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特許7083888DSIプロトコルに基づいて自動車両におけるセンサ装置を動作させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】DSIプロトコルに基づいて自動車両におけるセンサ装置を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
H04L12/28 400
H04L12/28 100A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020508584
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018071593
(87)【国際公開番号】W WO2019034511
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】102017118567.4
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】マレク、ルバンドウスキー
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】DSI3 Bus Standerd,DSI3 Bus Standerd Revision 1.00,2011年02月16日,p.1-45,http://www.dsiconsortium.org/downloads/DSI3_%20Bus_Standard_r1.00.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機能クラスモードにおけるDSIプロトコルに基づいて自動車両(1)におけるセンサ装置(2)を動作させるための方法において、
前記センサ装置(2)は、マスターとしての中央ユニット(3)と、前記マスターによって制御されるスレーブとしての複数のセンサユニット(S,S,...,S)とを有し、
前記中央ユニット(3)及び前記センサユニット(S,S,...,S)は、2線式バスケーブル(4)によって互いに直列に接続され、
前記センサユニット(S,S,...,S)はそれぞれ、前記2線式バスケーブル(4)と直列に接続される試験抵抗器(RS1,RS2,...,RSN)と、前記2線式バスケーブルに接続され得る電気試験負荷(L,L,...,L)と、アドレスカウンタ(A,A,...,A)とを有し、 少なくとも3つの異なる動作段階が、互いに交互に起こる、一方では通信段階、他方ではエネルギー供給段階、及び、前記通信段階及び前記エネルギー供給段階に先行するアドレス割り当て段階(IP)の形態で与えられて、以下のステップ、すなわち、
前記通信段階において、それぞれのバス電圧(UBus)としての所定の下限電圧(VLOW-PWR)及び所定の上限電圧(VHIGH-PWR)によって前記中央ユニット(Z)と前記センサユニット(S,S,...,S)との間で情報を転送するステップと、
前記エネルギー供給段階において、前記中央ユニット(Z)によって前記センサユニット(S,S,...,S)に電気エネルギーを供給するステップであって、前記バス電圧(UBus)として、前記上限電圧(VHIGH-PWR)より少なくとも1V高いアイドル電圧(VIDLE)が印加される、ステップと、
前記アドレス割り当て段階において、以下のステップa)~f)、すなわち、
a)全てのセンサユニット(S,S,...,S)の前記アドレスカウンタ(A,A,...,A)に最初のアドレスを記憶するステップであって、前記最初のアドレスが全てのセンサユニット(S,S,...,S)に関して同じである、ステップと、
b)前記上限電圧(VHIGH-PWR)より少なくとも1V大きいアドレス割り当て電圧をバス電圧(UBus)として印加するステップと、
c)前記センサユニット(S,S,...,S)がそれぞれ試験電流(IL1,IL2,...ILN)を引き込むように全てのセンサユニット(S,S,...,S)の前記電気試験負荷(L,L,...,L)を前記2線式バスケーブル(4)に接続するステップと、
d)前記試験抵抗器(RS1,RS2,...,RSN)のそれぞれを通じて流れる電流(IR1,IR2,...,IR5)を検出するステップと、 e)前記試験抵抗器(RS1,RS2,...,RSN)を通じて流れる電流(IR1,IR2,...,IR5)が検出されなかった前記センサユニット(S,S,...,S)における前記2線式バスケーブル(4)から前記電気試験負荷(L,L,...,L)を恒久的に切断して、その試験負荷(L,L,...,LN-1)が前記2線式バスケーブル(4)から未だ恒久的に切断されてしまっていない全ての他のセンサユニット(S,S,...,SN-1)の前記アドレスカウンタ(A,A,...,AN-1)において全てのセンサユニット(S,S,...,S)に関して等しい所定の値だけそれぞれのアドレスを増大させるステップと、
f)全てのセンサユニット(S,S,...,S)で前記電気試験負荷(L,L,...,L)が前記2線式バスケーブル(4)から恒久的に切断されるまで、その試験負荷(L,L,...,LN-1)が前記2線式バスケーブル(4)から未だ恒久的に切断されてしまっていない全てのセンサユニット(S,S,...,SN-1)に関して前記ステップ(d)及び(e)を繰り返すステップと、
により、個々のセンサユニット(S,S,...,S)にそれぞれのアドレスを割り当てるステップと、
を有するものであり、
ステップd)に関して、このステップの最初の繰り返し以降、
d)その電気試験負荷(L ,L ,...,L N-1 )が未だ恒久的にOFFに切り換えられてしまっていない全てのセンサユニット(S ,S ,...,S N-1 )における前記2線式バスケーブル(4)から前記電気試験負荷(L ,L ,...,L )を切断し、その後、これらのセンサユニット(S ,S ,...,S N-1 )がそれぞれ試験電流(I L1 ,I L2 ,...I LN-1 )を引き込むように、その試験負荷(L ,L ,...,L N-1 )が前記2線式バスケーブル(4)から未だ恒久的に切断されてしまっていない全ての他のセンサユニット(S ,S ,...,S N-1 )の前記2線式バスケーブル(4)に前記電気試験負荷(L ,L ,...,L N-1 )を再接続して、これらのセンサユニット(S ,S ,...,S N-1 )の前記試験抵抗器(R S1 ,R S2 ,...,R SN-1 )のそれぞれを通じて流れる前記電流を検出する、
ことが適用される、方法。
【請求項2】
前記センサユニット(S,S,...,S)は、それぞれがそれぞれのアクチュエータ負荷を伴うアクチュエータであるとともに、それぞれが通信目的のために前記2線式バスケーブル(4)に接続され得る通信負荷を有し、前記それぞれのアクチュエータ負荷が前記それぞれの通信負荷よりも大きく、前記アクチュエータ負荷が試験負荷(L,L,...,L)として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上限電圧より少なくとも1V大きく且つ前記アイドル電圧の少なくとも50%の値を有するアドレス割り当て電圧をバス電圧として印加するステップを有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アイドル電圧(VIDLE)に対応するアドレス割り当て電圧をバス電圧(UBus)として印加するステップを有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
25Vに等しいアドレス割り当て電圧をバス電圧(UBus)として印加するステップを有する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの段階のステップc)及びd)において前記センサユニット(S,S,...,S)の前記電気試験負荷(L,L,...,L)が前記2線式バスケーブル(4)に接続され、それにより、前記試験負荷(S,S,...,S)の一部のみがアクティブにされ、その後、各試験負荷(L,L,...,L)が徐々に更に増大される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記センサユニット(S,S,...,S)では、それぞれのセンサユニット(S,S,...,S)の前記試験抵抗器(RS1,RS2,...,RSN)を通じて流れる所定の閾値(I)を超えてしまった電流(I,IR2,...,IR5)が検出された場合、前記試験負荷(L,L,...,L)の更なる増大が行なわれない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最初のアドレスが1であり、前記アドレスが増大されるときにいずれの場合にも1の増分が行なわれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
自動車両(1)における請求項1から8のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項10】
プロセッサで実行されるときに請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施する、コマンドが記憶された不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によって動作するように構成されるセンサ装置。
【請求項12】
前記センサユニット(S,S,...,S)として超音波信号を送信及び/又は受信するための超音波センサユニットを備える、請求項11に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DSIプロトコルに基づいて自動車両におけるセンサ装置を動作させるための方法に関し、センサ装置は、マスターとしての中央ユニットと、マスターによって制御されるスレーブとしての複数のセンサユニットとを有し、中央ユニット及びセンサユニットは2線式バスケーブルに接続され、中央ユニットとセンサユニットとの間の通信は2線式バスケーブルを介して行なわれる。また、本発明は、自動車両におけるそのような方法の使用、センサ装置、及び、そのようなセンサ装置を有する自動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年2月16日付けのDSI3バス標準規格、改訂1.00を参照してこれを明示的に組み入れることによりその仕様が本発明の開示の一部を形成するDSIプロトコル分散システムインタフェースは、単純な2線式ケーブル装置に基づいてセンサネットワークを構築できるようにするプロトコルであり、マスターが2線式バスケーブルを介して1つ以上のスレーブと通信する。DSIプロトコルは、主に、マスターによって複数のスレーブ、特にセンサ及びアクチュエータをポーリングする及び/又は制御するために、自動車両での使用に基づいている。
【0003】
DSIプロトコルの仕様は、そのようなセンサ装置を2つの動作クラスのうちの一方で動作させることができることを規定し、これらの動作クラスは「信号機能クラス」及び「電力機能クラス」である。また、このプロトコルは、本質的に、マスターとスレーブとの間でバスが使用され得る3つの異なるモードも規定する。
【0004】
CRMモード(命令・応答モード)では、マスターとスレーブとの間で双方向通信が行なわれる。マスターはコマンドを送信し(命令)、スレーブはマスターに応答する(応答)。この方法は、例えば、スレーブを構成するため或いはスレーブから特定の値を選択的に照会するために使用される。
【0005】
PDCMモード(定期的データ収集モード)では、スレーブが指定されたタイムスロット内で比較的大量のデータをマスターに転送し、マスターの送信活動は、同期信号(ブロードキャスト読み取りコマンド)によってこのタイムスロットを決定するための基準点をスレーブに与えることに制限される。スレーブには、予めそれらのそれぞれのタイムスロットに関する情報が既に備えられてしまっており、それにより、同期信号に応じて、スレーブは、それらのそれぞれの送信時間間隔を決定し、それに基づいて、それらのセンサデータをマスターに送信できる。
【0006】
エネルギー供給段階では、高いエネルギー消費を伴うスレーブに十分なエネルギーを供給するために比較的大量の電気エネルギーが転送される。
【0007】
前述の仕様にしたがった前述の信号機能クラスは、主に、低いエネルギー消費を伴うスレーブの接続、及び、スレーブからマスターに送信されるようになっている比較的高いデータトラフィックのために使用される。信号機能クラスのセンサ装置の作動後、通信の最初の段階がCRMモードでマスターとスレーブとの間で行なわれ、その間に、通常は、例えばこのスレーブに関する前述のPDCMタイムスロットのパラメータに関連して、スレーブが構成される。この段階が完了された時点で、それにより、センサ装置がPDCMモードに切り換わり、このモードでは、マスターの同期信号に応じて、スレーブがそれぞれの割り当てられたタイムスロットで取得されたデータを常に中央エンティティに送信する。PDCMモードにおけるこの段階は、通常、センサ装置の動作が中断されるまで再び終了されない。信号機能クラスにしたがってエネルギー供給段階がもたらされず、また、スレーブの低いエネルギー消費に起因してもエネルギー供給段階が必要とされない。
【0008】
前述の電力機能クラスは、主に、比較的高いエネルギー消費を伴うスレーブの接続及びマスターからスレーブに送信されるようになっている比較的低いデータトラフィックのために使用される。電力機能クラスのセンサ装置の動作では、CRMモードにおけるマスターとスレーブとの間の通信段階がエネルギー供給段階と交互に行なわれる。エネルギー供給段階の持続時間は通常は非常に支配的である。
【0009】
バス電圧に関し、DSI3バス標準規格は、一方ではエネルギー供給段階及び他方では通信段階に関する異なる電圧範囲を規定する。通信段階においては、情報を送信するために上限電圧VHIGH-PWRと下限電圧VLOW-PWRとが規定される。電圧VHIGH-PWRは、4Vにすべきであり、4.5Vの最大値及び3.5Vの最小値を有さなければならない。VLOW-PWRは、2Vにすべきであり、2.25Vの最大値及び1.75Vの最小値を有さなければならない。エネルギー供給段階中のバス電圧は、アイドル電圧VIDLEと称され、25Vを超えてはならず、使用される電圧VHIGH-PWRよりも少なくとも1V高くなければならない。したがって、システムがVHIGH-PWRに関して3.5Vの最小許容電圧で動作されれば、VIDLEは少なくとも4.5ボルトでなければならない。余談として、アイドル電圧という用語の使用は、センサユニットが電気エネルギーのみを受けて任意の動作を実行するために制御されないという意味で、エネルギー供給段階中にセンサユニットがアイドルモードにあるという事実に由来する。
【0010】
これらの段階で比較的大量のエネルギーをCRMモードと比較してより高い電圧でスレーブに供給することは、特に、アクチュエータを動作させることができることを意味し、これは、通常、CRM段階でマスターからスレーブへ既に送信された制御コマンドに基づいて実行される。PDCMモードは、前述のアクチュエータを用いると少ないデータ量に起因してそれも必要とされないため、電力機能クラスにしたがって適用できない。
【0011】
DSI3バス標準規格は、特に、中央ユニットとセンサユニットとを互いに直列に、すなわち、いわゆるデイジーチェーン形態で接続できるようにする。センサユニットには、この直列配列におけるそれらの位置に応じて、アドレスが割り当てられる。センサユニットの数Nが与えられると、センサユニットのこれらのそれぞれのアドレスは一般に1からNであり、隣り合うセンサユニットは正確に1だけ異なるアドレスを有する。そのようなアドレスをセンサユニットに分配する方法は、「ディスカバリーモード」と称されるDSI3バス標準規格で規定される。このため、センサユニットは、一般に、2線式バスケーブルと直列に配置される試験抵抗器と、2線式バスケーブルに接続され得る負荷とを有する。ディスカバリーモードにおいて、この負荷は、中央ユニットとの通信中に2線式バスケーブルにも接続される負荷、言い換えると、通信負荷である。2線式バスケーブルに接続される通信負荷では、チェーンの最後のセンサユニットを除く全ての試験抵抗器で電流流れが生じ、チェーンの背後には、勿論、通信負荷が存在しない。このように、ディスカバリーモードでは、チェーン内のそれぞれの最後のセンサユニットを常に決定でき、それにより、それぞれの最後のセンサユニットの通信負荷を遮断してセンサユニットのアドレスを連続的にインクリメントすることにより、最終的に全てのセンサユニットがアドレスを受信するまでセンサユニットに対するアドレス割り当てを行なうことができる。
【0012】
電力機能クラスモードでは、特にセンサユニットのより長いチェーンに関しては、センサユニットにおける高い電圧降下、したがって高い電力損失を避けるために、センサユニットの内部抵抗が最小限に維持されなければならない。低い内部抵抗に起因して、ディスカバリーモード中の電圧降下の測定は、測定されるべき電圧がノイズの範囲内にあり得るため、誤った結果をもたらす可能性がある。したがって、DSI3仕様で規定されるディスカバリーモードは、電力機能クラスモードのデイジーチェーン形態のセンサユニットで常に確実に動作するとは限らない。
【0013】
国際公開第2016/054345号パンフレットには、石油、ガス、又は、発電産業で使用されるような、構造の状態又は完全性を監視するための超音波システムが記載されている。このシステムは、複数の超音波センサと、少なくとも1つのデジタルセンサインタフェースとを備える。
【0014】
ドイツ出願公開第10 2013 226 376号明細書は、超音波センサ及び制御ユニットを伴うセンサシステムを動作させるための方法について記載し、超音波センサから制御ユニットへのデータは電流変調され、また、制御ユニットから超音波センサへのデータは電圧変調される。この解決策は、適切なPSI5データバスインタフェースの変更後、2つのバスシステムの利点を享受するべく、正にそうしたデータ転送用のデータバス及びLINデータバスを互いに組み合わせることができるようにする。
【0015】
ドイツ出願公開第10 2012 103 907号明細書には、送信器ユニットに接続される自動車両制御ユニットの受信器ユニットを動作させるための方法が記載されている。受信器ユニットは、送信器ユニットの仮想アドレスを含む受信信号に識別子を付け加える。これは、PSI5バージョン1標準規格にしたがったセンサユニットを、PSIバージョン2標準規格で信号を処理する自動車両制御ユニットに接続するために使用され得る。
【0016】
最後に、欧州特許第2 263 102号は、複数のセンサを有する超音波ベースの運転者支援システムについて記載している。センサにはそれぞれ固有の識別コードが割り当てられ、この識別コードはインタフェースを介して制御ユニットにより読み取られ得る。インタフェースは、ペリフェラルセンサインタフェース(PSI)に準拠するように設計される2線式バスインタフェースである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2016/054345号パンフレット
【文献】ドイツ出願公開第10 2013 226 376号明細書
【文献】ドイツ出願公開第10 2012 103 907号明細書
【文献】欧州特許第2 263 102号
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、電力機能クラスモードを含むDSIプロトコルに基づき、ロバスト性が高い信頼できる方法で、自動車両用に指定されたセンサ装置のセンサユニットにアドレスを分配できる方法を明らかにすることである。
【0019】
この目的は、独立請求項の主題により達成される。本発明の好ましい外延は、従属請求項に記載される。
【0020】
したがって、本発明によれば、電力機能クラスモードにおけるDSIプロトコルに基づいて自動車両におけるセンサ装置を動作させるための方法であって、
センサ装置は、マスターとしての中央ユニットと、マスターによって制御されるスレーブとしての複数のセンサユニットとを有し、
中央ユニット及びセンサユニットは、2線式バスケーブルによって互いに直列に接続され、
センサユニットはそれぞれ、2線式バスケーブルと直列に接続される試験抵抗器と、2線式バスケーブルに接続され得る電気試験負荷と、アドレスカウンタとを有し、
少なくとも3つの異なる動作段階が、互いに交互に起こる、一方では通信段階、他方ではエネルギー供給段階、及び、通信段階及びエネルギー供給段階に先行するアドレス割り当て段階の形態で与えられて、以下のステップ、すなわち、
通信段階において、それぞれのバス電圧としての所定の下限電圧及び所定の上限電圧によって中央ユニットとセンサユニットとの間で情報を転送するステップと、
エネルギー供給段階において、中央ユニットによってセンサユニットに電気エネルギーを供給するステップであって、バス電圧として、上限電圧より少なくとも1V高いアイドル電圧が印加される、ステップと、
アドレス割り当て段階において、以下のステップa)~f)、すなわち、
a)全てのセンサユニットのアドレスカウンタに最初のアドレスを記憶するステップであって、最初のアドレスが全てのセンサユニットに関して同じである、ステップと、
b)上限電圧より少なくとも1V大きいアドレス割り当て電圧をバス電圧として印加するステップと、
c)センサユニットがそれぞれ試験電流を引き込むように全てのセンサユニットの電気試験負荷を2線式バスケーブルに接続するステップと、
d)試験抵抗器のそれぞれを通じて流れる電流を検出するステップと、
e)試験抵抗器を通じて流れる電流が検出されなかったセンサユニットにおける2線式バスケーブルから電気試験負荷を恒久的に切断して、その試験負荷が2線式バスケーブルから未だ恒久的に切断されてしまっていない全ての他のセンサユニットのアドレスカウンタにおいて全てのセンサユニットに関して等しい所定の値だけそれぞれのアドレスを増大させるステップと、
f)全てのセンサユニットで電気試験負荷が2線式バスケーブルから恒久的に切断されるまで、その試験負荷が2線式バスケーブルから未だ恒久的に切断されてしまっていない全てのセンサユニットに関してステップ(d)及び(e)を繰り返すステップと、
により、個々のセンサユニットにそれぞれのアドレスを割り当てるステップと、
を有する、方法が提供される。
【0021】
したがって、本発明の重要な態様は、センサユニットにそれらのそれぞれのアドレスが割り当てられるアドレス割り当て段階で、通信段階において中央ユニットとセンサユニットとの間の情報交換のために使用される上限電圧より少なくとも1V大きいアドレス割り当て電圧がバス電圧として使用されることである。更に、通常のディスカバリーモードの場合と同様に、それぞれの最後のセンサユニットの検出と、センサユニットのアドレスの連続的なインクリメントとが、多数の連続したサイクルで行なわれる。
【0022】
この場合、試験抵抗器を通じて流れる電流が検出されなかったセンサユニットで2線式バスケーブルからの電気試験負荷の恒久的な切断がもたらされると述べられている場合、「恒久的」という言葉は「このアドレス割り当て段階で」を意味する。後続のアドレス割り当て段階では、センサユニットのアドレスが再度割り当てられると、電気試験負荷が自明に2線式バスケーブルに再度接続され得る。
【0023】
その際、アドレス割り当て電圧は、一定である必要はなく、常に同じである必要はない。代わりに、アドレス割り当て電圧は、大きさが異なる可能性があり、既知の下限をわずかに下回ることさえあり得る。しかしながら、アドレス割り当て電圧は、通信段階における上限電圧よりも1V高い下限を恒久的に上回ったままであることが好ましい。
【0024】
センサユニットは、それぞれがそれぞれのアクチュエータ負荷を伴うアクチュエータであるとともに、それぞれが通信目的のために2線式バスケーブルに接続され得る通信負荷を有し、それぞれのアクチュエータ負荷がそれぞれの通信負荷よりも大きく、アクチュエータ負荷が試験負荷として使用される。
【0025】
このようにして、それぞれの試験抵抗器を通じて流れる電流が増大され、それにより、チェーン内のそれぞれのセンサユニットの位置の検出可能性が更に向上する。
【0026】
本発明の好ましい外延によれば、以下のステップ、すなわち、
上限電圧より少なくとも1V大きく且つアイドル電圧の少なくとも50%、好ましくはアイドル電圧の少なくとも90%の値を有するアドレス割り当て電圧をバス電圧として印加するステップが提供される。本発明のこの好ましい外延によれば、試験抵抗器を通じて流れる電流を可能な限り容易に検出できるように、アドレス割り当て電圧が可能な限り高く選択される。
【0027】
この目的のため、以下のステップ、すなわち、
少なくとも一時的にアイドル電圧に対応するアドレス割り当て電圧をバス電圧として印加するステップ
を提供できることも好ましい。したがって、ここでは、システムが動作するアドレス割り当て電圧としての電圧は、少なくとも一時的に、エネルギー供給段階でセンサユニットに電気エネルギーを供給するためにバス電圧として印加される電圧に正確に対応する。
【0028】
以下のステップ、すなわち、
少なくとも一時的に25Vに等しいアドレス割り当て電圧をバス電圧として印加するステップ、
も提供されることが特に好ましい。したがって、ここでは、アイドル電圧として最大許容電圧が実際にバス電圧として印加されるかどうかに関係なく、システムがどんな場合でもアドレス割り当て電圧としての最大許容電圧で動作することが当てはまる。
【0029】
好ましくは、ステップd)に関して、このステップの最初の繰り返し以降、
d)その電気試験負荷が未だ恒久的にOFFに切り換えられてしまっていない全てのセンサユニットにおける2線式バスケーブルから電気試験負荷を切断し、その後、これらのセンサユニットがそれぞれ試験電流を引き込むように、その試験負荷が2線式バスケーブルから未だ恒久的に切断されてしまっていない全ての他のセンサユニットの2線式バスケーブルに電気試験負荷を再接続して、これらのセンサユニットの試験抵抗器のそれぞれを通じて流れる電流を検出する、
ことが適用される。
【0030】
本発明のこの好ましい外延によれば、試験負荷は、サイクルの終わりに及び次のサイクルのために2線式バスケーブルから完全に切断され、その後、再びONに切り換えられる。ここで、少なくとも2つの段階にわたって徐々にステップc)及びd)においてセンサユニットの電気試験負荷が2線式バスケーブルに接続され、それにより、最初の段階で試験負荷の一部のみがアクティブにされ、その後の段階又は次の段階のそれぞれで試験負荷が徐々に増大されることが好ましい。前の段階でそれぞれのセンサユニットの試験抵抗器を通じて流れる所定の閾値を超えた電流が検出されれば、センサユニットにおける試験負荷の更なる増大が任意のその後の段階で行なわれないことが特に好ましい。このようにすると、より低い電流の流れに起因してこのセンサユニットがチェーン内の最後のセンサユニットではないことが既に確実に検出されてしまっているため、中央ユニットの過負荷を回避できる。
【0031】
アドレス割り当ては基本的に自由であり、また、それぞれのセンサユニットの一意的な識別を保証する任意のアドレスを割り当てることができる。しかしながら、好ましくは、最初のアドレスが1であり、いずれの場合にもアドレスは常に1ずつ増大される。これにより、センサユニットの数がNである場合、アドレス1、2、...Nになる。
【0032】
通常のディスカバリーモードと同様に、センサユニットに対するアドレス割り当ては、2Vの値を有するVLOW PWRなどの所定の電圧値と24μsなどの所定の持続時間とを伴う電圧信号によって中央ユニットにより開始されることが好ましい。その後、通常のディスカバリーモードと同様に、
チェーン内のそれぞれの最後のセンサユニットが検出される個々のサイクルの開始前に、発生する可能性のある充電電流のアドレス割り当てに対する影響を回避するために遅延時間が与えられることが好ましい。
【0033】
本発明の好ましい外延によれば、センサユニットは、超音波信号を送信及び/又は受信するための超音波センサユニットである。
【0034】
また、本発明は、前述の自動車両における方法の使用、及び、プロセッサで実行されるときに前述の方法を実施するコマンドが記憶された不揮発性のコンピュータ可読記憶媒体に関する。また、本発明は、前述の方法によって動作するように構成されるセンサ装置にも関連する。最後に、本発明は、そのようなセンサ装置を有する自動車両にも関連する。
【0035】
以下、好ましい典型的な実施形態に基づき、図面を参照して、本発明を更に詳しく説明する。記載される特徴は、個別に及び組み合わせて本発明の態様を表わすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る自動車両における中央ユニット及び複数のセンサユニットを伴うセンサ装置の概略図である。
図2】本発明の好ましい典型的な実施形態に係るセンサ装置のセンサユニットに対するアドレス割り当てのプロセスの概略図である。
図3】本発明の他の好ましい典型的な実施形態に係るセンサ装置のセンサユニットに対するアドレス割り当てのプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明の好ましい典型的な実施形態に係るセンサ装置2を有する車両1の概略図を示す。センサ装置2は、中央ユニットZと、N個のセンサユニットS,S,...,Sとを有する。中央ユニットZ及びセンサユニットS,S,...,Sは、2線式ケーブル4によって互いに接続される更に、センサユニットS,S,...,Sが中央ユニットZと直列を成して、すなわち、いわゆるデイジーチェーン形態で互いに接続されることも依然として当てはまる。
【0038】
前述のDSI3仕様の意味において、中央ユニットZは、DSI3の意味でスレーブとしての機能を果たすセンサユニットS,S,...,Sに2線式バスケーブル4を介して接続されるマスターに相当し、その結果、全体としてDSI3仕様の意味でのバスが存在する。更に、この場合、センサユニットS,S,...,Sは、比較的高いエネルギー消費量を有するアクチュエータを伴うセンサユニットであり、それにより、このセンサ装置2の動作は前述の電力機能クラスの分類に入る。したがって、既に前述したように、電力機能クラスのこのセンサ装置2の動作では、一方ではエネルギー供給段階が、他方では通信段階が交互に行なわれる。
【0039】
通信段階では、中央ユニットZとセンサユニットS,S,...,Sとの間で、それぞれのバス電圧としての2Vの下限電圧VLOW-PWRと4Vの上限電圧VHIGH-PWRとによって情報が転送され、一方、エネルギー供給段階では、中央ユニットZによってセンサユニットS,S,...,Sに電気エネルギーが供給される。これらのエネルギー供給段階において、印加されるバス電圧UBusは、上限電圧VHIGH-PWRよりも少なくとも1V高いアイドル電圧VIDLEである。この場合、バスは、25V又はそれよりもわずかに低い最大許容電圧であるアイドル電圧で動作する。
【0040】
しかしながら、通信段階が開始され得る前に、アドレスがセンサユニットS,S,...,Sに割り当てられなければならない。これを行なうために、センサユニットS,S,...,Sはそれぞれ、各アドレスを記憶できるアドレスカウンタA,A,...,Aを有する。本発明の第1の典型的な実施形態によれば、以下が提供される。
【0041】
図1の図面及び中央ユニットZに係る、本発明の第1の典型的な実施形態に係るセンサ装置2は、N=5の数のセンサユニットS,S,...,Sを有し、センサユニットは、それぞれが2線式バスケーブル4と直列に接続される試験抵抗器RS1,RS2,...,RSNを伴い、それぞれが2線式バスケーブル4に接続され得る試験負荷L,L ,....,Lを有するとともに、それぞれが前述のアドレスカウンタA,A,...,Aを伴う。アドレス割り当てのための手順が図2に概略的に示される。
【0042】
図2は、いずれの場合にも時間tの関数として、最も上側の曲線で、バス電圧UBusのプロファイルを示し、それよりも下側で、試験抵抗器RS1,RS2,...,RSNを流れるそれぞれの電流IR1,IR2,IR3,IR4,IR5を示す。アドレスを割り当てるための手順、すなわち、アドレス割り当て段階IPは、開始コマンドSKによって開始され、その間、バス電圧が24μsの期間にわたって4Vから2Vに減少する。この後、時間遅延Vが続き、その後、個々のサイクルY,Y,Y,Y,Yを伴い、これらのサイクルでは、センサユニットが、それらのチェーンにおけるそれらの相対位置をチェックして、潜在的に生じる充電電流のアドレス割り当てに対する影響を回避する。つまり、時間遅延Vの間、バス電圧UBusは、約25Vのアドレス割り当て電圧又は約25Vまで既に増大されるが、試験負荷L,L,...,Lは未だ2線式バスケーブル4に接続されない。
【0043】
この後、アドレス割り当て段階IPの最初のサイクルYが続き、このサイクルでは、全てのセンサユニットS,S,...,Sがそれらの試験負荷L,L,...,Lを2線式バスケーブル4に接続する。いずれの場合にもそれぞれのセンサユニットS,S,...,SN-1の背後でセンサユニットS,S,...,Sのチェーン内に位置される試験負荷L,L,...,Lに基づいて、電流IR1,IR2,...,IRN-1は、センサユニットS,S,...,Sが多くなればなるほど大きくなる試験抵抗器RS1,RS2,...,RSN-1をそれぞれ通じて流れ、試験抵抗器RS1,RS2,...,RSN-1は依然としてそれぞれのセンサユニットS,S,...,SN-1の背後に配置される。センサユニットS,S,...,Sのチェーン内の最後のセンサユニットSの試験抵抗器RSNのみがそれを通じて流れる電流を有さず、これは、この最後のセンサユニットSの背後に試験負荷を伴う更なるセンサユニットが存在しないという事実に起因し、それにより、電流が引き込まれない。
【0044】
この最後のセンサユニットSは、アドレス1を受けて、後続のアドレス割り当て手順にそれ以上関与しない。他の全てのセンサユニットS,S,...,SN-1はそれらのアドレスを1だけ増大する。特に、アドレス1を伴うセンサユニットSの試験負荷は、次のサイクルに関して2線式バスケーブル4から恒久的に切断され、それにより、この点において、センサユニットSN-1は、アドレス1を伴うセンサユニットSの直前に配置されるチェーン内の「最後の」センサユニットになる。この手順は、全てのセンサユニットにアドレスが割り当てられるまで繰り返され、したがって、このときセンサユニットSがチェーン内の「最後の」センサユニットになるため、電流IR1もゼロに等しくなる。その後、通信段階及びエネルギー供給段階が始まり得る。
【0045】
前述の本発明の好ましい典型的な実施形態において、総試験負荷L,L,...,Lは、いずれの場合にも常に直接にアクティブにされ、したがって、これらの試験負荷L,L,...,Lの結果として直ちに総最大電流が常に流れてしまっている。しかしながら、これにより、中央ユニットZが過負荷になる可能性がある。これを回避するために、本発明の他の好ましい典型的な実施形態によれば、センサユニットS及びSに関する一例として図3に示されるように、それぞれのサイクルY,Y,,Yにおいて、センサユニットS,S,...,SN-1の電気試験負荷L,L,...,Lは、この場合には全体として最大で4つの段階を伴って段階的に2線式バスケーブル4に接続され、それにより、最初の段階では、試験負荷L,L,...,LN,,L,...,Lの一部のみがアクティブにされ、つまり、最大試験負荷L,L,...,Lの4分の1及びその後の後続の段階では試験負荷L,L,...,Lがそれぞれ徐々に、すなわち、試験負荷L,L,...,Lの2/4、3/4まで、最終的には試験負荷L,L,...,L全体まで増大される。センサユニットS,S,...,SN-1では、前の段階でそれぞれのセンサユニットS,S,...,SN-1の試験抵抗器RS1,RS2,...,RSN-1を通じて流れる所定の閾値Iを超えた電流IR1,IR2,...,IRN-1が検出されれば、試験負荷L,L,...,LN-1の更なる増大がその後の段階で行なわれない。この場合、閾値Iは、単一の試験負荷によってもたらされる電流の60%に等しい。
【0046】
図3では、いずれの場合にも時間tの関数として、バス電圧UBusが最も上側に示されており、その下側には、試験負荷Lに基づく電流IL4、センサユニットS内の試験抵抗器Rを通る電流IR4、試験負荷Lに基づく電流IL5、及び、センサユニットS内の試験抵抗器Rを通る電流IR5が示される。センサユニットSに関しては、センサユニットSがチェーンにおける最後のセンサユニットであるため、試験抵抗器Rを通る電流IR5が検出されなかった。センサユニットSに関しては、最大可能電流の60%の閾値Iを第3の段階で既に超えてしまっているため、第4の段階では試験負荷Lの更なる増大が起こらない。センサユニットSは、単に閾値Iを超える十分に高い電流IR4に起因して、それがチェーン内の最後のセンサユニットでないことを「知っている」。
【符号の説明】
【0047】
1 自動車両
2 センサ装置
4 バスケーブル
R1,IR2,...,IR5 試験抵抗器を流れる電流
試験抵抗器を流れる電流に関する閾値
IP アドレス割り当て段階
,L,...,L 試験負荷
S1,RS2,...,RSN 試験抵抗器
,S,...,S センサユニット
SK 開始コマンド
Bus バス電圧
V 時間遅延
HIGH-PWR 上限電圧
LOW-PWR 下限電圧
IDLE アイドル電圧
,Y,...,Y アドレス割り当て段階のサイクル
Z 中央ユニット
図1
図2
図3