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  • 特許-表面保護フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220606BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220606BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220606BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20220606BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
C09J201/00
C09J153/02
C09J11/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020186147
(22)【出願日】2020-11-06
(62)【分割の表示】P 2017018987の分割
【原出願日】2017-02-03
(65)【公開番号】P2021014593
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴士
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-111793(JP,A)
【文献】特開2011-102400(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113153(WO,A1)
【文献】特開平06-172726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
B32B 27/00
C09J 201/00
C09J 153/02
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層を構成する粘着剤が、エラストマー成分を主成分として含み、更に粘着付与剤および軟化剤を含んでなり、
前記エラストマー成分と前記粘着付与剤と前記軟化剤の合計量を100質量部とした場合に、前記粘着付与剤を7.5~30質量部の割合で含み、
前記エラストマー成分100質量部に対して、前記軟化剤を5~25質量部の割合で含み、
前記粘着付与剤は、テルペン樹脂、脂肪族製油系樹脂、脂環族石油系樹脂、およびそれらの水素物から選択される少なくとも1種を含み、
前記軟化剤は、流動パラフィンを含み、
前記粘着剤層は、JIS K 7161に準拠して測定した23℃での引張弾性率が1.0~3.5MPaの範囲内にあり、かつ80℃での引張弾性率が0.6~2.0MPaの範囲内にある、ことを特徴とする、表面保護フィルム。
【請求項2】
前記エラストマー成分が、スチレン系ブロック共重合体またはその水添物である、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記基材層の、粘着剤層が設けられた面とは反対側の面に、離型層を備える、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を備えた表面保護フィルムに関し、より詳細には、塗装鋼板等の塗膜表面を保護するために一時的に貼着される表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属板や塗装鋼板、合成樹脂板などを加工したり運搬したりする際に、その表面を傷や汚れ等の損傷から保護するため、表面保護フィルムを貼着することが行われている。一般に、表面保護フィルムは、被着体に対して一定の期間一時的に貼着され、表面保護の役目を終えた後、被着体から剥離除去される。そのため、表面保護フィルムには、良好な粘着性(仮着性)を有すると共に、使用後に被着体の表面に糊残りがないことが要求される。このような要求を満足する表面保護シートが提案されている(例えば、特許文献1および2等)。
【0003】
ところで、被着体に表面保護フィルムを貼着する際に表面保護フィルムにしわが生じると、空気を巻き込んだ状態で表面保護シートが被着体に貼着されてしまう場合がある。また、用途によっては手作業で表面保護フィルムを被着体に貼着することが行われており、空気を巻き込まないようにして表面保護フィルムを貼着することが困難である場合が多い。特に、塗装鋼板に表面保護フィルムを貼着した場合において、空気を巻き込んだ部分(即ち、塗装面に表面保護シートが密着していない部分)があると、長期間保管した際に、保管環境によっては表面保護フィルムが収縮し、空気を巻き込んだ部分と空気を巻き込んでいない部分(即ち、塗装面に表面保護フィルムが密着している部分)との境界部で、塗膜表面に段差が生じてしまうことがあった。このような塗膜表面の段差は、表面保護フィルムを剥離した後に跡付きとして残ってしまうため、改善が求められていた。
【0004】
上記のような問題に対して、特許文献3には、粘着剤の10Hzにおける剪断貯蔵弾性率を所定の範囲とすることで、塗膜に跡付きを生じさせない表面保護フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-336577号公報
【文献】特開平8-245938号公報
【文献】特開2001-234149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは今般、上記課題に対して鋭意検討した結果、表面保護フィルムの粘着剤層として、23℃における引張弾性率が1.0~3.5MPaの範囲内にあり、かつ80℃における引張弾性率が0.6~2.0MPaの範囲内にあるような粘着剤を使用することにより、仮に空気を巻き込んだ状態で表面保護フィルムを貼着した場合であっても、剥離除去した後に塗膜表面の段差を抑制できるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、空気を巻き込んだ状態で表面保護フィルムを貼着した場合であっても、剥離除去した後に塗膜表面の段差を抑制できる表面保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による表面保護フィルムは、基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、前記粘着剤層は、JIS K 7161に準拠して測定した23℃での引張弾性率が1.0~3.5MPaの範囲内にあり、かつ80℃での引張弾性率が0.6~2.0MPaの範囲内にある、ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の態様によれば、前記粘着剤層を構成する粘着剤が、エラストマー成分を主成分として含み、更に粘着付与剤および軟化剤を含んでいてもよい。
【0010】
本発明の態様によれば、前記粘着付与剤を、前記エラストマー成分100質量部に対して1~50質量部の割合で含んでいてもよい。
【0011】
本発明の態様によれば、前記軟化剤を、前記エラストマー成分100質量部に対して1~25質量部の割合で含んでいてもよい。
【0012】
本発明の態様によれば、前記エラストマー成分が、スチレン系ブロック共重合体またはその水添物であってもよい。
【0013】
本発明の態様によれば、表面保護フィルムは、前記基材層の粘着剤層が設けられた面とは反対側の面に、離型層を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定温度で特定範囲の引張弾性率を有する粘着剤層とすることにより、空気を巻き込んだ状態で表面保護フィルムを貼着した場合であっても、剥離除去した後に塗膜表面の段差を抑制できる表面保護フィルムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による表面保護フィルムの一実施形態を示した断面模式図。
図2】本発明による表面保護フィルムの別の一実施形態を示した断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による表面保護フィルムを図面を参照しながら説明する。図1は、本発明による表面保護フィルムの一実施形態を示した断面模式図である。表面保護フィルム10は、基材層1と、基材層1の一方の面に設けられた粘着剤層2とを備えている。塗装鋼板等の被着体(図示せず)の表面を保護するために表面保護フィルム10を適用する際は、塗装表面に粘着剤層2が密着するようにして表面保護フィルム10が貼着される。以下、本発明による表面保護フィルムを構成する各層について説明する。
【0017】
[基材層]
基材層は、被着体を傷や汚れ等の損傷から保護する役割を担うものであり、この目的が達成できるものであれば特に制限なく種々の材料を基材層として使用することができるが、好ましくは熱可塑性樹脂からなるフィルムないしシートを好適に使用することができる。基材層として好適に使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられるが、使用後に焼却しても有毒ガスを発生せず、後処理面でも問題が少ないことから、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-nブチルアクリレート共重合体、ポリプロピレンなどが挙げられる。基材層を形成するための熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
基材層には、必要に応じて、上記したような熱可塑性樹脂をマトリックスとして、種々の添加剤を含有させてもよい。例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤などを添加することができる。これら添加剤は、熱可塑性樹脂をフィルムないしシート状に製膜する際に、熱可塑性樹脂と混合して押出成形するか、あるいは予め添加剤を熱可塑性樹脂に練り込んだマスターバッチを、押出成形の際に熱可塑性樹脂と混合して製膜することで基材層とすることができる。
【0020】
基材層の厚みは、表面保護フィルムの使用用途に応じて適宜設定することができるが、概ね20~100μm程度である。
【0021】
[粘着剤層]
粘着剤層は、上記した基材層の一方の面に設けられて、被着体に表面保護フィルムを密着させる機能を有するものである。本発明においては、JIS K 7161に準拠して測定した23℃での引張弾性率が1.0~3.5MPaの範囲内にあり、かつ80℃での引張弾性率が0.6~2.0MPaの範囲内にある粘着剤層を備えていることを特徴とする。23℃および80℃でのそれぞれの引張弾性率が上記した所定の範囲にあるような粘着剤層とすることにより、表面保護フィルムが被着体に貼着された状態で長期間保管された際に生じる当該フィルム(基材層)の収縮応力を粘着剤層によって緩和できるため、特に、空気を巻き込んだ状態で表面保護フィルムを塗膜に貼着していたような場合に塗膜表面に生じる跡付きの発生を抑制することができる。粘着剤層の引張弾性率が、23℃において3.5MPaを超えると、または80℃において2.0MPaを超えると、フィルムが収縮した際に生じる応力を粘着剤層が緩和できず、粘着剤層と塗膜表面との間の剪断応力により塗膜表面に跡付きが発生する場合がある。一方、粘着剤層の引張弾性率が23℃において1.0MPa未満、または80℃において0.6MPa未満であると、粘着剤層が被着体に対して過密着な状態となるため、フィルムの収縮応力がそのまま塗膜表面に影響し、結果としてやはり塗膜表面に跡付きが発生する場合がある。粘着剤層の引張弾性率の好ましい範囲は、23℃において1.3~2.0MPaであり、80℃において0.8~1.7MPaである。なお、本発明における引張弾性率は、粘着剤層をフィルム化した試験片を準備し、引張試験機を用いて引張速度300mm/の条件にて所定温度にて引張試験を行い、応力-歪み曲線を求め、引張比例限界内における引張応力(σ)と引張歪み(ε)とから、下記式によって算出される値を意味する。
E(MPa)= σ/ε
【0022】
粘着剤層は、主成分としてエラストマー成分を含有し、更に粘着付与剤や軟化剤等を含有する組成を有しているが、これらの各成分の種類や配合量を適宜調整することによって、粘着剤層の引張弾性率が上記範囲とすることができる。以下、粘着剤層を構成する各成分について説明する。
【0023】
粘着剤層を構成する主成分であるエラストマー成分は、スチレン系ブロック共重合体またはその水添物を使用することができる。スチレン系ブロック共重合体は、一般的にA-B-Aで表されるブロック共重合体、又はA-B-Aで表されるブロック共重合体とA-Bで表されるブロック共重合体との混合物であってよい(なお、Aはスチレン重合体ブロックを示し、Bは他の重合体ブロックを示す)。スチレン系ブロック共重合体を構成するBブロックとしては、エチレン重合体ブロック、プロピレン重合体ブロック、ブチレン重合体ブロック等のオレフィン系重合体ブロック、ブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック等のジエン系重合体ブロック、およびジエン系重合体ブロック、ならびにこれら重合体の水添物が挙げられる。粘着剤層が上記した引張弾性率の範囲となるようにするためには、エラストマー成分のAブロックとBブロックとの質量比は、5:95~50:50の範囲であることが好ましい。
【0024】
上記したA-B-A型のスチレン系ブロック共重合体として、具体的には、スチレン-ブタジエン-スチレン型ブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン/スチレン型ブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン型ブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン型ブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレン型ブロック共重合体(SIBS)等が挙げられる。
【0025】
また、上記したA-B型のスチレン系ブロック共重合体として、具体的には、スチレン/ブタジエン型共重合体(SB)、スチレン/イソプレン型共重合体(SI)、スチレン-エチレン/ブチレン型共重合体(SEB)、スチレン-エチレン/プロピレン型共重合体(SEP)、スチレン-イソブチレン型共重合体(SIB)等が挙げられる。
【0026】
さらに、エラストマー成分として、上記したA-B-A型やA-B型以外のものを含んでいてもよい。例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体、スチレン-エチレン/ブチレン-オレフィン結晶(SEBC)等のA-B-C型のスチレン-オレフィン結晶系ブロック共重合体、オレフィン結晶-エチレン/ブチレン-オレフィン結晶(CEBC)等のC-B-C型のオレフィン結晶系ブロック共重合体、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。
【0027】
上記したスチレン系ブロック共重合体またはその水添物の重量平均分子量は30,000~400,000程度の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎると粘着剤の凝集力が小さくなり、被着体に貼着した表面保護フィルムを剥離した際に糊残りが発生する場合がある。一方、重量平均分子量が多き過ぎるスチレン系ブロック共重合体またはその水添物を使用すると、表面保護フィルムの被着体への密着性が劣る場合があるとともに、後記するように共押出成形により表面保護フィルムを製造する際に支障をきたす場合がある。なお、本発明において重量平均分子量とは、GPCを用いて測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0028】
上記したエラストマー成分として市販のものを使用してもよく、例えば、ハイブラー5127、同5125、同7125(いずれもクラレ社製)、シブスター102T(カネカ社製)、S.O.E.S1605.同S1606、同S1611(いずれも旭化成工業社製)、AR-SC-0、AR-SC-5、AR-SC-15、AR-SC-30(いずれもアロン化成社製)等を好適に使用することができる。
【0029】
粘着剤層を構成する任意成分である粘着付与剤は、粘着剤層に粘着性を付与する機能を有するものである。粘着付与剤を含有することにより、凝集力の低下による糊残りの発生を抑制しつつ、粘着力を適度に高めることができる。但し、粘着付与剤を含有すると粘着剤層の引張弾性率が増加する傾向にあるため、粘着剤層の引張弾性率が上記した範囲内になるようにエラストマー成分に添加する必要がある。
【0030】
粘着付与剤としては、上記した目的が達成できる範囲で公知のどのような粘着付与剤を用いてもよいが、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油系樹脂、脂環族石油系樹脂、芳香族系樹脂等の公知の粘着付与剤を好適に使用することができる。
【0031】
粘着付与剤の配合量は、表面保護フィルムの用途に応じて求められる粘着性能を考慮して適宜設定すればよいが、エラストマー成分100質量部に対して1~50質量部程度であることが好ましく、より好ましくは1~30質量部、特に好ましくは1~20質量部である。
【0032】
粘着剤層を構成する任意成分である軟化剤は、上記した粘着付与剤と併用して用いることにより粘着剤層の粘着力を調整するために添加されるものである。軟化剤としては、例えば、低分子量のゴム系材料、プロセルオイル(パラフィン系オイル)、石油系軟化剤、エポキシ系化合物等が好ましく用いられる。これら軟化剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
軟化剤を含有する場合の配合量としては、表面保護フィルムの用途に応じて求められる粘着性能を考慮して適宜設定すればよいが、エラストマー成分100質量部に対して1~25質量部程度であることが好ましく、より好ましくは5~25質量部、特に好ましくは5~15質量部である。
【0034】
粘着剤層には、上記した成分以外にも、必要に応じて、紫外線防止剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0035】
[表面保護フィルムの製造方法]
次に、本発明による表面保護フィルムの製造方法の一例について説明する。先ず、上記した各成分を混合したものと、基材層をなす熱可塑性樹脂とを別個に押出成形機に供給する。具体的には、粘着剤層を製膜するための押出成形機に上記した粘着剤層成分を供給し、基材層を製膜するための押出成形機に熱可塑性樹脂を供給し、2台の押出機から各々の材料を一つのダイスから共押出しする二層共押出法により一体に成形する。このような製造方法を採用することにより、図1に示したような、基材層1と基材層1の一方の面に設けられた粘着剤層2とを備えた表面保護フィルム10が得られる。
【0036】
粘着剤層を製膜するための押出成形機に上記した粘着剤層成分を供給する際に、予めエラストマー成分と粘着付与剤との混合物をマスターバッチ化したものを準備しておき、当該マスターバッチと、エラストマー成分や他の添加剤とを混合して、押出成形機に供給してもよい。また、二層共押出法以外に、基材層をなす長尺状のフィルムの一方の面状に、押出成形法により粘着剤層を製膜してもよい。また、基材層を構成するフィルムと、上記のようにして製膜した粘着剤層(フィルム)とをラミネートして表面保護フィルムを製造してもよい。
【0037】
得られる表面保護フィルムにおける基材層1の厚さは、例えば20~100μmとすることができる。得られる表面保護フィルムにおける粘着剤層2の厚さは、例えば2~50μmとすることができる。
【0038】
得られた表面保護フィルムは、使用の便宜のため通常はロール状に巻回された状態とされる。ロール状で表面保護フィルムを保管すると、内層側にある粘着剤層が外層側にある基材層と密着し、表面保護フィルムがロールから展開しにくくなる場合がある。そのため、表面保護フィルムは、図2に示すように、粘着剤層2が設けられた面とは反対側の面に離型層3を備えていてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。また、離型性を向上させるために、粘着剤層に剥離助剤を添加してもよい。剥離助剤としては、例えば、シリコーン系剥離助剤、パラフィン系剥離助剤、ポリエチレンワックス、アクリル系重合体等が挙げられる。
【実施例
【0039】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明が下記の実施例に示した実施形態に限定して解釈されることを意図したものではない。
【0040】
下記の表1に示した組成に従い、各成分を配合した組成物をニーダーで混練した後、熱プレスにより厚さが概ね1mm程度となるように成形して、粘着シート(本発明における「粘着剤層」に相当)を得た。なお、表1中の数値は全て質量部を表す。また、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
・ハイブラー7125:ビニル-ポリイソプレンブロックを水添したスチレンとビニル-ポリイソプレンとのブロック共重合体(クラレ社製)
・シブスター102T:スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(カネカ社製)
・S.O.E.S1606:スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水添物(旭化成社製)
・AR-SC-5:スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン型ブロック共重合体(アロン化成社製)
・クリアロンP115:水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製)
・クリアロンP150:水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製)
・ハイコールK350:流動パラフィン(カネダ社製)
【0041】
得られた各粘着シートを、JIS K 7139に準拠した試験片の形状(CW2)に打ち抜いたものを試験片とした。各試験片を、引張試験機(エーアンドデイ社製、テンシロン)を用いて、JIS K 7161に準拠して、23℃(65%RH)及び80℃の両雰囲気下におけるそれぞれの引張弾性率を算出した。なお、初期チャック間距離は1.8mmとし、引張速度は300mm/分とした。測定によって得られた各試料片の引張弾性率は、下記の表1に示される通りであった。
【0042】
また、上記で得られた粘着シートを、表面が離型処理されたポリエチレンフタレートフィルムの離型処理面に重ね合わせた後、熱プレスにより、粘着シートの厚みが10μmになるようにプレスして、表面保護フィルムを得た。続いて、ポリプロピレン樹脂をT-ダイ法による押出成形により製膜したポリプロピレンフィルム(本発明における「基材」に相当)に、得られた表面保護フィルムを粘着面が対向するようにして転写を行うことにより、厚さ約40μmのポリプロピレンフィルム、厚さ約10μmの粘着フィルム、およびポリエチレンテレフタレートフィルムが順次積層された層構成を有する表面保護フィルムを作製した。
【0043】
続いて、塗膜跡付き評価を行うためのテストパネル(JIS K 5600に準拠した塗料用試験板、日本テストパネル社製)を準備し、上記のようにして得られた各表面保護フィルムからポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、テストパネルに貼着し、80℃の環境下で7日間放置した。
【0044】
テストパネルを7日間放置した後、表面保護フィルムを剥離し、テストパネルの表面に塗膜跡付きがないか目視にて確認した。評価基準は以下の通りとした。
○:跡付きが目視にて確認できなかった
×:跡付きが目視にて確認できた
評価結果は、下記の表1に示される通りであった。
【0045】
【表1】
【符号の説明】
【0046】
1 基材層
2 粘着剤層
3 離型層
10 表面保護シート
図1
図2