(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】ジメチルスルホキシドを含む単一のペースト型水硬性根管充填材のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/54 20200101AFI20220606BHJP
A61K 6/60 20200101ALI20220606BHJP
A61K 6/76 20200101ALI20220606BHJP
A61K 6/71 20200101ALI20220606BHJP
【FI】
A61K6/54
A61K6/60
A61K6/76
A61K6/71
(21)【出願番号】P 2019527243
(86)(22)【出願日】2017-11-21
(86)【国際出願番号】 KR2017013300
(87)【国際公開番号】W WO2018093241
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2016-0155276
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514298760
【氏名又は名称】マルチ
【氏名又は名称原語表記】MARUCHI
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】チャン スンウク
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/146832(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0100446(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0037979(KR,A)
【文献】米国特許第05573583(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00-6/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸カルシウム成分、および
DMSOを含む、
単一のペースト型水硬性根管充填材組成物であって、
前記DMSOは前記単一のペースト型水硬性根管充填材組成物の液体成分の重量の70%以上で含み、
水、エタノール、ポリエチレングリコールおよびDEGEEで構成された群から選択された少なくとも一つを前記液体成分の重量の30%以下で含む、単一のペースト型水硬性根管充填材組成物。
【請求項2】
ポゾラン物質をさらに含む、請求項1に記載の単一のペースト型水硬性根管充填材組成物。
【請求項3】
前記ポゾラン物質はヒュームドシリカ、沈降シリカおよびコロイダルシリカのうち少なくとも一つである、請求項2に記載の単一のペースト型水硬性根管充填材組成物。
【請求項4】
メタカオリン、硅藻土および膨潤性粘土のうち少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載の単一のペースト型水硬性根管充填材組成物。
【請求項5】
前記膨潤性粘土はベントナイト、ヘクトライトおよび合成膨潤性粘土のうち少なくとも一つを含む、請求項4に記載の単一のペースト型水硬性根管充填材組成物。
【請求項6】
放射線不透過性物質をさらに含み、
前記放射線不透過性物質は、バリウムチタネート、ビスマスチタネート、バリウムジルコネート、ジルコニウムオキサイド、カルシウムタングステート、タンタルオキサイドおよびこれらのうち二以上の混合物から選択される、請求項1に記載の単一のペースト型水硬性根管充填材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジメチルスルホキシド(DiMethyl SulfOxide;DMSO)を含む単一のペースト型水硬性根管充填材のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医療用セメント組成物は、神経、血管、細胞組織などが除去された空間に充填される物質として多様な分野で使われている。特に、歯科分野において、歯内部の神経、血管、その他細胞組織などを除去した後、その空間に材料を充填し密封して歯の機能を維持させる根管(神経)治療(endodontic treatment)をする場合における医療用セメント組成物の使用は必須である。
【0003】
医療用セメント組成物の一つであるMTA(Mineral Trioxide Aggregate)は根管の治療時に広範囲に使われる物質であって、主に歯根の穿孔の修復、歯髄切断術、部分歯髄切断術、歯髄覆髄(pulp capping)、根管充填(root canal filling)、歯根端逆充填(root-end retrofilling)等に使われる。MTAは密閉性および生体親和性が優秀であり、生活歯の歯髄治療に主に使用される水酸化カルシウムより第三象牙質の形成や炎症細胞の浸潤の側面では優位にあると言える。
【0004】
MTAはカルシウムシリケート(calcium silicate)、カルシウムアルミネート(calcium aluminate)および石膏を主成分として含む。体液、唾液、その他液体などが存在する環境において、前記のようなカルシウムシリケートが水と反応してカルシウムシリケート水和物(Calcium Silicate Hydrate;C-S-H)と水酸化カルシウム(calcium hydroxide)を生成することになる。ここで、一般的にMTAの水和反応によって生成される生成物の75%はカルシウムシリケート水和物(C-S-H)であり、残りの25%程度が水酸化カルシウムであると推定される。カルシウムシリケートの水和反応は非常に長時間を要するため、カルシウムアルミネートを添加して硬化時間を調節する。カルシウムアルミネートは水和の初期にエトリンガイトを形成して初期強度を発生させるが、この時、過度に早い水和反応によって操作性が悪くなる可能性があるため、カルシウムアルミネートに対する重量比で40~100%程度の石膏をさらに混合する。石膏は二水石膏よりは無水石膏や半水石膏が使われ、半水石膏の中ではベータ型よりアルファ型が体積安定性の面で好まれ、無水石膏は多様な種類があるが特に2型無水石膏が好まれる。
【0005】
MTAは水と反応して硬化しながら周辺の硬組織に接着するため、従来に使われていたアマルガム、IRM、Super EBAなどより密閉性は優秀であるが、硬化時間が長い上、操作性が悪く、変色が発生するなどの問題点が存在する。また、MTAは水和過程で周辺の状況に大きく影響され、炎症が存在するか出血が酷い場合、固まらずに洗い落とされる問題がある。悪い操作性はMTAを使う使用者(歯医者)の立場では最も大きな壁であり、特に狭くて深い根管内に粉末型MTAを液体と混合して適用することは多くの時間と努力そして試行錯誤が要される。
【0006】
最近NMP(N-Methyl-2-Pyrrolidone)とケイ酸カルシウムセメントの混合物を含めて、単一のペースト型で提供されるMTAシーラー(sealer)が市中に普及するにつれて、使用の便利性、強力な密閉性、施術の安全性などが多くの実験で検証されたし、その結果、相当な脚光を浴びている。ここで、NMPはケイ酸カルシウムと混錬された状態で提供され、人体内で硬化するものであり得る。NMPは長い検証期間を経て人体に使って安全なものと医学的に認められる液体ではあるものの、人体に毒性がないため幹細胞の分化に影響を与えない程度の安全性が要求される再生根管治療(regenerative endodontic procedure)の目的で使うには少々物足りない。
【0007】
NMPのように、極性溶媒でありながら水と粘性が類似するため容易に置換され、人体に長い間使われてきており、安全性と有効性が検証されたものとして、DMSO(DiMethyl SulfOxide)がある。食餌性硫黄は常温で固体で存在すればMSN(DMSO2)と呼び、液相で存在すればDMSOと呼ぶ。DMSOは抗炎症薬理作用のため、リウマチ関節炎、強直性脊椎炎、湿疹、にきび、膿疱性皮膚疾患、歯周炎、歯髄炎などに主に使用される。他の物質の侵透性を高める性質のため、薬品運搬体として機能性化粧品などにもよく使われる。また、DMSOは癌細胞などに変性した細胞の分化を誘導する能力と細胞の成長を抑制する能力があるものとして知られており、DMSOの化学構造式を活用した多様な誘導体である、HMBA、SBHA、SAHA、TSAなどのようなヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase)抑制剤が開発された。これらの誘導体は多様な癌を治療するための抗癌剤として使われている。この他にも、前記のようなDMSOは溶解力と細胞組織への侵透性に優れており、細胞を凍解から保存する能力が優れている。このような性質のため、細胞凍結保存だけでなく現在の不治の病を未来に治癒するための手段である「冷凍人間の保存」にも広く使われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前述した従来技術の問題点を解決することをその目的とする。
【0009】
本発明は生体親和性が優秀であり、人体内で毒性反応を起こさないためさらに安全な根管充填材を提供することを他の目的とする。
【0010】
本発明は、混錬状態で提供され、周辺の水を吸収して硬化しながら根管や歯の穿孔部位を三次元的に密閉させる単一のペースト型水硬性根管充填材を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明の代表的な構成は下記の通りである。
【0012】
本発明の一態様によると、ケイ酸カルシウム成分、およびDMSOを含む単一のペースト型水硬性根管充填材組成物が提供される。
【0013】
この他にも、本発明を実現するための他の根管充填材がさらに提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、生体親和性が優秀であり、人体内で毒性反応を起こさないためさらに安全な根管充填材が提供される。
【0015】
本発明によると、混錬状態で提供され、周辺の水を吸収して硬化しながら根管や歯の穿孔部位を三次元的に密閉させる単一のペースト型水硬性根管充填材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施例に係る細胞毒性試験のグラフ。
【
図2】本発明の一実施例に係る細胞毒性試験のグラフ。
【
図3】本発明の一実施例に係るpH変化実験グラフ。
【
図4】本発明の一製造例の試料と前記製造例でベントナイトを900℃で熱処理した試料がそれぞれバイオフィルムを有するE.faecalisに対して適用された状況を示すグラフ。
【
図5】前記のような試料がそれぞれバイオフィルムを有するP.endodontalisに対して適用された状況を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
後述する本発明についての詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として図示する添付図面を参照する。このような実施例は当業者が本発明を実施できる程度に充分かつ詳細に説明される。本発明の多様な実施例は互いに異なるものの、相互に排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載されている特定の形状、構造、成分および特性は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく一実施例から他の実施例に変更されて具現され得る。また、それぞれの実施例内の個別の構成要素の位置や配置、または個別の構成要素間の混合、反応などに関する環境や順序も本発明の精神と範囲を逸脱することなく変更され得ることが理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として行われるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の請求項が請求する範囲およびそれと均等なすべての範囲を包括するものとして理解されるべきである。図面で類似する参照符号は多様な側面に亘って同一または類似する構成要素を示す。
【0018】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の多様な好ましい実施例に関して添付された図面を参照して詳細に説明する。
[本発明の好ましい実施例]
【0019】
本発明の実施例に係る単一のペースト型水硬性根管充填材の組成は次の通りであり得る。これは粉末成分と液体成分とに大別されて説明され得る。
【0020】
(1)粉末成分
【0021】
粉末成分は水和反応をするケイ酸カルシウム成分を含むことができる。このようなケイ酸カルシウム成分の種類として3ケイ酸カルシウムと2ケイ酸カルシウムが存在し得る。特に、3ケイ酸カルシウムは三斜晶系の三種類、すなわちT1、T2およびT3であるか、単斜晶系の三種類、すなわちM1、M2およびM3であるか、菱面体晶系であり得、この中から自由に選択され得る。好ましくは、非中心対称構造であるM3またはR-phase構造のものが選択され得る。2ケイ酸カルシウムも非中心対称構造であるβ-C2Sであることが好ましい。非中心対称構造を有するケイ酸カルシウム化合物が選択される最も大きな理由は、水との反応性がよく、水和後に残る未反応ケイ酸カルシウム化合物の生体安全性が優秀であるためである。
【0022】
前記のようなケイ酸カルシウム成分の水和により生成される水酸化カルシウムは根管内で初期には有効で安全であるが、過度に長く存在すると歯質を形成するコラーゲンと反応して歯質を弱化させ得る。そのため、水酸化カルシウムを消耗させるポゾラン物質をさらに含むことが好ましい。このようなポゾラン物質としてはヒュームドシリカ、沈降シリカ、コロイダルシリカなどの非晶質シリカが選択され得、この他にもメタカオリン、硅藻土、膨潤性粘土(例えば、膨潤性フィロシリケート)等が適切に使われ得る。特に、膨潤性フィロシリケートはペーストを注入するのに適切な粘性を提供し、硬化過程で根管充填材に適合した膨張率を提供する長所がある。ベントナイト、ヘクトライト、合成膨潤性粘土などが膨潤性フィロシリケートの適切な例であり、抗菌性の優秀なベントナイトが最も好ましい。ベントナイトは700℃以上で熱処理すればポゾラン反応性までできる長所があり、この時にも抗菌性が維持されるものとして知られている。しかし、熱処理をすることになると膨潤性がなくなるため、適切な膨張のためにはポゾラン反応性がないベントナイトが適合な場合もある。
【0023】
また、粉末成分として放射線不透過性物質がさらに含まれ得る。放射線不透過性物質は使用者が注入した充填材が所望の位置まで十分に伝達されたか確認できるように助けてくれるため、放射線不透過性が優秀であるように国際基準(ISO 13485)よりもう少し多い量を添加することが好ましい。例えば、ビスマスチタネート、バリウムチタネート、バリウムジルコネート、ジルコニウムオキサイド、タンタルオキサイド、カルシウムタングステートなどのように、人体内で安全かつ毒性がなく、浸出(leaching)が少ない粉末が好ましい。ビスマスオキサイドのように、歯質を変色させよく浸出する成分は除くことが好ましい。この中でも特にバリウムチタネートやジルコニウムオキサイドの粉末が最も好ましい。
【0024】
また、適切な、増粘剤が追加され得る。好ましい増粘剤成分としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体とキチン、キトサン誘導体、ベントナイト、ヘクトライト、糖アルコールなどから選択された少なくとも一つが含まれ得る。増粘剤はDMSOに溶けたり分散しながら粘性を付与できる成分のうち、硬化を妨害せず人体への使用に適合なものであればいずれでもよい。
【0025】
(2)液体成分
【0026】
液体成分はDMSOを含むことができる。DMSOは常温で固体で存在するが、これは通常的な使用に不快感を与え得る。したがって、さらに極少量の水、エタノール、モノエチレングリコールおよびDEGEE(DiEthylene Glycol monoEthyl Ether)のうち一つまたは二以上の組み合わせを添加して氷点を低くすることが好ましい。しかし、いずれの場合でも前記のような添加液体の重量比は全体の液体成分の重量の30%以下であることが好ましい。すなわち、DMSOは重量比を基準として液体成分の少なくとも70%以上を占めることが好ましい。これより含量が低いと経皮吸収に影響を与え得、抗炎症効果と鎮痛効果が低下し得る。
【0027】
以下では、本発明の多様な実施例に対して遂行された実験と評価について説明する。
【0028】
(1)細胞毒性評価
図1は、本発明の一実施例に係る細胞毒性試験のグラフである。
図1を参照して詳察することにする。
【0029】
A:NMP、B:DMSO、C:DEGEE、D:DMSO 80%+ DEGEE 20%
【0030】
前記のような4種類の溶媒に対して細胞毒性を次のような方法で測定した。
【0031】
(i)試片を厚さ2mmおよび直径10mmの大きさでモールドに入れて37℃のインキュベーターで3日間硬化させる。(ii)硬化した試片にml当たり0.5cm2の表面積/培地の割合で培地を埋めて37℃で3日間インキュベーションして材料抽出物を導き出す。(iii)MC3T3-E1細胞を24-ウェル培養皿にウェルごとに1.5×104個ずつシーディングして24時間の間インキュベーションをした後、培地を吸入(suction)して捨て、材料抽出物を1mlずつ入れて3重にセッティングする。(iv)それぞれ24時間、48時間および72時間の間インキュベーションをした後に培地を捨て、0.05%のMTT溶液を200μlずつ処理し、アルミホイルで包んで37℃のインキュベーターで2時間の間反応させる。(v)反応後DMSO 200μlを添加してから反応液を96-ウェル皿に200μlずつ移して590nmで吸光度を測定する。
【0032】
前記実験の結果は下記および
図1の通りであった。(i)DMSO、DEGEE、そしてDMSOおよびDEGEEの混合物を溶媒として使う群が、すべての実験とすべての時期においてNMPを溶媒として使う群と比べて統計的に有意義な高い細胞生存率を示した(p<0.05)。(ii)DMSOを溶媒として使う群が、48時間および72時間の場合に、DEGEEそしてDMSOおよびDEGEEの混合物を溶媒として使う群と比べて有意義な高い細胞生存率を示した(p<0.05)。(iii)DMSOおよびDEGEEの混合物を溶媒として使う群は48時間および72時間の場合に、他の群と比べて有意義な低い細胞生存率を示した(p<0.05)。
【0033】
(2)本発明の実施例に係るペースト
【0034】
製造例
本発明の一実施例により、ジルコニウムオキサイド、3ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ヒュームドシリカおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースをDMSOと混合してペーストを作った。以上の成分を順に45:21:1:0.6:0.6:31.8の重量比で混合した。
【0035】
細胞毒性
図2は、本発明の一実施例に係る細胞毒性試験のグラフである。
図2を参照して詳察することにする。
【0036】
EC:水と混合した既存のendocem MTA製品、OES:NMPを溶媒として使った既存の単一のペースト型水硬性根管充填材endoseal MTA製品、WES:DMSOを溶媒として使った本実施例により製造されたペースト、AH+:市中で市販中のレジン系(MTAではない)シーラーであるAH plus製品
【0037】
前記のような4種類の製品/組成物に関して細胞毒性を次のような方法で評価した。
【0038】
(i)試片を厚さ2mmおよび直径10mmの大きさでモールドに入れて37℃のインキュベーターで3日間硬化させる。(ii)硬化した試片にml当たり0.5cm2の表面積/培地の割合で培地を埋めて37℃で3日間インキュベーションして材料抽出物を導き出す。(iii)MC3T3-E1細胞を24-ウェル培養皿にウェルごとに1.5×104個ずつシーディングして24時間の間インキュベーションをした後、培地を吸入して捨て、材料抽出物を1mlずつ入れて3重にセッティングする。(iv)それぞれ24時間、48時間および72時間の間インキュベーションをした後に培地を捨て、0.05%のMTT溶液を200ulずつ処理し、アルミホイルで包んで37℃のインキュベーターで2時間の間反応させる。(v)反応後DMSO 200μlを添加してから反応液を96-ウェル皿に200μlずつ移して590nmで吸光度を測定する。
【0039】
図
2に図示された通り、WESは1日目と2日目に対照群と類似する細胞生存率を示したし、3日目には対照群と比べてより高い細胞生存率を示した(p<0.05)。また、OESと比べて高い細胞生存率を示したし(p>0.05)、ECとは類似する細胞生存率を示した(p<0.05)。OESはNMPを溶媒として使うがWESはDMSOを使うため、低い細胞毒性を示したものと考えられる。
図2は、結果としてWESが既存の製品と比べて優秀な生体適合性を示すことを後押しする。
【0040】
pH変化
本実施例により製造されたペーストのpH変化を観察した。WESを実験群とし、レジン系物質であるAH plusを対照群とした。各材料を1mmの厚さおよび5mmの直径を有するモールドに注入した後に硬化させた。その後、10mlの蒸溜水に硬化した材料を入れてphメーターを利用して1時間から7日までpHを測定した。前記実験の結果については、
図3の本発明の一実施例に係るpH変化実験グラフを参照することができる。WESは実験期間の間ずっと10以上のpHを維持したがAH plusは中性に該当するpHを示した。これはヒュームドシリカが強塩基性の水酸化カルシウムを消耗したためと考えられる。
【0041】
溶解度
根管充填材はできるだけ根管内で組織液などによって溶解しないことが好ましい。溶解度が高いと溶解した空間で細菌が増殖して再感染となり得るためである。すなわち、溶解度が低いほど密閉性が優秀となる。
【0042】
本実施例により製造されたペーストを1.5mmの厚さおよび20mmの直径を有するモールドに注入した後に硬化させ、各試片の重さを測定してこれをW1と設定した。各試片を10mlの蒸溜水に漬け、その後7日目に取り出して再び重さを測定してこの重さをW2と設定した。溶解度を溶解度(s)=(W1-W2)/W1×100の公式を利用して算出した。その結果、1.19±0.11%の相当に良好な溶解度を示した。
【0043】
体積変化
根管充填材は、一度根管内に適用されると必ず本来の体積をそのまま維持しなければならず、できるだけ収縮してはならない。材料が収縮すると必然的に空いた空間を残すことになり、細菌が増殖し得る条件が造成されるためである。単一のペースト型MTAシーラーは体積変化が少ないことが最も重要な性質であって、2%内外の膨潤性がなければならない。
【0044】
本実施例により製造されたペーストを6mmの直径および12mmの長さを有するシリコンモールドに注入した後に硬化させた。その後、材料をモールドから除去して長さを測定したし、その長さをM1と設定した。その次に、37℃の蒸溜水に保管し、7日後に材料を取り出して再び長さを測定してその長さをM2と設定した。体積変化(D)はD=(M2-M1)/M2×100によって算出された。その結果、2.25±0.28%であり、5%以下の優秀な体積変化を示した。
【0045】
抗菌性
図4は、製造例の試料(FD170828)と製造例でベントナイトを900℃で熱処理した試料(FD170828PH)(熱処理の理由は膨張を調節して抗菌性を維持するためである)が、それぞれバイオフィルムを有するE.faecalisに対して適用された状況を示すグラフである。そして、
図5は、前記のような試料がそれぞれバイオフィルムを有するP.endodontalisに対して適用された状況を示すグラフである。他の二種類の試料については便宜上説明を省略する。
【0046】
図4および
図5の実験のために、細菌として、E.faecalis ATCC 29221 brain heart infusion(BD bioscience、Sparks、MD、USA)培地を利用して37℃好気状態で培養したし、P.endodontalis ATCC 35406はhemin(1ug/ml)とvitamin K(0.2ug/ml)が含まれたbrain heart infusion液体培地を利用して37℃嫌気状態で培養した(5%H2、10%CO
2および85%N
2)。
【0047】
まず、E.faecalisを12-ウェルプレートに接種し、毎日既存の液体培地を除去し、新しい液体培地で1mlずつ取り換えしながら嫌気状態で一週間の間培養した。一週間後に培地を除去してから、FD170828とFD170828PHを0.5mgを塗布し、37℃嫌気状態で2時間の間放置した。以降、1mlのBHI液体培地を入れてスクレーパーでバイオフィルムを除去し、浮遊液を2mlだけチューブに移し、サンプル粒子を除去するために1,000×gで10分間遠心分離して細菌が含まれた上層液をきれいなチューブに移した。以降、細菌が含まれた浮遊液を10倍ずつ希釈し、BHI固体培地に接種してから細菌数を測定した。細菌数測定には、マイクロリーダーを利用して660nm波長で吸光度を測定する方法を使った。
【0048】
また、P.endodontalisに関しても前記と類似する方法論で遂行した。
【0049】
結果として、図示された通り、
図4および
図5の場合、いずれも抗菌性が非常に優秀であることが分かる。