(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
C08L23/16
(21)【出願番号】P 2021501983
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020006066
(87)【国際公開番号】W WO2020171019
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019030631
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】實方 正和
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181121(WO,A1)
【文献】特開2004-277516(JP,A)
【文献】特開2005-220229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位と、非共役ポリエン由来の構成単位とを含み、かつ(a-1)ムーニー粘度ML1+4(125℃)が50~200である共重合体(A)由来の成分100質量部に対し、
下記要件(b-1)及び(b-2):
(b-1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.1~4g/10分、
(b-2)DSCで測定した融点(Tm)が100~200℃
を満たす結晶性プロピレン系重合体(B)の1種以上、合計10~50質量部と、
下記要件(c-1)及び(c-2):
(c-1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が5~15g/10分、
(c-2)DSCで測定した融点(Tm)が100~200℃
を満たす結晶性プロピレン系重合体(C)の1種以上、合計5~30質量部と、
下記要件(d-1):
(d-1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が3000~10000
を満たす低分子量ポリオレフィン(D)を4~18質量部含み、
かつ、前記共重合体(A)由来の成分の少なくとも一部がフェノール樹脂系架橋剤(E)により架橋されているオレフィン系重合体組成物。
【請求項2】
低分子量ポリオレフィン(D)が更に下記要件(d-2):
(d-2)DSCで測定した融解熱量が20J/g以上
を満たす請求項1記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項3】
前記オレフィン系重合体組成物が、更に軟化剤(F)由来の成分を90~150質量部含む請求項1又は2に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項4】
前記オレフィン系重合体組成物のMFR(230℃、10kg荷重)が5~150g/10分である請求項1~3のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項5】
前記共重合体(A)由来の成分100質量部に対する、(B)成分、(C)成分及び低分子量ポリオレフィン(D)の合計が20~80質量部である請求項1~4のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項6】
前記オレフィン系重合体組成物のJIS K6253に準拠して測定したショアA硬度(瞬間値)が50~80である請求項1~5のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体組成物から得られる成形体。
【請求項8】
射出成形体である請求項7記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体組成物及び該組成物から得られる成形体に関し、より詳しくは、射出成形時にも、成形体の表面外観に優れ、かつ機械強度、耐油性にも優れるオレフィン系重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーは、軽量でリサイクルが容易なことから、省エネルギー、省資源タイプのエラストマーとして、特に加硫ゴムの代替として、自動車部品、工業機械部品、電気・電子部品、建材等に広く使用されている。
【0003】
中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)とポリプロピレンなどの結晶性ポリオレフィンを原料としていることから、他の熱可塑性エラストマーに比べて、比重が軽く、耐熱老化性、耐候性などの耐久性に優れているため、様々な成形法により広範囲の用途に使用されている。
【0004】
特許文献1には、ポリオレフィン樹脂と、フェノール樹脂系加硫剤で加硫されているEPDMゴムからなるエラストプラスチック組成物は熱可塑性物として加工しうる強靭で強いエラストマー組成物であることが記載されており、また押出し、射出成形、吹込成形、熱成形などによりそれから物品が形成されうる程度に加工可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のようなフェノール樹脂系架橋剤を用いることにより得られたポリオレフィン樹脂とEPDMとの組成物は、耐油性や機械強度などに優れ、様々な成形法を用いて加工が可能である。一方、射出成形で成形体を得ようとするときには、ゲート跡が小さく、多数個取りが可能などの利点があることから、金型のゲートとしてピンゲートを採用することがある。
【0007】
しかしながら、フェノール樹脂系架橋剤を用いることにより得られた前記組成物を、射出成形によりピンゲートを有する金型を用いて成形すると、成形品表面が劣り、黒色の成形体であれば白化してしまう場合があることがわかってきた。またこの傾向は、特に組成物におけるEPDMの割合が比較的多い低硬度から中硬度の場合に顕著であることが分かってきた。
【0008】
本発明の課題は、機械強度、耐油性に優れ、かつ射出成形性にも優れた熱可塑性架橋組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)エチレン由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位と、非共役ポリエン由来の構成単位とを含み、かつ(a-1)ムーニー粘度ML1+4(125℃)が50~200である共重合体(A)由来の成分100質量部に対し、下記要件(b-1)及び(b-2):
(b-1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.1~4g/10分、
(b-2)DSCで測定した融点(Tm)が100~200℃
を満たす結晶性プロピレン系重合体(B)の1種以上、合計10~50質量部と、
下記要件(c-1)及び(c-2):
(c-1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が5~15g/10分、
(c-2)DSCで測定した融点(Tm)が100~200℃
を満たす結晶性プロピレン系重合体(C)の1種以上、合計5~30質量部と、
下記要件(d-1):
(d-1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が3000~10000
を満たす低分子量ポリオレフィン(D)を4~18質量部含み、
かつ、前記共重合体(A)由来の成分の少なくとも一部がフェノール樹脂系架橋剤(E)により架橋されているオレフィン系重合体組成物。
(2)低分子量ポリオレフィン(D)が更に下記要件(d-2):
(d-2)DSCで測定した融解熱量が20J/g以上
を満たす前記(1)に記載のオレフィン系重合体組成物。
(3)前記オレフィン系重合体組成物が、更に軟化剤(F)由来の成分を90~150質量部含む前記(1)又は(2)に記載のオレフィン系重合体組成物。
(4)前記オレフィン系重合体組成物のMFR(230℃、10kg荷重)が5~150g/10分である前記(1)~(3)のいずれかに記載のオレフィン系重合体組成物。
(5)前記共重合体(A)由来の成分100質量部に対する、(B)成分、(C)成分及び低分子量ポリオレフィン(D)の合計が20~80質量部である(1)~(4)のいずれかに記載のオレフィン系重合体組成物。
(6)前記オレフィン系重合体組成物のJIS K6253に準拠して測定したショアA硬度(瞬間値)が50~80である(1)~(5)のいずれかに記載のオレフィン系重合体組成物。
(7)前記(1)~(6)のいずれかに記載のオレフィン系重合体組成物から得られる成形体。
(8)射出成形体である前記(7)に記載の成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械強度、耐油性に優れ、かつ射出成形性にも優れた熱可塑性架橋組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の重合体組成物は、少なくとも、(i)エチレン由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位と、非共役ポリエン由来の構成単位とを含む共重合体(A)由来の成分、(ii)結晶性プロピレン系重合体(B)、(iii)結晶性プロピレン系重合体(C)、及び(iv)低分子量ポリオレフィン(D)から構成される。
【0012】
本発明において、「エチレン由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン由来の構成単位と、非共役ポリエン由来の構成単位とを含む共重合体(A)」等「由来の成分」とは、前記共重合体(A)等を原料として得られる成分を表す。
【0013】
<エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)>
本発明で用いるエチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)(本発明において共重合体(A)とも称す)は、エチレン由来の構造単位、少なくとも1種の炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位、及び少なくとも一種の非共役ポリエンに由来する構造単位を含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体であり、ムーニー粘度ML1+4(125℃)が50~200である。
【0014】
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン(炭素数3)、1-ブテン(炭素数4)、1-ノネン(炭素数9)、1-デセン(炭素数10)、1-ノナデセン(炭素数19)、1-エイコセン(炭素数20)等の側鎖のない直鎖状のα-オレフィン;側鎖を有する4-メチル-1-ペンテン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等の側鎖を有するα-オレフィンなどが挙げられる。これらα-オレフィンは1種単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンがより好ましい。これらα-オレフィンは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
非共役ポリエンとしては、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン、1,3,7-オクタトリエン、1,4,9-デカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエンなどが挙げられる。これら非共役ポリエンは、1種単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、1,4-ヘキサジエンなどの環状非共役ジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン及び5-ビニル-2-ノルボルネンの混合物が好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネンがより好ましい。
【0016】
共重合体(A)としては、エチレン・1-ブテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ペンテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-へプテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ノネン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-デセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体などが挙げられる。
【0017】
共重合体(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレン/α-オレフィン比、すなわち、エチレン由来の構造単位[A]と、α-オレフィンに由来する構造単位[B]とのモル比[[A]/[B]]が、40/60~90/10の範囲にある。モル比[A]/[B]の下限としては、好ましくは45/55、より好ましくは50/50、特に好ましくは55/45である。また、モル比[A]/[B]の上限としては、好ましくは80/20、より好ましくは75/25である。
【0019】
共重合体(A)は、JIS K6300(1994)に準じて測定して得られた、125℃におけるムーニー粘度ML1+4(125℃)が50~200であり、好ましくは60~200、更に好ましくは100~200の範囲にある。前記ムーニー粘度が50未満であると、機械強度、耐熱性が劣り、200を超えると、熱可塑性エラストマーの成形性が悪化する。
【0020】
共重合体(A)のヨウ素価は、通常2~50g/100g、好ましくは5~40g/100g、より好ましくは7~30g/100gである。ヨウ素価がこの範囲を下回ると、高温化での形状回復性が悪化し、この範囲を上回ると、成形性が悪化する。
【0021】
共重合体(A)は、非共役ポリエンに由来する構造単位[C]の含有量が、[A]、[B]及び[C]の構造単位の合計を100モル%に対して、好ましくは0.1~6.0モル%、より好ましくは0.5~4.0モル%、更に好ましくは0.5~3.5モル%、特に好ましくは0.5~3.0モル%の範囲にある。非共役ポリエンに由来する構造単位[C]の含有量が前記範囲にあると、十分な架橋性、及び柔軟性を有するエチレン系共重合体が得られる傾向にある。
【0022】
前記共重合体は、例えば「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会、発行p.309~330)」もしくは本願出願人の出願に係る特開平9-71617号公報、特開平9-71618号公報、特開平9-208615号公報、特開平10-67823号公報、特開平10-67824号公報、特開平10-110054号公報、WO2009/081792号パンフレット、WO2009/081794号パンフレットなどに記載されているような方法により製造することができる。
【0023】
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の製造の際に好ましく用いられるオレフィン重合用触媒としては、例えば、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)等の遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物)とからなる公知のチーグラー触媒;元素の周期律表第4族から選ばれる遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物又はイオン化イオン性化合物とからなる公知のメタロセン触媒、例えば特開平9-40586号公報に記載されているメタロセン触媒;特定の遷移金属化合物と、ホウ素化合物等の共触媒とからなる公知のメタロセン触媒、例えばWO2009/072553号パンフレットに記載されているメタロセン触媒;特定の遷移金属化合物と、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物又は該遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物とからなる遷移金属化合物触媒、例えば特開2011-52231号公報に記載されている遷移金属化合物触媒;特開2010-241897号公報に記載された触媒を挙げることができる。また、WO2016/152711号パンフレットに記載の触媒を用いて製造することもできる。特にメタロセン触媒を用いると、ジエンの分布が均一となってジエンの導入が少なくても高い架橋効率を得ることができ、また触媒活性が高いため触媒由来の塩素含量を低減できるため特に好ましい。
【0024】
<結晶性プロピレン系重合体(B)>
本発明に用いる結晶性プロピレン系重合体(B)としては、例えばプロピレン単独、又はプロピレンとその他の1種又は2種以上のモノオレフィンを高圧法又は低圧法により重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物が挙げられる。このような重合体としては、アイソタクチックモノオレフィン重合体、シンジオタクチックモノオレフィン重合体等が挙げられる。
【0025】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
【0026】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
結晶性プロピレン系重合体(B)のプロピレン以外の適当な原料オレフィンとしては、好ましくは炭素数2又は4~20のα-オレフィン、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。これらの炭素数2又は4~20のα-オレフィンを用いる際は1種でも2種以上用いてもよい。重合様式は、樹脂状物が得られれば、ランダム型でもブロック型でもよい。これらのプロピレン系重合体は、単独でも、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明に用いる結晶性プロピレン系重合体(B)は、好ましくはプロピレン含量が全構成単位を100モル%とした場合に51モル%以上であるプロピレン系重合体である。
【0029】
これらのプロピレン系重合体の中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体等が特に好ましい。
【0030】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、MFR(ASTM D1238-65T;230℃、2.16kg荷重)が0.1~4g/10分であり、好ましくは0.5~3g/10分である。結晶性プロピレン系重合体(B)のMFRが0.1g/10分未満であると、重合体組成物の流動性が低下し、4g/10分を超えると、重合体組成物の機械強度が低下する。
【0031】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、示差走査熱量分析(DSC)で測定した融点(Tm)が、100~200℃であり、好ましくは130~200℃、更に好ましくは130~180℃である。前記融点(Tm)が100℃未満であると、重合体組成物の耐油性、耐熱性が低下し、200℃を超えると、重合体組成物中における共重合体(A)由来の成分の分散性が悪化する。
【0032】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、重合体組成物の機械特性を向上させる役割を果たす。
【0033】
結晶性プロピレン系重合体(B)の配合量は、重合体組成物のゴム弾性と機械強度の点から、共重合体(A)由来の成分の100質量部に対して、10~50質量部、好ましくは15~45質量部である。結晶性プロピレン系重合体(B)の配合量が10質量部未満であると、重合体組成物の機械強度が低下し、50質量部を超えると、重合体組成物のゴム弾性が低下する。
【0034】
<結晶性プロピレン系重合体(C)>
本発明に用いる結晶性プロピレン系重合体(C)は、プロピレン単独、又はプロピレンとその他の1種又は2種以上のモノオレフィンを高圧法又は低圧法により重合して得られる結晶性の高分子量固体生成物からなる。このような重合体としては、アイソタクチックモノオレフィン重合体、シンジオタクチックモノオレフィン重合体等が挙げられる。
【0035】
結晶性プロピレン系重合体(C)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
【0036】
結晶性プロピレン系重合体(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
結晶性プロピレン系重合体(C)のプロピレン以外の適当な原料オレフィンとしては、好ましくは炭素数2又は4~20のα-オレフィン、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、2-メチル-1-プロペン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。これらの炭素数2又は4~20のα-オレフィンを用いる際は1種でも2種以上用いてもよい。重合様式は、樹脂状物が得られれば、ランダム型でもブロック型でもよい。これらのプロピレン系重合体は、単独でも、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明に用いる結晶性プロピレン系重合体(C)は、好ましくはプロピレン含量が全構成単位を100モル%とした場合に51モル%以上であるプロピレン系重合体である。
【0039】
これらのプロピレン系重合体の中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体等が特に好ましい。
【0040】
結晶性プロピレン系重合体(C)は、MFR(ASTM D1238-65T;230℃、2.16kg荷重)が5~15g/10分であり、好ましくは7~13g/10分である。結晶性プロピレン系重合体(C)のMFRが5g/10分未満であると、重合体組成物の成形外観が悪化し、15g/10分を超えると、重合体組成物の機械強度が低下する。
【0041】
結晶性プロピレン系重合体(B)及び結晶性プロピレン系重合体(C)の合計のMFRは、次式:
(x/100)×log(MFR(B))+(y/100)×log(MFR(C))=(100/100)×logMFR
(式中、xは結晶性プロピレン系重合体(B)と結晶性プロピレン系重合体(C)との合計に対する、結晶性プロピレン系重合体(B)の質量分率、yは結晶性プロピレン系重合体(B)と結晶性プロピレン系重合体(C)との合計に対する結晶性プロピレン系重合体(C)の質量分率、MFR(B)は結晶性プロピレン系重合体(B)のMFR、MFR(C)は結晶性プロピレン系重合体(C)のMFR、MFRはASTM D1238-65T(230℃、2.16kg荷重)にて得られた数値を表す。)
で求めることができるが、本発明においては、重合体組成物の成形外観と機械特性の点から、前記合計のMFRが1~9であることが好ましく、1~6であることが更に好ましい。
【0042】
結晶性プロピレン系重合体(C)は、示差走査熱量分析(DSC)で測定した融点(Tm)が、100~200℃であり、好ましくは130~200℃、更に好ましくは130~180℃である。前記融点(Tm)が100℃未満であると、重合体組成物の耐油性、耐熱性が低下し、200℃を超えると、重合体組成物中における共重合体(A)由来の成分の分散性が悪化する。
【0043】
結晶性プロピレン系重合体(C)は、重合体組成物の成形外観を良好にさせる役割を果たす。
【0044】
結晶性プロピレン系重合体(C)の配合量は、重合体組成物のゴム弾性と成形外観の点から、共重合体(A)由来の成分の100質量部に対して、5~30質量部、好ましくは5~20質量部である。結晶性プロピレン系重合体(C)の配合量が5質量部未満であると、重合体組成物の成形外観が悪化し、30質量部を超えると、重合体組成物の機械特性が低下する。
【0045】
<低分子量ポリオレフィン(D)>
本発明に用いる低分子量ポリオレフィン(D)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)で測定したポリプロピレン換算数平均分子量(Mn)が3000~10000であるポリオレフィンであり、非共役ポリエンを含まないものが好ましく、好ましくは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、更に好ましくはポリプロピレンワックスが挙げられる。特にポリプロピレンワックスの場合、組成物の耐油性に優れる。
【0046】
本発明に用いるポリエチレンワックスは、エチレン単独を直接重合、又はエチレンとα-オレフィンを直接重合して得られるものであってもよく、また、高分子量のポリエチレンを熱分解して得られるものであってもよい。好ましいポリエチレンワックスは、直接重合したものである。また、ポリエチレンワックスは、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、あるいは沸点の差で分取する分子蒸留などの方法を用いて精製したものであってもよい。好ましいポリエチレンワックスの例は、例えば特開2009-144146号公報などに記載されているが、以下において簡単に説明する。
【0047】
本発明に用いるポリエチレンワックスは、例えば、エチレンの単独重合体、又はエチレンとα-オレフィンとの共重合体などである。このα-オレフィンの例には、炭素数3~20、好ましくは炭素数3~10のα-オレフィンが含まれる。α-オレフィンの具体例には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどが含まれ;好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンが含まれる。
【0048】
ポリエチレンワックスの全構成単位のうちのエチレン由来の構成単位の割合は、通常60~100質量%、好ましくは70~100質量%である。
【0049】
前記ポリエチレンワックスのJIS K7112(1999)の密度勾配管法に準拠して測定した密度は、890~980kg/m3であることが好ましく、更に好ましくは900~980kg/m3である。
【0050】
ポリエチレンワックスの密度は、例えば、ポリエチレンワックスが、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である場合には、エチレンに対するα-オレフィンの比率の調整、及びα-オレフィンの種類の選択により制御することができる。例えば、エチレンに対するα-オレフィンの使用量を増加することで、ポリエチレンワックスの密度を低くすることができる。また、ポリエチレンワックスの密度は、製造における重合温度によっても調整することができる。
【0051】
ポリエチレンワックスの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリエチレン換算数平均分子量(Mn)が3000~10000であり、好ましくは4000~9000であり、更に好ましくは5000~9000である。
【0052】
ポリエチレンワックスの前記数平均分子量(Mn)が3000未満であると、機械特性が低下し、10000を超えると、成形外観が悪化する。
【0053】
ポリエチレンワックスの数平均分子量(Mn)は、例えば、製造における重合温度によって調整することができる。
【0054】
ポリエチレンワックスの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリエチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、10000~30000であることが好ましく、更に好ましくは15000~30000である。
【0055】
ポリエチレンワックスの140℃での溶融粘度は、3000~9000mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは5000~9000mPa・sである。ポリエチレンワックスの溶融粘度は、例えば、ブルックフィールド型粘度計、歪制御式あるいは応力制御式のレオメーターなどの方法で測定することができる。
【0056】
ポリエチレンワックスのDSCで測定した融点(Tm)は、耐熱性の点から、60~150℃であることが好ましく、更に好ましくは100~180℃である。
【0057】
ポリエチレンワックスのDSCで測定した融解熱量は、耐油性の点から、好ましくは20J/g以上、より好ましくは40J/g以上、更に好ましくは40~150J/g、特に好ましくは、50~120J/gである。
【0058】
本発明に用いるポリプロピレンワックスは、立体特異性触媒の存在下に、プロピレンと必要に応じて他の単量体とを共重合させて得られたプロピレンの単独重合体、あるいはプロピレンを主体とする共重合体であってもよく、また、高分子量のポリプロピレンを熱分解して得られるものであってもよい。ポリプロピレンワックスは、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、あるいは沸点の差で分取する分子蒸留などの方法を用いて精製したものであってもよい。他の単量体の例には、エチレン、1-ブテン、1,3-ブタジエン、1-ヘキセン、3-ヘキセン、1-オクテン、4-オクテンなどが含まれる。
【0059】
本発明に用いるポリプロピレンワックスとしては、耐熱性の点から、プロピレン含量が90質量%以上のポリプロピレンが好ましい。
【0060】
ポリプロピレンワックスのJIS K7112の密度勾配管法に準拠して測定した密度は、900~910kg/m3であることが好ましい。
【0061】
ポリプロピレンワックスの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリプロピレン換算数平均分子量(Mn)が3000~10000であり、好ましくは4000~9000であり、更に好ましくは5000~9000である。
【0062】
ポリプロピレンワックスの前記数平均分子量(Mn)が3000未満であると、機械特性が低下し、10000を超えると、成形外観が悪化する。
【0063】
ポリプロピレンワックスの数平均分子量(Mn)は、例えば、製造における重合温度によって調整することができる。
【0064】
ポリプロピレンワックスの、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリプロピレン換算の質量平均分子量(Mw)は、10000~30000であることが好ましく、更に好ましくは15000~30000である。
【0065】
ポリプロピレンワックスの180℃での溶融粘度は、300~1500mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは500~1000mPa・sである。ポリプロピレンワックスの溶融粘度は、例えば、ブルックフィールド型粘度計、歪制御式あるいは応力制御式のレオメーターなどの方法で測定することができる。
【0066】
ポリプロピレンワックスのDSCで測定した融点(Tm)は、耐熱性の点から、60~180℃であることが好ましく、更に好ましくは100~180℃である。
【0067】
ポリプロピレンワックスのDSCで測定した融解熱量は、耐油性の点から、20J/g以上であることが好ましく、より好ましくは30~140J/gであり、更に好ましくは50~120J/gである。
【0068】
本発明のオレフィン系重合体組成物は、成形外観の点から、共重合体(A)由来の成分100質量部に対する、(B)成分、(C)成分及び低分子量ポリオレフィン(D)の合計が20~80質量部であることが好ましく、20~70質量部であることが更に好ましい。
【0069】
<フェノール樹脂系架橋剤(E)>
本発明においては、架橋剤として、フェノール樹脂系架橋剤(E)を用いる。
フェノール樹脂系架橋剤(E)(本発明において架橋剤(E)とも称す)としては、レゾール樹脂でありアルキル置換フェノール又は非置換フェノールのアルカリ媒体中のアルデヒドでの縮合、好ましくはホルムアルデヒドでの縮合、又は二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造されることも好ましい。アルキル置換フェノールは1~10の炭素原子のアルキル基置換体が好ましい。更にはp-位において1~10の炭素原子を有するアルキル基で置換されたジメチロールフェノール類又はフェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂系硬化樹脂は、典型的には、熱架橋性樹脂であり、フェノール樹脂系架橋剤又はフェノール樹脂とも呼ばれる。
【0070】
フェノール樹脂系硬化樹脂(フェノール樹脂系架橋剤)の例としては、下記一般式(I)を挙げることができる。
【0071】
【化1】
(式中、Qは、-CH
2-及び-CH
2-O-CH
2-から成る群から選ばれる二価の基であり、mは0又は1~20の正の整数であり、R'は有機基である)。
【0072】
好ましくは、Qは、二価基-CH2-O-CH2-であり、mは0又は1~10の正の整数であり、R'は20未満の炭素原子を有する有機基である。更に好ましくは、mは0又は1~5の正の整数であり、R'は4~12の炭素原子を有する有機基である。具体的にはアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、ハロゲン化アルキルフェノール樹脂等が挙げられ、好ましくはハロゲン化アルキルフェノール樹脂であり、更に好ましくは、末端の水酸基を臭素化したものである。フェノール樹脂系硬化樹脂において、末端が臭素化されたものの一例を下記一般式(II)に示す。
【0073】
【化2】
(式中、nは0~10の整数、Rは炭素数1~15の飽和炭化水素基である。)
【0074】
前記フェノール樹脂系硬化樹脂の製品例としては、タッキロール(登録商標)201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、タッキロール(登録商標)250-I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、タッキロール(登録商標)250-III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、PR-4507(群栄化学工業(株)社製)、Vulkaresat510E(Hoechst社 製)、Vulkaresat532E(Hoechst社製)、Vulkaresen E(Hoechst社製)、Vulkaresen105E(Hoechst社製)、Vulkaresen130E(Hoechst社製)、Vulkaresol315E(Hoechst社製)、Amberol ST 137X(Rohm&Haas社製)、スミライトレジン(登録商標)PR-22193(住友デュレズ(株)社製)、Symphorm-C-100(Anchor Chem.社製)、Symphorm-C-1001(Anchor Chem.社製)、タマノル(登録商標)531(荒川化学(株)社製)、Schenectady SP1059(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1045(Schenectady Chem.社製)、CRR-0803(U.C.C社製)、Schenectady SP1055F(Schenectady Chem.社製、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂)、Schenectady SP1056(Schenectady Chem.社製)、CRM-0803(昭和ユニオン合成(株)社製)、Vulkadur A(Bayer社製)が挙げられる。その中でも、ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤が好ましく、タッキロール(登録商標)250-I、タッキロール(登録商標)250-III、Schenectady SP1055Fなどの臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂がより好ましく使用できる。
【0075】
また、熱可塑性架橋ゴムのフェノール樹脂による架橋の具体的な例としては、米国特許第4,311,628号、米国特許第2,972,600号及び米国特許第3,287,440号各明細書に記載され、これらの技術も本発明に用いることができる。
【0076】
米国特許第4,311,628号明細書には、フェノール系硬化性樹脂(phenolic curing resin)及び架橋活性剤(cure activator)からなるフェノール系架橋剤系(phenolic curative system)が開示されている。該系の基本成分は、アルカリ媒体中における置換フェノール(例えば、ハロゲン置換フェノール、C1-C2アルキル置換フェノール)又は非置換フェノールとアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドとの縮合によるか、あるいは二官能性フェノールジアルコール類(好ましくは、パラ位がC5-C10アルキル基で置換されたジメチロールフェノール類)の縮合により製造されるフェノール樹脂系架橋剤である。アルキル置換フェノール樹脂系架橋剤のハロゲン化により製造されるハロゲン化されたアルキル置換フェノール樹脂系架橋剤が、特に適している。メチロールフェノール硬化性樹脂、ハロゲン供与体及び金属化合物からなるフェノール樹脂系架橋剤が特に推奨でき、その詳細は米国特許第3,287,440号及び同第3,709,840号各明細書に記載されている。非ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤は、ハロゲン供与体と同時に、好ましくはハロゲン化水素スカベンジャーとともに使用される。通常、ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤、好ましくは、2~10質量%の臭素を含有している臭素化フェノール樹脂系架橋剤はハロゲン供与体を必要としないが、例えば酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素及び酸化亜鉛、好ましくは酸化亜鉛のような金属酸化物のごときハロゲン化水素スカベンジャーと同時に使用される。これら酸化亜鉛などのハロゲン化水素スカベンジャーは、フェノール樹脂系架橋剤100質量部に対して、通常1~20質量部用いられる。このようなスカベンジャーの存在はフェノール樹脂系架橋剤の架橋作用を促進するが、フェノール樹脂系架橋剤で容易に架橋されないゴムの場合には、ハロゲン供与体及び酸化亜鉛を共用することが望ましい。ハロゲン化フェノール系硬化性樹脂の製法及び酸化亜鉛を使用する架橋剤系におけるこれらの利用は米国特許第2,972,600号及び同第3,093,613号各明細書に記載されており、その開示は前記米国特許第3,287,440号及び同第3,709,840号各明細書の開示とともに参考として本明細書にとり入れるものとする。適当なハロゲン供与体の例としては、例えば、塩化第一錫、塩化第二鉄、又は塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン及びポリクロロブタジエン(ネオプレンゴム)のようなハロゲン供与性重合体が挙げられる。本明細書で使用されている「架橋促進剤」なる用語はフェノール樹脂系架橋剤の架橋効率を実質上増加させるあらゆる物質を意味し、そして金属酸化物及びハロゲン供与体を包含し、これらは単独で、又は組み合わせて使用される。フェノール系架橋剤系のより詳細に関しては、「Vulcanization and Vulcanizing Agents」(W. Hoffman, Palmerton Publishing Company)を参照されたい。適当なフェノール樹脂系架橋剤及び臭素化フェノール樹脂系架橋剤は商業的に入手することができ、例えばかかる架橋剤はSchenectady Chemicals, Inc.から商品名「SP-1045」、「CRJ-352」、「SP-1055F」及び「SP-1056」として購入されうる。同様の作用上等価のフェノール樹脂系架橋剤は、また他の供給者から得ることができる。
【0077】
架橋剤(E)は、分解物の発生が少ないため、フォギング防止の観点から好適な架橋剤である。架橋剤(E)は、ゴムの本質的に完全な架橋を達成させるに充分な量で使用される。
【0078】
架橋剤(E)は、重合体組成物のゴム弾性の点から、共重合体(A)100質量部に対して、通常0.1~20質量部、好ましくは0.5~15質量部使用することが望ましい。
【0079】
本発明においては、架橋剤(E)による動的架橋に際し、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N,4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートなどの多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートなどの多官能性ビニルモノマー等の助剤を配合することができる。
【0080】
また、架橋剤(E)の分解を促進するために、分散促進剤を用いてもよい。分解促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、2,4,6-トリ(ジメチルアミノ)フェノールなどの三級アミン;
アルミニウム、コバルト、バナジウム、銅、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、マグネシウム、鉛、水銀等、ナフテン酸と種々の金属(例えば、Pb、Co、Mn、Ca、Cu、Ni、Fe、Zn、希土類)とのナフテン酸塩等が挙げられる。
【0081】
<その他の成分>
本発明の組成物には、共重合体(A)、結晶性プロピレン系重合体(B)、結晶性プロピレン系重合体(C)及び低分子量ポリオレフィン(D)の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、軟化剤(F)、充填剤等が挙げられる。また、添加剤としては、共重合体(A)以外のゴム(例えば、ポリイソブチレン、ブチルゴム、プロピレン・エチレン共重合体ゴム、プロピレン・ブテン共重合体ゴム及びプロピレン・ブテン・エチレン共重合体ゴムなどのプロピレン系エラストマー、エチレン・プロピレン共重合体ゴムなどのエチレン系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー);熱硬化性樹脂、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂等の結晶性プロピレン系重合体(C)及び低分子量ポリオレフィン(D)以外の樹脂;受酸剤、紫外線吸収剤;酸化防止剤;耐熱安定剤;老化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤;帯電防止剤;金属セッケン;ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス以外のワックス、脂肪族アミドなどの滑剤等、ポリオレフィンの分野で用いられている公知の添加剤が挙げられる。
【0082】
これら添加剤は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
軟化剤(F)としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。軟化剤(F)としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチなどのコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸又は脂肪酸塩;ナフテン酸;パイン油、ロジン又はその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。
【0084】
これら軟化剤(F)は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、共重合体(A)由来の成分100質量部に対して、好ましくは90~150質量部、更に好ましくは100~140質量部の量で用いられる。軟化剤(F)をこのような量で用いると、重合体組成物の流動性、耐油性に優れる。
【0085】
充填剤としては、無機充填剤と、有機充填剤とを任意に用いることができるが、特に無機充填剤が好ましく用いられる。本用途に用いられる無機充填剤としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アスベスト、金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維、カーボンブラック、グラファイト、シリカ、シラスバルーン、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン等)、ケイソウ土、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等)、金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム等)、金属の硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー等)、金属の硫化物(二硫化モリブデン等)、及び各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、雲母粉、ガラスフレーク、ガラス球、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が挙げられる。これらの充填剤は単独又は2種以上の併用いずれでもよい。
【0086】
なお、これらのうちでもカーボンブラックを、共重合体(A)100質量部に対して0.1~20質量部含む場合、好ましくは1~5質量部含む場合においては、本発明の効果が顕著である。
【0087】
受酸剤としては、2価金属の酸化物又は水酸化物、例えばZnO、MgO、CaO、Mg(OH)2、Ca(OH)2、又はハイドロタルサイトMg6Al2(OH)16CO3・nH2Oが用いられる。これらの受酸剤は、共重合体(A)由来の成分100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは0.1~10質量部の割合で用いられる。
【0088】
老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤がある。
【0089】
また、本明細書において配合量を記載している添加剤以外の添加剤の配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、共重合体(A)由来の成分、結晶性プロピレン系重合体(B)及び結晶性プロピレン系重合体(C)の合計100質量部に対して、それぞれ通常5質量部以下、好ましくは0.01~5質量部、合計で、通常10質量部以下、好ましくは0.1~5質量部である。
【0090】
[組成物の製造方法]
組成物の製造方法は、特に制限はなく、例えば未架橋の共重合体(A)、結晶性プロピレン系重合体(B)、結晶性プロピレン系重合体(C)及び低分子量ポリオレフィン(D)をフェノール樹脂系架橋剤(E)の存在下に動的に熱処理することを含む方法により製造すればよい。
【0091】
本発明において、「動的に熱処理する」とは、架橋剤(E)の存在下で、前記混合物を溶融状態で混練することをいう。また、「動的架橋」とは、混合物にせん断力を加えながら架橋することをいう。
【0092】
より具体的には例えば、未架橋の共重合体(A)と、結晶性プロピレン系重合体(B)、結晶性プロピレン系重合体(C)及び低分子量ポリオレフィン(D)の少なくとも一部と、架橋剤(E)、必要に応じて、軟化剤(F)、架橋助剤を動的熱処理することにより製造した組成物前駆体に、必要に応じて、残りの結晶性プロピレン系重合体(B)、結晶性プロピレン系重合体(C)及び低分子量ポリオレフィン(D)、その他の成分を通常の条件で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法が挙げられる。
【0093】
本発明における動的な熱処理は、非開放型の装置中で行うことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理の温度は、結晶性プロピレン系重合体(B)、結晶性プロピレン系重合体(C)の融点から300℃の範囲であり、通常150~270℃、好ましくは170~250℃である。混練時間は、通常1~20分間、好ましくは1~10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度で10~50,000sec-1、好ましくは100~10,000sec-1の範囲である。
【0094】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例えばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸又は二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましい。
【0095】
上述した動的な熱処理によって、共重合体(A)の少なくとも一部が架橋された熱可塑性エラストマーが得られる。得られた熱可塑性エラストマーで架橋される重合体は、主として共重合体(A)である。
【0096】
[組成物の物性]
本発明のオレフィン系重合体組成物において、共重合体(A)由来の成分の少なくとも一部はフェノール樹脂系架橋剤(E)により架橋されている。
【0097】
本発明のオレフィン系重合体組成物のMFR(230℃、10kg荷重)は、成形性の点から、5~150g/10分であることが好ましく、5~140g/10分であることがより好ましく、5~100g/10分であることが更に好ましい。
【0098】
本発明のオレフィン系重合体組成物は、ゴム弾性の点から、JIS K6253に準拠して測定したショアA硬度(瞬間値)が50~80であることが好ましく、50~70であることが更に好ましい。
【0099】
本発明のオレフィン系重合体組成物の、後述する実施例の方法で測定した圧縮永久歪(CS、25%圧縮、70℃、22時間の条件での圧縮後の測定値)に、特に制限はないが、10%~40%の範囲にあることが望ましい。
【0100】
[成形体]
本発明の成形体は、前記の重合体組成物を、射出成形法、押出成形法、溶液流延法、インフレーション成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、注型成形法等といった公知の成形方法により成形することにより得られる。
【0101】
本発明の成形体としては、成形体としては、エアクリーナーシール、エアインテークホース、ケーブルコネクタ、クッションゴムが挙げられる。
【0102】
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2019-030631の明細書に記載される内容を包含する。
【実施例】
【0103】
次に本発明について実施例を示して更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0104】
[測定方法及び評価方法]
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の各構成単位のモル量及び質量]
エチレンに由来する構成単位、α-オレフィンに由来する構成単位及び非共役ポリエンに由来する構成単位のモル量及び質量は、1H-NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。
【0105】
[ムーニー粘度]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体のムーニー粘度ML1+4(125℃)は、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
【0106】
[(B)、(C)及び(D)成分の融点(Tm)]
JIS K7121に準拠して示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)を用い、下記の方法により測定した。
【0107】
約5mgの重合体をセイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計(DSC220C型)の測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱した。重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/分で-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、10℃/分で200℃まで2度目の加熱を行い、この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を重合体の融点(Tm)とした。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用した。
【0108】
[(D)成分のポリプロピレン換算のMn]
数平均分子量Mnは、GPC測定から求めた。測定は以下の条件で行った。また、数平均分子量Mn、及び重量平均分子量Mwは、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、ポリプロピレン換算(汎用較正法)によって求めた。
【0109】
装置:ゲル浸透クロマトグラフ HLC-8321 HT型(東ソー製)
溶剤:o-ジクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMH6-HT×2、TSKgel GMH6-HTLカラム×2(何れも東ソー社製)
流速:1.0ml/分
試料:0.15mg/mL o-ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
【0110】
[(D)成分のポリエチレン換算のMn]
数平均分子量Mnは、GPC測定から求めた。測定は以下の条件で行った。また、数平均分子量Mn、及び重量平均分子量Mwは、市販の単分散標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し、ポリエチレン換算(汎用較正法)によって求めた。
【0111】
装置:ゲル浸透クロマトグラフ HLC-8321 HT型(東ソー製)
溶剤:o-ジクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMH6-HT×2、TSKgel GMH6-HTLカラム×2(何れも東ソー社製)
流速:1.0ml/分
試料:0.15mg/mL o-ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
【0112】
[熱可塑性エラストマー組成物(オレフィン系重合体組成物)及び成形体の物性]
下記実施例及び比較例における熱可塑性エラストマー組成物の物性の評価方法は次の通りである。
【0113】
[ショアA硬度]
100t電熱自動プレス(ショージ社製)を用いて、得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを230℃で6分間プレス成形し、その後、室温で5分間冷却プレスして厚さ2mmのプレスシートを作製した。該シートを用いて、JIS K6253に準拠して、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
【0114】
[引張特性]
JIS K6301の方法に従って測定した。
なお、試験片は、厚さ2mmのプレスシートから3号ダンベル片を打ち抜いて用いた。
測定温度:23℃
M100:100%伸び時の応力(MPa)
TB:引張破断強度(MPa)
EB:引張破断点伸び(%)
【0115】
[圧縮永久歪(CS)]
100t電熱自動プレス(ショージ社製)を用いて、得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを230℃で6分間プレス成形し、その後、室温で5分間冷却プレスして厚さ2mmのプレスシートを作製した。
【0116】
JIS K6250に準拠して、上述のようにして作製された厚さ2mmのプレスシートを積層し、JIS K6262に準拠して圧縮永久ひずみ試験を行った。
【0117】
試験条件は、厚み12mm(厚み3mm片の4枚重ね)の積層されたシートを用い、25%圧縮、70℃、22時間の条件で圧縮を行い、歪み除去(圧縮)後30分経過後に測定した。
【0118】
[耐油試験:重量変化率]
試験油として流動パラフィン(軟質)(ナカライテスク社製コード番号:26132-35)を使用し、2mmプレスシートを80℃×24時間浸漬した。その後サンプル表面をふき取り、n数=2にて重量変化率を測定した。
【0119】
[成形外観]
住友重機械工業(株)縦型射出成形機SV-50を用い、ピンゲート直径1mm、内径16mm、外径22mm、幅100mmの円柱状金型を用いて、成形温度:220℃、射出速度70mm/sにて成形を行った。
判定基準:
○:目視にて成形品表面に白色の模様が観察された。
×:目視にて成形品表面に白色の模様が観察されない。
【0120】
[使用材料]
(1)共重合体(A)
共重合体(A)として、市販のエチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム(EPDM)(エチレン/プロピレン比=73/27モル%、ヨウ素価13、ムーニー粘度ML1+4(125℃)=116)を用いた。
【0121】
(2)結晶性プロピレン系重合体
結晶性プロピレン系重合体として、以下の結晶性プロピレン系重合体を用いた。
(B-1)市販のプロピレン単独重合体(MFR(条件:230℃、2.16kgf)=0.5g/10分、DSCで測定した融点=165℃)
(B-2)市販のプロピレン単独重合体(MFR(条件:230℃、2.16kgf)=2g/10分、DSCで測定した融点=170℃)
(B-3)市販のプロピレンブロック重合体(エチレン含量7質量%、MFR(条件:230℃、2.16kgf)=3g/10分、DSCで測定した融点=160℃)
(C-1)市販のプロピレン単独重合体(MFR(条件:230℃、2.16kgf)=9g/10分、DSCで測定した融点=165℃)
(X-1)市販のプロピレンブロック重合体(エチレン含量4質量%、MFR(条件:230℃、2.16kgf)=50g/10分、DSCで測定した融点=160℃)
【0122】
(3)低分子量ポリオレフィン(D)
低分子量ポリオレフィン(D)として、以下のポリプロピレンワックス又はポリエチレンワックスを用いた。
(D-1)市販のポリプロピレンワックス(プロピレン含量100質量%、Mn=5000、Mw=20000、DSCで測定した融点=160℃、DSCで測定した融解熱量=102J/g)
(D-2)市販のポリプロピレンワックス(プロピレン含量95質量%、Mn=6000、Mw=20000、DSCで測定した融点=130℃、DSCで測定した融解熱量=53J/g)
(D-3)市販のポリエチレンワックス(エチレン含量100質量%、Mn=5000、Mw=20000、DSCで測定した融点=130℃、DSCで測定した融解熱量=110J/g、密度=920kg/m3)
【0123】
(4)滑剤
滑剤として、エルカ酸アミド(日油株式会社製アルフローP-10)を用いた。
【0124】
(5)軟化剤
軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル(ダイアナプロセスオイルTMPW-100:出光興産社製)を用いた。
【0125】
(6)フェノール樹脂系架橋剤(E)
フェノール樹脂系架橋剤として、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(商品名:SP-1055F、Schenectady社製)を用いた。
【0126】
(7)受酸剤
受酸剤として、酸化亜鉛(酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製)を用いた。
【0127】
(8)充填剤
充填剤として、カーボンブラックマスターバッチ(商品名:PEONY BLACK F32387MM、DIC(株)製)を用いた。
【0128】
[実施例1]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100質量部、結晶性プロピレン系重合体(B)として結晶性プロピレン系重合体(B-1)27質量部、結晶性プロピレン系重合体(C)としてプロピレン単独重合体(C-1)8質量部、低分子量ポリオレフィン(D)としてポリプロピレンワックス(D-1)8質量部、フェノール樹脂系架橋剤(E)として臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(商品名:SP-1055F、Schenectady社製)8質量部、受酸剤として酸化亜鉛(酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製)0.5質量部、充填剤としてカーボンブラックマスターバッチ(商品名:PEONY BLACK F32387MM、DIC(株)製)3質量部、及び軟化剤(ダイアナプロセスオイルTMPW-100、パラフィンオイル)120質量部を、押出機(品番 KTX-30、神戸製鋼(株)製、シリンダー温度:C1:50℃、C2:90℃、C3:100℃、C4:120℃、C5:180℃、C6:200℃、C7~C14:200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:500rpm、押出量:40kg/h)を用いて、混練後、動的架橋させ、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0129】
100t電熱自動プレス(ショージ社製)を用いて、得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを230℃で6分間プレス成形し、その後、室温で5分間冷却プレスして厚さ2mmの試験片を得た。
【0130】
これらの試験片を用いて、各物性を評価した。結果を表1に示す。
【0131】
[実施例2~9及び比較例1~8]
実施例1において、各組成物の組成を表1又は表2に示すように変更する以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1又は表2に示す。
【0132】
【0133】
【0134】
表1及び2から、重合体組成物が本発明の要件を満たした場合、機械特性、成形外観、耐油性のバランスが良好であることがわかる。
【0135】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。