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特許7083815タイヤ表面にスタッドを配置するための手段を備えたタイヤ、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】タイヤ表面にスタッドを配置するための手段を備えたタイヤ、および方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20220606BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220606BHJP
   B60C 11/02 20060101ALI20220606BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
B60C11/00 G
B60C5/00 C
B60C11/02 B
B60C19/00 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019512709
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 NL2017050573
(87)【国際公開番号】W WO2018044165
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】2017415
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517240768
【氏名又は名称】ドライブ テクノロジー ホランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ティルバーグ、マリヌス ヨハネス コーネリス
(72)【発明者】
【氏名】エッセンス、ヘンリクス ジョセフス マリア
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィス、ヨハネス コンスタント マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン カステレン、ヒューベルトス ヘンドリクス アドリアヌス
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第03721500(DE,A)
【文献】特開昭60-248409(JP,A)
【文献】国際公開第01/070519(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0083605(KR,A)
【文献】特開平04-297308(JP,A)
【文献】実開平04-007204(JP,U)
【文献】西独国特許出願公開第02031993(DE,A)
【文献】独国特許出願公開第19710434(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 5/00
B60C 11/02
B60C 11/03
B60C 19/00
B60C 11/16
B60C 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を地面に支持するためのプロファイルドトレッド(7)を有する車両の車輪用のタイヤ(1)であって、
- 2つの対向する側壁(3)と、周壁(5)とによって形成されたタイヤ本体であって、前記タイヤ本体は前記タイヤ(1)内の調整可能なガス圧を維持するように構成されており、前記周壁(5)に複数の保持空間(11)が設けられている、タイヤ本体と、
- 前記トレッド(7)の少なくとも一部を形成する複数のトレッドパターン要素(9)であって、前記複数のトレッドパターン要素のそれぞれは前記複数の保持空間(11)のうちの1つの保持空間(11)に収容され、それが前記周壁(5)から大きく突出する第1の位置と、それが前記周壁(5)からあまり突出せず、あるいは前記周壁(5)内に収容される第2の位置との間を、前記周壁(5)に対して実質的に直角に変位することができる、複数のトレッドパターン要素(9)と、
- 前記プロファイルドトレッド(7)のトレッドパターン高さ(H)を調整するために前記複数の保持空間(11)内の前記複数のトレッドパターン要素(9)を前記第1および第2の位置の間で変位させるように構成された調整装置(13)と、
を備え
前記調整装置(13)は、ばね装置を備え、前記ばね装置は、前記複数のトレッドパターン要素(9)のうちの1つのトレッドパターン要素(9)を前記周壁(5)から大きく突出する前記第1の位置へと変位させるときに、前記複数のトレッドパターン要素(9)の各々のために、前記ばね装置のばね作用に起因する抵抗をもたらすように構成されている、タイヤ(1)。
【請求項2】
前記調整装置(13)は、前記ばね装置のばね作用の程度を調整するように構成されている、請求項に記載のタイヤ(1)。
【請求項3】
前記タイヤ(1)は、前記複数のトレッドパターン要素(9)の各々のために、前記複数のトレッドパターン要素(9)を前記第2の位置の方向に変位させるときに、前記タイヤ(1)内の維持することができる前記ガス圧に起因する抵抗をもたらすように構成され、かつ、前記タイヤ(1)内に維持される前記ガス圧が高められるときに、前記複数のトレッドパターン要素(9)を前記周壁から大きく突出する前記第1の位置の方向に変位させるように構成され、前記調整装置(13)は、前記タイヤ(1)内に維持される前記ガス圧を調整するようにさらに構成されている、請求項1または2に記載のタイヤ(1)。
【請求項4】
前記複数のトレッドパターン要素(9)の各々は、前記タイヤ(1)の周方向に延びる通路(17)を備え、前記調整装置(13)は、前記複数のトレッドパターン要素(9)の各々の前記通路(17)を通って延びている、請求項1~のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項5】
記ばね装置は、前記周壁(5)の前記トレッドとは反対向きの側において、前記複数のトレッドパターン要素(9)の各々の前記通路(17)を通って延び、かつ、前記ばね作用のために、前記周壁(5)の前記トレッドとは反対向きの側に当接している、請求項4に記載のタイヤ(1)。
【請求項6】
前記複数のトレッドパターン要素(9)のうちの各々のトレッドパターン要素(9)は、前記通路(17)を囲む補強フレーム(35)を備え、前記補強フレーム(35)は、好ましくは複合材料を含む、請求項またはに記載のタイヤ(1)。
【請求項7】
前記複数のトレッドパターン要素(9)のうちの各々のトレッドパターン要素(9)は、複合トレッドパターン要素として形成され、前記複数のトレッドパターン要素(9)のうちの各々のトレッドパターン要素(9)の前記通路(17)を囲む部分は、前記調整装置(13)を前記通路(17)に取り付けるために分割可能である、請求項4、5またはのいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項8】
前記複数のトレッドパターン要素(9)は、列を成して配置され、前記ばね装置は、トレッドパターン要素(9)の複数の列に対応する互いに平行に延びる複数のばね要素(15)を備え、前記ばね要素(15)の各々は、前記トレッドパターン高さ(H)を増加させるために、トレッドパターン要素の列の前記複数のトレッドパターン要素(9)を前記周壁(5)から大きく突出する前記第1の位置へ移動させるときに、トレッドパターン要素の列の前記複数のトレッドパターン要素(9)の各々のために、前記ばね要素(15)のばね作用に起因する抵抗をもたらすように構成され、各々のばね要素(15)は、トレッドパターン要素の列の前記複数のトレッドパターン要素(9)の各々の前記通路(17)を通って延びている、請求項のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項9】
補強要素(27)が、前記ばね要素(15)および/またはトレッドパターン要素(9)を前記タイヤ(1)内に設けられた内側チューブ(23)に当接させるために、前記ばね要素(15)の前記トレッドとは反対の側に設けられている、請求項に記載のタイヤ(1)。
【請求項10】
前記ばね装置は、エンドレスな中空コード(15)を備え、前記エンドレスな中空コード(15)の空洞(19)を、前記ばね装置のばね作用を調整するために流体で満たすことができる、請求項1~のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項11】
前記複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素(9)は、ゴム、好ましくは加硫ゴムを含む材料で作られている、請求項1~10のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項12】
前記複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素(9)は、前記トレッドに隣接するトレッドパターン部分(37)を備え、前記トレッドパターン部分(37)は、前記保持空間(11)から前記タイヤ(1)の外部へ汚染物質を排出するために、前記保持空間(11)に面する側にリブ付き面(39)を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項13】
請求項のいずれか一項に記載のタイヤ(1)のプロファイルドトレッド(7)を少なくとも部分的に交換するための方法であって、
a)トレッドパターン要素(9)の前記通路(17)から前記調整装置(13)を取り除くステップと、
b)前記周壁(5)の前記保持空間(11)から前記トレッドパターン要素(9)を取り除くステップと、
c)ステップb)において空にされた前記保持空間(11)に交換用のトレッドパターン要素を配置するステップと、
d)ステップc)において取り付けられた前記交換用のトレッドパターン要素の通路に前記調整装置(13)を配置するステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
ステップa)に先立ち、ステップa)において前記トレッドパターン要素(9)の前記通路(17)から前記調整装置(13)を取り除くために、前記トレッドパターン要素(9)が分割される、請求項に記載のタイヤ(1)に関する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載のタイヤが装着されるリムを備える車両用の車輪。
【請求項16】
請求項15に記載の車輪を備える車両、好ましくは請求項15に記載の少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪を備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様によれば、本発明は、車両を地面に支持するためのプロファイルド(profiled)トレッドを有する車両の車輪用のタイヤに関する。
【0002】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様によるタイヤのプロファイルド(形状化)トレッドを少なくとも部分的に交換するための方法に関する。
【0003】
第3および第4の態様において、本発明は、本発明によるそのようなタイヤを備える車輪および車両を提供する。
【背景技術】
【0004】
自動車などの車両のための公知のタイヤにおいて、トレッドパターンは、タイヤ本体の凹部によって形成されている。このような凹部を構造化されたやり方で配置することによって、所望のトレッドパターンを得ることが可能であり、凹部の深さがトレッドパターン高さを決定する。そのような公知のタイヤの欠点は、これらのタイヤの使用が、タイヤの種々の異なる動作条件に関して制限されていることである。また、タイヤの寿命を向上させることが可能である。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、種々の動作条件の下で効率的に使用することができるタイヤを提供することである。
【0006】
この目的は、車両を地面に支持するためのプロファイルドトレッドを有している車両の車輪用のタイヤであって、
- 2つの対向する側壁と、周壁とによって形成されるタイヤ本体であって、タイヤ本体は当該タイヤ内の調整可能なガス圧を維持するように構成されており、前記周壁に複数の保持空間が設けられている、タイヤ本体と、
- 前記トレッドの少なくとも一部を形成する複数のトレッドパターン要素であって、前記複数のトレッドパターン要素のそれぞれは前記複数の保持空間のうちの1つの保持空間に収容され、前記周壁から大きく突出する第1の位置と、前記周壁からあまり突出せず、あるいは前記周壁内に収容される第2の位置との間を、前記周壁に対して実質的に直角に変位することができる、複数のトレッドパターン要素と、
- 前記プロファイルドトレッドのトレッドパターン高さを調整するために前記複数の保持空間内の前記複数のトレッドパターン要素を前記第1および第2の位置の間で変位させるように構成された調整装置と、
を備える、請求項1に記載のタイヤなどの本発明によるタイヤによって達成される。
【0007】
複数のトレッドパターン要素の各々が、周壁に対して実質的に直角に保持空間内に設けられ、すなわち周壁から半径方向に突出するとともに変位可能であるため、複数の保持空間内の複数のトレッドパターン要素を変位させてトレッドパターン高さを調整するように構成された調整装置を備えるタイヤにより、トレッドパターン高さをタイヤの動作条件に合わせて調整することができ、結果として、本発明によるタイヤは、さまざまな動作条件における使用に適する。例えば、雨天時に、トレッドパターン高さを増加させることができる一方で、乾いた天候において、トレッドパターン高さを減少させることができ、ゼロにすることさえ可能である。
【0008】
さらなる利点は、所望のトレッドパターン高さを維持するためにトレッドパターン要素の任意の摩耗を考慮できる点にある。このタイヤが取り付けられた車両の運転手などの人物や、あるいは自動システムが、使用時にタイヤのトレッドが表面と接触することによってトレッドの位置においてタイヤが摩耗し、結果としてトレッドパターン高さが所望の高さを下回って減少したことを検出すると、調整装置によってトレッドパターン高さを調整することによって、所望のトレッドパターン高さを回復することができる。
【0009】
さらなる利点は、本発明によるタイヤは、トレッドパターン要素を交換することによってタイヤの寿命が延びるため、比較的耐久性があることである。
【0010】
好ましくは、トレッドパターン要素は、少なくとも使用時に周壁と接触する領域において、一定の断面を有し、保持空間の断面が、トレッドパターン要素の断面の形状に合わせられる。
【0011】
好ましくは、調整装置は、ばね装置を備え、このばね装置が、複数のトレッドパターン要素のうちの1つのトレッドパターン要素を周壁から大きく突出する第1の位置へと変位させるときに、複数のトレッドパターン要素の各々のために、ばね装置のばね作用に起因する抵抗をもたらすように構成される。この有利なばね装置により、トレッドパターン要素は、抵抗がなくなると第1の位置に移動する。これは、例えば故障に起因してばね作用が中断された場合に比較的大きなトレッドパターン高さを達成するために特に好都合である。
【0012】
この場合、調整装置は、ばね装置のばね作用の程度を調整するように構成されると好都合である。ばね作用を調整することによって、トレッドパターン高さを所望の高さに調整することができる。
【0013】
実用的な実施形態において、タイヤは、複数のトレッドパターン要素の各々のために、複数のトレッドパターン要素を第2の位置の方向に変位させるときに、タイヤ内の維持することができるガス圧に起因する抵抗をもたらすように構成され、かつ、タイヤ内に維持されるガス圧が、後述されるタイヤの内側チューブと同様に高められるときに、複数のトレッドパターン要素を周壁から大きく突出する第1の位置の方向に変位させるように構成され、調整装置は、タイヤ内に維持されるガス圧を調整するようにさらに構成される。これは、ばね装置のばね作用と協働して第1の位置と第2の位置との間で複数のトレッドパターン要素を移動させるのに好都合である。
【0014】
複数のトレッドパターン要素の各々が、通路を備え、調整装置が、複数のトレッドパターン要素の各々の通路を通って延びると好ましい。結果として、調整装置が、複数のトレッドパターン要素を移動させるために、複数のトレッドパターン要素の各々に確実に結合する。
【0015】
この場合、複数の保持空間の各々が、周壁を通って延び、すなわち連続的であり、複数のトレッドパターン要素の各々が、周壁を通って延び、ばね装置が、周壁のトレッドとは反対向きの側(内側)において、複数のトレッドパターン要素の各々の通路を通って延び、ばね作用のために、周壁のトレッドとは反対向きの側(内側)に当接すると好都合である。このようにして、高さの調整が可能なトレッドパターンを実用的なやり方で製造することができ、その場合、ばね装置は、タイヤの内側の各々のトレッドパターン要素の通路の下側の限界とタイヤの周壁の内側との間で動作する。
【0016】
複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素が、通路を囲む補強フレームを備えると好都合であり、補強フレームは、好ましくは複合材料を含む。補強フレームは、確実かつ耐久性のあるやり方でトレッドパターン要素を調整装置に結合させるのに有利である。
【0017】
実際的な実施形態において、複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素は、複合トレッドパターン要素として形成され、複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素の通路を囲む部分は、調節装置を通路内に取り付けるために分割可能である。このような分割可能なトレッドパターン要素は、例えばトレッドパターン要素を交換するために通路から調整装置を取り外すためにとくに有利である。
【0018】
一実施形態において、複数のトレッドパターン要素は、列を成して配置され、ばね装置は、トレッドパターン要素の複数の列に対応する互いに平行に延びる複数のばね要素を備え、ばね要素の各々は、トレッドパターン高さを増加させるために、トレッドパターン要素の列の複数のトレッドパターン要素を周壁から大きく突出する第1の位置へと移動させるときに、トレッドパターン要素の列の複数のトレッドパターン要素の各々のために、ばね要素のばね作用に起因する抵抗をもたらすように構成され、各々のばね要素は、トレッドパターン要素の列の複数のトレッドパターン要素の各々の通路を通って延びる。これは、列ごとにトレッドパターン高さを調整するために好都合である。複数の列は、好ましくは、タイヤの周方向に延び、すなわち使用時のタイヤの回転の方向に延びる。
【0019】
好ましくは、タイヤの内側において、複数のトレッドパターン要素は、タイヤ内に設けられた内側チューブに当接する。
【0020】
この場合、補強要素が、ばね要素および/またはトレッドパターン要素をタイヤ内に設けられた内側チューブに当接させるために、ばね要素のトレッドとは反対の側に設けられると好都合である。これは、ばね要素および/またはトレッドパターン要素を比較的信頼性の高いやり方で内側チューブに当接させるために有利である。一実施形態において、補強要素は、内側チューブに接続され、あるいは内側チューブの一部を形成する。
【0021】
ばね装置が、エンドレスな中空コードを備え、このエンドレスな中空コードの空洞が、ばね装置のばね作用を調整するために流体、好ましくは空気または窒素などのガスで満たされ、あるいは少なくとも満たすことが可能であると好都合である。満たすことができるエンドレスな中空コードは、ばね作用を実用的なやり方で調整するのに有利である。
【0022】
実用的な実施形態において、複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素は、ゴム、好ましくは加硫ゴムを含む材料で作られる。ゴム材料は、タイヤを使用するときに地面との所望の程度の摩擦を有する比較的耐久性のあるトレッドを提供するために有利である。
【0023】
複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素が、トレッドに隣接するトレッドパターン部分を備え、このトレッドパターン部分が、保持空間からタイヤの外部へと汚染物質を排出するため、すなわちタイヤの外部からタイヤの周壁とトレッドパターン要素との間に進入する水分を含むあらゆる汚染物質を排出するために、保持空間に面する側にリブ付き面を備えると好都合である。トレッドパターン要素が移動するときにリブ付き面が保持空間の壁と協働することにより、汚染物質の排出を達成することができる。これはタイヤの比較的信頼できる動作にとって好都合である。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様によるタイヤのプロファイルドトレッドを少なくとも部分的に交換するための方法に関する。この方法は、
a)トレッドパターン要素の通路から調整装置を取り除くステップと、
b)周壁の保持空間からトレッドパターン要素を取り除くステップと、
c)ステップb)において空にされた保持空間に交換用のトレッドパターン要素を配置するステップと、
d)ステップc)において取り付けられた交換用のトレッドパターン要素の通路に調整装置を配置するステップと、
を含む。
【0025】
この方法は、タイヤの比較的長い耐用年数を達成するために、比較的実用的なやり方でトレッドパターン要素、好ましくは全てのトレッドパターン要素を交換するために好都合である。
【0026】
この場合、複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素が、複合トレッドパターン要素として形成され、複数のトレッドパターン要素のうちの各々のトレッドパターン要素の通路を囲んでいる部分が分割可能であると、ステップa)に先立ち、ステップa)においてトレッドパターン要素の通路から調整装置を取り除くためにトレッドパターン要素が分割される点で、調整装置を通路に配置するうえで好都合である。これは、トレッドパターン要素の交換に必要な労力を減らすために有利である。
【0027】
本発明を、以下の図を参照しつつ本発明の第1の態様によるタイヤの好ましい実施形態および本発明の第2の態様による方法の好ましい実施形態の説明によって以下で解説する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による第1の状態にあるタイヤを切断した等角投影図を示している。
図2】第2の状態にある図1の切断したタイヤの等角投影図を示している。
図3】第3の状態にある図1のタイヤの一部分の等角投影図を示している。
図4】本発明によるトレッドパターン要素の等角投影図を示している。
図5】分割された状態にある図4のトレッドパターン要素の等角投影図を示している。
図6】補強フレームの等角投影図を示している。
図7】補強要素の等角投影図を示している。
図8】タイヤの部品の組み立て品の等角投影図を示している。
図9】本発明によるタイヤのフロー図を示している。
図10】本発明による車輪の等角投影図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
使用時に、図1図2、および図3に示されるタイヤ1は、タイヤ1内の調整可能なガス圧を維持することができるように、リム(詳細には示されていない)に装着される。タイヤは、周壁5に隣接する2つの側壁3を有する。周壁5は、例えばタイヤ1と地面との間に存在する水分を排出できるようにするために、プロファイルドトレッド7を備えている。プロファイルドトレッド7は、通路11として形成された周壁5の保持空間に移動可能に設けられたトレッドパターン要素9を備える。トレッドパターン要素9を周壁5からさらに突出させることを可能にすることで、トレッドパターン高さHが増大する。トレッドパターン要素9を、周壁5から大きく突出する第1の位置と、周壁からあまり突出しない第2の位置との間で移動させるために、調整装置13が設けられている。調整装置13は、トレッドパターン要素9を通って周方向Oに延び、すなわち使用時のタイヤの回転方向に延びているエンドレス中空コード15を備える。この目的のために、トレッドパターン要素9は、列を、この例では4つの列を成して設けられ、周方向Oに整列した通路17を備える。中空コード15は、中空コード15のばね作用を調整するために注入口21を介して空気および/または窒素で満たすことができる空洞19を有する。空洞19内の空気および/または窒素の圧力を高めることによって、中空コード15のばね剛性が増大する。これにより、トレッドパターン要素9を周壁5の外に動かすために必要な力が増大し、結果として、トレッドパターン高さHが減少する。空洞19内の空気および/または窒素の圧力が低くなると、ばね剛性が低下し、結果として、トレッドパターン高さHを増大させるために必要な力が減少する。
【0030】
タイヤ1の内側チューブ23内に設定されたガス圧(ガスは、好ましくは空気および/または窒素である)が存在するため、トレッドパターン要素9は、中空コードのばね剛性の低下の結果として、周壁5から突出するように移動し、トレッドパターン高さHを増加させる。内側チューブ23内の圧力は、弁26を介して調整可能である。図2は、少なくとも実質的にトレッドパターンが存在しないトレッドを提供するために、コード15内の圧力が内側チューブ23内のガス圧に対して比較的大きく、結果としてトレッドパターン要素9がもはや周壁5から突出せず、あるいは少なくともほとんど突出しない状態を示している。図3に示されているタイヤ1の状態においては、トレッドパターン要素9が周壁5から比較的大きく突出し、比較的大きなトレッドパターン高さHを達成している。この目的のために、図2に示した状態と比べ、中空コード15内の圧力が下げられ、あるいは内側チューブ23内の圧力が高められる。
【0031】
中空コード15は、ゴムを含む材料で作られ、かつ、周壁5に面する側に、耐久性のある複合材料で作られたエンドレスタイヤ25の形態の支持体を備える。中空コードは、接着剤によって周壁5に接着される。
【0032】
トレッドパターン要素9は、周壁5から遠い側において、補強要素27に当接する。補強要素27は、その一例が図7に示されているが、内側チューブ23の壁に組み込まれている。内側チューブ23内のガス圧力の結果として、補強要素27がトレッドパターン要素9に対して押し付けられ、内側チューブ23がトレッドパターン要素9に作用させる圧力を比較的均等に分布させる。補強要素27は、複合材料で製作される。
【0033】
トレッドパターン要素9は、トレッドパターン部分29と閉鎖部分31とで構成される。トレッドパターン部分29と閉鎖部分31は、接続ピン33によって互いに接続されることができる。接続を形成するために、接続ピン33は、トレッドパターン要素9内に収容された補強フレーム35を通過する。補強フレーム35は、複合材料で製作され、トレッドパターン部分29と閉鎖部分31との分割線に沿って分割可能である。トレッドパターン部分29は、リブ付き面39を外側に備えるトレッドパターンブロック37を備えている。トレッドパターン要素9を製造するために、鋳型内で補強フレーム25を覆ってゴムが成形され、加硫される。
【0034】
トレッドパターン要素9を交換するために、トレッドパターン要素9は分割され、閉鎖部分31がトレッドパターン部分29から取り外される。続いて、トレッドパターン部分29によって囲まれた通路の部分から中空コード15が取り外され、その後にトレッドパターン要素9を、内側チューブ23の側において周壁5から取り外すことができる。次に、交換用のトレッドパターン要素を、周壁5の空の保持空間に配置することができ、その後に、コード15が、交換用のトレッドパターン要素のトレッドパターン部分によって囲まれた部分に配置される。次いで、交換用のトレッドパターン要素の閉鎖部分が、交換用のトレッドパターン要素のトレッドパターン部分へと配置され、接続ピン33を使用して固定される。
【0035】
注入口21および弁26は、ホース41を介してハブ部分43に接続される。ハブ部分43は、車輪47の装着状態において内側チューブ23および/または中空コード15内の圧力を増加または減少させることができるようにリム45内に収容されている。一実施形態において、ハブ部分43は、リム45の一体部分を形成する。
【0036】
図9に示すフロー図は、空気および/または窒素を圧縮するための圧縮機55を示している。空気および/または窒素を、空気入口57を介して圧縮機55によって引き込むことができる。圧縮機55によって圧縮された空気および/または窒素を、閉じることができる弁51を介し、三方弁49を介し、ホース41aを介して内側チューブ23へと、あるいはホース41bを介して中空コード15へと、すなわち中空コード15にも一緒に、供給することができる。内側チューブ23および中空コード15内に存在する空気および/または窒素を、三方弁49を介し、閉じることができる弁53を介して、排出することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10