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▶ ハイデルベルク ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】新規アマトキシン-抗体コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20220606BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20220606BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220606BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220606BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220606BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220606BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K38/12 ZNA
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P43/00 105
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021062683
(22)【出願日】2021-04-01
(62)【分割の表示】P 2017547478の分割
【原出願日】2016-03-07
(65)【公開番号】P2021100974
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】15000681.5
(32)【優先日】2015-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505348522
【氏名又は名称】ハイデルベルク ファルマ リサーチ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ヤン アンダール
(72)【発明者】
【氏名】トールシュテン ヘヒラー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス パール
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/043403(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 38/00-38/58
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式のコンジュゲート:
Ama-L-X-S n -Ab
(式中、Amaは、チオエーテルスルホキシド部分がスルフィドによって置換されているアマトキシンであり、Lはリンカーであり、Xはチオール反応性基へのチオール基のカップリングから生じる部分であり、Sはシステインアミノ酸残基の硫黄原子であり、並びに、Abは当該システイン残基を含む抗体配列又は機能的抗体フラグメントであって、ここで、当該システイン残基は、EUナンバリングシステムによる重鎖265Cysであり、ここで、nは、1及び1~4の値から選択される)。
【請求項2】
前記リンカーが、安定なリンカー及び切断可能なリンカーから選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
-L-X-S-が、以下からなる群:-(CH 2 2 -X-S-;-(CH 2 3 -X-S-;-(CH 2 4 -X-S-;-(CH 2 5 -X-S-;-(CH 2 6 -X-S-;-(CH 2 7 -X-S-;-(CH 2 8 -X-S-;-(CH 2 9 -X-S-;-(CH 2 10 -X-S-;-(CH 2 11 -X-S-;-(CH 2 12 -X-S-;-(CH 2 2 -O-(CH 2 2 -O-(CH 2 2 -O-(CH 2 2 -X-S-;及び-(CH 2 2 -O-(CH 2 2 -O-(CH 2 2 -O-(CH 2 2 -O-(CH 2 2 -X-S-から選択される、請求項1又は2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
-L-X-S-が、-(CH 2 6 -X-S-である、請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
-L-X-S-が、以下からなる群:-(CH 2 2 -S-S-(CH 2 2 -X-S-;-(CH 2 3 -S-S-(CH 2 2 -X-S-;-(CH 2 2 -S-S-(CH 2 3 -X-S-;-(CH 2 3 -S-S-(CH 2 3 -X-S-;-(CH 2 4 -S-S-(CH 2 4 -X-S-;-(CH 2 2 -CMe 2 -S-S-(CH 2 2 -X-S-;-(CH 2 2 -S-S-CMe 2 -(CH 2 2 -X-S-;-(CH 2 3 -S-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Cit-Val-CO(CH 2 5 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Ala-Val-CO(CH 2 5 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Ala-Val-CO(CH 2 2 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Ala-Phe-CO(CH 2 2 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Lys-Phe-CO(CH 2 2 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Cit-Phe-CO(CH 2 2 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Val-Val-CO(CH 2 2 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Ile-Val-CO(CH 2 2 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-His-Val-CO(CH 2 2 -X-S-;-CH 2 -C 6 4 -NH-Met-Val-CO(CH 2 2 -X-S-;及び-CH 2 -C 6 4 -NH-Asn-Lys-CO(CH 2 2 -X-S-から選択される、請求項1又は2に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
-L-X-S-が、-CH 2 -C 6 4 -NH-Ala-Val-CO(CH 2 2 -X-S-である、請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記チオール反応性基が、ブロモアセトアミド、ヨードアセトアミド、4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ、4-[5-(メチルスルホニル)-1H-テトラゾール-1-イル]フェニル、2-(メチルスルホニル)-ベンゾ[d]チアゾール-5-イル、4-[5-(メチルスルホニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-フェニル、2-ピリジルジチオ-,2-(5-ニトロ-ピリジル)ジチオ-,メチルチオスルホニル(methylthiosulfonyl)及びマレイミドから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記チオール反応性基がマレイミドである、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
nが1.5~3.5である、請求項1から8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
nが1.8~2.5である、請求項1から8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
nが2である、請求項1から8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含有する、医薬組成物。
【請求項13】
患者における標的を提示する細胞に関連する疾患を治療するための医薬組成物であって、請求項1から11のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含有し、前記抗体配列又は機能的抗体フラグメントが、前記標的に特異的である、医薬組成物。
【請求項14】
患者におけるがんを処置するための医薬組成物であって、請求項1から11のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含有する、医薬組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の患者におけるがんを処置するための医薬組成物であって、前記がんが、乳癌、膵臓癌、胆管癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、腎臓癌、悪性黒色腫、白血病、及び悪性リンパ腫、からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項16】
請求項14に記載の患者におけるがんを処置するための医薬組成物であって、前記がんが、白血病、及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の患者におけるがんを処置するための医薬組成物であって、前記がんが白血病である、医薬組成物。
【請求項18】
患者における自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、請求項1から11のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含有する、医薬組成物。
【請求項19】
以下の一般式のコンジュゲート:
(Ama-L-X-S) n -Ab
(式中、Amaは、チオエーテルスルホキシド部分がスルフィドによって置換されているアマトキシンであり、Lはn-ヘキシレンであり、Xはマレイミドへのチオール基のカップリングから生じる部分であり、Sはシステインアミノ酸残基の硫黄原子であり、並びに、Abは当該システイン残基を含む抗体であって、ここで、当該システイン残基は、EUナンバリングシステムによる重鎖265Cysであり、ここで、nは、2である)。
【請求項20】
請求項19に記載のコンジュゲートを含有する、医薬組成物。
【請求項21】
患者における標的を提示する細胞に関連する疾患を治療するための医薬組成物であって、請求項19に記載のコンジュゲートを含有し、前記抗体が、前記標的に特異的である、医薬組成物。
【請求項22】
患者におけるがんを処置するための医薬組成物であって、請求項19に記載のコンジュゲートを含有する、医薬組成物。
【請求項23】
請求項22に記載の患者におけるがんを処置するための医薬組成物であって、前記がんが、白血病、及び悪性リンパ腫からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項24】
請求項22に記載の患者におけるがんを処置するための医薬組成物であって、前記がんが白血病である、医薬組成物。
【請求項25】
患者における自己免疫疾患を治療するための医薬組成物であって、請求項19に記載のコンジュゲートを含有する、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アマトキシン及び抗体、特に特定のシステイン残基を含む抗体に結合したアマトキシンを含む、コンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アマトキシンは、タマゴテングタケ(Amanita phalloides mushrooms)に見られる、8アミノ酸からなる環状ペプチドである(図1参照)。アマトキシンは哺乳動物細胞のDNA依存性RNAポリメラーゼIIを特異的に阻害し、それによって影響を受けた細胞の転写及びタンパク質生合成も阻害する。細胞における転写の阻害は、成長及び増殖の停止を引きおこす。共有結合ではないが、アマニチンとRNA-ポリメラーゼIIとの複合体は非常に強固である(KD=3nM)。アマニチンの酵素からの解離は非常に遅いプロセスであり、したがって影響を受けた細胞の回復は起こりにくくなる。転写の阻害が非常に長く続くと、細胞はプログラム細胞死(アポトーシス)を受けることになる。
【0003】
腫瘍治療のための細胞毒性部分としてのアマトキシンの使用は、1981年に既に検討されており、その使用は、ジアゾ化によって、Trp(アミノ酸4;図1参照)のインドール環に連結されたリンカーを使用して、抗Thy1.2抗体をα-アマニチンにカップリングさせることによる(Davis & Preston、Science 1981、213、1385-1388)。Davis及びPrestonは連結部位を7’位と同定した。Morris及びVentonも同様に、7’位での置換が細胞毒性活性を維持する誘導体をもたらすことを実証した(Morris & Venton、Int.J.Peptide Protein Res.1983, 21 419-430)。
【0004】
欧州特許出願公開第1859811A1号明細書(2007年11月28日公開)は、β-アマニチンのアマトキシンアミノ酸1のγC-原子が直接、すなわちリンカー構造なしに、アルブミンにあるいはモノクローナル抗体HEA125、OKT3又はPA-1にカップリングした、コンジュゲートを記載した。さらに、これらのコンジュゲートの、乳癌細胞(MCF-7)、バーキットリンパ腫細胞(Raji)及びT-リンパ腫細胞(Jurkat)の増殖に対する阻害効果が示された。リンカーの使用が示唆され、アミド、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、炭化水素部分などの要素を含むリンカーが含まれるが、そのようなコンストラクトは実際に示されておらず、さらなる詳細、例えば、アマトキシン上の連結部位は与えられていない。
【0005】
特許出願、国際公開第2010/115629号及び国際公開第2010/115630号(ともに2010年10月14日公開)は、抗体、例えば抗EpCAM抗体、例えばヒト化抗体huHEA125が、(i)アマトキシンアミノ酸1のγC-原子、(ii)アマトキシンアミノ酸4の6’C-原子を介して、又は(iii)アマトキシンアミノ酸3のδC-原子を介して、いずれの場合も、直接に又は抗体とアマトキシンとの間にリンカーを介して、アマトキシンにカップリングしている、コンジュゲートを記載している。示唆されたリンカーは、アミド、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、炭化水素部分などのような要素を含む。さらに、これらのコンジュゲートの、乳癌細胞(細胞株MCF-7)、膵臓癌(細胞株Capan-1)、結腸癌(細胞株Colo205)、及び胆管癌(細胞株OZ)の増殖に対する阻害効果が示された。
【0006】
上述のアプローチは、タンパク質性標的結合ドメイン、例えば抗体におけるリシン残基へのカップリングが非特異的であり、満足に制御することのできない様々な薬物-抗体比(DAR)を有する混合組成のコンジュゲートをもたらすという欠点がある。例えば、典型的なヒトIgG1抗体には約70~100リシンアミノ酸残基が存在する。典型的には約4のDARが、適切に活性化されたアマトキシンコンストラクトとリシン残基との反応によって得られる。さらに、カップリング位置の非常に不均一な混合物が観察され、いくつかはより高い有効性のコンジュゲートをもたらし、いくつかは非常に低い有効性を有する。ここでは特定の程度の制御は利用することができない。
【0007】
同様に、抗体分子中のジスルフィド結合を還元し、次いでチオール反応性基を有するトキシンとカップリングすることによって得られるシステインの使用は、不均一な混合物の形成をもたすが、これはヒトIgG1には32個のシステインがあり、そのうち8個が、4つの鎖間ジスルフィド結合の還元後のカップリングに利用可能であるためである。
【0008】
トキシン-抗体コンジュゲートの細胞毒性活性、したがって治療有効性は、DARが得られるにつれて増加することが観察され得る。しかしながら、同時に、DARの増加に伴って忍容性が低下する。したがって、トキシン-抗体コンジュゲートのプロファイルを最適化するために、抗体にカップリングされているトキシンの数(すなわちDAR)、並びにトキシンコンジュゲーション(複数)の特定の位置(複数)の両方を制御することが非常に望ましい。そのような状況においてのみ、利用可能な治療濃度域の微調整、及びその結果の再現性を達成することができる。
【0009】
この状況を受けて、特異的かつ制御された薬物-抗体コンジュゲートの生成のために多くの方法が開発されており、例えば、野生型抗体配列に導入された非天然アミノ酸への部位特異的コンジュゲーションが挙げられる(Axupら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.109(2012)16101参照)。
【0010】
代替アプローチは、野生型抗体配列の突然変異誘発によって得られる単一のシステイン残基を含む抗体コンストラクトを使用する。理想的には、2のDARは、そのような突然変異鎖の2つのコピーを有するIgGの軽鎖又は重鎖における単一アミノ酸残基の突然変異誘発によって達することができ、そして、1のDARは、そのような突然変異鎖のいずれか1つのコピーを有する一価抗体フラグメント、例えばFabフラグメントの軽鎖又は重鎖における単一アミノ酸残基の突然変異誘発によって達することができる。
【0011】
国際公開第2006/034488号は、親抗体の1又は数個のアミノ酸を、非架橋の高度に反応性のシステインアミノ酸で置換することによって操作されている抗体を記載している。本願は、そのような置換が起こり得る、軽鎖及び重鎖両方の様々な位置を記載している。
【0012】
国際公開第2011/005481号は、反応性アミノ酸残基による、特にシステイン残基による、抗体配列における野生型アミノ酸残基の置換に使用され得る多数の位置を提示する別の出願である。
【0013】
国際公開第2008/070593号は、Fcガンマ受容体結合に関与している、抗体上のFc部分におけるアミノ酸残基が交換され、システイン残基による交換を含む、同様のアプローチを記載する。
【0014】
本分野において既に多くの研究が行われてきたという事実にもかかわらず、アマトキシンは未だに、DAR比を制御することによって、例えばそのような定義されたカップリングに特異的なシステインを用いることによって、定義された方法でカップリングされていない。さらに、そのようなシステインベースのコンジュゲーションにどのアミノ酸位置を使用すべきかについての完全な理解は無いようである。特に、操作されたシステイン残基によるアマトキシン及び抗体のコンジュゲートについての情報は未だ得られていない。しかしながら、アマトキシンの高い毒性の観点から、目的の標的細胞に対する高い毒性を示し、同時に優れた安定性及び忍容性を示す、コンストラクトを同定することが非常に重要である。これまでのところ、この目標は未だ達成されていない。
【0015】
発明の目的
したがって、アマトキシン及び抗体、特に特定のシステイン残基を含む抗体に結合したアマトキシンを含むコンジュゲートを合成する、費用効率が高くかつ強固な方法が依然として強く求められており、当該コンジュゲートは標的細胞に対して毒性が高く、同時に安定かつ忍容性が高い。親アミノ酸残基からシステイン残基へと突然変異され得る抗体鎖の位置を同定することが本発明のさらなる目標であり、その結果、そのような毒性の高い、安定かつ忍容性の高いコンジュゲートが形成される。
【発明の概要】
【0016】
発明の概要
本発明は、限られた数の特定の野生型アミノ酸残基を同定することができ、当該アミノ酸残基は単一の不対システイン残基に突然変異させることができ、それは毒性が高く、安定かつ忍容性の高いアマトキシンとのコンジュゲートの形成をもたらすという、予期しない観察に基づいている。
【0017】
したがって、一態様において、本発明は、以下の一般式のコンジュゲート:
Ama-L-X-S-Ab
(式中、Amaはアマトキシンであり、Lはリンカーであり、Xはチオール反応性基へのチオール基のカップリングから生じる部分であり、Sはシステインアミノ酸残基の硫黄原子であり、並びに、Abは当該システイン残基を含む抗体配列又は機能的抗体フラグメントであって、ここで、当該システイン残基は(i)CL、CH1、CH2、及びCH3から選択される抗体ドメインに位置し;(ii)当該抗体ドメインの配列に最も近い相同性を示す生殖系列配列がシステインとは異なるアミノ酸残基を含む位置にあり;そして(iii)溶媒曝露される位置にある)
に関する。
【0018】
別の態様において、本発明は、以下の一般式のコンジュゲート:
Ama-L-X-S-Ab
(式中、Amaはアマトキシンであり、Lはリンカーであり、Xはチオール反応性基へのチオール基のカップリングから生じる部分であり、Sはシステインアミノ酸残基の硫黄原子であり、並びに、Abは当該システイン残基を含む抗体配列又は機能的抗体フラグメントであって、ここで、当該システイン残基は以下のリスト、重鎖118Cys、重鎖239Cys、及び重鎖265Cys、特に:重鎖118Cys、及び重鎖265Cysから選択される)
に関する。
【0019】
第3の態様において、本発明は、以下の一般式コンジュゲート:
Ama-L-X-S-Ab
を合成するための方法であって、
化合物Ama-L-X’(式中、X’はチオール反応性基である)と、
抗体Ab-SH(式中、基-SHはシステインアミノ酸残基のチオールであり、そしてAbは当該システイン残基を含む抗体配列であって、ここで、当該システイン残基は以下のリスト:重鎖118Cys、重鎖239Cys、及び重鎖265Cys、特に:重鎖118Cys、及び重鎖265Cysから選択される)とを、
反応させることによる、方法に関する。
【0020】
第4の態様において、本発明は、以下、
(i)化合物Ama-L-X’(式中、X’はチオール反応性基である)、並びに
(ii)抗体Ab-SH(式中、基-SHはシステインアミノ酸残基のチオールであり、そしてAbは当該システイン残基を含む抗体配列であって、ここで、当該システイン残基は以下のリスト:重鎖118Cys、重鎖239Cys、及び重鎖265Cys、特に:重鎖118Cys、及び重鎖265Cysから選択される)、
を含む、キットに関する。
【0021】
第5の態様において、本発明は、化合物Ama-L-X’を合成するための方法であって、
式中、X’はマレイミド基であり、
前記方法が、
(a)求核基を含むアマトキシンと、
化合物Y-L-X’’
(式中、
Yは脱離基であり、そして
X’’は保護されたマレイミド基である)とを、
反応させるステップを含む、方法に関する。
【0022】
第6の態様において、本発明は、本発明に係るコンジュゲートを含有する医薬組成物に関する。
【0023】
第7の態様において、本発明は、標的を提示する細胞に関連する疾患の処置方法であって、以下のステップ:
当該細胞と、前記抗体が当該標的に特異的である、本発明に係るコンジュゲートとを接触させること、
を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、異なるアマトキシンの構造式を示す。太字の番号(1~8)はアマトキシンを形成する8個のアミノ酸の標準的なナンバリングを示す。アミノ酸1、3及び4における原子の標準的な表示も示されてる(それぞれ、ギリシャ文字α~γ、ギリシャ文字α~δ、及び1’~7’の番号)。
図2図2は、IgG1分子の概略図、並びにシステイン残基に突然変異された、トキシンカップリングのためのアミノ酸残基の位置を示す。HC-A118C;HC-S131C;HC-S239C;HC-D265C;HC-E269C;HC-N297C;HC-A327C;HC-I332C;残基HC-D265 及びHC-N297はFcγ受容体結合に関与し;置換は、受容体結合及びその後の受容体陽性細胞における取り込みを阻害することになる。
図3-1】図3は、実施例1に記載のトラスツズマブ(Trastuzumab)重鎖及び軽鎖の産生のための発現ベクターの概略図を示す。
図3-2】図3は、実施例1に記載のトラスツズマブ(Trastuzumab)重鎖及び軽鎖の産生のための発現ベクターの概略図を示す。
図4(A)-1】図4(A)は、抗体トラスツズマブHC-A118C及びそのコンジュゲートのデコンボリューションされた質量スペクトル:(a)抗体トラスツズマブHC-A118Cのデコンボリューションされた質量スペクトル;(b)ADCトラスツズマブHC-A118C-30.0880のデコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図4(A)-2】図4(A)は、抗体トラスツズマブHC-A118C及びそのコンジュゲートのデコンボリューションされた質量スペクトル:(a)抗体トラスツズマブHC-A118Cのデコンボリューションされた質量スペクトル;(b)ADCトラスツズマブHC-A118C-30.0880のデコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図4(B)-1】図4(B)は、抗体トラスツズマブHC-A118C軽鎖(a)及び重鎖(b)のデコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図4(B)-2】図4(B)は、抗体トラスツズマブHC-A118C軽鎖(a)及び重鎖(b)のデコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図4(C)-1】図4(C)は、ADCトラスツズマブHC-A118C-30.0880軽鎖(a)及び重鎖(b)のデコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図4(C)-2】図4(C)は、ADCトラスツズマブHC-A118C-30.0880軽鎖(a)及び重鎖(b)のデコンボリューションされた質量スペクトルを示す。
図5(A)-1】図5(A)は、LC/MSによって決定されたインタクトなHer-30.0643の質量スペクトルを示す:薬物-抗体比=3.7アマトキシン/IgG。
図5(A)-2】図5(A)は、LC/MSによって決定されたインタクトなHer-30.0643の質量スペクトルを示す:薬物-抗体比=3.7アマトキシン/IgG。
図5(B)-1】図5(B)は、LC/MSによって決定されたHer-30.0643の軽鎖の質量スペクトルを示す。
図5(B)-2】図5(B)は、LC/MSによって決定されたHer-30.0643の軽鎖の質量スペクトルを示す。
図5(C)-1】図5(C)は、LC/MSによって決定されたHer-30.0643の重鎖の質量スペクトルを示す。
図5(C)-2】図5(C)は、LC/MSによって決定されたHer-30.0643の重鎖の質量スペクトルを示す。
図6図6は、親抗体(2つの異なる発現産物)と比較した、SKOV-3細胞上の抗体-標的に対する、4つの例示的なシステイン突然変異体の結合を示す。
図7(A)】図7(A)は、抗アマニチン抗体で染色されたブロッティング膜上の異なるコンストラクトの分析を示す:レーン1及び3:裸の(naked)抗体トラスツズマブ;レーン2及び4;リシンカップリングによってアマニチンコンストラクトHer-30.0643にコンジュゲートした抗体トラスツズマブ;レーン5:HC-A118C突然変異を有する裸の抗体トラスツズマブ;レーン6;118CへのシステインカップリングによってアマニチンコンストラクトHer-30.1619にコンジュゲートしたHC-A118C突然変異を有する抗体トラスツズマブ(ブロモアセトアミドカップリング、安定なリンカー);レーン7:118CへのシステインカップリングによってアマニチンコンストラクトHer-30.1704にコンジュゲートしたHC-A118C突然変異を有する抗体トラスツズマブ(ブロモアセトアミドカップリング、切断可能なリンカー);レーン8:118CへのシステインカップリングによってアマニチンコンストラクトHer-30.0880にコンジュゲートしたHC-A118C突然変異を有する抗体トラスツズマブ(マレイミドカップリング、安定なリンカー);レーン9;118CへのシステインカップリングによってアマニチンコンストラクトHer-30.1699にコンジュゲートした抗体B(マレイミドカップリング、切断可能なリンカー);上部ゲル:変性及び還元条件;曝露時間:60秒;下部ゲル:変性及び非還元条件;曝露時間:約5秒。
図7(B)-1】図7(B)は、変性及び還元条件(左側):並びに、変性及び非還元条件(右側)下で、(i)クマシータンパク質染色(上半分);並びに(ii)抗アマニチン抗体ウェスタンブロット(下半分)を使用する、異なるコンストラクトの分析を示す。
図7(B)-2】図7(B)は、変性及び還元条件(左側):並びに、変性及び非還元条件(右側)下で、(i)クマシータンパク質染色(上半分);並びに(ii)抗アマニチン抗体ウェスタンブロット(下半分)を使用する、異なるコンストラクトの分析を示す。
図8(A)】図8(A)及び(B)は、Fcγ受容体陽性THP-1細胞、及び抗体トラスツズマブの異なるシステイン突然変異を有する異なるコンジュゲートを使用する、WST-I細胞毒性アッセイの結果を示す:図8(A):120時間のインキュベーション時間;図8(B):72時間のインキュベーション時間のトラスツズマブ;いずれの図においても、グラフの右上部分の2つの曲線は突然変異体HC-D265C及びHC-N297Cに基づくADCsに由来する、すなわちFcγ受容体結合に関与することが知られている残基の突然変異体由来である;残りのグラフは突然変異体HC-A118C;HC-S239C;HC-E269C;HC-A327C;及びHC-I332Cに基づくADCsに由来する。
図8(B)】図8(A)及び(B)は、Fcγ受容体陽性THP-1細胞、及び抗体トラスツズマブの異なるシステイン突然変異を有する異なるコンジュゲートを使用する、WST-I細胞毒性アッセイの結果を示す:図8(A):120時間のインキュベーション時間;図8(B):72時間のインキュベーション時間のトラスツズマブ;いずれの図においても、グラフの右上部分の2つの曲線は突然変異体HC-D265C及びHC-N297Cに基づくADCsに由来する、すなわちFcγ受容体結合に関与することが知られている残基の突然変異体由来である;残りのグラフは突然変異体HC-A118C;HC-S239C;HC-E269C;HC-A327C;及びHC-I332Cに基づくADCsに由来する。
図9図9は、マウスにおけるコンジュゲートAbトラスツズマブHC-A118C(安定なリンカー;マレイミドカップリング)の忍容性試験の結果を示す。BWL:体重減少;nd*:不十分なカップリングのために決定されず;nd**:低用量での罹患率(morbidity)のために決定されず;nd***:材料の不足のために決定されず;T HC-A118C-30.0880は37.5mg/kgで体重減少を示さない。
図10-1】図10は、カニクイザル(cynomolgus monkeys)における異なるアマトキシン-トラスツズマブコンジュゲート忍容性試験の結果を示す:(A)ランダムリシンコンジュゲーション、安定なリンカー:(i)0.3mg/kg;(B)ランダムリシンコンジュゲーション、切断可能なリンカー:(i)0.3mg/kg;(C)安定なリンカーを有するコンジュゲートAbトラスツズマブHC-A118C/マレイミドカップリング:(i)0.3mg/kg;(ii)1.0mg/kg;(iii)3.0mg/kg;(iv)10.0mg/kg;(D)安定なリンカーを有するコンジュゲートAbトラスツズマブHC-D265C/マレイミドカップリング:(i)0.3mg/kg;(ii)1.0mg/kg;(iii)3.0mg/kg;(iv)10.0mg/kg。
図10-2】図10は、カニクイザル(cynomolgus monkeys)における異なるアマトキシン-トラスツズマブコンジュゲート忍容性試験の結果を示す:(A)ランダムリシンコンジュゲーション、安定なリンカー:(i)0.3mg/kg;(B)ランダムリシンコンジュゲーション、切断可能なリンカー:(i)0.3mg/kg;(C)安定なリンカーを有するコンジュゲートAbトラスツズマブHC-A118C/マレイミドカップリング:(i)0.3mg/kg;(ii)1.0mg/kg;(iii)3.0mg/kg;(iv)10.0mg/kg;(D)安定なリンカーを有するコンジュゲートAbトラスツズマブHC-D265C/マレイミドカップリング:(i)0.3mg/kg;(ii)1.0mg/kg;(iii)3.0mg/kg;(iv)10.0mg/kg。
図10-3】図10は、カニクイザル(cynomolgus monkeys)における異なるアマトキシン-トラスツズマブコンジュゲート忍容性試験の結果を示す:(A)ランダムリシンコンジュゲーション、安定なリンカー:(i)0.3mg/kg;(B)ランダムリシンコンジュゲーション、切断可能なリンカー:(i)0.3mg/kg;(C)安定なリンカーを有するコンジュゲートAbトラスツズマブHC-A118C/マレイミドカップリング:(i)0.3mg/kg;(ii)1.0mg/kg;(iii)3.0mg/kg;(iv)10.0mg/kg;(D)安定なリンカーを有するコンジュゲートAbトラスツズマブHC-D265C/マレイミドカップリング:(i)0.3mg/kg;(ii)1.0mg/kg;(iii)3.0mg/kg;(iv)10.0mg/kg。
図11図11は、異なる抗HER2 ADCs及びHER2陽性SKOV-3癌細胞との72時間のインキュベーション後の細胞生存率の決定のためのBrdU-取り込みアッセイの結果を示す。
図12図12は、異なる抗HER2 ADCs及びHER2陽性NCI-N87癌細胞との72時間のインキュベーション後の細胞生存率の決定のためのBrdU-取り込みアッセイの結果を示す。
図13図13は、異なる抗PSMA ADCs及びPSMA陽性C4-2前立腺癌細胞との120時間のインキュベーション後の細胞生存率の決定のためのBrdU-取り込みアッセイの結果を示す。
図14図14は、抗HER2ベースのADCsで処置した皮下HER2陽性SKOV-3異種移植モデルの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明を以下で説明する前に、本発明は本明細書に記載された特定の方法、プロトコル及び試薬に限定されず、これらは変動し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は単に特定の実施形態を説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。特に定義されない限り、全ての本明細書で使用される科学技術用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0026】
好ましくは、本明細書で使用される用語は「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」、(Leuenberger, H.G.W, Nagel, B.及びKolbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)に記載されたように定義される。
【0027】
明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他に要求しない限り、「含む」という語、並びに、「含む」及び「含んでいる」などの変形は、記載された整数、組成物又はステップ、あるいは整数又はステップの群の包含を意味すると理解されることになるが、任意の付加的な整数、組成物又はステップ、あるいは整数、組成物又はステップの群は、場合により存在してもよく、同様に、付加的な整数、組成物又はステップ、あるいは整数、組成物又はステップの群が存在しない実施形態が含まれる。そのような後者の実施形態では、用語「含んでいる」は「からなる」と同一に使用される。
【0028】
いくつかの文書が本明細書の文章中に引用されている。本明細書中で引用された文書の各々(全ての特許、特許出願、科学文献、製造者の仕様書、指示書、GenBank受託番号配列提出物等を含む)は、上記又は下記のいずれかにかかわらず、各特許法の下で可能な程度にその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0029】
本発明は、限られた数の特定のアミノ酸残基が親抗体において同定することができ、当該アミノ酸残基は単一の不対システイン残基に突然変異させることができ、それは毒性が高く、安定かつ忍容性の高いアマトキシンとのコンジュゲートの形成をもたらすという予期しない観察に基づいている。
【0030】
したがって、一態様において、本発明は、以下の一般式のコンジュゲート:
Ama-L-X-S-Ab
(式中、Amaはアマトキシンであり、Lはリンカーであり、Xはチオール反応性基へのチオール基のカップリングから生じる部分であり、Sはシステインアミノ酸残基の硫黄原子であり、並びに、Abは当該システイン残基を含む抗体配列又は機能的抗体フラグメントであって、ここで、当該システイン残基は(i)CL、CH1、CH2、及びCH3から選択される抗体ドメインに位置し;(ii)当該抗体ドメインの配列に最も近い相同性を示す生殖系列配列がシステインとは異なるアミノ酸残基を含む位置にあり;そして(iii)溶媒曝露される位置にある)
に関する。
【0031】
別の態様において、本発明は、以下の一般式のコンジュゲート:
Ama-L-X-S-Ab
(式中、Amaはアマトキシンであり、Lはリンカーであり、Xはチオール反応性基へのチオール基のカップリングから生じる部分であり、Sはシステインアミノ酸残基の硫黄原子であり、並びに、Abは当該システイン残基を含む抗体配列又は機能的抗体フラグメントであって、ここで、当該システイン残基は以下のリスト、重鎖118Cys、重鎖239Cys、及び重鎖265Cys、特に:重鎖118Cys、及び重鎖265Cysから選択される)
に関する。
【0032】
本発明の文脈において、「アマトキシン」という用語は、テングタケ(Amanita)属から単離され、そしてWieland, T.及びFaulstich H.(Wieland T,Faulstich H.,CRC Crit Rev Biochem.1978 Dec;5(3):185-260)に記載された、8個のアミノ酸からなる全ての環状ペプチドを含み、さらにその全ての化学誘導体;さらにその全ての半合成類縁体;さらに天然化合物(環状、8個のアミノ酸)の主要構造に従ってビルディングブロックから構築されたその全ての合成類縁体、さらにヒドロキシル化アミノ酸の代わりに非ヒドロキシル化アミノ酸を含む全ての合成又は半合成類縁体、さらにチオエーテルスルホキシド部分がスルフィド、スルホンによって、又は硫黄とは異なる原子、例えば炭素原子によってアマニチンのカルバ類縁体(carbaanalogue)として置換されている全ての合成又は半合成類縁体を含み、いずれの場合も、任意のそのような誘導体又は類縁体は哺乳動物のRNAポリメラーゼIIを阻害することによって機能的に活性である。
【0033】
機能的に、アマトキシンは哺乳動物のRNAポリメラーゼIIを阻害するペプチド又はデプシペプチドとして定義される。好ましいアマトキシンは、上記で定義されたリンカー分子又は標的結合部分と反応することができる官能基(例えばカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール又はチオール捕捉基)を有するアマトキシンである。本発明のコンジュゲートに特に適したアマトキシンは、図1に示されたα-アマニチン、β-アマニチン、γ-アマニチン、ε-アマニチン、アマニン、アマニンアミド、アマヌリン及びアマヌリン酸、並びに、その塩、化学誘導体、半合成類縁体、及び合成類縁体である。本発明での使用に特に好ましいアマトキシンは、α-アマニチン、γ-アマニチン、及びε-アマニチン、特にα-アマニチンである。
【0034】
本発明の文脈において「リンカー」は、2つの成分を接続している構造を言い、その成分のそれぞれがリンカーの一端に連結されている。リンカーが結合である場合、抗体へのアマトキシンの直接結合は、RNAポリメラーゼIIと相互作用するアマトキシンの能力を低下させ得る。特定の実施形態では、リンカーは2つの成分間の距離を増大し、そして、それらの成分間、例えば、本願の場合、抗体とアマトキシンとの間の立体障害を緩和する。特定の実施形態では、リンカーはその骨格に1~30個の原子(例えば 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の原子)の連続鎖を有し、すなわちリンカーの長さはアマトキシン部分と抗体との間の原子又は結合の数によって測定される最短の接続として定義され、ここで、リンカー骨格の一方がアマトキシンと反応し、他方が抗体との反応に利用可能であるか、又は反応している。本発明の文脈において、リンカーは好ましくは、場合により置換された、C1-20-アルキレン、C1-20-ヘテロアルキレン、C2-20-アルケニレン、C2-20-ヘテロアルケニレン、C2-20-アルキニレン、C2-20-ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、又はヘテロアラルキレン基である。リンカーは、カルボキサミド、エステル、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、炭化水素部分などの、1つ以上の構成要素を含み得る。リンカーはまた、これらの構成要素の2つ以上の組み合わせを含み得る。これらの構成要素の各々は、リンカー中に2箇所以上、例えば2箇所、3箇所、4箇所、5箇所又は6箇所に存在してもよい。いくつかの実施形態では、リンカーはジスルフィド結合を含み得る。リンカーは、単一ステップで又は2つ以上の後続ステップのいずれかで、アマトキシン及び抗体に連結される必要があることが理解される。そのためには、リンカーとなるべきものは、好ましくは近位及び遠位の端に、2つの基を有することになり、それは(i)結合されることになる成分の1つに存在する基、好ましくはアマトキシン又は標的結合ペプチド上の活性化された基への共有結合を形成し、あるいは、(ii)アマトキシン上の基と共有結合を形成するように活性化されるか、活性化され得る。従って、化学基はリンカーの遠位及び近位の端にあり、それがそのようなカップリング反応、例えばエステル、エーテル、ウレタン、ペプチド結合等の結果であることが好ましい。
【0035】
特定の実施形態では、リンカーLは、C、O、N及びSから独立して選択される1~20個の原子の線状鎖であり、特に2~18個の原子、より具体的には5~16個の原子、そしてさらにより具体的には6~15個の原子の線状鎖である。特定の実施形態では、線状鎖中の原子の少なくとも60%が、C原子である。特定の実施形態では、線状鎖中の原子は単結合によって結合されている。
【0036】
特定の実施形態では、リンカーLは、N、O、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む、アルキレン、ヘテロアルキレン、アルケニレン、ヘテロアルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、又はヘテロアラルキレン基であり、ここで当該リンカー場合により置換されている。
【0037】
「アルキレン」という用語は、1~20個の炭素原子を有する二価の直鎖飽和炭化水素基を指し、1~10個の炭素原子を有する基が含まれる。特定の実施形態では、アルキレン基は低級アルキレン基であり得る。「低級アルキレン」という用語は、1~6個の炭素原子、特定の実施形態では、1~5個又は1~4個の炭素原子を有するアルキレン基を指す。アルキレン基の例としては、これらに限定されるものではないが、これらに限定されるものではないが、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2-CH2-)、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、及びn-ヘキシレンが挙げられる。
【0038】
「アルケニレン」という用語は、2~20個の炭素原子を有する二価の直鎖基を指し、ここで、炭素-炭素結合の少なくとも1つは二重結合であり、一方で他の結合は単結合又はさらに二重結合であり得る。本明細書において「アルキニレン」という用語は、2~20個の炭素原子を有する基を指し、ここで、炭素-炭素結合の少なくとも1つは三重結合であり、一方で他の結合は単結合、二重結合又はさらに三重結合であり得る。アルケニレン基の例としては、エテニレン(-CH=CH-)、1-プロペニレン、2-プロペニレン、1-ブテニレン、2-ブテニレン、3-ブテニレンなどが挙げられる。アルキニレン基の例としては、エチニレン、1-プロピニレン、2-プロピニレンなどが挙げられる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキレン」は、任意の安定な単環又は多環系の一部である二価の環を指すことを意図し、ここで、そのような環は3~12個の炭素原子を有するが、ヘテロ原子を有さず、そしてそのような環は完全飽和である。並びに「シクロアルケニレン」という用語は、任意の安定な単環又は多環系の一部である二価の環を指すことを意図し、ここで、そのような環は3~12個の炭素原子を有するが、ヘテロ原子を有さず、そしてそのような環は少なくとも部分的に不飽和である(しかし、任意のアリーレン環を除く)。シクロアルケニレンの例としては、これらに限定されるものではないが、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、及びシクロヘプチレンが挙げられる。シクロアルケニレンの例としては、これらに限定されるものではないが、シクロペンテニレン及びシクロヘキセニレンが挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキレン」及び「ヘテロシクロアルケニレン」という用語は、任意の安定な単環又は多環系の一部である二価の環を指すことを意図し、ここで、そのような環は3~約12個の原子を有し、そしてそのような環は炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子、特にN、O及びSからなる群から独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなり、ヘテロシクロアルキレンは完全飽和であるそのような環を指し、並びにヘテロシクロアルケニレンは少なくとも部分的に不飽和である環を指す(しかし、任意のアリーレン又はヘテロアリーレン環を除く)。
【0041】
「アリーレン」という用語は、任意の安定な単環又は多環系の一部である二価の環又は環系を意味することを意図し、ここで、そのような環又は環系は3~20個の炭素原子を有するが、ヘテロ原子を有さず、当該環又は環系は「4n+2」π電子則によって定義される芳香族部分からなり、フェニレンが含まれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリーレン」という用語は、任意の安定な単環又は多環系の一部である二価の環又は環系を指し、ここで、そのような環又は環系は3~20個の原子を有し、当該環又は環系は「4n+2」π電子則によって定義される芳香族部分からなり、そして炭素原子及び1つ以上の窒素、硫黄、及び/又は酸素ヘテロ原子を含む。
【0043】
本発明の文脈において、「置換された」という用語は、示された原子の通常の原子価、又は置換されている基の適切な原子の原子価が超過されることなく、かつ置換基が安定な化合物をもたらすことを条件として、リンカーの骨格に存在する1つ以上の水素が示された基(複数)からの選択で置き換えられていることを示すことを意図する。「場合により置換された」という用語は、リンカーが、本明細書に定義された1つ以上の置換基により、本明細書に定義された非置換又は置換のいずれかであることを意味することを意図する。置換基がケト(又はオキソ、すなわち=O)基、チオ又はイミノ基等である場合、リンカー骨格原子上の2つの水素が置き換えられる。例示的な置換基としては、例えば、以下が挙げられる:アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、アシル、アロイル、ヘテロアロイル、カルボキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アロイルオキシ、ヘテロアロイルオキシ、アルコキシカルボニル、ハロゲン、(チオ)エステル、シアノ、ホスホリル、アミノ、イミノ、(チオ)アミド、スルフヒドリル、アルキルチオ、アシルチオ、スルホニル、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、アジド、ペルフルオロアルキル(例えばトリフルオロメチル)を含むハロアルキル、ハロアルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホノアミノ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アルキルカルボキシ、アルキルカルボキシアミド、オキソ、ヒドロキシ、メルカプト、(場合により、例えばアルキル、アリール、又はヘテロアリールによって、一置換又は二置換された)アミノ、イミノ、カロボキサミド、(場合により、例えばアルキル、アリール、又はヘテロアリールによって、一置換又は二置換された)カルバモイル、アミジノ、アミノスルホニル、アシルアミノ、アロイルアミノ、(チオ)ウレイド、(アリールチオ)ウレイド、アルキル(チオ)ウレイド、シクロアルキル(チオ)ウレイド、アリールオキシ、アラルコキシ、又は-O(CH2n-OH、-O(CH2n-NH2、-O(CH2nCOOH、-(CH2nCOOH、-C(O)O(CH2nR、-(CH2nN(H)C(O)OR、又は-N(R)S(O)2R、ここで、nは1~4であり、Rは、水素、-アルキル、-アルケニル、-アルキニル、-シクロアルキル、-シクロアルケニル、-(C-結合-ヘテロシクロアルキル)、-(C-結合-ヘテロシクロアルケニル)、-アリール、及び-ヘテロアリールから独立して選択され、複数の置換が許容される。置換基、例えば、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキル、など又は官能基、例えば、-OH、-NHRなどが、適切な場合にはそれ自体が置換され得ることを当業者は理解するであろう。置換された部分それ自体が、適切な場合には同様に置換され得ることを当業者は理解するであろう。
【0044】
特定の実施形態では、リンカーLは、以下の部分:ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、アミン(-NH-)、エステル(-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-)、カルボキサミド(-NH-C(=O)-又は-C(=O)-NH-)、ウレタン(-NH-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-NH-)、及び尿素部分(-NH-C(=O)-NH-)、の1つから選択される部分を含む。
【0045】
本発明の特定の実施形態では、リンカーLは、以下のリスト:アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニレン、ヘテロアルキニレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、アラルキレン、及びヘテロアラルキレン基、から選択される多数のm基を含み、ここで、各基は場合により独立して置換されていてもよく、当該リンカーはさらに、以下の部分:ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、アミン(-NH-)、エステル(-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-)、カルボキサミド(-NH-C(=O)-又は-C(=O)-NH-)、ウレタン(-NH-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-NH-)、及び尿素部分(-NH-C(=O)-NH-)、の1つから独立して選択される多数のn部分を含み、ここで、m=n+1である。特定の実施形態では、mが2でありかつnが1であるか、あるいはmが3でありかつnが2である。特定の実施形態では、リンカーは、2又は3つの非置換アルキレン基、並びに、非置換アルキレン基に結合する、それぞれ1又は2つの、ジスルフィド、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル、カルボキサミド、ウレタン又は尿素部分を含む。
【0046】
特定の実施形態では、線状鎖中のC原子は独立して、場合により置換されたメチレン基(-CH2-)の一部である。特定のそのような実施形態では、任意の置換基は、ハロゲン及びC1-6-アルキル、特にメチルから独立して選択される。
【0047】
特定の実施形態では、リンカーLは安定なリンカーである。
【0048】
本発明の文脈において、「安定なリンカー」という用語は、リンカーが(i)酵素、特にリソソームペプチダーゼ、例えばカテプシンBの存在下で、及び(ii)細胞内還元環境下で、安定であることを指す。
【0049】
特定の実施形態では、安定なリンカーは、(i)酵素切断可能な部分構造を含まず(特にカテプシンBによって切断可能なジペプチド配列を含まない)、及び/又は(ii)ジスルフィド基を含まない。特定のそのような実施形態では、リンカーは最大で12個の原子、特に2~10個、より具体的には4~9個、及び最も具体的には6~8個原子の長さを有する。
【0050】
特定の実施形態では、段落[0043]の一般式に存在する部分L-X-Sは、以下の部分の群:
(アマトキシン側) -(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH23-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH24-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH25X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH26-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH27-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH28-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH29-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH210-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH211-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH212-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH216-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH22-O-(CH22-O-(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH22-O-(CH22-O-(CH22-O-(CH22-X-S- (抗体側);及び
(アマトキシン側) -(CH22-O-(CH22-O-(CH22-O-(CH22-O-(CH22-X-S- (抗体側)、
から選択される。
【0051】
特定の他の実施形態では、リンカーは切断可能なリンカーである。
【0052】
本発明の文脈において、「切断可能なリンカー」という用語は、(i)酵素によって、又は(ii)還元環境下で、切断可能であるリンカーを指す。
【0053】
本発明の文脈において、「酵素によって...切断可能であるリンカー」という用語は、酵素によって、特にリソソームペプチダーゼ、例えばカテプシンBによって切断することができ、内在化後に標的抗体にコンジュゲートしたトキシンカーゴ(toxin cargo)の細胞内放出をもたらす、リンカーを指す(Dubowchikら、Bioconjug Chem.13(2002)855-69参照)。特定の実施形態では、切断可能なリンカーは、以下:Phe-Lys、Val-Lys、Phe-Ala、Val-Ala、Phe-Cit及びVal-Citから選択されるジペプチドを含み、特に、当該切断可能なリンカーはp-アミノベンジル(PAB)スペーサーをジペプチドとアマトキシンとの間にさらに含む。
【0054】
特定の他の実施形態では、リンカーは還元可能なリンカーである。
【0055】
本発明の文脈において、「還元可能なリンカー」という用語は、細胞内還元環境下で切断することができるリンカーを指し、特にジスルフィド基を含み、細胞内還元環境による内在化後に標的抗体にコンジュゲートしたトキシンカーゴの細胞内放出をもたらすリンカーを指す(Shenら(1985)J.Biol.Chem.260、10905-10908参照)。
【0056】
特定の他の実施形態では、リンカーは切断可能なリンカー、特に(i)酵素によって切断可能なリンカー、特にジペプチド、特にカテプシンBによって切断可能なジペプチドを含むリンカー、又は(ii)還元可能なリンカー、特にジスルフィド基を含むリンカーである。特定のそのような実施形態では、そのような切断可能なリンカーは最大で20個の原子、特に6~18個、より具体的には8~16個、及び最も具体的には10~15個の原子の長さを有する。
【0057】
特定の実施形態では、段落[0043]の一般式に存在する部分L-X-S中のリンカーLは、以下の部分の群:
(アマトキシン側) -(CH22-S-S-(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH23-S-S-(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH22-S-S-(CH23-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH23-S-S-(CH23-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH24-S-S-(CH24-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH22-CMe2-S-S-(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH22-S-S-CMe2-(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -(CH23-S-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Cit-Val-CO(CH25-X-S- (抗体側)
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Ala-Val-CO(CH25-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Ala-Val-CO(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Ala-Phe-CO(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Lys-Phe-CO(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Cit-Phe-CO(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Val-Val-CO(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Ile-Val-CO(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-His-Val-CO(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Met-Val-CO(CH22-X-S- (抗体側);
(アマトキシン側) -CH2-C64-NH-Asn-Lys-CO(CH22-X-S- (抗体側);から選択され、
ここで、ジペプチド配列に隣接する-NH-及び-CO-は、それぞれ、ジペプチドのカルボキシ末端及びアミノ末端へのアミド結合を形成するリンカーのアミノ及びカルボニル部分を表す。
【0058】
本発明の文脈において、「チオール反応性基へのチオール基のカップリングから生じる部分」という用語は、(i)システイン残基の硫黄原子によるチオール反応性基中に存在する脱離基Yの求核置換、例えばブロモアセトアミド基、ヨードアセトアミド、4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ基、アルキルスルホン、又はヘテロアリールスルホン;(ii)チオール反応性基、例えばマレイミドの活性化された二重結合への、システイン残基のHS-基の付加、あるいは(iii)システイン残基の硫黄原子での、例えば脱離基としてのピリジン-2-チオール、5-ニトロピリジン-2-チオール又はメタンスルフィナートでの、活性化されたジスルフィド又はメタンチオスルホネートのジスルフィド交換;あるいは(iv)システイン残基の硫黄原子と、チオール反応性基の一部分である反応性部分との間の安定な結合をもたらす、任意の他の化学反応、によって生じる構造を指す。
【0059】
チオール基のカップリングから生じる主要部分は、場合によりさらに誘導体化されてもよく、例えばマレイミドから生じるスクシンイミジルチオエーテルは、以下の一般構造のスクシンアミド酸チオエーテルに加水分解することができる。
【0060】
【化1】
【0061】
本発明の文脈において、「チオール反応性基」という用語は、特に6.0~8.0の範囲のpH値で、より具体的には6.5~7.5の範囲のpH値で、抗体の遊離システインのチオール基と選択的に反応する基を指す。特に、「選択的に」という用語は、チオール反応性基を含む分子と、少なくとも1つの遊離システイン残基を含む抗体とのカップリング反応の10%未満が、抗体の非システイン残基、例えばリシン残基とのカップリング反応であり、特に5%未満、より具体的には2%未満であることを意味する。
【0062】
特定の実施形態では、チオール反応性基へのチオール基のカップリングから生じる部分は、以下:1つの硫黄原子が抗体のシステイン残基に由来する、チオール置換アセトアミド;チオール置換スクシンイミド;チオール置換スクシンアミド酸;チオール置換ヘテロアリール、特にチオール置換ベンゾチアゾール、チオール置換フェニルテトラゾール及びチオール置換フェニルオキサジアゾール;及びジスルフィド、から選択される。特定の実施形態では、チオール反応性基へのチオール基のカップリングから生じる部分は、チオール置換スクシンイミドである。
【0063】
「抗体又は機能的抗体フラグメント」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な一部分、すなわち抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子、すなわち少なくとも抗体の抗原結合フラグメントを含む抗体の一部分を指す。例えば、標的分子に、例えば標的タンパク質Her-2/neu又はEpCAMに、特異的に結合するファージディスプレイを含む技術を介して選択される、免疫グロブリン様タンパク質も含まれる。本発明の免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)あるいはサブクラスの免疫グロブリン分子で有り得る。特定の実施形態では、当該抗体はIgG1である。本発明における使用に適した「抗体及びその抗原結合フラグメント」には、これらに限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、一価、二重特異性、ヘテロコンジュゲート、多重特異性、ヒト、ヒト化(特に、CDR-グラフト化)、脱免疫化、またはキメラ抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、ナノボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、FynomAbs(Brackら、Mol.Cancer Ther.13(2014)2030)、並びに、本発明に係る重鎖フレームワーク位置の少なくとも1つを含む上述のいずれかのエピトープ結合フラグメント、が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、本発明のヒト抗原結合抗体フラグメントであり、これらに限定されるものではないが、本発明に係る重鎖フレームワーク位置の少なくとも1つを含む、Fab、Fab’及びF(ab’)2、Fd、及び抗体重鎖の少なくとも一部を含む他のフラグメントが挙げられる。そのような抗原結合抗体フラグメントは、可変ドメイン(複数)を、単独で、以下:ヒンジ領域、CL、CH1、CH2、及びCH3ドメイン、の全体又は一部分と組み合わせて、含んでもよい。可変ドメイン(複数)と、ヒンジ領域、CL、CH1、CH2、及びCH3ドメインとの任意の組み合わせも含むそのような抗原結合フラグメントも、本発明に含まれる。
【0065】
本発明に使用可能な抗体は、鳥類及び哺乳動物を含む任意の動物起源由来であってもよい。好ましくは、当該抗体は、ヒト、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、またはウサギ)、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウシ、ウマ、ロバ、ネコ、又はイヌ起源由来である。当該抗体はヒト又はマウス起源であることが特に好ましい。本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、かつ、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、又は内在性免疫グロブリンを発現しない1つ以上のヒト免疫グロブリンの遺伝子導入動物から単離された抗体を含み、例えばKucherlapati及びJakobovitsによる米国特許第5,939,598号明細書に記載される。
【0066】
本明細書で使用される場合、抗体又は機能的抗体フラグメントは、100μM以下、好ましくは50μM以下、好ましくは30μM以下、好ましくは20μM以下、好ましくは10μM以下、好ましくは5μM以下、より好ましくは1μM以下、より好ましくは900nM以下、より好ましくは800nM以下、より好ましくは700nM以下、より好ましくは600nM以下、より好ましくは500nM以下、より好ましくは400nM以下、より好ましくは300nM以下、より好ましくは200nM以下、さらにより好ましくは100nM以下、さらにより好ましくは90nM以下、さらにより好ましくは80nM以下、さらにより好ましくは70nM以下、さらにより好ましくは60nM以下、さらにより好ましくは50nM以下、さらにより好ましくは40nM以下、さらにより好ましくは30nM以下、さらにより好ましくは20nM以下、及びさらにより好ましくは10nM以下の、標的としての前記抗原に対する解離定数KDを有する場合に、抗原に「特異的に結合する」と考えられる。
【0067】
本願の文脈において、「標的分子」及び「標的エピトープ」という用語はそれぞれ、抗原及び抗原のエピトープを指し、それぞれ、抗体又は機能的抗体フラグメントによって特異的に結合される。好ましくは当該標的分子は腫瘍関連抗原であり、特に、非腫瘍細胞の表面と比較して、増加した濃度で及び/又は異なる立体配置での1つ以上の腫瘍細胞型又は腫瘍関連細胞の表面に存在する、抗原又はエピトープである。好ましくは、前記抗原又はエピトープは1つ以上の腫瘍又は腫瘍間質の細胞型の表面に存在するが、非腫瘍細胞の表面には存在しない。特定の実施形態では、当該抗体はHER-2/neu又は上皮細胞接着分子(EpCAM)のエピトープに特異的に結合する。他の実施形態では、前記抗原又はエピトープは、自己免疫疾患に関与する細胞上で優先的に発現される。特定のそのような実施形態では、当該抗体はIL-6受容体(IL-6R)のエピトープに特異的に結合する。他の実施形態では、前記抗原又はエピトープは炎症性疾患に関与する細胞上で優先的に発現される。
【0068】
特定の実施形態では、抗体又は機能的抗体フラグメントは、腫瘍細胞上に存在するエピトープに特異的に結合し、ここで、特に抗体はヒト上皮成長因子受容体2(HER2)のエピトープに特異的に結合する。
【0069】
特定の実施形態では、抗体は、トラスツズマブ(Trastuzumab)又はHEA125、あるいはトラスツズマブ又はHEA125の抗原結合フラグメントを含む抗体フラグメントである。
【0070】
特定の実施形態では、2つ以上のアマトキシン分子が、1つの抗体又は1つの機能的抗体フラグメントにカップリングされる。コンジュゲートあたりのアマトキシンの数の増加は毒性も増大させることになる。しかしながら、増加は同時に忍容性を低下させる。従って、特定の実施形態では、アマトキシンに対する抗体又は機能的抗体フラグメントの比は、1~4個のアマトキシン分子、特に1.5~3.5個のアマトキシン分子、より具体的には1.8~2.5個のアマトキシン分子、より具体的には約2個のアマトキシン分子に対して、1つの抗体又は1つの機能的抗体フラグメントの間である。抗体二量体、例えばIgGの場合の比率の計算のために、二量体は1つの部分として考えられる。
【0071】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、ダイアボディ、テトラボディ、ナノボディ、キメラ抗体、脱免疫化抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体から選択される。
【0072】
特定の実施形態では、抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv、及びジスルフィド結合Fv(dsFv)からなる群から選択される。
【0073】
本発明の文脈において、「重鎖118Cys」、「重鎖239Cys」、及び「重鎖265Cys」という用語は、ヒトIgG1抗体配列の重鎖における位置を指し、ここでのナンバリングは、Edelmanらの、Proc.Natl.Acad.Sci.USA;63(1969)78-85に従ったEUナンバリングシステムである。例えば、親ヒトIgG1配列としてのハーセプチン(Herceptin)(登録商標)(トラスツズマブ)から始まる場合、以下の突然変異のいずれか1つがなされなければならない:HC-Ala118Cys;HC-Ser239Cys又はHC-Asp265Cys。
【0074】
第3の態様において、本発明は、以下の一般式コンジュゲート:
Ama-L-X-S-Ab
を合成するための方法であって、
化合物Ama-L-X’(式中、X’はチオール反応性基である)と、
抗体Ab-SH(式中、基-SHはシステインアミノ酸残基のチオールであり、そしてAbは当該システイン残基を含む抗体配列であって、ここで、当該システイン残基は以下のリスト:重鎖118Cys、重鎖239Cys、及び重鎖265Cys、特に:重鎖118Cys、及び重鎖265Cysから選択される)とを、
反応させることによる、方法に関する。
【0075】
第4の態様において、本発明は、以下、
(i)化合物Ama-L-X’(式中、X’はチオール反応性基である)、並びに
(ii)抗体Ab-SH(式中、基-SHはシステインアミノ酸残基のチオールであり、そしてAbは当該システイン残基を含む抗体配列であって、ここで、当該システイン残基は以下のリスト:重鎖118Cys、重鎖239Cys、及び重鎖265Cys、特に:重鎖118Cys、及び重鎖265Cysから選択される)
を含む、キットに関する。
【0076】
特定の実施形態では、チオール反応性基X’は、ブロモアセトアミド、ヨードアセトアミド、メチルスルホニルベンゾチアゾール、4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ基メチルスルホニルフェニルテトラゾール又はメチルスルホニルフェニルオキサジアゾール、ピリジン-2-チオール、5-ニトロピリジン-2-チオール、メタンチオスルホネート、及びマレイミドから選択される。
【0077】
したがって、本発明の特定の実施形態では、X’は、操作されたシステイン残基の求核基がマレイミドの二重結合にカップリングし得る、マレイミド部分構造である。
【0078】
第5の態様において、本発明は、化合物Ama-L-X’を合成するための方法であって、
式中、X’はマレイミド基であり、
前記方法が、
(a)求核基を含むアマトキシンと、
化合物Y-L-X’’
(式中、
Yは脱離基であり、そして
X’’は保護されたマレイミド基である)とを、
反応させるステップを含む、方法に関する。
【0079】
特定の実施形態では、当該方法は、
(b)X’’から保護基を除去する、
追加のステップを含む。
【0080】
好ましい実施形態では、ステップ(a)は、脱離基Yが、Br、I、トシレート又はメシレートから選択され、かつ、X’’が塩基性条件に対して安定である、塩基性条件下で行われる。
【0081】
特定の実施形態では、X’’は、マレイミドと1,3-ジエンとの反応から得られるディールス・アルダー付加物である。特定の実施形態では、ステップ(b)は、逆ディールス・アルダー反応による保護基の除去を含む。
【0082】
より具体的な実施形態では、X’’が、ステップ(a)におけるマレイミドと、シクロペンタジエン、フラン又は2,5-ジアルキルフランとの反応から得られるディールス・アルダー付加物であり、ここで、脱保護ステップ(b)は高温で極性非プロトン性溶媒中で行われる。
【0083】
最も具体的には、X’’は、ステップ(a)におけるマレイミドと2,5-ジメチルフランとの反応から得られるディールス・アルダーエキソ付加物であり、ここで、脱保護ステップ(b)は80℃~120℃の温度でジメチルスルホキシド又はN-メチルピロリドン中で行われる。
【0084】
【化2】
【0085】
第6の態様において、本発明は、本発明に係るコンジュゲートを含有する、医薬組成物に関する。
【0086】
別の態様では、本発明は、薬剤としての使用のための本発明のコンジュゲートに関する。
【0087】
第7の態様において、本発明は、標的を提示する細胞に関連する疾患の処置方法であって、以下のステップ:
当該細胞と、前記抗体又は前記機能的抗体フラグメントが当該標的に特異的である、本発明に係るコンジュゲートとを接触させること、
を含む、方法に関する。
【0088】
別の態様では、本発明は、患者における疾患の処置における使用のための本発明のコンジュゲートに関し、ここで特に、当該疾患はがん、特に以下、乳癌、膵臓癌、胆管癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、腎臓癌、悪性黒色腫、白血病、および悪性リンパ腫、からなる群から選択されるがんである。
【0089】
本明細書で使用される場合、「患者」とは、本明細書に記載された抗体トキシンコンジュゲートでの処置から恩恵を受け得る、任意の哺乳類又は鳥類を意味する。好ましくは、「患者」は、実験動物(例えばマウス又はラット)、家畜(例えばモルモット、ウサギ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウシ、ウマ、ロバ、ネコ、又はイヌを含む)、あるいはヒトを含む霊長類、からなるから選択される。「患者」はヒトであることが特に好ましい。
【0090】
本明細書で使用される場合、疾患又は障害の「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」又は「処置(treatment)」とは、以下:(a)障害の重症度を低減し;(b)処置される障害(複数)に特徴的な症状の発症を制限又は予防し;(c)処置される障害(複数)に特徴的な症状の悪化を阻止し;(d)障害(複数)を以前に有したことがある患者における障害(複数)の再発を制限又は予防し;並びに(e)以前に障害(複数)の症状を呈した患者における症状の再発を制限又は予防すること、の1つ以上を達成することを意味する。
【0091】
本明細書で使用される場合、処置とは、患者に、本発明に係るコンジュゲート又は医薬組成物を投与することを含み得る。ここで、「投与すること」は、生体内投与、並びに生体外組織への直接投与、例えば静脈移植を含む。
【0092】
特定の実施形態では、治療上有効量の本発明のコンジュゲートが使用される。
【0093】
「治療上有効量」とは、意図した目的を達成するのに十分な治療剤の量である。所与の治療剤の有効量は、薬剤の性質、投与の経路、治療剤を受ける動物の大きさ及び種、並びに投与の目的などの要因によって異なることになる。各々の個別の場合における有効量は、当該技術分野において確立された方法に従って当業者により経験的に決定され得る。
【0094】
別の態様では、本発明は、本発明に係るアマトキシンを含有し、さらに、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、吸着剤;及び/又は保存剤を含有する、医薬組成物に関する。
【0095】
「薬学的に許容される」とは、連邦若しくは州政府の規制当局に認可されているか、あるいは、米国薬局方、又は動物、より具体的にはヒトにおける使用のために一般に認められた他の薬局方に記載されていることを意味する。
【0096】
特定の実施形態では、医薬組成物は、全身投与される薬剤の形態で使用される。これは、非経口を含み、とりわけ注射剤及び注入剤を含む。注射剤は、アンプル又はいわゆるすぐに使える(ready-for-use)注射剤、例えばすぐに使えるシリンジ又は使い捨ての(single-use)シリンジの形態のいずれかで、及びそれに加えて複数回の抜き取りのために穿刺可能なフラスコ中で、製剤化される。注射剤の投与は、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v.)又は皮内(i.c.)適用の形態であり得る。特に、結晶の懸濁液、溶液、ナノ粒子又は例えばヒドロゾルのようなコロイド分散系として、それぞれ好適な注射製剤を製造することが可能である。
【0097】
注射用製剤はさらに、水性等張希釈剤により溶解又は分散させることができる濃縮物として製造することができる。注入剤は、等張溶液、脂肪乳剤、リポソーム製剤及びマイクロエマルジョンの形態で調製することもできる。注射剤と同様に、注入製剤は希釈用の濃縮物の形態で調製することもできる。注射用製剤は、例えばミニポンプにより、入院療法及び外来療法双方における持続的な(permanent)注入剤の形態で適用することもできる。
【0098】
例えば、アルブミン、血漿、増量剤(expander)、表面活性物質、有機希釈剤、pH調整物質、錯化(complexing)物質又は高分子物質を、特に本発明の抗体トキシンコンジュゲートのタンパク質又はポリマーへの吸着に影響を及ぼす物質として、非経口製剤に加えることができ、あるいは、注射器又は包装材料、例えばプラスチック若しくはガラスなどの材料への、本発明の抗体トキシンコンジュゲートの吸着を減少させる目的でこれらを加えることもできる。
【0099】
抗体を含む本発明のアマトキシンは、非経口剤などの中のマイクロ担体又はナノ粒子に、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ乳酸塩、ポリグリコール酸塩、ポリアミノ酸又はポリエーテルウレタンをベースとする微分散粒子に、結合することができる。非経口製剤は、本発明の抗体トキシンコンジュゲートがそれぞれ微分散形態、分散形態及び懸濁形態で導入される場合、例えば「複数単位原理(multiple unit principle)」に基づいてデポー製剤として、あるいは、本発明の抗体トキシンコンジュゲートがその後埋め込まれる製剤中に、例えば錠剤又は棒剤(rod)中に封入される場合、「単一単位原理(single unit principle)」に基づいて、又は薬剤中の結晶の懸濁液として変更することもできる。単一単位製剤及び複数単位製剤でのこれらの埋め込み剤又はデポー製剤は、多くの場合、いわゆる生分解性ポリマー、例えば乳酸及びグリコール酸のポリエステル、ポリエーテルウレタン、ポリアミノ酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩又は多糖類などからなる。
【0100】
非経口剤として製剤化される本発明の医薬組成物の製造時に加えられる補助剤及び担体は、好ましくは滅菌水(aqua sterilisata(sterilized water))、pH値調整物質、例えば有機酸若しくは無機酸若しくは有機塩基若しくは無機塩基及びその塩等、pH値調整用の緩衝物質、等張化用の物質、例えば塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、グルコース及びフルクトース等、それぞれ界面活性剤(tensides)及び界面活性剤(surfactants)、並びに乳化剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンの脂肪酸の部分エステル(例えばTween(登録商標))、若しくは例えばポリオキシエチレンの脂肪酸エステル(例えばCremophor(登録商標))等、脂肪油、例えば落花生油、大豆油若しくはヒマシ油等、脂肪酸の合成エステル、例えばオレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び中性油(例えばMiglyol(登録商標))等、並びに高分子補助剤、例えばゼラチン、デキストラン、ポリビニルピロリドン等、有機溶媒の溶解度を増加させる添加剤、例えばプロピレングリコール、エタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピレングリコール等、又は錯体形成物質、例えばクエン酸塩及び尿素等、保存料、例えば安息香酸ヒドロキシプロピルエステル及びメチルエステル、ベンジルアルコール等、酸化防止剤、例えば亜硫酸ナトリウム等、並びに安定化剤、例えばEDTA等である。
【0101】
好ましい実施形態において懸濁剤として本発明の医薬組成物を製剤する場合、本発明の抗体トキシンコンジュゲートの硬化を防止する増粘剤、又は沈殿物の再懸濁を確実にする界面活性剤及び多価電解質、及び/又は、例えばEDTA等の錯体形成剤が加えられる。活性成分の様々なポリマーとの錯体を得ることも可能である。そのようなポリマーの例は、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、カルボキシメチルセルロース、Pluronics(登録商標)又はポリエチレングリコールソルビット脂肪酸エステル(polyethylene glycol sorbit fatty acid ester)である。本発明の抗体トキシンコンジュゲートはまた、例えばシクロデキストリンを用いた封入化合物の形態で液体製剤に取り込まれ得る。特定の実施形態では、分散剤をさらなる補助剤として加えることができる。凍結乾燥物の製造のために、スキャホールド剤(scaffolding agents)、例えばマンニット、デキストラン、サッカロース、ヒトアルブミン、ラクトース、PVP又は様々なゼラチンなどを使用することができる。
【実施例
【0102】
以下に、非限定的な例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0103】
実施例1
システイン突然変異体の操作及びカップリング条件
1.1 抗体産生
図2は、IgG1分子の概略図、並びにシステイン残基に突然変異された、トキシンカップリングのためのアミノ酸残基の位置を示す。全ての抗体は、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを用いて一過性トランスフェクションによって、真核Expi293細胞(Life Technologies)において産生される(図3)。Cys置換のための突然変異を有する遺伝子配列はGeneArtによって合成され、エンドヌクレアーゼ及びリガーゼ酵素に基づく標準的な分子クローニング方法によって発現プラスミドに導入される。クローニング実験からの結果を、酵素制限分析及びシークエンシング(GATC Biotech、ドイツ)により確認した。トランスフェクションのために、Expi293細胞をErlenmeyer振とうフラスコ中で、125rpm及び8%のCO2で、約3.0x106細胞/mlの密度まで培養した。DNA及びPEI試薬複合体を2:3の重鎖:軽鎖比を有するOpti-MEM培地中で生成した。培地へのDNA:PEI複合体の添加後、Expi293細胞を24時間インキュベートした。細胞を460g及び室温で15分間遠心分離し、長期生成を確実にするために培地を交換した。細胞生存率をモニターし、4~6日後に細胞を沈殿させ、タンパク質Aカラム(Tosoh Biosience)を使用してBio-Rad FPLCシステムによって上清からモノクローナル抗体を精製した。凝集体及びエンドトキシンを、PBS、pH7.4を使用してSuperdex S-200ゲル濾過カラム(GE Healthcare)を使用する最終精製(polishing)クロマトグラフィーによって除去した。SDS-PAGE、UV分光法、分析的SEC-HPLC及びエンドトキシンELISAを使用して、抗体を特定した。精製された抗体の典型的な収量は凝集体<1%を有する1リットルの培地あたり約80~120mgであった。
【0104】
1.2 マレイミド-アマトキシンカップリング
マレイミド-アマトキシン誘導体のコンジュゲーションのために、例えばHDP30.0880及びHDP30.1699、システイン置換を有する抗体を、pH7.4のPBS中の1mMのEDTAで5.0mg/mlに調整し、40eqs.のTCEPによって3時間37℃で還元した。還元された抗体を、pH7.4のPBS中の1mMのEDTAでの2つの連続透析ステップによって精製し、その後、鎖間ジスルフィドを20eqs.のデヒドロアスコルビン酸(dhAA)によって4時間室温で酸化した。置換されたシステインに対するトキシンカップリングを、8~15eqs.のマレイミド-アマトキシン誘導体を1時間室温で加え、次いで25eqs.のN-アセチル-L-システインで反応をクエンチすることによって行った。アマトキシン-ADCsを、PD-10カラムを使用するゲル濾過クロマトグラフィー又はG-25 Sephadex(登録商標)クロマトグラフィー(GE Healthcare)によって精製した。ADCsの薬物抗体比(DAR)を、抗体及びα-アマニチンの吸光係数を使用して280nm及び310nmでのUV分光法によって決定した。さらに、DARを、ネイティブなLC-MS(図4(A))及び重鎖/軽鎖LC-MS分析(図4(B)、4(C))によって決定した。LC-MSによれば、DARはIgGあたり1.8~2.2個のアマニチンの範囲であり、薬物は重鎖のみに位置している。SDS-PAGE、抗アマニチン抗血清を使用するウェスタンブロッティング、分析的SEC-HPLC、HIC-HPLC及びRP-HPLCによって、ADCsの品質を確認した。ADCsを3.0~5.0mg/mlに調整し、細胞培養及びイン・ビボモデルでのさらなる使用までpH7.4のPBS中で4℃で保存した。
【0105】
実施例2
6’(6-N-マレイミド-ヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.0880)
ステップ1:1,7-ジメチル-10-オキサ-4-アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、エキソ異性体(HDP 30.0891)
【0106】
【化3】
【0107】
4.00g(41.2mmol)の2,5-ジメチルフラン及び5.93g(61.7mmol、1.5当量)のマレイミドを30mlのジエチルエーテルに溶解し、Parr反応器中で12時間90℃に加熱した。得られた沈殿物を濾別し、メタノールから再結晶化した:6.62g(83%)結晶融点137℃。
1H NMR(CDCl3, 500 MHz)δ(ppm):8.68(broad singlet, 1H), 6.31(singlet, J, 2H), 2.88(singlet, 2H), 1.73(singlet, 6H).13C NMR(CDCl3, 100 MHz)δ(ppm):175.04, 140.82, 87.68, 53.77, 15.76.
【0108】
ステップ2:4-(6-ブロモヘキシル)-1,7-ジメチル-10-オキサ-4-アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン、エキソ異性体(HDP 30.0916)
【0109】
【化4】
【0110】
386mg(2mmol)のHDP 30.0891及び1.952g(8mmol)の1,6-ジブロモヘキサンを20mlのDMFに溶解し、276mg(2mmol)の炭酸カリウムを添加し、懸濁液を50℃に3時間加熱した。その後DMFを蒸発させ、残渣を100mlのジクロロメタンに取った。無機塩を濾過により除去し、珪藻土(3g)を濾液に加え、溶媒を真空下で除去した。n-ヘキサン-酢酸エチルの勾配で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーによって残渣を精製して、HDP 30.0916(483 mg)を蝋状結晶として68%の収率で得た。
1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ(ppm)6.31(s, 2H), 3.48(t, J=7.2 Hz, 2H), 3.39(t, J=6.8 Hz, 2H), 2.81(s, 1H), 1.90-1.77(m, 2H), 1.70(s, 5H), 1.64-1.52(m, 2H), 1.44(dddd, J=9.2, 7.4, 6.5, 5.4 Hz, 2H), 1.35-1.23(m, 2H).
13C NMR(126 MHz, CDCl3)δ 174.81, 140.81, 87.52, 52.33, 38.42, 33.65, 32.50, 27.54, 27.33, 25.64, 15.87.
【0111】
ステップ3:6´-(6-(1,7-ジメチル-10-オキサ-4-アザトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン-4-イル-ヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.0903)
【0112】
【化5】
【0113】
アルゴン下及び室温で34.5mg(37.5μmol)の真空乾燥したα-アマニチンを1000μlの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。HDP 30.0916(106.8mg、8当量)及び1Mの水酸化ナトリウム(41.2μl、1.1当量)を添加した。室温で3時間後、反応混合物を、41.2μlのDMSO中の1M酢酸溶液でpH=5に酸性化した。溶媒を真空中で除去し、残渣を5~100%メタノールからの勾配を用いてC18カラムでの分取HPLCに供した。生成物を含有する画分を蒸発させて、27.2mg(59%)のHDP 30.0903を白色固体として得た。
MS(ESI+)1194.17 [M+H]+, 1216.10 [M+Na]+
【0114】
ステップ4:6´-(6-N-マレイミド-ヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.0880)
【0115】
【化6】
【0116】
HDP 30.0903(27.2mg、22.7μmol)を3000μlの乾燥ジメチルスルホキシドに溶解した。反応混合物を撹拌しながら1.5時間100℃に加熱した。40℃に冷却後、DMSOを真空中で除去し、残渣を上述の方法で分取HPLCによって精製した。
【0117】
17.3~18.1分の保持時間を有する画分を集め、溶媒を蒸発させた。残渣を3mlのtert-ブタノールから凍結乾燥して、23.6mg(94%)のHDP 30.0880をオフホワイトの粉末として得た。
MS(ESI+)1098.29 [M+H]+, 1120.36 [M+Na]+
【0118】
実施例2の方法を当業者に明らかな変更と共に使用することによって、以下の例を調製した。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例15
6´-O-(6-(6-(N-マレイミド)-ヘキサンアミド)ヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.1948)
【0121】
【化7】
【0122】
10.0mg(8.83μmol)の6´-O-(-6-アミノヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.0134、欧州特許出願公開第2621536号明細書に開示されたように合成した)を、400μlの乾燥DMFに溶解し、その後DMF中の20mMの6-(マレイミド)ヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)の663μl、及びDMF中の1MのDIPEAの17.7μlを添加した。室温で5時間後、100μlの水を反応混合物に添加し、揮発物を蒸発させた。
粗生成物を水-メタノール勾配でのRP18 HPLCによって精製し、純粋画分をt-ブタノール/水から凍結乾燥した:9.02mg(84%)HDP 30.1948、無色粉末として。
MS(ESI+) found:1210.99; calc.:1211.54 [MH]+(C55H79N12O17S)
found:1233.32; calc.:1233.52 [M+Na]+(C55H78N12NaO17S)
【0123】
実施例16
6´-O-(6-(N-α-マレイミド)-L-2,3-ジアミノプロパンアミド)ヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.1958)
【0124】
【化8】
【0125】
ステップ1:700μlのDMF中の8.22mg(17.66μmol=2当量)のMal-L-Dap(Boc)-OH x DCHAに、DMF中の1MのDIPEAの17.7μlを添加し、その後9.19mg(17.66μmol=2当量)のPyBop及び6.01μl(35.33μmol=4当量)のDIPEAを添加した。1分後、混合物を、200μlの乾燥DMFで溶解した10.0mg(8.83μmol)の6´-O-(-6-アミノヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.0134)に加えた。室温で2時間後、100μlの水を反応混合物に添加し、揮発物を蒸発させた。粗生成物をRP18 HPLCにより精製し、純粋画分を蒸発させた:5.45mg(48%)HDP 30.1954、非晶質固体として。
MS(ESI+) found:1306.58; calc.:1306.54 [M+Na]+(C57H81N13NaO19S)
【0126】
ステップ2:Boc-保護されたステップ1生成物を1mlのトリフルオロ酢酸に溶解した。2分後、混合物を室温で蒸発乾固した。メタノールに対する0.05%TFAの勾配でRP18 HPLCによって残渣を精製し、純粋画分を蒸発させた:1.72mg(31%)HDP 30.1958、非晶質固体として。
MS(ESI+) found:1306.58; calc.:1184.50 [M+Na]+(C52H74N13O17S)
【0127】
実施例17
6´-O-(2-ブロモアセトアミド)ヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.1619)
【0128】
【化9】
【0129】
400μlの乾燥DMFに溶解した、5.03mg(4.44μmol)の6´-O-(-6-アミノヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.0134)に、その後DMF中の100mMのブロモ酢酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの66.6μl、及びDMF中の100mMのDIPEAの88.8μlを添加した。室温で3時間後、50μlの水を添加し、反応混合物を10mlのメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)に滴下した。沈殿物を遠心分離により単離し、10mlのMTBEで洗浄した。粗生成物を水-メタノール勾配でRP18 HPLCによって精製し、純粋画分をt-ブタノール/水から凍結乾燥した:3.70(73%)HDP 30.1619、無色粉末として。
MS(ESI+) found:1139.58; calc.:1138.39 [M+H]+(C47H69BrN11O15S)
found:1160.42; calc.:1160.37 [M+Na]+(C47H68BrN11NaO15S))
【0130】
実施例18
6´-O-(2-ブロモアセトアミド)プロピル)-α-アマニチン(HDP 30.1618)
【0131】
【化10】
【0132】
欧州特許出願公開第2621536号明細書に開示された、6´-O-(-3-アミノプロピル)-α-アマニチンへの実施例16からの方法の適用により、ブロモアセトアミドHDP 30.1618を合成した:
MS(ESI+) found:1096.22; calc.:1096.34 [MH]+(C44H63BrN11O15S)
found:1118.45; calc.:1118.32 [M+Na]+(C44H62BrN11NaO15S)
【0133】
実施例19
6’-[6-(6-(4-(5-(メチルスルホニル)-1,2,4-オキサジアゾール-2-イル)-フェニルオキシ)ヘキシルアミノカルボニル)-アミノヘキシル)]-α-アマニチン(HDP 30.1926)
【0134】
【化11】
【0135】
メチルスルホニル-1,2,4-オキサジアゾールリンカーを、Todaらによって、Angew.Chem.Int.Ed.2013,52,12592 -12596に開示された方法の変化法によって合成した。
【0136】
ステップ1:1-アジド-6-ブロモヘキサン
【0137】
【化12】
【0138】
1,6-ジブロモヘキサン(7.32g、30mmol)を、60mlのDMF中のアジ化ナトリウム(1.95mg、30mmol)と一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を100mlの酢酸エチルと5分間撹拌した。無機塩を濾別し、ヘキサン中の0~20%ジクロロメタン勾配でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、モノアジドをジブロミド及びジアジドから分離して、2.26g(37%)の生成物を、油状物として得た。
1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 3.42(t, J=6.7 Hz, 2H), 3.28(t, J=6.9 Hz, 2H), 1.88(dt, J=14.6, 6.8 Hz, 2H), 1.62(dt, J=14.3, 7.0 Hz, 2H), 1.53-1.36(m, 4H).
13C NMR(126 MHz, CDCl3)δ 51.43, 33.80, 32.67, 28.82, 27.81, 26.03.
【0139】
ステップ2:エチル 4-[(6-アジドヘキシル)オキシ]ベンゾエート(HDP 30.1897)
【0140】
【化13】
【0141】
DMF(40mL)中のステップ1生成物(4.122g、20mmol)の溶液に、室温で4時間、エチル 4-ヒドロキシベンゾエート(3.324g、20mmol)及びK2CO3(5.528g、40mmol)を添加した。次に、反応混合物を、200mlのMTBE及び200μlの水で希釈した。有機層を分離し、3x100mlの水で洗浄し、乾燥(MgSO4)及び蒸発乾固させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/MTBE)によって精製して、表題化合物(5.199g、89%)を、無色の油状物として得た。
MS(ESI+) found:314.33; calc.:314.15 [M+Na]+(C15H21N3NaO3)
【0142】
ステップ3:4-[(6-アジドヘキシル)オキシ]ベンゾイルヒドラジド(HDP 30.1899)
【0143】
【化14】
【0144】
エタノール(9.0mL)中のステップ2生成物(5.19g、17.8mmol)の溶液に、ヒドラジン一水和物(1459μL、30mmol)を室温で添加し、次に混合物を22時間還流下で撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンからジクロロメタン/酢酸エチル/メタノール6:3:1勾配)によって精製して、ベンゾイルヒドラジド誘導体HDP 30.1899(1.08g、22%)を、無色の固体として得た。
MS(ESI+) found:278.27; calc.:278.16 [M+H]+(C13H20N5O2)
【0145】
ステップ4:5-[4-((6-アジドヘキシル)オキシ)フェニル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-チオール(HDP 30.1903)
【0146】
【化15】
【0147】
エタノール(10.0mL)中のベンゾイルヒドラジド誘導体(1.08g、3.89mmol)の溶液に、二硫化炭素(1552μL、25.68mmol)及び粉末KOH(218mg、3.89mmol)を室温で添加し、次に溶液を85℃で3時間撹拌した。酢酸エチル及び1MのHClを溶液に添加した。有機層を飽和重炭酸ナトリウム及びブライン(brine)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)によって精製して、表題化合物HDP 30.1903(1.18g、95%収率)を、無色の固体として得た。
【0148】
ステップ5:5-[4-((6-アジドヘキシル)オキシ)フェニル]-5-(メチルスルファニル)-1,3,4-オキサジアゾール(HDP 30.1905)
【0149】
【化16】
【0150】
THF(15ml)中のステップ4のチオール(1.18g、3.69mmol)の溶液に、ヨウ化メチル(257μL、4.13mmol)及びトリエチルアミン(625μl、4.51mmol)を0℃で添加した。次に、混合物を1時間室温で撹拌した。次に水(50ml)及び酢酸エチル(100ml)を添加し、混合物を10%のチオ硫酸ナトリウム溶液(10ml)で脱色した。有機層を分離し、ブライン(50ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。濾過後、有機溶媒を真空中で除去し、残渣をヘキサン/MTBEを用いてシリカゲルで精製して、表題化合物HDP 30.1905(1.03mg、84%収率)を、白色固体として得た。
MS(ESI+) found:334.27; calc.:334.13 [M+H]+(C15H20N5O2S)
found:356.29; calc.:356.12 [M+Na]+(C15H19N5NaO2S)
【0151】
ステップ6:5-[4-((6-アジドヘキシル)オキシ)フェニル]-5-(メチルスルホニル)-1,3,4-オキサジアゾール(HDP 30.1910)
【0152】
【化17】
【0153】
ジクロロメタン(100mL)中のステップ5生成物(1.00g、3.00mmol)の溶液に、mCPBA(68wt%、2.79mg、3.66mmol)を0℃で添加し、次に混合物を24時間室温で撹拌した。硫酸マグネシウムを添加し、不溶性物質を濾過により除去し、溶媒を真空中で除去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/MTBE)によって精製して、表題化合物HDP 30.1910(858mg、78%)を得た。
MS(ESI+) found:366.00; calc.:366.12 [M+H]+(C15H20N5O4S)
found:388.19; calc.:388.11 [M+Na]+(C15H19N5NaO4S)
【0154】
ステップ7:5-[4-(((6-スクシンイミジルオキシカルボニルアミノ)ヘキシル)オキシ)フェニル]-5-(メチルスルホニル)-1,3,4-オキサジアゾール(HDP 30.1916)
【0155】
【化18】
【0156】
酢酸エチル(100ml)中のステップ6生成物(370mg、1.01mmol)の溶液に、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(519mg、2.02mmol)を添加した。この装置をアルゴンでパージし、パラジウム(活性炭上10%)を添加し、その後、一晩水素雰囲気下で撹拌した。濾過及び蒸発後、粗生成物を、酢酸エチルに対するヘキサンの勾配を用いてシリカゲルで精製した。純粋画分を合わせ、1,4-ジオキサンから凍結乾燥して、スクシンイミジルカルバメートHDP 30.1916(280mg、58%)を、無色の粉末として得た。
MS(ESI+) found:481.10; calc.:481.14 [M+H]+(C20H25N4O8S)
1H NMR(500 MHz, CDCl3)d 8.08-8.01(m, 2H), 7.06-6.99(m, 2H), 5.57(t, J=5.9 Hz, 1H), 4.05(t, J=6.4 Hz, 2H), 3.51(s, 3H), 3.28(q, J=6.8 Hz, 2H), 2.83(s, 4H), 1.88-1.77(m, 2H), 1.67-1.39(m, 6H).
13C NMR(126 MHz, CDCl3)d 170.05, 166.73, 163.11, 161.53, 151.44, 129.68, 115.28, 114.03, 68.14, 42.98, 41.90, 29.39, 28.85, 26.23, 25.55, 25.47.
【0157】
ステップ8:6’-[6-((6-((4-(5-(メチルスルホニル)-1,2,4-オキサジアゾール-2イル)フェニル)オキシ)ヘキシル)-アミノカルボニルアミノ)ヘキシル]-α-アマニチン(HDP 30.1926)
【0158】
【化19】
【0159】
500μlの乾燥DMF中に溶解した、10.0mg(8.83μmol)の6´-O-(-6-アミノヘキシル)-α-アマニチン(HDP 30.0134、欧州特許出願公開第2621536号明細書に開示されたように合成した)に、その後500μlのDMFに溶解した8.49mg(17.66μmol)、及び6.01μl(35.33μmol)のDIPEAを添加した。室温で18時間後、揮発物を蒸発させた。粗生成物を水-メタノール勾配を用いてRP18 HPLCにより精製し、純粋画分をt-ブタノール/水から凍結乾燥した:7.04mg(58%)HDP 30.1926、無色の粉末として。
MS(ESI+) found:1383.62; calc.:1383.57 [MH]+(C61H87N14O19S2)
found:1405.54; calc.:1405.55 [M+Na]+(C61H86N14NaO19S2)
【0160】
実施例20
6’-[(3-マレイミドプロパンアミド)-Ahx-Val-Cit-PAB]-α-アマニチン(HDP 30.1426)
ジペプチドp-アミノベンジルブロミドを、Jeffreyらにより、J.Med.Chem.2005、48、1344-1358に開示された方法の適合によって、対応するベンジルアルコールから合成した。一般的な手順は以下のスキームによって例示される。
【0161】
【化20】
【0162】
ステップ1:Boc-Ahx-Val-Cit-PAB-OH(HDP 30.1267)
バリン-シトルリン-p-アミノベンジルアルコール(H-Val-Cit-PAB-OH)及びN-Boc-アミノカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Boc-Ahx-NHS)の調製は、Firestoneらによって米国特許第6,214,345号明細書に開示されている。この方法によって、粗H-Val-Cit-PAB-OHを、4.79g(7.96mmol)Fmoc-Val-Cit-PAB-OHから調製し、50mlのDMFに溶解した。Boc-Ahx-NHS(2.88g、8.76mmol)及び1489μl(8.76mmol)のN-エチルジイソプロピルアミンを添加し、室温で一晩撹拌した。DMFの蒸発後、残渣を100mlのMTBEと共に一晩撹拌し、固体を遠心分離により単離した。ペレットをMTBEに再懸濁し、再び遠心分離した。生成物を真空乾燥して、4.44g(94%収率)のわずかに茶色がかった粉末を得た。
MS(ESI+) found:615.19; calc.:615.35 [M+Na]+(C29H48N6NaO7)
【0163】
ステップ2:Boc-Ahx-Val-Cit-PAB-OTBDMS(HDP 30.1362)
ステップ1生成物(4.44g、7.49mmol)を20mlのDMFに溶解し、6.37μl(37.45mmol)のN-エチルジイソプロピルアミン及び3.39g(22.47mmol)のtert-ブチルジメチル-クロロシラン(TBDMSCl)を添加した。3時間後、DMFを蒸発させ、残渣を120mlの酢酸エチル/メタノール5:1と100mlの0.2Mクエン酸との間に分配した。有機層を水及び飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。粗生成物をジクロロメタン中の0~10%メタノールの勾配を用いて120gシリカゲルから溶離した。純粋画分を合わせ、蒸発させて、2.50g(47%)の生成物を固体として得た。
MS(ESI+) found:729.29; calc.:729.43 [M+Na]+(C35H62N6NaO7Si)
【0164】
ステップ3:Boc-Ahx-Val-Cit(SEM)-PAB-OTBDMS(HDP 30.1368)
THF(40mL)中のステップ2生成物(2.50mg、3.546mmol)の溶液に、NaH(鉱油中の60%分散液の142mg、3.546mmol)を添加した。15分後、純粋な(neat)2-(トリメチルシリル)-エトキシメチルクロリド(SEMCl)(703μl、3.546mmol)を添加し、反応混合物を8時間撹拌した。珪藻土(10g)を反応混合物に加え、揮発物を減圧下で除去した。残りの固体をシリカゲルカラムのトップに適用し、ジクロロメタン中の0~10%メタノールの勾配を用いて溶離した。純粋画分を合わせ、蒸発させて、非晶質表題化合物の637mg(21%)を得た。
MS(ESI+) found:859.34; calc.:859.52 [M+Na]+(C41H76N6NaO8Si2)
【0165】
ステップ4:Boc-Ahx-Val- Cit(SEM)-PAB-OH(HDP 30.1370)
THF(20mL)中のステップ3生成物(567mg、0.677mmol)の溶液に、TBAF(833μLの1.0M溶液、0.833mmol;1.2当量)を添加した。1時間後、珪藻土(1.5g)を反応混合物に加え、揮発物を減圧下で除去した。残りの固体をシリカゲルカラムのトップに適用し、クロロホルム中の0~10%メタノールの勾配を用いて溶離した。純粋画分を合わせ、蒸発させて、279mg(57%)の生成物を白色固体として得た。
MS(ESI+) found:745.28; calc.:745.43 [M+Na]+(C35H62N6NaO8Si)
【0166】
ステップ5:Boc-Ahx- Cit(SEM)-PAB-Br(HDP 30.1381)
ジクロロメタン(5mL)中のステップ4生成物(100mg、139μmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(73mg、2当量)を添加し、次いで四臭化炭素(92mg、2当量)を添加した。1時間後、珪藻土(1g)を反応混合物に加え、揮発物を減圧下で除去した。ジクロロメタン中の0~10%メタノールの勾配を用いて12gシリカゲルから溶離して、表題生成物の61mg(56%)を油状物として得る。
MS(ESI+) found:807.15/809.17; calc.:807.35/809.34 [M+Na]+(C35H61BrN6NaO7Si)
【0167】
ステップ6:6’-[Boc-Ahx- Cit(SEM)-PAB]-α-アマニチン(HDP 30.1383)
【0168】
【化21】
【0169】
アルゴン下及び室温で、44mg(47.9μmol)の真空乾燥したα-アマニチンを1000μlの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。ステップ5生成物(61mg、78.1μmol)及び1M水酸化ナトリウム(52.7μl、1.1当量)を添加した。室温で4時間後、反応混合物をDMSO中の1M酢酸溶液の52.7μlでpH=5に酸性化した。溶媒を真空中で除去し、残渣を、5~100%メタノールからの勾配を用いてC18カラム上で分取HPLCによって精製した。生成物含有画分を蒸発させて、25.1mg(32%)のHDP 30.1383を無色の固体として得た。
MS(ESI+) found:1646.40; calc.:1645.77 [M+Na]+(C74H114N16NaO21SSi)
【0170】
ステップ7:6’-[H-Ahx- Cit-PAB]-α-アマニチン(HDP 30.1388)
【0171】
【化22】
【0172】
Boc-及びSEM-保護されたステップ6生成物(18.4mg、11.3μmol)を2mlのトリフルオロ酢酸に溶解した。2分後、混合物を室温で蒸発乾固し、2mlの水に再溶解し、3.2%アンモニアを用いてpH10に滴下調整した。得られた懸濁液を凍結乾燥し、0.05%TFA中の5~100%メタノールの勾配を用いてRP18 HPLCに適用し、純粋画分を蒸発させ、2mlの水から凍結乾燥した:12.1mg(71%)HDP 30.1388、無色粉末。
MS(ESI+) found:1393.42; calc.:1393.66 [M+H]+(C63H93N16O18S)
【0173】
ステップ8:
【0174】
【化23】
【0175】
500μlの乾燥DMFに溶解した、9.98mg(6.62μmol)のステップ7生成物に、その後500μlのDMF中の5.29mg(19.86μmol)3-(マレイミド)プロパン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(BMPS)、及び3.38μl(19.86μl)のDIPEAを加えた。室温で2時間後、100μlの水を反応混合物に添加し、揮発物を蒸発させた。粗生成物を水-メタノール勾配を用いてRP18 HPLCによって精製し、純粋画分をt-ブタノール/水から凍結乾燥した:5.43mg(53%)の表題生成物6’-[(3-マレイミドプロパンアミド)-Ahx-Cit-PAB]-α-アマニチン、無色の粉末として。
MS(ESI+) found:1544.25; calc.:1544.68 [M+H]+(C70H98N17O21S)
found:1566.44; calc.:1566.67 [M+Na]+(C70H97N17NaO21S)
【0176】
実施例21
6’-[H-Val-Ala-PAB]-α-アマニチン(HDP 30.1702)
【0177】
【化24】
【0178】
出発物質としてH-Val-Ala-PAB-OHを用いて実施例20のステップ1~7の方法を繰り返すことによって、表題物質を無色の粉末として得た:
MS(ESI+) found:1194.58; calc.:1194.53 [M+H]+(C54H76N13O16S)
found:1216.75; calc.:1216.51 [M+Na]+(C54H75N13NaO16S)
【0179】
出発物質H-Val-Ala-PAB-OHは、ペプチド化学における一般的な方法で調製することができ、Howardらにより米国特許出願公開第2011/0256157号明細書に例示されている。
【0180】
実施例22
6’-((3-マレイミドプロパンアミド)-Val-Ala-PAB)-α-アマニチン(HDP 30.1699)
【0181】
【化25】
【0182】
実施例21からの6’-[H-Val-Ala-PAB]-α-アマニチンを用いて実施例20のステップ8の方法を使用することによって、表題物質を81%収率で、無色の粉末として得た:
MS(ESI+) found:1345.48; calc.:1345.55 [MH]+(C61H81N14O19S)
found:1368.17; calc.:1367.53 [M+Na]+(C61H80N14NaO19S)
【0183】
実施例23
6´-O-[((N-α-マレイミド)-L-2,3-ジアミノプロパンアミド)-Val-Ala-PAB] -α-アマニチン(HDP 30.1957)
【0184】
【化26】
【0185】
実施例21からの6’-[H-Val-Ala-PAB]-α-アマニチンを用いて実施例16の方法を使用することによって、表題物質を39%収率で、無色の粉末として得た:
MS(ESI+) found:1345.48; calc.:1360,56(C61H82N15O19S)
【0186】
実施例24
6’-((2-ブロモアセトアミド)-Val-Ala-PAB)-α-アマニチン(HDP 30.1704)
【0187】
【化27】
【0188】
実施例21からの6’-[H-Val-Ala-PAB]-α-アマニチンを用いて実施例17の方法を使用することによって、表題物質を26%収率で、無色の粉末として得た:
MS(ESI+) found:1314.28; calc.:1314.45 [M+H]+(C56H77N13O17S)
found:1336.39; calc.:1336.43 [M+Na]+(C56H76N13NaO17S)
【0189】
実施例25
6’-((6-(4-(5-(メチルスルホニル)-1,2,4-オキサジアゾール-2-イル)-フェニルオキシ)ヘキシルアミノカルボニル)-Val-Ala-PAB)-α-アマニチン(HDP 30.1917)
【0190】
【化28】
【0191】
実施例21からの6’-[H-Val-Ala-PAB]-α-アマニチンを用いて実施例19の方法を使用することによって、表題物質を44%収率で、無色の粉末として得た:
MS(ESI+) found:802.63 calc.:802.30 [M+2Na]2+(C70H94N16Na2O21S2)
【0192】
実施例26
6’-((6-(4-(5-(メチルスルホニル)-1,2,4-オキサジアゾール-2-イル)-フェニルオキシ)ヘキシルアミノカルボニル)-Ahx-Val-Ala-PAB)-α-アマニチン(HDP 30.1930)
【0193】
【化29】
【0194】
シトルリンのアラニンへの置換を伴う実施例19のステップ1~7の方法によって調製された6’-[H-Ahx-Val-Ala-PAB]-α-アマニチンを用いて実施例19の方法を使用することによって、表題物質を37%収率で、無色の粉末として得た:
MS(ESI+) found:859.02; calc.:858.85 [M+2Na]2+(C76H105N17Na2O22S2)
【0195】
実施例27
6´-O-[3-(5-ニトロ-ピリジン-2-イルジスルファニル)プロピル)]-α-アマニチン HDP 30.0951
ステップ1:6´-O-(3-S-トリチルスルファニル-プロピル)-α-アマニチン HDP 30.0517
【0196】
【化30】
【0197】
アルゴン下で46mg(50μmol)の真空乾燥したα-アマニチンを2500μlの乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。3-(S-トリチル)-メルカプトプロピル-1-ブロミド(159mg、8当量)を添加し、次いで1M水酸化ナトリウム溶液の60μlを添加した。室温で1.5時間後、反応混合物をDMSO中の1M酢酸の50μlでpH=5に酸性化し、溶媒を蒸発させる。残渣を200μlのメタノールに溶解し、10mlのtert-ブチルメチルエーテル(MTBE)を満たした遠心管に滴下した。得られた沈殿物を0℃に10分間冷却し、遠心分離(4000xg)によって単離し、その後10mlのMTBEで洗浄した。上清を捨て、ペレットを750μlのメタノールに溶解し、C18カラム(250x21.2mm、Luna RP-18、10μm、100Å)上で分取HPLCで3部分に精製した。溶媒A:水、溶媒B:メタノール;勾配:0分5%B;5分5%B;20分100%B;25分100%B;27分5%B、35分5%B;流量30ml/分。21.1~21.8分の保持時間を有する画分を集め、溶媒を蒸発させて、36.5mg(59%)HDP 30.0517を、無色の固体として得た。
MS(ESI+)1234.8 [M+H]+, 1257.3 [M+Na]+
【0198】
ステップ2:6´-O-[3-(5-ニトロ-ピリジン-2-イルジスルファニル)プロピル)]-α-アマニチン HDP 30.0951
【0199】
【化31】
【0200】
ステップ1生成物(5.00mg、4.05μmol)に、200μlのトリフルオロ酢酸に溶解した2,2’-ジチオビス(5-ニトロピリジン),DTNP(6.28mg、5当量)を添加した。4分後、揮発物を留去し、残渣を1000μlのメタノールと共蒸発させた。粗生成物をステップ1と同様にHPLC精製した。18.46~19.28分の保持時間を有する画分を集め、溶媒を蒸発させ、残渣を2mlのtert-ブタノールから凍結乾燥して、2.99mg(64%)のHDP 30.0951をわずかに黄色がかった固体として得た。
MS(ESI+)1146.97 [M+H]+, 1169.17 [M+Na]+
【0201】
実施例28
図5~14に至る実験設定
BrdU取り込みに基づく細胞生存率アッセイ(図11、12、13)
抗原発現腫瘍細胞株に対する化合物の影響を評価するために、2500細胞/ウェルを90μlの培地に播種した。翌日、異なる濃度の抗体-薬物コンジュゲートを含む10μlの培地を加えた。BrdU取り込みアッセイ(Cell Proliferation ELISA、BrdU、Roche)を、薬物曝露の72時間又は96時間後に実施した。化学発光を、FLUOstar Optima化学発光計(BMG LABtech)を使用して測定した。各化合物についてのEC50値を、Graphpad Prism 4.0ソフトウェアを用いたシグモイド用量反応曲線分析によって決定した。
【0202】
WST-Iに基づく細胞増殖アッセイ(図8
Fcg-受容体発現THP-1細胞に対する化合物の影響を評価するために、2500細胞/ウェルを90μlの培地に播種した。翌日、異なる濃度の抗体-薬物コンジュゲートを含む10μlの培地を加えた。薬物適用の96時間後、10μlの細胞増殖剤WST-1(Roche)を各ウェルに加えた。さらに4時間~24時間のインキュベーション後、440nm/660nmでの吸光度を、FLUOstar Optima化学発光計(BMG LABtech)を使用して決定した。各化合物のEC50値を、Graphpad Prism 4.0ソフトウェアを使用してシグモイド用量反応曲線分析によって決定した。
【0203】
細胞表面結合アッセイ(図6
1x106抗原発現腫瘍細胞を含むPBS中の100μlの細胞懸濁液を、0.1~50μg/mlの抗体又は抗体-薬物コンジュゲートと共に、又はそれらを含まずに、30分間4℃でインキュベートした。検出のために、ヤギ抗ヒトIgG(H+L)-Alexa Fluor 488 F(ab’)2-フラグメント(Dianova)を使用した。固定した染色細胞を、BD FACScan装置でFACSによって分析した。試料の平均蛍光強度をBD CellQuest Proソフトウェアを使用して計算し、対照試料値を差し引いた際のIgG濃度に対してプロットして、結合曲線を得た。
【0204】
クマシーブルー染色でのSDS-PAGE及びウェスタンブロッティング(図7
抗体及び抗体-薬物コンジュゲートを、標準的な方法に従ってアマニチンペイロード(payload)の還元及び非還元SDS-PAGE、次いでクマシーブルー染色、又はウェスタンブロット検出によって分析した。検出のために、タンパク質にコンジュゲートしたアマニチン及びアマニチン-リンカー化合物の検出を可能にする、ポリクローナルウサギ血清を使用した。
【0205】
マウス忍容性及び有効性実験(図9、14)
10%を超えない個々の体重減少を引き起こす用量として定義される、最大耐用量(MTD)を、抗体-薬物コンジュゲートの単一静脈内用量について評価した。異種移植モデルについて、240μlの培地に懸濁した5x106個の腫瘍細胞(早期継代数)を、7~8週齢の雌NMRIヌードマウス(Janvier)の右脇腹に皮下注射した。腫瘍が100~200mm3の平均体積に達したら、動物を、1つの群当たり8匹の動物の処置群に無作為に割り当てた。単回静脈内投与処置を全ての動物に適用した。エンドトキシン濃度<1EU(エンドトキシン単位)/mgタンパク質を、Endosafe-PTSシステム(Charles River)を使用することによってイン・ビボの実験に使用した全てのバッチについて実証した。適用量は10ml/kg体重であり、PBSをビヒクル対照として使用した。腫瘍増殖をキャリパー(caliper)で測定し、腫瘍体積を以下の式を用いて計算した。
Tvol=(大径(larger diameter)×(小径(smaller diameter))2×0.5)
マウスを、瀕死状態の時又は示された時点で、CO2吸入によって屠殺した。全ての動物実験は、ドイツの動物福祉基準(German animal welfare standards)(GV-SOLAS)に従って行われ、責任ある委員会(Regierungsprasidium Karlsruhe、Referat 35)によって承認されている。統計分析をPrismソフトウェア(GraphPad Software、Inc.)及び1-Way ANOVAを使用して行った。
【0206】
以下の表1は、異なるHer2-アマニチン-ADCsの治療指数を示す。
【0207】
【表2】
【0208】
カニクイザル(Cynomolgus monkey)忍容性試験(図10
非ヒト霊長類(NHP)の毒性試験を、雌のカニクイザル(cynomolgus monkeys)で行った。全ての試験プロトコルは、試験施設動物実験委員会(Animal Care and Use Committee)によって承認された。非GLP単回投与毒性試験を3週間間隔で漸増用量の静脈内(IV)注射を用いて行った。身体検査、体重、摂食量、行動、臨床化学、尿検査および血液学を含む各試験で、総合的な毒性パラメータを評価した。血液試料を様々な時点で採取した。忍容性の例として、血液中のパラメータLDHの経時変化を以下について示す(A)Her2-30.0643;(B)Her2-30.1465;(C)Her2-A118C-30.0880;(D)Her2-D265C-30.0880。用量は以下のとおりである(i)0.3mg/kg;(ii)1mg/kg;(iii)3mg/kg;(iv)10mg/kg。
【0209】
質量分析(LC-MS)(図4、5)
MS分析の前に、抗体及び抗体薬物コンジュゲートを標準的なプロトコルを用いて脱グリコシル化及び還元した。したがって、PNGase Fによる脱グリコシル化及び透析後、抗体及び抗体薬物コンジュゲート溶液をアセトニトリルの添加によって沈殿させ、遠心分離して、沈殿物を6M塩酸グアニジニウム溶液中に再構成した。軽鎖及び重鎖分析のために、再構成した溶液を20mMのジチオトレイトールを用いて30分間56℃で還元した。次に、脱グリコシル化並びに還元された抗体及び抗体薬物コンジュゲートを、LTQ Orbitrap Elite.イオントラップ質量分析計(Thermo Fisher Scientific)を用いてナノLC-MSによって分析した。方法を分析前にインタクトかつ還元された抗体のために最適化した。最後に得られた質量スペクトルを、データ解析に適切なソフトウェア(ProMass、Thermo Fisher Scientific)によってデコンボリューションした。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4(A)-1】
図4(A)-2】
図4(B)-1】
図4(B)-2】
図4(C)-1】
図4(C)-2】
図5(A)-1】
図5(A)-2】
図5(B)-1】
図5(B)-2】
図5(C)-1】
図5(C)-2】
図6
図7(A)】
図7(B)-1】
図7(B)-2】
図8(A)】
図8(B)】
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12
図13
図14