(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20220606BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20220606BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B7/025
(21)【出願番号】P 2020176728
(22)【出願日】2020-10-21
(62)【分割の表示】P 2017171417の分割
【原出願日】2017-09-06
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2016173793
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石岡 宗悟
(72)【発明者】
【氏名】柳 善治
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150473(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053274(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、シールド層とを備え、
前記絶縁層は、
ISO 25178-6:2010に準拠して測定した表面における最大山高さSpが8.0μm以上である、電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
絶縁層と、シールド層とを備え、
前記絶縁層は、
ISO 25178-6:2010に準拠して測定した表面における突出山部高さSpkが1.0μm以上である、電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
絶縁層と、シールド層とを備え、
前記絶縁層は、
ISO 25178-6:2010に準拠して測定した表面におけるコア部の空隙容積Vvcが1.1ml/m
2以上である、電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
絶縁層と、シールド層とを備え、
前記絶縁層は、
ISO 25178-6:2010に準拠して測定した表面における山部の実体体積Vmpが0.07ml/m
2以上である、電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン及びタブレット型情報端末等において、大容量のデータを高速に伝送する性能が求められている。大容量のデータを高速伝送するためには高周波信号を用いる必要がある。しかし、高周波信号を用いると、プリント配線板に設けられた信号回路から電磁波ノイズが発生し、周辺機器が誤動作しやすくなる。このような誤動作を防止するために、プリント配線板を電磁波からシールドすることが重要となる。
【0003】
プリント配線板をシールドするために、絶縁層と、シールド層とを有する電磁波シールドフィルムを、プリント配線板に加熱加圧して貼り付けてシールドプリント配線板を得る方法が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
電磁波シールドフィルムの絶縁層表面には、絶縁層を傷や異物から保護するために、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等で形成された保護フィルムが貼られている。保護フィルムは、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に貼り付けた後剥離される。保護フィルムを剥離するまでは、絶縁層の表面は保護されており、シールドプリント配線板を素手で取り扱うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保護フィルムを剥離した後のシールドプリント配線板を素手で取り扱うと、保護フィルムが除去された絶縁層に指紋が付着するおそれがある。指紋が付着した箇所は、変色して外観が損なわれるため、歩留まりが低下するという問題がある。
【0007】
絶縁層に指紋が付着しても、電磁波をシールドする特性にほとんど影響はない。このため、付着した指紋による絶縁層の変色を抑えることができれば、シールドプリント配線板の歩留まり低下を抑えることができる。付着した指紋による絶縁層の変色を抑える方法として、指紋を除去することが考えられる。指紋の除去には一般的に洗剤や溶剤が用いられる。しかし、電磁波シールドフィルムの絶縁層の場合、シールドプリント配線板の電気的特性に影響を与えるおそれがあり、洗剤や溶剤を用いることはできない。
【0008】
また、従来の電磁波シールドフィルムの場合、指紋を拭き取ろうとして不織布等で表面をこすると、表面の状態が局所的に変化し、かえって変色の度合いが大きくなってしまう。また、大きな力を加えて表面をこすると、絶縁層がシールド層から剥離して電磁波シールドフィルムが破損するおそれがある。
【0009】
本開示の課題は、指紋の拭き取りによる変色が生じにくい電磁波シールドフィルムを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の電磁波シールドフィルムの第1の態様は、絶縁層と、導電層とを備え、絶縁層は、表面における三次元算術平均表面粗さSaが0.8μm以上である。
【0011】
電磁波シールドフィルムの第1の態様において、絶縁層は、表面における85°光沢度が20以下とすることができる。
【0012】
本開示の電磁波シールドフィルムの第2の態様は、絶縁層と、導電層とを備え、絶縁層は、表面における二乗平均平方根傾斜Sdqが0.8以上で且つ85°光沢度が10以下である。
【0013】
本開示の電磁波シールドフィルムの第3の態様は、絶縁層と、導電層とを備え、絶縁層は、表面におけるスキューネスSskが0.1以上で且つ85°光沢度が10以下である。
【0014】
電磁波シールドフィルムの各態様において、絶縁層は、L*値が25以下とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の電磁波シールドフィルムによれば、指紋の拭き取りによる変色を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る電磁波シールドフィルムを示す断面図である。
【
図2】変形例に係る電磁波シールドフィルムを示す断面図である。
【
図3】絶縁層の二乗平均平方根傾斜と光沢度との関係を示すプロットである。
【
図4】絶縁層のスキューネスと光沢度との関係を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0018】
(電磁波シールドフィルム)
図1は、本実施形態の電磁波シールドフィルムを模式的に示す概略断面図である。
図1に示すように、電磁波シールドフィルムは、絶縁層110と、導電層であるシールド層120とを有する。シールド層120における絶縁層110と反対側の面には、必要に応じて接着剤層130を設けることができる。接着剤層130を設けることにより、電磁波シールドフィルムを容易にプリント配線板に貼り合わせることができる。
【0019】
-絶縁層-
絶縁層110は、シールド層を保護するために設けられる。本実施形態の電磁シールドフィルムにおいて絶縁層110は、表面性状を表すパラメータである三次元算術平均表面粗さSaが0.8μm以上、好ましくは1.0μm以上である。Saを0.8μm以上とすれば、指紋の拭き取りによる変色がほとんど生じない表面を有する絶縁層とすることができる。ここでいう、指紋の拭き取りによる変色がほとんど生じない表面とは、指紋が付着した部分をワイピングクロス等で拭くことにより、肉眼により指紋が付着していない部分との判別が困難な状態となる表面である。
【0020】
また、指紋の成分の実際の除去性という観点から、Saは10μm以下であることが好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下であることがより好ましい。また、Saをある程度小さくした方が、後述する剥離フィルムを絶縁層から剥離しやすくするという利点も得られる。
【0021】
指紋の拭き取りによる変色の度合いは、指紋を拭き取った後の絶縁層110の表面を肉眼で観察する官能評価により定性的に評価することができる。また、表面の光沢度の変化により定量的に評価することができる。定量的に評価する方法として、指紋を付着させて拭いた後の絶縁層110の表面における85°光沢度を測定する方法を用いることができる。この場合には、指紋を付着させて拭いた後の85°光沢度が好ましくは20以下、より好ましくは10以下であれば、指紋を拭いた跡を肉眼で識別することが困難となる。また、他の定量的な評価方法として、指紋を付着させて拭いた後の絶縁層110の表面における光沢度と、指紋を付着させる前の光沢度との差を測定する方法を用いることもできる。すなわち、指紋を付着させて拭いた後の絶縁層110の表面における光沢度と、指紋を付着させる前の光沢度との差が小さい方が、指紋の拭き取りによる変色の度合いが小さい。例えば、85°光沢度の場合、指紋を付着させて拭いた後の光沢度と、指紋を付着させる前の光沢度との光沢度差が好ましくは4以下、より好ましくは3以下であれば、指紋が付着していない部分と、指紋を拭いた部分との肉眼による識別が困難となる。
【0022】
本実施形態の電磁波シールドフィルムにおいて、絶縁層110の表面におけるSa以外の表面性状のパラメータは、指紋の拭き取りによる変色を生じにくくする観点から以下のようにすることができる。二乗平均平方根傾斜Sdqは、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは0.95以上である。指紋が付着した箇所は、付着していない箇所と比べて光を反射しやすくなり、指紋付着部分が大きく目立つことになる。そして、絶縁層110の表面の色調が黒色でL*値が小さいほど、指紋付着部分が大きく目立つ傾向にある。それに対して、Sdqがある程度大きいと、適度に光を散乱させ易い表面とすることができ、指紋の付着による反射の増大を抑えることができる。特に、L*値が25以下の場合に、Sdqを大きくすることが、指紋付着部分を目立たなくするために有効である。
【0023】
また、後述する剥離フィルムを絶縁層から剥離しやすくする観点から、Sdqは10以下であることが好ましく、7.0以下がより好ましく、3.0以下であることがより好ましい。
【0024】
スキューネスSskは、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上である。Sskは、凹凸面において平均面を基準とした凸部と凹部の対称性を示し、Sskが大きいほど平均面を基準とした凸部の成分が少なくなり、凸部以外の部分(谷部及び平坦部)が相対的に増加する。このため、Sskをある程度大きくすることにより指紋を拭き取りやすくすることができる。
【0025】
また、Sskがさらに大きくなると、絶縁層の表面における凸部分が増大し、剥離フィルムが当該凸部分に引っかかるおそれがある。このため、Sskは、剥離フィルムを絶縁層から剥離しやすくする観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
【0026】
また、最大山高さSpは、好ましくは8.0μm以上である。二乗平均平方根偏差Sqは、好ましくは1.0μm以上であり、より好ましくは1.2μm以上であり、さらに好ましくは1.3μm以上である。突出山部高さSpkは、好ましくは1.0μm以上であり、より好ましくは1.5μm以上であり、さらに好ましくは1.7μm以上である。コア部の空隙容積Vvcは、好ましくは1.1ml/m2以上であり、より好ましくは1.3ml/m2以上である。山部の実体体積Vmpは、好ましくは0.07ml/m2以上であり、より好ましくは0.08ml/m2以上であり、さらに好ましくは0.1ml/m2以上である。
【0027】
また、Spは20μm以下であることが好ましく、18μm以下がより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。Sqは、10μm以下であることが好ましく、5.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下であることがさらに好ましい。Spkは、10μm以下であることが好ましく、5.0μm以下がより好ましく、3.0μm以下であることがさらに好ましい。Vvcは、10ml/m2以下であることが好ましく、5.0ml/m2以下がより好ましく、3.0ml/m2以下であることがさらに好ましい。Vmpは、1.0ml/m2以下であることが好ましく、0.5ml/m2以下がより好ましく、0.3ml/m2以下であることがさらに好ましい。Sp、Spk、Vvc、Vmpがそれぞれ上記数値範囲であると、後述する剥離フィルムを絶縁層から剥離しやすくする効果が期待できる。
【0028】
また、Saにより規定するのではなく、他のパラメータにより、指紋の拭き取りによる変色を生じにくい表面を規定することもできる。例えば、指紋の拭き取りによる変色を生じにくい表面とするためには、平均面を基準とした凸部が占める割合が小さく、かつ凸部の高さが高い表面が好ましいと考えられる。従って、Spが7.0μm以上、好ましくは8.0μm以上で且つSskが0以上、好ましくは0.1以上とすることができる。また、Spが7.0μm以上、好ましくは8.0μm以上で且つSdqが0.8以上、好ましくは0.9以上とすることができる。また、Sqが1.0μm以上で且つSskが0以上、好ましくは0.1以上とすることができる。また、Sqが1.0μm以上、好ましくは1.2μm以上で且つSdqが0.8以上、好ましくは0.9以上とすることができる。また、Spkが1.0μm以上 で且つSskが0以上、好ましくは0.1以上とすることができる。また、Spkが1.0μm以上、好ましくは1.5μm以上で且つSdqが0.8以上、好ましくは0.9以上とすることができる。
【0029】
また、Spが20μm、好ましくは18μm以下で且つSskが10以下、好ましくは5以下とすることができる。また、Spが20μm以下、好ましくは18μm以下で且つSdqが10以下、好ましくは3.0以下とすることができる。また、Sqが10μm以下、好ましくは5μm以下で且つSskが10以下、好ましくは5.0以下とすることができる。また、Sqが10μm以下、好ましくは5.0μm以下で且つSdqが10以下、好ましくは3.0以下とすることができる。また、Spkが10μm以下、好ましくは5.0μm以下で且つSskが10以下、好ましくは5.0以下とすることができる。また、Spkが10μm以下、好ましくは5.0μm以下で且つSdqが10以下、好ましくは3.0以下とすることができる。このような範囲とすることにより、剥離フィルムを絶縁層から剥離しやすくなるという効果も期待できる。
【0030】
なお、本開示における表面性状は、ISO 25178-6:2010に基づいて測定される値であり、具体的な測定方法は実施例にて説明する。
【0031】
絶縁層110は、指紋が付着する前の60°光沢度が好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1以下である。また、85°光沢度が、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下であり、さらにより好ましくは5以下であり、さらにより好ましくは3以下である。
【0032】
指紋が付着する前の光沢度をこのような値とすることにより、絶縁層110の表面において適度の光の散乱が生じ、光沢感が適度に抑制される。これにより、指紋の拭き取りによる変色をより生じにくくできる。
【0033】
特に、絶縁層110の指紋が付着する前の60°光沢度が好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下であり、且つ85°光沢度が好ましくは20以下、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下であり、さらにより好ましくは5以下であり、さらにより好ましくは3以下とすることにより、指紋の拭き取りによる変色が非常に生じにくい表面とすることができる。
【0034】
なお、本開示における60°光沢度及び85°光沢度は、実施例において示す方法により測定することができる。
【0035】
特に、Sdqが0.8以上、好ましくは0.9以上で且つ85°光沢度が10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下とすることにより、指紋の拭き取りによる変色を生じにくくすることができる。
【0036】
また、Sskが0より大きく、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上で且つ85°光沢度が10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下とすることにより、指紋の拭き取りによる変色を生じにくくすることができる。
【0037】
本開示において、絶縁層110を得る方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、エンボス加工によって凹凸形状を付与した剥離フィルムの表面に絶縁層110を形成する樹脂組成物を塗布、乾燥させることで、剥離フィルムの凹凸形状を絶縁層110に転写する方法を用いることができる。シールド層120の表面に凹凸形成用粒子を含む樹脂組成物を塗布、乾燥して凹凸形状を有する絶縁層110を形成する方法を用いることができる。絶縁層110の表面にドライアイス等を吹き付ける方法を用いることができる。シールド層120の表面に活性エネルギー線硬化性組成物を塗付した後に凹凸形状を有する鋳型を押し付けて該硬化性組成物層を硬化させ、鋳型を剥離する方法を用いることができる。この他の公知の方法を用いることもできる。
【0038】
これらの中でも、生産性の観点から、凹凸形成用粒子を含む樹脂組成物を塗布、乾燥して凹凸形状を有する絶縁層110を得る方法が好ましい。この場合、凹凸形成用粒子は特に限定されないが、例えば、樹脂微粒子又は無機微粒子を使用することができる。樹脂微粒子は、アクリル樹脂微粒子、ポリアクリロニトリル微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリアミド微粒子、及びポリイミド微粒子等とすることができる。また、無機微粒子は、炭酸カルシウム微粒子、珪酸カルシウム微粒子、クレー、カオリン、タルク、シリカ微粒子、ガラス微粒子、珪藻土、雲母粉、アルミナ微粒子、酸化マグネシウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、硫酸バリウム微粒子、硫酸アルミニウム微粒子、硫酸カルシウム微粒子、及び炭酸マグネシウム微粒子等とすることができる。これらの、樹脂微粒子及び無機微粒子は単独で使用することも、複数を組み合わせて使用することもできる。絶縁層の耐擦傷性を高める観点からは、無機微粒子が好ましい。
【0039】
凹凸形成用粒子は、絶縁層110の表面に適度な凹凸を生じさせ、所定の表面性状を得る観点から、50%平均粒子径が2μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、絶縁層の白色化を抑えるために、50%平均粒子径が30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0040】
絶縁層110への凹凸形成用粒子の添加量は、所定の表面性状を得る観点から3質量%以上とすることが好ましく、5質量%以上とすることがより好ましい。また、絶縁層の白色化を抑える観点から30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、17質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
絶縁層110には、黒色系着色剤を添加することができる。黒色系着色剤を添加することにより、絶縁層110のL*値を小さくし、絶縁層の表面に印字されるマーキング(文字、図形等)の視認性を向上させることができる。絶縁層110に印字するマーキングが白色の場合には、L*値を25以下とすることが好ましく、20以下とすることがより好ましく、18以下とすることがより好ましい。なお、本開示におけるL*値はJIS Z 8781-4(2013)に準拠して測定することができる。
【0042】
黒色系着色剤は、黒色顔料又は、複数の顔料を減色混合して黒色化した混合顔料等とすることができる。黒色顔料は、例えばカーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、ペリレンブラック、チタンブラック、鉄黒、及びアニリンブラック等のいずれか又はこれらの組み合わせとすることができる。混合顔料は、例えば赤色、緑色、青色、黄色、紫色、シアン及びマゼンタ等の顔料を混合して用いることができる。
【0043】
黒色系着色剤の粒径は、必要とするL*値を実現できればよいが、分散性及びL*値の低減等の観点から平均一次粒子径が20nm以上であることが好ましく、100nm以下であることが好ましい。黒色系着色剤の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により5万倍~100万倍程度に拡大した画像から観察できる20個程度の一次粒子の平均値から求めることができる。
【0044】
L*値を小さくする観点から、絶縁層110への黒色系着色剤の添加量は、0.5質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上とすることがより好ましい。但し、黒色系着色剤は必要に応じて添加すればよく、添加しなくてもよい。
【0045】
なお、印字の視認性には、光沢度も影響を与える。印字の視認性の観点からも、絶縁層110の60°光沢度は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下である。また、85°光沢度は、好ましくは20以下、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下であり、さらにより好ましくは5以下であり、さらにより好ましくは3以下である。
【0046】
絶縁層110は、必要とされる絶縁性を有していると共に、所定の機械的強度、耐薬品性及び耐熱性を満たすことが好ましい。
【0047】
絶縁層を構成する樹脂材料は、十分な絶縁性を有していれば特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、及び活性エネルギー線硬化性組成物等を用いることができる。
【0048】
熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、及びアクリル系樹脂組成物等を用いることができる。熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、及びアルキッド系樹脂組成物等を用いることができる。活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等を用いることができる。これらの組成物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
また、絶縁層110には、上記の微粒子及び着色剤の他に、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、及びブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0050】
絶縁層110の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、シールド層を十分に保護する観点から、1μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましい。また、電磁波シールドフィルムの屈曲性を確保する観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0051】
-シールド層-
本実施形態のシールド層120は、金属層とすることができる。シールド層120は、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び亜鉛のいずれか、又はこれらを2つ以上含む合金等からなる金属層を用いることができる。また、金属層の材質及び厚さは、必要とする電磁波シールド効果及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよい。十分な電磁波シールド効果を得る観点から、金属層の厚さは0.1μm以上とすることが好ましい。また、生産性及び屈曲性等の観点から8μm以下とすることが好ましい。なお、金属層は、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、CVD法、及びメタルオーガニック等により形成することができる。また、金属層は、金属箔、金属ナノ粒子、及び鱗片状金属粒子等により形成することもできる。
【0052】
-接着剤層-
本実施形態の電磁波シールドフィルムは、シールド層120の絶縁層110と反対側に接着剤層130を備えていてもよい。接着剤層130は、接着性の樹脂組成物により形成することができる。接着性樹脂組成物は特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、及びアクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物、並びにフェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
接着剤層130は、必要に応じて等方導電性又は異方導電性を有する層とすることができる。接着剤層130を、等方又は異方導電性を有する層とする場合には、接着性の樹脂組成物に導電性の微粒子を添加すればよい。
【0054】
導電性の微粒子は、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等を使用することができる。例えば、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、及びアルミニウム粉等の金属微粒子を用いることができる。また、銅粉に銀メッキを施した銀コート銅粉、及び高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した金属被覆微粒子等を用いることもできる。中でも、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉が好ましい。
【0055】
導電性粒子の50%平均粒子径は、特に限定されないが、良好な導電性を得る観点から0.5μm以上が好ましい。また、導電性接着剤層を薄くする観点から15μm以下とすることが好ましい。
【0056】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、及びデンドライト状等から適宜選択することができる。
【0057】
接着剤層130の厚さは、必要に応じて調整することができるが、良好な接着性を得る観点から0.5μm以上とすることが好ましい。また、電磁波シールドフィルムを薄くする観点から20μm以下とすることが好ましい。
【0058】
電磁波シールドフィルムが、絶縁層110と、シールド層120と接着剤層130と有している構成について説明したが、
図2に示すように、絶縁層110と等方導電性接着剤層140とを有する構成とすることもできる。
【0059】
絶縁層110は、
図1に示す電磁波シールドフィルムと同様の構成とすることができる。等方導電性接着剤層140は、接着剤層130と同様の接着性の樹脂組成物及び導電性微粒子により形成することができる。等方導電性接着剤層140はシールド層として機能する。
【0060】
-シールドフィルムの製造方法-
本実施形態の電磁波シールドフィルムは、公知の製造方法により製造することができる。以下にその一例を示す。
【0061】
先ず、表面を離型処理した支持体フィルム(剥離フィルム)の上に、導電性を有する接着剤層130を形成する。具体的には、接着剤層130を構成する材料を含む接着剤層組成物の溶液を支持体フィルムの表面に塗布乾燥して接着剤層130を形成する。
【0062】
次に、接着剤層130の表面にシールド層120を形成する。具体的には、予め所定の厚さに形成した金属箔を接着剤層130に貼り合わせる方法や、接着剤層130の表面に蒸着又はめっき等により金属層を形成する方法を用いることができる。
【0063】
次に、シールド層120の表面に絶縁層110を形成する。具体的には、絶縁層110を構成する材料を含む絶縁層組成物の溶液をシールド層120の表面に塗布乾燥する方法を用いることができる。
【0064】
この後、支持体フィルムを剥離することにより、電磁波シールドフィルムを得ることができる。
【0065】
なお、接着剤層130を等方導電性接着剤層140とし、等方導電性接着剤層140の表面に絶縁層110を形成することもできる。
【0066】
絶縁層110の表面における表面性状を所定の状態とするために、絶縁層110の表面にサンドブラスト等の処理を行うこともできる。
【0067】
接着剤層130側から形成する例を示したが、絶縁層110側から順次形成することもできる。この場合、微細パターンを有する支持体フィルムを用い、絶縁層110の表面に微細パターンを転写することにより、絶縁層110の表面性状を所定の状態とすることもできる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例は例示であり、本発明を何ら限定しない。
【0069】
<電磁波シールドフィルムの作製>
-接着剤層の作製-
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(三菱化学製、jER1256)を100質量部、硬化剤(三菱化学製、ST14)を0.1質量部、デンドライト状の銀コート銅粉(平均粒子径13μm)25質量部を添加し、撹拌混合して導電性の接着剤層組成物を調製した。得られた接着剤層組成物を、表面を離型処理したPETフィルムに塗布し、加熱乾燥することで、支持フィルム表面に接着剤層を形成した。
【0070】
-シールド層の作製-
得られた接着剤層の表面に、厚さ2μmの圧延銅箔を貼り合わせた。
【0071】
-絶縁層の作製-
固形分量が20質量%となるように、トルエンにビスフェノールA型エポキシ系樹脂(三菱化学製、jER1256)を100質量部、硬化剤として(三菱化学製、ST14)を0.1質量部、黒色系着色剤としてカーボン粒子(東海カーボン製、トーカブラック#8300/F)を15質量部、及び所定の凹凸形成用粒子を所定量配合し、絶縁層組成物を調製した。この組成物を、得られたシールド層に塗布し、加熱乾燥して電磁波シールドフィルムを得た。
【0072】
<特性評価方法>
[絶縁層の表面性状の測定]
コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID、対物レンズ20倍)を用いて、電磁波シールドフィルムの絶縁層の表面の任意の5か所を測定した後、データ解析ソフト(LMeye7)を用いて表面の傾き補正を行い、ISO 25178-6:2010に準拠して表面性状を測定し、その算術平均を得た。なお、Sフィルタのカットオフ波長は0.0025mm、Lフィルタのカットオフ波長は0.8mmとした。
【0073】
[L*値の測定]
積分球分光測色計(X-Rite社製、Ci64、タングステン光源)を用いてL*値を測定した。なお、a*値及びb*値についても測定した。
【0074】
[指紋による変色の評価]
直径2.5cmのゴム栓の表面を、#240の研磨紙で荒らした。次いで、PETフィルムの表面に、人工垢液(JIS C9606:伊勢久製)を5μL滴下し、上記ゴム栓の荒らした面を人工垢液に押し付けた(500g荷重、10秒間)。次いで、人工垢液が付着したゴム栓を、絶縁層の表面に押し付け(500g荷重、10秒間)、人工垢液を付着させた。次いで、不織布(日本製紙クレシア製、ワイプオールX70)を約3cm角のサイズに切り出して人工垢液の上に載せ、500g荷重で20往復させ(片道距離=10cm)、拭き取りを行った。拭き取り後の85°光沢度の値から人工垢液を付着させる前の85°光沢度の値を引いた値を85°光沢度差とした。60°光沢度及び85°光沢度は、BYKガードナー・マイクロ-グロス(携帯型光沢計)を用いて測定した。
【0075】
(実施例1)
絶縁層に加える凹凸形成用粒子として、平均粒子径7μmのシリカ粒子を用い、配合量は40質量部とした。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは1.02μm、Sdqは1.26、Sskは2.22であった。人工垢液付着前の60°光沢度は1.1、指紋拭き取り後の60°光沢度は5.2であった。人工垢液付着前の85°光沢度は1.5、指紋拭き取り後の85°光沢度は1.9であり、85°光沢度差は0.4であった。L*値は、21.3であった。
【0076】
(実施例2)
凹凸形成用粒子の配合量を、50質量部とした以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは1.18μm、Sdqは1.26、Sskは2.21であった。人工垢液付着前の60°光沢度は0.5、指紋拭き取り後の60°光沢度は6.7であった。人工垢液付着前の85°光沢度は1.8、指紋拭き取り後の85°光沢度は2.4であり、85°光沢度差は0.6であった。L*値は、20.1であった。
【0077】
(実施例3)
凹凸形成用粒子の配合量を、35質量部とした以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは1.31μm、Sdqは0.95、Sskは1.47であった。人工垢液付着前の60°光沢度は0.5、指紋拭き取り後の60°光沢度は1.8であった。人工垢液付着前の85°光沢度は1.7、指紋拭き取り後の85°光沢度は2.5であり、85°光沢度差は0.8であった。L*値は、20.1であった。
【0078】
(実施例4)
凹凸形成用粒子として、平均粒子径9μmのシリカ粒子を用い、配合量を40質量部とした以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.92μm、Sdqは1.38、Sskは3.10であった。人工垢液付着前の60°光沢度は2.1、指紋拭き取り後の60°光沢度は6.1であった。人工垢液付着前の85°光沢度は2.1、指紋拭き取り後の85°光沢度は2.6であり、85°光沢度差は0.5であった。L*値は、23.5であった。
【0079】
(実施例5)
凹凸形成用粒子の配合量を、50質量部とした以外は、実施例4と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.92μm、Sdqは1.02、Sskは2.53であった。人工垢液付着前の60°光沢度は1.5、指紋拭き取り後の60°光沢度は4.9であった。人工垢液付着前の85°光沢度は1.7、指紋拭き取り後の85°光沢度は3.2であり、85°光沢度差は1.5であった。L*値は、24.3であった。
【0080】
(実施例6)
凹凸形成用粒子として、平均粒子径5μmのシリカ粒子を用い、配合量を70質量部とした以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは1.05μm、Sdqは0.92、Sskは0.80であった。人工垢液付着前の60°光沢度は0.5、指紋拭き取り後の60°光沢度は2.4であった。人工垢液付着前の85°光沢度は4.6、指紋拭き取り後の85°光沢度は6.3であり、85°光沢度差は1.7であった。L*値は、23.6であった。
【0081】
(実施例7)
凹凸形成用粒子として、平均粒子径7μmのシリカ粒子を用い、配合量を60質量部とした以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは1.11μm、Sdqは1.12、Sskは1.46であった。人工垢液付着前の60°光沢度は0.4、指紋拭き取り後の60°光沢度は1.9であった。人工垢液付着前の85°光沢度は3.8、指紋拭き取り後の85°光沢度は6.5であり、85°光沢度差は2.7であった。L*値は、21.9であった。
【0082】
(比較例1)
凹凸形成用粒子として、平均粒子径2μmのシリカ粒子を用い、配合量を60質量部とした以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.57μm、Sdqは0.80、Sskは0.07であった。人工垢液付着前の60°光沢度は0.8、指紋拭き取り後の60°光沢度は2.2であった。人工垢液付着前の85°光沢度は16.8、指紋拭き取り後の85°光沢度は26.7であり、85°光沢度差は9.9であった。L*値は、24.4であった。
【0083】
(比較例2)
凹凸形成用粒子の配合量を65質量部とした以外は、比較例1と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.66μm、Sdqは0.90、Sskは-0.22であった。人工垢液付着前の60°光沢度は0.5、指紋拭き取り後の60°光沢度は3.9であった。人工垢液付着前の85°光沢度は15.9、指紋拭き取り後の85°光沢度は30.4であり、85°光沢度差は14.5であった。L*値は、21.9であった。
【0084】
(比較例3)
凹凸形成用粒子を含まない絶縁層組成物を調製した。これを、支持体フィルムの表面に塗布し、乾燥硬化させ、絶縁層を得た。支持体フィルムは、エンボス加工によって表面に凹凸形状(Sa=0.60、Sdq=0.61)を付与した、厚さ20μmの離型処理したPETフィルムとした。次に、絶縁層を実施例1と同様にして作製したシールド層に貼り合わせた後、支持体フィルムを剥離して電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.58μm、Sdqは0.65、Sskは-0.78であった。人工垢液付着前の60°光沢度は4.2、指紋拭き取り後の60°光沢度は9.1であった。人工垢液付着前の85°光沢度は34.0、指紋拭き取り後の85°光沢度は42.8であり、85°光沢度差は8.8であった。L*値は、25.3であった。
【0085】
(比較例4)
支持体フィルムとして、シリカ微粒子を配合して表面に凹凸形状(Sa=0.6μm、Sdq=0.47)を付与したものを用いた以外は比較例3と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.59μm、Sdqは0.49、Sskは-0.85であった。人工垢液付着前の60°光沢度は7.6、指紋拭き取り後の60°光沢度は13.3であった。人工垢液付着前の85°光沢度は38.7、指紋拭き取り後の85°光沢度は48.0であり、85°光沢度差は9.3であった。L*値は、28.2であった。
【0086】
(比較例5)
支持体フィルムとして、サンドマット加工によって表面に凹凸形状(Sa=0.47μm、Sdq=0.59)を付与したものを用いた以外は比較例3と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.45μm、Sdqは0.58、Sskは-0.25であった。人工垢液付着前の60°光沢度は5.4、指紋拭き取り後の60°光沢度は11.9であった。人工垢液付着前の85°光沢度は26.1、指紋拭き取り後の85°光沢度は51.0であり、85°光沢度差は24.9であった。L*値は、27.2であった。
【0087】
(比較例6)
支持体フィルムとして、サンドマット加工によって表面に凹凸形状(Sa=0.45μm、Sdq=0.56)を付与したものを用いた以外は比較例3と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.45μm、Sdqは0.54、Sskは-0.60であった。人工垢液付着前の60°光沢度は9.2、指紋拭き取り後の60°光沢度は16.6であった。人工垢液付着前の85°光沢度は30.4、指紋拭き取り後の85°光沢度は54.7であり、85°光沢度差は24.3であった。L*値は、27.2であった。
【0088】
(比較例7)
支持体フィルムとして、サンドマット加工によって表面に凹凸形状(Sa=0.51μm、Sdq=0.55)を付与したものを用いた以外は比較例3と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.49μm、Sdqは0.55、Sskは-0.37であった。人工垢液付着前の60°光沢度は8.6、指紋拭き取り後の60°光沢度は16.7であった。人工垢液付着前の85°光沢度は21.6、指紋拭き取り後の85°光沢度は56.7であり、85°光沢度差は35.1であった。L*値は、27.2であった。
【0089】
(比較例8)
支持体フィルムとして、シリカ微粒子を配合して表面に凹凸形状(Sa=0.43μm、Sdq=0.40)を付与したものを用いた以外は比較例3と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.42μm、Sdqは0.38、Sskは-1.19であった。人工垢液付着前の60°光沢度は11.7、指紋拭き取り後の60°光沢度は17.9であった。人工垢液付着前の85°光沢度は52.4、指紋拭き取り後の85°光沢度は58.9であり、85°光沢度差は6.5であった。L*値は、27.9であった。
【0090】
(比較例9)
絶縁層に加える粒子として、平均粒子径5μmのシリカ粒子を用い、配合量を40質量部とした以外は実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.49μm、Sdqは0.74、Sskは-0.77であった。人工垢液付着前の60°光沢度は1.0、指紋拭き取り後の60°光沢度は19.8であった。人工垢液付着前の85°光沢度は33.2、指紋拭き取り後の85°光沢度は61.0であり、85°光沢度差は27.8であった。L*値は、22.0であった。
【0091】
(比較例10)
支持体フィルムとして、シリカ微粒子を配合して表面に凹凸形状(Sa=0.36μm、Sdq=0.36)を付与したものを用いた以外は比較例3と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.35μm、Sdqは0.36、Sskは-0.31であった。人工垢液付着前の60°光沢度は6.9、指紋拭き取り後の60°光沢度は12.1であった。人工垢液付着前の85°光沢度は58.6、指紋拭き取り後の85°光沢度は63.0であり、85°光沢度差は4.4であった。L*値は、26.3であった。
【0092】
(比較例11)
支持体フィルムとして、シリカ微粒子を配合して表面に凹凸形状(Sa=0.46μm、Sdq=0.65)を付与したものを用いた以外は比較例3と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.43μm、Sdqは0.62、Sskは-0.40であった。人工垢液付着前の60°光沢度は2.4、指紋拭き取り後の60°光沢度は16.6であった。人工垢液付着前の85°光沢度は42.6、指紋拭き取り後の85°光沢度は71.8であり、85°光沢度差は29.2であった。L*値は、28.2であった。
【0093】
(比較例12)
支持体フィルムとして、シリカ微粒子を配合して表面に凹凸形状(Sa=0.31μm、Sdq=0.58)を付与したものを用いた以外は比較例3と同様にして電磁波シールドフィルムを得た。得られた電磁波シールドフィルムの絶縁層表面のSaは0.34μm、Sdqは0.55、Sskは-0.48であった。人工垢液付着前の60°光沢度は4.3、指紋拭き取り後の60°光沢度は30.2であった。人工垢液付着前の85°光沢度は64.2、指紋拭き取り後の85°光沢度は80.6であり、85°光沢度差は16.4であった。L*値は、24.4であった。
(比較例13)
支持体フィルムとして、エンボス加工によって表面に凹凸形状(Sa=1.5μm、Sdq=4.89)を付与したPETフィルムを用いた以外は比較例3と同様にして、支持体フィルムの表面に絶縁層を塗布し乾燥硬化した。次に、絶縁層を実施例1と同様にして作製したシールド層に貼り合わせた。次いで、支持体フィルムを剥離しようとしたところ、支持体フィルムと絶縁層とが強固に貼りつき、一部において絶縁層/シールド層の界面破壊が生じた。界面破壊が見られなかった絶縁層表面のSaは1.32μm、Sdqは3.63、Sskは-1.60であった。
【0094】
各実施例及び比較例の電磁波シールドフィルムの表面性状及び変色の評価を表1に示す。表1には、Sp、Sq、Spk、Vvc、Vmp、a*及びb*の値も示す。
【0095】
【0096】
図3にはSdqと85°光沢度との関係を示す。少なくともSdqが0.8以上で且つ85°光沢度が10以下の場合には、光沢度差が4以下となり、指紋の拭き取りによる変色が生じにくい。
【0097】
図4には、Sskと85°光沢度との関係を示す。少なくともSskが0.1以上で且つ85°光沢度が10以下の場合には、光沢度差が4以下となり、指紋の拭き取りによる変色が生じにくい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示の電磁波シールドフィルムは、指紋の拭き取りによる変色を生じにくくすることができ、プリント配線板等に用いる電磁波シールドフィルムとして有用である。
【符号の説明】
【0099】
110 絶縁層
120 シールド層
130 接着剤層
140 等方導電性接着剤層