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特許7083906ポリオール組成物及びポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】ポリオール組成物及びポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20220606BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220606BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20220606BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20220606BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20220606BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20220606BHJP
【FI】
C08G18/32 028
C08G18/00 F
C08G18/40 054
C08G18/50 021
C08G18/64 015
C08G101:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020538393
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032382
(87)【国際公開番号】W WO2020040117
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2018155436
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104813
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 信也
(72)【発明者】
【氏名】河野 正一郎
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表平02-500109(JP,A)
【文献】特開2015-110739(JP,A)
【文献】特開平03-160016(JP,A)
【文献】特開平01-249748(JP,A)
【文献】特開平11-035791(JP,A)
【文献】特開昭57-212235(JP,A)
【文献】特開昭53-027693(JP,A)
【文献】特開平03-285906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 75/00- 75/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2個の1級アミノ基と1個以上のポリアルキレンオキシ鎖(a)を有する化合物(A)とポリイソシアネート(B)とを必須原料として前記化合物(A)が有する1級アミノ基と前記(B)が有するイソシアネート基とが反応して得られるウレア基を有する反応生成物(C)を含有し、ポリアルキレンオキシ鎖(a)が炭素数2~4のアルキレンオキシド1~100モル付加鎖である、ポリウレタンフォーム原料用ポリオール組成物であって、前記化合物(A)が下記一般式(1)で示される1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A1)である、ポリオール組成物
【化1】
[一般式(1)中、R とR とR はそれぞれ独立に炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であって、R とR は、それぞれ、複数あるときは互いに同一でも異なってもよい。n は1~5の整数であり、n は0~5の整数である。AOは炭素数が2~4のアルキレンオキシ基を表し、mはn 個ある各窒素原子にそれぞれ付加したアルキレンオキシドの付加モル数を表し、n 個あるmはそれぞれ独立に1~100の数である。]
【請求項2】
ウレア基の含有量が0.01~2.0mmol/gである請求項に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
一般式(1)中のn個あるmはそれぞれ独立に1~50である請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
一般式(1)中のRとRがエチレン基である請求項1~3いずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項5】
一般式(1)中のnが1~3の整数である請求項1~4いずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項6】
さらにウレア基を有しないポリオール(E)を含有する請求項1~いずれかに記載のポリオール組成物。
【請求項7】
ウレア基を有しないポリオール(E)の水酸基価が20~2,000mgKOH/gである請求項に記載のポリオール組成物。
【請求項8】
請求項1~いずれかに記載のポリオール組成物を含むポリオール成分(G)とポリイソシアネート成分(H)を反応させてなるポリウレタンフォーム(F)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール組成物及びこれとポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタンフォームに関する。さらに詳しくは、分散安定性の高いポリウレア樹脂を含むポリオール組成物、及び難燃性に優れたポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームの樹脂強度を上げるポリオールとして、ポリオール中に各種樹脂を含有したポリマーポリオールが知られている。これらのポリマーポリオールに含有される樹脂としては、スチレン/アクリロニトリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂が知られている(非特許文献1)。これらのうち、ウレタン樹脂を含むものとしてはポリイソシアネート重付加ポリオール(PIPAポリオール)が挙げられ、ウレア樹脂を含むものとしては尿素分散ポリオール(PHDポリオール)が挙げられる。
【0003】
ポリウレタンフォームは建材、自動車のエンジンルーム、鉄道車両、飛行機等の用途では機械強度以外に厳しい難燃性も要求される。しかしながら、これらのポリマーポリオールのうち、スチレン/アクリロニトリル樹脂を含むものは、スチレン/アクリロニトリル樹脂のポリオール中での沈降安定性は良好であるものの、難燃性は期待できない。一方、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレア樹脂を含むものは、ウレタンフォームの難燃性の向上が期待できるが、ポリオール中での各樹脂の沈降安定性に問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】CHEMISTRY AND TECHNOLOGY OF POLYOLS FOR POLYURETHANES、第1巻、第2版、(2016年出版)、197~253頁、著者Mihail Ionescu、出版社Smithers Rapra Technology
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリイソシアネートと反応させて得られるポリウレタンフォームが優れた難燃性と強度物性を示すポリオール組成物を提供することを目的とする。さらに、含有するポリウレア樹脂の分散安定性が非常に良好で、製造時のみならず経時的にも外観が均一なままで、含有する樹脂が析出したり凝集したり沈降して分離する、ということがない、ポリオール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、分子内に2個の1級アミノ基と1個以上のポリアルキレンオキシ鎖(a)を有する化合物(A)とポリイソシアネート(B)とを必須原料として前記化合物(A)が有する1級アミノ基と前記(B)が有するイソシアネート基とが反応して得られるウレア基を有する反応生成物(C)を含有し、ポリアルキレンオキシ鎖(a)が炭素数2~4のアルキレンオキシド1~100モル付加鎖である、ポリウレタンフォーム原料用ポリオール組成物(D);及び、このポリオール組成物(D)を含むポリオール成分(G)とポリイソシアネート成分(H)を反応させてなるポリウレタンフォーム(F)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリオール組成物は、含有するポリウレア樹脂の分散安定性が高く、これをポリオール成分として用いて高強度で、難燃性の高いポリウレタンフォームが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のポリウレタンフォーム原料用ポリオール組成物(D)(単にポリオール組成物(D)ともいう)は、分子内に2個の1級アミノ基と1個以上のポリアルキレンオキシ鎖(a)を有する化合物(A)とポリイソシアネート(B)とを必須原料として(A)が有する1級アミノ基と(B)が有するイソシアネート基とが反応して得られる、ウレア基を有する反応生成物(C)、を含有する。上記ポリアルキレンオキシ鎖(a)は炭素数2~4のアルキレンオキシド1~100モル付加鎖である。
【0009】
上記化合物(A)は、分子内に2個の1級アミノ基と、1個以上のポリアルキレンオキシ鎖(a)を含有する。化合物(A)が1級アミノ基を含まない場合はウレア基が生成せず、1個しか含まない場合はポリイソシアネート(B)との反応生成物の分子量が上がらないため機械物性の向上が少なくなる。一方、1級アミノ基を3個以上含む場合は三次元架橋して反応生成物の分子量が極めて大きくなり、粘度が高くなって、ポリオールとしての取り扱いが困難となる。
【0010】
化合物(A)中に含まれるポリアルキレンオキシ鎖(a)は、炭素数が2~4のアルキレンオキシドの付加反応に由来するもの(すなわち付加鎖)である。炭素数2~4のアルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドからなる群より選ばれる1種以上が挙げられ、好ましいのはエチレンオキシド、プロピレンオキシドである。これらは単独であっても2種以上の混合であってもよい。
【0011】
上記化合物(A)としては、下記一般式(1)で示される1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A1)が好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
一般式(1)中、RとRとRはそれぞれ独立に炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であって、Rが複数あるときは互いに同一でも異なってもよく、Rが複数あるときは互いに同一でも異なってもよい。nは1~5の整数であり、nは0~5の整数である。AOは炭素数が2~4のアルキレンオキシ基を表し、mはn個ある各窒素原子に付加したアルキレンオキシドの付加モル数を表し、n個あるmはそれぞれ独立に1~100の数である。
【0014】
とRとRとしては、それぞれ、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられ、好ましいのはエチレン基である。
【0015】
は1~5の整数であり、好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1又は2である。nは0~5の整数であり、好ましくは0~3の整数であり、さらに好ましくは0である。
【0016】
1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A1)は、ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる。ポリアミン化合物としては、例えば、ジアルキレンテトラミン、トリアルキレンテトラミン、テトラアルキルペンタミンがあげられ、具体例としては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン(ノルスペルミジン)、ジブチレントリアミン(スペルミジン)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリブチレンテトラミン(スペルミン)などが挙げられ、好ましくはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンであり、特に好ましくはジエチレントリアミンである。
【0017】
一般式(1)中のAOにおける炭素数が2~4のアルキレンオキシ基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン基及びオキシプロピレン基である。これらは単独であっても2種以上の混合であってもよい。
【0018】
個あるmは、それぞれ独立に1~100の数であり、好ましくは1~50、更に好ましくは1~40である。
【0019】
ポリアミンのアミノ基の活性水素とアルキレンオキシドとの反応は分子内のすべてのアミノ基に対しておこり得る。従って、1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A1)は、末端の1級アミノ基ではなく分子鎖中の2級アミノ基に対してだけ選択的にアルキレンオキシドを反応させるために、1級アミノ基部分をケチミン化してブロックしたケチミン化合物を経由して製造する必要がある。1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A1)の具体的な製造方法については、例えば特開平1-249748号公報に記載された方法が挙げられる。
【0020】
本発明における上記反応生成物(C)は、前記の化合物(A)とポリイソシアネート(B)とを必須原料とし、化合物(A)が有する1級アミノ基とポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基とを反応させて得られるが、このポリイソシアネート(B)としては、イソシアネート基を分子内に2個以上有する化合物であればとくに限定されない。ポリイソシアネート(B)としては、芳香族ポリイソシアネート(B1)、脂肪族ポリイソシアネート(B2)、脂環式ポリイソシアネート(B3)、芳香脂肪族ポリイソシアネート(B4)およびこれらの変性物(B5)が挙げられる。(B)は1種でも、2種以上を併用してもよい。
【0021】
芳香族ポリイソシアネート(B1)としては、炭素数(NCO基中の炭素原子を除く;以下のポリイソシアネートの炭素数も同様)6~16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6~20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物、及びこれらイソシアネートの混合物などが挙げられる。具体例としては、1,3-および/または1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI、またはポリメリックMDI)、TDIとポリメリックMDIの混合物などが挙げられる。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネート(B2)としては、炭素数6~10の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0023】
脂環式ポリイソシアネート(B3)としては、炭素数6~16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(B4)としては、炭素数8~12の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0025】
変性ポリイソシアネート(B5)としては、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシヌアレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDIなどが挙げられる。
【0026】
これらのポリイソシアネート(B)のうち、難燃性の観点からは芳香族ポリイソシアネート(B1)およびその変性物を使用することが好ましい。また、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基含有率は、10~40重量%が好ましい。
【0027】
なお、上記反応生成物(C)自体は、水酸基を少なくとも2個有する。
【0028】
化合物(A)とポリイソシアネート(B)とを必須原料とする反応生成物(C)は、化合物(A)以外に、化合物(A)とポリイソシアネート(B)との反応に悪影響を与えない範囲で、ポリイソシアネート(B)と反応しうる水酸基又はアミノ基を有する化合物を含有しても差し支えなく、このうち、アミノ基を有する化合物としては、例えば、分子内に2個の1級アミノ基を有するがポリアルキレンオキシ鎖(a)を有しない化合物が挙げられ、水酸基を有する化合物としては、例えば、後述するウレア基を有しないポリオール(E)などを挙げることができる。
【0029】
本発明のポリウレタンフォーム原料用ポリオール組成物(D)は、上記化合物(A)とポリイソシアネート(B)とを反応して得られるウレア基を有する反応生成物(C)以外に、さらに、ウレア基を有しないポリオール(E)を含有させることができる。上記化合物(A)とポリイソシアネート(B)をウレア反応させる際にこのポリオール(E)を含有させると、一部のポリオール(E)とポリイソシアネート(B)が反応することでウレア樹脂の分散安定性が更に向上するので好ましい。
【0030】
本発明におけるウレア基を有しないポリオール(E)としては、ウレア基を有しないポリオキシアルキレンポリオール(E1)、ポリエステルポリオール(E2)などのポリオール及びウレア基を含有しないポリマーポリオール(E3)が挙げられる。
【0031】
ポリオキシアルキレンポリオール(E1)としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ショ糖などの多価アルコール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等の多価フェノール;およびそれらの混合物に、アルキレンオキシド(以下、AOと略記することがある。)を付加した化合物である。付加するAOとしては炭素数2~4のものが好ましく、プロピレンオキシド(以下、POと略記することがある)、エチレンオキシド(以下、EOと略記することがある)、ブチレンオキシド等が挙げられ、2種以上用いてもよい。好ましいものはPO単独、EO単独、およびPOとEOの混合である。2種以上併用の際の付加形式はブロック状でもランダム状でもよい。
【0032】
ポリエステルポリオール(E2)としては、多価アルコール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-または1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;前記のポリオキシアルキレンポリオール(E1)(特に2価のポリエーテルポリオール);またはこれらとグリセリン、トリメチロールプロパン等の3価又はそれ以上の多価アルコールとの混合物]と、アジピン酸、セバシン酸などのポリカルボン酸、もしくはそのエステル形成性誘導体〔無水マレイン酸、無水フタル酸など酸無水物、テレフタル酸ジメチルなどの低級アルキル(アルキル基の炭素数:1~4)エステル等〕とのポリエステルポリオール;前記カルボン酸無水物とAOとの縮合反応物;これらの縮合反応物のAO(EO、PO等)付加物;多価アルコールを開始剤としてラクトン(ε-カプロラクトン等)を開環重合させることにより得られるポリラクトンポリオール;多価アルコールとアルキレンカーボネートとの反応で得られるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0033】
また、天然由来のポリエステルポリオールとして、ひまし油、ひまし油誘導体、およびそれらの混合物を含むものもポリエステルポリオール(E2)として挙げられる。
【0034】
ウレア基を含有しないポリマーポリオール(E3)としては、ポリオール中でスチレン/アクリロニトリルを重合したスチレン/アクリロニトリル系ポリマーポリオール、ポリオール中でウレタン反応を行ったPIPAポリオール、ポリオール中でメラミンとホルムアルデヒドを重縮合したメラミンポリオールがあげられる。
【0035】
ウレア基を有しないポリオール(E)の水酸基価(単位:mgKOH/g。以下同じ。)は、20~2,000が好ましい。水酸基価が20未満では、後述の成形品の強度が不十分であり、水酸基価が2,000を超えるとウレタンフォームを発泡するのが困難となる。水酸基価は、好ましくは20~1,500、さらに好ましくは20~1,000である。なお、本発明における水酸基価は、JIS K 0070(1995年版)に規定の方法で測定される。また、ポリオールが2種または3種以上の場合、水酸基価は各ポリオールの水酸基価の重量による相加平均値である。
【0036】
ポリオール組成物(D)中のウレア基の含有量は、(D)の重量に基づいて、0.01~2.0mmol/gであり、好ましくは0.02~1.5mmol/g、さらに好ましくは0.05~1.2mmol/gである。ウレア基含量が0.01mmol/g未満だと、難燃性能や高強度化に対して効果がなく、2.0mmol/gを超えると化合物の粘度が高過ぎたり、ポリオール中への安定的な分散が困難となる。
また、反応生成物(C)中のウレア基の含有量は0.02~6.0mmol/gであり、好ましくは0.05~4.0mmol/g、さらに好ましくは0.1~2.0mmol/gである。
【0037】
本発明のウレア基を含有するポリウレタンフォーム原料用ポリオール組成物(D)は、前記の化合物(A)とポリイソシアネート(B)とが反応して得られるウレア基を有する反応生成物(C)を含有するポリオール組成物である。本発明のポリオール組成物(D)の製造方法としては、分子内に2個の1級アミノ基と1個以上の炭素数2~4のアルキレンオキシド1~100モル付加鎖であるポリアルキレンオキシ鎖(a)とを有する化合物(A)、好ましくは上記1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A1)、とポリイソシアネート(B)とを必須原料として上記化合物(A)が有する1級アミノ基と上記(B)が有するイソシアネート基とを反応させ、ウレア基を有する反応生成物(C)を含有するポリオール組成物を得る工程、を含む製造方法を好ましく挙げることができる。
【0038】
本発明のポリオール組成物(D)を含むポリオール成分(G)とポリイソシアネート成分(H)を反応させてなるポリウレタンフォーム(F)は、例えば、上記のポリオール成分(G)、ポリイソシアネート成分(H)と、必要によりウレタン化触媒(J)、後述の整泡剤(I)、発泡剤(K)とを、容器に入れて、混合し、ウレタン反応により硬化させて得られる。
【0039】
ポリウレタンフォーム(F)を得るためのポリイソシアネート成分(H)としては、前述のポリイソシアネート(B)と同じポリイソシアネートを用いることができる。
【0040】
ポリウレタンフォーム(F)を得るためのポリオール成分(G)としては、ポリオール組成物(D)、および必要に応じて使用されるそれ以外のポリオールを含む。必要に応じて使用されるそれ以外のポリオールとしては、例えば、上述のウレア基を有しないポリオール(E)が挙げられる。
【0041】
ポリオール成分(G)と、ポリイソシアネート成分(H)との割合をイソシアネート指数[(NCO基/OH基の当量比)×100]で表した場合、指数は種々変えることができるが、好ましくは80~140、さらに好ましくは85~120、とくに好ましくは90~115である。
【0042】
また、ポリオール成分(G)とポリイソシアネート成分(H)の反応方法としては、ワンショット法であっても、予め(G)の混合物の一部と(H)を反応させてNCO末端プレポリマーを形成させた後、残りの(G)と反応させるか、あるいは予めポリオール成分(G)と、(H)の一部を反応させてOH末端プレポリマーを形成させた後、残りの(H)と反応させるプレポリマー法であってもよい。
【0043】
ポリオール成分(G)とポリイソシアネート成分(H)とを硬化反応させる際に用いることのできるウレタン化触媒(J)としては、ウレタン化反応を促進する通常のウレタン化触媒はすべて使用でき、例として、トリエチレンジアミン、ビス(N,N-ジメチルアミノ-2-エチル)エーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミンのPO付加物などの3級アミンおよびそのカルボン酸塩;酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、スタナスオクトエート等のカルボン酸金属塩;ジブチルチンジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。
【0044】
ポリオール成分(G)とポリイソシアネート成分(H)とを硬化反応させる際に用いることのできる整泡剤(I)としては通常のポリウレタンフォームの製造に用いられるものはすべて使用できる。具体例として、ジメチルシロキサン系整泡剤[東レ・ダウコーニング(株)製の「SRX-253」、「PRX-607」等]及びポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤[東レ・ダウコーニング(株)製の「SZ-1142」、「SRX-294A」、「SH-193」、「SZ-1720」、「SZ-1675t」、「SF-2936F」、「SZ-1346」、「SF-2962」、「SZ-1327」及びデグサジャパン(株)製「B8715LF2」、「B8738LF2」、「B8737」、「B8742」、「B4900」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製の「L-540」、「L-595」、「L-3601」、「L-3640」、「L-5309」等]が挙げられる。整泡剤の使用量は、機械物性、機械物性の経時変化及びフォームの変色の観点から、ポリオール成分(G)100重量部に対して、0.1~5.0重量部が好ましく、さらに好ましくは0.5~2.0重量部である。
【0045】
ポリオール成分(G)とポリイソシアネート成分(H)とを硬化反応させる際に用いることのできる発泡剤(K)としては、水、水素原子含有ハロゲン化炭化水素、低沸点炭化水素及び液化炭酸ガス等を挙げることができる。これらの2種以上を併用してもよい。発泡剤(K)として水のみを単独で用いる場合の水の使用量は、ポリオール成分(G)100重量部に対して、ポリウレタンフォームの成形性及び機械物性の観点から、1.0~7.0重量部が好ましく、さらに好ましくは2.0~5.5重量部である。他の発泡剤と併用する場合の水の使用量は、ポリオール成分(G)100重量部に対して、フォームの成形性及び機械物性の観点から、1.0~5.5重量部が好ましく、さらに好ましくは2.0~4.0重量部である。
【0046】
水素原子含有ハロゲン化炭化水素としては、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHCFC-123、HCFC-141b、HCFC-22及びHCFC-142b);HFC(ハイドロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHFC-134a、HFC-152a、HFC-356mff、HFC-236ea、HFC-245ca、HFC-245fa及びHFC-365mfc);HFO(ハイドロフルオロオレフィン)タイプのもの(例えばHFO-1233zd(E)、HFO-1336mzz(Z))などが挙げられる。フォームの燃焼性の観点から、これらのうち好ましいものは、HCFC-141b、HFC-134a、HFC-356mff、HFC-236ea、HFC-245ca、HFC-245fa、HFC-365mfc、HFO-1233zd(E)、HFO-1336mzz(Z)及びこれらの2種以上の混合物である。
【0047】
水素原子含有ハロゲン化炭化水素を用いる場合の使用量は、ポリオール成分(G)100重量部に対して、フォームの成形性及び機械物性の観点から、50重量部以下が好ましく、さらに好ましくは5~45重量部である。
【0048】
低沸点炭化水素は、沸点が-5~50℃の炭化水素であり、その具体例としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタン及びこれらの混合物が挙げられる。低沸点炭化水素を用いる場合の使用量は、ポリオール成分(G)100重量部に対して、フォームの成形性及び機械物性の観点から、40重量部以下が好ましく、さらに好ましくは5~30重量部である。
【0049】
液化炭酸ガスを用いる場合の使用量は、ポリオール成分(G)100重量部に対して、フォームの成形性及び機械物性の観点から、30重量部以下が好ましく、さらに好ましくは25重量部以下である。
【0050】
本発明のポリウレタンフォーム(F)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、各種の添加剤(L)を含有させることができる。添加剤としては、脱水剤、滑剤、可塑剤、チクソ性付与剤、充填剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、抗酸化剤、着色剤、難燃剤、防黴剤、抗菌剤、分散剤(沈降防止剤)、消泡剤、無機フィラー、有機フィラー、マイクロバルーン等が挙げられる。各種添加剤の添加量はポリオール成分(G)とポリイソシアネート成分(H)の合計重量に基づいて、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。
【実施例
【0051】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0052】
実施例1
容量2Lの撹拌容器に1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A-1)930.2部を入れ、液温25℃、回転数150rpmで15分間撹拌し、均一に混合した。撹拌容器を冷却して液温を25℃に保ちつつ撹拌しながら、TDI(B-1)[東ソー(株)製「コロネートT-80」]69.8部を30分かけて滴下してウレア化反応を完結させることにより、本発明のポリオール組成物(D-1)1000部を得た。
【0053】
実施例2~7及び比較例1
表1に記載の部数で、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~7のポリオール組成物(D-2)~(D-7)および比較例1のポリオール組成物(D’-1)を得た。
【0054】
比較例2
容量2Lの撹拌容器にポリオール(E-3)800部を入れ、液温25℃、回転数150rpmで15分間撹拌し、均一に混合した。さらに同条件下で、ヒドラジン1水和物48.4部を添加して15分間攪拌し、均一に混合した。次いで、液温40~60℃を保持できるように攪拌容器を冷却しながらコロネートT-80(B-1)169部を30分かけて投入した。次いで液温120℃、回転数150rpm、減圧度30mmHgにて2時間減圧脱水し、比較例2のポリオール組成物(D’-2)1000部を得た。
【0055】
比較例3
容量2Lの撹拌容器にポリオール(E-3)800部を入れ、液温25℃、回転数150rpmで15分間撹拌し、均一に混合した。次いで同条件下で、トリエタノールアミン72.7部と、ウレタン化触媒(J-6)[ジブチル錫、日東化成製「ネオスタンU-100]0.1部を加えて15分間攪拌し、均一に混合した。次いで、回転数を500rpmに上げ、コロネートT-80(B-1)123.7部を10秒かけて投入し、さらに攪拌を120秒継続して、ポリオール組成物(D’-3)1000部を得た。
【0056】
実施例1~7のポリオール組成物(D-1)~(D-7)および比較例1~3のポリオール組成物(D’-1)~(D’-3)のウレア基含量(mmol/g)、水酸基価、25℃での粘度を表1に示した。また、製造直後の25℃での目視による外観と、25℃で30日間保存した後の外観を表1に示した。
【0057】
なお、表1に記載の化合物は以下の通りである。
1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A-1):化学式(1)のRとRがエチレン基であり、n1が1でありnは0であり、mが3であるジエチレントリアミンのPO3モル付加物
1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A-2):サンアミールTAP-10[三洋化成工業(株)製]、化学式(1)のRとRがエチレン基であり、n1が1でありnは0であり、mが10であるジエチレントリアミンのPO10モル付加物
1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A-3):サンアミールTAP-40[三洋化成工業(株)製]、化学式(1)のRとRがエチレン基であり、n1が1でありnは0であり、mが40であるジエチレントリアミンのPO40モル付加物
1級アミノ基含有アルキレンオキシド付加物(A-4):化学式(1)のRとRがエチレン基であり、n1が2でありnは0であり、1つのmが1であり、もう1つのmが0であるトリエチレンテトラミンのPO1モル付加物
1級アミノ基含有化合物(A’-1):ジエチレントリアミン
1級アミノ基含有化合物(A’-2):ヒドラジン1水和物(岸田化学製)
ウレタン化触媒(J-6):ジブチル錫、日東化成製、「ネオスタンU-100」
【0058】
ポリオール(E-1):サンニックスGP-250[三洋化成工業(株)製、グリセリンのPO付加物、水酸基価673]
ポリオール(E-2):サンニックスGP-400[三洋化成工業(株)製、グリセリンのPO付加物、水酸基価400]
ポリオール(E-3):サンニックスFA-725[三洋化成工業(株)製、グリセリンのPO・EO付加物、水酸基価34]
【0059】
ポリイソシアネート(B-1):コロネートT-80[2,4-トルエンジイソシアネート:2,6-トルエンジイソシアネート=8:2混合物。東ソー(株)製、イソシアネート基含有率48重量%]
ポリイソシアネート(B-2):ミリオネートMT[ジフェニルメタンジイソシアネート、東ソー社製、イソシアネート基含有率33.6重量%]
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すとおり、実施例1~7のポリオール組成物はいずれも製造直後も30日後も均一であったが、比較例1の(D’-1)は製造直後でゲル状物が生成して粘度と水酸基が測定できず、ウレタンフォ-ムとしての評価もできなかった。比較例2の(D’-2)は、生成直後は均一だが30日保管後はウレア樹脂の微粒子が沈降して分離した。同様に、比較例3の(D’-3)も生成直後は均一だが30日保管後はウレタン樹脂の微粒子が沈降して分離した。
【0062】
表1で明らかなように、本発明の実施例1~7のすべてのポリオール組成物(D-1)~(D-7)の外観は製造直後だけでなく25℃で製造30日保管後も均一で、ゲル状物の析出や微粒子が沈降することはなかった。一方、ポリアミンのアルキレンオキシド付加物ではなくジエチレントリアミンを用いた比較例1のポリオール組成物(D’-1)の製造直後の外観は不均一でゲル状物が分離していた。また比較例2のいわゆるPHDポリオール(D’-2)は製造30日保管後にはウレア樹脂粒子が沈降して不均一になり、比較例3のいわゆるPIPAポリオール(D’-3)は製造30日保管後にはウレレタン樹脂粒子が沈降して不均一になった。
【0063】
軟質フォーム用の処方でのポリウレタンフォーム(F)の製造
実施例8
実施例1で作成したポリオール組成物(D-1)、実施例3で作成したポリオール組成物(D-3)と、ポリオール(E-3)、ポリオール(E-4)、ポリオール(E-5)、整泡剤(I-1)[ゴールドシュミット社製「TEGOSTAB B8738LF2」]、ウレタン化触媒(J-1)[エアプロダクツジャパン(株)社製「DABCO-33LV」]、ウレタン化触媒(J-2)[東ソー(株)社製「TOYOCAT ET」]、発泡剤としての(K-1)水を表2に記載した量で1Lカップに入れて、ミキサーで3000RPMの回転数で60秒間撹拌して均一に混合した。得られた混合液に、ポリイソシアネート(H-1)を入れ、直ちにミキサーで3000RPMの回転数で10秒間撹拌し、70℃に温度調節した30cm×30cm×10cmの金型の中に入れ、10分間硬化させることで、実施例8のポリウレタンフォーム(F-1)を得た。
【0064】
実施例9~12と比較例4~6
表2記載の部数で、実施例8と同様の操作で、実施例9~12のポリウレタンフォーム(F-2)~(F-5)と比較例4~6のポリウレタンフォーム(F’-1)~(F’-3)を得た。
【0065】
なお、表2に記載の化合物で表1に記載のないものは以下の通りである。
ポリイソシアネ-ト(H-1):コロネート1021[TDI-80(2,4-及び2,6-TDI、2,4-体の比率が80%/粗製MDI=80/20混合物(重量比)、東ソー(株)製イソシアネート基含有率=44.6重量%
ポリイソシアネート(H-2):ミリオネートMR-200[ポリメリックMDI、東ソー製、イソシアネート基含有率31.5%]
ポリオール(E-4):サンニックスSP-750[三洋化成工業(株)製、ソルビトールのPO付加物、水酸基価490]
ポリオール(E-5):サンニックスFA-177[三洋化成工業(株)製、グリセリンのPO・EO付加物、水酸基価25]
ポリオール(E-6):サンニックスKC-900[三洋化成工業(株)製、アクリロニトリル系ポリマーポリオール、ポリマー濃度34重量%、水酸基価22]
整泡剤(I-1):ゴールドシュミット社製「TEGOSTAB B8738LF2」
ウレタン化触媒(J-1):エアプロダクツジャパン(株)社製「DABCO-33LV」(トリエチレンジアミンの33重量%ジプロピレングリコール溶液)
ウレタン化触媒(J-2):東ソー(株)社製「TOYOCAT ET」、(ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルの70重量%ジプロピレングリコール溶液)
発泡剤(K-1):水
難燃剤(L-1):大八化学工業(株)社製[ダイガード880(非ハロゲン系縮合リン酸エステル)]
【0066】
実施例8~12および比較例4~6で作成したポリウレタンフォーム(F-1)~(F-5)、および(F’-1)~(F’-3)について、フォーム密度、25%圧縮硬さ、50%圧縮硬さ、C硬度、難燃性について以下の方法で測定した。その結果を表2に示した。
【0067】
<フォーム密度>
JIS K6400に準拠してフォーム密度(kg/m)を測定した。
<圧縮硬さ>
低密度のポリウレタンフォームに対してはJIS K6400に準拠して25%圧縮硬さと50%圧縮硬さ(N/100cm)、高密度のポリウレタンフォームに対してはJIS K 7312に準拠してC硬度を測定した。
【0068】
<難燃性(燃焼試験)>
低密度のポリウレタンフォームに対しては下記のFMVSS302に準拠して難燃性を評価し、高密度のポリウレタンフォームに対しては下記のUL94V試験法に準拠して難燃性を評価した。
【0069】
(1)FMVSS302燃焼試験法
自動車内装材料の燃焼試験で、米国連邦自動車安全規格として知られている。概略すると、右端より38mmバーナー炎を15秒間接炎させて、右端標線Aから左端標線Bまでの254mm長の燃焼距離を測定した。下記の基準で判定した。
不燃性:試験片に着火しない、又はA標線の手前で自消する
自己消火性:燃焼距離が51mm以下かつ燃焼時間が60秒以内で自消する
合格:燃焼速度が102mm/分以下のもの
不合格:上記を満たさないもの
【0070】
(2)UL94V燃焼試験法
一般に樹脂材料の難燃性の評価に使われるUL94V燃焼試験法(20mm垂直燃焼試験)に準拠して、難燃性を評価した。下記の基準で判定した。
V0:試験片の燃焼距離が125mm未満、燃焼時間が10秒以下、試験片5本の合計燃焼時間が50秒以下、燃焼ドリップが脱脂綿を着火しない
V1:試験片の燃焼距離が125mm未満、燃焼時間が30秒以下、試験片5本の合計燃焼時間が250秒以下、燃焼ドリップが脱脂綿を着火しない
V2:試験片の燃焼距離が125mm未満、燃焼時間が30秒以下、試験片5本の合計燃焼時間が250秒以下、燃焼ドリップが脱脂綿を着火させる
不合格:上記を満たさないもの
【0071】
【表2】
【0072】
表2で明らかなように、本発明のポリオール組成物を使用して軟質フォーム製造処方で製造した実施例8と実施例9の低密度ポリウレタンフォームと実施例10~12の高密度ポリウレタンフォームは圧縮強度が高強度であり、FMVSS302燃焼試験法又はUL-94V燃焼試験法で高い難燃性能を示した。一方、本発明のポリオール組成物(D)は使わずに一般的なアクリロニトリル系ポリマーポリオールを用いた比較例4のポリウレタンフォーム(F’-1)は、難燃性能が不合格であった。同じくいわゆるPHDポリオール(D’-2)を用いた比較例5の(F’-2)といわゆるPIPAポリオール(D’-3)を用いた比較例6の(F’-3)も難燃性能が不合格であった。
【0073】
硬質フォーム用の処方でのポリウレタンフォーム(F)の製造
実施例13
実施例5で作成したポリオール組成物(D-5)と、ポリオール(E-2)、整泡剤(I-2)、ウレタン化触媒(J-3)[エアプロダクツジャパン社製「POLYCAT201」]、ウレタン化触媒(J-4)[東ソー社製、「TOYOCAT DM-70」]、ウレタン化触媒(J-5)[エアプロダクツジャパン社製、「DABCO K-15)]、発泡剤としての水(K-1)と(K-2)[ハネウェル社製、「ソルスティス LDA」]、難燃剤(L-2)(トリス(クロロプロピル)フォスフェート)を表3に記載した量で1Lカップに入れて、ミキサーで3000RPMの回転数で60秒間撹拌して均一に混合した。得られた混合液に、ポリイソシアネート(H-2)を入れ、直ちにミキサーで3000RPMの回転数で10秒間撹拌し、混合液を段ボールで作製した40cm×40cm×20cmの型の中に入れ、発泡させることで実施例13のポリウレタンフォーム(F-6)を得た。
【0074】
実施例14~15
表3記載の部数で、実施例13と同様の操作で、実施例14~15のポリウレタンフォーム(F-7)~(F-8)を得た。
【0075】
なお、表3に記載の化合物でこれまでに記載のないものは以下の通りである。
ウレタン化触媒(J-3):エアプロダクツジャパン社製[POLYCAT201]
ウレタン化触媒(J-4):東ソー製[TOYOCAT DM-70]
ウレタン化触媒(J-5):エアプロダクツジャパン社製[DABCO K-15]
発泡剤(K-2):ハネウェルl社製[ソルスティスLDA(HFO-1233zd(E)]
難燃剤(L-2):大八化学工業(株)社製[TMCPP(トリス(クロロプロピル)フォスフェート)]
【0076】
実施例13~15で作成したポリウレタンフォーム(F-6)~(F-8)について、フォーム密度、硬さ、難燃性について以下の方法で測定した。その結果を表3に示した。
【0077】
<フォーム密度>
JIS K-7222に準拠してフォーム密度(kg/m)を測定した。
<硬さ>
JIS K-7220に準拠して圧縮強さ(N/mm)を測定した。
【0078】
<難燃性(燃焼試験)>
一般に建築材料用の硬質ポリウレタンフォームの難燃性の評価に使われるJIS A 9511 B法に準拠して燃焼距離と燃焼時間を評価した。建築材料用の硬質ポリウレタンフォームとしては、一般に燃焼距離は50mm以下が、また燃焼時間は60秒以下が、必要とされる。
【0079】
【表3】
【0080】
表3で明らかなように、本発明のポリオール組成物を使用して硬質フォーム製造処方で製造した実施例13~15ポリウレタンフォームは圧縮強さが高く、JIS A9511B法の燃焼試験法で優れた難燃性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のポリオール組成物は、ウレア基を有する反応生成物(C)の分散安定性が優れているため、汎用的なウレタンフォームの原料として好適に使用できる。さらに、本発明のポリオール組成物を用いたウレタンフォームは、高強度であり、かつ、難燃性に優れたウレア基を有する反応生成物(C)を高濃度で含有するため、高い難燃性と物性の求められるウレタン樹脂製エンジンカバー、鉄道車両用ウレタンシートクッション、交通車両用ウレタンシートクッション、建材用断熱ウレタンボード、などの用途として特に好適である。