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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】自動車用電動流体ポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 29/08 20060101AFI20220606BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20220606BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20220606BHJP
   F04D 13/06 20060101ALI20220606BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20220606BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20220606BHJP
   F04B 17/03 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
H02K29/08
H02K7/14 B
F04C15/00 L
F04D13/06 Z
F04D29/00 B
H02K11/215
F04B17/03
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020522978
(86)(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2017077309
(87)【国際公開番号】W WO2019081011
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】518346007
【氏名又は名称】ピエルブルグ ポンプ テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PIERBURG PUMP TECHNOLOGY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】マルバシ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】バーガー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】グロガサ,マーチン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシコ,ヴィトルド
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033239(WO,A1)
【文献】特開2016-052199(JP,A)
【文献】特開2015-091139(JP,A)
【文献】特開2012-205355(JP,A)
【文献】特開2015-012782(JP,A)
【文献】特開2001-128417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 29/00-29/14
H02K 11/215
H02K 7/14
F04C 15/00
F04D 13/06
F04D 29/00
F04B 17/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子整流式ブラシレス電気駆動モータ(12)を含む自動車用電動流体ポンプ(10)であって、前記駆動モータ(12)は、
モータシャフト(32)と、それぞれに1つの永久磁石(36、36、36、36)が埋め込まれている少なくとも2つの回転子ポール(38、38、38、38)と、を有する永久磁石モータ回転子(30)と、
複数の固定子側磁気コイル(40)と、
少なくとも2つのセンサ磁石(36、36、36、36)と、
前記センサ磁石(36~36)の軸方向磁界を検出するように、横断面に偏心して平らに置かれるように配置された少なくとも1つのホールセンサ(60)であって、前記少なくとも2つのセンサ磁石(36~36)が直径方向に磁化されることを特徴とし、前記少なくとも1つのホールセンサ(60)は、各センサ磁石(36 ~36 )の両極性が回転子の1回転の間に検出され得るように配置されている、前記少なくとも1つのホールセンサ(60)と、
を含む、
自動車用電動流体ポンプ(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのホールセンサ(60)は、前記モータシャフト(32)の回転軸(33)から半径rの場所に配置され、前記半径rは、前記回転軸(33)からセンサ磁石(36~36)の中心までの距離rmin以上であり、前記回転軸(33)から、前記センサ磁石(36~36)中の、前記回転軸(33)からの距離が最大になる点までの距離rmax以下であることを特徴とする、請求項1に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
【請求項3】
前記少なくとも2つのセンサ磁石が、前記回転子ポール(38~38)に埋め込まれた前記永久磁石(36~36)で形成されていることを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
【請求項4】
前記少なくとも2つのセンサ磁石が、前記回転子ポール(38~38)にマウントされた永久磁石で形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
【請求項5】
前記センサ磁石(36~36)は平行六面体形状であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
【請求項6】
横断面に平らに置かれたプリント回路基板(50)が設けられており、前記プリント回路基板(50)の上に前記少なくとも1つのホールセンサ(60)が配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのホールセンサ(60)は、前記プリント回路基板(50)の、前記軸方向に前記モータ回転子(30)に向けられた近位面に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
【請求項8】
前記プリント回路基板(50)は、モータシャフト(32)が突き抜けるモータシャフト開口部(56)を有することを特徴とする、請求項6又は7に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
【請求項9】
前記プリント回路基板(50)がプラスチックキャストボディ(55)内にキャストされていることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子整流式ブラシレス電気駆動モータを有する自動車用電動流体ポンプに関し、駆動モータは、モータシャフトを有し、少なくとも2つの回転子ポールを有し、各回転子ポールに永久磁石が埋め込まれた永久磁石モータ回転子と、複数の固定子側磁気コイルと、少なくとも2つのセンサ磁石と、センサ磁石の軸方向の磁界を検出するように、横断面に偏心して平らに置かれるように配置された少なくとも1つのホールセンサと、を有する。
【背景技術】
【0002】
電子整流式駆動モータで駆動される自動車用流体ポンプを最大限の安全性及びエネルギ効率で動作させる為には、モータ回転子の回転子回転位置を正確に検出することが非常に重要であり、これは、そうすることによってのみ、駆動モータの正確な制御及び調整が達成可能だからである。これにより、一方では、望ましくない動作状態、例えば、始動の問題、いわゆるトグリング等を防ぐことが可能であり、これらは特に、容積式流体ポンプにおいて、トルクの変動が大きい為に起こりうる。又、一方では、固定子側磁気コイル中の電流の反転を正確に終了させることによって、エネルギの絶対消費量が最小限に抑えられる。
【0003】
こうした理由から、回転子位置の正確な検出にホールセンサが使用されており、これらのホールセンサは、永久磁石で励起されるモータ回転子に対して軸方向に(例えば、回転子ポールの半径上に)配列されて、回転子ポールによって発生する回転磁界を検出する。ホールセンサによる回転子位置検出の正確さの決め手は、各ホールセンサで検出される回転子ポールの磁界の絶対磁界強度、並びに干渉信号の大きさである。
【0004】
欧州特許第1146625(A2)号によれば、自動車用電動油圧ポンプが、複数の回転子ポールを有する永久磁石モータ回転子を有する電子整流式ブラシレス駆動モータを含む。位置検出は、端面上の複数のホールセンサで行われ、これらは、永久磁石モータ回転子によって発生する永久磁界を半径方向に検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、製造コストを抑えながら高い動作信頼度及びエネルギ効率を実現する電子整流式駆動モータを有する自動車用流体ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明に従って、少なくとも1つのホールセンサが、回転子の1回転の間に各センサによって両極性(N、S)が検出されることが可能なように配置されて、少なくとも2つのセンサ磁石を直径方向に磁化することによって達成される。
【0007】
本発明の自動車用流体ポンプは電気整流式ブラシレス電気駆動モータを含み、永久磁石で励起されるモータ回転子が複数の回転子ポールを含み、複数の固定子側磁気コイルが設けられる。回転子位置検出の為に少なくとも1つのホールセンサが設けられ、これらのホールセンサは、モータの軸線に対する横断面に配置される。少なくとも1つのホールセンサは、回転するセンサ磁石の軸方向磁界を検知するように、モータの軸線から距離を置いて配置される。センサ磁石ごとに少なくとも1つのホールセンサを特定配置することにより、1つのホールセンサで、1つのスイッチング状態の代わりに3つのスイッチング状態を検知することが可能であり、これによって、回転子位置検出の分解能が大幅に向上する。
【0008】
好ましくは、少なくとも1つのホールセンサは、モータシャフトの回転軸から半径r以内の場所に配置され、半径rは、回転軸からセンサ磁石の中心までの距離rmin以上であり、回転軸から、センサ磁石中の、回転軸からの距離が最大になる点までの距離rmax以下である。このように、少なくとも1つのホールセンサは、1回転の間に各センサ磁石が両極性(N、S)を検出するように配置される。
【0009】
好ましい一実施形態によれば、少なくとも2つのセンサ磁石は、回転子ポールに埋め込まれた永久磁石で形成される。それによって、回転子位置検出の為の要素の追加が不要になる。
【0010】
代替として、少なくとも2つのセンサ磁石は、回転子ポールに固定された永久磁石で形成される。それによって、ホールセンサで検出可能な磁界の増幅が可能になり、それによって、信号対ノイズ比が改善される。従って、モータ回転子の回転子ポールに埋め込まれた永久磁石に加えて、センサ磁石として使用する永久磁石が追加される。
【0011】
好ましい一実施形態では、センサ磁石は平行六面体形状である。
【0012】
好ましくは、横断面に平らに置かれたプリント回路基板が設けられ、その上に全てのホールセンサが配置される。更に、プリント回路基板は、モータ制御の制御用電子回路及び電力用電子回路の両方を収容してもよい。従って、ホールセンサは、制御用電子回路及び電力用電子回路を有する回路基板から距離を置いては配置されない。その為、ホールセンサと制御用電子回路との間の信号経路は短い。
【0013】
好ましい一実施形態では、ホールセンサは、プリント回路基板の、モータ回転子に向けられた近位面に設けられる。従って、ホールセンサは、プリント回路基板とモータ回転子との間に軸方向に配置される。即ち、空間的に最小限の距離で配置される。
【0014】
プリント回路基板は、モータ回転子のモータシャフトが突き抜けるモータシャフト開口部を含んでよい。
【0015】
プリント回路基板は、プラスチックキャストボディ内にキャストされることが好ましい。それによって、全てのホールセンサ及び電子部品を含むプリント回路基板が、機械的干渉及び他の干渉から良好に保護される。プリント回路基板をキャストすることには更に利点がある。即ち、そうすることによって、電子部品の冷却、特に電力用の電子回路又は半導体の冷却が全般的に改善される。ホールセンサと回転子ポールとの間の磁気的接続が強化されることによって制御精度が更に向上し、それによって、駆動モータに供給される電気エネルギが低減される為、熱電力損失も低減され、特に電力用半導体の熱電力損失が低減される。
【0016】
以下では、添付図面を参照しながら、2つの実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電気駆動モータ及びポンプモジュールを有する自動車用電動流体ポンプの概略図である。
図2図1の自動車用流体ポンプの駆動モータの長手方向断面を示す図である。
図3図1の自動車用流体ポンプの駆動モータの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、自動車用電動流体ポンプ10を概略的に示しており、これは、2つのモジュール、即ち、電気駆動モータ12及びポンプモジュール14で形成されている。ポンプモジュール14は、容積式ポンプ(例えば、メンブレンポンプ)、回転ベーンポンプ、ベーンポンプ、又はピストンポンプであってよいが、フローポンプ(例えば、遠心ポンプ又はインペラポンプ)であってもよい。
【0019】
図2は、駆動モータ12の長手方向の断面を示す。駆動モータ12は、電子整流式ブラシレス駆動モータである。駆動モータ12は、永久磁石で励起されるモータ回転子30を含み、モータ回転子30は4つの回転子ポール38、38、38、38を有し、これらのそれぞれに、直径方向に磁化可能な永久磁石36、36、36、36が埋め込まれている。
【0020】
固定子側には6つの磁気コイル40~40が設けられており、これらは、円周方向に延びる固定子磁界を発生させる。6つの磁気コイル40~40は、ハウジングカップ22及びハウジングカバー24で形成されたモータハウジング20に固定されている。モータ回転子30は、回転軸33を有するモータシャフト32を含み、これはポンプモジュール14のポンプシャフトを駆動する。
【0021】
ポンプモジュール14の反対側の長手方向端部に、横断面に平らに置かれたプリント回路基板50が設けられており、これは、回路基板本体52の近位面に導体経路54を有する。回路基板本体52の近位面は、軸方向にモータ回転子30に向けられた面であり、一方、軸方向にモータ回転子30と反対側の面が遠位面である。プリント回路基板50は、モータシャフト32が突き抜けるモータシャフト開口部56を有する。回路基板本体52の近位面には、モータ制御の制御用電子回路及び電力用電子回路の両方が配置されている。更に、ホールセンサ60が回路基板本体の近位面に配置されている。ホールセンサ60は、回転子ポール38~38に埋め込まれた永久磁石36~36で形成されているセンサ磁石によって発生する磁界を検出する。図3の説明の中で、ホールセンサ60の位置の導出が示される。
【0022】
プリント回路基板50の電力用電子回路は、導体経路54及び軸方向接続線66を介して磁気コイル40に電気的に接続されている。プリント回路基板50は、ホールセンサ60が、モータ回転子30の軸方向に反対側の端面から最小限の距離にあるように、軸方向に配置されている。
【0023】
制御用電子回路、電力用電子回路、及びホールセンサ60、並びに接続線66を含むプリント回路基板50全体が、モノリシックプラスチックキャストボディ55内にキャストされている。回路基板50の導体経路54は、接続線を介してモータプラグ68に接続されている。
【0024】
図3は、自動車用流体ポンプ10の駆動モータ12の、横断方向の断面を示す。説明済みの構成要素は、同じ参照符号で示されている。この断面図では、ホールセンサ60は見えないが、本発明を明確化する為に、ホールセンサ60の位置をその参照符号で示している。ここでは、ホールセンサ60は、モータシャフト32の回転軸33から半径rの場所に配置されている。ホールセンサ60の位置は、半径rで描かれる円がセンサ磁石36~36の断面中心の領域のそれぞれの外向き極性領域37、37、37、37を通過するように選択されている。この配置により、ホールセンサ60は、モータ回転子30の1回転の間に各センサ磁石36~36の両極性(N、S)を検出することが可能であり、従って、センサ磁石36~36ごとに3つのスイッチング状態を検出することが可能である。
〔付記1〕
電子整流式ブラシレス電気駆動モータ(12)を含む自動車用電動流体ポンプ(10)であって、前記駆動モータ(12)は、
モータシャフト(32)と、それぞれに1つの永久磁石(36 、36 、36 、36 )が埋め込まれている少なくとも2つの回転子ポール(38 、38 、38 、38 )と、を有する永久磁石モータ回転子(30)と、
複数の固定子側磁気コイル(40)と、
少なくとも2つのセンサ磁石(36 、36 、36 、36 )と、
前記センサ磁石(36 ~36 )の軸方向磁界を検出するように、横断面に偏心して平らに置かれるように配置された少なくとも1つのホールセンサ(60)であって、前記少なくとも2つのセンサ磁石(36 ~36 )が直径方向に磁化されることを特徴とし、前記少なくとも1つのホールセンサ(60)は、回転子の1回転の間に各センサ磁石(36 ~36 )が両極性を検出することが可能なように配置されている、前記少なくとも1つのホールセンサ(60)と、
を含む、
自動車用電動流体ポンプ(10)。
〔付記2〕
前記少なくとも1つのホールセンサ(60)は、前記モータシャフト(32)の回転軸(33)から半径rの場所に配置され、前記半径rは、前記回転軸(33)からセンサ磁石(36 ~36 )の中心までの距離r min 以上であり、前記回転軸(33)から、前記センサ磁石(36 ~36 )中の、前記回転軸(33)からの距離が最大になる点までの距離r max 以下であることを特徴とする、付記1に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
〔付記3〕
前記少なくとも2つのセンサ磁石が、前記回転子ポール(38 ~38 )に埋め込まれた前記永久磁石(36 ~36 )で形成されていることを特徴とする、付記1~2のいずれか一項に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
〔付記4〕
前記少なくとも2つのセンサ磁石が、前記回転子ポール(38 ~38 )にマウントされた永久磁石で形成されていることを特徴とする、付記1又は2に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
〔付記5〕
前記センサ磁石(36 ~36 )は平行六面体形状であることを特徴とする、付記1~4のいずれか一項に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
〔付記6〕
横断面に平らに置かれたプリント回路基板(50)が設けられており、前記プリント回路基板(50)の上に前記少なくとも1つのホールセンサ(60)が配置されていることを特徴とする、付記1~5のいずれか一項に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
〔付記7〕
前記少なくとも1つのホールセンサ(60)は、前記プリント回路基板(50)の、前記軸方向に前記モータ回転子(30)に向けられた近位面に配置されていることを特徴とする、付記6に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
〔付記8〕
前記プリント回路基板(50)は、モータシャフト(32)が突き抜けるモータシャフト開口部(56)を有することを特徴とする、付記6又は7に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
〔付記9〕
前記プリント回路基板(50)がプラスチックキャストボディ(55)内にキャストされていることを特徴とする、付記6~8のいずれか一項に記載の自動車用電動流体ポンプ(10)。
図1
図2
図3