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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】耐擦傷性材料およびそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/42 20060101AFI20220606BHJP
   C03C 17/22 20060101ALI20220606BHJP
   C01B 21/068 20060101ALI20220606BHJP
   C01B 21/082 20060101ALI20220606BHJP
   C01B 21/083 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C23C16/42
C03C17/22 Z
C01B21/068 Y
C01B21/068 N
C01B21/082 C
C01B21/082 L
C01B21/083
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019233136
(22)【出願日】2019-12-24
(62)【分割の表示】P 2017505500の分割
【原出願日】2015-07-31
(65)【公開番号】P2020050962
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-01-21
(31)【優先権主張番号】62/032,073
(32)【優先日】2014-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/068,853
(32)【優先日】2014-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/120,466
(32)【優先日】2015-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ケイヴェ アディーブ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アラン ベルマン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ アンドリュー ポールソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ジョセフ プライス
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-514746(JP,A)
【文献】XIANGDONG XU,Chemical control of physical properties in silicon nitride films,Applied Physics A,2013年,Vol.111,P.867-876
【文献】I.V.AFANASYEV-CHARKIN,Hard Si-N-C films with a tunable band gap produced by pulsed glow discharge deposition,Surface & Coatings Technology,vol.199,p.38-42
【文献】HUI LIN CHANG,Characteristics of Si-C-N films deposited by microwave plasma CVD on Si wafers with various buffer l,Diamond and Related Materials,2001年,vol.10,p.1910-1915
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/42
C03C 17/22
C01B 21/068
C01B 21/082
C01B 21/083
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
35原子%以上の量の、ケイ素と
1原子%~30原子%の範囲の量の水素と、
さらに、7.5原子%までのゼロではない量の酸素、10原子%までのゼロではない量の炭素、および5原子%までのゼロではない量のフッ素、のいずれか1つ以上を含み、
50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによって測定した場合、17GPa以上の最大硬度を示し、かつ、
3.5eV以上の光学バンドギャップを示すことを特徴とする、コーティング材料。
【請求項2】
30原子%以上の量の窒素をさらに含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング材料。
【請求項3】
15原子%~28原子%の範囲の量の水素をさらに含んでなることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項4】
632nmの波長において1.8~2.1の範囲の屈折率をさらに示すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項5】
0.8以上の窒素の量(原子%)対ケイ素の量(原子%)の組成比、ならびに
0.2未満の炭素(原子%)、酸素(原子%)およびフッ素(原子%)の合計量対アニオンの量(原子%)の組成比
をさらに含んでなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項6】
632nmの波長において0.2以下の吸光係数をさらに示すことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【請求項7】
主要表面を有する基板と、
請求項1~のいずれか一項に記載のコーティング材料を含んでなるコーティングと
を含んでなる物品において、
前記物品が、400nm~800nmの範囲の光学波長域において85%以上の平均透過率を示すことを特徴とする、物品。
【請求項8】
前記コーティングが施された表面において測定した場合、基準点から2未満の基準点色シフトを示す、国際照明委員会の光源下で直角入射での(L、a、b)測色系における物品透過率色座標、ならびに
前記表面において測定した場合、基準点から5未満の基準点色シフトを示す、国際照明委員会の光源下で直角入射での(L、a、b)測色系における物品反射率色座標
の1つ以上を示し、
前記基準点が色座標(a=0、b=0)、色座標(a=-2、b=-2)および前記基板の反射率色座標の少なくとも1つを含んでなり、
前記基準点が色座標(a=0、b=0)である場合、前記基準点色シフトは、√((a 物品+(b 物品)によって定義され、
前記基準点が色座標(a=-2、b=-2)である場合、前記基準点色シフトは、√((a 物品+2)+(b 物品+2))によって定義され、かつ
前記基準点が前記基板の色座標である場合、前記基準点色シフトは、√((a 物品-a 基板+(b 物品-b 基板)によって定義されることを特徴とする、請求項に記載の物品。
【請求項9】
Aシリーズ光源、Bシリーズ光源、Cシリーズ光源、Dシリーズ光源およびFシリーズ光源からなる群から選択される国際照明委員会の光源下、参照入射照明角度を参照して、20度以上の入射照明角度において5以下の角度色シフトを示し、角度色シフトが、次の等式:√((a -a +(b -b )(式中、a およびb は、参照入射照明角度において見た場合の物品の座標を表し、a およびb は、入射照明角度において見た場合の物品の座標を表す)を使用して計算され、かつ前記参照入射照明角度が6度であることを特徴とする、請求項または請求項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下、2015年2月25日出願の米国仮特許出願第62/120,466号、2014年10月27日出願の米国仮特許出願第62/068,853号、および2014年8月1日出願の米国仮特許出願第62/032,073号の優先権の利益を主張する。上記米国仮特許出願の内容は依拠され、かつ参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、耐久性および/または耐擦傷性コーティング材料ならびにそれを含む物品、特に高い硬度および広い光学バンドギャップを示すコーティング材料ならびにそれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0003】
透明基板は、スマートフォンおよびタブレットなどの家庭電化製品のディスプレイにしばしば使用される。建築、自動車、器具などの他の応用も可能である。そのような使用に関して、基板は、耐摩擦性、耐擦傷性であるべきであり、かつ許容範囲内の光学透明度ならびに(透過率および/または反射率における)色点を提供するべきである。加えて、ディスプレイにおいて使用される場合、基板は、電力利用を最小にするために光吸収を最小にするべきであり、それによって、ポータブルデバイスのバッテリー寿命を延長させる。また、基板は、ディスプレイが明るい周辺光において読み取り可能となるように、最小の光反射率を示すべきである。さらに、ディスプレイにおける色が視角の範囲を越えて正確に提示されるように、透過率および反射率も最適化されるべきである。
【0004】
これらの望ましい特性の少なくとも1つ以上を強化するために、基板の表面上への硬質コーティングの適用が試みられている。そのようなコーティングは、物理的蒸着(PVD)プロセスを使用して形成可能であり、かつ、これらは、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムおよび酸窒化ケイ素アルミニウムなどのアルミニウムベースの材料を含むことができる。そのような材料は、高い硬度、ならびに光学透明度および無色性を示すが、そのような材料と関連するプロセス限界があり得る。
【0005】
既知のスパッタリングされたか、またはPVDによって形成されたケイ素ベースの材料としては、化学量論的N/Si=1.33において、約22ギガパスカル(GPa)の硬度を示し得る、水素を含まないSiNxが含まれる。既知のRFスパッタリングSiNxフィルムは、約93%の密度および約25GPaの硬度を示した。そのようなスパッタリングケイ素ベースの材料は、長い析出時間を必要とすることに留意すべきである。さらに、そのような材料は、約1原子%未満の水素を含み、かつ劣等の光学特性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
認識された選択肢は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)を含む化学蒸着(CVD)による、耐久性および/または耐擦傷性材料の形成である。したがって、CVDおよびPECVD法を含む種々の方法によって形成され得、かつ高い硬度、光学透明度および無色性を示す耐久性および/または耐擦傷性コーティング材料を供給する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、高い硬度および広い光学バンドギャップ(例えば、約3.5eV以上)を示すコーティング材料に関する。コーティング材料は、ケイ素、アルミニウム、窒素、酸素、水素、炭素、ホウ素およびフッ素のいずれか1種以上を含み得る。1つ以上の特定の実施形態において、コーティング材料はケイ素を含み得、かつケイ素ベースであると特徴づけられてよい。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、約150GPa以上のヤング率を示し得る。コーティング材料の層の圧縮応力は、約-400メガパスカル(MPa)以上であり得る。
【0008】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによって測定した場合、約17GPa以上(または約19GPa以上)の最大硬度を示す。1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約3.5eV以上の(例えば、約3.5eV~約5.5eVの範囲の)光学バンドギャップを示す。コーティング材料は、約632ナノメートル(nm)の波長において約1.8~約2.1の範囲の屈折率を示し得る。
【0009】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約35原子%以上の、または約37原子%~約50原子%の範囲の量のケイ素、アルミニウムまたはそれらの組合せを含む。コーティング材料は、水素、ならびに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素のいずれか1種以上も含み得る。水素は、いくつかの実施形態において、約1原子%~約30原子%の範囲の量で存在し得る。窒素は、約30原子%以上(例えば、約30原子%~約45原子%の範囲)の量で存在し得る。コーティング材料が窒素および水素を含む場合、水素は、約15原子%~約28原子%の範囲の量で存在し得る。コーティング材料は、約7.5原子%以下のゼロではない量の酸素、約10原子%以下のゼロではない量の炭素、約5原子%以下のゼロではない量のフッ素、約10原子%以下のゼロではない量のホウ素またはそれらの組合せを含み得る。
【0010】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約0.8以上の窒素の量(原子%)対ケイ素の量(原子%)の組成比を含む。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、約0.2未満の炭素(原子%)、酸素(原子%)およびフッ素(原子%)の合計量対アニオンの量(原子%)の組成比を含む。
【0011】
本開示の第2の態様は、主要表面を有する基板と、主要表面上に配置されて、コーティングされた表面を形成するコーティング構造とを含む物品に関する。コーティング構造は、本明細書に記載される材料の実施形態の層を含む。1つ以上の実施形態の物品は、約3.5eV以上の光学バンドギャップを示し、かつ約50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによってコーティングされた表面上で測定した場合、約17GPa以上(約35GPaまで)の硬度を示す。いくつかの実施形態の物品は、約400nm~約800nmの範囲の光学波長域において約85%以上(または約92%以上)の平均透過率を示す。
【0012】
1つ以上の実施形態のコーティング構造は、1つ以上の追加の層を含み得る。コーティング構造の厚さは、約5マイクロメートル(μm)までであり、かつそれを含み得る(例えば、約10nm~約500nm、約500nm~約1000nm、または約1000nm以上)。コーティング構造および/または層は、化学蒸着構造またはプラズマ強化化学蒸着構造として特徴づけられ得る。
【0013】
1つ以上の実施形態の物品は、コーティングされた表面において測定した場合、参照点から約2未満の参照点色シフトを示す(L、a、b)測色系における物品透過率色座標、および/または表面において測定した場合、参照点から約5未満の参照点色シフトを示す(L、a、b)測色系における物品反射率色座標を示す。参照点は、色座標(a=0、b=0)、色座標(a=-2、b=-2)および基板の反射率色座標の少なくとも1つを含み得る。
【0014】
1つ以上の実施形態の物品は、Aシリーズ光源、Bシリーズ光源、Cシリーズ光源、Dシリーズ光源およびFシリーズ光源からなる群から選択される国際照明委員会の光源下、参照入射照明角度から20度以上の入射照明角度において約5以下の角度色シフトを示し、角度色シフトが、次の等式:√((a -a +(b -b )(式中、a およびb は、参照入射照明角度において見た場合の物品の座標を表し、a およびb は、入射照明角度において見た場合の物品の座標を表す)を使用して計算される。
【0015】
本開示の第3の態様は、本明細書に記載のコーティング材料の形成方法に関する。この方法は、チャンバーに供給源ガスを導入するステップと、基板上で化学蒸着によってコーティング材料を形成するステップとを含んでなり、コーティング材料が、約3.5eV以上の光学バンドギャップ、および約50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによって測定した場合、約17GPa以上の硬度を示す。1つ以上の実施形態において、供給源ガスは、ケイ素供給源ガス、アルミニウム供給源ガスおよび窒素供給源ガスのいずれか1種以上を含むことが可能である。ケイ素供給源ガスはシランを含み得る。窒素供給源ガスは、窒素、酸化窒素、アンモニアまたはそれらの組合せを含み得る。1つ以上の実施形態の方法は、水素供給源ガス、酸素供給源ガス、炭素供給源ガス、ホウ素供給源ガス、フッ素供給源ガスまたはそれらの組合せを導入するステップをさらに含み得る。水素供給源ガスは、シラン、水素またはそれらの組合せを含み得る。炭素供給源ガスは、一酸化炭素、二酸化炭素、アセチレン、ブタン、メタンまたはそれらの組合せを含み得る。フッ素供給源ガスは、四フッ化ケイ素、フルオロカーボンまたはそれらの組合せを含み得る。
【0016】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約400℃以下の温度において形成され得る。この方法は、材料が形成される時、コーティング材料およびチャンバーの部分のいずれか一つ以上を選択的にエッチングするステップを任意選択的に含み得る。
【0017】
追加的な特徴および利点は、以下の詳細な説明において明らかにされるであろう。そして一部において、これらは、その記載から当業者に容易に明白になるか、または請求項ならびに添付の図面が続く詳細な説明を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0018】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、単なる代表であって、かつ請求の範囲の性質および特徴を理解するための概観または骨組みを提供することが意図されることは理解されるはずである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、かつ本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する。図面は1つ以上の実施形態を例示し、かつ説明と一緒になって、種々の実施形態の原理および操作を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】インデント深さの関数としての、Berkovichインデンターを用いて測定した場合の硬度を例示する図である。
図2】1つ以上の実施形態による、基板と、基板上に配置された材料の層を含む物品の側面図である。
図3A】層上に配置された追加の層を有する、図1の物品の側面図である。
図3B】追加の層が層と基板との間に配置されている、図1の物品の側面図である。
図3C】第1の追加の層が層上に配置され、かつ第2の追加の層が層と基板との間に配置されている、図1の物品の側面図である。
図4】層中の窒素(原子%)対ケイ素(原子%)の比率の関数としての実施例1A~1Fの層の測定された硬度を示すグラフである。
図5】実施例1A~1Fの層の窒素含有量(原子%)の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図6】実施例1A~1Fの層のケイ素含有量(原子%)の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図7】実施例1A~1Fの層のアニオンの酸素、炭素およびフッ素分率の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図8】実施例1A~1Fの層の水素含有量(原子%)の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図9】実施例1A~1Fの層の測定された光学バンドギャップの関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図10】実施例1Aおよび1C~1Fの層の632nmの波長における屈折率の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図10A】実施例1A~1Dの層の632nmの波長における屈折率の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図11】実施例1A~1Fの層の測定された光学バンドギャップの関数としての632nmの波長における測定された屈折率を示すグラフである。
図12】実施例2A~2Dの層の窒素(原子%)対ケイ素(原子%)の組成比の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図13】実施例2B~2Dの層におけるフッ素、酸素および炭素(原子%)の量の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図14】実施例2A~2Dの層の632nmの波長における測定された屈折率の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図15】200グラムの負荷においてVickersインデンダーによるインデンテーション後の実施例4Eおよび比較例4Iの光学顕微鏡写真を示す。
図16】1000グラムの負荷においてVickersインデンダーによるインデンテーション後の実施例4Eおよび比較例4Iの光学顕微鏡写真を示す。
図17】実施例2A-1~2A-9および6A~6Fの層の632nmの波長における屈折率の関数としての測定された硬度を示すグラフである。
図18】実施例7の物品の透過率および反射率スペクトルである。
図19】実施例8の物品の透過率および反射率スペクトルである。
図20】実施例9の物品の透過率および反射率スペクトルである。
図21】実施例10の物品の透過率および反射率スペクトルである。
図22A】実施例10の透過電子鏡検法(TEM)イメージである。
図22B】実施例10の透過電子鏡検法(TEM)イメージである。
図22C】実施例10の透過電子鏡検法(TEM)イメージである。
図22D】実施例10の透過電子鏡検法(TEM)イメージである。
図22E】実施例10の透過電子鏡検法(TEM)イメージである。
図23】実施例10のコーティング構造の全厚さのエネルギー分散型X線分光法(EDS)スペクトルである。
図24】実施例10のコーティング構造の最初の600nmの厚さのEDSスペクトラムである。
図25】実施例10のコーティング構造の最初の400nmの厚さのEDSスペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、種々の実施形態が詳細に参照される。その実施例は、添付の図面において例示される。
【0021】
本開示の第1の態様は、Berkovich Indenter Test(本明細書に記載される)によって測定した場合、約17GPa以上の硬度を示すコーティング材料に関する。1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約3.5eV以上の光学バンドギャップを示す。いくつかの実施形態のコーティング材料は、光学波長域において、低い吸収(すなわち、約0.001未満のk値)ならびに高い透過率および低い反射率値を示し得る。本明細書で使用される場合、「光学波長域」には、約400nm~約800nmの波長範囲が含まれる。本明細書で使用される場合、コーティング材料またはコーティング材料を組み込む層の光学バンドギャップ、厚さおよび屈折率値は、n&k Technology,Inc.(所在地、80 Las Colinas Lane,San Jose,CA 95119)によって供給されるn&k分析器を使用して測定した。本明細書に記載される反射率およびと透過率スペクトルまたは値は、A.R.ForouhiおよびI.Bloomer,Physical Review B,34(10)7018(1986)による非晶質誘電体のForouhi-Bloomerモデルによって適合された。
【0022】
本明細書に記載されるコーティング材料は、既知のケイ素ベースの材料から識別されることが可能である。例えば、Siは、高い硬度値を達成することができる既知の高温セラミックであるが、そのような材料がPECVDによって形成される場合、それらは、しばしば、約17GPa未満の硬度値を示す。さらに、PECVD法によって形成された窒化ケイ素材料は、組成Siを有さず、むしろ、実質的な量の水素(すなわち、約30原子%まで)がSi-H、Si-H、N-H種として組み込まれる組成SiHを有する。水素は、PECVD析出プロセスで使用される前駆体によって導入される。例えば、PECVD形成SiNのための最も一般的なプロセスは、250℃~400℃におけるSiH+NH→SiHを含む。
【0023】
それらが硬度、光学バンドギャップおよび低い応力の必要とされる属性の1つ以上を欠如しているため、典型的なPECVD形成窒化ケイ素材料は、透明基板用の耐擦傷性層として不適当である。典型的な半導体窒化物フィルムは、低い光学バンドギャップ(例えば、約3eV以下)のため、黄色の外観を有する。さらに、フラットパネルディスプレイ用に使用される典型的な窒化ケイ素材料は、約1.85の屈折率および約4eVの光学バンドギャップで、透明であり得るが、そのような材料は約10GPa~約15GPaの範囲の硬度値を有する。
【0024】
本明細書に記載されるコーティング材料は、元素の特定の組合せ(およびそのような元素の相対量)、ならびに他の結合以上の特定の結合の増加を提供することによって、硬度および種々の光学特性を最大化する。例えば、本明細書に記載されるように、1つ以上の実施形態のコーティング材料は、他の化学結合以上にSi-N結合を最大化する。
【0025】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、ケイ素および水素を含み得る。コーティング材料は、酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素の1種以上も含み得る。いくつかの実施形態において、(ケイ素に加えて、またケイ素の代わりに)アルミニウムも含み得る。
【0026】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約35原子%以上の量のケイ素を含み得る。特定の実施形態において、ケイ素の量は、原子%で、約35~約60、約35~約58、約35~約56、約35~約54、約35~約52、約35~約50、約35~約48、約35~約46、約35~約50、約36~約50、約37~約50、約38~約50、約39~約50、約40~約50、約41~約50、約42~約50、約43~約50、約44~約50、約45~約50、約46~約50、約47~約50、約35~約49、約35~約48、約35~約46、約35~約44、約35~約48、約35~約47、約35~約46、約35~約46、約35~約45、約37~約45、約37~約44または約37~約43の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲である。
【0027】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約1原子%~約30原子%の範囲の量の水素を含み得る。いくつかの実施形態において、水素の量は、原子%で、約1~約29、約1~約28、約1~約27、約1~約26、約1~約25、約1~約24、約1~約22、約1~約20、約1~約18、約1~約16、約1~約14、約1~約12、約2~約30、約4~約30、約6~約30、約8~約30、約10~約30、約12~約30、約14~約30、約15~約30、約16~約30、約18~約30、約20~約30、約10~約28、約12~約28、約14~約28または約15~約28の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲である。
【0028】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料の水素分含有量は、典型的に、酸素を実質的に含まないコーティング材料の実施形態と比較して、酸素を含むコーティング材料の実施形態においてより低い。本明細書で使用される場合、コーティング材料の成分または元素(例えば、ケイ素、アルミニウム、水素ガス、窒素、酸素、炭素、ホウ素またはフッ素)に関して、「実質的に含まない」という句は、その成分の約0.01原子%未満を含むか、あるいはその成分がコーティング材料に意図的に添加されないことを意味する。理論によって拘束されないが、コーティング材料が形成される温度がより高い場合であっても、より低量の水素を有するコーティング材料の実施形態によって、より高い硬度値が示されると考えられる。コーティング材料中の水素含有量が減少することは、ケイ素および窒素含有量が増加することであると考えられる。コーティング材料の水素含有量は、コーティング材料が形成される析出温度、前駆体化学、得られるコーティング材料の組成およびプラズマ供給源の相関関係である。加えて、水素は、Si-H、Si-H、N-H、N-H、C-H、C-HおよびOH種として酸炭窒化ケイ素組成物に存在する。この非晶質網状構造における種の結合性は、したがって、水素含有量によって決定される。金属-金属結合の非存在下、結合水素のないケイ素は、4つのアニオンと結合するが、結合水素を有するケイ素は、3つのアニオンと結合し、したがって、ガラス網状構造におけるアルミニウムの役割を果たす。同様に、結合水素を有する窒素は、ガラス網状構造において酸素の役割を果たす。ケイ素-窒素結合の最大分率(これは、観察された、および測定された最大硬度でもある)における組成は、次いで、水素含有量のみならず、水素種分化の相関関係である。
【0029】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、窒素を含み得る。そのような実施形態において、窒素は、約30原子%以上の量で存在し得る。1つ以上の実施形態において、コーティング材料中の窒素の量は、原子%で、約30~約60、約30~約58、約30~約56、約30~約54、約30~約52、約30~約50、約30~約48、約30~約46、約30~約45、約30~約44、約30~約42、約30~約40、約35~約60、約35~約58、約35~約56、約35~約54、約35~約52、約35~約50、約35~約48、約35~約46、約35~約44、約35~約42、約35~約40の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲であり得る。1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、窒素を実質的に含まなくてもよい。
【0030】
窒素がコーティング材料中に存在する場合、水素含有量は、約15原子%~約30原子%(例えば、約15原子%~約25原子%、約15原子%~約20原子%、約20原子%~約30原子%または約25原子%~約30原子%)の範囲であり得る。1つ以上の実施形態において、窒素の量(原子%)およびケイ素の量(原子%)の組成比は約0.8以上であり得る。いくつかの実施形態において、この比率は、約0.85以上、約0.9以上、約0.95以上、約1以上、約1.05以上、約1.1以上または約1.15以上、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲であり得る。いくつかの実施形態において、窒素の量(原子%)およびケイ素の量(原子%)の組成比の上限は、約1.2以下(例えば、1.18以下、1.16以下、1.14以下、1.12以下または約1.1以下)であり得る。
【0031】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、酸素を含み得る。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、酸素を実質的に含まない。酸素が含まれる場合、酸素は約7.5原子%以下のゼロではない量で存在し得る。1つ以上の実施形態において、酸素は、コーティング材料中に、原子%で、約0.1~約7.5、約0.1~約7、約0.1~約6.5、約0.1~約6、約0.1~約5.5、約0.1~約5、約0.1~約4.5、約0.1~約4、約0.5~約7.5、約1~約7.5、約1.5~約7.5、約2~約7.5、約2.5~約7.5、約3~約7.5、約3.5~約7.5、約4~約7.5、約4.5~約7.5または約5~約7.5の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲の量で存在し得る。
【0032】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、炭素を含み得る。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、炭素を実質的に含まない。炭素が含まれる場合、炭素は約10原子%以下のゼロではない量で存在し得る。1つ以上の実施形態において、炭素は、コーティング材料中に、原子%で、約0.1~約10、約0.1~約9.5、約0.1~約9、約0.1~約8.5、約0.1~約8、約0.1~約7.5、約0.1~約7、約0.1~約6.5、約0.1~約6、約0.1~約5.5、約0.1~約5、約0.1~約4.5、約0.1~約4、約0.5~約10、約1~約10、約1.5~約10、約2~約10、約2.5~約10、約3~約10、約3.5~約10、約4~約10、約4.5~約10、約5~約10、約5.5~約10、約6~約10、約6.5~約10、約7~約10の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲の量で存在し得る。
【0033】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、フッ素を含む。そのような実施形態において、フッ素の量は、約5原子%以下のゼロではない量で存在し得る。いくつかの実施形態において、フッ素は、(原子%で)約0.1~約4、約0.1~約3、約0.1~約2、約0.1~約1.5、約0.1~約1、約0.5~約5、約0.75~約5、約1~約5、約2~約5、約3~約5、約0.01~約2、約0.01~約1.5、約0.01~約1または約0.01~約0.5の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲で存在し得る。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、フッ素を実質的に含まない。コーティング材料がフッ素を実質的に含まないか、または約1原子%未満もしくは約0.5原子%未満のフッ素を含む場合、(その場でのプラズマクリーニングプロセスを含む)形成プロセスから存在する残留フッ素は、当該技術分野において既知のクリーニングプロセスの変更および調整ステップの実施(例えば、Hプラズマ処理)によって最小化または除去され得る。
【0034】
いくつかの変形において、コーティング材料は、酸素、炭素およびフッ素のいずれか1種以上または2種以上を含み得る。コーティング材料中の炭素(原子%)、酸素(原子%)およびフッ素(原子%)の合計量対アニオンの量(原子%)の組成比は、約0.2未満(例えば、約0.19未満、約0.18未満、約0.17未満、約0.16未満、約0.15未満、約0.1未満、約0.05未満、約0.02未満または約0.01未満)であり得る。言い換えると、1つ以上の実施形態の組み合わせた炭素、酸素およびフッ素含有量は、コーティング材料中のアニオンの約18原子%未満を含んでなる。このような特定の関係で使用される場合、「アニオン」という用語は、コーティング材料中の炭素、酸素およびフッ素の量の合計(原子%)を指す。いくつかの実施形態において、コーティング材料中の炭素(原子%)、酸素(原子%)およびフッ素(原子%)の合計量対アニオンの量の組成比は、適用可能である場合、[C原子%+O原子%+F原子%]/[C原子%+O原子%+F原子%+N原子%]として表され得る。理論によって拘束されないが、窒素の量が減少すると、コーティング材料の硬度は減少すると考えられる。
【0035】
1つ以上の実施形態において、アルミニウムがコーティング材料中に含まれてもよい。いくつかの例において、コーティング材料は、アルミニウムを実質的に含まなくてもよい。アルミニウムが含まれる場合、アルミニウムは、約10原子%以下の量で存在し得る。いくつかの例において、アルミニウムの量は、原子%で、約35~約60、約35~約58、約35~約56、約35~約54、約35~約52、約35~約50、約35~約48、約35~約46、約35~約50、約36~約50、約37~約50、約38~約50、約39~約50、約40~約50、約41~約50、約42~約50、約43~約50、約44~約50、約45~約50、約46~約50、約47~約50、約35~約49、約35~約48、約35~約46、約35~約44、約35~約48、約35~約47、約35~約46、約35~約46、約35~約45、約37~約45、約37~約44または約37~約43の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲である。1つ以上の実施形態において、アルミニウムがコーティング材料中に存在する場合、コーティング材料は、炭素を実質的に含まなくてもよく、またはケイ素を実質的に含まなくてもよく、または炭素およびケイ素を実質的に含まなくてもよい。
【0036】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、ホウ素を含み得る。いくつかの例において、ホウ素の量は、コーティング材料の摩擦係数(COF)を変更または減少させるため(したがって、コーティング材料の潤滑性を改善または増加させるため)、調整可能である。1つ以上の実施形態において、ホウ素は、約10原子%以下のゼロではない量で存在し得る。いくつかの実施形態において、ホウ素は、原子%で、約0.01~約10、約0.01~約9、約0.01~約8、約0.01~約7、約0.01~約6、約0.01~約5、約0.01~約4、約0.01~約3、約0.01~約2、約0.01~約1、約0.01~約0.1、約0.1~約10、約1~約10、約2~約10、約3~約10、約4~約10、約5~約10、約6~約10、約7~約10、約8~約10または約9~約10の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲の量で存在し得る。
【0037】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は高い硬度を示す。コーティング材料の硬度は、コーティング材料の最大硬度を決定するために使用されるナノインデンテーション試験であるBerkovich Indenter Hardness Testによって特徴づけられてよい。本明細書で使用される場合、「Berkovich Indenter Hardness Test」は、ダイヤモンドBerkovichインデンターによって、その表面をインデントすることによって、材料の硬度を測定するステップを含む。Berkovich Indenter Hardness Testは、材料またはコーティング材料の表面をダイヤモンドBerkovichインデンターによってインデントして、約50nmから材料の全厚さまでの範囲のインデント深さを有するインデントを形成するステップと、全インデント深さ範囲またはこのインデント深さのセグメント(例えば、約100nm~約600nmの範囲)に沿って、このインデントからの最大硬度を測定するステップとを含む。硬度は、一般に、Oliver,W.C.;Pharr,G.M.An improved technique for determining hardness and elastic modulus using load and displacement sensing indentation experiments.J.Mater.Res.,Vol.7,No.6,1992,1564-1583;およびOliver,W.C.;Pharr,G.M.Measurement of Hardness and Elastic Modulus by Instrument Indentation:Advances in Understanding and Refinements to Methodology.J.Mater.Res.,Vol.19,No.1,2004,3-20に明らかにされた方法を使用して測定され得る。いくつかの実施形態において、硬度を測定するために使用される材料の厚さは、約1000nm以上であり得る。インデント深さは、材料の表面から製造され、かつ測定される。本明細書で使用される場合、硬度は最大硬度を意味し、平均硬度を意味しない。
【0038】
Berkovich Indenter Hardness Testは、コーティング材料の層、または(本明細書に記載される通り、他の追加の層の有無にかかわらず)コーティング材料の層を含む物品の硬度を決定するために使用され得る。そのような例において、本明細書に記載されるように、層の表面または物品のコーティングされた表面(図2および3A~3C中の101)がインデントされる。
【0039】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、Berkovich Indenter Hardness Testによって測定した場合、約17GPa以上の硬度を示す。いくつかの実施形態において、硬度は、約17GPa~約50GPa、約18GPa~約50GPa、約19GPa~約50GPa、約20GPa~約50GPa、約21GPa~約50GPa、約22GPa~約50GPa、約23GPa~約50GPa、約24GPa~約50GPa、約25GPa~約50GPa、約26GPa~約50GPa、約27GPa~約50GPa、約28GPa~約50GPa、約17GPa~約45GPa、約17GPa~約40GPa、約17GPa~約35GPa、約17GPa~約33GPa、約17GPa~約32GPa、約17GPa~約30GPa、約17GPa~約25GPa、約18GPa~約24GPaの範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲であり得る。1つ以上の実施形態において、これらの硬度値は、約50nm~約300nm、約50nm~約400nm、約50nm~約500nm、約50nm~約600nm、約100nm~約300nm、約100nm~約400nm、約100nm~約500nm、約100nm~約600nm、約200nm~約300nm、約200nm~約400nm、約200nm~約500nmまたは約200nm~約600nmの範囲のインデント深さに沿って存在する。1つ以上の実施形態において、これらの硬度値は、コーティング材料の厚さの約0.3倍または約0.1倍以下のインデント深さに沿って存在する。
【0040】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、ケイ素、水素および窒素、ならびに任意選択的に他の元素(例えば、炭素、酸素、フッ素、ホウ素またはそれらの組合せ)を含み得る。そのような実施形態において、Si-N結合の数は、コーティング材料中の結合の主要部分を構成し得る。Si-N結合の結合エネルギーは約470kJ/モルであり、Si-Si結合の結合エネルギーは約327kJ/モルであり、かつSi-H結合の結合エネルギーは約299.2kJ/モルである。この情報を使用して、水素の存在しない時の硬度の最大化は、既知の参照文献によって示されるように、化学量論的窒化物を必要とする。これに基づいて、PECVDによって形成される本明細書に記載のコーティング材料の実施形態に関して同様の傾向が予想されるが、そのような材料における水素の役割は、水素がケイ素または窒素のいずれかに結合可能であるため、明確ではなかった。さらに、水素の役割は、酸素および/または炭素がコーティング材料に含まれる場合、さらに複雑である。驚くべきことに、本明細書に記載の実施形態は、水素が存在する場合でさえ、より高いSi-N結合を達成する。
【0041】
1つ以上の実施形態において、コーティング材料は、約150GPa以上のヤング率を示し得る。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、約152GPa以上、約154GPa以上、約156GPa以上、約158GPa以上、約160GPa以上、約162GPa以上、約164GPa以上、約166GPa以上、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲のヤング率を示し得る。いくつかの例において、ヤング率の上限は、約300GPa(または約280GPa、約260GPa、約240GPaもしくは約220GPa)であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、コーティング材料は、硬度(H)対ヤング率(E)(すなわち、H/E)の比率によって特徴づけられてもよい。いくつかの実施形態において、この比率は逆であってもよい(すなわち、E/H)。コーティング材料のいくつかの実施形態の比率H/Eは、約0.09~約0.11の範囲にあってよい。いくつかの例において、E/Hの逆比は、約9~約11の範囲にあってよい。
【0043】
いくつかの実施形態のコーティング材料は、形成される時に、低い応力を示す。いくつかの実施形態において、コーティング材料の層は、約-400MPa以上(例えば、-400MPa~約0MPa)の圧縮応力を示す。いくつかの実施形態において、これらの値は、150℃においてPECVDプロセスを使用してコーティング材料が形成される場合に得られた。
【0044】
1つ以上の実施形態のコーティング材料は、約3.5eV以上の光学バンドギャップを示す。いくつかの実施形態において、コーティン材料は、約3.5eV~約6eVの範囲の光学バンドギャップを示す。いくつかの例において、光学バンドギャップは、約3.6eV~約6eV、約3.7eV~約6eV、約3.8eV~約6eV、約3.9eV~約6eV、約4eV~約6eV、約4.1eV~約6eV、約4.2eV~約6eV、約3.5eV~約5.8eV、約3.5eV~約5.6eV、約3.5eV~約5.4eV、約3.5eV~約5.2eV、約3.5eV~約5eV、約3.5eV~約4.8eV、約3.5eV~約4.6eV、約3.5eV~約4.4eV、約5eV~約6eV、約5eV~約5.5eVまたは約5.5eV~約6eVの範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲であり得る。
【0045】
1つ以上の実施形のコーティング材料は、632nmにおいて約1.6~約2.5の範囲の屈折率を示し得る。いくつかの例において、632nmにおける屈折率は、約1.8~約2.1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、約0.001以下のk値を示すことによって、低い吸収を示す。コーティング材料は、約632nmの波長において約0.002以下(例えば、約0.0019以下、約0.0018以下または約0.0017以下)の吸収係数(α=4πk/λ)を示す。
【0046】
いくつかの実施形態において、コーティング材料は、本明細書に記載されるような種々の基板上に配置され得、かつ層間剥離を防止するために十分な接着性を示す。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、層に破損を引き起こすために必要とされる負荷によって記載されるように、低い応力および高いフィルム強靭度を有する層上に配置され得る。
【0047】
いくつかの例において、コーティング材料は、スチールウールに対して測定される場合、約0.2以下のCOFを示し得る。いくつかの例において、COFは、約0.15以下、約0.1以下、約0.09以下、約0.08以下、約0.07以下、約0.06以下または約0.05以下、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲であり得る。
【0048】
本開示の第2の態様は、本明細書に記載のコーティング材料を含む物品に関する。図2に示されるように、物品100は、基板110と、基板上に配置されたコーティング構造115とを含み得る。コーティング構造115は、コーティングされた表面101を形成する。基板110は、対立する主要表面112、114および対立する副表面116、118を含む。コーティング構造115は、図2においては、第1の対立する主要表面112上に配置されて示される層120を含むが、コーティング構造は、第1の対立する主要表面112上に配置されることに加えて、またはその代わりに、第2の対立する主要表面114および/または対立する副表面の一方もしくは両方に配置されてもよい。
【0049】
1つ以上の実施形態のコーティング構造は、層120のみを含んでいてもよく、あるいは層120および1つ以上の追加の層140を含んでいてもよい。層120は、本明細書に記載されるコーティング材料の実施形態を含み得る。層は、本明細書に記載されるコーティング材料のみを含んでいてもよく、あるいはコーティング材料に加えて、1種以上の追加の材料の混合物を含んでいてもよい。「層」という用語は、単層を含んでもよく、あるいは1つ以上の副層を含んでもよい。そのような副層は、互いに直接接触していてもよい。副層は、同一材料、または2種以上の異なる材料から形成されてよい。1つ以上の別の実施形態において、そのような副層は、それらの間に配置された異なる材料の介在層を有していてもよい。1つ以上の実施形態において、層は、1つ以上の連続的であり、かつ中断されない層および/または1つ以上の不連続的であり、かつ中断された層(すなわち、互いに隣接して形成された異なる材料を有する層)を含んでもよい。層または副層は、不連続析出または連続析出プロセスを含む、当該技術において既知のいずれかの方法によって形成されてもよい。1つ以上の実施形態において、層は、連続析出プロセスのみを使用して、または不連続析出プロセスのみを使用して形成されてよい。
【0050】
本明細書で使用される場合、「配置」という用語は、当該技術において既知の方法を使用して表面上に材料をコーティング、配置および/または形成するステップを含む。配置された層は、本明細書に定義されるような層を構成し得る。「上に配置された」という句は、材料が表面に直接接触するように表面上に材料を形成する例を含み、そしてまた、1つ以上の介在材料が、配置された材料と表面との間に存在している状態で、材料が表面上で形成される例も含む。介在層は、本明細書に定義されるような層を構成し得る。
【0051】
典型的に、その下にある基板よりも硬質であるコーティング材料または層の(例えば、Berkovich Indenter Hardness Testによる)ナノインデンテーション測定法における、本明細書に記載の物品の最大硬度の測定に関して、測定された硬度は、浅いインデント深さにおけるプラスチック領域の発達のため、最初は増加するように見え得るが、より深いインデント深さにおいて、最大値または平坦域に達する。その後、硬度は、その下にある基板の影響により、より深いインデント深さでさえ減少し始める。コーティングまたは層が、その下にある基板より硬質でない場合、測定された硬度は、(コーティングの硬度と関連して)最大値または平坦域に達した後、増加し得、そしてその後、その下にある基板の影響により、より深いインデント深さにおいて増加し得る。
【0052】
インデント深さの範囲および特定のインデント深さの範囲における硬度値は、その下にある基板の影響がない状態で、本明細書に記載される物品の特定の硬度応答を識別するよう選択されてよい。Berkovichインデンターを用いて物品の硬度を測定する場合、コーティング材料の永久変形の領域(プラスチック領域)は、コーティング材料の硬度と関連する。インデンテーションの間、弾性応力場は、この永久変形の領域を十分に越えて延在する。インデント深さが増加すると、見掛けの硬度およびモジュラスは、その下にある基板との応力場相互作用によって影響を受ける。硬度に及ぼす基板の影響は、より深いインデント深さ(すなわち、典型的に層の厚さの約10%より大きい深さ)において生じる。さらに、さらなる問題は、硬度応答が、インデンテーションプロセスの間に完全な可塑性を発達させるために、ある特定の最小負荷を必要とするということである。そのようなある特定の最小負荷の前に、硬度は一般に増大する傾向を示す。
【0053】
物品の(小負荷量としても特徴づけられてよい)小インデント深さ(例えば、約100nmまで、または約70nm未満)において、コーティング材料の見掛けの硬度は、インデント深さに対して劇的に増加するように見える。このような小インデント深さ領域は、硬度の真の距離を表さないが、その代わりに、インデンターの有限の曲率半径と関連する上記プラスチック領域の発達を反映する。中間のインデント深さにおいて、見掛けの硬度は最高レベルに接近する。より深いインデント深さにおいて、基板の影響は、インデント深さが増加するにつれて、より顕著になる。インデント深さが層の厚さの約30%を超えると、硬度は劇的に低下し始める。
【0054】
図1は、基板と、種々の層を有する既知の材料の層を含む既知の物品のインデント深さの関数としての硬度値を含む。図1に示されるように、(硬度が接近し、かつ最高レベルで維持される)中間のインデント深さにおいて、およびより深いインデント深さにおいての硬度測定は、既知の材料の層の厚さに依存する。既知の材料の厚さ500nmの層は、約100nm~180nmのインデント深さにおいてその最大硬度を示し、その後、約180nm~約200nmのインデント深さにおける硬度の劇的な減少があり、基板の硬度が硬度測定に影響を及ぼすことを示した。既知の材料の厚さ1000nmの層は、約100nm~約300nmのインデント深さにおいてその最大硬度を示し、その後、約300nmより大きいインデント深さにおける硬度の劇的な減少があった。既知の材料の厚さ1500nmの層は、約100nm~約550nmのインデント深さにおいてその最大硬度を示し、そして既知の材料の厚さ2000nmの層は、約100nm~約600nmのインデント深さにおいてその最大硬度を示した。
【0055】
いくつかの実施形態において、コーティング材料の最大硬度は、約50nm以上のインデント深さに沿って定義され得る。例えば、コーティング材料が約1000nm以下の厚さを有するか、または約1000nm以下の厚さを有する(複数の層を有する)コーティング構造の一部である場合、コーティング材料またはコーティング構造は、約50nn~約1000nmのインデント深さに沿って、あるいは厚さの約0.3倍以下(例えば、300nm以下)または厚さの約0.1倍以下(例えば、100nm以下)のインデント深さに沿って最大硬度を示し得る。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、約100nmより大きいインデント深さにおいて最大硬度を示す。1つ以上の特定の実施形態において、約100nmより大きいインデント深さにおけるこのような最大硬度は、コーティング材料が約1000nmより大きい厚さを有するか、または約1000nmより大きい厚さを有する(複数の層を有する)コーティング構造における層を有する場合に存在し得る。定義されたインデント深さ、または深さ範囲に沿う最大硬度は、コーティング材料の厚さ、またはコーティング材料の層および(本明細書に記載される)追加の層の厚さに特に依存し得る。いくつかの実施形態において、コーティング材料は、(典型的に、約200nm~約400nmの深さを有する)マイクロダクタイル擦傷などの特定の擦傷対して抵抗を供給するために十分な深において最大硬度を示し得る。本明細書で使用される場合、「マイクロダクタイル擦傷」という句は、無限の長さを有する材料中の単一の溝を含む。
【0056】
1つ以上の実施形態において、物品100は、インデント深さ範囲に沿ってBerkovich Indenter Hardness Testによってコーティングされた表面101上で測定した場合、約17GPa以上の最大硬度を示す。いくつかの実施形態において、物品100の最大硬度は、約17GPa~約50GPa、約18GPa~約50GPa、約19GPa~約50GPa、約20GPa~約50GPa、約21GPa~約50GPa、約22GPa~約50GPa、約23GPa~約50GPa、約24GPa~約50GPa、約25GPa~約50GPa、約26GPa~約50GPa、約27GPa~約50GPa、約28GPa~約50GPa、約17GPa~約45GPa、約17GPa~約40GPa、約17GPa~約35GPa、約17GPa~約30GPa、約17GPa~約25GPa、約18GPa~約24GPaの範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲であり得る。1つ以上の実施形態において、これらの最大硬度値は、約50nm~約300nm、約50nm~約400nm、約50nm~約500nm、約50nm~約600nm、約100nm~約300nm、約100nm~約400nm、約100nm~約500nm、約100nm~約600nm、約200nm~約300nm、約200nm~約400nm、約200nm~約500nmまたは約200nm~約600nmの範囲のインデント深さに沿って示される。そのようなインデント深さは、(単独で、または追加の層140との組合せで層120を含む)コーティング構造115が約1000nmより大きい厚さを有する場合に使用され得る。1つ以上の実施形態において、これらの硬度値は、コーティング材料(またはコーティング材料の層を含むコーティング構造)の厚さの約0.3倍または約0.1倍以下のインデント深さに沿って存在する。そのような実施形態において、(単独で、または追加の層140との組合せで層120を含む)コーティング構造115は、約1000nm以下の厚さを有する。
【0057】
1つ以上の実施形態において、コーティング構造115および/または物品100は、擦傷深さの減少によって特徴づけられる耐擦傷性を示す。特に、物品の1つ以上の実施形態は、コーティング構造115を含まない基板110における擦傷深さと比較して、擦傷深さにおける減少を示し得る。物品100が、Berkovichインテンダーを使用して、コーティングされた表面101に沿って少なくとも100μmの長さに対して10μm/秒の速度で160mNの負荷を使用して擦傷を受けた場合、得られる擦傷は、(その上にコーティング構造を含まない)基板110上で同様に(すなわち、同一のインデンター、負荷、速度および長さを使用して)形成された擦傷の深さよりも、少なくとも約30%、少なくとも約31%、少なくとも約32%、少なくとも約33%、少なくとも約34%、少なくとも約35%、少なくとも約36%、少なくとも約37%、少なくとも約38%、少なくとも約39%、少なくとも約40%、少なくとも約41%、少なくとも約42%、少なくとも約43%、少なくとも約44%、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、少なくとも約60%(ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲)低い深さを有する。コーティング構造115および/または物品100のこのような耐擦傷性は、物品が非晶質基板(例えば、強化ガラス基板および/または非強化ガラス基板)、結晶質基板(例えば、強化ガラスセラミック基板、非強化ガラスセラミックガラス基板およびサファイアなどの単結晶基板)あるいはそれらの組合せを利用する場合に存在し得る。いくつかの実施形態において、耐擦傷性は、基板がポリマーである場合に存在し得る。加えて、コーティング構造115および/または物品100のこのような耐擦傷性は、物品のコーティングされた表面101が、Berkovichインテンダーを使用して、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mmまたは少なくとも5mmの長さに対して10μm/秒の速度で擦傷を受けた場合に存在し得る。物品100と裸基板との間の比較は、同一物品上で実行されてよく、コーティングされた表面101が、物品の擦傷深さを評価するために試験され、そして基板(例えば、図1の114)の反対側の表面が、裸基板の擦傷深さを評価するために試験され、得られる擦傷深さは、裸基板に対して、コーティングされた表面101における擦傷深さの減少を決定するために比較されてよい。1つ以上の実施形態において、物品100は、Berkovich Indenter Hardness Testによって測定した場合、約7GPa~約8GPaの範囲の硬度を有する裸基板と比較して、擦傷深さの改善された減少を示す。
【0058】
1つ以上の実施形態において、物品100が、コーティングされた表面101に沿って少なくとも100μmの長さに対して10μm/秒の速度で160mNの負荷を使用してBerkovichインテンダーによって擦傷を受けた場合、得られる擦傷は、250nm未満、240nm未満、230nm未満、220nm未満または約200nm未満の擦傷深さを有する。本明細書に記載される擦傷深さは、コーティングされた表面の最初の、かつ乱されていない(undisturbed)表面から測定され得る。言い換えると、擦傷深さは、コーティング構造へのBerkovichインデンターの侵入によって引き起こされたコーティング構造材料の置き換えによる、擦傷の端部の周囲で形成され得るコーティング構造115のいずれの量も含まない。
【0059】
1つ以上の実施形態において、コーティング構造115および/または物品100は、擦傷幅の減少によって特徴づけられる耐擦傷性を示す。特に、物品100の1つ以上の実施形態は、コーティング構造115を含まない基板110における擦傷深さと比較して、擦傷幅における減少を示し得る。物品100が、Berkovichインテンダーを使用して、コーティングされた表面101に沿って少なくとも100μmの長さに対して10μm/秒の速度で160mNの負荷を使用して擦傷を受けた場合、得られる擦傷は、その上にコーティング構造115が配置されていない基板110上で同様に(すなわち、同一のインデンター、負荷、速度および長さを使用して)形成された擦傷の幅よりも、少なくとも約30%、少なくとも約31%、少なくとも約32%、少なくとも約33%、少なくとも約34%、少なくとも約35%、少なくとも約36%、少なくとも約37%、少なくとも約38%、少なくとも約39%、少なくとも約40%、少なくとも約41%、少なくとも約42%、少なくとも約43%、少なくとも約44%、少なくとも約45%(ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲)低い幅を有する。コーティング構造115および/または物品100のこのような耐擦傷性は、物品が非晶質基板(例えば、強化ガラス基板および/または非強化ガラス基板)、結晶質基板(例えば、強化ガラスセラミック基板、非強化ガラスセラミックガラス基板およびサファイアなどの単結晶基板)あるいはそれらの組合せを利用する場合に存在し得る。1つ以上の別の実施形態において、このような耐擦傷性は、基板がポリマーである場合に存在し得る。加えて、このような耐擦傷性は、物品のコーティングされた表面101が、Berkovichインテンダーを使用して、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mmまたは少なくとも5mmの長さに対して10μm/秒の速度で擦傷を受けた場合に存在し得る。物品100と裸基板110との間の比較は、同一物品上で実行されてよく、コーティングされた表面101が、物品の擦傷幅を評価するために試験され、そして基板(例えば、図2の114)の反対側の表面が、裸基板の擦傷幅を評価するために試験され、得られる擦傷幅は、裸基板に対して、コーティングされた表面101における擦傷幅の減少を決定するために比較されてよい。1つ以上の実施形態において、物品100は、Berkovich Indenter Hardness Testによって測定した場合、約7GPa~約8GPaの範囲の硬度を有する裸基板と比較して、擦傷幅の改善された減少を示す。
【0060】
1つ以上の実施形態において、物品が、コーティングされた表面101に沿って少なくとも100μmの長さに対して10μm/秒の速度で160mNの負荷を使用してBerkovichインテンダーによって擦傷を受けた場合、得られる擦傷は、約10μm未満の擦傷深さを有する。いくつかの実施形態において、得られる擦傷は、約1μm~約10μm、約2μm~約10μm、約3μm~約10μm、約4μm~約10μm、約5μm~約10μm、約1μm~約9μm、約1μm~約8μm、約1μm~約7μm、約1μm~約6μm、約2μm~約8μm、約2μm~約6μm、約2μm~約5μmまたは約2μm~約4μmの範囲ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲の擦傷幅を有する。本明細書に記載される擦傷幅は、最初の、かつ乱されていない(undisturbed)コーティングされた表面101から測定され得る。言い換えると、擦傷幅は、Berkovichインデンターの侵入によって引き起こされたコーティング構造の置き換えによる、擦傷の端部の周囲で形成され得るコーティング構造115のいずれの量も含まない。
【0061】
1つ以上の実施形態の物品100は、約1000グラム以上または約2000グラム以上のVickersインデンテーション破砕閾値を示す。
【0062】
1つ以上の実施形態において、物品100は、コーティングされた表面101から測定した場合、光学波長域において、約85%以上(例えば、約86%以上、約88%以上、約90%以上、約92%以上またはさらには約94%以上)の平均透過率を示す。物品100の全反射率は、コーティングされた表面101において測定した場合、光学波長域において約15%以下であり得る。いくつかの実施形態において、物品100は、コーティングされた表面101において測定した場合、光学波長域において約1%以下または約0.5%以下の全反射率を示す。本明細書で使用される場合、「透過率」という用語は、材料(例えば、コーティング材料、そのようなコーティング材料の層および/または物品100)を通して透過された、所与の波長範囲内の入射光強度のパーセントとして定義される。「反射率」という用語は、同様に、材料(例えば、コーティング材料、そのようなコーティング材料の層および/または物品100)から反射された、所与の波長範囲内の入射光強度のパーセントとして定義される。透過率および反射率は、特定の線幅を使用して測定される。1つ以上の実施形態において、透過率および反射率の特徴決定のスペクトル分解は、5nmまたは0.02eV未満である。いくつかの実施形態において、物品100は、光学波長域においてコーティングされた表面101のみにおいて測定した場合、約11%以下の平均反射率(コーティングされた表面101から測定した場合)を示す。
【0063】
コーティング構造115および/または層120の厚さは、約5マイクロメートル(μm)までであり得る。いくつかの実施形態において、コーティング構造115および/または層120の厚さは、約100ナノメートル(nm)~約5マイクロメートル(μm)、200ナノメートル(nm)~約5マイクロメートル(μm)、300ナノメートル(nm)~約5マイクロメートル(μm)、400ナノメートル(nm)~約5マイクロメートル(μm)、500ナノメートル(nm)~約5マイクロメートル(μm)、約600nm~約5マイクロメートル(μm)、約700nm~約5マイクロメートル(μm)、約800nm~約5マイクロメートル(μm)、約900nm~約5マイクロメートル(μm)、約1マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.1マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.2マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.3マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.4マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.5マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.6マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.7マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.8マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約1.9マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、約2マイクロメートル(μm)~約5マイクロメートル(μm)、1マイクロメートル(μm)~約3μm、約1マイクロメートル(μm)~約2.8マイクロメートル(μm)、約1.5マイクロメートル(μm)~約2.6マイクロメートル(μm)、約1.5マイクロメートル(μm)~約2.4マイクロメートル(μm)、約1.5マイクロメートル(μm)~約2.2マイクロメートル(μm)、約1.5マイクロメートル(μm)~約2マイクロメートル(μm)、約1.6マイクロメートル(μm)~約3マイクロメートル(μm)、約1.7マイクロメートル(μm)~約3マイクロメートル(μm)、約1.8マイクロメートル(μm)~約3マイクロメートル(μm)、約1.9マイクロメートル(μm)~約3マイクロメートル(μm)、約2マイクロメートル(μm)~約3マイクロメートル(μm)、約2.1マイクロメートル(μm)~約3マイクロメートル(μm)、約2.2マイクロメートル(μm)~約3マイクロメートル(μm)、約2.3マイクロメートル(μm)~約3マイクロメートル(μm)の範囲、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分範囲であり得る。いくつかの実施形態において、コーティング構造115および/または層120の物理的厚さは、約0.1マイクロメートル(μm)~約2マイクロメートル(μm)または約0.1μm~約1マイクロメートル(μm)または0.2マイクロメートル(μm)~約1マイクロメートル(μm)の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、コーティング構造115および/または層120の厚さは、約500nm以下(例えば、約400nm以下、約300nm以下、約200nm以下、約100nm以下)であり得る。
【0064】
図3A~3Cに示されるように、コーティング構造115は、1つ以上の追加の層140を含んでもよい。一選択において、追加の層140は、層120上に配置されてよい(図3A)。別の選択において、追加の層140は、層120と基板110との間に配置されてもよい(図3B)。さらに別の選択において、1つの追加の層140Aは、層120上に配置されてよく、かつ第2の追加の層140Bは、層120と基板110との間に配置されてもよい(図3C)。本明細書に記載される通り、追加の層140は、1つ以上の副層を含んでもよい。本明細書に記載される実施形態において使用される追加の層140のいずれか1つ以上も、層120とは異なる方法によって形成されてよいことに留意されるべきである。例えば、追加の層140は、化学蒸着(例えば、プラズマ強化化学蒸着)、物理蒸着(例えば、反応性または非反応性スパッタリングまたはレーザーアブレーション)、熱またはe-ビーム析出および/あるいは原子層析出によって形成されてよい。追加の層は、耐引掻性、物品100の光学的特性、抗指紋特性、強度の保留または他の属性を提供するか、または強化し得る。例えば、層120は、追加の層140と交互に配置されてよく、高屈折率および低屈折率材料の交互の層構造を形成する。コーティング構造115は、2層以上の層120を含んでもよい。個々の層120および追加の層140の厚さ、ならびに全ての層120および追加の層140の合計の厚さは、所望の特性を達成するために調整されてもよい。追加の層140に使用される代表的な材料としては、SiO、Al、GeO、SiO、AlO、AlN、Si、SiO、SiAl、Si、Si、Ta、Nb、TiO、TiO、ZrO、TiN、MgO、MgF、BaF、CaF、SnO、HfO、Y、MoO、DyF、YbF、YF、CeF、オルガノシリケート(例えば、SrF、LaF、GdFなど)、ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素、ポリマー、フルオロポリマー、プラズマ重合ポリマー、シロキサンポリマー、シルセスキオキサン、ポリイミド、フッ化ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、ポリメチルメタクリレートおよびそれらの組合せが含まれる。層120および/または追加の層140は、PECVD蒸着層として特徴づけられてもよい。
【0065】
基板110上に配置された代表的なコーティング構造115を表Aに示す。
【表A】
いくつかの実施形態において、追加の層140B、D、FおよびGに使用される低屈折率材料は、(約550nmの波長において)約1.45~約1.50の範囲の屈折率および約400の波長において約1-4未満の吸収(k)を有し得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、追加の層140A、CおよびEに使用される高屈折率材料は、(約550nmの波長において)約1.85~約2.05の範囲の屈折率および約400の波長において約3-4未満の吸収(k)を有し得る。いくつかの実施形態において、表Aに示すコーティング構造の層120は、SiOxNyCzを含み得、かつ(約550nmの波長において)約1.85~約2.05の範囲の屈折率および約400の波長において約3-4未満の吸収(k)を示し得る。
【0067】
コーティング構造の他の実施例115を表BおよびCに示す。
【表B】
【表C】
いくつかの実施形態において、追加の層140は、層120上に配置されるホウ素の薄層を含んでもよい。いくつか例において、このようなホウ素の追加の層は、約100nm以下(例えば、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下、約60nm以下、約50nm以下、約40nm以下、約30nm以下、約20nm以下または約10nm以下)の厚さを有し得る。いくつか例において、このようなホウ素の追加の層は、物品100の最も外側の層であり得、したがって、コーティングされた表面101を形成し得る。いくつかの例において、層120は、層120の最も外側の部分がホウ素を含むが、層120の残りの部分はホウ素を含まないような不均一組成を有し得る。
【0068】
コーティング構造115またはその表面は平滑面を示し得る。いくつかの実施形態において、表面は、約8以下の荒さRqを有し得る。いくつかの実施形態において、コーティング構造115またはそれらのいずれかの層(例えば、120、140など)は、平方ミリメートル面積あたり約40以下の欠陥(約1マイクロメートル~約5マイクロメートルの範囲の平均最長断面寸法を有する)を示し得る。いくつかの実施形態において、コーティング構造115またはそれらのいずれかの層(例えば、120、140など)は、平方ミリメートル面積あたり約10以下、約5以下または約1以下の欠陥(約50マイクロメートル以上の範囲の平均最長断面寸法を有する)を示し得る。コーティング構造115またはそれらのいずれかの層(例えば、120、140など)は、屈折率および/または厚さにおいて均一性を示し得る。いくつかの実施形態において、コーティング構造115またはそれらのいずれかの層の屈折率および/または厚さは、その表面にわたって約1%未満で変動する。
【0069】
いくつかの実施形態において、コーティング構造115またはそれらのいずれかの層(例えば、120、140など)は、約-350MPa以下(例えば、約0MPa~約-350MPa、0MPa~約-300MPaまたは0MPa~約250MPaの範囲)の圧縮応力を示す。
【0070】
1つ以上の実施形態の物品100は、無色性を示し得る。本明細書に記載される無色性は、(L、a、b)比色分析系に対する参照による。光源としては、例えば、A光源(タングステンフィラメント照明を表す)、B光源(日光をシミュレーションする発光物)、C光源(日光をシミュレーションする発光物)、Dシリーズ光源(天然日光を表す)およびFシリーズ光源(種々の蛍光照明を表す)を含む、CIEによって決定される標準光源が含まれる。
【0071】
いくつかの実施例において、物品は、物品透過率色座標と参照点(これも直角入射において測定される)との間の距離が、約5未満(例えば、約4未満、約3未満、約2未満、約1未満または約0.5未満)であるような、直角入射におけるCIE(L、a、b)比色分析系における透過率色座標を有する物品色透過率を示す。この距離は、「参照点色シフト」として記載されてもよい。1つ以上の実施形態において、物品は、物品反射率色座標と参照点(これも直角入射において測定される)との間の距離が、約5未満(例えば、約4未満、約3未満、約2未満、約1未満または約0.5未満)であるような、直角入射における(L、a、b)比色分析系における反射率色座標を有する物品色反射率示す。この距離は、「参照点色シフト」として記載されてもよい。物品の物品反射率および/または透過率色座標は、直角入射において、コーティングされた表面101から測定される。1つ以上の実施形態において、参照点は、L色空間の起点(0、0)または(-2、-2)(あるいは色座標a=0、b=0またはa=-2、b=-2)であってもよいか、あるいは基板110の透過率色座標または反射率色座標であってもよい。物品100の参照点色シフトが基板に関して定義される場合、物品の透過率色座標は、基板の透過率色座標と比較され、そして物品の反射率色座標は、基板の反射率色座標と比較される。1つ以上の特定の実施形態において、参照点に対する物品透過率色および/または物品反射率色の参照点色シフトは、1未満または0.5未満であってもよい。1つ以上の特定の実施形態において、参照点に対する物品透過率色および/または物品反射率色に関する参照点色シフトは、1.8、1.6、1.4、1.2、0.8、0.6、0.4、0.2、0、ならびにその間の全範囲および部分範囲であってよい。参照点が色座標a=0、b=0である場合、色シフトは、次の方程式、色座標距離=√((a+(b)によって算出される。参照点が色座標a=-2、b=-2である場合、色シフトは、√((a 物品+2)+(b 物品+2))によって定義される。参照点が基板110の色座標である場合、色シフトは、次の方程式、色座標距離=√((a 物品-a 基板+(b 物品-b 基板)によって算出される。
【0072】
1つ以上の実施形態において、物品100は、参照入射照明角度からの入射照明角度において見た場合に約5未満の(透過率または反射率における)角度色シフトを示し得る。本明細書で使用される場合、視野角に関する「角度色シフト」という句は、CIE(L、a、b)比色分析系におけるaおよびbの両方における変化を指す。
【0073】
角度色は、入射照明角度によるスペクトル反射率変動におけるシフトのため、視野角によって反射においてシフトする。角度色は、入射照明角度によるスペクトル透過率変動における同シフトのため、視野角によって透過においてもシフトする。入射照明角度による観察された色および角度色シフトは、しばしば、デバイスユーザーにとって、特に、蛍光照明およびいくつかのLED照明などの鋭いスペクトル特徴を有する照明下、気を散らすか、または不愉快である。透過率における角度色シフトも、反射における色シフトの要因の役割を果たし得、またその逆もあり得る。透過および/または反射における角度色シフトの要因としては、視野角による角度色シフト、または特定の照明または試験系によって定義される(いくらかは角度から独立する)材料吸収によって生じ得る特定の白点からの角度色シフトも含まれ得る。
【0074】
物品の反射率および/または透過率角度色座標は、コーティングされた表面101から測定される。視野角に関する色シフトは、以下の等式:√((a -a +(b -b )を使用して決定され得る。物品の(透過率または反射率における)aおよびb座標は、(直角入射または直角入射から約6度を含み得る)入射参照照明角度で見た場合の座標(すなわち、a およびb )および参照入射照明角度からの入射照明角度における座標(すなわち、a およびb )である。ただし、入射照明角度は参照入射照明角度とは異なり、いくつかの場合、参照入射照明角度とは少なくとも約2度または約5度異なる。いくつかの場合、約5以下の色シフトは、照明下で参照入射照明角度から様々な入射照明角度で見た場合に物品によって示される。いくつかの場合、色シフトは、約4以下、3以下、2.5以下、2以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下または0.1以下である。いくつかの実施形態において、色シフトは約0であってもよい。
【0075】
角度色シフトを測定するために使用される光源は、A光源(タングステン-フィラメント照明を表す)、B光源(日光をシミュレートする発光体)、C光源(日光をシミュレートする発光体)、Dシリーズ光源(自然日光を表す)およびFシリーズ光源(種々の蛍光灯を表す)を含むCIEによって決定される標準光源を含むことができる。具体的な例において、物品は、CIE F2、F10、F11、F12またはD65光源、より具体的にはCIE F2光源下で参照照明角度から入射照明角度で見た場合に約5以下の反射率および/または透過率における角度色シフトを示す。
【0076】
参照照明角度は、直角入射、直角入射から5度、直角入射から6度、直角入射から10度、直角入射から15度、直角入射から20度、直角入射から25度、直角入射から30度、直角入射から35度、直角入射から40度、直角入射から50度、直角入射から55度もしくは直角入射から60度を含み得るが、ただし、参照照明角度と入射照明角度との間の差異は少なくとも約1度、2度または約5度であることを条件とする。入射照明角度は、参照照明角度に対して、参照照明角度から約5度~約80度、約5度~約70度、約5度~約65度、約5度~約60度、約5度~約55度、約5度~約50度、約5度~約45度、約5度~約40度、約5度~約35度、約5度~約30度、約5度~約25度、約5度~約20度、約5度~約15度の範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲であってよい。この物品は、参照照明角度が直角入射である場合、約2度~約80度(または約10度~約80度、または約20度~約80度)の範囲の全ての入射照明角において、および全ての入射照明角度に沿って、本明細書に記載される反射率および/または透過率における角度色シフトを示し得る。いくつかの実施形態において、この物品は、入射照明角度および参照照明角度の間の差異が少なくとも約1度、2度または約5度である場合、約2度~約80度(または約10度~約80度、または約20度~約80度)の範囲の全ての入射照明角において、および全ての入射照明角に沿って、本明細書に記載される反射率および/または透過率における角度色シフトを示し得る。一例において、この物品は、直角入射に等しい参照照明角度から約2度~約60度、約5度~約60度、または約10度~約60度の範囲のいずれかの入射照明角度において、5以下(例えば、4以下、3以下または約2以下)の反射率および/または透過率における角度色シフトを示し得る。他の例において、この物品は、参照照明角度が10度であり、かつ入射照明角度が、参照照明角度から約12度~約60度、約15度~約60度または約20度~約60度の範囲のいずれかの角度である場合、5以下(例えば、4以下、3以下または約2以下)の反射率および/または透過率における角度色シフトを示し得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、角度色シフトは、約20度~約80度の範囲の参照照明角度(例えば、直角入射)と入射照明角度との間の全ての角度で測定されてよい。言い換えると、角度色シフトは、約0度~約20度、約0度~約30度、約0度~約40度、約0度~約50度、約0度~約60度または約0度~約80度の範囲の全ての角度で測定されてよく、かつ約5未満または約2未満であり得る。
【0078】
いくつかの場合、物品透過率色シフト、物品反射率色シフトおよび/または角度色シフトは、使用される照明によって決定される参照点から1以下、0.5以下または約0.2以下の半径に関して定義され得る。D65が利用される場合、半径は、(L=96.9、a=-0.01、b=0.15)の参照点から、および約10度の入射照明角度において決定され得る。別の実施形態において、F2が利用される場合、半径は、(L=33.8、a=0.07、b=-0.52)の参照点から、約5度~約60度の範囲の入射照明角度において決定され得る。
【0079】
基体110は無機物であってよく、そして非晶質基体、結晶質基体またはそれらの組合せが含まれ得る。いくつかの特定の実施形態において、基体110としては、特に、プラスチックおよび/または金属基板を除外してよい。いくつかの実施形態において、基体110は有機物であってもよく、そして特にポリマーであってよい。適切なポリマーの例としては、限定されないが、ポリスチレン(PS)(スチレンコポリマーおよびブレンドを含む)、ポリカーボネート(PC)(コポリマーおよびブレンドを含む)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートコポリマーを含む、コポリマーおよびブレンドを含む)、ポリオレフィン(PO)および環式ポリオレフィン(環式-PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリルポリマー(コポリマーおよびブレンドを含む)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリエーテルイミド(PEI)および互いとのこれらのポリマーのブレンドを含む熱可塑性プラスチックが含まれる。他の代表的なポリマーとしては、エポキシ、スチレン系、フェノール系、メラミンおよびシリコーン樹指が含まれる。
【0080】
1つ以上の実施形態において、基体は、約1.45~約1.55の範囲の屈折率を示す。特定の実施形態において、基体110は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20の試料を使用して、ボール-オン-リング試験を使用して測定した場合、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上または2%以上の、1つ以上の対立する主要表面における表面上の平均破壊ひずみを示し得る。特定の実施形態において、基体110は、約1.2%、約1.4%、約1.6%、約1.8%、約2.2%、約2.4%、約2.6%、約2.8%または約3%以上の、1つ以上の対立する主要表面における、その表面上の平均破壊ひずみを示し得る。
【0081】
適切な基体110は、約30GPa~約120GPaの範囲の弾性係数(またはヤング率)を示し得る。いくつかの場合、基体の弾性係数は、約30GPa~約110GPa、約30GPa~約100GPa、約30GPa~約90GPa、約30GPa~約80GPa、約30GPa~約70GPa、約40GPa~約120GPa、約50GPa~約120GPa、約60GPa~約120GPa、約70GPa~約120GPaの範囲、ならびにそれらの間の全範囲および部分範囲であってよい。
【0082】
1つ以上の実施形態において、基板110は非晶質であってよく、そして強化されていても、または強化されていなくてもよいガラスを含み得る。適切なガラスの例としては、ソーダ石灰ガラス、アルカリフリーガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ボロシリケートガラスおよびアルカリアルミノボロシリケートガラスが含まれる。いくつかの変形において、ガラスはリチアを含まなくてもよい。1つ以上の別の実施形態において、基体110は、(強化されていても、または強化されていなくてもよい)ガラスセラミック基体などの結晶質基体を含んでもよく、あるいはサファイアなどの単結晶構造を含んでもよい。1つ以上の特定の実施形態において、基体110は、非晶質ベース(例えば、ガラス)および結晶質クラッディング(例えば、サファイア層、多結晶質アルミナ層および/またはスピネル(MgAl)層)を含む。
【0083】
基体110は実質的に平面であるか、またはシート状であってよいが、他の実施形態では、湾曲しているか、または別の方法で形成もしくは制作された基体を利用してもよい。基体110は、実質的に光学的にクリアであり、透明であり、かつ光散乱がないものであり得る。そのような実施形態において、基体は、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上または約92%以上の光学波長領域における平均透過率を示し得る。1つ以上の別の実施形態において、基体110は不透明であり得るか、あるいは約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満または約0%未満の光学波長領域における平均透過率を示し得る。基体110は、任意選択的に、白色、黒色、赤色、青色、緑色、黄色、オレンジ色などの色を示してもよい。
【0084】
さらに、あるいは代わりに、基体110の物理的厚さは、美的および/または機能的な理由で、その寸法の1つ以上に沿って変化してもよい。例えば、基体110の端部は、基体110のより中央の領域と比較して、より厚くてもよい。基体110の長さ、幅および物理的厚さ寸法も、物品100の用途または使用によって異なってもよい。
【0085】
基体110は、様々な異なるプロセスを使用して提供されてもよい。例えば、基体110がガラスなどの非晶質基体を含む場合、種々の形成方法として、フロートガラスプロセス、ならびにフュージョンドローおよびスロットドローなどのダウンドロープロセスを含むことができる。
【0086】
いったん形成されたら、基体110を強化して、強化基体を形成してもよい。本明細書で使用される場合、「強化基体」という用語は、例えば、基体の表面において、より大きいイオンとより小さいイオンとのイオン交換によって化学的に強化された基体を指し得る。しかしながら、熱焼戻し、または圧縮応力および中央表面張力領域を生じる基体の部分間の熱膨脹率の不適合性を利用することなどの当該分野で既知の他の強化方法を利用して、強化基体を形成してもよい。
【0087】
基体がイオン交換プロセスによって化学的に強化される場合、基体の表面層のイオンは、同一原子価または酸化状態を有するより大きいイオンによって置き換えられるか、または交換される。イオン交換プロセスは、典型的に、基体中でより小さいイオンと交換されるより大きいイオンを含有する溶融塩浴に基体を浸漬することによって実行される。限定されないが、浴組成および温度、浸漬時間、塩浴(または浴)中の基体の浸漬数、複数の塩浴の使用、焼きなまし、洗浄などの追加ステップなどを含むイオン交換プロセスのパラメーターは、一般に、強化操作から得られる基体の組成および所望の圧縮応力(CS)、基体の圧縮応力層の深さ(または層の深さ)によって決定されることは、当業者により理解されるであろう。例として、アルカリ金属含有ガラス基板のイオン交換は、限定されないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩および塩化物などの塩を含有する少なくとも1つの溶融浴中での浸漬によって達成され得る。溶融塩浴の温度は、典型的に約380℃~約450℃の範囲であるが、浸漬時間は約15分~約40時間の範囲である。しかしながら、上記とは異なる温度および浸漬時間も使用されてよい。
【0088】
加えて、ガラス基体が複数のイオン交換浴に浸漬され、浸漬間に洗浄および/または焼きなましステップが行われるイオン交換プロセスの非限定的な例は、異なる濃度の塩浴中での複数回の連続的なイオン交換処理における浸漬によってガラス基体が強化される、2008年7月11日出願の米国仮特許出願第61/079,995号明細書からの優先権を主張する、Douglas C.Allanらによる「Glass with Compressive Surface for Consumer Applications」と題された2009年7月10日出願の米国特許出願公開第12/500,650号明細書、およびガラス基体が、流出イオンによって希釈された第1の浴中でのイオン交換、それに続いて、第1の浴よりも低い流出イオン濃度を有する第2の浴中での浸漬によって強化される、2008年7月29日出願の米国仮特許出願第61/084,398号明細書からの優先権を主張する、Christopher M.Leeらによる「Dual Stage Ion Exchange for Chemical Strengthening of Glass」と題された2012年11月20日発行の米国特許第8,312,739号明細書に記載されている。米国特許出願公開第12/500,650号明細書および米国特許第8,312,739号明細書の内容は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。
【0089】
イオン交換によって達成される化学的強化の度合いは、中央表面張力(CT)、表面CSおよび層の深さ(DOL)のパラメーターに基づいて定量化されてよい。表面CSは、表面付近、または強化ガラス内の様々な深さで測定されてよい。最高CS値は、強化された基体の表面において測定されたCS(CS)を含み得る。ガラス基体内の圧縮応力層に隣接する内部領域に関して算出されるCTは、CS、物理的厚さtおよびDOLから計算することができる。CSおよびDOLは、当該技術分野において既知の手段を使用して測定される。そのような手段には、限定されないが、株式会社ルケオ(日本、東京)によって製造されるFSM-6000などの市販品として入手可能な器具を使用する表面応力(FSM)の測定などが含まれ、そしてCSおよびDOLの測定方法は、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass」と題されたASTM 1422C-99、ならびに「Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed,Heat-Strengthened,and Fully-Tempered Flat Glass」と題されたASTM 1279.19779に記載されている。上記文献の内容は、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。表面応力測定は、ガラス基板の複屈折と関係する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依拠する。SOCは、次に、繊維および4点曲げ法(これらの方法は両方とも「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題されたASTM規格C770-98(2008)に記載され、その内容は全体として参照によって本明細書に組み込まれる)、ならびにバルクシリンダー法などの当該技術分野において既知の方法によって測定される。CSおよびCTの間の関係は、次式(1):
CT=(CS・DOL)/(t-2DOL) (1)
によって与えられる。式中、tはガラス物品の物理的厚さ(μm)である。本開示の様々な項目において、CTおよびCSは、本明細書中、メガパスカル(MPa)で表され、物理的厚さtはマイクロメートル(μm)またはミリメートル(mm)で表され、そしてDOLはマイクロメートル(μm)で表される。
【0090】
一実施形態において、強化された基体110は、250MPa以上、300MPa以上、例えば、400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上または800MPa以上の表面CSを有することができる。強化された基体は、10μm以上、15μm以上、20μm以上(例えば、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm以上)のDOLおよび/または10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上(例えば、42MPa、45MPaまたは50MPa以上)であるが、100MPa未満(例えば、95、90、85、80、75、70、65、60、55MPa以下)のCTを有してもよい。1つ以上の特定の実施形態において、強化された基体は、500MPaより高い表面CS、15μmより大きいDOLおよび18MPaより高いCTの1つ以上を有する。
【0091】
基体中で使用されてもよい代表的なガラスとしては、アルカリアルミノシリケケートガラス組成物またはアルカリアルミノボロシリケートガラス組成物が含まれてよいが、他のガラス組成物が考察される。そのようなガラス組成物は、イオン交換プロセスによって化学的に強化されることが可能である。ガラス組成物の一例は、SiO、BおよびNaOを含んでなり、(SiO+B)≧66モル%およびNaO≧9モル%である。一実施形態において、ガラス組成物は、少なくとも6重量%の酸化アルミニウムを含む。さらなる実施形態において、基体は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5重量%であるように、1種以上のアルカリ土類酸化物を有するガラス組成物を含む。適切なガラス組成物は、いくつかの実施形態において、KO、MgOおよびCaOの少なくとも1種をさらに含んでなる。特定の実施形態において、基体で使用されるガラス組成物は、61~75モル%のSiO、7~15モル%のAl、0~12モル%のB、9~21モル%のNaO、0~4モル%のKO、0~7モル%のMgOおよび0~3モル%のCaOを含んでなることができる。
【0092】
基体に適切なガラス組成物のさらなる例は、60~70モル%のSiO、6~14モル%のAl、0~15モル%のB、0~15モル%のLiO、0~20モル%のNaO、0~10モル%のKO、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO、0~1モル%のSnO、0~1モル%のCeO、50ppm未満のAsOおよび50ppm未満のSbを含んでなり、12モル%≦(LiO+NaO+KO)≦20モル%および0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0093】
基体に適切なガラス組成物のなおさらなる例は、63.5~66.5モル%のSiO、8~12モル%のAl、0~3モル%のB、0~5モル%のLiO、8~18モル%のNaO、0~5モル%のKO、1~7モル%のMgO、0~2.5モル%のCaO、0~3モル%のZrO、0.05~0.25モル%のSnO、0.05~0.5モル%のCeO、50ppm未満のAsおよび50ppm未満のSbを含んでなり、14モル%≦(LiO+NaO+KO)≦18モル%および2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0094】
特定の実施形態において、基体に適切なアルカリアルミノシリケートガラス組成物は、アルミナ、少なくとも1種のアルカリ金属、そしていくつかの実施形態において、50モル%より多いSiO、他の実施形態において、少なくとも58モル%のSiO、さらに他の実施形態において、少なくとも60モル%のSiOを含んでなり、比率は、
【0095】
【数1】
【0096】
であり、比率の成分はモル%で表され、そして変性剤はアルカリ金属酸化物である。このガラス組成物は、特定の実施形態において、58~72モル%のSiO、9~17モル%のAl、2~12モル%のB、8~16モル%のNaOおよび0~4モル%のKOを含んでなり、比率は、
【0097】
【数2】
【0098】
である。
【0099】
なお他の実施形態において、基体は、64~68モル%のSiO、12~16モル%のNaO、8~12モル%のAl、0~3モル%のB、2~5モル%のKO、4~6モル%のMgOおよび0~5モル%のCaOを含んでなり、66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%、NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(NaO+B)-Al≦2モル%、2モル%≦NaO-Al≦6モル%および4モル%≦(NaO+KO)-Al≦10モル%であるアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含んでもよい。
【0100】
別の実施形態において、基体は、2モル%以上のAlおよび/またはZrO、あるいは4モル%以上のAlおよび/またはZrOを含んでなるアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含んでもよい。
【0101】
基体110が結晶質基体を含む場合、基体は単結晶を含んでもよく、Alを含み得る。そのような単結晶基体はサファイアと呼ばれる。他の適切な結晶質材料としては、多結晶質アルミナ層および/またはスピネル(MgAl)が含まれる。
【0102】
任意選択的に、結晶質基体110は、強化されていても、または強化されていなくてもよいガラスセラミック基体を含んでもよい。適切なガラスセラミックの例としては、LiO-Al-SiO系(すなわち、LAS-系)ガラスセラミック、MgO-Al-SiO系(すなわち、MAS-系)ガラスセラミック、および/またはβ-石英固溶体、β-黝輝石ss、菫青石および二ケイ酸リチウムを含む主結晶相を含むガラスセラミックを含み得る。ガラスセラミック基体は、本明細書に開示された化学的強化プロセスを使用して強化されてもよい。1つ以上の実施形態において、MAS-系ガラスセラミック基体は、LiSO溶融塩中で強化されてよく、それによって、Mg2+に対する2Liの交換が発生可能である。
【0103】
1つ以上の実施形態による基体110は、約100μm~約5mmの範囲の物理的厚さを有することができる。基体110の物理的厚さの例は、約100μm~約500μmの範囲である(例えば、100、200、300、400または500μm)。基体110の物理的厚さのさらなる例は、約500μm~約1000μmの範囲である(例えば、500、600、700、800、900または1000μm)。基体110は、約1mmより大きい物理的厚さを有してもよい(例えば、約2、3、4または5mm)。1つ以上の特定の実施形態において、基体110は、2mm以下または1mm未満の物理的厚さを有してもよい。基体110は、表面きずの影響を取り除くか、あるいは減少させるために、酸研磨されるか、または他の方法で処理されてよい。
【0104】
本開示の第3の態様は、本明細書に記載のコーティング材料の形成方法に関する。1つ以上の実施形態において、この方法は、化学蒸着法を使用してコーティング材料を形成するステップを含む。特定の実施形態において、コーティング材料を形成するために、プラズマ強化化学蒸着法が利用されてよい。理論によって拘束されないが、そのようなプロセスは、典型的に物理的蒸着法によって達成される速度と比較して、より高い、またはより速い析出速度を可能にする。加えて、本明細書に記載の方法は、コーティング材料の形成の間に、形成されたコーティング材料、析出チャンバーまたは両方を選択的にエッチングするステップを含み得る。そのような実施形態において、結果として生じるコーティング材料は、径、種類および欠陥の頻度に関して、より低い欠点を示す。材料は、本明細書に記載される通り、1つ以上の層で形成され得る。
【0105】
1つ以上の実施形態において、この方法は、チャンバー中に供給源ガスを導入するステップと、本明細書に記載されるコーティング材料を化学蒸着法によって基板上に形成するステップとを含む。この方法は、誘導結合プラズマ(ICP)法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)または容量結合パラレルプレート法によって、チャンバー中でプラズマを発生させるステップを含み得る。供給源ガスとしては、ケイ素供給源ガス、アルミニウム供給源ガスおよび窒素供給源ガスのいずれか1種以上を含むことができる。1つ以上の実施形態において、ケイ素供給源ガスはシランを含み得、アルミニウム供給源ガスは、AlCl、トリメチルアルミニウムAl(CHまたは他の既知のアルミニウム供給源ガスを含み得、そして窒素供給源ガスは、窒素、亜酸化窒素、アンモニアまたはそれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態において、水素供給源ガス(例えば、シランまたは水素)、炭素供給源ガス(例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アセチレン、ブタンおよびメタン)、酸素、フッ素供給源ガス(例えば、四フッ化ケイ素およびフルオロカーボン)、ホウ素供給源ガス(例えば、B、BFまたは他の既知のホウ素供給源)、あるいはそれらの組合せなどの追加のガスがチャンバーに導入されてもよい。析出組成物は、約550℃以下または約150度以下であり得る。1つ以上の実施形態において、この方法は、コーティング材料を形成する前に、チャンバー中に基板を導入するステップを含んでもよい。この方法は、コーティング材料と基板との間に、またはコーティング材料上に1つ以上の追加の層を形成するステップを含んでもよい。任意選択的に、この方法は、コーティング材料および/またはいずれかの1つ以上の追加の層を形成する前に、1回以上のクリーニングステップを含んでもよい。
【実施例
【0106】
以下の実施例によって、種々の実施形態がさらに明確に示されるであろう。
【0107】
以下の実施例において、本明細書に記載の実施形態によるコーティング材料および既知の材料の層が、Corning Incorporatedから商標Eagle XG(商標)で入手可能な基板上に形成された。層の厚さ、指数および光学バンドギャップは、付随するソフトウェアを含むシングルF-Kオシレーターモデルを使用して、n&k分析器(n&k Technology,Inc.,San Jose CA)によって測定した。硬度は、Berkovich Indenter Hardness Testに従って測定し、ヤング率は、当該技術分野において既知の方法を使用して、Berkovichインデンターを使用して測定された。
【0108】
層の水素含有量は、6.38MeVにおける15Nビームの2μCの装填を使用して、原子核反応分析(NRA)によって測定した。水素以外の成分に対する層の組成は、PHI-Quantum 2000 XPS機器を使用して、X線光電子分光分析法(XPS)によって決定した。データは、XPSユニットの販売業者によって提供されるソフトウェアパッケージを使用して分析した。組成測定のために、2mm×2mmの領域を層の表面から選択し、直径0.2mmの点を2mm×2mmの領域の中心で選択し、そして直径0.2mmの点における層の組成を測定した。次いで、2mm×2mmの領域を、数分の1分から数分に及ぶ期間で、4kVで加速されたArイオンを使用してスパッタリングを行い、それによって表面で約15Wの電流が生じた。スパッタステップの後、同様の様式および領域でスパッタリングされた2mm×2mmの中心における0.2mm点の組成を再び測定した。層の全深さがスパッタリングされ、そして基板が露出するまで、このプロセスを何回も繰り返した。この様式において、層の厚さの関数としての種々の元素の濃度の深さプロフィールが得られた。層組成は、表面領域を避けて、典型的に、層中に約20nmから約200nmまでの深さからの範囲であり、かつその下に存在する基板まで延在する層のバルク中のそれぞれの元素の濃度を平均することによって算出された。複数の深さの組成の標準偏差によって測定される、このような組成の算出方法の精度は、約±0.5原子%である。Arイオンを使用するスパッタ深さプロファイルは、XPSによって測定されたバルク組成が実際のバルク組成とは異なり得るように、ある特定の元素の優先的なスパッタリングをもたらし得る。優先的なスパッタリング効果を考慮する補正因子が適用されず、上記の方法論のみを使用して組成が算出された。同等の酸窒化物材料に対する上記で得られるXPS深さプロフィールと、他の分析技術を使用するバルク組成測定の比較が利用可能であることは注目すべきであり、そして本明細書に記載された方法論に従って測定されたXPS深さプロフィールと、これらの他の技術によって測定された組成との間の偏差の大きさは小さいことが示される(Martin,D.M.,Enlund,J.,Kappertz,O,Jensen,J.“Comparison of XPS and ToF-ERDA Measurement of High-k Dielectric Materials,”Journal of Physics:Conference Series100(2008)012036)。
【0109】
実施例1
実施例1A~1Fにおいて、400nmの厚さおよび次のコーティング材料組成(A~F):SiN、SiN、SiO、SiC、SiCおよびSiOを有する単層が、上記の通りに形成された。これらの単層は、Plasma-Therm Versaline High Density Plasma (「HDP」)CVDツールを使用して、個々の基板上にそれぞれ形成された。Plasma-Therm Versaline HDPCVDツールは、基板が配置されるプラテンに動力を伝導する13.56MHz RF供給によって設定された基板バイアスから独立して、高いイオン化を達成するために、2MHz誘導結合プラズマ供給源を使用する誘導結合プラズマ(「ICP」)CVDシステムである。そのようなシステムは、従来のパラレルプレートPECVDより低い基板温度での高密度フィルムの析出を完全に可能にする。プロセス条件には、表1に示されるように、シラン、窒素、水素、メタン、二酸化炭素、亜酸化窒素、酸素、水素および四フッ化ケイ素の析出ガス(適切であれば、sccmの単位で、そして表1に示されるように)、ならびに約150℃の基板温度および12.5または5mtorrの圧力(P)の使用が含まれた。表1に示されるように、アルゴンを50sccmの速度で流し、そしてRF電力を600Wまたは1500Wでコイルに供給した。析出時間は表1中、秒で報告される。
【0110】
【表1-1】
【0111】
【表1-2】
【0112】
層が基板上に形成した後、それぞれの層の組成の範囲を測定するために、NRAおよびXPSを使用した。次いで、Berkovich Indenter Hardness Testを使用して、それぞれの層の硬度を測定した。測定された層の硬度は、図4において、窒素(原子%)対ケイ素(原子%)の組成比のの関数としてプロットされる。図4に示されるように、約0.8以上(または約0.85以上)の窒素(原子%)対ケイ素(原子%)の組成比を示す層は、約15GPa以上または約17GPa以上の硬度も示した。これらの値を、同様の厚さを有するが、スパッタリングまたはPVDプロセスによって形成されたSiN層と対比することができる。PVDによって形成されたSiN層は、窒素(原子%)対ケイ素(原子%)の組成比が約0.75である時に最大硬度を示す。
【0113】
図5は、窒素の量(原子%)のの関数としてプロットされた、実施例1A~1Fの層の測定された硬度を例示する。図5に示されるように、約30原子%より多く、または約35原子%より多く(であるが、約40~41原子%未満)の窒素含有量を有する層は、約17GPa以上の硬度を示した。
【0114】
実施例1A~1Fの層の測定された硬度は、図6において、ケイ素の量(原子%)のの関数としてプロットされる。図6に示されるように、約37原子%~約43原子%の範囲のケイ素含有量を有する層は、最大硬度(すなわち、約27GPa)を示した。
【0115】
図7は、層中のアニオンの酸素、炭素およびフッ素分率(すなわち、原子%での酸素、窒素、フッ素および炭素含有量の合計)の関数としての、実施例1B~1Eの層の測定された硬度を示すグラフである。図7に示されるように、窒素の量が減少すると、層の硬度は減少する。約0.2未満のアニオンの酸素、炭素および/またはフッ素分率を有する層は、約15GPa以上の硬度を示した。
【0116】
実施例1A~1Fの層の測定された硬度は、図8において、水素の量(原子%)のの関数としてプロットされる。約18原子%の水素含有量を有する層は最高硬度を示すが、約15原子%~約28原子%の範囲の水素含有量を有する層は、約17GPa以上の硬度を示した。
【0117】
実施例1A~1Fの層の光学バンドギャップおよび屈折率値を測定した。図9は、光学バンドギャップの関数としての層の測定された硬度を示す。一般に、約3.5eV以上(約354nmの波長である3.5eV)の光学バンドギャップを示すコーティング材料は、光学波長域の少なくとも一部分(例えば、約380nm~約700nm、または3.26~1.77eV)において最小の光吸収も示すであろう。したがって、これらのコーティング材料は、有意な吸収が生じずに、全可視スペクトルを伝導して、そして無色であるように見える。図9は、15GPaを超える硬度を有する層が3.5~5eVの光学バンドギャップを有することを示す。図10および図10Aは、それぞれ、実施例1A~1Fの632nmの波長において測定された屈折率に対する測定された硬度をプロットする。測定された硬度は、約1.90~約1.95の屈折率の範囲で最大値に達した。約15GPaより高い硬度を示す層は、約1.8~2.1の範囲で屈折率値も示した。図11は、光学バンドギャップの関数としての632nmにおける屈折率を示す。SiN、SiOおよびSiN層が直線状に存在することが観察された。炭素含有層は、所与のバンドギャップ範囲に関してより低い屈折率を示すか、または所与の屈折率に関してより低いバンドギャップを示した。これは硬度の結果と矛盾しておらず、炭素を有する層がより低い密度を示したことを示すように思われる。理論によって拘束されないが、光学バンドギャップの急激な低下は、材料中のSi-N結合の数を超えるSi-SiまたはC-C結合の増加を示すと思われる。したがって、そのような材料において、硬度の低下および光学バンドギャップの低下が観察された。
【0118】
実施例2
実施例2A~2Dにおいて、約2000nmの厚さおよび次のコーティング材料組成(A~D):SiN、SiNおよびSiO、SiCを有する単層が、上記の通りに形成された。これらの単層は、Plasma-Therm Versaline HDPツールを使用して、個々の基板上にそれぞれ形成された。プロセス条件には、表2に示されるように、約150℃の基板温度および12.5mtorrの圧力におけるシラン、窒素、水素、メタン、酸素および四フッ化ケイ素の析出ガス(適切であれば、sccmの単位で、そして表2に示されるように)の使用が含まれた。表2に示されるように、アルゴンを50sccmの速度で流し、そしてRF電力を600Wまたは1500Wでコイルに供給した。析出時間は表2中、秒で報告される。
【0119】
【表2】
【0120】
実施例2A~2Dの層が基板上に形成した後、それぞれの層の組成を測定するために、NRAおよびXPSを使用した。次いで、Berkovich Indenter Hardness Testを使用して、それぞれの層の硬度を測定した。図12は、窒素(原子%)対ケイ素(原子%)の組成比に対する実施例2A~2Dの測定された硬度値をプロットするグラフである。図12に示されるように、約0.8以上(または約0.85以上)の組成比N:Si(原子%)を示す層は、約15GPa以上または約17GPa以上の硬度を示した。実施例1A~1Fによって、これらの組成比値を、同様の厚さを有するが、スパッタリングまたはPVDプロセスによって形成された既知のSiN層と対比することができる。PVDによって形成されたSiN層は、窒素(原子%)対ケイ素(原子%)の組成比が約0.75である時に最大硬度を示す。
【0121】
図13は、層中のフッ素、酸素および炭素の量(原子%)に対する実施例2B~2Dの測定された硬度値を示すグラフである。フッ素、酸素および炭素のいずれか1種以上を約7原子%未満有する層は、約17GPa以上の硬度を示した。理論によって拘束されないが、少量の炭素の介在によって、同様の少量のフッ素または酸素付加物よりも、より高い程度まで硬度を増加させることが可能であるように見える。したがって、いくつかの実施形態において、コーティング材料は約4原子%までの炭素を含み得る。
【0122】
図14は、実施例2A~2Dの層の約632nmの波長において測定された屈折率に対する測定された硬度を示すグラフである。17GPaより高い硬度を有する層は、約1.85~約2.05の範囲の屈折率値も示した。
【0123】
実施例3
実施例3A~3Hにおいて、約2000nmの厚さおよびSiNの組成を有する単層は、基板バイアスおよび/または水素の添加を伴って、Plasma-Therm Versaline HDPツールを使用して、個々の基板上にそれぞれ形成された。プロセス条件には、表3に示されるように、約150℃の基板温度および12.5mtorrの圧力におけるシラン、窒素および水素(適切であれば、sccmの単位で、そして表3に示されるように)の析出ガスの使用が含まれた。アルゴンを50sccmの速度で流し、そしてRF電力を1500Wでコイルに供給した。析出時間は表3中、秒で報告される。
【0124】
【表3】
【0125】
表4は、これらの層の測定された応力、厚さ、光学バンドギャップ、約632nmの波長における屈折率nおよびk値、ヤング率(E)および硬度(H)値を示す。基板バイアスおよび水素添加の両方の主要な影響は、応力をよりいっそう圧縮にすることによる層における応力の減少であった。応力の負の値は圧縮応力を示し、そして応力の正の値は引張応力を示すことは指摘される。層での過度の応力は、その下に存在する基板の不適切な湾曲を引き起こす可能性がある。このような望ましくない湾曲は、第1の層の応力を打ち消すことができる基板の反対側の第2の層(または「応力補償層」)を配置することによって緩和され得る。応力補償層を用いずに十分に平らなコーティングされた基板を製造するためには、|300GPa|(絶対値)未満の応力が必要とされる。硬度、指数およびバンドギャップなどの他の特性に及ぼすバイアスおよび水素添加の影響は、それほど大きくはなかった。約1GPaの硬度増加は、屈折率のいくらかの減少および光学バンドギャップの増加によって可能である。
【0126】
【表4】
【0127】
実施例4
実施例4A~4Hにおいて、約2000nmの厚さおよびSiNの組成を有し、(上記実施例で例示される)ピーク付近の硬度を有する単層は、より高い基板温度およびより低いイオン化が層特性に及ぼす影響を例示するために、約400℃の基板温度において、Applied Materials,Inc.によって供給されるP5000パラレルプレートCVDを使用して、個々の基板上にそれぞれ形成された。使用された析出プロセス条件を表5に示す。表5に示されるように、析出ガスシラン、アンモニア、水素および窒素は、sccmの流速で利用された。表5に示されるように、圧力は、2~約6torrまで変動した。析出時間(秒)、供給されたRF電力(ワット)およびプレート間の電極ギャップ(ミル)も表5に示す。
【0128】
【表5】
【0129】
表6は、実施例4A~4Hおよび実施例2に記載の実施例2A-1~2A-9の層の測定された厚さ、光学バンドギャップ、約632nmの波長における屈折率nおよびk値、ヤング率(E)および硬度(H)値を示す。高い基板温度においてパラレルプレートPECVDを使用して形成された層(実施例4A~4H)は、より低い基板温度(150℃、実施例2A-1~2A-9)においてICP CVDを使用して形成された層と同様の範囲の硬度/モジュラスおよび屈折率を示すが、実施例4A~4Hの層は、実施例2A-1~2A-9の層よりもわずかに大きいバンドギャップを示した。
【0130】
【表6】
【0131】
実施例4Eは、約22.6原子%の水素含有量を有した。基板上に配置された実施例4Eの層の硬度は、Berkovich Indenter Testによって測定され、かつ約18.3GPaであった。実施例4Eの層は、約453nmの厚さを有した。比較例4Iは、実施例4Eと同一の基板上に配置された3層の副層構造を含んだ。比較例4Iの3層の副層構造は、基板上に配置された113ナノメートル厚のAl副層、Al層上に配置された2マイクロメートル厚の酸窒化アルミニウム副層および酸窒化アルミニウム層上に配置された32マイクロメートル厚のSiO副層を含んだ。比較例4Iの全ての副層はスパッタリング法を使用して形成された。実施例4Eおよび比較例4Iのそれぞれの表面は、200グラムの負荷、500グラムの負荷、1000グラムの負荷および2000グラムの負荷で、Vickersインデンテーション破砕閾値を決定するために、Vickersインデンターによってインデンテーションされた。実施例4Eおよび比較例4Iのそれぞれ5個の試料が、それぞれの負荷において試験された(すなわち、それぞれ合計20個の試料が試験された)。亀裂を示した実施例4Eの試料の数を表7に示す。半分より多くの試料が亀裂を示す時に、Vickersインデンテーション破砕閾値に達する。表7に示されるように、実施例4Eは、2000グラムの負荷において閾値に達しなかった。実施例4Iの試料の半分より多くは、100グラムの負荷において亀裂を示した。
【0132】
【表7】
【0133】
200グラム負荷インデンテーション後の実施例4Eおよび比較例4Iの(200倍の倍率における)光学顕微鏡写真を図15に示す。1000グラム負荷インデンテーション後の実施例4Eおよび比較例4Iの(200倍の倍率における)光学顕微鏡写真を図16に示す。図15および16において、それぞれの顕微鏡写真で示されるスケールは、200マイクロメータの長さである。
【0134】
図15および16に示されるように、比較例4Iはインデンテーションの角において亀裂を示したが、実施例4Eは、比較的そのような亀裂を含まず、実施例4Eは、比較例4Iよりも高い負荷による破壊耐性を示したことを示した。加えて、比較例4Iは、実施例4Eより低い負荷において、そのような亀裂を示した。
【0135】
実施例5
モデル実施例5は、Berkovich Indenter Testによって測定された約19GPa以上の最大硬度、約4.5eVより高い光学バンドギャップ、約3-4未満の約400nmの波長における吸収(k)を示すSiOxNyCz組成を有する層を含む。この層は、約30原子%より高い窒素含有量、約40原子%より高いケイ素およびアルミニウムの合計量、約1原子%~約25原子%の範囲の水素含有量、約0原子%~約7.5原子%の範囲の酸素含有量、ならびに約0原子%~約10原子%の範囲の炭素含有量を含む。モデル実施例5の層は、任意選択的に、フッ素および/またはホウ素を含んでもよい。
【0136】
実施例6
実施例6A~6Fにおいて、約20,000オングストローム(2000nm)~約30,000オングストローム(3000nm)の範囲の厚さおよびSiOの組成を有する単層は、約400℃の基板温度において、Applied Materials,Inc.によって供給されるP5000パラレルプレートCVDを使用して、個々の基板上にそれぞれ形成された。使用された析出プロセス条件を表8に示す。表8に示されるように、析出ガスシランおよび窒素は、示されるシランの流速(sccm)で利用された。窒素の流速は2000sccmで一定に保持された。圧力は約4.5torrで一定であり、かつRF電力も約625ワットで一定で保持された。析出時間(秒)、供給されたRF電力(ワット)およびプレート間の電極ギャップ(ミル)も表8に示す。表8は、バンドギャップ(eV)、632nmの波長における屈折率(RI)、632nmの波長における吸収係数(k)、ヤング率E(GPa)および硬度H(GPa)も示す。
【0137】
【表8】
【0138】
実施例6A~6Fの硬度値は、図17において、屈折率に対してプロットされた。図17中、(Plasma-Therm Versaline HDPツールおよび約150℃の基板温度を使用して形成された)実施例2A-1~2A-9の硬度値および屈折率値も、基板温度の影響を比較するためにプロットされた。表8に示されるように、実施例6Cおよび6Dは、最大バンドギャップ値(すなわち、それぞれ5.49eVおよび5.24eV)も示しながら、最大硬度値(すなわち、それぞれ21GPaおよび18GPa)を示した。理論によって拘束されないが、より高い硬度がSi-N結合を最大化するため、最高硬度は最大透過性において存在すると思われる。
【0139】
実施例7
実施例7は、主要表面と、主要表面上に配置されたコーティング構造とを有する基板を有する物品を含んだ。実施例7で利用された基板は、58モル%のSiO、16.5モル%のAl、16.7モル%のNaO、3モル%のMgO、6.5モル%のPおよび0.05モル%のSnOの名目上組成を有するガラス基板を含んだ。基板は1mmの厚さを有し、そして表9に示されるコーティング構造を有する、コーティングされた基板を含んだ。
【0140】
【表9】
【0141】
Berkovich Indenter Hardness Testを使用して、実施例7の物品の硬度およびモジュラスを評価した。この物品は、19.2GPaの硬度および196GPaのモジュラスを示した。この物品のコーティングされた表面の粗さも測定されて、そして3.09nmのRqおよび2.47nmのRaを示した。図18に示すように、裸ガラス基板およびコーティングされた物品の光学特性を測定した。図18に示されるように、物品の透過率および反射率は、それぞれ、裸ガラス基板の透過率および反射率に近いが、物品は高い硬度を示す。D65光源を使用する、コーティングされた表面における種々の視野角において測定された物品の単一表面反射色値を表10に示す。
【0142】
【表10】
【0143】
実施例8
実施例8は、主要表面と、主要表面上に配置されたコーティング構造とを有する、実施例7と同一の基板を有する物品を含んだ。基板は、表11に示されるコーティング構造を有する、コーティングされた基板を含んだ。
【0144】
【表11】
【0145】
Berkovich Indenter Hardness Testを使用して、実施例8の物品の硬度およびモジュラスを評価した。この物品は、11.4GPaの硬度および99GPaのモジュラスを示した。この物品のコーティングされた表面の粗さを測定し、そして1.65nmのRqおよび1.31nmのRaを示した。図19に示すように、裸ガラス基板およびコーティングされた物品の光学特性を測定した。図19に示されるように、物品の透過率および反射率は、それぞれ、裸ガラス基板の透過率および反射率よりもさらに改善された。D65光源を使用する、コーティングされた表面における種々の視野角において測定された物品の単一表面反射色値を表12に示す。
【0146】
【表12】
【0147】
実施例9
実施例9は、主要表面と、主要表面上に配置されたコーティング構造とを有する、実施例7と同一の基板を有する物品を含んだ。基板は、表13に示されるコーティング構造を有する、コーティングされた基板を含んだ。
【0148】
【表13】
【0149】
Berkovich Indenter Hardness Testを使用して、実施例9の物品の硬度およびモジュラスを評価した。この物品は、15.8GPaの硬度および140GPaのモジュラスを示した。この物品のコーティングされた表面の粗さも測定し、そして3.31nmのRqおよび2.66nmのRaを示した。裸ガラス基板およびコーティングされた物品の光学特性は、図20に示す通りであった。図20に示されるように、物品の透過率および反射率は、それぞれ、裸ガラス基板の透過率および反射率よりもさらに改善された。D65光源を使用する、コーティングされた表面における種々の視野角において測定された物品の単一表面反射色値を表14に示す。
【0150】
【表14】
【0151】
実施例10
実施例10は、主要表面と、主要表面上に配置されたコーティング構造とを有する、実施例7と同一の基板を有する物品を含んだ。基板は、表15に示されるコーティング構造を有する、コーティングされた基板を含んだ。
【0152】
【表15】
【0153】
Berkovich Indenter Hardness Testを使用して、実施例10の物品の硬度およびモジュラスを評価した。この物品は、16.6GPaの硬度および151GPaのモジュラスを示した。この物品のコーティングされた表面の粗さを測定し、そして3.65nmのRqおよび2.91nmのRaを示した。図21に示すように、裸ガラス基板およびコーティングされた物品の光学特性を測定した。図21に示されるように、物品の透過率および反射率は、それぞれ、裸ガラス基板の透過率および反射率に匹敵するか、またはそれよりもさらに改善された。D65光源を使用する、コーティングされた表面における種々の視野角において測定された物品の単一表面反射色値を表16に示す。
【0154】
【表16】
【0155】
実施例10のコーティング構造の微細組織は、TEMを使用して評価した。図22A~22Eに示されるように、層は完全に密集しておらず、そしていくらかの細孔が見られた。
【0156】
図23~25に示されるように、EDSを使用して、厚さの関数としてのコーティング構造の組成を評価した。図23は、コーティング構造の全厚さを示し、図24は、(ガラスからの)コーティング構造の最初の600nmの拡大図を示し、そして図25は(ガラスからの)コーティング構造の最初の400ナノメートルの拡大図を示す。図24および図25においてより明白に示されるように、Siの量は、0nmから600nmの厚さに沿って比較的一定である。窒素および酸素の量は、異なる層で交互に並ぶ。例えば、最初の100nmは、ほとんど窒素を含まず、約70~80原子%の酸素を有する。100nm~約250nmの深さに沿って、窒素の量は約50~70原子%であるが、酸素の量は、同一深さに沿って、10原子%未満である。層の組成が変化すると、この様式で窒素および酸素の濃度が交互に並ぶ。
【0157】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、種々の修正および変更を行うことができることは当業者に明白であろう。
【0158】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0159】
実施形態1
ケイ素、アルミニウムまたはそれらの組合せと、
水素と、
酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素のいずれか1種以上と
を含んでなるコーティング材料において、
約50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによって測定した場合、約17GPa以上の最大硬度を示し、かつ
約3.5eV以上の光学バンドギャップを示すことを特徴とする、コーティング材料。
【0160】
実施形態2
前記ケイ素、アルミニウムまたはそれらの組合せが約35原子%以上の量で存在し、かつ
前記水素が、約1原子%~約30原子%の範囲の量で存在することを特徴とする、実施形態1に記載のコーティング材料。
【0161】
実施形態3
前記ケイ素が、約37原子%~約50原子%の範囲の量で存在することを特徴とする、実施形態2に記載のコーティング材料。
【0162】
実施形態4
約30原子%以上の量で窒素をさらに含んでなることを特徴とする、実施形態1~3のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0163】
実施形態5
窒素をさらに含んでなり、水素が約15原子%~約28原子%の範囲の量で存在することを特徴とする、実施形態1~4のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0164】
実施形態6
約632nmの波長において約1.8~約2.1の範囲の屈折率をさらに示すことを特徴とする、実施形態1~5のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0165】
実施形態7
約0.8以上の窒素の量(原子%)対ケイ素の量(原子%)の組成比を含んでなることを特徴とする、実施形態3に記載のコーティング材料。
【0166】
実施形態8
約0.2未満の炭素(原子%)、酸素(原子%)およびフッ素(原子%)の合計量対アニオンの量(原子%)の組成比をさらに含んでなることを特徴とする、実施形態1~7のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0167】
実施形態9
約7.5原子%までのゼロではない量の酸素をさらに含んでなることを特徴とする、実施形態1~8のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0168】
実施形態10
約10原子%までのゼロではない量の炭素をさらに含んでなることを特徴とする、実施形態1~9のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0169】
実施形態11
約5原子%までのゼロではない量のフッ素をさらに含んでなることを特徴とする、実施形態1~10のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0170】
実施形態12
約19GPa以上の硬度をさらに示すことを特徴とする、実施形態1~11のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0171】
実施形態13
約632nmの波長において約0.2以下の吸光係数をさらに示すことを特徴とする、実施形態1~12のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0172】
実施形態14
約35原子%以上の量のケイ素、アルミニウムまたはそれらの組合せと、
約1~約30原子%の範囲の量の水素と、
約30原子%以上の量の窒素と、
約0~約7.5原子%の範囲の量の酸素と、
約0~約10原子%の範囲の量の炭素と、
約0~約5原子%の範囲の量のフッ素と
を含んでなり、窒素(原子%)対ケイ素(原子%)の比率が約0.8以上であることを特徴とする、コーティング材料。
【0173】
実施形態15
約0.1~約7.5原子%の範囲の量の酸素と、
約0.1~約10原子%の範囲の量の炭素と、
約0.1~約5原子%の範囲の量のフッ素と
のいずれか1種以上をさらに含んでなることを特徴とする、実施形態14に記載のコーティング材料。
【0174】
実施形態16
ホウ素をさらに含んでなることを特徴とする、実施形態14または実施形態15に記載のコーティング材料。
【0175】
実施形態17
前記ケイ素、アルミニウムまたはそれらの組合せが、約37原子%~約50原子%の範囲の量で存在することを特徴とする、実施形態14~16のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0176】
実施形態18
水素が、約15原子%~約28原子%の範囲の量で存在することを特徴とする、実施形態14~17のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0177】
実施形態19
窒素が、約30原子%~約45原子%の範囲の量で存在することを特徴とする、実施形態14~18のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0178】
実施形態20
約3.5eV~約5.5eVの範囲の光学バンドギャップをさらに含んでなることを特徴とする、実施形態14~19のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0179】
実施形態21
約150GPa以上のヤング率および約-400MPa以上の圧縮応力をさらに含んでなることを特徴とする、実施形態14~20のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0180】
実施形態22
約50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによって測定した場合、約17GPa以上の最大硬度をさらに示すことを特徴とする、実施形態14~21のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0181】
実施形態23
約50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによって測定した場合、約19GPa以上の最大硬度をさらに示すことを特徴とする、実施形態14~22のいずれか一項に記載のコーティング材料。
【0182】
実施形態24
主要表面を有する基板と、
前記主要表面上に配置されて、コーティングされた表面を形成するコーティング構造と
を含んでなる物品において、前記コーティング構造が、ケイ素、アルミニウム、水素、酸素、窒素、ホウ素、フッ素および炭素を含んでなり、
前記物品または前記コーティング構造が、約3.5eV以上の光学バンドギャップを示し、かつ
前記物品が、約50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによって前記コーティングされた表面上で測定した場合、約17GPa以上の最大硬度を示し、かつ
前記物品が、約400nm~約800nmの範囲の光学波長域において約85%以上の平均透過率を示すことを特徴とする、物品。
【0183】
実施形態25
前記光学波長域において約92%以上の透過率を示すことを特徴とする、実施形態24に記載の物品。
【0184】
実施形態26
前記コーティング構造が約1000nm以上の厚さを含んでなることを特徴とする、実施形態24または実施形態25に記載の物品。
【0185】
実施形態27
前記厚さが約2000nm以上であることを特徴とする、実施形態26に記載の物品。
【0186】
実施形態28
前記コーティング構造が、プラズマ強化化学蒸着コーティング構造を含んでなることを特徴とする、実施形態25~27のいずれか一項に記載の物品。
【0187】
実施形態29
前記インデント深さに沿って、約17GPa~約35GPaの範囲の最大硬度を示すことを特徴とする、実施形態25~28のいずれか一項に記載の物品。
【0188】
実施形態30
前記コーティングされた表面において測定した場合、参照点から約2未満の参照点色シフトを示す、国際照明委員会の光源下で直角入射での(L、a、b)測色系における物品透過率色座標、ならびに
前記表面において測定した場合、参照点から約5未満の参照点色シフトを示す、国際照明委員会の光源下で直角入射での(L、a、b)測色系における物品反射率色座標
の1つ以上を示し、
前記参照点が色座標(a=0、b=0)、色座標(a=-2、b=-2)および前記基板の反射率色座標の少なくとも1つを含んでなり、
前記参照点が色座標(a=0、b=0)である場合、前記参照点色シフトは、√((a 物品+(b 物品)によって定義され、
前記参照点が色座標(a=-2、b=-2)である場合、前記参照点色シフトは、√((a 物品+2)+(b 物品+2))によって定義され、かつ
前記参照点が前記基板の色座標である場合、前記参照点色シフトは、√((a 物品-a 基板+(b 物品-b 基板)によって定義されることを特徴とする、実施形態25~29のいずれか一項に記載の物品。
【0189】
実施形態31
Aシリーズ光源、Bシリーズ光源、Cシリーズ光源、Dシリーズ光源およびFシリーズ光源からなる群から選択される国際照明委員会の光源下、参照入射照明角度を参照して、20度以上の入射照明角度において約5以下の角度色シフトを示し、角度色シフトが、次の等式:√((a -a +(b -b )(式中、a およびb は、参照入射照明角度において見た場合の物品の座標を表し、a およびb は、入射照明角度において見た場合の物品の座標を表す)を使用して計算され、かつ前記参照入射照明角度が6度であることを特徴とする、実施形態25~30のいずれか一項に記載の物品。
【0190】
実施形態32
チェンバーに供給源ガスを導入するステップと、
基板上で化学蒸着によって材料を形成するステップと
を含んでなる、材料の形成方法において、
前記材料が、約3.5eV以上の光学バンドギャップ、厚さ、および約50nm以上のインデント深さに沿って、Berkovich Indenter Testによって測定した場合、約17GPa以上の最大硬度を示すことを特徴とする、方法。
【0191】
実施形態33
前記供給源ガスが、ケイ素供給源ガス、アルミニウム供給源ガスおよび窒素供給源ガスのいずれか1種以上を含んでなることを特徴とする、実施形態32に記載の方法。
【0192】
実施形態34
前記ケイ素供給源ガスがシランを含んでなることを特徴とする、実施形態33に記載の方法。
【0193】
実施形態35
前記窒素供給源ガスが、窒素、酸化窒素およびアンモニアのいずれか1種以上を含んでなることを特徴とする、実施形態33に記載の方法。
【0194】
実施形態36
水素供給源ガス、酸素供給源ガス、炭素供給源ガス、ホウ素供給源ガスおよびフッ素供給源ガスのいずれか1種以上を前記チャンバーに導入するステップを含んでなることを特徴とする、実施形態32~35のいずれか一項に記載の方法。
【0195】
実施形態37
前記水素供給源ガスが、シランおよび水素を含んでなることを特徴とする、実施形態36に記載の方法。
【0196】
実施形態38
前記炭素供給源ガスが、一酸化炭素、二酸化炭素、アセチレン、ブタンおよびメタンのいずれか1種以上を含んでなることを特徴とする、実施形態36に記載の方法。
【0197】
実施形態39
前記フッ素供給源ガスが、四フッ化ケイ素およびフルオロカーボンのいずれか1種以上を含んでなることを特徴とする、実施形態36に記載の方法。
【0198】
実施形態40
前記材料が約400℃以下の温度において形成されることを特徴とする、実施形態32~39のいずれか一項に記載の方法。
【0199】
実施形態41
前記材料が形成される時、前記材料および前記チャンバーの部分のいずれか一つ以上を選択的にエッチングするステップをさらに含んでなることを特徴とする、実施形態32~40のいずれか一項に記載の方法。
【0200】
実施形態42
前記チャンバーにホウ素供給源を導入するステップをさらに含んでなることを特徴とする、実施形態32~41のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図10A
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図23
図24
図25