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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/08 20060101AFI20220606BHJP
   B65H 23/192 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
B41F33/08 S
B65H23/192
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019507497
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2018008136
(87)【国際公開番号】W WO2018173703
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2017059639
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】三好 ▲清▼人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 高虎
(72)【発明者】
【氏名】中島 龍太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】松原 信也
(72)【発明者】
【氏名】人見 泰史
(72)【発明者】
【氏名】池田 誠人
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-104701(JP,A)
【文献】特開2007-160538(JP,A)
【文献】特開2006-224413(JP,A)
【文献】特開2013-123916(JP,A)
【文献】特開平07-315649(JP,A)
【文献】特開昭60-137651(JP,A)
【文献】特開2009-234767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/08
B65H 23/18
B65H 23/192
B41F 33/06
B41F 33/00
B41F 13/00
B41F 13/004
B41F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動経路に沿って連続的に存在するウェブに所定の処理を施すウェブ処理システムの制御装置であって、
前記ウェブの厚みが搬送方向に不均一であり、
前記ウェブ処理システムは前記ウェブの非加工面に接触しながら回転する回転体を備え、
前記回転体が一回転する間の前記回転体の回転中心から前記ウェブの加工面までの距離の変化に基づいて、前記回転体の回転速度を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記回転体との接触面における前記ウェブの厚みが厚いほど回転速度が遅くなるように前記回転体の回転速度を制御することを特徴とする請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記ウェブ処理システムは、前記回転体よりも上流側に前記ウェブの厚みに関する情報を検出する厚み検出器をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ウェブ処理システムは、前記ウェブの加工面に接触しながら回転する別の回転体をさらに備え、
前記別の回転体の周速度が前記ウェブの加工面の搬送速度と一致するように制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動経路に沿って連続的に存在するウェブに印刷等の所定の処理を施すウェブ処理システムを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブ処理システムの一例として印刷システムがある。印刷システムは、移動経路に沿って連続的に存在する紙・フィルムなどの長尺物(ウェブ)に印刷処理を施す。従来では、特許文献1に記載されるような印刷システムが提案されている。
【0003】
印刷システムは、例えばプリンテッドエレクトロニクス(PE)への適用が進められており、さらなる印刷の高精度化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-123916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷システムは、ウェブに接触しながら回転して印刷等の所定の処理を施す回転体を備える。回転体は、加工精度による誤差や取り付け誤差を少なからず含む。こうした誤差は、印刷の高精度化の妨げとなりうる。
【0006】
このような課題は、印刷システムに限らず、ウェブに接触しながら所定の処理を施す回転体を備える他の種類のウェブ処理システムでも起こりうる。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、より高精度な処理を実現するためのウェブ処理システムの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御装置は、移動経路に沿って連続的に存在するウェブに所定の処理を施すウェブ処理システムの制御装置であって、ウェブ処理システムはウェブに接触しながら回転する回転体を備える。本制御装置は、ウェブとの接触面における回転体の周速度がウェブの搬送速度と一致するように回転体の回転速度を制御する。
【0009】
本発明の別の態様もまた、制御装置である。この装置は、移動経路に沿って連続的に存在するウェブに所定の処理を施すウェブ処理システムの制御装置であって、ウェブ処理システムはウェブに接触しながら回転する回転体を備える。本制御装置は、ウェブとの接触面における回転体の周速度が一定となるように回転体の回転速度を制御する。
【0010】
本発明のさらに別の態様もまた、制御装置である。この装置は、移動経路に沿って連続的に存在するウェブに所定の処理を施すウェブ処理システムの制御装置であって、ウェブ処理システムはウェブの非加工面に接触しながら回転する回転体を備える。回転体が一回転する間の回転体の回転中心からウェブの加工面までの距離の変化に基づいて、回転体の回転速度を制御する。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より高精度な処理を実現するためのウェブ処理システムの制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る制御装置を備えるウェブ処理システムの構成を示す模式図である。
図2図1の制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図2の補正値データ保持部が保持するブランケット胴の補正値データのデータ構造図を示す。
図4】変形例に係るウェブ処理システムの構成を示す模式図である。
図5】別の変形例に係るウェブ処理システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る制御装置100を備えるウェブ処理システム2の構成を示す模式図である。本実施の形態のウェブ処理システム2は印刷システムである。ウェブ処理システム2は、ウェブ4を所定の移動経路に沿って移動させ、移動しているウェブ4に印刷を施す。ウェブ4は紙やフィルムなどの帯状またはシート状の基材であり、移動経路に沿って連続的に存在する。ウェブ4の厚みは後述の各胴の径に比べて十分に小さいため、本実施の形態では、ウェブ4の厚みを考慮しないものとする。
【0016】
ウェブ処理システム2は、ウェブ4に印刷を施す印刷装置10と、印刷装置10を制御する制御装置100と、を含む。
【0017】
印刷装置10は、本実施の形態ではオフセット印刷装置である。印刷装置10は、圧胴20と、圧胴駆動モータ22と、ブランケット胴30と、ブランケット胴駆動モータ32と、版胴40と、版胴駆動モータ42と、インキパン50と、を含む。以下、圧胴20、ブランケット胴30および版胴40をまとめていうときや特に区別しないときには、単に「胴」とよぶ。
【0018】
インキパン50は、インキを収容する容器であり、版胴40の下方に配置される。
【0019】
版胴40は、円柱状の回転体であり、その外周面にはウェブ4に印刷されるべき印刷パターンに対応する複数の版(凹部)が形成されている。版胴40は、回転軸R4周りに回転自在に保持される。版胴40は特に、下部がインキに浸るように保持される。
【0020】
版胴駆動モータ42は、版胴40を(図1では反時計回りに)回転駆動する。版胴駆動モータ42は特に、ブランケット胴30と接触する接触面における版胴40の周速度がウェブ4の搬送速度と一致する用に版胴40を回転駆動する。本実施の形態では、ウェブ4の搬送速度は実質的に一定である。また、搬送速度は、ウェブ4の印刷面(加工面)の速度であっても、ウェブ4の厚み方向の中心の速度であってもよい。
【0021】
ブランケット胴30は、円柱状の回転体部材であり、回転軸R3周りに回転自在に保持される。ブランケット胴30は特に、その回転軸R3が回転軸R4と平行で、かつ、その外周面が版胴40の外周面と接触するように設置される。
【0022】
ブランケット胴駆動モータ32は、ブランケット胴30を(図1では時計回りに)回転駆動する。ブランケット胴駆動モータ32は特に、ウェブ4と接触する接触面におけるブランケット胴30の周速度がウェブ4の搬送速度と一致する用にブランケット胴30を回転駆動する。
【0023】
圧胴20は、円柱状の回転体であり、回転軸R2周りに回転自在に保持される。圧胴20は特に、その回転軸R2が回転軸R3および回転軸R4と平行で、かつ、その外周面がブランケット胴30に圧接するように配置される。圧胴20とブランケット胴30との間を通って搬送されるウェブ4は、圧胴20によりブランケット胴30に圧接される。
【0024】
圧胴駆動モータ22は、圧胴20を(図1では反時計回りに)回転駆動する。圧胴駆動モータ22は特に、ウェブ4と接触する接触面における圧胴20の周速度がウェブ4の搬送速度と一致するように圧胴20を回転駆動する。
【0025】
制御装置100は、圧胴駆動モータ22、ブランケット胴駆動モータ32、および版胴駆動モータ42を制御する。
【0026】
制御装置100に制御されて圧胴駆動モータ22、ブランケット胴駆動モータ32、および版胴駆動モータ42が駆動する。圧胴駆動モータ22、ブランケット胴駆動モータ32、版胴駆動モータ42はそれぞれ、圧胴20、ブランケット胴30、版胴40を回転駆動する。この際、インキパン50に収容されたインキが版胴40の版に順次供給され、このインキがブランケット胴30の外周面に転写される。ブランケット胴30に転写されたインキはさらに、ブランケット胴30と圧胴20との間に搬送されてくるウェブ4に転写(印刷)される。このようにして、ウェブ4の印刷が連続的に行われる。
【0027】
ところで、圧胴20、ブランケット胴30、版胴40は、理想的には、断面が真円の円柱状に形成され、中心軸が回転軸に一致するよう設置される。しかしながら、各胴は、加工精度による誤差により、通常、断面は完全な真円とはならない。また、各胴は、取り付け誤差により、通常、厳密には少なからず偏心した状態となる。このため、胴の回転軸から、その胴が所定の処理を施す他の部材(以下、「相手部材」ともよぶ)までの距離は、胴の回転角度により異なる、言い換えると、胴が一回転する間に変化する。本実施の形態では、以下の距離が胴の回転に伴って変化する。
(1)圧胴20の回転軸R2から、圧胴20が圧接するウェブ4までの距離r
(2)ブランケット胴30の回転軸R3から、ブランケット胴30がインキを転写するウェブ4までの距離r
(3)版胴40の回転軸R4から、版胴40がインキを転写するブランケット胴30までの距離r
【0028】
ここで、胴の半径に相当する距離であって胴の回転軸から相手部材までの距離をr[m]とすると、胴を一定の回転速度N[rpm]で回転させたときに相手部材と接触する接触面における胴の周速度v[m/s]は次式で表される。
(式)v=N×2πr
【0029】
この式から明らかなように、胴が一回転する間に距離rが変化する場合、胴を一定の回転速度Nで回転させても、周速度vは一定とはならず、距離rの変化に伴って変化する。周速度vは特に、胴を一定の回転速度Nで回転させた場合、距離rが長いほど速くなる。
【0030】
距離rの変化に伴う周速度vの変化は、版胴40であればブランケット胴30に転写されるインキの間隔に影響し、圧胴20であればウェブ4の搬送速度に影響し、ブランケット胴30であればウェブ4に転写されるインキの位置に影響する。
【0031】
いずれにせよ、各胴の加工精度による誤差や取り付け誤差(以下、これらをまとめていうときや特に区別しないときには、「製造誤差」とよぶ)を考慮せずに一定の回転速度で各胴を回転させると、言い換えると、各胴が理想的な形状に形成され理想的な状態で取り付けられているものとして各胴の回転を制御すると、現実に存在する各胴の製造誤差により、ウェブ4への印刷パターンの印刷位置にずれが生じうる。そこで、本実施の形態に係る制御装置100は、こうした製造誤差が印刷位置に及ぼす影響を低減するように各駆動モータを制御する。以下、具体的に説明する。
【0032】
図2は、図1の制御装置100の機能構成を示すブロック図である。制御装置100は、通信部110と、UI(ユーザインタフェース)部120と、制御部130と、記憶部140と、を備える。
【0033】
ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
通信部110は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。例えば制御部130は、通信部110を介して各駆動モータに駆動指示を送信する。
【0035】
UI部120は、ユーザからの各種入力を受け付ける。例えばUI部120は、回転速度データの入力を受け付ける。
【0036】
記憶部140は、制御部130により参照、更新されるデータを記憶する記憶領域である。記憶部140は、回転速度データ保持部142を含む。
【0037】
回転速度データ保持部142は、相手部材との接触面における胴の周速度が一定となるように胴を回転させるための回転速度データを胴ごとに保持する。上述したように、胴を一定の回転速度Nで回転させた場合、胴の周速度は、距離rが長いほど速くなる。したがって、胴の周速度を一定にするための回転速度データは、距離rが長くなる回転角度ほど胴の回転速度が遅くなるように設定される。
【0038】
図3は、回転速度データ保持部142が保持する回転速度データの一例を示すデータ構造図である。図3の回転速度データは、例えばブランケット胴30の回転速度データである。回転速度データは、回転角度182と、回転速度184と、を対応付けて保持する。回転角度182は、胴およびその駆動モータの基準位置からの回転角度である。回転速度184は、各回転角度のときの回転速度を示す。例えば、回転角度が20°~30°の範囲ではN+0.2[rpm]の回転速度で駆動モータひいては胴を回転させることを示している。図3では回転角度10°ごとに回転速度を設定しているが、より細かい回転角度ごとに回転速度を設定してもより粗い回転角度ごとに回転速度を設定してもよい。
【0039】
回転速度データは、実際に印刷を行った結果物に基づいて決定してもよい。ブランケット胴30の回転速度データを決定する場合を例に説明する。まず、各胴をそれぞれの基準の回転速度で回転させて印刷を行う。基準の回転速度は、例えば各胴の設計値から算出される回転速度である。次に、ブランケット胴30だけ90°位相をずらした状態で、各胴をそれぞれの基準の回転速度で回転させて印刷を行う。そして、印刷された印刷パターンのピッチの変化を計測する。このピッチの変化からブランケット胴30を一回転させた場合の距離rの変化が分かり、相手部材との接触面における周速度を一定にするための回転速度データを決定できる。例えば、ピッチが広いところほどブランケット胴30の回転速度が遅いため、その回転角度での回転速度が速くなるよう回転速度データを決定する。
【0040】
また回転速度データは、胴の距離rの変化を物理的に計測した結果に基づいて決定してもよい。例えば、レーザ変位計やダイヤルゲージなどを用いて胴の回転角度ごとの距離rを計測し、それを基に回転角度データを決定してもよい。
【0041】
図2に戻り、制御部130は、モータ制御部132を含む。モータ制御部132は、各駆動モータを駆動させる。モータ制御部132は特に、回転速度データ保持部142に保持される回転速度データに基づいて各駆動モータを回転駆動させる。
【0042】
以上説明した本実施の形態に係る制御装置100によると、相手部材との接触面における周速度が搬送速度と一致するように、本実施の形態では相手部材との接触面における周速度が一定となるように、各胴版の回転速度が制御される。これにより、印刷位置のずれが抑制される。
【0043】
以上、実施の形態に係る制御装置について説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0044】
(変形例1)
実施の形態では、圧胴20、ブランケット胴30、版胴40の回転を制御する場合について説明したが、これに限られず、ウェブ4に直接的または間接的に所定の処理を施す他の胴(すなわち回転体)にも本実施の形態の技術的思想を適用できる。
【0045】
例えば、回転数に応じた速さを与える搬送胴の回転を制御する場合にも本実施の形態の技術的思想を適用できる。
【0046】
また例えば、印刷装置10はCI型またはライン型のフレキソ印刷装置、凹版(グラビア)印刷装置などの他の方式の印刷装置でもよく、この場合、これら他の方式の印刷装置の各胴であってウェブ4に直接的または間接的に所定の処理を施す各胴の回転を制御する場合にも本実施の形態の技術的思想を適用できる。
【0047】
(変形例2)
実施の形態では、ウェブ処理システム2が印刷システムである場合について説明したが、これに限られず、ウェブに所定の処理を施す他の種類のウェブ処理システムにも本実施の形態の技術的思想を適用できる。
【0048】
(変形例3)
実施の形態では、ウェブ4の搬送速度は実質的に一定であり、ウェブ4との接触面における圧胴20、ブランケット胴30、および版胴40の周速度がそのような一定の速度になるように各駆動モータを制御する場合について説明した。しかしながら、これに限られず、ウェブ4の搬送速度が変化し、ウェブ4との接触面における各胴の周速度がそのような変化する搬送速度に一致するように各駆動モータを制御してもよい。この場合、ウェブ処理システム2は例えば、ウェブ4の搬送速度を検出する速度検出器をさらに備えてもよい。そしてモータ制御部132は、回転速度データ保持部142に保持される回転速度データを、速度検出器が算出したウェブ4の搬送速度に基づいて補正し、補正した回転速度データに基づいて各駆動モータを回転駆動させてもよい。
【0049】
(変形例4)
実施の形態では、制御装置100は、回転速度データ保持部142に保持された回転速度データに基づいて各胴を回転させる場合、すなわち各胴の製造誤差を予め計測し、その計測結果に基づいて各胴の回転を制御する場合について説明したが、これに限られず、胴の製造誤差を実質的にリアルタイムに計測し、その計測結果に基づいて各胴の回転を制御してもよい。
【0050】
図4は、変形例に係るウェブ処理システム2の構成を示す模式図である。ここでは、ブランケット胴30の製造誤差を実質的にリアルタイムに計測し、その計測結果に基づいてブランケット胴30の回転を制御する場合について説明する。圧胴20、版胴40の製造誤差を実質的にリアルタイムに計測して、それらの計測結果に基づいて圧胴20、版胴40の回転を制御してもよい。
【0051】
ウェブ処理システム2は、誤差検出器60をさらに備える。誤差検出器60は、例えばレーザ変位計であり、距離rに関する情報を実質的に検出する。具体的には誤差検出器60は、ブランケット胴30とウェブ4との接触面よりもブランケット胴30の回転方向における手前の位置において、回転軸R3からブランケット胴30の外周面までの距離すなわちブランケット胴30の半径に相当する距離を所定の周期(例えば1秒周期)で検出する。モータ制御部132は、誤差検出器60からの検出値に基づいて、その検出した部分が相手部材に接触するタイミングの胴の回転速度を制御する。この場合、ブランケット胴30の製造誤差が変化する事象が生じても、ブランケット胴30を的確な速度で回転させることができる。
【0052】
(変形例5)
実施の形態では、ウェブ4の厚みをゼロと見なした。本変形例では、ウェブの厚みを考慮する場合について説明する。
【0053】
図5は、別の変形例に係るウェブ処理システム2の構成を示す模式図である。図5では、ウェブ4の厚みを誇張して描いている。圧胴20は、ウェブ4の印刷面(加工面)とは反対側に位置する。ウェブ4の厚みが搬送方向に不均一である場合、ウェブ4の厚みの変化によって、圧胴20と印刷面との距離r’が変化する。
【0054】
ウェブ処理システム2は、厚み検出器70をさらに備える。厚み検出器70は、例えばレーザ変位計であり、ウェブ4の厚みに関する情報を実質的にリアルタイムに検出する。具体的には厚み検出器70は、圧胴20とブランケット胴30との圧接部よりも上流側において、ウェブ4の厚みを所定の周期(例えば1秒周期)で検出する。
【0055】
モータ制御部132は、検出されたウェブ4の厚みを考慮して、胴の回転速度を制御する。具体的には、モータ制御部132は、圧胴20を半径がr’の胴(すなわち圧胴20’である)と見なして、圧胴20’の印刷面における周速度が一定になるように圧胴20の回転速度を制御する。モータ制御部132は、例えば、回転速度データ保持部142に保持される圧胴20の回転速度データをウェブ4の厚みに応じて補正し、補正した回転速度データで圧胴駆動モータ22を制御すればよい。
【0056】
本変形例によれば、ウェブ4が比較的厚くウェブ4の厚みを無視できない場合に、印刷の高精度化を実現できる。
【0057】
上述した前提技術と実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0058】
2 ウェブ処理システム、 4 ウェブ、 20 圧胴、 22 圧胴駆動モータ、 30 ブランケット胴、 32 ブランケット胴駆動モータ、 40 版胴、 42 版胴駆動モータ、 100 制御装置、 184 回転速度。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、移動経路に沿って連続的に存在するウェブに印刷等の所定の処理を施すウェブ処理システムを制御する制御装置に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5