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特許7083825バイオポリエーテルポリオールの製造方法、バイオポリエーテルポリオール及びバイオポリウレタン樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】バイオポリエーテルポリオールの製造方法、バイオポリエーテルポリオール及びバイオポリウレタン樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20220606BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220606BHJP
   C08G 65/20 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C08G18/66 074
C08G18/48 054
C08G18/48 058
C08G65/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019521977
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018013321
(87)【国際公開番号】W WO2018220983
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017106345
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】丸山 由布生
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103755948(CN,A)
【文献】米国特許第03631199(US,A)
【文献】特公昭48-6957(JP,B1)
【文献】特開2006-144192(JP,A)
【文献】特開2001-11732(JP,A)
【文献】特開2011-225863(JP,A)
【文献】特表2017-506083(JP,A)
【文献】特表2010-531839(JP,A)
【文献】特開2017-25282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/、65/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとのモノマー比(質量)は85/15ないし50/50とする混合物の共重合反応の生成物であるポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート化合物、及びポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、及びプロピレンジアミンからなる群より選択される鎖延長剤を主要な反応物とする合成反応の生成物であるポリウレタン樹脂であり、前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が50質量%~80質量%であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールは100%植物由来ポリエーテルポリオールであり、その数平均分子量は500~5000であることを特徴とする請求項1に記載のバイオポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載のバイオポリウレタン樹脂において、20℃での貯蔵弾性率(E’)に対して、0℃での貯蔵弾性率(E’)が0%~15%の増大であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、及び水添ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバイオポリウレタン樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとの共重合反応で得られるバイオポリエーテルポリオール及びその製造方法に関するものである。更に、このポリエーテルポリオールを用いて、有機ポリイソシアネート成分との反応生成物であるバイオポリウレタン樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂のソフトセグメント成分としてポリエーテルがよく用いられる。中でもテトラヒドロフランの重合体であるポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いたポリウレタン樹脂は弾性特性、低温特性、耐加水分解性などの点において優れるため弾性繊維やCASE用途に特に注目されている。
【0003】
しかし、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いたポリウレタン樹脂は、ソフトセグメントの結晶性により、低温域の柔軟性が低下する。この問題点を解決するものとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコールに側鎖を持つモノマー(例えば、3-アルキルテトラヒドロフラン、ネオペンチルグリコール)を導入し、非晶性を高めたポリオールがある(特許文献1、2参照)。これらのポリオールを用いたポリウレタン樹脂は、ポリオールのアルキル側鎖がソフトセグメントの結晶性を抑制し、低温域でも良好な柔軟性を提供する。
【0004】
また、近年、循環型社会の実現と化石資源の枯渇対策として、植物由来の原料を使用した脱石油製品の開発が社会的に求められている。ポリウレタンの原料となるポリオールでは、植物油を原料としたバイオポリオールは存在するが、弾性繊維やCASE用途に最適なバイオポリオールは限られている。
【0005】
バイオポリオールの中でバイオブタンジオールやバイオテトラヒドロフランを原料としたポリテトラメチレンエーテルグリコールは、石油系と同等の物性を有する植物由来のポリオールとして注目されている。しかしながら、上記のようにソフトセグメントとしての結晶性を有しており、それを改善するために側鎖を持つ石油由来のモノマー(例えば、3-アルキルテトラヒドロフラン)を導入するとバイオ濃度が下がるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-235320号公報
【文献】特開平01-284518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、植物由来の原料からのバイオポリエーテルポリオールの製造方法、バイオポリエーテルポリオール及び優れた弾性特性と低温特性を有するバイオポリウレタン樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、以下のようなバイオポリエーテルポリオールの製造方法、バイオポリエーテルポリオール及びこれを用いたバイオポリウレタン樹脂である。
【0009】
[1]テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとの共重合反応で得られる植物由来のポリエーテルポリオールの製造方法であり、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとのモノマー比(質量)は85/15ないし50/50であることを特徴とするバイオポリエーテルポリオールの製造方法である。
【0010】
[2]前記共重合反応はテトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランの合計質量に対して、強酸触媒を15質量%~40質量%添加することを特徴とする[1]に記載のバイオポリエーテルポリオールの製造方法である。
【0011】
[3]前記テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランは100%植物由来モノマーであり、モノマー比(質量)は85/15ないし50/50である範囲に混合し、0℃~50℃の温度範囲に維持しながら強酸触媒を投入することで前記共重合反応を行うことを特徴とする[1]または[2]に記載のバイオポリエーテルポリオールの製造方法である。
【0012】
[4]前記強酸触媒は無水酢酸、過塩素酸、フルオロスルホン酸、あるいは発煙硫酸である特徴とする[1]~[3]のいずれか一項に記載のバイオポリエーテルポリオールの製造方法である。
【0013】
[5]100%植物由来テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランのモノマー比(質量)は85/15ないし50/50である共重合反応生成物であり、数平均分子量は500~5000であることを特徴とする100%植物由来ポリエーテルポリオールである。
【0014】
[6]テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとのモノマー比(質量)は85/15ないし50/50とする共重合反応の生成物であるポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート化合物、及びポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する鎖延長剤を主要な反応物とする合成反応の生成物であるポリウレタン樹脂であり、前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が50質量%~80質量%であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂である。
【0015】
[7]前記ポリエーテルポリオールは100%植物由来ポリエーテルポリオールであり、その数平均分子量は500~5000であることを特徴とする[6]に記載のバイオポリウレタン樹脂である。
【0016】
[8]前記[6]または[7]に記載のバイオポリウレタン樹脂において、常温(20℃)での貯蔵弾性率(E’)に対して、0℃の低温領域での貯蔵弾性率(E’)が0%~15%の増大であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリエーテルポリオールにおいて、原料であるテトラヒドロフラン(または1,4-ブタンジオール)と2-メチルテトラヒドロフランはいずれも植物由来が可能であるので、100%植物由来のポリエーテルポリオールが提供できる。また本発明のポリエーテルポリオールを用いて、有機イソシアネート化合物と鎖延長剤とを反応させて得たバイオポリウレタン樹脂は、弾性特性、低温特性に優れた素材である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例7、比較例1及び比較例2に係るポリウレタン樹脂の引張強度と伸びの評価結果である。
図2】実施例7、比較例1及び比較例2に係るポリウレタン樹脂の貯蔵弾性率(E’)の評価結果である。
図3】実施例8、比較例3及び比較例4に係るポリウレタン樹脂の引張強度と伸びの評価結果である。
図4】実施例8、比較例3及び比較例4に係るポリウレタン樹脂の貯蔵弾性率(E’)の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に好ましい実施形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本願明細書において、「バイオブタンジオール」、「バイオテトラヒドロフラン」、「バイオポリオール」、「バイオポリエーテルポリオール」等と称するときは、石油系のそれらと同等の物性を有する植物由来の低分子又は高分子化合物をいう。また、本願明細書において、「100%植物由来ポリエーテルポリオール」と称するときは、その主鎖の全部が植物由来の化合物から誘導されたものをいう。また、本願明細書において、「バイオポリウレタン樹脂」と称するときは、その原料の少なくとも50質量%以上を植物由来の化合物から誘導された成分が占めるものをいう。
【0020】
本発明のバイオポリエーテルポリオールの製造方法は、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとの共重合反応で得られる植物由来のポリエーテルポリオールの製造方法である。本発明に係るポリエーテルポリオールにおいてはテトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとのモノマー比(質量)は85/15ないし50/50である。好ましいポリエーテルポリオールを得るテトラヒドロフラン/2-メチルテトラヒドロフランのモノマー比(質量)は80/20ないし60/40である。重量比50/50以下では2-メチルテトラヒドロフランが十分に反応せずに低収率となるため好ましくない。一方重量比85/15以上では結晶性が増し、ポリオールのアルキル側鎖がソフトセグメントの結晶性を改善する目的に合わない。
【0021】
本発明のテトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとの共重合反応において、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランの合計質量に対して、テトラヒドロフランを開環する強酸を15質量%~40質量%添加する、好ましくは18質量%~36質量%添加する。15質量%以下の強酸を添加する場合、反応転化率が低くなり収率が低下する恐れがある。40質量%以上の強酸を添加する場合、反応活性種が多くなり反応平衡時の分子量が低下する恐れがある。
【0022】
また、本発明のバイオポリエーテルポリオールの製造方法は、前記テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランは100%植物由来モノマーであり、モノマー比(質量)は85/15ないし50/50である範囲に混合し、0℃~50℃の温度範囲に維持しながら強酸触媒を投入することで共重合反応を行うことである。
【0023】
本発明のテトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとの共重合反応において、テトラヒドロフランを開環しうる強酸は、例えば無水酢酸、フルオロスルホン酸、発煙硫酸、過塩素酸などが挙げられる。強酸触媒は単一種類の強酸を使用しても良い、二種類以上の強酸を組み合わせて使用しても可能である。二種類以上の強酸を使用する場合、通常0℃~50℃の温度範囲を数段階に分けてそれぞれ使用しても良い。
【0024】
本発明の100%植物由来ポリエーテルポリオールは500~5000の分子量を有する。分子量500以下の場合にはポリウレタン樹脂にしたとき硬くなり、ゴム弾性率及び抗張力が低下し、分子量5000以上となると伸びが大きくなり過ぎ、樹脂としての特性が損なわれる。
【0025】
更に、本発明のバイオポリウレタン樹脂は、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとのモノマー比(質量)は85/15ないし50/50とする共重合反応の生成物であるポリエーテルポリオール、ポリイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する鎖延長剤を主要な反応物とする合成反応の生成物であるポリウレタン樹脂であり、前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が50質量%~80質量%であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂である。
【0026】
前記合成反応において、ポリイソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を2個以上有するもので、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられ、これらは単独または二種以上混合して用いられる。
【0027】
前記合成反応において、イソシアネート基と反応する鎖延長剤としては、2個以上の水酸基、アミノ基をもつ化合物で、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0028】
前記合成反応において、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとのモノマー比(質量)が85/15ないし50/50とする共重合反応の生成物であるポリエーテルポリオールは100%植物由来のポリエーテルポリオールであり、その数平均分子量は500~5000である。このようなテトラヒドロフランは、例えば、トウモロコシ穂軸や廃木材からフルフラールを得、これから脱COしてフランを得、これに水素添加することにより得ることができる。また、2-メチルテトラヒドロフランは、通常はフルフラールの触媒的水素化により合成される。フルフラールは酸触媒を用いることで多糖類から合成可能である。すなわち2-メチルテトラヒドロフランはセルロースやヘミセルロース、リグニンといったバイオマス原料から合成可能であり、それらはトウモロコシの芯やさとうきびのカスに代表される農業廃棄物から回収可能であるなど、環境に優しいプロセスで合成可能な化合物である。
【0029】
前記合成反応で得られるバイオポリウレタン樹脂は、ポリオール成分が50質量%~80%である。即ちポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が50質量%~80質量%である。一般的に植物由来成分の含有量は高いほど環境に優しいが、80質量%以上を達成するためには、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフランとのモノマー比(質量)が85/15ないし50/50とする共重合反応の生成物であるポリエーテルポリオール以外に、ポリイソシアネート化合物、及びイソシアネート基と反応する鎖延長剤などの主要な反応物もできるだけ植物由来である必要があり、現在の技術レベルでは困難であり、経済的にも不利益である。
【0030】
本発明のバイオポリウレタン樹脂は優れた弾性特性及び低温特性を有し、その貯蔵弾性率(E’)が-20℃~0℃の低温領域でも常温での貯蔵弾性率(E’)を維持できる。具体的に、常温(20℃)での貯蔵弾性率(E’)に対して、0℃での貯蔵弾性率(E’)は0%~15%の増大である。これは低温においても常温とほぼ同じ程度の弾性特性を有することである。更に、本発明のバイオポリウレタン樹脂は、テトラヒドロフラン/3-アルキルテトラヒドロフランの重合体を用いて得られるポリウレタン樹脂と同等な弾性特性、低温特性、耐加水分解性などを有し、優れた弾性樹脂である。
【0031】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法等で製造できる。例えば、ポリオール、鎖延長剤中にポリイソシアネート化合物を一括して仕込んで反応させてもよいし、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させてイソシアネート基末端のプレポリマーを得た後、鎖延長剤を添加して伸長反応を行ってもよい。
【0032】
上記の反応において必要に応じ、有機金属触媒等を添加することができる。有機金属触媒としては、特に限定するものではないが、具体的には、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒や、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が挙げられる。
【0033】
以下、本発明に使用した測定方法について、説明する。
【0034】
[ポリオールの数平均分子量(Mn)の測定方法]
ポリオールの水酸基価をJIS K1557-1に準拠して測定し、Mnを算出した。
【0035】
[硬度の測定方法]
硬度はJIS K7312に準拠し、タイプAで測定した。
【0036】
[引張強度と伸びの評価方法]
引張試験は、精密万能試験機(株式会社 島津製作所製 オートグラフAG-1)を使用し、JIS K7312に準拠し、試験片は3号ダンベルを使用し、温度23度、湿度50%で測定した。引張強度、破断伸び、100%モジュラス、300%モジュラスを求めた。
【0037】
[貯蔵弾性率(E’)の評価方法]
E’は、動的粘弾性測定装置(株式会社 日立ハイテクサイエンス製 DMA7100)を使用して、温度範囲-100~+200℃、昇温速度2℃/分、周波数10Hzの条件下、引張りモードで測定した。
【実施例
【0038】
以下、実施例をもって本発明を説明するが、これらは本発明をなんら制限するものではない。
【0039】
[実施例1]<ポリオールの合成>
1L四つ口フラスコ(温度計、攪拌装置付き)にテトラヒドロフラン300部と2-メチルテトラヒドロフラン100部(重量比75/25)を仕込み、0℃保冷下で70%過塩素酸10.0部を添加、次いで無水酢酸84部を30分かけて添加、さらに5℃にて8時間重合反応を行った。17%水酸化ナトリウム水溶液390部を添加、室温で30分攪拌、一晩静置、下層の水層を分液除去した。20%水酸化ナトリウム水溶液52部を添加、モノマー留去、さらに1-ブタノール200部を加えてリフラックスで3時間攪拌、静置、下層の水層を分液除去した。水200部を添加、リフラックスで30分攪拌、静置分液、次いで1mol/l塩酸200部を添加、リフラックスで30分攪拌、静置分液、以降、分液水層が中性になるまで上記の水洗浄を繰り返した。減圧蒸留により1-ブタノールを除去して、ポリエーテルポリオールを得た。収率及び数平均分子量(Mn)の測定結果は表1に示す。
【0040】
[実施例2]<ポリオールの合成>
1L四つ口フラスコ(温度計、攪拌装置付き)にテトラヒドロフラン200部と2-メチルテトラヒドロフラン200部(重量比50/50)を仕込み、0℃保冷下で70%過塩素酸10.0部を添加、次いで無水酢酸84部を30分かけて添加、さらに5℃にて8時間重合反応を行った。以降、実施例1と同様の操作を行い、ポリエーテルポリオールを得た。収率及び数平均分子量(Mn)の測定結果は表1に示す。
【0041】
[実施例3]<ポリオールの合成>
1L四つ口フラスコ(温度計、攪拌装置付き)にテトラヒドロフラン340部と2-メチルテトラヒドロフラン60部(重量比85/15)を仕込み、0℃保冷下で70%過塩素酸10.2部を添加、次いで無水酢酸86部を30分かけて添加、さらに5℃にて8時間重合反応を行った。以降、実施例1と同様の操作を行い、ポリエーテルポリオールを得た。収率及び数平均分子量(Mn)の測定結果は表1に示す。
【0042】
[実施例4]<ポリオールの合成>
1L四つ口フラスコ(温度計、攪拌装置付き)にテトラヒドロフラン300部と2-メチルテトラヒドロフラン100部(重量比75/25)を仕込み、0℃保冷下で過塩素酸2.4部を添加、次いで25%発煙硫酸91部を5時間かけて添加、さらに5℃にて1時間重合反応を行った。水252部添加、リフラックスで1時間攪拌、静置、下層の水層を分液除去、さらに水195部添加、リフラックスで1時間攪拌、静置、下層の水槽を分液除去した。弱塩基性イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製 IRA-96SB)を添加し、室温で1時間攪拌、樹脂をろ別、減圧蒸留によりモノマーを除去し、ポリエーテルポリオールを得た。収率及び数平均分子量(Mn)の測定結果は表1に示す。
【0043】
[実施例5]<ポリオールの合成>
1L四つ口フラスコ(温度計、攪拌装置付き)にテトラヒドロフラン240部と2-メチルテトラヒドロフラン160部(重量比60/40)を仕込み、0℃保冷下で過塩素酸5.6部を添加、次いで25%発煙硫酸137部を5時間かけて添加、さらに5℃にて1時間重合反応を行った。以降、実施例4と同様の操作を行い、ポリエーテルポリオールを得た。収率及び数平均分子量(Mn)の測定結果は表1に示す。
【0044】
[実施例6]<ポリオールの合成>
1L四つ口フラスコ(温度計、攪拌装置付き)にテトラヒドロフラン340部と2-メチルテトラヒドロフラン60部(重量比85/15)を仕込み、5℃保冷下で過塩素酸2.3部を添加、次いで25%発煙硫酸77部を5時間かけて添加、さらに5℃にて1時間重合反応を行った。以降、実施例4と同様の操作を行い、ポリエーテルポリオールを得た。収率及び数平均分子量(Mn)の測定結果は表1に示す。
【0045】
表1に実施例1~6のポリエーテルポリオールの合成結果をまとめた。
【表1】
【0046】
[実施例7]<ポリウレタン樹脂の合成>
実施例1で得たポリオール(Mn1962)80部を200mLセパラブルフラスコにとり、100℃で1時間真空乾燥を行い、MDIを29.8部添加、80℃で3時間反応させてプレポリマーを得た。次いで1時間脱気を行い、1,4-ブタンジオールを6.5部添加、数分間攪拌後、予熱したガラス板に注ぎ、厚さ2mmのシート状に成形し、110℃のオーブン中で18時間キュアリングを行い、ポリウレタン樹脂シートを得た。
【0047】
[比較例1]
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業株式会社製 PTG-2000SN Mn1968)を用いて、実施例7と同様の操作でポリウレタン樹脂シートを得た。
【0048】
[比較例2]
テトラヒドロフランと3-アルキルテトラヒドロフランの共重合体であるポリエーテルポリオール(保土谷化学工業株式会社製 PTG-L2000 Mn1902)を用いて、実施例7と同様の操作でポリウレタン樹脂シートを得た。
【0049】
実施例7と比較例1、2で得たウレタン樹脂シートを用いて、前記の硬度の測定方法、引張強度と伸びの評価方法、及び貯蔵弾性率(E’)の評価方法により、ウレタン樹脂の性能を評価した。その結果を表2、図1図2にそれぞれ示した。
【0050】
【表2】
【0051】
[実施例8]<ポリウレタン樹脂の合成>
実施例4で得たポリオール(Mn1730)100gを200mLセパラブルフラスコにとり、100℃で1時間真空乾燥を行い、MDIを29.9g添加、80℃で3時間反応させてプレポリマーを得た。次いで1時間脱気を行い、1,4-ブタンジオールを5.3g添加、数分間攪拌後、予熱したガラス板に注ぎ、厚さ2mmのシート状に成形し、110℃のオーブン中で18時間キュアリングを行い、ポリウレタン樹脂シートを得た。
【0052】
[比較例3]
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(保土谷化学工業株式会社製 PTG-2000SN Mn=1951)を用いて、実施例8と同様の操作でポリウレタン樹脂シートを得た。
【0053】
[比較例4]
テトラヒドロフランと3-アルキルテトラヒドロフランの共重合体であるポリエーテルポリオール(保土谷化学工業株式会社製 PTG-L2000 Mn=1979)を用いて、実施例8と同様の操作でポリウレタン樹脂シートを得た。
【0054】
前記の硬度の測定方法、引張強度と伸びの評価方法、及び貯蔵弾性率(E’)の評価方法により、実施例8と比較例3,4で得られたウレタン樹脂シートの評価結果、応力歪曲線、貯蔵弾性率曲線を表3、図3、4にそれぞれ示した。
【0055】
【表3】
【0056】
本発明のポリウレタン樹脂は、図2、4で示すように、常温(20℃)に対して低温域における弾性の変化は少なく、0%~15%以内である。また、図1よりハードセグメント比率が高い場合、公知のテトラヒドロフランと3-アルキルテトラヒドロフランの共重合体よりも柔軟な挙動を示した。すなわち、本発明のポリオールは100%植物原料が可能でありながら、弾性特性、低温特性が優れるバイオポリウレタン樹脂を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のポリエーテルポリオールは100%植物由来原料が可能である。またこのポリエーテルポリオールを用いて製造したバイオポリウレタン樹脂は、石油由来の従来品と遜色することなく良好な弾性特性、低温特性を示し、特にハードセグメント比率が増えるにしたがい、石油由来の従来品よりも柔軟性を示すので、種々の産業分野で有用である。
図1
図2
図3
図4