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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】救助者による手動操作用の油圧救助器具
(51)【国際特許分類】
   A62B 99/00 20090101AFI20220606BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20220606BHJP
   F15B 15/28 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
A62B99/00 C
F15B15/14 350
F15B15/28 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019570596
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 AT2018060061
(87)【国際公開番号】W WO2018161103
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】A50190/2017
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】519329324
【氏名又は名称】ベーバー-ハイドラウリク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】リュディガー ゲオルク ノール
(72)【発明者】
【氏名】ミラン クロフリック
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0105658(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0168623(US,A1)
【文献】米国特許第03891187(US,A)
【文献】米国特許第02165504(US,A)
【文献】特開2008-223845(JP,A)
【文献】特開2001-048486(JP,A)
【文献】米国特許第05873175(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00-99/00
B66F 1/00- 5/04,
7/00- 7/28,
13/00-19/02
F15B 15/00-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救助者(2)による手動操作用の油圧救助器具(1)であって、
シリンダパイプ(6)と、該シリンダパイプ(6)に対して変位可能な少なくとも一つのピストンロッド(7、7')とを備えた油圧シリンダ(5)と、
前記シリンダパイプ(6)に形成され、救助者(2)によって自由に選択可能な対象面に救助器具(1)を荷重伝達するように支持するための少なくとも一つの第1の支持面(17)と、
少なくとも一つのピストンロッド(7、7')に形成され、救助者(2)によって自由に選択可能な第2の対象面に救助器具(1)を荷重伝達するように支持するための、少なくとも一つの第2の支持面(19)と、
前記シリンダパイプ(6)に対する少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の変位運動を必要に応じて開始し、かつ終了させるための、少なくとも一つの手動操作可能な制御弁(14)と、を有する油圧救助器具において、
少なくとも一つのピストンロッド(7、7')のジャケット面(22、22')に、救助者(2)によって読取り可能な少なくとも1つ又は複数のマーキング(23、23')が形成されており、少なくとも一つのマーキング(23、23')は、少なくとも、シリンダパイプ(6)に対する少なくとも一つのピストンロッド(7、7')のまだ提供可能な残留ストローク(24)示すために設けられている、ことを特徴とする油圧救助器具。
【請求項2】
複数のマーキング(23、23')は、少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の長手軸に関して互いに離隔して形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の油圧救助器具。
【請求項3】
マーキング(23、23')は寸法(26)を有し、該寸法(26)は少なくとも一つのピストンロッド(7、7')のまだ提供可能な残留ストローク(24)を示している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧救助器具。
【請求項4】
マーキング(23、23')が矢印形状、ビーム形状又はくさび形状の標識(29)を有し、該標識(29)が少なくとも一つのピストンロッド(7、7')のそれぞれまだ提供可能な残留ストローク(24)を示す、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の油圧救助器具。
【請求項5】
マーキング(23、23')は、シリンダパイプ(6)に設けられた第1の支持面(17)に関して、少なくとも一つのピストンロッド(7、7')のまだ提供可能な残留ストローク(24)を値又は量によって示すため設けられている、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の油圧救助器具。
【請求項6】
マーキング(23、23')は、少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の横断面又はジャケットの外周にわたって少なくとも部分的に延びるマークリング又はラインマーキング(28)を有している、ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の油圧救助器具。
【請求項7】
同じように形成された少なくとも二つマーキング(23)及び/又は寸法(26)は、少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の横断面又はジャケットの外周に表示され、横断面又はジャケットの外周にわたって均一に分配して配置されている、ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の油圧救助器具。
【請求項8】
マーキング(23、23')は、少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の表面に、色でコントラストをつけて、かつ面一で形成されている、ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の油圧救助器具。
【請求項9】
マーキング(23、23')は、アニール色で形成されており、該アニール色は、少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の金属の表面部分への熱作用加工によって形成されいる、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の油圧救助器具。
【請求項10】
前記熱作用加工はレーザービーム加工を含む、請求項9に記載の油圧救助器具。
【請求項11】
マーキング(23、23')は、電気化学的工方法によって、少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の金属の表面部分上に形成されている、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の油圧救助器具。
【請求項12】
前記電気化学的加工方法はガルバニック加工方法を含む、請求項11に記載の油圧救助器具。
【請求項13】
最大可能な操作ストローク(11)は300mmと1、000mmとの間であり、マーキング(23、23')は少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の長手方向に関して50mm又は100mmの距離で配置されている、ことを特徴とする請求項1~12何れか一項に記載の油圧救助器具。
【請求項14】
比較的高精度のマーキング(23、23')の情報の密度又は密集した分布は、全体として提供可能な操作ストローク(11)の最初の部分に比較して、まだ残っている残留ストローク(24)に関して、少なくとも一つのピストンロッド(7、7')の全体として提供可能な操作ストローク(11)の最後の部分内に提供され、又は少なくとも一つのピストンロッド(7、7')が移動する最後の距離にわたって比較的高精度の情報能力がある、ことを特徴とする請求項1~13何れか一項に記載の油圧救助器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1人の救助者による手動操作又は使用のための油圧救助器具に関する。油圧救助器具は、救助者によって手で支持することができ、又は位置決めすることができる。この種の油圧救助器具は、シリンダパイプとシリンダパイプに対して変位可能な少なくとも一つのピストンロットとを備えた油圧シリンダを有している。シリンダパイプに形成されている、少なくとも一つの第1の支持面は、救助者が自由に選択できる第1の対象面で荷重を伝達するように救助器具を支持するために設けられている。少なくとも一つのピストンロッドに形成されている、少なくとも一つの第2の支持面は、救助者が自由に選択できる第2の対象面、たとえば車両ボディ又はその他の対象に荷重を伝達するように救助器具を支持するために設けられている。少なくとも一つの手動で操作可能な制御弁は、シリンダパイプに対する少なくとも一つのピストンロッドの変位運動を必要に応じて導入して操作するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧救助器具は、主として、技術的な救助サービス又は、たとえば消防隊のような救助組織が、事故に遭った人を変形した車両から自由にし、又は閉じ込められ、又は挟み込まれた状態から自由にすることができるようにするために使用される。特に、この種の救助器具は、締めつけられたドアをこじ開け、又は事故に遭った人の領域内の対象を取りのけ、又は押しのけるために使用される。それによって多くの場合において、まず、閉じ込められ、あるいは挟み込まれた人を自由にし、あるいは事故にあった人の周囲に充分な空間を形成して、それによってそれぞれの環境から、たとえば乗用車又は商用車の車室から、建物構造などから、救い出すことが可能になる。そのためには、それぞれの操作力をもたらすために、部分的に中実の油圧操作シリンダが必要であり、かつ充分に大きい油圧のドッキング力が必要である。それによって、充分に高性能の油圧ユニットとそれに応じて適切な流体的及び機械的な出力を備えた安定的かつ充分に広く変位可能な油圧シリンダが必要となる。この種の救助器具の少なくとも一つのピストンロッドの移動速度は、技術的に制限されている。特に必要とれるポンプユニット又は油圧ユニットの出力の制限により、オイル体積の制限と最終的にそれによってもたらされる操作力、操作速度及び操作距離によって、変位速度に関して、かつ操作ストロークに関して技術的制限が存在する。特に事故に遭った人を収容し、又は救助する場合に、重要な判断基準は、それぞれの救助又は復興活動ができる限り迅速かつ効果的に実施できることである。
【0003】
特許文献1は、金属構造などのリフト、曲げ及び方向づけプロセスに関連した押圧及び引っ張り操作のための油圧ラムリフターを開示している。このラムリフターは、油圧を供給可能なシリンダ配置を有し、そのシリンダ配置がそれに対して変位可能なピストンロッドを有している。ラムリフターの内部のコイルばねは、少なくとも部分的に引き出されたピストンロッドを最大に引き込まれる初期位置へ自動的に復帰させることができる。ピストンロッドのジャケット面上に複数のバーマーキングを設けることができ、そのバーマーキングによって操作者は、シリンダ配置に対してピストンロッドがどの程度引き出されているかを、確認することができ、それによってラムリフターからどの程度の操作運動が作業対象へもたらされたか、を判断することができる。これらのマーキングによって、操作者はリフト又は引っ張り操作の進展をより正確に判断することができる。
特許文献2は、収容又は救助出動のための手動で駆動可能な油圧救助シリンダを開示している。この救助シリンダは、少なくとも一つのピストンロッドを有しており、そのピストンロッドは油圧を加えることによってシリンダパイプに対して引き出すことができる。ピストンロッドに設けられた少なくとも一つの伸縮変位可能なパイプ部材は、救助シリンダの段階的、機械的に調節可能な変位を可能にする。シリンダパイプの閉鎖された端部に、油圧ブロックが形成されており、その油圧ブロックに支持プレートが揺動運動可能に支承されている。ピストンロッド又は少なくとも一つの伸縮可能なパイプ部材の、シリンダパイプとは逆の端部には、対象支持工具が交換可能に保持されている。この救助シリンダによって、プロフェッショナルな救助力に、事故にあった車両を安定させるための工具が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第2231680(A)号明細書
【文献】米国特許出願第2013/105658(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、クラス固有の油圧救助器具を展開して、それによって事故にあった人のできる限り迅速かつ効率的又は目的に合った救助を支援し、又はできる限り確実に行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、請求項1の特徴部分の特徴を有する油圧救助器具によって解決される。
【0007】
本発明に基づいて形成された救助器具は、少なくとも一つのピストンロッドのジャケット面に、救助者によって読取り可能な少なくとも一つのマーキングを有しており、その1つ又は複数のマーキングは、少なくともシリンダパイプに対する少なくとも一つのピストンロッドのまだ提供可能な残留ストロークをすために設けられている。
【0008】
本発明に係る油圧救助器具の利点は、それによって救助シーケンスを特に目的に合わせて、又は効率的に実施できることにある。特に救助者によって読取り及び解釈可能なマーキングによって、正しい時期に、又は早期に救助器具の技術的限界を考慮し、又は考えることが、可能である。特に救助者は、事故にあった人を救助するために必要な救助開口部又は必要な自由空間を形成するために、該当する救助シリンダを早期に付け替え、又はより適した位置に取り付けることができる。それによって、事故にあった人の救助活動の経過における貴重な時間を節約することができる。さらにそれによって、救助者の誤り又は誤評価を防止することができる。たとえば、油圧救助器具がすでに最大に引き出されているが、それ以上の操作ストロークがまだ提供されると思って、混乱することがない。救助プロセスにおけるこの種の停止状態又はブロックは、重大な結果を伴うことが有り得る。この致命的な結果は、特に油圧救助器具と組み合わせた、本発明に係る措置によって、回避し、又は阻止することができる。したがって救助プロセスは、できる限り迅速に、誤解なく、かつきわめて目的に合わせて展開することができ、それがその救助者にとっても好ましいことであり、そしてまた救助すべき、又は解放すべき人にとっても著しい利点となることができる。
【0009】
好ましい実施形態によれば、少なくとも一つのピストンロッドにおけるマーキングは、寸法、特に数値及び/又は寸法単位を有しており、その寸法が少なくとも一つのピストンロッドのまだ提供可能な残留ストロークを示す。それによって操作者は、どのくらいの操作距離又は操作ストロークがまだ提供可能であるか、及びまだ提供可能なこの操作ストロークが、充分に大きい救助開口部又は充分に大きいスライド距離又は押圧距離を得るのに充分であるか、についての明確な展望を得る。そうでない場合には救助者は、早期又は間に合う時期に措置を講じることができ、たとえば救助器具の位置替えを行い、あるいは中間部材又は延長部分を取り付けて、それによって救助プロセスを迅速に行い、又は完了することができる。
【0010】
組み合わせた、又は代替的な実施形態によれば、マーキングは矢印形状、ビーム形状あるいはくさび形状の標識を有することができ、その標識は、少なくとも一つのピストンロッドのまだ提供可能な残留ストロークを表す。この実施形態の利点は、それによって比較的大きく寸法設計された標識を取り付けることができ、それが油圧救助器具がそれぞれどの作業状態にあるかを明白に認識させることにある。さらにそれによって、それぞれまだ提供可能な残留ストロークの、言語又は国に依存しない表示と把握が可能となる。さらにこの種の標識は、通常、記号あるいはその他の寸法又は値によって得られるよりも、ずっと遠くから比較的容易かつ確実に把握することができる。
【0011】
代替的又は組み合わせて実施形態によれば、マーキングは、少なくとも一つのピストンロッドのまだ提供可能な残留ストロークを値又は量的に示すため、及び/又はシリンダパイプに設けられた第1の支持面に関して少なくとも一つのピストンロッドのそれぞれ移動した操作ストロークを値又は量的に示すために、設けられている。それによっても救助者は、救助活動を迅速に完了させるため、又は適切な救助開口部をもたらすことができるようにするために、どのくらいの残留距離又はどのくらいの操作距離がまだ提供されるかについての展望を形成することができる。それぞれ移動した操作ストロークが表示される場合には、最大提供される操作ストロークとの関連において、まだ残っている残留ストロークを簡単に求め、又は救助者によって決定され、評価されることができる。記載された措置は、救助者に明示テキストにおいて、及び/又はシンボリックに、どのくらいのストローク又はスライドのリザーブがまだ提供できるか、について知らされるので、救助出動のよりよい計画作成に反映される。
【0012】
実施形態によれば、マーキングは少なくとも一つのピストンロッドの横断面又はジャケットの周囲にわたって少なくとも部分的に延びるマークリング又はラインマーキングを有している。好ましくは、この種のマーキングは簡単かつ迅速に形成することができ、かつこの標識は、油圧救助器具のそれぞれの作業状態又はシステム状態についての一義的な情報を与えることができる。さらにそれによって、救助器具又はその少なくとも一つのピストンロッドに関して、ほぼすべての視線方向から出発してそれぞれのステータス情報を一義的に把握することができる。
【0013】
他の実施形態によれば、少なくとも一つのピストンロッドの横断面又はジャケットの周周囲に関して、少なくとも二つ、好ましくは少なくとも三つ、最大で五つまでの等しく形成され、横断面又はジャケットの周囲にわたって均一に分配されたマーキングが設けられている。それによって、救助器具及び/又は救助者の位置変更を必要とせずに、同様にほぼすべての視線方向からしかるべきマーキングを把握し、又は救助者が読み取ることができる。特にそれによって、ほぼすべての視線方向から、それぞれの情報を良好に把握することができる。さらにそれによって、コストのかかる、又は場合によっては少なくとも一つのピストンロッドの表面を損なうようなマーキングを回避することができる。特にそれによって、過剰な加工を阻止し、又はコストをもたらすようなマーキングステップを、最適なコスト/利用比内に維持することができる。
【0014】
また、少なくとも一つのピストンロッドの長手軸に関して、互いに離隔した複数のマーキングが形成されていると、効果的である。それによって救助者は、比較的早期に、又は間に合う時に、まだ提供可能な操作ストロークを知ることができる。特にそれによって、救助者にとって、油圧救助器具の利用の間ほぼ連続的又は同時進行の情報が提供可能である。それによって、少なくとも一つのピストンロッドの最後の終端部分内のみに形成されているマーキングとは異なり、適切な救助作業を特に目的に合わせ、かつよく考えて、又は効率的に実施することができ、特に油圧救助器具のしかるべき使用を正確に計画することができる。
【0015】
油圧救助器具の利用途上における良好な読取りと漏れの回避は、マーキングが、カラーコントラストをつけて、かつ少なくとも一つのピストンロッドの表面に対して面一で形成された印、標識及び/又は値によって形成されている場合に、得られる。したがってそれによって、少なくとも一つのピストンロッドの表面における刻印又は切り欠きエンボス加工印とは異なり、変化しない高い気密性を得ることができ、又は漏れを回避することができる。特にそれによって、少なくとも一つのピストンロッドのジャケット面又は表面における過剰なオイルフィルムの形成を阻止することができる。
【0016】
実際的な措置は、マーキングをアニール処理によって形成することにあって、その処理により形成されたアニール色は、少なくとも一つのピストンロッドの金属の表面部分上に熱作用によって設けられ、特にレーザービーム加工によって形成されている。それによって、そのようなマーキングは、比較的好ましいコストで、かつ迅速にピストンロッドのそれぞれの表面部分に形成することができる。特にそれによって、それぞれのマーキングを経済的に形成することができる。そしてまた、そのようなマーキングは長期的に保たれ、又は永続的耐性も得られ、それによって少なくとも一つのピストンロッドの該当する表面部分が損なわれることはない。
【0017】
代替的な印字ステップも効果的であって、それによればマーキングは少なくとも一つのピストンロッドの金属の表面部分上に電気化学的な、特にガルバニック加工方法によって設けられる。それによっても、少なくとも一つのピストンロッドに長期間もつマーキング又は印字を行うことができ、該当する表面の品質の実質的損傷が生じることはない。
【0018】
実際的な実施形態によれば、油圧救助器具は300mmと1000mmの間の最大提供可能な操作距離を有し、かつマーキングは少なくとも一つのピストンロッドの長手方向に関して50mm又は100mmの間隔で配置されている。それによって、性能と軽量性又は苦労のない取扱いとの間の最適な関係を形成することが可能である。それによってさらに、特に車両故障と結びついた、典型的に発生する多数の救助シナリオをカバーすることができる。さらに、マーキングが50から100mmの間隔で配置されていると、見やすさと情報内容又は情報量との間の最適な関係が得られる。特にそれによって操作者にとって、油圧救助器具によってどのくらいの押し作用をまだ得ることができるかについて、充分な情報内容が与えられる。それによって特に、印字の手間とそれぞれの救助者にとっての充分な情報内容との間の最適な関係が形成される。
【0019】
好ましい展開によれば、少なくとも一つのピストンロッドの全体として提供可能な操作ストロークの最後の部分内では、全体として提供可能な操作ストロークの最初の部分に比較して、マーキングの比較的高精度の情報密度又はまだ残っているストロークについての比較的高精度の距離が提供されている。それによって特に、最初の距離に比較して最後の距離でより高精度の能力が与えられている。これによって、油圧救助器具の操作限界に達し、又は迫っている場合に、まだ提供可能な変位距離のより高精度の情報内容又はより細かい操作精度能力が存在し、それによってそれぞれの救助者は、位置決めをしなおすべきか、延長部分又は付加的な支持部分の中間接続を行うべきか、あるいは指向する目的を達成するために、まだ提供される操作距離が充分であるか、を容易に決定することができる、という利点が提供される。
【0020】
本発明をさらによく理解するために、以下の実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
図は、それぞれ著しく簡略化された図式的な表示である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】油圧救助器具を、少なくとも一つのピストンロッドが少なくとも部分的に引き出された位置で示す斜視図である。
図2図1に示す救助器具を、少なくとも一つのピストンロッドが引き込まれた位置で示す図である。
図3図1に示す救助器具を、たとえば救助者によって使用する間の使用状況において示す図である。
図4図3に示す救助器具を、規定に基づく利用の途上で示す図である。
図5】救助シリンダのピストンロッドにおけるマーキングの実施例を示す図である。
図6】救助シリンダのピストンロッドにおけるマーキングの他の実施例を示す図である。
図7】救助シリンダの最大提供可能な操作ストロークの最後の部分内のマーキングの実施例を示す図である。
図8】救助シリンダの最大提供可能な操作ストロークの最後の部分内のマーキングの他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に記録しておくが、異なるように記載される実施形態において、同一の部分には同一の参照符号ないし同一の構成部分名称が設けられており、説明全体に含まれる開示は、同一の参照符号ないし同一の構成部分名称を有する同一の部分へ意味に従って適用可能である。また、説明内で選択される、たとえば上、下、側方などのような位置は、直接説明され、かつ示される図に関するものであって、この位置記載は位置が変化した場合には意味に従って新しい位置へ移し替えられる。
【0023】
図1から4には、本発明に基づいて形成された油圧救助器具1の実施例が示されている。好ましくは油圧駆動されるこの救助器具1は、救助者2、典型的に技術的救助サービスの構成員によって、あるいは消防の構成員によって、手動で操作又は使用するために設けられている。油圧の救助器具1は、その全質量に関して、ポータブル又はモバイルであって、特に1人のだけの救助者2によって操作することができ、又は使用場所へ移動させることができるように、考えられている。場合によっては、2人以上の救助者による取扱い又は効率的な利用が必要であり、又は好ましい、油圧救助器具1も形成することができる。
【0024】
例として示す救助器具1は、図示されない外部の油圧ユニット又はポンプユニットと組み合わせて使用するために設けられている。これに関連して救助器具1は、外部の、又は別に位置決めされた油圧ユニット又はポンプユニットへ通じる、図3と4に図式的に示すできる限り形状の安定した油圧導管と必要に応じて取り外し可能に接続するための少なくとも一つのカップリング要素3を有している。このカップリング要素3は、救助器具1と油圧ユニット1又はそのホース形状の油圧導管Lとの流体接続を、必要に応じて形成し、又は分離することができるように、油圧プラグカップリングとして形成されている。油圧導管Lは、好ましくは油圧液のためのいわゆる圧力導管と還流導管とを有しており、それらの導管は互いに対して平行に延びるか、あるいは互いに対して同軸に形成することもできる。
【0025】
少なくとも一つの油圧又は油圧-機械カップリング要素3は、-図示されるように-少なくとも部分的にフレキシブルな形状の導管接続4を介して救助器具1の油圧シリンダ5と接続することができる。油圧シリンダ5は、特に、又は原則的に救助器具1の構成要素である。油圧救助器具1に設けられた、このホース形状の導管接続4は、通常、1メートル未満の長さを有している。これが、油圧救助器具1の得ることのできる人間工学と使用柔軟性における利点を提供する。
【0026】
代替的に、機械-油圧カップリング要素3を油圧シリンダ5又はそれに形成されている接続インターフェイスに固定的に、又は固定位置に、形成することも可能である。代替的に、救助器具1又はその油圧シリンダ5と外部の油圧ユニットとの間に恒久的な、特に取り外しできない、あるいは工具を用いてのみ取り外し可能な油圧接続を設けることも、同様に可能である。同様に、油圧救助器具1を油圧ユニット又はポンプユニットと構造的に組み合わせること、特に構造的なユニットにまとめることが、可能である。この場合においては、特にアキュムレータ駆動される油圧ユニットが、モバイルの救助器具1の固定の、あるいは必要に応じて取り外し可能な構成要素となることができる。代替的に、この種の構造的に組み合わされた救助器具1の電気エネルギ供給は、外部の電流源から行うこともでき、その場合には、この外部の電流源と油圧救助器具1との間にケーブル接続のみが設けられる。
【0027】
重要なことは、油圧シリンダ5及び油圧シリンダ5用のしかるべき駆動ユニットに関連して、軽量性又は可搬性と得ることのできる性能、特に油圧シリンダ5の得ることのできる操作力及び/又は操作速度との間の、できる限り最適な関係が得られることである。特に油圧救助器具1の取扱いと性能は、最適な状況になければならず、そのために場合によっては、ポンプ出力又は油圧出力と油圧シリンダ5の性能に関する妥協が必要である。油圧ユニットは、高圧油圧ポンプを有しており、それが内燃機関あるいは電気モータによって駆動可能であって、その電気モータに電流網から、内燃機関を有するジェネレータから、あるいはアキュムレータから電気的な駆動エネルギを供給することができる。外部の、あるいは内蔵して形成されたポンプユニット又は油圧ユニットは、70MPa(700bar)以上の流体圧を提供することができる。
【0028】
救助器具1の油圧シリンダ5は、それ自体知られているように、シリンダパイプ6とシリンダパイプ6に対して変位可能な少なくとも一つのピストンロッド7、7'とを有している。特に少なくとも一つのピストンロッド7、7’が設けられており、そのピストンロッドはシリンダパイプ6に対して線形に変位可能に案内されている。少なくとも一つのピストンロッド7、7’は、シリンダパイプ6内へ少なくとも部分的に引き込まれた初期位置又は非作動位置8(図2)と、少なくとも一つの作動位置9(図1)との間で移動可能であって、その少なくとも一つの作動位置9は、初期位置又は非作動位置8と構造に基づいて制限された終端位置又は最大位置10との間にある。図1に破線で示される、この終端位置又は最大位置10において、シリンダパイプ6に対して変位可能な少なくとも一つのピストンロッド7、7’は、最大に引き出されており、かつ-それ自体知られているように-機械的な制限ストッパによって、あるいはたとえば遮断弁又は制御技術的な終端位置制限のような、その他の構造的な措置によって、シリンダパイプ6からのそれ以上の引き出し又は変位運動が技術的に制限され、又は限定されている。構造的に制限された引き出し長さ、又は油圧シリンダ5又はその少なくとも一つのピストンロッド7、7’の初期位置又は非作動位置8と、油圧シリンダ5又はその少なくとも一つのピストンロッド7、7’の終端位置又は最大位置10との間の最大提供可能な操作距離が、救助器具1、特にその油圧シリンダ5又はピストンロッド7、7’の技術的に最大提供可能な、又は構造に関して最大得ることのできる操作ストローク11を定める。
【0029】
救助器具1によって最大提供される、又は救助者2のために最大提供可能な、この最大の操作ストローク11は、まず第1に、シリンダパイプ6の軸方向の長さ又はその円筒状の中空室の提供可能な軸方向長さ、ピストンロッド7、7’の形態又は数、油圧シリンダ5の得るべき横強度又は折り曲げ安定性、及び他の構成措置と安定要請に依存している。図示される実施例において、油圧シリンダ5はいわゆる伸縮シリンダとして形成されており、それにおいてたとえば二つの伸縮変位可能なピストンロッド7、7’が設けられている。その場合に、二つより多いピストンロッド7、7'を設けること、あるいはシリンダパイプ6に対して唯一のピストンロッド7のみを変位可能に案内することも、考えられる。図示される伸縮仕様の油圧シリンダ5は、シリンダパイプ6の軸方向の長さが比較的小さいにもかかわらず、比較的大きい最大の操作ストローク11が得られる、という利点を提供する。
【0030】
救助器具1の油圧シリンダ5は、原則的にシングル作用する油圧シリンダ5として形成することができ、それにおいて油圧液がシリンダパイプ6内へ導入されることにより少なくとも一つのピストンロッド7、7'がシリンダパイプ6に対して引き出され、特に初期位置又は非作動位置8から出て、あるいは任意の作業位置9から出て他の作業位置9へ、あるいは終端位置又は最大位置10へ移動可能である。初期位置又は非作動位置8への、あるいは他の作業位置9への復帰は、外部からの力作用によって、たとえば救助者2の圧縮運動によって、重力作用によって、対象による負荷によって、あるいは復帰ばねによって行うことができる。特にシングル作用する油圧シリンダ5においては、少なくとも一つのピストンロッド7、7’のばね力に基づく復帰が好ましい。
【0031】
しかし好ましくは、救助器具1の油圧シリンダ5はダブル作用する油圧シリンダ5として形成されており、それにおいてはシリンダパイプ6に対する少なくとも一つのピストンロッド7、7’の引き出し運動-矢印12-も引き込み運動-矢印13-も、油圧力によって、特に図示されない油圧ユニットの油圧機能又はポンプ機能を利用して、もたらし、又は導入することができる。これに関連して、油圧シリンダ5に対する油圧液の制御された供給と導出が行われる。
【0032】
油圧シリンダ5がダブル作用する油圧シリンダ5として形成されている場合に、救助者2によって必要に応じて作動及び非作動可能な双方向の変位運動、したがってシリンダパイプ6に対する少なくとも一つのピストンロッド7、7’の選択的な引き出し運動と引き込み運動を、迅速かつ快適に実施することができる。しかるべき変位運動、特に引き出し運動12及び/又は引き込み運動13を制御するために、救助器具1に、特に油圧シリンダ5に、少なくとも一つの手動で操作可能な制御弁14が設けられている。この手動で操作可能な制御弁14は、少なくとも一つの操作部材15、16を有しており、それ又はそれらによって、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の引き出し運動12及び/又は引き込み運動13を導入し、又は終了させることができる。たとえば二つの操作部材15、16が油圧制御弁14に設けられている。操作部材15、16は、押しボタン又は押圧キーとして形成されている。第1の操作部材15は、引き込み運動を導入するために用いられ、他の操作部材16は引き出し運動12を導入するために用いられる。制御弁14の手動で切り替える操作、又は比例制御される操作を可能にするために、押しボタンを形成する代わりに、操作部材15、16をトグルボタンにより、スライド部材により、1つ又は複数の回転コントローラなどによって形成することも、可能である。
【0033】
シリンダパイプ6に、救助者2が自由に選択することができる第1の対象面に救助器具1を荷重伝達するように支持するための、少なくとも一つの第1の支持面17が設けられている。たとえば少なくとも一つの第1の支持面17は、シリンダパイプ6の引き出し可能なピストンロッド7、7'とは逆の前端部に設けられている。その代わりに、あるいはそれと組み合わせて、少なくとも一つの支持面17はシリンダパイプ6のジャケット面に形成することができ、特にシリンダパイプ6のジャケット面に少なくとも一つの支持コンソール又はその他の突出部によって形成することができる。同様に、シリンダパイプ6の前端部及び/又はジャケット面の近傍に、階段状又は段付きの支持面17を設けることが、可能である。様々な対象表面に、たとえば車両表面又は車両ボディ表面に、救助器具をできるだけ滑らないように支持するために、少なくとも一つの第1の支持面17は滑りを阻止するプロフィール18及び/又はたとえばエラストマー又はその他のプラスチックからなる、摩擦を高める面を有することができる。著しく構造化されたプロフィール18の変わりに、少なくとも一つの第1の支持面17は、たとえば細かく構造化された刻印により、あるいは摩擦を高める粒子の成分のコーティングによって、増大された表面粗度又は増大された摩擦係数を有することができる。この種のプロフィール18又はその他の摩擦を高める措置は、それぞれの対象表面に対して救助器具1、特にシリンダパイプ6が望まれずに滑ることを阻止する。
【0034】
さらに、少なくとも一つのピストンロッド7、7’に、救助者2が自由に選択可能な第2の対象面に救助器具1を荷重伝達するように支持するための、少なくとも一つの第2の支持面19が形成されている。少なくとも一つの第2の支持面19は、好ましくは、少なくとも一つのピストンロッド7、7'の、シリンダパイプ6とは逆の、又は遠位の端部に形成されている。典型的に、一番外側のピストンロッド7の自由端部又は前へ張り出す前端部が、支持面19として形成されている。たとえば支持面19は、好ましくは回転運動可能に軸承された押圧片20に形成されている。
【0035】
第2の支持面19は、種々の使用条件によりよく適合することを可能にするために、多重に設けることもでき、特に段付き又は階段状に形成することができ、及び/又は対象面に対して少なくとも一つの第2の支持面19又は救助器具1全体の滑り保護を増大させるために、プロフィール21を有することができる。この種のプロフィール21の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、たとえばエラストマーの部分、増大された表面粗度を有する部分のような、第2の支持面19と組み合わせて摩擦を増大させる措置を設けることもできる。
【0036】
特に図3、4から明らかなように、第1の支持面17と第2の支持面19は、事故にあった車両、特に車両ボディの表面に対して支持し、又は力を導入するために設けることができる。これに関連して、別体の支持シューズ又は他の力導入部材又はカップリング補助手段を設けることもでき、それによって油圧救助器具1のさらに改良された、滑り保護された支持をもたらすことができ、かつ救助器具1の側でそれぞれの対象への、特にそれぞれの対象面又はボディ部分への確実かつ効率的な力導入をもたらし、又は得ることができる。
【0037】
図1、3及び4をまとめて見ると特に明らかなように、表面に、特に少なくとも一つのピストンロッド7、7’のジャケット面22、22’に、少なくとも一つのマーキング23、23’、好ましくは複数のマーキング23、23’が形成されており、その少なくとも一つのマーキング23、23’が、少なくともシリンダパイプ6に対して少なくとも一つのピストンロッド7、7’のまだ提供できる残りストローク24を示すために設けられていると、効果的である。その代わりに、あるいはそれと組み合わせて、少なくとも一つのマーキング23、23’は、シリンダパイプ6に対して、特にシリンダパイプ6の近づく前端部に対して、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の初期位置又は非作動位置8に対して、あるいはシリンダパイプ6の第1の支持面17に対して、第1のピストンロッド7、7’のそれぞれ移動した操作ストローク25を示すために、設けることができる。少なくとも一つのピストンロッド7、7'に設けられたマーキング23、23’は、救助者2によって、規定どおりの使用の間、又は油圧救助器具1の操作の途上において読取り可能であり、特に視覚的に検出可能であり、かつ少なくともまだ使用可能な油圧シリンダ5の残留ストローク24に関して救助者2によって解釈可能である。残留ストローク24とは、油圧シリンダ5又はその少なくとも一つのピストンロッド7、7’の、その現在の作業位置から最大可能、又はストッパ制限される終端位置又は最大位置10の方向にまだ提供されている、さらに提供可能な変位距離である。したがって残留ストローク24は、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の初期位置又は非作動位置8から最大の大きさで始まって、まだ提供可能な残留ストローク24は、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の引き出し運動が増大するにつれてだんだんと小さくなり、その残留ストローク24は少なくとも一つのピストンロッド7、7’の終端位置又は最大位置10を占めた場合に、最終的に値ゼロをとり、又は有する。
【0038】
したがって残留ストローク24は、それぞれの駆動状態又はそれぞれの使用状況又は少なくとも一つのピストンロッド7、7’の作業位置9に依存し、又はそれに応じて変化する、値「ゼロ」と、油圧シリンダ5又は、油圧パイプ6に対して変位可能な少なくとも一つのそのピストンロッド7、7’の、最大提供される変位距離又は操作ストローク11との間の、長さ寸法を有している。したがって少なくとも一つのピストンロッド7、7’に固定的に設けられたマーキング23、23’は、シリンダパイプ6に対する引き出し又は押し出し運動12の経過においてまだ提供可能な残留ストローク24を直接又は間接的に特徴づけ、又は示す。
【0039】
好ましくは、少なくとも一つのピストンロッド7、7’のジャケット面22、22’に設けられた多数のマーキング23、23’によって、油圧シリンダ5のまだ提供可能な残留ストローク24が操作者2に知らされ、又は明らかにされる。技術的に等価の実施形態に従って、又は残留ストローク24を表示するために組み合わせた実施形態に従って、シリンダパイプ6に対して少なくとも一つのピストンロッド7、7’がそれぞれ移動した操作ストローク25を示すために、少なくとも一つのピストンロッド7、7’のジャケット面22、22’にマーキング23、23’又は付加的な文字あるいはその他の標識を設けることもできる。マーキング23、23’は、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の長手方向に互いに離隔した個別マーキング又はマーキングのグループであって、それが少なくとも一つのピストンロッド7、7'の提供可能な残留ストローク24及び/又はすでに移動した操作ストローク25を表し、又は示す。
【0040】
マーキング23、23’は、伸縮油圧シリンダ5の場合においては、すべてのピストンロッド7、7’に設けることができ、あるいはピストンロッド7、7’の1つだけに、特に比較的大きい直径を有するピストンロッド7’に、形成することができる。図5に図式的に示すように、マーキング23はジャケット面22の周方向に関して分配して配置し、又は変位して形成することができる。
【0041】
たとえば図6に例示するような、好ましい実施形態に従って、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の表面又はジャケット面22、22’に設けられたしかるべき標識又はマーキング23は、種々の寸法26を有することができ、その寸法26は少なくとも一つのピストンロッド7、7’のまだ提供可能な残留ストローク24を値又は量的に示す。
【0042】
その代わりに、あるいはそれと組み合わせて、寸法26として形成されているこのマーキング23、23’又は寸法26を含む、使用されたたマーキング23、23’は、すでに移動した操作ストローク25も示すことができる。特にこの種の寸法26は救助者2に、少なくとも一つのピストンロッド7、7’がシリンダパイプ6に対してどの程度すでに引き出されているか、を示すことができる。これに関連して、救助器具1に、特にそのシリンダパイプ6に、及び/又は少なくとも一つのピストンロッド7、7’のジャケット面22、22’に、少なくとも一つの最大値27(図1及び2)が設けられており、それが少なくとも一つのピストンロッド7、7’の最大の操作ストローク11又は全体の変位距離を示し、又は救助器具1の最大得られる全長を定めると、特に効果的である。すでに移動した操作ストローク25についてのこの種の明示テキスト寸法26を用いて、救助者2は、どのくらいの残留ストローク24(図1)がまだ提供されるのかに関して想像することができる。そのために救助者2は、すでに移動した操作ストローク25についての寸法26を最大値27から差し引いて、それによって操作者2は同様にまだ提供可能な残留ストローク24について、又はまだ利用できるスライド又は押圧距離について認識する。
【0043】
しかし、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の表面又はジャケット面22、22’に設けられた寸法26が、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の引き出し運動12に関してそれぞれまだ提供可能な残留ストローク24を直接表示し、又は、たとえば標識及び/又は明示テキスト又は寸法26によって、直接示すと、より効果的であり、又はより目的に合致している。
【0044】
少なくとも一つのピストンロッド7、7’に好ましくは設けられている値又は寸法26は、図6に例示するように、数値と寸法単位を有することができる。少なくとも一つのピストンロッド7、7’に設けられているマーキング23、23’又は寸法26は、寸法表又はスケール31(図6と7)の形式で形成することもでき、それにおいて個々のマーキング23、23’は寸法なしで存在し、他のマーキング23、23’はしかるべき寸法26、特に少なくとも数値を有している。特に、寸法26が数値のみを有し、たとえばミリメートル、センチメートル、デシメートル、インチなどのような寸法単位を繰り返し記載することを省くことも、可能である。
【0045】
マーキング23、23’は、数値及び/又は寸法26の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、マークリング又はラインマーキング28を有することもでき、それらは、図5と6に例示されるように、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の横断面又はジャケットの外周にわたって部分的又は全周に延びている。特にこの種のラインマーキング28は、ジャケットの全外周にわたって延びることができ(図6)、したがって閉成して形成することができる。それによって少なくとも一つのピストンロッド7、7’に関してほぼすべての視線角度から読み取ることが可能になる。代替的に、図5に示すように、変位した、又は部分的に延びるラインマーキング28を形成することも可能である。それによって加工の手間又は印字の手間を比較的小さく抑えることができ、それにもかかわらず多くの視線角度又は使用角度から良好に読み取ること、又は把握することができる。
【0046】
まだ提供可能な残留ストローク24又はすでに移動した操作ストローク25についての良好な展望を得ることができるようにするために、図1、3、4、5及び6から読み取ることができるように、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の長手方向に関して、互いに対して規則的又は不規則的な間隔で離隔する複数のマーキング23、23’が形成されていると、効果的である。印字又は標識の手間をできる限り小さく抑えるために、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の横断面又はジャケットの外周に関して、少なくとも二つ、好ましくは少なくとも三つ又は四つの等しく形成された、同じ横断面又はジャケットの外周に関して均一に分配されたマーキング23、23’を設けることができる。それによって少なくとも一つのピストンロッド7、7’の全周面の印字又はマーキングが不要となり、それにもかかわらず、救助器具1に対する角度位置又は視線方向に関係なく、それぞれのマーキング23、23’の良好な把握可能性が得られる。
【0047】
したがって、マーキング23、23’が印又は標識によって、及び/又は値により、特に寸法26によって形成できることが、示されている。それぞれのマーキング23、23’は、色でコントラストをつけて、かつ少なくとも一つのピストンロッド7、7’の表面に対して面一で形成されている。しかしマーキング23、23’は、矢印形状、ビーム形状あるいはくさび形状の標識29を有することもでき、その標識29が少なくとも一つのピストンロッド7、7'のまだ提供可能な残留ストローク24を表し、又は示す。この標識29は、たとえば図8に明らかなように、強度又は音量調整つまみに関連する標識にならって形成することができる。同様に、図8に図式的に示すように、この種の標識29は、三角形状又はくさび形状を有することができる。その場合に、図8に示すように、ジャケット面22、22’の横断面の周囲にわたって分配された少なくとも三つ又は四つのくさび標識又は矢印標識が形成されていると、効果的である。同様に、横断面の周囲にわたって延びる四つの矢印標識又はくさび標識29を設けること、特にそれぞれ90°の角度領域内に標識29を形成することが、可能である。このくさび形状又は矢印形状の標識29の好ましくは互いに結合されたベースライン30が、少なくとも一つのピストンロッド7、7'の最大に引き出された状態、又は少なくとも一つのピストンロッド7、7’の終端位置又は最大位置10(図1)の到達あるいは存在を定める。
【0048】
同様に、図7に示すように、ある種の値領域又はスケール31を設けることができ、それが、まだ提供される残留ストローク24を複数の段階で示す。まだ提供可能な残留ストローク24内の個々の段階を、異なる長さのラインマーキング28によって、及び/又は関連する寸法26によって、特にミリメートル又はセンチメートルによって、定めることができる。それによれば、特に少なくとも一つのピストンロッド7、7’の全体として提供可能、又は最大提供可能な操作ストローク11の最後の部分内では(図1)、全体として提供できる操作ストローク11の最初の部分に比較して、まだ残っている残留ストローク24のためにより高精度の距離分析を行うことができる。特に、図7、8に例示されるように、最後の距離に関しては、全体として提供可能な操作ストローク11の最初の部分における距離よりも、最後の残留ストローク24に関してより高精度の分析を行うことができる。特に最後の操作ストローク又は最後の残留ストローク24は、センチメートル又はミリメートルの距離を有することができ(図7)又は少なくとも一つのピストンロッド7、7’のストッパ制限された、又は最大の引き出し位置までの最後の距離のしかるべきシンボリックな標識を設けることができる。
【0049】
実際的な油圧救助器具1の、特に1人の人のみによって操作可能な油圧救助器具1の、最大提供可能な操作ストローク11は、典型的に300mmと100mmの間である。その操作力又は押圧力は、300kNにまでなることができる。それによってこのような救助器具1は、多数の事故状況において、又は事故車両から多数の人を救助する場合に、使用することができる。少なくとも一つのピストンロッド7、7'の少なくとも一つのジャケット面22、22’に設けられたマーキング23、23’は、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の長手方向に関して、50mm又は100mmの間隔で配置することができ、又は25.4mm(1インチ)の間隔で設けることができる。マーキング23、23’又はスケール31の最大の距離は、好ましくは10mmである。それによって印字又はマーキングの手間をできるだけ小さく抑えることができ、それにもかかわらず救助者2にとって充分な情報内容を得ることができる。
【0050】
マーキング23、23’は、アニール色によって形成することができ、そのアニール色は少なくとも一つのピストンロッド7、7’の金属の表面部分への熱作用によって形成される。特にレーザービーム加工を設けることができ、それによって永続的又は摩耗に強いマーキング23又は印字を少なくとも一つのピストンロッド7、7’のジャケット部分22、22’へ形成することができる。少なくとも一つのピストンロッド7、7’の表面は、特に、油圧シリンダ5のピストン表面において典型的であるように、クロムメッキした、又は硬質クロムメッキした表面によって形成することができる。同様に、マーキング23、23’は、電気化学的、特にガルバニック加工方法によって、少なくとも一つのピストンロッド7、7’の金属の表面部分上に形成することが、可能である。この種のマーキング方法は、従来技術から知られており、たとえばタンポン式ガルバニック方法又はエッチング方法によって定めることができる。
【0051】
実施例は、可能な実施変形例を示しており、ここに記録しておくが、本発明は具体的に示されたその実施変形例に限定されるものではなく、むしろ個々の実施変形例を互いに様々に組み合わせることも可能であり、これらの変形可能性はこの発明による技術的に取り扱うための教示に基づいて、この技術分野で活動する当業者の裁量の範囲内にある。
【0052】
保護領域は、請求項によって定められる。しかし明細書と図面は、請求項を解釈するために利用されるべきである。図示され、かつ説明された様々な実施例からなる個別特徴及び特徴の組合せは、それ自体自立した進歩的解決を表すことができる。自立した進歩的解決に基礎となる課題は、明細書から読み取ることができる。
【0053】
具体的な説明内の値領域についてのすべての記載は、その任意の部分領域とすべての部分領域を共に含むものであって、たとえば1~10は、下限の1と上限の10から始まるすべての部分領域、すなわち下限の1またはそれ以上で始まり、上限の10またはそれ以下で終了する、たとえば1~1.7、または3.2~8.1、あるいは5.5~10のすべての部分領域、を一緒に含んでいるものとする。
【0054】
最後に形式的に指摘しておくが、構造をよりよく理解するために、部材は部分的に縮尺どおりではなく、及び/又は拡大及び/又は縮小して示されている。
【符号の説明】
【0055】
1 救助器具
2 救助者
3 カップリング要素
4 導管接続
5 油圧シリンダ
6 シリンダパイプ
7、7’ ピストンロッド
8 初期位置又は非作動位置
9 作業位置
10 終端位置又は最大位置
11 最大の操作ストローク
12 引き出し運動
13 引き込み運動
14 制御弁
15 操作部材
16 操作部材
17 第1の支持面
18 プロフィール
19 第2の支持面
20 押圧片
21 プロフィール
22、22’ ジャケット面
23、23’ マーキング
24 残留ストローク
25 移動した操作ストローク
26 寸法
27 最大値
28 ラインマーキング
29 標識
30 ベースライン
31 スケール
L 油圧導管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8