(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】船舶用ダクト構造及び船舶
(51)【国際特許分類】
B63J 2/10 20060101AFI20220606BHJP
B63J 2/06 20060101ALI20220606BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20220606BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
B63J2/10
B63J2/06
B63B11/04 A
B63H21/38 B
(21)【出願番号】P 2020210583
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2021-11-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋麻
(72)【発明者】
【氏名】一木 崇史
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/186050(JP,A1)
【文献】特開2002-264897(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0026412(KR,A)
【文献】実開昭63-50800(JP,U)
【文献】“ACS Guidelines No. 6 Comparative Analysis between IGF Code and IGC Code”,Revision No.1,Association of Asian Classification Societies,2020年04月09日,p.5-50
【文献】西藤浩一,“天然ガス燃料船の実用化とNKの取組み”,日本マリンエンジニアリング学会誌,日本,日本マリンエンジニアリング学会,2012年,第47巻 第6号,p.785-788
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63J 2/00,
B63B 11/04,
B63H 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別ダクトと、
該個別ダクトに接続すると共に換気装置を備える集合ダクトとを備え、
前記個別ダクトの内部には、流体が流通する流体流通管が敷設され、
前記集合ダクトは、
前記個別ダクトに沿って延在する母ダクトと、
前記個別ダクトを前記母ダクトに接続する複数の分岐ダクトと、
前記母ダクトに接続すると共に前記換気装置を備える排気ダクトとを備え、
前記母ダクトは、前記分岐ダクトとの接続位置が前記排気ダクトの接続位置よりも低い傾斜ダクトであり、
前記分岐ダクトは、前記個別ダクト及び前記排気ダクトに対して直交した状態で接続することを特徴とする船舶用ダクト構造。
【請求項2】
前記母ダクトは、前記個別ダクトの上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の船舶用ダクト構造。
【請求項3】
前記分岐ダクトは、各々に開閉弁を備えることを特徴とする請求項
1または2に記載の船舶用ダクト構造。
【請求項4】
前記流体流通管は、船舶の燃料供給設備から燃料消費装置に燃料を供給する燃料供給管であり、複数の前記燃料消費装置に対応して前記個別ダクトの内部に個別に敷設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の船舶用ダクト構造。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の船舶用ダクト構造を備えた船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用ダクト構造及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ガスエンジンが搭載された船舶が記載されている。この船舶は、LNG(液化天然ガス)等の燃料ガスをガスエンジンで燃焼させることにより航行動力を発生させるタイプのものである。近年、大気汚染物質の排出規制が重要視されており、従来の重油に比べて環境負荷が小さい燃料ガス(ガス燃料とも言う。)を燃料とする船舶が増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような船舶におけるガス燃料供給系統では、漏洩時の事故防止の観点から、燃料供給管の周囲をダクトで覆い、当該ダクト内を常時換気することにより、不測の事態つまり燃料供給管からのガス燃料の漏洩に対処する必要がある。また、上記ダクト内の換気については、安全上の観点から専用の換気システムを用いる必要がある。
【0005】
すなわち、低温液体燃料を使用する船舶で複数の燃料供給管を配置する場合には、それぞれの燃料供給管毎にダクト内を換気する換気設備を用意する必要がある。したがって、従来の低温液体燃料を使用する船舶では、換気設備を構成するブロア等の換気装置の設置に必要なスペースが増大すると共に、設置作業に必要な作業場所の確保が困難となるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、換気装置の削減が可能な船舶用ダクト構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、船舶用ダクト構造に係る第1の解決手段として、複数の個別ダクトと、該個別ダクトに接続すると共に換気装置を備える集合ダクトとを備える、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、船舶用ダクト構造に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記集合ダクトは、複数の前記個別ダクトの何れかに他の前記個別ダクトを接続する接続ダクトと、前記個別ダクトに接続すると共に前記換気装置を備える排気ダクトとを備え、前記個別ダクトの内部には、流体が流通する流体流通管が敷設されている、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、船舶用ダクト構造に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記集合ダクトは、前記個別ダクトに沿って延在する母ダクトと、前記個別ダクトを前記母ダクトに接続する複数の分岐ダクトと、前記母ダクトに接続すると共に前記換気装置を備える排気ダクトとを備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、船舶用ダクト構造に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記母ダクトは、前記個別ダクトの上方に位置する、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、船舶用ダクト構造に係る第5の解決手段として、上記第3又は第4の解決手段において、前記母ダクトは、前記分岐ダクトとの接続位置が前記排気ダクトの接続位置よりも低い傾斜ダクトである、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、船舶用ダクト構造に係る第6の解決手段として、上記第3~第5の何れかの解決手段において、前記分岐ダクトは、前記個別ダクト及び前記母ダクトに対して直交した状態で接続する、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、船舶用ダクト構造に係る第7の解決手段として、上記第3~第6の何れかの解決手段において、前記分岐ダクトは、各々に開閉弁を備える、という手段を採用する。
【0014】
本発明では、船舶用ダクト構造に係る第8の解決手段として、上記第1~第7の何れかの解決手段において、前記流体流通管は、船舶の燃料供給設備から燃料消費装置に燃料を供給する燃料供給管であり、複数の前記燃料消費装置に対応して前記個別ダクトの内部に個別に敷設されている、という手段を採用する。
【0015】
本発明では、船舶に係る解決手段として、上記第1~第8の何れかの解決手段に係る船舶用ダクト構造を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、換気装置を備える集合ダクトに複数の個別ダクトを接続するので、換気装置の削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る船舶用ダクト構造Aの正面構造、側面構造及び平面構造を示す模式図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る船舶用ダクト構造Bの正面構造、側面構造及び平面構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の第2実施形態において、変形例に係る船舶用ダクト構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
最初に、
図1を参照して本発明の第1実施形態について説明する。なお、
図1(a)は、船舶用ダクト構造Aの側面構造を示す模式図であり、
図1(b)は、船舶用ダクト構造Aの平面構造を示す模式図であり、
図1(c)は、船舶用ダクト構造Aの正面構造を示す模式図である。本第1実施形態に係る船舶用ダクト構造Aは、
図1に示すように船舶の燃料室1と機関室2とに関連するものである。
【0019】
本第1実施形態における船舶は、近年増加している天然ガスGを燃料(ガス燃料)とする2基のエンジンを搭載している。これら2基のエンジンは、天然ガスG(ガス燃料)を燃焼させて発生させた回転動力によってスクリュを回転させ、当該スクリュが発生させる推力によって船舶を航行させる。
【0020】
燃料室1は、船舶の船尾近傍部位に設けられており、燃料ガス供給システム3(FGSS:Fuel Gas Supply System)、一対の燃料ガス供給管4a、4b、換気ダクト5、燃料受入口6、燃料受入管7及びブロア8等を備えている。
【0021】
燃料ガス供給システム3は、一対の燃料ガス供給管4a、4bを介して船舶のエンジンに天然ガスG(ガス燃料)を供給する燃料供給設備である。この燃料ガス供給システム3は、一対の出力ポートを備えており、一方の出力ポートが一対の燃料ガス供給管4a、4bの一方の一端に接続され、他方の出力ポートが一対の燃料ガス供給管4a、4bの他方の一端に接続されている。
【0022】
この燃料ガス供給システム3は、LNG(液化天然ガス)を貯留する燃料タンク、LNGを気化させて天然ガスG(気化ガス)にする気化器及び当該気化器等を制御する制御装置等を備え、一対の燃料ガス供給管4a、4bに天然ガスG(ガス燃料)を出力する。なお、このような燃料ガス供給システム3は、本発明の燃料供給設備に相当する。
【0023】
一対の燃料ガス供給管4a、4bは、図示するように燃料室1から機関室2に亘って設けられた配管であり、略水平かつ略平行に敷設されている。このような一対の燃料ガス供給管4a、4bのうち、第1の燃料ガス供給管4aは、一端が上記一方の出力ポートに接続され、他端が2基のエンジンの一方の入力ポートに接続されている。また、第2の燃料ガス供給管4bは、一端が上記他方の出力ポートに接続され、他端が2基のエンジンの他方の入力ポートに接続されている。
【0024】
すなわち、このような一対の燃料ガス供給管4a、4bのうち、第1の燃料ガス供給管4aは、燃料ガス供給システム3から受け入れた天然ガスGを2基のエンジンの一方に供給する燃料供給配管である。また、第2の燃料ガス供給管4bは、燃料ガス供給システム3から受け入れた天然ガスGを2基のエンジンの他方に供給する燃料供給配管である。このような一対の燃料ガス供給管4a、4bは、例えば同一仕様に構成された二重管である。
【0025】
換気ダクト5は、一端が燃料室1に接続されると共に他端が甲板上に突出する気体流通管である。この換気ダクト5において、一端は図示するように燃料室1の天井において燃料室1内に連通し、他端は開放端として甲板上に突出する。
【0026】
燃料受入口6は、燃料室1の上方に位置する甲板上に設けられた開閉自在な受入口であり、燃料受入管7に連通する。この燃料受入口6は、通常では閉鎖されており、別途設けられたガス燃料タンクからLNGを受け入れる際に開放されて、ガス燃料タンクから受け入れたLNGを燃料受入管7に供給する。
【0027】
燃料受入管7は、上記燃料受入口6と燃料ガス供給システム3との間に設けられた配管である。すなわち、この燃料受入管7は、一端が燃料受入口6に接続され、他端が燃料ガス供給システム3の受入口に接続されている。このような燃料受入管7は、燃料受入口6から供給されたLNGを燃料ガス供給システム3に供給する。
【0028】
ここで、周知のようにLNGは低温液体である。このような低温液体が内部を流通する燃料受入管7は、低温脆性に優れた材料(鋼材)によって形成されている。このことは、上述した燃料受入口6についても同様である。
【0029】
ブロア8は、換気ダクト5の途中部位に設けられた流体機械である。このブロア8は、図示するように甲板上に設けられており、換気ダクト5の一端から燃料室1内の空気を吸引し、当該空気を換気ダクト5の他端から大気中に排出させる。なお、このブロア8は、図示しないブロア制御装置によって動作が制御されている。
【0030】
例えば、LNGのBOG(boil off gas)が燃料室1内に漏洩した場合、このBOGは、ブロア8が作動することによって換気ダクト5を介して船外に排気される。すなわち、換気ダクト5、ブロア8及びブロア制御装置は、燃料室1用に設けられた換気設備を構成しており、燃料室1の室内環境を清浄に保つ役割を担っている。
【0031】
一方、機関室2には、一対の供給ダクト9a、9b、集合ダクト10及びブロア11等が備えられている。この機関室2は、上述した2基のエンジンを収容するための区画であり、必要に応じてエンジンの増設が可能な容積を備えていてもよい。このような機関室2には、2基のエンジンに天然ガスG(ガス燃料)を供給するための設備として、一対の供給ダクト9a、9b、集合ダクト10及びブロア11等が備えられている。
【0032】
一対の供給ダクト9a、9bは、上述した一対の燃料ガス供給管4a、4bに対して個別に設けられた気体流通路(個別ダクト)である。一対の供給ダクト9a、9bのうち、第1の供給ダクト9aは、第1の燃料ガス供給管4aに個別に対応するものであり、第1の燃料ガス供給管4aの周囲を覆うように設けられている。すなわち、第1の供給ダクト9aと第1の燃料ガス供給管4aとにより二重管が構成されている。
【0033】
また、第2の供給ダクト9bは、第2の燃料ガス供給管4bに個別に対応するものであり、第2の燃料ガス供給管4bの周囲を覆うように設けられている。すなわち、第2の供給ダクト9bと第2の燃料ガス供給管4bとにより二重管が構成されている。
【0034】
このような二重管は、第1、第2の燃料ガス供給管4a、4bにおける燃料ガスの漏洩時の事故防止の観点から設けられている。すなわち、本実施形態における二重管は、第1の燃料ガス供給管4aの周囲を第1の供給ダクト9aで覆うと共に第2の燃料ガス供給管4bの周囲を第2の供給ダクト9bで覆い、また第1の供給ダクト9a内及び第2の供給ダクト9b内を常時換気することにより第1、第2の燃料ガス供給管4a、4bからのガス燃料の漏洩に対処するものである。
【0035】
このような一対の供給ダクト9a、9bは、図示するように一端が燃料室1と機関室2とを区画する壁(区隔壁H)に接続され、図示しないが他端が2基のエンジンの各々に接続されている。すなわち、一対の供給ダクト9a、9bは、機関室2内において一対の燃料ガス供給管4a、4bを他の機器に対して隔離する隔離壁として機能する。
【0036】
また、一対の供給ダクト9a、9bは、集合ダクト10に各々接続されている。すなわち、一対の供給ダクト9a、9bは、図示するように区隔壁Hに極力近い部位(途中部位)が集合ダクト10に接続している。このような一対の供給ダクト9a、9bは、本発明における複数の個別ダクトに相当する。
【0037】
このような一対の供給ダクト9a、9bは、一対の燃料ガス供給管4a、4bにおける天然ガスGの漏洩に個別に対応するためのものである。すなわち、第1の供給ダクト9aは、第1の燃料ガス供給管4aにおいて天然ガスGが漏洩した場合、当該漏洩ガスの機関室2への流入を防止する。また、第2の供給ダクト9bは、第2の燃料ガス供給管4bにおいて天然ガスGが漏洩した場合、当該漏洩ガスの機関室2への流入を防止する。
【0038】
ここで、上述した一対の燃料ガス供給管4a、4bは、本発明の流体流通管及び燃料供給管に相当する。すなわち、一対の燃料ガス供給管4a、4bは、個別ダクトである一対の供給ダクト9a、9bの内部に敷設されており、天然ガスG(ガス燃料)が流体として流通する流体流通管である。
【0039】
また、これら一対の燃料ガス供給管4a、4bは、2基(複数)のエンジンに対応して供給ダクト9a、9b(個別ダクト)の内部に個別に敷設されており、燃料ガス供給システム3(燃料供給設備)からエンジンに天然ガスG(ガス燃料)を供給する燃料供給管と言い換えることもできる。
【0040】
集合ダクト10は、一対の供給ダクト9a、9bを相互に接続すると共に途中部位にブロア11を備える気体流通管である。また、この集合ダクト10は、ブロア11を含む部位が甲板上に突出している。このような集合ダクト10は、接続ダクトD1と排気ダクトD2とを備えている。
【0041】
接続ダクトD1は、略水平方向に延在する直管状の気体流通管であり、一端が第1の供給ダクト9aの途中部位に接続され、他端が第2の供給ダクト9bの途中部位に接続されている。すなわち、この接続ダクトD1は、第1の供給ダクト9aを第2の供給ダクト9bに接続する。
【0042】
排気ダクトD2は、上下方向に延在する直管状の気体流通管であり、図示するように一端が第2の供給ダクト9bの途中部位に接続されている。また、この排気ダクトD2は、途中部位にブロア11が備えられると共に他端が甲板上に突出している。排気ダクトD2の第2の供給ダクト9bに対する接続位置は、図示するように接続ダクトD1の第2の供給ダクト9bに対する接続位置と略同一である。なお、両者の接続位置は異なっていてもよい。
【0043】
一対の供給ダクト9a、9bにおける接続ダクトD1の接続位置、また排気ダクトD2の第2の供給ダクト9bにおける接続位置は、図示するように区隔壁Hに極力近い位置に設定されている。このような接続ダクトD1及び排気ダクトD2に関する接続位置は、一対の供給ダクト9a、9bの一端近傍における天然ガスGの滞留を極力抑制するための工夫である。
【0044】
ブロア11は、排気ダクトD2の途中部位に設けられた流体機械である。このブロア11は、図示するように甲板上に設けられており、排気ダクトD2の一端から一対の供給ダクト9a、9b内の空気を吸引し、当該空気を排気ダクトD2の他端から大気中に排出させる。このブロア11は、上述したブロア8とは別に設けられた第2のブロア制御装置(図示略)によって動作が制御される。
【0045】
一対の供給ダクト9a、9bの内部において、一対の燃料ガス供給管4a、4bの何れか一方あるいは両方において天然ガスGの漏洩が発生した場合、この漏洩ガスは、ブロア11が作動することによって集合ダクト10を介して船外に排気される。すなわち、集合ダクト10、ブロア11及び第2のブロア制御装置は、一対の燃料ガス供給管4a、4b用に設けられた第2の換気設備を構成しており、一対の燃料ガス供給管4a、4bと一対の供給ダクト9a、9bとの間の環境を清浄に保つ役割を担っている。
【0046】
次に、本第1実施形態に係る船舶用ダクト構造Aの作用効果について詳しく説明する。この船舶用ダクト構造Aでは、第1の供給ダクト9aに接続ダクトD1が接続され、第2の供給ダクト9bに接続ダクトD1と排気ダクトD2とが接続されている。
【0047】
すなわち、この船舶用ダクト構造Aでは、ブロア11が作動することによって、第1の供給ダクト9a内の空気や漏洩ガスが接続ダクトD1→排気ダクトD2を経由して船外に排気される。また、第2の供給ダクト9b内の空気や漏洩ガスは、ブロア11が作動することによって、排気ダクトD2を経由して船外に排気される。
【0048】
ここで、従来技術では、第1の供給ダクト9a内の空気や漏洩ガスと第2の供給ダクト9b内の空気や漏洩ガスを何れも船外に排気するためのダクト構造として、第1の供給ダクト9aと第2の供給ダクト9bとのそれぞれに、ブロア11が設けられた排気ダクトD2を個別に設けることが考えられる。
【0049】
しかしながら、このようなダクト構造では、甲板上に突出する排気ダクトD2を2つ設ける必要があり、また各々の排気ダクトD2にブロア11を設ける必要がある。すなわち、このようなダクト構造では、換気設備を構成する排気ダクトD2及びブロア11の設置に必要なスペースが増大し、また換気設備の設置作業に必要な作業場所の確保が困難となる。
【0050】
これに対して、本第1実施形態に係る船舶用ダクト構造Aによれば、一対の供給ダクト9a、9bを甲板下の接続ダクトD1によって相互に接続し、また第2の供給ダクト9bに排気ダクトD2を接続する。したがって、本第1実施形態に係る船舶用ダクト構造Aによれば、換気設備の削減、特に甲板上に突出する排気ダクトD2及びブロア11の削減を実現することができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、
図2を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
図2(a)は、船舶用ダクト構造Bの側面構造を示す模式図であり、
図2(b)は、船舶用ダクト構造Bの平面構造を示す模式図であり、
図2(c)は、船舶用ダクト構造Bの正面構造を示す模式図である。
【0052】
なお、この
図2を上述した
図1と対比すると判るように、第2実施形態に係る船舶用ダクト構造Bは、第1実施形態の集合ダクト10に代えて、ヘッダ構造を有する集合ダクト10Aを採用するものである。この船舶用ダクト構造Bは、集合ダクト10Aを採用する点において第1実施形態に係る船舶用ダクト構造Aと相違する。
【0053】
この第2実施形態における集合ダクト10Aは、各供給ダクト9a、9bを接続すると共に甲板上に突出する気体流通管である。このような集合ダクト10Aは、相互に接続された母ダクトE1、複数の分岐ダクトE2及び排気ダクトE3を備えている。
【0054】
母ダクトE1は、各供給ダクト9a、9bに沿って水平方向(例えば船首尾方向)に延在し、途中部位に各分岐ダクトE2及び排気ダクトE3が接続されている。この母ダクトE1は、図示するように各供給ダクト9a、9bの上方に位置している。また、この母ダクトE1の両端部は、閉鎖された密閉端である。
【0055】
複数の分岐ダクトE2は、各供給ダクト9a、9bに対応して設けられており、各供給ダクト9a、9bを母ダクトE1に接続する。すなわち、第1の分岐ダクトE2は、一端が第1の供給ダクト9aの途中部位に接続され、他端が母ダクトE1の途中部位に接続されている。また、第2の分岐ダクトE2は、一端が第2の供給ダクト9bの途中部に接続され、他端が母ダクトE1の途中部位に接続されている。
【0056】
ここで、各供給ダクト9a、9bにおける分岐ダクトE2の接続位置は、図示するように区隔壁Hに極力近い位置である。このような分岐ダクトE2の接続位置は、第1実施形態に係る船舶用ダクト構造Aと同様に、各供給ダクト9a、9bの一端近傍における天然ガスGの滞留を極力抑制するための工夫である。
【0057】
排気ダクトE3は、母ダクトE1に接続すると共にブロア11(換気装置)を備える。この排気ダクトE3は、略上下方向に延在する直管状の気体流通管であり、一端が母ダクトE1の途中部位に接続され、他端が甲板上に突出する。なお、排気ダクトE3の母ダクトE1における接続位置は、図示するように第1の分岐ダクトE2の母ダクトE1における接続位置と略同一である。なお、両者の接続位置は異なっていてもよい。
【0058】
このような集合ダクト10Aは、ヘッダ工法に基づいて各供給ダクト9a、9bを排気ダクトE3に接続するものである。すなわち、この集合ダクト10Aにおける母ダクトE1は、ヘッダ工法におけるヘッダ管に相当するものであり、また複数の分岐ダクトE2は、ヘッダ工法における分岐管に相当するものである。
【0059】
このような第2実施形態に係る船舶用ダクト構造Bでは、各供給ダクト9a、9bが第1の分岐ダクトE2によって母ダクトE1に接続され、当該母ダクトE1に排気ダクトD2が接続されている。このような船舶用ダクト構造Bでは、ブロア11が作動することによって、各供給ダクト9a、9b内の空気や漏洩ガスが分岐ダクトE2→母ダクトE1→排気ダクトE3を経由して船外に排気される。
【0060】
このような第2実施形態に係る船舶用ダクト構造Bによれば、各供給ダクト9a、9bを甲板下の分岐ダクトE2によって母ダクトE1に各々に接続し、また母ダクトE1に排気ダクトD2を接続する。したがって、本第2実施形態に係る船舶用ダクト構造Bによれば、換気設備の削減、特に甲板上に突出する排気ダクトE3及びブロア11の削減を実現することができる。
【0061】
また、第2実施形態に係る船舶用ダクト構造Bによれば、ヘッダ工法に基づいて集合ダクト10Aを採用するので、供給ダクト9a、9bの増設に対して柔軟に対応することができる。すなわち、第2実施形態によれば、分岐ダクトE2の増設のみによって供給ダクト9a、9bの増設に容易に対応することができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態では、一対の供給ダクト9a、9b(個別ダクト)をブロア11(換気装置)を備える単一の排気ダクトD2,E3に接続することにより、供給ダクト9a、9b(個別ダクト)に対して個別にブロア11及び排気ダクトD2,E3を設ける場合に比較してブロア11及び排気ダクトD2,E3の数を1つ削減したが、本発明はこれに限定されない。
【0063】
本発明は、複数の個別ダクトに対して換気装置を個別に設けた場合よりも換気装置を削減することを目的とするものである。この目的を達成するためには、少なくとも1つの換気装置が削減できるように複数の個別ダクトを相互に集約接続すれば十分である。
【0064】
例えば、個別ダクトの個数が3以上である場合、ブロア11及び排気ダクトD2,E3を2つ設けるように個別ダクトを相互に集約接続してもよい。また、この場合にブロア11及び排気ダクトD2,E3を1設けるように個別ダクトを相互に集約接続してもよい。すなわち、本発明は、個別ダクトの個数よりもブロア11及び排気ダクトD2,E3の個数が少なくなるように個別ダクトを相互に集約接続するものである。
【0065】
(2)上記各実施形態では、一対の供給ダクト9a、9bに対応する船舶用ダクト構造A、Bについて説明したが、本発明はこれに限定されない。上述したように天然ガスGを燃料(ガス燃料)とする船舶では、エンジンを増設することがある。この場合、供給ダクトも増設されるが、本発明に係る船舶用ダクト構造は、3基以上のエンジンを備える船舶にも適用可能である。
【0066】
(3)上記各実施形態では、供給ダクト9a、9bに対応する船舶用ダクト構造A、Bについて説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明に係る船舶用ダクト構造は、船舶において供給ダクト9a、9bの漏洩ガス対応以外の用途にも適用可能である。
【0067】
(4)上記各実施形態では、天然ガスGをガス燃料とする船舶に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、天然ガスG以外に、例えば石油ガス、アンモニア、水素、バイオ燃料など、ガス燃料又は液化燃料を燃料とする様々な船舶にも適用することができる。なお、石油ガスをガス燃料とする船舶では、LPG(Liquefied Petroleum Gas)を外部から燃料ガス供給システム3に受け入れる。
【0068】
また、本発明は、外部で気化した天然ガスGや石油ガスを外部から燃料ガス供給システムに受け入れる船舶にも適用することができる。この場合の燃料ガス供給システムは、外部から受け入れた天然ガスGや石油ガスを専用のガスタンクに貯留し、気化器を介することなく供給ダクト9a、9bに供給する。
【0069】
(5)上記各実施形態では、集合ダクト10、10Aを採用したが、本発明における集合ダクトは、船舶用ダクト構造A、Bにおける集合ダクト10、10Aに限定されない。船舶用ダクト構造Bの集合ダクト10Aは、
図3(a)に示すように水平方向に延在する母ダクトE1を備えるが、例えば
図3(b)に示すように水平方向に対して傾斜した傾斜ダクトE4としてもよい。
【0070】
すなわち、この傾斜ダクトE4は、分岐ダクトE2との接続位置が排気ダクトE3の接続位置よりも低い母ダクトである。このような傾斜ダクトE4によれば、比重が空気よりも軽い漏洩ガス(天然ガス)を容易に排気ダクトE3に導くことが可能である。すなわち、傾斜ダクトE4を母ダクトとして採用することにより、漏洩ガス(天然ガス)が母ダクト内に滞留することを効果的に抑制することが可能であり、よって漏洩ガス(天然ガス)の船外への排気を効果的に行うことが可能である。
【0071】
(6)上記各実施形態では、一対の燃料ガス供給管4a、4bの接続先を各々に航行動力を発生させる2基のエンジンとしたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明における流体流通管は、複数のエンジンにガス燃料を個別に供給する燃料供給管に限定されない。例えば、一対の燃料ガス供給管4a、4bの接続先を1基のエンジンとしてもよい。すなわち、本発明は、1基のエンジンに複数の流体流通管でガス燃料を供する場合に適用することができる。
【0072】
また、本発明における流体流通管は、エンジンにガス燃料を供給する燃料供給管に限定されない。例えば、第1の燃料ガス供給管4aの接続先を航行動力を発生させるエンジンとし、第2の燃料ガス供給管4bの接続先を蒸気を発生させるボイラ、発電機を駆動するエンジン(発電用エンジン)或いはごみを焼却する焼却炉等としてもよい。さらには、一対の燃料ガス供給管4a、4bの接続先を上記ボイラ、発電用エンジン或いは焼却炉等のうち何れか2つとしてもよい。このように、流体流通管による燃料の供給先は、燃料を消費する燃料消費装置であればよい。
【0073】
(7)上記第2実施形態では、母ダクトE1、複数の分岐ダクトE2及び排気ダクトE3を相互に接続するが、上記傾斜ダクトE4を採用した場合、母ダクトE1、複数の分岐ダクトE2及び排気ダクトE3の接続状態は、
図3(b)に示すように直交(90°)接続ではなく、傾斜ダクトE4の傾斜角に応じて直交状態とは異なる角度で接続されることになる。
【0074】
このような直交状態とは異なる角度で母ダクトE1、複数の分岐ダクトE2及び排気ダクトE3を接続する場合、各接続部位における接続作業(例えば溶接作業)の作業性や接続品質が直交接続の作業性よりも大幅に低下する。このような接続作業や接続品質における作業性を考慮すると、
図3(c)に示すように傾斜ダクトE4の傾斜角に応じて各分岐ダクトE2及び排気ダクトE3を傾斜させることにより、各分岐ダクトE2及び排気ダクトE3を供給ダクト9a、9b(個別ダクト)及び母ダクトE1に対して直交した状態で接続することが好ましい。
【0075】
(8)上記第2実施形態では、各分岐ダクトE2を母ダクトE1に直接接続したが、
図3(d)に示すように各分岐ダクトE2を開閉弁E5を介して母ダクトE1に接続してもよい。すなわち、各分岐ダクトE2は、各々に開閉弁E5を備えてもよい。このような変形例によれば、例えば一対の供給ダクト9a、9b(個別ダクト)のうち、何れか一方に換気の必要がなくなった場合に容易に対応することができる。
【0076】
(9)上記第2実施形態では、母ダクトE1を供給ダクト9a、9bに沿って設けたが、本発明はこれに限定されない。母ダクトE1の敷設方向については、機関室2内における他の機器との関係をも考慮して適宜決定されるべきものである。例えば、母ダクトE1の敷設方向を供給ダクト9a、9bに交差する方向とする場合もある。
【0077】
(10)上記各実施形態では燃料ガス供給管4a、4bが横並びの場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、例えば燃料ガス供給管4a、4bが縦並びの場合であっても適用可能である。
【0078】
(11)さらに、本願発明は、上述した各実施形態及び各変形例の何れかを適宜組み合わせたものも包含するものである。
【符号の説明】
【0079】
A、B 船舶用ダクト構造
D1 接続ダクト
D2 排気ダクト
E1 母ダクト
E2 分岐ダクト
E3 排気ダクト
G 天然ガス(気化ガス、ガス燃料)
H 区隔壁
1 燃料室
2 機関室
3 燃料ガス供給システム
4a、4b 燃料ガス供給管(流体流通管、燃料供給管)
5 換気ダクト
6 燃料受入口
7 燃料受入管
8 ブロア
9a、9b 供給ダクト(個別ダクト)
10、10A 集合ダクト
11 ブロア(換気装置)
【要約】
【課題】換気装置の削減が可能な船舶用ダクト構造を提供する。
【解決手段】複数の個別ダクトと、該個別ダクトに接続すると共に換気装置を備える集合ダクトとを備え、個別ダクトの内部には、流体が流通する流体流通管が敷設されている。
【選択図】
図1