(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】硫黄-炭素複合体、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20220606BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220606BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220606BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20220606BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220606BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20220606BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M10/0566
H01M4/36 A
H01M10/052
C01B32/05
(21)【出願番号】P 2021513744
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 KR2019011255
(87)【国際公開番号】W WO2020055017
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0108788
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505282042
【氏名又は名称】ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ドンウク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジンウ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウォンワン・イム
(72)【発明者】
【氏名】クォンナム・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジア・イ
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517603(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103480(WO,A1)
【文献】特表2014-522355(JP,A)
【文献】SAHORE, R. et al.,"High-rate lithiume-sulfur batteries enabled by hierarchical porous carbons synthesized via ice templation",Journal of Power Sources,2015年08月07日,Vol.297,pp.188-194
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/36
H01M 4/587
H01M 10/0566
H01M 10/052
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性炭素;ジイソプロ
ペニルベンゼン;及び硫黄を含む硫黄-炭素複合体であって、
前記ジイソプロ
ペニルベンゼン及び硫黄は、多孔性炭素の気孔及び表面に担持されており、
前記多孔性炭素の気孔は、2~8nmの直径を有する第1メソ気孔及び20~50nmの直径を有する第2メソ気孔を含み、
前記多孔性炭素は、粒径が2~10μmの球形粒子であ
り、
前記多孔性炭素は、前記第1メソ気孔及び第2メソ気孔を1:20~70の気孔体積比で含む、硫黄-炭素複合体。
【請求項2】
前記第2メソ気孔の気孔体積は、3.5cm
3/g以上であることを特徴とする、請求項
1に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項3】
前記多孔性炭素の比表面積は、1000~1300cm
2/gであることを特徴とする、請求項1
または2に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項4】
前記ジイソプロ
ペニルベンゼン及び硫黄は、共有結合をした状態で多孔性炭素の気孔及び表面に担持されていることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項5】
前記ジイソプロ
ペニルベンゼンは、硫黄-炭素複合体の総重量に対して5~30重量%で含まれることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体。
【請求項6】
(1)多孔性シリカを有機溶媒に分散させ、Al酸点の導入用水和物を混合して、多孔性シリカ分散液を製造する段階;
(2)前記多孔性シリカ分散液で有機溶媒を蒸発させて多孔性シリカ粒子を得る段階;
(3)前記多孔性シリカ粒子を第1熱処理してAl酸点が導入された多孔性シリカ粒子を得る段階;
(4)前記Al酸点が導入された多孔性シリカ粒子の気孔に炭素前駆体を含浸させた後、第2熱処理して炭素-シリカ複合体を得る段階;
(5)前記炭素-シリカ複合体でシリカをエッチングして多孔性炭素を得る段階;
(6)ジイソプロ
ペニルベンゼン及び硫黄を溶解して溶液を製造する段階;
(7)前記溶液に多孔性炭素を分散して混合物を製造する段階;
(8)前記混合物を第3熱処理してジイソプロ
ペニルベンゼン及び硫黄を前記多孔性炭素の気孔及び表面に担持する段階;を含む硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項7】
前記Al酸点の導入用水和物は、塩化アルミニウム6水和物であることを特徴とする、請求項
6に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項8】
前記第1熱処理は、0.5~3℃/minの速度で500~600℃まで昇温させて熱処理することを特徴とする、請求項
6または
7に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項9】
前記炭素前駆体は、フルフリルアルコール、スクロース及びグルコースからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項
6から
8のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項10】
前記第2熱処理は、70~100℃で7~10時間行うことを特徴とする、請求項
6から
9のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項11】
前記第2熱処理の後に、不活性雰囲気下で0.5~3℃/minの速度で昇温させ、700~1000℃で1時間~5時間熱処理する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項
6から
10のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項12】
前記エッチング時に用いられたエッチング溶液は、フッ酸、過酸化水素、硝酸、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群より選択される1種以上を含む溶液であることを特徴とする、請求項
6から
11のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項13】
前記ジイソプロ
ペニルベンゼン及び硫黄を溶解した溶媒は、CS
2、エチレンジアミン、アセトン及びエタノールからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項
6から
12のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項14】
前記ジイソプロ
ペニルベンゼン及び硫黄は、5:95~30:70の重量比で混合されることを特徴とする、請求項
6から
13のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項15】
前記第3熱処理は、100~200℃の温度で1分~30分間行うことを特徴とする、請求項
6から
14のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体の製造方法。
【請求項16】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の硫黄-炭素複合体を含む、リチウム二次電池用正極。
【請求項17】
前記リチウム二次電池用正極は、リチウム-硫黄電池用正極であることを特徴とする、請求項
16に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項18】
正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記正極は、請求項
16に記載の正極であることを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項19】
前記リチウム二次電池は、リチウム-硫黄電池であることを特徴とする、請求項
18に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月12日付け韓国特許出願第10-2018-0108788号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、硫黄-炭素複合体、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近まで、負極としてリチウムを用いる高エネルギー密度電池を開発するにおいて、かなりの関心があった。例えば、非-電気活性材料の存在で負極の重量及び体積を増加させ、電池のエネルギー密度を減少させるリチウムが挿入された炭素負極、及びニッケルまたはカドミウム電極を有する他の電気化学システムと比較して、リチウム金属は低重量及び高容量の特性を持つため、電気化学電池の負極活物質として非常に関心を集めている。リチウム金属負極、またはリチウム金属を主に含む負極は、リチウム-イオン、ニッケル金属水素化物またはニッケル-カドミウム電池のような電池よりも軽量化され、高エネルギー密度を有する電池を構成する機会を提供する。このような特徴はプレミアムの低い加重値で支払われる、携帯電話及びラップ-トップコンピュータのような携帯用電子デバイス用電池に非常に好ましい。
【0004】
このような類型のリチウム電池用正極活物質は公知となっており、これらは硫黄-硫黄結合を含む硫黄含有正極活物質を含み、硫黄-硫黄結合の電気化学的切断(還元)及び再形成(酸化)から高エネルギー容量及び再充電能が達成される。
【0005】
前記のように、負極活物質としてリチウムとアルカリ金属を、正極活物質として硫黄を用いるリチウム-硫黄二次電池は、理論エネルギー密度が2,800Wh/kg、硫黄の理論容量が1,675mAh/gで、他の電池システムに比べて非常に高く、硫黄は資源が豊富で安価なうえ、環境親和的な物質という利点のため、携帯電子機器として注目を浴びている。
【0006】
しかしながら、リチウム-硫黄二次電池の正極活物質として用いられる硫黄は不導体であるため、電気化学反応で生成された電子の移動が難しく、充・放電過程で発生するポリスルフィド(Li2S8~Li2S4)の溶出問題及び硫黄とリチウムスルフィド(Li2S2/Li2S)の低い電気伝導性による電気化学反応の遅い反応速度(kinetic)により電池寿命特性と速度特性が阻害される問題があった。
【0007】
これに関連して、最近では、リチウム-硫黄二次電池の充・放電過程で発生するポリスルフィドの溶出問題及び硫黄とリチウムスルフィドの低い電気伝導性を解決するために、電気伝導性の高い多孔性構造の炭素素材が硫黄担持体として用いられている。
【0008】
特許文献1には、電極材料として活物質と複合化することができる導電性物質である細孔を有する多孔質炭素について開示されている。前記多孔質炭素は、硫黄及び/又は硫黄原子を含む化合物と複合化することができ、電極材料の電子伝導性を向上させることができる。具体的に、前記導電性物質の細孔容量は0.5g/cc以上、4.0g/cc以下であり、前記細孔の直径は100nm以下であり、前記導電性物質の粒子径は1nm以上500μm以下であることが記載されている。
【0009】
従来のリチウム-硫黄二次電池においてこのような多孔性炭素が適用された例が多数報告されているが、まだ単位質量当たり、単位体積当たりのエネルギー密度の向上に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、前記問題を解決するために多角的に研究を行った結果、リチウム二次電池、好ましくはリチウム-硫黄電池の正極活物質として使用可能な硫黄-炭素複合体を製造した。前記硫黄-炭素複合体は、第1メソ気孔及び第2メソ気孔(meso pore)が混合された気孔構造及び均一な粒子形態の大きさを有する多孔性炭素の気孔及び表面にジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄が担持されたもので、前記硫黄-炭素複合体は、リチウム-硫黄電池の正極から溶出して拡散されるポリスルフィドと反応して溶出及びシャトル現象が制御できることを確認した。
【0012】
したがって、本発明は、リチウム-硫黄電池の放電容量及び寿命特性を向上させることができる硫黄-炭素複合体を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、前記硫黄-炭素複合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池用正極、それを含むリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、
本発明は、多孔性炭素;ジイソプロフェニルベンゼン;及び硫黄を含む硫黄-炭素複合体であって、
前記ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄は、多孔性炭素の気孔及び表面に担持されており、
前記多孔性炭素の気孔は、2~8nmの直径を有する第1メソ気孔及び20~50nmの直径を有する第2メソ気孔を含み、
前記多孔性炭素は、粒径が2~10μmの球形粒子である硫黄-炭素複合体を提供する。
【0016】
また、本発明は、
(1)多孔性シリカを有機溶媒に分散させ、Al酸点の導入用水和物を混合して、多孔性シリカ分散液を製造する段階;
(2)前記多孔性シリカ分散液で有機溶媒を蒸発させて多孔性シリカ粒子を得る段階;
(3)前記多孔性シリカ粒子を第1熱処理してAl酸点が導入された多孔性シリカ粒子を得る段階;
(4)前記Al酸点が導入された多孔性シリカ粒子の気孔に炭素前駆体を含浸させた後、第2熱処理して炭素-シリカ複合体を得る段階;
(5)前記炭素-シリカ複合体でシリカをエッチングして多孔性炭素を得る段階;
(6)ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄を溶解して溶液を製造する段階;
(7)前記溶液に多孔性炭素を分散して混合物を製造する段階;
(8)前記混合物を第3熱処理してジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄を前記多孔性炭素の気孔及び表面に担持する段階;を含む硫黄-炭素複合体の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記本発明の硫黄-炭素複合体を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0018】
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム二次電池であって、
前記正極は、前記本発明の正極であることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る硫黄-炭素複合体の多孔性炭素は、異なる大きさを有する第1メソ気孔及び第2メソ気孔を含んでいるため、リチウム-硫黄電池の正極活物質として適用する場合、第1メソ気孔によって比表面積が向上するので、電池の性能を向上させることができ、第2メソ気孔によって硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持量を増加させ、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0020】
また、前記第2メソ気孔が十分な気孔体積を提供するため、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンを担持していながらも、電解液の出入を容易にすることができる空間を提供することができ、硫黄の酸化及び還元反応への参与を極大化させることができる。
【0021】
また、前記硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンは共有結合をした状態で多孔性炭素の表面及び気孔に担持されているため、リチウム-硫黄電池の充・放電反応で発生するポリスルフィドがジイソプロフェニルベンゼンと可逆的に反応をして、ポリスルフィドの溶出を制御することができ、寿命特性が向上したリチウム二次電池を提供することができる。
【0022】
また、前記多孔性炭素は、均一な球形の形状及び均一な大きさを有するので、集電体上に正極活物質のパッキング密度を向上させ、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】製造例1で製造した多孔性シリカのSEM写真である。
【
図2】製造例1で製造した多孔性炭素のSEM及びTEM写真である。
【
図3】実施例1の硫黄-炭素複合体のDSCグラフである。
【
図4】比較例1の硫黄-炭素複合体のDSCグラフである。
【
図5】実施例1の硫黄-炭素複合体のXPSグラフである。
【
図6】比較例1の硫黄-炭素複合体のXPSグラフである。
【
図7】実験例2のリチウム-硫黄電池の放電容量を測定したグラフである。
【
図8】実験例2のリチウム-硫黄電池の寿命測定グラフである。
【
図9】実施例1のリチウム-硫黄電池の50サイクル後に観察した分離膜の写真である。
【
図10】比較例1のリチウム-硫黄電池の50サイクル後に観察した分離膜の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
硫黄-炭素複合体
本発明は、多孔性炭素;ジイソプロフェニルベンゼン;及び硫黄を含む硫黄-炭素複合体であって、
前記ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄は、多孔性炭素の気孔及び表面に担持されており、
前記多孔性炭素の気孔は、2~8nmの直径を有する第1メソ気孔及び20~50nmの直径を有する第2メソ気孔を含み、
前記多孔性炭素は、粒径が2~10μmの球形粒子である硫黄-炭素複合体に関するものである。
【0026】
前記多孔性炭素は、互いに異なる大きさを有する第1メソ気孔(meso pore)及び第2メソ気孔(meso pore)を含み、均一な粒子の大きさと形状を有することを特徴とする。
【0027】
以下、前記多孔性炭素に含まれた気孔の大きさは、気孔の直径を意味する。
【0028】
前記第1メソ気孔は、前記多孔性炭素の比表面積を増加させる役割だけでなく、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持及びこれに伴うポリスルフィドの溶出抑制効果を示し、前記第1メソ気孔の直径は2~8nm、好ましくには、2~5nmであってもよい。前記第1メソ気孔の直径が前記2nm未満であれば、気孔が過度に小さいため、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持過程で気孔が容易に塞がれることができ、前記8nmを超える場合は、多孔性炭素の比表面積の増加効果が少ない。
【0029】
前記第2メソ気孔は、前記第1メソ気孔に比べてサイズが大きい気孔であり、より多くの硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンを担持することができる担持体の役割をするので、リチウム二次電池、好ましくはリチウム-硫黄電池の正極内の硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの含有量を高め、電池のエネルギー密度を向上させることができる。また、前記第2メソ気孔により前記リチウム-硫黄電池の正極内での電解液の出入が容易になり、ポリスルフィドの溶出問題を吸着により改善させることができる。
【0030】
前記第2メソ気孔の直径は20~50nm、好ましくは20~40nmであってもよく、前記第2メソ気孔の直径が前記20nm未満であれば、前記第2メソ気孔内の硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持量が減少し、電解液の出入が容易でなくポリスルフィドを吸着する空間が不足してポリスルフィドの溶出問題を解決することができず、前記50nmを超えると、気孔の大きさが過度に大きくなって正極でのポリスルフィドの溶出問題が深刻になり、電極の耐久性が低下することができる。
【0031】
また、前記第2メソ気孔の気孔体積は3.5cm3/g以上、好ましくは3.5~4.5cm3/g、より好ましくは3.8~4.2cm3/gであってもよく、前記メソ気孔の体積が前記3.5cm3/g未満であれば、気孔内の硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持量が減少して電池のエネルギー密度の向上効果が少なく、前記範囲を超えると、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持量が向上し、電極内の硫黄含有量を高めてエネルギー密度が向上するか、又は相対的に炭素構造体の機械的強度が低下して正極を製造するためのスラリーの製造過程で硫黄-炭素複合体及び電極の耐久性が低下することもある。
【0032】
本発明に係る多孔性炭素において、前記第1メソ気孔と第2メソ気孔は1:20~70の気孔体積比で含まれることができ、好ましくは1:30~60、より好ましくは1:40~50の気孔体積比で含まれることができる。前記第1メソ気孔に対する第2メソ気孔の気孔体積比が前記範囲未満であれば、比表面積は向上することができるが、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持量が減少して電池のエネルギー密度の向上効果が少なく、前記範囲を超えると硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持量は増加するが、第2メソ気孔の割合が相対的に多くなって比表面積が減少することができる。
【0033】
本発明に係る多孔性炭素の比表面積は、1000~1300cm2/g、好ましくは1150~1300cm2/g、より好ましくは1200~1300cm2/gであってもよく、前記多孔性炭素の比表面積が1000cm2/g未満であれば、放電容量が低下することができ、1300cm2/gを超えると第1メソ気孔が相対的に多い場合に該当するため、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持量が減少して電池のエネルギー密度が低下することができる。
【0034】
また、前記多孔性炭素は均一な形態及び大きさを有し、正極活物質の材料として適用時、集電体上で正極活物質のパッキング密度を向上させることができるので、リチウム-硫黄電池のポリスルフィドの溶出抑制を物理的に防ぐことができ、電気伝導度を向上させることができる。
【0035】
具体的に、前記多孔性炭素は球形の均一な形態を有し、粒径2~10μm、好ましくは3~7μm、より好ましくは4~6μmの均一な大きさを有する。前記多孔性炭素の粒径が2μm未満であれば、硫黄及びジイソプロフェニルの担持量が減少することができ、10μmを超えると、集電体上で正極活物質のパッキング密度が低下することができる。
【0036】
前記多孔性炭素は、硫黄-炭素複合体の総重量に対して5~30重量%、好ましくは10~20重量%で含まれることができる。前記多孔性炭素が5重量%未満で含まれると硫黄及び炭素間の電子伝達が低下し、硫黄及び炭素間の界面面積が減少し、電気化学反応に参加することができる硫黄の絶対量が減少して可逆容量が低くなり、それにより電池の性能が低下することができる。30重量%を超えて含まれると硫黄の含有量が減って正極のエネルギー密度を増加させることができない。
【0037】
前記ジイソプロフェニルベンゼン(Diisopropenylbenzene、DIB)及び硫黄は共有結合をした状態で多孔性炭素の気孔及び表面に担持されている。
【0038】
すなわち、本発明の硫黄-炭素複合体は、前記の多孔性炭素の気孔及び表面にジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄が担持されている形態であり、前記ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄は共有結合の状態で多孔性炭素の表面及び気孔に担持されている形態である。
【0039】
前記硫黄-炭素複合体の製造のための熱処理過程で環状の硫黄(S8)のS-S結合が切れながら反応性の高いラジカル(radical)が形成される。前記形成されたラジカル硫黄はジイソプロフェニルベンゼンに存在する二重結合(C=C)と反応して、新しいS-C結合を形成することにより、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンは共有結合を成すようになる。
【0040】
前記多孔性炭素は、上述のように、第1メソ気孔及び第2メソ気孔を含めて比表面積が大きいので、前記共有結合をなす硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンは多孔性炭素の表面よりも気孔により多くの量が担持されている。
【0041】
より具体的に、共有結合をなす硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンは、溶融状態で固まる方式により多孔性炭素に担持されるので、多孔性炭素の気孔及び表面をすべて担持される。また、硫黄-炭素複合体の製造時に、多孔性炭素の気孔体積を考慮して、理論的に担持することができる硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの量よりも少ない量を溶融状態で気孔内部に担持する。このとき、液状の硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンは多孔性炭素の表面よりも毛細管現象により、第1メソ気孔及び第2メソ気孔に吸い込まれようとする力(駆動力(driving force))が強いため、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンは多孔性炭素の表面よりも気孔により多く担持される。
【0042】
前記ジイソプロフェニルベンゼンは、リチウム-硫黄電池の充・放電時に発生するポリスルフィドと可逆的に反応し、ポリスルフィドの溶出問題を効率よく制御する役割をする。
【0043】
したがって、多孔性炭素の硫黄だけでなく、ジイソプロフェニルとともに担持すると、ポリスルフィドの溶出抑制を最大化することができ、リチウム-硫黄電池の寿命特性をさらに向上させることができる。
【0044】
前記ジイソプロフェニルベンゼンは、硫黄-炭素複合体の総重量に対して5~30重量%、好ましくは10~20重量%で含まれる。前記ジイソプロフェニルベンゼンが5重量%未満で含まれるとポリスルフィドの吸着効果が少なく、30重量%を超えると硫黄の含有量が相対的に低くなり、電極の活物質量及び電池のエネルギー密度を増加させることができない。
【0045】
前記硫黄は、硫黄元素(elemental sulfur、S8)及び硫黄系化合物からなる群より選択された1種以上であってもよい。前記硫黄系化合物は、具体的に、Li2Sn(n≧1)、有機硫黄化合物または炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n:2.5≦x≦50、n≧2)の中から選択することができる。
【0046】
前記硫黄は、硫黄-炭素複合体の総重量に対して60~85重量%、好ましくは70~80重量%であってもよく、60重量%未満であれば電池のエネルギー密度が低下することができ、85重量%を超えると充・放電の過程で硫黄の体積膨張及び低い電気伝導度などが問題となる。
【0047】
硫黄-炭素複合体の製造方法
また、本発明は、前記本発明の硫黄-炭素複合体の製造方法に関する。
【0048】
前記硫黄-炭素複合体の製造方法は、
(1)多孔性シリカを有機溶媒に分散させ、Al酸点の導入用水和物を混合して、多孔性シリカ分散液を製造する段階;
(2)前記多孔性シリカ分散液で有機溶媒を蒸発させて多孔性シリカ粒子を得る段階;
(3)前記多孔性シリカ粒子を第1熱処理してAl酸点が導入された多孔性シリカ粒子を得る段階;
(4)前記Al酸点が導入された多孔性シリカ粒子の気孔に炭素前駆体を含浸させた後、第2熱処理して炭素-シリカ複合体を得る段階;
(5)前記炭素-シリカ複合体でシリカをエッチングして多孔性炭素を得る段階;
(6)ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄を溶解して溶液を製造する段階;
(7)前記溶液に多孔性炭素を分散して混合物を製造する段階;
(8)前記混合物を第3熱処理してジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄を前記多孔性炭素の気孔及び表面に担持する段階;を含む。
【0049】
前記(1)段階は、多孔性シリカを有機溶媒に分散させ、Al酸点の導入用水和物を混合して、多孔性シリカ分散液を製造する段階である。
【0050】
本発明において、前記多孔性シリカは多孔性炭素を合成するための鋳型(template)の役割をし、直径が2~10μmである粒子形態の多孔性シリカを用いる場合、形態と大きさが均一な多孔性炭素の合成に有利である。
【0051】
前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、エチルアセテート、クロロホルム、及びヘキサンからなる群より選択された1種以上であってもよいが、多孔性シリカを分散させることができる有機溶媒であれば、これらに制限されるものではない。
【0052】
前記Al酸点の導入用水化物は塩化アルミニウム6水和物であってもよく、前記多孔性シリカにAl酸点(acid site)を導入するために用いられる。
【0053】
前記(1)段階の多孔性シリカ分散液は、前記有機溶媒100重量部に対して、前記多孔性シリカ1~5重量部及び前記Al酸点の導入用水和物0.21~1.05重量部を用いて製造することができる。
【0054】
前記多孔性シリカが1重量部未満であれば製造される多孔性炭素の収率が低下し、相対的な酸点の割合が高くなり、炭素化反応に制約が生じることがあり、5重量部を超えると、相対的な酸点の割合が低くなり、前記多孔性炭素の合成反応のための炭素前駆体の重合(polymerization)に進行が難しいことがある。
【0055】
前記Al酸点の導入用水和物が0.21重量部未満であれば、前記多孔性シリカに導入される酸点が不足して多孔性炭素合成過程での炭素前駆体重合(polymerization)反応が困難な場合があり、1.05重量部を超える場合にも酸点がむしろ過度で多孔性炭素合成反応の進行が難しいことがある。
【0056】
前記(2)段階は、前記(1)段階で製造した多孔性シリカ分散液で有機溶媒を蒸発させて多孔性シリカ粒子を得る段階である。
【0057】
前記多孔性シリカ分散液を常温で撹拌させながら有機溶媒を蒸発させ、残りの多孔性シリカ粒子を得ることができる。
【0058】
前記(3)段階は、前記(2)段階で得られた多孔性シリカ粒子を第1熱処理してAl酸点が導入された多孔性シリカ粒子を得る段階である。
【0059】
前記Al酸点はシリカの表面に位置し、フルフリルアルコールのような炭素前駆体の重合(polymerization)反応を誘導し、多孔性炭素の合成を促進させる役割をする。
【0060】
前記第1熱処理は、空気雰囲気で0.5~3℃/minの速度で500~600℃/minまで昇温させて行うことができる。
【0061】
前記第1熱処理時の昇温速度が0.5℃/min未満であれば、熱処理時間が長くかかるため、多孔性シリカ粒子の物性が変性することができ、3℃/minを超えると、前記多孔性シリカ粒子に酸点が所望するだけ形成されないことがある。
【0062】
前記第1熱処理温度が500℃未満であれば、前記多孔性シリカ粒子の酸点が所望するだけ形成されないことがあり、600℃を超えると前記多孔性シリカ粒子の物性が変性することができる。
【0063】
前記(4)段階は、前記(3)段階で製造したAl酸点が導入された多孔性シリカ粒子の気孔に炭素前駆体を含浸させた後、第2熱処理して炭素-シリカ複合体を得る段階である。
【0064】
このとき、炭素前駆体は、溶液の形態で前記多孔性シリカ粒子の気孔に含浸されることができる。
【0065】
本発明において、前記炭素前駆体はフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)、スクロース(Sucrose)、及びグルコース(Glucose)からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0066】
本発明において、前記炭素前駆体として液状の炭素前駆体を用いるので、炭素前駆体を溶解させるための別の溶媒が不要な場合もあるが、前記液状の炭素前駆体をさらに溶媒に溶解させることもでき、このとき、用いられる溶媒は、炭素前駆体の溶液に用いられる溶媒はテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME.tetraethylene glycol demethyl ether)であってもよい。
【0067】
前記炭素前駆体溶液は、前記炭素前駆体と溶媒を1:0.5~1.5の重量比で混合して製造することができる。前記炭素前駆体に対する溶媒の重量比が1:0.5未満であれば、炭素前駆体の量が相対的に高いので、気孔の壁厚が増加し、生産物である多孔性炭素の気孔体積が減少することができる。一方、1:1.5を超えると、溶液内に含まれた炭素前駆体の量が少ないため気孔の壁厚が減少し、多孔性炭素の形状維持が困難となる。
【0068】
したがって、液状の炭素前駆体をさらに溶解させるための溶媒であるテトラエチレングリコールジメチルエーテルによってマイクロ気孔及びメソ気孔の体積を調節することもできる。
【0069】
本発明において、前記第2熱処理は、炭素前駆体の重合(polymerization)を誘導するための工程であって、前記第2熱処理により炭素-シリカ複合体を得ることができる。
【0070】
前記第2熱処理温度は70~100℃、好ましくは75~95℃、より好ましくは80~90℃であってもよく、前記第2熱処理温度が前記範囲未満であれば、炭素前駆体の重合反応速度が速くないか、又は正しく開始されず、前記範囲を超えると形成される炭素-シリカ複合体の物性が変性することができる。
【0071】
前記第2熱処理時間は7~10時間、好ましくは7.5~9.5時間、より好ましくは8~9時間であってもよく、前記第2熱処理時間が前記7時間未満であれば、炭素前駆体の重合反応を完全に完了することができず、10時間を超えると反応結果に大きく影響は与えないため、熱処理時間の超過による利益がない。
【0072】
また、前記第2熱処理時の条件に規定された前記熱処理温度及び時間の範囲内で熱処理を行う場合、製造された多孔性炭素の形態及び大きさの均一度が向上することができる。
【0073】
また、本発明において、前記第2熱処理の後に不活性雰囲気下で0.5~1℃/minの速度で昇温させ、700~1000℃で1時間~5時間熱処理する段階をさらに含むことができる。
【0074】
前記不活性雰囲気は、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、及びクリプトンからなる群より選択された1種以上の不活性ガスにより形成されたものであってもよい。前記不活性ガス中でアルゴンを用いる場合、炭素-シリカ複合体が形成される反応がより円滑に行われることができ、不活性ガスの中でアルゴンにより不活性雰囲気を形成することが好ましい。
【0075】
前記熱処理時の昇温速度が0.5℃/min未満であれば、炭素-シリカ複合体が不完全に形成され、1℃/minを超える場合は、全体的な多孔性構造に影響を与える問題があり得る。
【0076】
前記熱処理温度が700℃未満であれば、炭素-シリカ複合体が不完全に形成され、1000℃を超えると形成された炭素-シリカの物性が変性することができる。
【0077】
また、前記熱処理条件に規定された前記昇温速度、熱処理温度及び時間の範囲内で熱処理を行う場合、製造された多孔性炭素の形態及び大きさの均一度がさらに向上することができる。
【0078】
前記(5)段階は、前記(4)段階で製造した炭素-シリカ複合体でシリカをエッチングして多孔性炭素を得る段階である。
【0079】
前記炭素-シリカ複合体を有機溶媒と水が混合された溶液に分散させ、エッチング溶液を用いてシリカをエッチングさせることができる。
【0080】
前記炭素-シリカ複合体の分散性を考慮して、前記有機溶媒と水は1:0.8~1.2の重量比で混合した混合溶液であってもよく、前記有機溶媒はエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、エチルアセテート、クロロホルム及びヘキサンからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0081】
前記エッチング溶液は、フッ酸(HF)、過酸化水素(H2O2)、硝酸(HNO3)及び水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)からなる群より選択される1種以上を含む溶液であってもよい。
【0082】
前記多孔性炭素は上述のように、2~8nmの直径を有する第1メソ気孔及び20~50nmの直径を有する第2メソ気孔を有し、粒径が2~10μmの球形粒子である。
【0083】
また、前記第1メソ気孔及び第2メソ気孔を1:20~70の気孔体積比で含み、第2メソ気孔の体積は3.5cm3/g以上である。
【0084】
また、前記多孔性炭素の比表面積は、1000~1300cm2/gである。
【0085】
前記(6)段階は、ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄を溶解して溶液を製造する段階である。
【0086】
前記ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄を5:95~30:70の重量比で混合することができ、好ましくは10:90~20:80の重量比で混合することができる。
【0087】
前記ジイソプロフェニルベンゼンが前記範囲未満で含まれると硫黄と炭素との間の電子伝達が低下し、硫黄と共有結合をなす量が少ないため硫黄の溶出が起こりやすく、電池の寿命が減少することができる。また、前記範囲を超えて含まれると、正極の硫黄含有量が減ってエネルギー密度を増加させることができない。
【0088】
また、前記ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄を溶解させる溶媒は、ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄をすべて溶解させることができ、特に硫黄に対する溶解度が高い溶媒を用いる。前記硫黄に対する溶解度が高い溶媒を用いると、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが溶解した溶液が多孔性炭素の表面及び気孔に担持されるようにすることができる。
【0089】
前記溶媒は、CS2、エチレンジアミン、アセトン及びエタノールからなる群より選択される1種以上であってもよく、好ましくはCS2であってもよい。
【0090】
前記CS2溶媒を用いる場合、硫黄に対する選択的な溶解度が高いため、硫黄を溶解させて、前記多孔性炭素に含まれた気孔の内部及び表面に担持されるようにするのに有利である。
【0091】
前記(7)段階は、前記(6)段階で製造した溶液に、前記(5)段階で製造した多孔性炭素を分散して混合物を製造する段階である。
【0092】
前記ジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄が溶解した溶液に多孔性炭素を均一に分散させた後、25~40℃の温度で8~12時間撹拌しながら前記ジイソプロフェニルベンゼン、硫黄及び多孔性炭素を含む溶液の溶媒をすべて蒸発させてジイソプロフェニルベンゼン、硫黄及び多孔性炭素を含む粉末状の混合物を製造することができる。
【0093】
このとき、前記粉末状の混合物は、多孔性炭素の気孔及び表面に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが担持された形態である。
【0094】
前記温度が25℃未満であれば、溶媒の蒸発速度が低いため粉末を製造するのに時間が長くかかり、40℃を超えると溶媒の蒸発速度があまりにも高いため、多孔性炭素の気孔内部に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持が完全に起こらないことがある。
【0095】
前記(8)段階は、前記(7)段階で製造した混合物を第3熱処理して、多孔性炭素の気孔及び表面に担持されたジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄が共有結合を形成する段階である。
【0096】
前記第3熱処理は、多孔性炭素の気孔及び表面にジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄が共有結合を形成する段階であって、前記第3熱処理により多孔性炭素の気孔及び表面に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが担持された硫黄-炭素複合体を得ることができ、具体的に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが共有結合をなしている。
【0097】
また、前記第3熱処理によりジイソプロフェニルベンゼン及び硫黄が共有結合をなすことができ、ジイソプロフェニルベンゼンは、リチウム-硫黄電池の充・放電時に発生するポリスルフィドと可逆的に反応し、ポリスルフィドの溶出問題を効果よく制御することができ、結果的にリチウム-硫黄電池の寿命特性を向上させることができる。
【0098】
前記第3熱処理は、オイルバス(oil bath)で100~200℃の温度で1分~30分間行われ、好ましくは150~185℃の温度で5分~10分間行うことができる。
【0099】
前記第3熱処理温度が100℃未満であれば、硫黄のS-S結合が切れにくく反応性の高い硫黄ラジカルが生成されないため、ジイソプロフェニルベンゼンと共有結合がなされず、200℃を超えると硫黄またはジイソプロフェニルベンゼンが気化することができる。
【0100】
また、第3熱処理時間が1分未満であれば、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの共有結合が完全になされないことがあり、30分を超えると硫黄またはジイソプロフェニルベンゼンが気化することができる。
【0101】
リチウム二次電池用正極
また、本発明は、リチウム二次電池用正極に関し、好ましくはリチウム-硫黄電池用正極に関するもので、前記リチウム-硫黄電池用正極は正極活物質として上述の硫黄-炭素複合体を含む。
【0102】
前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に正極活物質層が位置し、正極活物質層は、正極活物質と選択的に導電材及びバインダーを含むことができる。
【0103】
前記導電材は、正極活物質とともに電子が正極内で円滑に移動するための目的として含まれることができ、前記バインダーは、正極活物質間または正極活物質と集電体との結着力を高めるための目的として含まれることができる。
【0104】
前記正極集電体は、一般的に3~500μmの厚さにすることができ、電池に化学的変化を誘発することなく、かつ高い導電性を有するものであれば特に制限しない。例えばスステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタンなどの伝導性金属を用いることができ、好ましくはアルミニウム集電体を用いることができる。このような正極集電体はフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体などの多様な形態が可能である。
【0105】
前記導電材はカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックのような炭素系物質;またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールのような伝導性高分子であってもよく、正極活物質層の総重量に対して5~20重量%で含まれることが好ましい。導電材の含有量が5重量%未満であれば導電材の使用による導電性向上効果が少なく、一方、20重量%を超えると正極活物質の含有量が相対的に少なくなり、容量特性が低下するおそれがある。
【0106】
また、前記バインダーとしては、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アルキレイテッドポリエチレンオキシド、架橋結合されたポリエチレンオキシド、ポリビニルエーテル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリビニリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレンとポリビニリデンフルオライドのコポリマー(商品名:Kynar)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリスチレン、これらの誘導体、ブレンド、コポリマーなどを用いることができる。また、前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して5~20重量%で含まれることが好ましい。バインダーの含有量が5重量%未満であればバインダーの使用による正極活物質間または正極活物質と集電体間の結着力改善効果が少なく、一方、20重量%を超えると正極活物質の含有量が相対的に少なくなり、容量特性が低下するおそれがある。
【0107】
前記のような正極は通常の方法により製造することができ、具体的には、正極活物質と導電材及びバインダーを有機溶媒上で混合してスラリー状態で製造した正極活物質層形成用組成物を集電体上に塗布した後、乾燥及び選択的に圧延して製造することができる。
【0108】
このとき、前記有機溶媒としては、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発するものを用いることが好ましい。具体的には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0109】
本発明に係る硫黄-炭素複合体を含む正極は、前記硫黄-炭素複合体の多孔性炭素が均一な大きさと形態を有することで正極密度を高めることができる。
【0110】
リチウム二次電池
また、本発明は、正極;負極;前記正極と負極との間に介在される分離膜;及び電解液を含むリチウム二次電池に関し、前記正極は上述した本発明の正極であってもよい。
【0111】
また、本発明の前記リチウム二次電池は、好ましくはリチウム-硫黄電池であってもよい。
【0112】
前記負極は集電体と、彼の一面または両面に形成された負極活物質層で構成されることができる。または前記負極はリチウム金属板であってもよい。
【0113】
前記集電体は、負極活物質の支持のためのものであり、優れた導電性を有し、リチウム二次電池の電圧領域で電気化学的に安定したものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、スステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウム、焼成炭素、銅やスステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。
【0114】
前記負極集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して負極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0115】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション(intercalation)またはデインターカレーション(Deintercalation)することができる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を用いることができる。
【0116】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーションまたはデインターカレーションすることができる物質は、例えば、結晶性炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。
【0117】
前記リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化スズ、チタンナイトレート、またはシリコンであってもよい。
【0118】
前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群より選択される金属の合金であってもよい。
【0119】
前述の正極と負極との間にはさらに分離膜を含むことができる。前記分離膜は、前記正極と負極を互いに分離または絶縁させ、正極と負極との間にリチウムイオンの輸送を可能にするもので、多孔質非伝導性または絶縁性物質からなってもよい。このような分離膜は、フィルムのような独立した部材であってもよく、正極及び/又は負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0120】
前記分離膜をなす物質は、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン、ガラス繊維ろ紙及びセラミック物質が含まれるが、これに限定されず、その厚さは約5~50μm、好ましくは約5~25μmであってもよい。
【0121】
前記電解液は、リチウム塩を含有する非水系電解質としてリチウム塩と電解液で構成されており、電解液としては非水系有機溶媒、有機固体電解質及び無機固体電解質などが用いられる。
【0122】
前記リチウム塩はリチウム二次電池用、好ましくは、リチウム-硫黄電池用電解液に通常使用されるものであれば制限なく用いることができる。例えば、LiSCN、LiBr、LiI、LiPF6、LiBF4、LiB10Cl10、LiSO3CF3、LiCl、LiClO4、LiSO3CH3、LiB(Ph)4、LiC(SO2CF3)3、LiN(SO2CF3)2、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiFSI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウムなどからなる群から1種以上を含むことができる。
【0123】
また、前記電解液においてリチウム塩の濃度は0.2~2M、具体的に0.6~2M、更に具体的に0.7~1.7Mであってもよい。前記リチウム塩の濃度が0.2M未満で用いると、電解液の伝導度が低くなって電解液性能が低下することができ、2Mを超えて用いると、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少することができる。
【0124】
前記非水系有機溶媒はリチウム塩をよく溶解させなければならず、本発明の非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキセン、ジエチルエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができ、前記有機溶媒は一つまたは2以上の有機溶媒の混合物であってもよい。
【0125】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(Agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などを用いることができる。
【0126】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを用いることができる。
【0127】
本発明の電解質には、充・放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、N-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されてもよい。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませてもよく、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含ませてもよく、フルオロエチレンカーボネート(FEC:Fluoro-ethylene carbonate)、プロペンスルトン(PRS:Propene sultone)、フルオロプロピレンカーボネート(FPC:Fluoro-propylene carbonate)などをさらに含ませてもよい。
【0128】
前記電解質は液体電解質として用いることもでき、固体状態の電解質セパレーター形態としても用いることができる。液体電解質として用いる場合は、電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜として多孔性ガラス、プラスチック、セラミックまたは高分子などからなる分離膜をさらに含む。
【0129】
本発明のリチウム二次電池、好ましくはリチウム-硫黄電池は、正極活物質として前記本発明の硫黄-炭素複合体を含む。前記硫黄-炭素複合体の多孔性炭素は、マイクロ気孔のみを含む活性炭と比較するとき、第1メソ気孔を含んで比表面積が大きく、しかも第2メソ気孔もともに含んでいるため気孔体積が大きいので、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼン担持後にも気孔が塞がれなく電解液の出入が容易であり、それにより放電容量及び出力特性に優れる。
【0130】
また、前記多孔性炭素の気孔及び表面に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが担持されており、前記硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンは共有結合をなしている。ジイソプロフェニルベンゼンは、リチウム-硫黄電池の充・放電時に発生するポリスルフィドと可逆的に反応することができるので、ポリスルフィドの溶出問題を解決することができ、それにより、リチウム-硫黄電池の寿命特性を向上させることができる。
【0131】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは通常の技術者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属するのも当然である。
【0132】
製造例1.多孔性炭素の製造
三重ブロック共重合体であるEO20PO70EO20(商品名:Pluronic P123、EO:エチレングリコール、PO:プロピレングリコール)8.0g、塩化カリウム(KCl)10g、37.2wt%塩酸(HCl)20mLを水130mL、エタノール10mLに混合し、常温で8時間以上撹拌させた。次に、Pluronic P123が完全に溶けると9.26mLのmesityleneを入れ、40℃で2時間撹拌させた。
【0133】
シリカ源(source)であるテトラエチルオルソシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)18.4mLを添加した後、同一の温度で2分間強く撹拌した。混合溶液を同一の温度で20時間置いた。その後、フッ化アンモニウム(ammonium fluoride)0.092gを混合溶液に入れ、2分間強く撹拌させた後、100℃のオーブンで24時間水熱合成した。その後、エタノールと水の混合溶液でろ過して常温で乾燥させた後、550℃で4時間空気雰囲気下で熱処理を行い、多孔性シリカを最終的に合成した。
【0134】
図1は、多孔性シリカのSEM(scanning electron microscope)写真である。
【0135】
図1の(a)を参照すると、球形粒子の形態を有し、メソ気孔が形成された多孔性シリカが製造されたことが分かる。
【0136】
また、
図1の(b)は、
図1の(a)の拡大写真であり、製造された多孔性シリカの直径の5μm水準であることが分かり、メソ気孔がよく発達していることを確認することができる。
【0137】
前記製造された球形の多孔性シリカ1gをエタノール50mLに均一に分散させた後、塩化アルミニウム6水和物(Aluminium chloride hexahydrate)0.21gをともに混合し、2時間撹拌し、多孔性シリカ分散液を得た。
【0138】
前記多孔性シリカ分散液を常温で撹拌しながら、溶媒であるエタノールをすべて蒸発させた。
【0139】
その後、残ったパウダー(powder)である多孔性シリカ粒子を集めて空気(Air)雰囲気で1℃/minで550℃まで昇温させ、第1熱処理し、5時間維持した。
【0140】
前記第1熱処理後、Al酸点が導入された多孔性シリカの気孔体積を測定し、測定された気孔体積の1/2ほどのフルフリルアルコール(furfuryl alcohol)と1/2ほどのテトラエチレングリコールジメチルエーテル(Tetraethylene glycol dimethyl ether、TEGDME)を混合し、真空を利用して含浸(impregnation)させた。すなわち、炭素前駆体であるフルフリルアルコールと溶媒であるテトラエチレングリコールジメチルエーテルの重量比は1:1である。
【0141】
その後、80℃のオーブンで8時間を維持させて第2熱処理し、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)の重合(polymerization)を誘導した。
【0142】
また、Ar雰囲気下で1℃/minの速度で昇温させ、850℃まで温度を上げて3時間維持させ、炭素-シリカ複合体を製造した。
【0143】
前記炭素シリカ複合体をエタノールと水が1:1の重量比で混合された溶液に分散させ、HFでシリカをエッチングし、多孔性炭素を製造した。
【0144】
図2は、多孔性炭素のSEM(scanning electron microscope)及びTEM(transmission electron microscope)写真である。
【0145】
図2の(a)は、多孔性炭素のSEM写真であり、全体的に球形の多孔性炭素が合成されたことが分かる。
【0146】
図2の(b)は、多孔性炭素の拡大されたSEM写真であり、球形の多孔性炭素の粒径が5μmであることが分かる。
【0147】
図2の(c)は、多孔性炭素のTEM写真であり、気孔の大きさが4nmの第1メソ気孔及び30nmの第2メソ気孔がよく発達した多孔性炭素が合成されたことが分かる。
【0148】
<硫黄-炭素複合体の製造>
実施例1
ジイソプロフェニルベンゼン0.032gと硫黄(S8)0.288gをCS2溶媒6mLに溶解させ、溶液を製造した。前記溶液に前記製造例1で製造した多孔性炭素0.08gを分散させた後、40℃の温度でCS2溶媒がすべて蒸発するまで溶液を撹拌し、粉末状の混合物を製造した。
【0149】
前記混合物をオイルバス(oil bath)で160℃の温度で10分間熱処理し、製造例1で製造した多孔性炭素の表面及び気孔に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが担持された硫黄-炭素複合体を製造した。前記製造された硫黄-炭素複合体の硫黄:ジイソプロフェニルベンゼン:多孔性炭素の重量比は70:10:20であった。
【0150】
比較例1
ジイソプロフェニルベンゼンを用いないことを除いては、前記実施例1と同様に行って、製造例1で製造した多孔性炭素の表面及び気孔に硫黄が担持された硫黄-炭素複合体を製造した。前記製造された硫黄-炭素複合体の硫黄:多孔性炭素の重量比は80:20であった。
【0151】
比較例2
製造例1で製造した多孔性炭素の代わりにカーボンブラック(super-P)を用いたことを除いては、前記実施例1と同様に行って、炭素表面及び気孔に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが担持された硫黄-炭素複合体を製造した。前記製造された硫黄-炭素複合体の硫黄:ジイソプロフェニルベンゼン:カーボンブラックの重量比は70:10:20であった。
【0152】
実験例1.硫黄-炭素複合体の分析
前記実施例1及び比較例1で製造した硫黄-炭素複合体の硫黄とジイソプロフェニルベンゼンの状態を分析した。
【0153】
1-1.示差走査熱量測定法の測定
示差走査熱量測定法(Differential Scanning Calorimetry、DSC)で硫黄元素(S8)の発熱反応に該当するピーク(peak)が存在するかを確認した。
【0154】
実施例1の硫黄-炭素複合体は、製造例1で製造した多孔性炭素の表面及び気孔に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが担持されているものであり、比較例1の硫黄-炭素複合体は、製造例1で製造した多孔性炭素の表面及び気孔に硫黄が担持されているものである。
【0155】
図3の結果から、実施例1の硫黄-炭素複合体は、硫黄元素の発熱反応に該当するピークが消えたことを確認することができた。これは、多孔性炭素のメソ気孔及び表面で硫黄がジイソプロフェニルベンゼンと化学的結合、すなわち共有結合をしていることを証明する結果とみることができる。
【0156】
一方、
図4の結果から、比較例1の硫黄-炭素複合体は、硫黄元素の発熱反応に該当するピークが存在することを確認することができた。
【0157】
したがって、本発明の実施例1で製造した硫黄-炭素複合体は、硫黄とジイソプロフェニルベンゼンが共有結合をした状態で多孔性炭素の表面及び気孔に存在していることが分かる。
【0158】
また、比較例2で製造した硫黄-炭素複合体は、実施例1と多孔性炭素は異なるが、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンを含んでいるので、実施例1のように、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが共有結合をした状態で多孔性炭素の表面及び気孔に存在ということを予想することができる。
【0159】
1-2.XPSの測定
X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)で実施例1及び比較例1で製造した硫黄-炭素複合体の化学的結合状態を測定した。
【0160】
図5の結果から、162eV付近で炭素-硫黄結合(C-S binding)に該当するピークが観察された。このことから、多孔性炭素のメソ気孔及び表面で硫黄がジイソプロフェニルベンゼンと化学的結合、すなわち共有結合をしていることが分かった。
【0161】
一方、
図6の結果から、162eV付近で炭素-硫黄結合(C-S binding)に該当するピークが観察されなかった。このことから、炭素と硫黄が化学的結合をしていないことが分かった。
【0162】
したがって、本発明の実施例1で製造した硫黄-炭素複合体は、硫黄とジイソプロフェニルベンゼンが共有結合をした状態で多孔性炭素の表面及び気孔に存在していることが分かる。
【0163】
また、比較例2で製造した硫黄-炭素複合体は、実施例1と多孔性炭素は異なるが、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンを含んでいるので、実施例1のように、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが共有結合をした状態で多孔性炭素の表面及び気孔に存在ということを予想することができる。
【0164】
実験例2.リチウム-硫黄電池の放電容量及び寿命特性の評価
前記実施例1、比較例1及び2で製造した硫黄-炭素複合体を正極活物質とし、正極活物質80重量%、導電材10重量%及びバインダー10重量%組成の正極組成物を溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-methyl-2-pyrrolidone)に添加して正極スラリーを製造した後、アルミニウム箔集電体上に20μmの厚さでコーティングし、60℃の温度で乾燥し、リチウム-硫黄電池用正極を製造した。このとき、正極で硫黄の含有量は2.5mg/cm2である。
【0165】
前記導電材としてカーボンブラックを用い、バインダーとしてPVDFを用いた。
【0166】
負極として200μmの厚さを有するリチウム箔を、電解液は1M LiTFSI(DME/DOL、1:1体積比(volume ratio))に2wt%のLiNO3添加剤を溶解させた有機溶液を、分離膜はポリプロピレンフィルムを用いて、リチウム-硫黄電池を製造した。
【0167】
-LiTFSI:ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(bis(trifluoromethane)sulfonimide lithium salt)
-DME:ジメトキシメタン(dimethoxymethane)
-DOL:1,3-ジオキソラン(1,3-dioxolane)
【0168】
2-1.放電容量の評価
前記実施例1、比較例1及び比較例2のリチウム-硫黄電池について充・放電最初のサイクルでの電圧プロファイル(voltage profile)を分析した放電容量実験を行った。放電容量実験は、定電流テスト(galvanostatic test)により、1Cレート(rate)を1672mA/gと定義し、0.2Cレート(rate)で定電流テストを行った。
【0169】
図7は、実施例1、比較例1及び比較例2のリチウム-硫黄電池に対する容量(capacity)による電圧プロファイル(voltage profile)を示したグラフである。
【0170】
実施例1のリチウム-硫黄電池の初期放電容量は912mA/g、比較例1のリチウム-硫黄電池の初期放電容量は843mA/g、比較例2の初期放電容量は685mA/gであった。
【0171】
実施例1の硫黄-炭素複合体の多孔性炭素は、メソ気孔(第1メソ気孔及び第2メソ気孔)が存在して気孔体積が比較的に大きく、これにより、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが効率よく担持され、放電容量が大きく示された。また、硫黄とジイソプロフェニルベンゼンが共有結合をなしているため、ジイソプロフェニルベンゼンがリチウム-硫黄電池の充・放電時に発生するポリスルフィドと可逆的に反応し、放電容量が大きく示された。
【0172】
比較例1の硫黄-炭素複合体は、実施例1の多孔性炭素と同一であるので、多孔性炭素に硫黄が効率よく担持されたが、逆イソプロフェニルベンゼンを含んでいないため、実施例1よりも放電容量が小さく観察された。
【0173】
比較例2の硫黄-炭素複合体は、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンを含むが、比較例2の多孔性炭素は、実施例1の多孔性炭素のような多孔性構造ではないので、実施例1の多孔性炭素よりも比表面積及び気孔体積が小さい。したがって、比較例2の硫黄-炭素複合体は、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンの担持効率性が低く、電気伝導度のある多孔性炭素との接触面積が小さいので、実施例1よりも放電容量が小さく観察された。
【0174】
2-2.寿命特性の評価
前記実施例1、比較例1及び比較例2のリチウム-硫黄電池の寿命特性評価を行った。
【0175】
定電流充放電(Galvanostatic chargedischarge)分析は、0.2Cで1.7V~3.0Vの電圧帯(vs Li/Li+)で行った(1C:1672mA/g)。
【0176】
図8は、実施例1、比較例1及び比較例2のリチウム-硫黄二次電池に対する定電流充放電(Galvanostatic charge-discharge)分析結果を示したグラフである。
【0177】
実施例1の硫黄-炭素複合体の硫黄とジイソプロフェニルベンゼンは共有結合をなしているため、ジイソプロフェニルベンゼンがリチウム-硫黄電池の充・放電時に発生するポリスルフィドと可逆的に反応して寿命特性に優れ、容量維持率が約64%と測定された。
【0178】
比較例1の硫黄-炭素複合体は、ジイソプロフェニルベンゼンを含んでいないため、実施例1に比べて寿命特性が低く示され、容量維持率は約40%と測定された。
【0179】
比較例2の硫黄-炭素複合体は、メソ気孔を含む多孔性炭素を含まないため、硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンを実施例1と同様に担持することができず、実施例1に比べて寿命特性が低く示され、容量維持率は55%と測定された。
【0180】
また、50サイクル後のリチウム-硫黄電池の分離膜を観察した結果、実施例1の分離膜は透明であるのに対し(
図9)、比較例1の分離膜は黄色く変わっていることが確認できた(
図10)。
【0181】
ポリスルフィドは黄色~褐色を有する。分離膜の観察から、本発明の実施例1は、ポリスルフィドの溶出が硫黄-炭素複合体から緩和されたことが分かり、ジイソプロフェニルベンゼンを含まない比較例1は、ポリスルフィドの溶出を効果よく制御できないことが分かった。
【0182】
したがって、前記の結果から、メソ気孔を有する多孔性炭素、多孔性炭素の気孔及び表面に硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンが共有結合をなして担持された本発明の硫黄-炭素複合体、それを含むリチウム-硫黄電池は放電容量及び寿命特性に優れることが分かる。
【0183】
これは、多孔性炭素の気孔体積により硫黄及びジイソプロフェニルベンゼンに対する担持効率性が向上した結果に起因したものである。また、硫黄とジイソプロフェニルベンゼンが共有結合をなして前記ジイソプロフェニルベンゼンがポリスルフィドと可逆的に反応し、ポリスルフィドの溶出を制御してリチウム-硫黄電池の寿命特性を向上させたとみることができる。