側の端縁を幅方向100%位置と定義した場合に、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置における剛性の平均値が、前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置における剛性の平均値よりも小さく、
前記コラム部の前記大端部側には空洞が形成され、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置に形成されている前記空洞と、前記大端部の内側面との最短距離をL
1と定義し、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置に形成されている前記空洞と、前記大端部の内側面との最短距離をL
2と定義した場合に、
L
1<L
2の関係を満たし、
前記コラム部の前記一断面において、前記コラム部の幅方向と直交する方向である前記コラム部の高さ方向の両側に給油孔が形成されていることを特徴とするコネクティングロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクティングロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関などに用いられるコネクティングロッドは、クランクシャフトを支持する大端部の軸受では、冷却などを目的として供給される潤滑油の油膜を確保する必要がある。しかし、コラム部の剛性が大きいために、荷重が作用したとき軸受に局所的に高圧が負荷される領域が生じ、この領域では油膜厚が小さくなる。このため、クランクシャフトと軸受との接触による焼付きや軸受材料の疲労が問題となり、この問題は内燃機関の筒内圧の高圧化や高回転化を図る上で障害となる。
【0003】
特許文献1では、コネクティングロッドの軸線より大端部の移動方向(大端部の公転方向又は軸受の周方向)上流側の領域で軸受に供給された油膜が薄くなることを見出し、該領域に負荷される荷重を抑制するため、該領域に対応するコラム部に空隙や薄肉部を形成してコラム部の剛性を小さくすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、軸受の周方向の油膜厚のみに着目しているが、軸受の周方向と直交する方向、即ち、クランクシャフトの軸方向における油膜厚も考慮する必要があることを本発明者らは見出した。クランクシャフトの軸方向の油膜厚を確保することで、初めてクランクシャフトと軸受との接触による焼付きや軸受材料の疲労の問題を解決できる。
【0006】
本開示に係る一実施形態は、クランクシャフトの軸方向における軸受の油膜厚を確保する措置を講じることで、クランクシャフトと軸受との接触による焼付きや軸受材料の疲労の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)一実施形態に係るコネクティングロッドは、
一端に設けられピストンピンが嵌合される小端部と、他端に設けられクランクシャフトが嵌合される大端部と、前記小端部と前記大端部とを接続するコラム部と、を備えるコネクティングロッドであって、
前記コラム部の前記大端部側に位置する一断面において、前記クランクシャフトの軸方向(コラム部の幅方向)における前記コラム部の中央部の少なくとも一部の剛性が、前記コラム部の端部の剛性より小さい。
【0008】
上記(1)の構成によれば、コラム部の大端部側に位置する一断面において、クランクシャフトの軸方向におけるコラム部の中央部の少なくとも一部の剛性が、コラム部の端部の剛性より小さいため、大端部の軸受に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できる。これによって、大端部の軸受の油膜厚を確保できるため、クランクシャフトと軸受との接触による焼付きや軸受材料の疲労の問題を解決できる。従って、内燃機関の筒内圧の高圧化や高回転化を図る上で一つの障害を除くことができる。
【0009】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記クランクシャフトの軸方向を前記コラム部の幅方向と定義し、
前記コラム部の幅方向の一方側の端縁を幅方向0%位置、前記コラム部の幅方向の他方側の端縁を幅方向100%位置と定義した場合に、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置における剛性の平均値が、前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置における剛性の平均値よりも小さい。
【0010】
従来のコネクティングロッドは、コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置における剛性の平均値が、コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置における剛性の平均値より大きくなることが確認され、局所的高圧が発生しやすくなっている。上記(2)の構成によれば、コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置における剛性の平均値が、コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置における剛性の平均値よりも小さいため、大端部の軸受に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できる。これによって、大端部の軸受の油膜厚を確保できる。
【0011】
(3)一実施形態では、前記(2)の構成において、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置には、前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置によりも、単位体積当たりで占有率が高い中空部が形成されている。
上記(3)の構成によれば、コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置に他の位置より、単位体積当たりで占有率が高い中空部が形成されることで、コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置の剛性を他の位置の剛性より小さくできる。これによって、大端部の軸受に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、大端部の軸受の油膜厚を確保できる。
【0012】
(4)一実施形態では、前記(2)の構成において、
前記コラム部の前記大端部側には空洞が形成され、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置に形成されている前記空洞と、前記大端部の内側面との最短距離をL1と定義し、
前記コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置に形成されている前記空洞と、前記大端部の内側面との最短距離をL2と定義した場合に、
L1<L2の関係を満たす。
空洞が大端部の内側面に近いほど、コラム部の剛性は小さくなる。上記(4)の構成によれば、L1<L2とすることで、コラム部の幅方向40%以上60%以下の位置の剛性を他の位置より小さくできる。これによって、大端部の軸受に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、大端部の軸受の油膜厚を確保できる。
【0013】
(5)一実施形態では、前記(3)又は(4)の構成において、
前記コラム部の前記一断面において、前記コラム部の高さ方向の両側に給油孔が形成される。
上記(5)の構成によれば、コラム部の一断面において、中空部や空洞の両側であって中空部や空洞が形成されていないコラム部の高さ方向(幅方向と直交する方向)の両側に、中空部や空洞と干渉させることなく、給油孔を形成することができる。これにより、1本しか給油孔が形成されていない場合と比べて、クランクシャフトの軸受及びピストンピンの軸受に十分な量の潤滑油を供給することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
幾つかの実施形態によれば、コラム部の幅方向(クランクシャフトの軸方向)において、大端部の軸受に局所的に高圧が負荷されるのを抑制できるため、軸受の油膜厚を確保でき、クランクシャフトと軸受との焼付きや軸受材料の疲労を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】内燃機関のエンジンブロックの一部を概略的に示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係るコネクティングロッドの正面図である。
【
図3】従来及び一実施形態に係るコネクティングロッドの大端部の軸受に負荷される圧力分布を示す線図である。
【
図4】従来のコネクティングロッドの一例を示す横断面図である。
【
図6】
図2に示すコネクティングロッドのコラム部の剛性を示す線図である。
【
図8】一実施形態に係るコネクティングロッドのコラム部の横断面図である。
【
図9】
図8に示すコネクティングロッドのコラム部の剛性を示す線図である。
【
図10】一実施形態に係るコネクティングロッドの横断面図である。
【
図11】一実施形態に係るコネクティングロッドの正面図である。
【
図12】
図11に示すコネクティングロッドの縦断面図である。
【
図14】一実施形態に係るコネクティングロッドの縦断面図である。
【
図15】
図14に示すコネクティングロッドの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0017】
図1は、内燃機関のエンジンブロックの一例を部分的かつ概略的に示す図である。
図1において、コネクティングロッド1の小端部にピストン3のピストンピン3a(
図2参照)が嵌合し、コネクティングロッド1の大端部にクランクシャフト5を構成するクランクピン5aが嵌合している。クランク主軸5cはクランクアーム5bを介してクランクピン5aと一体に形成され、エンジンブロック7に設けられた主軸受9に回転自在に支持されている。
【0018】
図2は、一実施形態に係るコネクティングロッド10(10A)を示す。コネクティングロッド10(10A)は、両端に小端部12と大端部14とを備える。小端部12にピストンピン3aが嵌合し、大端部14にクランク主軸5cが嵌合する。小端部12と大端部14とはコラム部16を介して結合されるか又は一体に製造される。小端部12の中心部に貫通孔が形成され、該貫通孔にピストンピン3aを回転自在に支持する軸受18が密嵌されている。大端部14の中心部にも貫通孔が形成され、該貫通孔にクランク主軸5cを回転自在に支持する軸受20が密嵌されている。コネクティングロッド10(10A)は、コラム部16の大端部側に位置する一横断面において、クランクシャフト5の軸方向におけるコラム部16の中央部の少なくとも一部の剛性が、コラム部16の端部の剛性より小さくなるように構成されている。コネクティングロッド10(10A)において、上記「コラム部16の大端部側に位置する一横断面」とは、例えば、A―A線上の横断面を示す。
【0019】
上記構成によれば、コラム部16の大端部14側に位置する一断面において、クランクシャフト5の軸方向におけるコラム部16の中央部の少なくとも一部の剛性が、コラム部16の端部の剛性より小さいため、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できる。これによって、軸受20の油膜厚を確保できるため、クランクピン5aと軸受20との接触による焼付きや軸受材料の疲労の問題を解決できる。従って、内燃機関の筒内圧の高圧化や高回転化を図る上で一つの障害を除くことができる。
本明細書において、「クランクシャフト5の軸方向」とは、クランクピン5a及びクランク主軸5cの軸方向でもあり、本明細書では、コラム部16の幅方向と定義する。即ち、
図5、
図8及び
図10中の矢印w方向である。
【0020】
剛性は、軸剛性の場合、次の式で定義される。
kN=N/δN=E・A/L
ここで、kN:軸剛性、N:軸に加わる軸方向力、δN:軸の軸方向変形、E:軸のヤング率、A:軸の断面積、L:軸の長さ。
【0021】
一実施形態では、コラム部16の大端部側に位置する一断面において、幅方向におけるコラム部16の中央部の少なくとも一部の部位をヤング率が小さい第1材料で構成し、コラム部16の端部側の部位を第1材料よりヤング率が大きい第2材料で構成する。こうした二重構造を採用することで、コラム部16の中央側部位の剛性を端部側部位の剛性より小さくすることができる。
【0022】
図3は、コラム部16の幅方向を横軸とし、コネクティングロッドに作用する荷重によって軸受20に負荷される圧力を縦軸に取ったグラフである。
図3において、コラム部16の幅方向の一方側の端縁を幅方向0%位置と定義し、コラム部16の幅方向の他方側の端縁を幅方向100%位置と定義する。同図において、曲線Aは一実施形態に係るコネクティングロッド10の大端部14の軸受20に負荷される圧力であり、曲線Bは、
図4に示すH形の横断面を有する従来のコネクティングロッド100の大端部の軸受に負荷される圧力の一例を示す。
【0023】
曲線Aで示される実施形態は、コラム部16の幅方向40~60%位置における剛性の平均値が、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置における剛性の平均値よりも小さい。一方、コネクティングロッド100は、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置における剛性の平均値が、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置における剛性の平均値より大きくなることが確認されている。
本実施形態によれば、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置における剛性の平均値が、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置における剛性の平均値よりも小さいため、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できる。これによって、軸受20の油膜厚を確保できる。
【0024】
図5は、
図2中のA―A線に沿う横断面図であり、
図8及び
図10は、夫々別な実施形態において、A―A線に沿う横断面図に相当する横断面図である。
幾つかの実施形態では、
図5~
図10に示すように、コラム部16の大端部14側に位置する一横断面において、中空部22(22a、22b、22c)が形成されている。中空部22(22a~22c)は、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置に、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置よりも、単位体積当たりで中空部の占有率が高くなるように形成されている。この実施形態によれば、中空部22が形成されているため、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置の剛性を他の位置の剛性より小さくできる。これによって、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
【0025】
一実施形態では、
図2に示すように、中空部22はコラム部16又は大端部14において軸受20の近傍に形成される。中空部22が軸受20に近いほど中空部22が形成されるコラム部16の剛性を低減でき、これによって、軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できる。
【0026】
図5に示す実施形態では、コラム部16の横断面の幅方向中央部において、1個の中空部22(22a)が形成される。中空部22(22a)は長方形の横断面を有する。
図6は、中空部22(22a)が形成されたコラム部16の幅方向の剛性の分布を示す。この実施形態では、コラム部16の幅方向25%以上75%以下の位置に中空部22(22a)が形成されるため、コラム部16の幅方向20%以上80%以下の位置で剛性を低減できる。これによって、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制でき、これによって、軸受20の油膜厚を確保できる。
図5に示す実施形態では、中空部22(22a)は長方形の横断面を有するが、中空部22(22a)の横断面は、コラム部16の横断面に合わせて、あるいは合わせることなく適宜に変更でき、例えば、正方形、その他の角形、円形又は楕円形であってもよい。
【0027】
図5に示す実施形態では、中空部22(22a)は、コラム部16の高さ方向(幅方向と直交する方向、即ち、
図5中の矢印h方向)において、10%以上90%以下の位置に形成される。従って、コラム部16の高さ方向5%以上95%以下の位置で剛性を低減できる。中空部22(22a)を形成することで、コラム部16の幅方向及び高さ方向において、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を効果的に抑制でき、そのため、軸受20の油膜厚を確保できる。
【0028】
一実施形態では、
図7に示すように、中空部22(22a)はコラム部16の軸方向に沿って小端部12側まで延在している。このように、中空部22(22a)をコラム部16の軸方向に沿って小端部12側まで延在することで、大端部14側のみに限定的に中空部が形成される場合と比べて、さらに、コラム部16の剛性を低減できる。従って、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を効果的に抑制できる。
【0029】
一実施形態では、
図8に示すように、A―A線に沿う横断面に相当する横断面において、複数の中空部群で構成される中空部22(22b)が形成される。この実施形態では、コラム部16の幅方向15%以上85%以下の位置に中空部22(22b)が形成される。これによって、
図9に示すように、コラム部16の幅方向で10%以上90%以下の位置で剛性を低減できる。従って、中空部22(22b)を形成することで、コラム部16の幅方向において、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
図8に示す実施形態では、中空部22(22b)を構成する個々の中空部は円形の横断面を有する。但し、該横断面の形状は円形に限定されず、例えば、楕円形、角形、その他の形状であってもよい。
【0030】
一実施形態では、
図10に示すように、
図2中のA―A線に沿う横断面に相当する横断面において、複数の中空部群で構成される中空部22(22c)が形成され、コラム部16の幅方向において、中空部22(22c)の分布が幅方向中央部で密に、端部側で疎に配置される。即ち、幅方向中央部で端部側より単位体積当たりで中空部の占有率が高くなるように形成されている。これによって、コラム部16の幅方向中央部の剛性を幅方向端部側の位置の剛性より小さくできる。従って、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
【0031】
一実施形態では、
図10に示すように、コラム部16の幅方向において、中央部で大径の中空部群24が密に形成され、端部側で小径の中空部群26が疎に形成される。これによって、幅方向中央部で端部側より単位体積当たりで中空部の占有率がさらに高くなり、コラム部16の幅方向中央部の剛性を幅方向端部側の位置の剛性より小さくできる。従って、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
一実施形態では、複数の中空部群は、ハニカム構造又はラティス構造で構成される。
【0032】
図10に示す実施形態では、
図8及び
図9に示す実施形態と同様に、コラム部16の幅方向15%以上85%以下の位置に中空部22(22c)が形成される。これによって、コラム部16の幅方向で10%以上90%以下の位置で剛性を低減できる。従って、コラム部16の幅方向において、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
一実施形態では、中空部22(22c)を構成する個々の中空部の横断面の形状は、中空部22(22b)と同様に、円形に限定されず、例えば、楕円形、角形、その他の形状であってもよい。
【0033】
図8に示す実施形態では、コラム部16の高さ方向(矢印h方向)において、15%以上85%以下の位置に中空部22(22b)が形成される。従って、コラム部16の高さ方向10%以上90%以下の位置で剛性を低減できる。また、
図10に示す実施形態では、コラム部16の高さ方向において、10%以上90%以下の位置に中空部22(22c)が形成される。従って、コラム部16の高さ方向5%以上95%以下の位置で剛性を低減できる。従って、中空部22(22b、22c)を形成することで、コラム部16の幅方向及び高さ方向において、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を効果的に抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
【0034】
図11~
図13は別な実施形態に係るコネクティングロッド10(10B)を示し、
図14~
図16はさらに別な実施形態に係るコネクティングロッド10(10C)を示す。
図11はコラム部16の幅方向から視た正面図であり、
図12はコラム部16の幅方向(矢印w方向)の縦断面図であり、
図13は
図12中のC―C線に沿う横断面図である。
図14はコラム部16の幅方向から視た正面図であり、
図15はコラム部16の幅方向(矢印w方向)の縦断面図であり、
図16は
図15中のD―D線に沿う横断面図である。
【0035】
コネクティングロッド10(10B、10C)は、コラム部16の大端部14側に空洞23(23a、23b)が形成されている。これらの空洞23は、高さ方向(矢印h方向)に沿うコラム部16の表裏面に開口する開口が形成されている。そして、空洞23は、コラム部16の大端部14側の一横断面(例えば、C-C線上の横断面又はD-D線上の横断面)において、少なくともコラム部16の幅方向で40%以上60%以下の位置に形成されている。空洞23(正確には重心Gの位置)と、大端部14の内側面(軸受20の内周面20a)との最短距離をL1とし、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置を除いた他の位置に形成されている空洞23と、大端部14の内周面(軸受20の内周面20a)との最短距離をL2とすると、空洞23の形状は、L1<L2を満たす。
【0036】
これらの実施形態によれば、空洞23の形状がL1<L2を満たすことで、コラム部16の幅方向40%以上60%以下の位置の剛性を他の位置より小さくできる。これによって、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
【0037】
図11~
図16に示す実施形態では、空洞23(23a、23b)はコラム部16の幅方向表裏面に開口しているため、コラム部16の幅方向全域で剛性を小さくできる。これによって、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
【0038】
図11~
図13に示すコネクティングロッド10(10B)は、幅方向縦断面において、空洞23(23a)はコラム部16の軸方向に沿う中心線Oを中心に左右対称の形状を有する四角形縦断面29a及び29bを形成している。空洞23(23a)の縦断面を形成する上辺30a、30b及び下辺34a及び34bは、互いに略平行で、かつ幅方向中心に向かって下方へ傾斜する直線で構成されている。上辺30a、開口32a及び下辺34aで囲まれる四角形縦断面29a、及び上辺30b、開口32b及び下辺34bで囲まれる四角形縦断面29bは、夫々平行四辺形を形成している。
【0039】
図14~
図16に示すコネクティングロッド10(10C)は、幅方向縦断面において、空洞23(23b)がコラム部16の軸方向に沿う中心線Oを中心に左右対称の形状を有している。空洞23(23b)の横断面は、3つの四角形縦断面36,38及び40が中心線Oの方向に沿って重なり合った形状を有している。上段四角形と下段四角形は幅方向でほぼ同じ長さを有し、中段四角形の幅方向長さは上段四角形及び下段四角形の幅方向長さより長い。
【0040】
コネクティングロッド10(10B、10C)は、
図13及び
図16に示すように、空洞23(23a、23b)が形成されることで、コラム部16の高さ方向において、コラム部16の中央部の剛性が他の部位の剛性より小さく構成され、20%以上80%以下の位置に空洞23が形成される。従って、コラム部16の高さ方向15%以上85%以下の位置で剛性を低減できる。従って、空洞23を形成することで、コラム部16の幅方向及び高さ方向において、大端部14の軸受20に負荷される局所的な高圧力の発生を効果的に抑制できるため、軸受20の油膜厚を確保できる。
【0041】
一実施形態では、上記各実施形態を示す各図に示すように、中空部22(22a~22c)又は空洞23(23a、23b)が形成されたコラム部16の少なくとも一断面(例えば、上記A―A線上、C―C線上又はD―D線上の横断面)において、中空部22又は空洞23が形成されていない領域であって、コラム部16の高さ方向の両側領域に給油孔28a及び28bが形成されている。
この実施形態によれば、中空部22又は空洞23と干渉せずに少なくとも2本の給油孔28a及び28bを形成できるため、1本の給油孔しか形成されない場合と比べて、軸受18及び20に十分な量の潤滑油を供給できる。
【0042】
また、上記各実施形態に係る中空部22又は空洞23が形成されたコラム部16の横断面は矩形を有するので、コラム部16がH形横断面を有する従来のコネクティングロッド100と比べて、給油孔を形成するためのスペースを確保しやすい。
【0043】
一実施形態では、中空部22又は空洞23が形成されたコラム部16の横断面は矩形断面(正方形断面又は長方形断面)を有し、中空部22又は空洞23が形成されていないコラム部16の横断面はH形断面を有する。この実施形態によれば、中空部22又は空洞23が形成されていないコラム部16の横断面をH形横断面とすることで、コラム部16の強度を保持しつつ、コラム部16の構成を簡素化できる。また、この実施形態では、H形横断面部分では横断面の面積が狭いので、1本のみの給油孔を形成し、中空部22又は空洞23が形成された矩形の横断面部分では、該1本の給油孔を2本の給油孔に分岐させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
幾つかの実施形態によれば、クランクシャフトの軸方向(コラム部の幅方向)において軸受に負荷される荷重分布を考慮して、軸受の油膜厚を確保する措置を講じることで、クランクシャフトと軸受との接触による焼付きや軸受材料の疲労の問題を解決できる。
【符号の説明】
【0045】
1、10(10A、10B、10C)、100 コネクティングロッド
3 ピストン
3a ピストンピン
5 クランクシャフト
5a クランクピン
5b クランクアーム
5c クランク主軸
7 エンジンブロック
9 主軸受
12 小端部
14 大端部
16 コラム部
18、20 軸受
20a 内周面
22(22a、22b、22c) 中空部
23(23a、23b) 空洞
24、26 中空部群
28 給油孔
29a、29b、36、38、40 四角形縦断面
O 中心線
h 高さ方向
w 幅方向