(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】金属帯板の板形状判断装置、連続圧延設備、および判断方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
G01B11/16 H
(21)【出願番号】P 2022038022
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2022-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 智俊
(72)【発明者】
【氏名】金森 信弥
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特許第6808888(JP,B1)
【文献】特開2006-177852(JP,A)
【文献】特開2014-182013(JP,A)
【文献】特開平7-114699(JP,A)
【文献】特開2008-58036(JP,A)
【文献】特開平7-77414(JP,A)
【文献】特開2009-288072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/16
B21B 38/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延された金属帯板の表面に板幅方向に横断する帯状の反射光が生じるところを含む反射光領域を映す画像が撮影されるように設置したカメラと、
前記カメラが撮影する前記反射光領域の前記画像に基づき、前記金属帯板の板形状を判断する画像処理部と、を備える圧延された金属帯板の板形状判断装置であって、
前記カメラは、第一カメラと第二カメラとの少なくとも2個があり、前記反射光領域を異なる角度から同時に撮影するように、前記金属帯板の板幅方向の端部よりも外側に設けられ、
前記画像処理部は、
前記第二カメラから得られる第二画像情報を前記第一カメラから得られる第一画像情報と同一座標の変換画像情報に変換し、
前記第一画像情報での前記反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置と前記変換画像情報での前記反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置とから、選択した第一画像あるいは変換画像の前記ピクセル位置を実際の反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置として推定する
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属帯板の板形状判断装置において、
前記画像処理部は、前記第一画像情報が示す反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置と前記変換画像情報が示す反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置とが異なる場合、前記第一画像情報と前記変換画像情報に基づいて、前記反射光領域のうち圧延方向の上流側境界線として最も上流側にあるピクセル位置を前記上流側境界線に採用し、前記反射光領域のうち圧延方向の下流側境界線として最も下流側にあるピクセル位置を前記下流側境界線に採用する
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金属帯板の板形状判断装置において、
前記変換画像情報を算出するため、前記第一画像情報及び前記第二画像情報に共通する箇所であって、前記反射光領域を囲む4つの特定箇所を設定可能になっており、
前記画像処理部は、前記4つの特定箇所の位置を正規化の基準点として座標変換し、この正規化した座標を介して前記第二画像情報から前記変換画像情報を算出する
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の金属帯板の板形状判断装置において、
前記金属帯板の板幅方向に延びる軸を有し、前記金属帯板を上方に持ち上げるロールを更に備える
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の金属帯板の板形状判断装置において、
前記ロールの軸方向の中間位置と前記第一カメラと前記第二カメラとを設ける位置を含む平面において、前記中間位置から前記第一カメラまで延ばした線と前記中間位置から前記第二カメラまで延ばした線とがなす角度は34度以内である
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の金属帯板の板形状判断装置において、
前記角度は9度以内である
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の金属帯板の板形状判断装置において、
前記画像処理部は、前記金属帯板の板幅方向毎に、前記反射光領域を複数に分割し、指標情報となる分割した各々の区域における圧延方向に対する上流側と下流側との境界線間の平均長さ、又は境界線間長さの中央値、又は前記区域の面積値を算出し、前記金属帯板の板幅方向の前記分割した区域毎の板幅方向の中心位置をx=xi(i:分割区域番号)とし、前記指標情報をYとしたときに、Y= C
0’+C
1’×x+C
2’×(2x
2-1)+C
4’×(8x
4-8x
2+1)で表されるチェビシェフ多項式に代入して、前記分割区域の数(前記分割区域の数がNの場合、i=1~N、但しN≧4)の前記チェビシェフ多項式から、前記チェビシェフ多項式の係数(C
0’、C
1’、C
2’、C
4’)を求め、0次成分係数(C
0’)、1次成分係数(C
1’)、2次成分係数(C
2’)、および4次成分係数(C
4’)のうちいずれか1つ以上の成分係数を算出し、前記金属帯板の板形状の傾向に対応した成分を前記成分係数から取得する
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の金属帯板の板形状判断装置において、
前記第一カメラは前記第一カメラが取得する第一画像の画像中心位置に前記反射光領域の少なくとも一部がくるように配置され、かつ前記第二カメラは前記第二カメラが取得する第二画像の画像中心位置に前記反射光領域の少なくとも一部がくるように配置されている
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断装置。
【請求項9】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載の金属帯板の板形状判断装置を備え、
連続して設けられた複数段の圧延機の間に、前記ロールが設置されている
ことを特徴とする連続圧延設備。
【請求項10】
圧延された金属帯板の表面に板幅方向に横断する帯状の反射光が生じるところを含む反射光領域を映す画像がカメラにより撮影される撮影ステップと、
前記撮影ステップで撮影される前記反射光領域の前記画像に基づき、前記金属帯板の板形状を判断する画像処理ステップと、を有する圧延された金属帯板の板形状判断方法であって、
前記撮影ステップでは、前記金属帯板の板幅方向の端部よりも外側に設けられた、第一カメラと第二カメラとの少なくとも2個のカメラにより前記反射光領域を異なる角度から同時に撮影し、
前記画像処理ステップでは、
前記第二カメラから得られる第二画像情報を前記第一カメラから得られる第一画像情報と同一座標の変換画像情報に変換し、
前記第一画像情報での前記反射光領域の境界線を示すピクセル位置と前記変換画像情報での前記反射光領域の境界線を示すピクセル位置とから、選択した第一画像あるいは変換画像の前記ピクセル位置を実際の反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線のピクセル位置として推定する
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断方法。
【請求項11】
請求項10に記載の金属帯板の板形状判断方法において、
前記画像処理ステップでは、前記第一画像情報が示す反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置と前記変換画像情報が示す反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置とが異なる場合、前記第一画像情報と前記変換画像情報に基づいて、前記反射光領域のうち圧延方向の上流側境界線として最も上流側にあるピクセル位置を前記上流側境界線に採用し、前記反射光領域のうち圧延方向の下流側境界線として最も下流側にあるピクセル位置を前記下流側境界線に採用する
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の金属帯板の板形状判断方法において、
前記変換画像情報を算出するため、前記第一画像情報及び前記第二画像情報に共通する箇所であって、前記反射光領域を囲む4つの特定箇所を設定し、
前記画像処理ステップでは、前記4つの特定箇所の位置を正規化の基準点として座標変換し、この正規化した座標を介して前記第二画像情報から前記変換画像情報を算出する
ことを特徴とする金属帯板の板形状判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯板の板形状判断装置、連続圧延設備、および判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状のような特殊な光源を用いることなく金属帯板の板表面形状の不良を容易に判断することが可能な不良判断装置および不良判断方法として、特許文献1には、被圧延鋼板の幅方向に回転軸が延びて設置され、被圧延鋼板を上方に持ち上げるロールと、ロールにより上方側に持ち上げられた被圧延鋼板の持ち上げられた領域を含む画像を撮影するカメラと、カメラが撮影した画像に基づき、金属帯板1の板表面形状の不良を判断する制御装置と、を備える、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧延機により圧延された金属帯板の板形状の良否、例えば板伸びの有無について、金属帯板の板幅方向に長い線状または棒状の反射光に基づいて判断する技術が従来から多数知られている。
【0005】
その判断は、一部に伸びが生じて板形状に変化が生じたときには、線状または棒状であった反射光の形状が整った形ではなくなり、その一部が移動あるいは変位することに基づいている。
【0006】
しかし、線状または棒状の反射光は、板幅方向各位置における圧延方向の反射領域が狭いため、例えば、小さな障害物等によりわずかな外乱が生じた場合の影響を顕著に受けるため、誤判断を生じやすい、との課題がある。
【0007】
これを考慮して、線状または棒状よりも太い帯状の反射光を利用して判断するほうが外乱や突然に生じた小さな障害物による影響を小さくできることに着目した技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【0008】
しかし、カメラと反射光を発している金属帯板との間に障害物がある場合、カメラにより撮影された画像では、障害物が反射光を遮るために、障害物が映っているところは輝度が低い領域として画像に映る。このため、反射光領域が実際の反射光領域よりも狭く映ったり、反射光領域が複数に分岐や分断されたり、また、反射光領域の中に輝度が低い領域が含まれていたりして、金属帯板の板形状に対応した情報を正しく反映することができないため、誤判断の原因となる。なお、反射光領域では、金属帯板の範囲のうち、他の部分よりも強い反射光が得られる。
【0009】
障害物が固定物である場合は、予め固定物の領域を除く処理をすることも考えられる。しかし、固定物ではなく、虫や鳥等の瞬間的に現れるだけの物や繰り返し現れる冷却水の飛び散りなどのように動きがある不定常な障害物の場合は、予めそれらを画像から除く処理はできない、という問題があることが判った。
【0010】
本発明は、不定常な障害物が現れても、金属帯板からの帯状の反射光を適切に捉えることができる金属帯板の板形状判断装置、連続圧延設備、および判断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、圧延された金属帯板の表面に板幅方向に横断する帯状の反射光が生じるところを含む反射光領域を映す画像が撮影されるように設置したカメラと、前記カメラが撮影する前記反射光領域の前記画像に基づき、前記金属帯板の板形状を判断する画像処理部と、を備える圧延された金属帯板の板形状判断装置であって、前記カメラは、第一カメラと第二カメラとの少なくとも2個があり、前記反射光領域を異なる角度から同時に撮影するように、前記金属帯板の板幅方向の端部よりも外側に設けられ、前記画像処理部は、前記第二カメラから得られる第二画像情報を前記第一カメラから得られる第一画像情報と同一座標の変換画像情報に変換し、前記第一画像情報での前記反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置と前記変換画像情報での前記反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置とから、選択した第一画像あるいは変換画像の前記ピクセル位置を実際の反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置として推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不定常な障害物が現れても、金属帯板からの帯状の反射光を適切に捉えることができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例の金属帯板の板形状判断装置を備えた連続圧延設備の概要を示す図。
【
図2】カメラにより異なる位置から撮影した際の反射光領域の形状の違いを示す模式図、(A)第一画像(基準画像)、(B)第二画像。
【
図3】実施例の金属帯板の板形状判断装置における第二画像を規格化座標に変換する様子の模式図。
【
図4】実施例の金属帯板の板形状判断装置における規格化座標上(ζ軸上)でα(ζ)とβ(ζ)が直線的に変化する様子の概念図。
【
図5】実施例の金属帯板の板形状判断装置における規格化座標上(ξ軸上)でα(ξ)とβ(ξ)が直線的に変化する様子の概念図。
【
図6】実施例の金属帯板の板形状判断装置における規格化座標から第一画像の座標への変換の概念図。
【
図7】第二画像を第一画像と同一座標の変換座標に変換する際の検証に用いた図形の様子を示す図。
【
図8】第二画像を第一画像と同一座標の変換座標に変換したピクセル位置の検証結果の一例を示す図。
【
図9】第二画像を第一画像と同一座標の変換座標に変換したX方向の2点間の長さの検証結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の金属帯板の板形状判断装置、連続圧延設備、および判断方法の実施例について
図1乃至
図9を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0015】
最初に、金属帯板の板形状判断装置を含めた連続圧延設備の全体構成について
図1を用いて説明する。
図1は本実施例の金属帯板の板形状判断装置とそれを備えた連続圧延設備の構成を示す概略図である。
【0016】
図1に示す金属帯板1を圧延する連続圧延設備100は、F1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50、第一カメラ61a,62a,63a,64a、第二カメラ61b,62b,63b,64b、張力制御用のルーパー71,72,73,74、画像処理計算機80、制御装置82、モニタ85等を備えている。また、F1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50、第一カメラ61a,62a,63a,64a、第二カメラ61b,62b,63b,64b、画像処理計算機80、制御装置82は、通信線90により接続されている。
【0017】
このうち、第一カメラ61a,62a,63a,64a、第二カメラ61b,62b,63b,64b、張力制御用のルーパー71,72,73,74、画像処理計算機80により、本発明の金属帯板の板形状判断装置が構成される。
【0018】
なお、連続圧延設備100については、
図1に示すような5つの圧延スタンドが設置されている形態に限られず、最低2スタンド以上であればよい。
【0019】
F1スタンド10や、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50の各々は、上ワークロールおよび下ワークロール、これら上ワークロールおよび下ワークロールにそれぞれ接触することで支持する上バックアップロール、下バックアップロール、上バックアップロールの上部に設けられた圧下シリンダ11,21,31,41,51、荷重検出器12,22,32,42,52を備えている。なお、各ワークロールと各バックアップロールとの間に、更に中間ロールを設けた6段の構成とすることができる。
【0020】
ルーパー71はF1スタンド10とF2スタンド20との間に設置されている張力制御用のロールである。このルーパー71は、金属帯板1の板幅方向に延びる軸を有し、金属帯板1を上方に持ち上げるように配置されている。
【0021】
なお、ルーパー71は、例えば、ばね等で上方に付勢するものや、油圧シリンダ、またはモータ駆動等で持ち上げるもの等が考えられる。
【0022】
第一カメラ61aおよび第二カメラ61bは、圧延された金属帯板1の表面に板幅方向に横断する帯状の反射光を含む反射光領域を含む画像を撮影するように、F1スタンド10とF2スタンド20との間のうち、異なる位置に設置されている。好適には、ルーパー71により上方側に持ち上げられた金属帯板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影するように設置される。
【0023】
本実施例では、各スタンド間に配置されるカメラの数は2つの場合について説明するが、3つ以上とすることができ、特に限定されない。
【0024】
これら第一カメラ61a、第二カメラ61bの具体的な設置位置は、反射光領域1A(
図2参照)を異なる角度から同時に撮影するように設けられていればよく、それ以外は特に限定されない。
【0025】
但し、第一カメラ61aは第一カメラ61aが取得する第一画像の画像中心位置に反射光領域1Aの少なくとも一部がくるように配置されており、かつ第二カメラ61bは第二カメラ61bが取得する第二画像の画像中心位置に反射光領域1Bの少なくとも一部がくるように配置されていることが好ましい。
【0026】
また、ルーパー71の軸方向の中間位置と第一カメラ61aと第二カメラ61bとを設ける位置を含む平面において、中間位置から第一カメラ61aまで延ばした線と中間位置から第二カメラ61bまで延ばした線とがなす角度は34度以内、より好適には9度以内であることが好ましい。この根拠については詳しくは後述する。
【0027】
第一カメラ61a、第二カメラ61bが撮影した画像のデータは、通信線90を介して画像処理計算機80に送信される。
【0028】
同様に、張力制御用のルーパー72がF2スタンド20とF3スタンド30との間に、張力制御用のルーパー73がF3スタンド30とF4スタンド40との間に、張力制御用のルーパー74がF4スタンド40とF5スタンド50との間に、それぞれ設置されている。
【0029】
また、第一カメラ62aおよび第二カメラ62bはルーパー72により鉛直方向上方側に持ち上げられた金属帯板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する位置に、第一カメラ63aおよび第二カメラ63bはルーパー73により上方側に持ち上げられた金属帯板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する位置に、第一カメラ64aおよび第二カメラ64bはルーパー74により上方側に持ち上げられた金属帯板1の持ち上げられた領域を含む画像を撮影する位置に、それぞれ設置されている。第一カメラ62a,63a,64a、第二カメラ62b,63b,64bにより撮影された画像のデータは、通信線90を介して画像処理計算機80に送信される。
【0030】
これら第一カメラ62a,63a,64a、第二カメラ62b,63b,64bの具体的な設置位置は、反射光領域1A,1B(
図2参照)を異なる角度から同時に撮影するように設けられていればよく、それ以外は特に限定されない。
【0031】
但し、第一カメラ61a、第二カメラ61bと同様に、第一カメラ62a,63a,64aは第一カメラ62a,63a,64aが取得する第一画像の画像中心位置に反射光領域1Aの少なくとも一部がくるように配置されており、かつ第二カメラ62b,63b,64bは第二カメラ62b,63b,64bが取得する第二画像の画像中心位置に反射光領域1Bの少なくとも一部がくるように配置されていることが好ましい。
【0032】
また、ルーパー72,73,74の軸方向の中間位置と第一カメラ62a,63a,64aと第二カメラ62b,63b,64bとを設ける位置を含む平面において、前記中間位置から第一カメラ62a,63a,64aまで延ばした線と前記中間位置から第二カメラ62b,63b,64bまで延ばした線とがなす角度は34度以内、より好適には9度以内であることが好ましい。
【0033】
これら第一カメラ61a,62a,63a,64a、第二カメラ61b,62b,63b,64bにより、好適には撮影ステップが実行される。
【0034】
第一カメラ61a,62a,63a,64a、第二カメラ61b,62b,63b,64bが主に撮影する、ルーパー71,72,73,74により上方側に持ち上げられた金属帯板1の持ち上げられた撮影領域を照らす照明を更に設けることができる。この照明は、連続圧延設備100が設置されている圧延工場の天井などに適宜配置される一般的な照明でよく、本発明では特段新たな照明設備は不要であるが、専用の照明を設けても良い。
【0035】
画像処理計算機80は、第一カメラ61a,62a,63a,64a、第二カメラ61b,62b,63b,64bが撮影する反射光領域1Aの画像に基づき、金属帯板1の板形状を判断するための各種処理を実行する。この画像処理計算機80により、好適には画像処理ステップが実行される。
【0036】
本実施例における画像処理計算機80は、第二カメラ61b,62b,63b,64bから得られる第二画像情報を第一カメラ61a,62a,63a,64aから得られる第一画像情報と同一座標の変換画像情報に変換し、第一画像情報での反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置と変換画像情報での反射光領域1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置とから、選択した前記第一画像あるいは前記変換画像のピクセル位置を実際の反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線として推定する。
【0037】
これは、飛散物の位置がずれて見えるように、2台以上の第一カメラ61a,62a,63a,64a、第二カメラ61b,62b,63b,64bにより、ルーパー71,72,73,74の同じ場所の画像を複数位置から撮影すると、金属帯板1の表面より上方に飛散物が飛んでいる場合は画像に映る飛散物の位置が異なって見える、という原理を利用して、画像の金属帯板1の手前にある障害物を除去する、という本発明者らの検討結果に基づいた処理である。その詳細は後述する。
【0038】
制御装置82は、連続圧延設備100内の各機器の動作を制御する装置であり、本実施例では、画像処理計算機80での金属帯板1の板形状の判断に応じた各種制御を実行する装置である。
【0039】
これら画像処理計算機80や制御装置82は、後述する液晶ディスプレイ等のモニタ85や入力機器、記憶装置、CPU、メモリなどを有するコンピュータで構成されるものとすることができ、1つのコンピュータで構成されるものとして別のコンピュータで構成されるものとしてもよく、特に限定されない。
【0040】
画像処理計算機80や制御装置82による各機器の動作の制御は、記憶装置に記録された各種プログラムに基づき実行される。なお、画像処理計算機80や制御装置82で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていてもよい。
【0041】
モニタ85は、ディスプレイなどの表示機器や警報機などの音響機器であり、例えば画像処理計算機80が板形状に問題が発生していると判断したときに、その対処作業についてオペレータに対して伝えるための装置であることから、このようなモニタ85としては、ディスプレイが用いられることが多い。
【0042】
ここで、上述の画像処理計算機80は表示信号部を含んでおり、モニタ85に表示する内容に関する信号をモニタ85に送信する。
【0043】
オペレータは、操業中、モニタ85の表示画面や各スタンド自体、各スタンド間を目視することで板形状の状態を確認することができる。
【0044】
なお、オペレータに板形状の問題発生を伝えるとともに板形状の問題を改善する操作を制御装置82により自動で行う形態に限られず、モニタ85に表示するのみの形態や、モニタ85への表示を省略して板形状の問題を改善する操作を制御装置82により自動で行うのみの形態とすることができる。
【0045】
次いで、画像処理計算機80の処理の詳細について
図2以降を用いて説明する。
図2はカメラにより異なる位置から撮影した際の反射光領域の形状の違いを示す模式図である。
【0046】
上述のように、本発明の目的は、好適にはルーパー71,72,73,74で持ち上げられた領域に形成される反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を正確に検出することである。
【0047】
金属帯板1の上面の反射光領域1Aの範囲を判定する上流側、下流側の境界線の検出では、水滴や水しぶき等を始めとした飛散する障害物が前記境界線と重なって画像が撮影される場合には、正しい前記境界線の位置が検出できないという問題がある。
【0048】
そこで、反射光領域1Aを撮影するためのカメラを一カ所の反射光領域1Aに対して少なくとも2台以上配置(第一カメラ61a,62a,63a,64a、第二カメラ61b,62b,63b,64b)するとともに、複数のカメラの設置位置を変えることにより、各々のカメラで撮影した画像は、被写体である反射光領域1Aを映し出す視野角度を異なるものとする。
【0049】
このため、飛散物が反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線と重なって画像が撮影される場合でも、別の角度(別のカメラ)から映し出された画像では、飛散物が反射光領域1Bの上流側または下流側の境界線と重なっておらず、本来の上流側または下流側の境界線が映し出される可能性があることを利用して、飛散物が反射光領域1Aの上流側または下流側の境界線と重なって正しく上流側または下流側の境界線を検出することができないケースを減らすものである。
【0050】
具体的には、以下の処理、動作を実行するものとする。なお、以下の説明では、熱延ラインを構成するF4スタンド40とF5スタンド50との間の場合について説明するが、F1スタンド10とF2スタンド20との間、F2スタンド20とF3スタンド30との間、F3スタンド30とF4スタンド40との間の場合も基本的に同じであり、詳細は省略する。
【0051】
まず、1つの反射光領域1A及び反射光領域1Bを第一カメラ64a及び第二カメラ64bで同時に異なる位置から撮影する。
【0052】
この時、
図2に示すように、変換画像情報を算出するため、第一カメラ64aで取得する第一画像情報及び第二カメラ64bで取得する第二画像情報に共通する箇所であって、反射光領域1Aを囲む4つの実空間での特定箇所P1,P2,P3,P4(基準点)を事前に設定しておく。
【0053】
これら特定箇所P1,P2,P3,P4は、F4スタンド40のハウジング45、F5スタンド50のハウジング55の柱等の固定の特定の構造物、あるいはハウジング45,55に設けるマーカとすることができ、特に限定されない。
【0054】
その後、画像処理計算機80は、4つの基準点のX-Y座標を、第一カメラ64a、及び第二カメラ64bで撮影された複数の画像で、それぞれ求めるとともに、第一カメラ64aで取得する第一画像情報及び第二カメラ64bで取得する第二画像情報のうち、いずれか一方の画像を基準画像と決定する。ここでは、第一カメラ64aで取得する第一画像を基準画像と決める場合について説明する。
【0055】
なお、カメラを3つ以上配置する場合も、いずれか一つのカメラで取得した画像を第一画像として、他の2つ以上の画像を順々に第二画像と定義して以後説明する変換処理などを行っていけばよいため、詳細は省略する。
【0056】
次いで、画像処理計算機80は、基準画像の反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側(
図2(A)中の左側)、下流側(
図2(A)中の右側)の境界線のX-Y座標を求め、第二画像についても同様に反射光領域1Bの上流側(
図2(B)中の左側)、下流側(
図2(B)中の右側)の境界線のX-Y座標を求め、この座標を、基準画像の座標に合わせるように、座標変換する。
【0057】
この際、画像処理計算機80は、4つの前記特定箇所P1,P2,P3,P4の位置を正規化の基準点として座標変換し、この正規化した座標を介して第二画像情報から変換画像情報を算出する。
【0058】
ここで、基準画像の反射光領域1Aと、座標変換を行った変換画像の反射光領域1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の座標を比較し、2つの画像(前記基準画像と前記変換画像)の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の座標の値が異なっている場合は、どちらかの画像の反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線上に水滴等の飛散物が重なって映っている可能性がある。
【0059】
そこで、画像処理計算機80は、第一画像情報が示す反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置と変換画像情報が示す反射光領域1Bの上流側または下流側の境界線の位置が異なる場合において、反射光領域1Aと変換画像情報が示す反射光領域1Bの金属帯板圧延方向の上流側(
図2(A),(B)中の左側)の境界線の位置が異なる場合は、2つの画像の境界線座標を比較して、X座標の値が小さいピクセル位置を上流側境界線に採用する。すなわち、X座標の値が大きい方は、飛散物が上流側境界線に重なって映っており、本来の境界線位置よりX座標の値が大きくなっているケースと判断する。
【0060】
また、画像処理計算機80は、反射光領域1Aと変換画像情報が示す反射光領域1Bの金属帯板圧延方向の下流側(
図2(A),(B)中の右側)の境界線の位置が異なる場合は、2つの画像の境界線座標を比較して、X座標の値が大きいピクセル位置を下流側境界線に採用する。すなわち、X座標の値が小さい方は、飛散物が下流側境界線に重なって映っており、本来の境界線位置よりX座標の値が小さくなっているケースと判断する。
【0061】
これに対し、第一カメラ64aが撮影した第一画像情報が示す反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置と第二カメラ64bが撮影した第二画像情報を第一画像情報と同一座標に変換した変換座標情報の反射光領域1Bの上流側または下流側の境界線の位置が実質的に同じ場合は、障害物が映り込んでいないと判断し、第一画像情報と変換画像情報のいずれかを実際の反射光領域1A,1Bの上流側または下流側の境界線の位置と推定する。
【0062】
また、例えば、第一画像情報と変換画像情報と比較して、反射光領域1A,1Bが金属帯板圧延方向により長いほうの画像情報に基づいて反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置を推定したり、反射光領域1A,1B中の輝度の低い領域が複数見られる画像情報を採用せず、そのような情報がない、又は、少ないほうの画像情報に基づいて反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置を推定したり、また、部分的に第一画像の反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置と変換画像の反射光領域1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置とを組み合わせて、実際の反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置を推定したり、適宜、考えられる。
【0063】
画像処理計算機80は、このような流れで決定した反射光領域1A,1Bの2つの画像の圧延方向に対する上流側と下流側との境界線の位置を求めて、板形状の傾向に対応した指標情報となる反射光領域1A,1Bを板幅方向に分割した区域毎の上流側と下流側との境界線間の平均長さ、又は境界線間長さの中央値、又は前記区域の面積値を把握する。
【0064】
ここで、画像処理計算機80は、例えば前記指標情報として、求めた反射光領域1A,1Bを金属帯板1の板幅方向に複数に分割し、分割した各々の区域における、金属帯板1の板幅方向毎に、反射光領域1A,1Bの上流側と下流側との境界線間の金属帯板1の圧延方向の長さの平均値を算出し、金属帯板1の板幅方向の前記分割区域毎の板幅方向での中心位置をx=xi(i:分割区域番号)とし、前記指標情報をYとしたときに、Y= C0’+C1’×x+C2’×(2x2-1)+C4’×(8x4-8x2+1)で表されるチェビシェフ多項式に代入して、前記分割区域の数(分割区域の数がNの場合、i=1~N、但しN≧4)の前記数式から、チェビシェフ多項式の係数(C0’、C1’、C2’、C4’)を求め、0次成分係数(C0’)、1次成分係数(C1’)、2次成分係数(C2’)、および4次成分係数(C4’)のうちいずれか1つ以上の前記成分係数を算出し、金属帯板1の板形状の傾向に対応した成分を前記成分係数から取得する。この各成分値に応じた判断結果をモニタ85や制御装置82に対して出力する。
【0065】
次いで、第二画像を第一画像(基準画像)と同じ座標に座標変換する方法の一例について
図3乃至
図6を用いて説明する。
図3は第二画像を規格化座標に変換する様子の模式図、
図4および
図5は規格化座標上(ζ軸上、ξ軸上)でα(ζ)、β(ζ)およびα(ξ)、β(ξ)が直線的に変化する様子の概念図、
図6は規格化座標から第一画像の座標への変換の概念図である。
【0066】
まず、画像処理計算機80は、第一カメラ64aで撮影した第一画像に映っている場所で、4つの前記基準点P1,P2,P3,P4の基準点ピクセル座標を、P1点(p1x,p1y)、P2点(p2x,p2y)、P3点(p3x,p3y)、P4点(p4x,p4y)と決定する。
【0067】
また、画像処理計算機80は、第二カメラ64bで撮影した第二画像のうち、上記の第一画像での基準点P1,P2,P3,P4と同じ実空間位置でのピクセル座標P’1点(p’1x,p’1y)、P’2点(p’2x,p’2y)、P’3点(p’3x,p’3y)、P’4点(p’4x,p’4y)を求める。
【0068】
その後、画像処理計算機80は、第二画像に映っている画像を、第一画像の座標に変換する。
【0069】
まず、第一画像の基準点P1,P2,P3,P4と、第二画像の基準点P’1,P’2,P’3,P’4のX-Y座標での差を以下の式(1)-(4)にて求める。
【0070】
ΔXP’1=p1x-p’1x、ΔYP’1=p1y-p’1y ・・・(1)
ΔXP’2=p2x-p’2x、ΔYP’2=p2y-p’2y ・・・(2)
ΔXP’3=p3x-p’3x、ΔYP’3=p3y-p’3y ・・・(3)
ΔXP’4=p4x-p’4x、ΔYP’4=p4y-p’4y ・・・(4)
なお、式(1)は第二画像のP’1点における第一画像と第二画像のX-Y座標の差、式(2)は第二画像のP’2点における第一画像と第二画像のX-Y座標の差、式(3)は第二画像のP’3点における第一画像と第二画像のX-Y座標の差、式(4)は第二画像のP’4点における第一画像と第二画像のX-Y座標の差となる。
【0071】
次いで、第二画像の4つの基準点P’1,P’2,P’3,P’4の座標を規格化座標(ζ-ξ)に変換する。
【0072】
具体的には、
図3に示すように、第二画像のP’1のX-Y座標(p’1x,p’1y)は規格化座標(ζ-ξ)に変換すると(-1,1)、第二画像のP’2のX-Y座標(p’2x,p’2y)は規格化座標(ζ-ξ)に変換すると(1,1)、第二画像のP’3のX-Y座標(p’3x,p’3y)は規格化座標(ζ-ξ)に変換すると(-1,-1)、第二画像のP’4のX-Y座標(p’4x,p’4y)は規格化座標(ζ-ξ)に変換すると(1,-1)となるものとする。
【0073】
次いで、第二画像のX-Y座標(x,y)で、4つの基準点P’1,P’2,P’3,P’4を結ぶ4本の直線(P’1とP’2とを結ぶ直線L1、P’1とP’3とを結ぶ直線L2、P’3とP’4とを結ぶ直線L3、P’2とP’4とを結ぶ直線L4)の式を以下の式(5)-(8)(直線L1は式(5)、直線L2は式(6)、直線L3は式(7)、直線L4は式(8))のように求める。
【0074】
y={(p’2y-p’1y)/(p’2x-p’1x)}×x+p’1y-{(p’2y-p’1y)/(p’2x-p’1x)}×p’1x ・・・(5)
x={(p’3x-p’1x)/(p’3y-p’1y)}×y+p’1x-{(p’3x-p’1x)/(p’3y-p’1y)}×p’1y ・・・(6)
y={(p’4y-p’3y)/(p’4x-p’3x)}×x+p’3y-{(p’4y-p’3y)/(p’4x-p’3x)}×p’3x ・・・(7)
x={(p’4x-p’2x)/(p’4y-p’2y)}×y+p’2x-{(p’4x-p’2x)/(p’4y-p’2y)}×p’2y ・・・(8)
その後、上記直線の式(5)-(8)を、以下の式(9)-(12)のように書き変える。
【0075】
直線L1(P’1-P’2):y=α1×x+β1 ・・・(9)
直線L2(P’1-P’3):x=α2×y+β2 ・・・(10)
直線L3(P’3-P’4):y=α3×x+β3 ・・・(11)
直線L4(P’2-P’4):x=α4×y+β4 ・・・(12)
ここで、αとβは、式(5)-(12)より、以下の式(13)-(20)のように表せる。
【0076】
α1=(p’2y-p’1y)/(p’2x-p’1x) ・・・(13)
β1=p’1y-{(p’2y-p’1y)/(p’2x-p’1x)}×p’1x ・・・(14)
α2=(p’3x-p’1x)/(p’3y-p’1y) ・・・(15)
β2=p’1x-{(p’3x-p’1x)/(p’3y-p’1y)}×p’1y ・・・(16)
α3=(p’4y-p’3y)/(p’4x-p’3x) ・・・(17)
β3=p’3y-{(p’4y-p’3y)/(p’4x-p’3x)}×p’3x ・・・(18)
α4=(p’4x-p’2x)/(p’4y-p’2y) ・・・(19)
β4=p’2x-{(p’4x-p’2x)/(p’4y-p’2y)}×p’2y ・・・(20)
次いで、
図4および
図5に示すように、規格化座標(ζ-ξ)での上記の直線式(α、β)の関係を、以下の式(21)-(24)のように求める。
【0077】
α(ζ)=(α4-α2)×ζ/2+(α4+α2)/2 ・・・(21)
β(ζ)=(β4-β2)×ζ/2+(β4+β2)/2 ・・・(22)
α(ξ)=(α1-α3)×ξ/2+(α1+α3)/2 ・・・(23)
β(ξ)=(β1-β3)×ξ/2+(β1+β3)/2 ・・・(24)
なお、
図4は-1≦ζ≦1の範囲で、α(ζ)、β(ζ)が直線的に変化することを、、
図5は-1≦ξ≦1の範囲で、α(ξ)、β(ξ)が直線的に変化することをイメージしている。
【0078】
第二画像のX-Y座標とζ-ξ座標の関係、すなわち、X-Y座標からζ-ξ座標への変換式は、次の式(25)-(26)のように表せる。なお、これら式(25)、(26)は、上述の式(9)-(12)を書き換えたものに相当する。
【0079】
x=α(ζ)×y+β(ζ) ・・・(25)
y=α(ξ)×x+β(ξ) ・・・(26)
したがって、これら式(25)-(26)に式(21)-(24)を代入すると、(x,y)と(ζ,ξ)の関係は、以下の式(27)-(28)のように表せる。
【0080】
ζ={x-(α4+α2)×y/2-(β4+β2)/2}/{(α4-α2)×y/2+(β4-β2)/2} ・・・(27)
ξ={y-(α1+α3)×x/2-(β1+β3)/2}/{(α1-α3)×x/2+(β1-β3)/2} ・・・(28)
これら式(27)-(28)が、第二画像のX-Y座標(x,y)から、規格化座標(ζ-ξ)に変換する関係式となる。
【0081】
更に、第二画像の基準点P’1,P’2,P’3,P’4に囲まれたX-Y座標の任意の点(xb,yb)を規格化座標(ζ-ξ)に変換した点(ζb,ξb)は、以下の式(29)-(30)のように表せる。
【0082】
ζb={xb-(α4+α2)×yb/2-(β4+β2)/2}/{(α4-α2)×yb/2+(β4-β2)/2} ・・・(29)
ξb={yb-(α1+α3)×xb/2-(β1+β3)/2}/{(α1-α3)×xb/2+(β1-β3)/2} ・・・(30)
以上の手順により、第二画像のX-Y座標の座標位置(xb,yb)が、規格化座標(ζ-ξ)における(-1≦ζ≦1、-1≦ξ≦1)の範囲内の点(ζb,ξb)に変換されたことから、次いで、規格化座標(ζ-ξ)を第一画像の座標(xa,ya)に変換する。
【0083】
まず、点(ζb,ξb)での第一画像のX-Y座標の座標位置(xa,ya)と第二画像のX-Y座標の座標位置(xb,yb)の差(Δxb,Δyb)=(xa-xb,ya-yb)を求めるが、これらは上述の式(1)-(4)から、4つの基準点P’1,P’2,P’3,P’4での各(Δx,Δy)は、次の式(31)-(34)のように表せる。
【0084】
P’1(ζ=-1,ξ=1)では、(Δx,Δy)=(ΔXP’1,ΔYP’1) ・・・(31)
P’2(ζ=1,ξ=1)では、(Δx,Δy)=(ΔXP’2,ΔYP’2) ・・・(32)
P’3(ζ=-1,ξ=-1)では、(Δx,Δy)=(ΔXP’3,ΔYP’3) ・・・(33)
P’4(ζ=1,ξ=-1)では、(Δx,Δy)=(ΔXP’4,ΔYP’4) ・・・(34)
ここで、
図6に示すξ=1(すなわち、直線L1上)の時の任意のΔxL1と、ξ=-1(すなわち、直線L3上)の時の任意のΔxL3とは、それぞれ以下の式(35)-(36)のように表せる。
【0085】
ΔxL1=(ΔXP’2-ΔXP’1)×ζ/2+(ΔXP’2+ΔXP’1)/2 ・・・(35)
ΔxL3=(ΔXP’4-ΔXP’3)×ζ/2+(ΔXP’4+ΔXP’3)/2 ・・・(36)
したがって、ζ=ζbの場合の直線L1上のΔxL1と、直線L3上のΔxL3は、それぞれ以下の式(37)-(38)のように表せる。
【0086】
ΔxbL1=(ΔXP’2-ΔXP’1)×ζb/2+(ΔXP’2+ΔXP’1)/2 ・・・(37)
ΔxbL3=(ΔXP’4-ΔXP’3)×ζb/2+(ΔXP’4+ΔXP’3)/2 ・・・(38)
つまり、ξ=1の時のΔxはΔxbL1であり、ξ=-1の時のΔxはΔxbL3なので、ζ=ζbの場合のξに対するΔxは以下の式(39)のように表せる。
【0087】
Δx=(ΔxbL1-ΔxbL3)×ξ/2+(ΔxbL1+ΔxbL3)/2 ・・・(39)
すなわち、ζ=ζb、ξ=ξbの場合のΔxbは、以下の式(40)のように表せる。
【0088】
Δxb=(ΔxbL1-ΔxbL3)×ξb/2+(ΔxbL1+ΔxbL3)/2 ・・・(40)
同様に、ξ=1(直線L1上)の時のΔyL1と、ξ=-1(直線L3上)の時のΔyL3は、それぞれ以下の式(41)-(42)のように表せる。
【0089】
ΔyL1=(ΔYP’2-ΔYP’1)×ζ/2+(ΔYP’2+ΔYP’1)/2 ・・・(41)
ΔyL3=(ΔYP’4-ΔYP’3)×ζ/2+(ΔYP’4+ΔYP’3)/2 ・・・(42)
従って、ζ=ζbの場合の直線L1上のΔyL1と、直線L3上のΔyL3は、それぞれ以下の式(43)-(44)のように表せる。
【0090】
ΔybL1=(ΔYP’2-ΔYP’1)×ζb/2+(ΔYP’2+ΔYP’1)/2 ・・・(43)
ΔybL3=(ΔYP’4-ΔYP’3)×ζb/2+(ΔYP’4+ΔYP’3)/2 ・・・(44)
つまり、ξ=1の時のΔyはΔybL1であり、ξ=-1の時のΔyはΔybL3なので、ζ=ζbの場合のξに対するΔyは、以下の式(45)のように表せる。
【0091】
Δy=(ΔybL1-ΔybL3)×ξ/2+(ΔybL1+ΔybL3)/2 ・・・(45)
すなわち、ζ=ζb、ξ=ξbの場合のΔybは、以下の式(46)のように表せる。
【0092】
Δyb=(ΔybL1-ΔybL3)×ξb/2+(ΔybL1+ΔybL3)/2 ・・・(46)
式(40)と式(46)を展開すると、(Δxb,Δyb)は、それぞれ以下の式(47)-(48)のように表せる。
【0093】
【0094】
【0095】
また、式(29)-(30)と式(47)-(48)とから、第二画像のX-Y座標の任意の点(xb,yb)を、第一画像のX-Y座標に対応する点(x’a,y’a)に変換することができる。すなわち、以下の式(49)-(50)のように(x’a,y’a)を求められる。
【0096】
x’a=Δxb+xb ・・・(49)
y’a=Δyb+yb ・・・(50)
ここで、本来は、(x’a,y’a)=(xa,ya)となるところであるが、複数のカメラから反射光領域1Aまでの角度の差が大きくなると、座標変換後の座標(x’a,y’a)と本来の第一画像の座標(xa,ya)との誤差が大きくなることが確認された。これは、遠近法の誤差によるものと考えられる。
【0097】
以下、座標変換の検証結果について
図7乃至
図9を用いて説明する。
図7は第二画像を第一画像と同一座標の変換座標に変換する際の検証に用いた図形の様子を示す図、
図8および
図9は第二画像を第一画像と同一座標に変換した検証結果の一例を示す図である。
【0098】
まず、
図7に示すような図形を描画し、撮影位置を以下の7通りのように変更してデジタルカメラで撮影した。
【0099】
ケース1を基準として、ケース2はケース1に対して被写体に対する水平方向角度のずれを約5度、ケース3はケース1に対して被写体に対する水平方向角度のずれを約9度、ケース4はケース1に対して被写体に対する水平方向角度のずれを約18度、ケース5はケース1に対して被写体に対する水平方向角度のずれを約34度、ケース6はケース1に対して被写体に対する水平方向角度のずれを約18度、垂直方向角度のずれを約9度、ケース7はケース1に対して被写体に対する水平方向角度のずれを約34度、垂直方向角度のずれを約9度、とした。
【0100】
まず、ケース1(基準画像)の座標とケース2乃至ケース7の座標変換の比較の検証結果について説明する。
【0101】
ケース1(第一画像)とケース2(第二画像)及びその変換画像の
図7の図形の各点のピクセル位置の比較結果を示す
図8では、丸マークがケース1の各点のX-Y座標を、四角マークがケース2の各点のX-Y座標を、ケース2のX-Y座標の各点をケース1の座標に変換した各点のX-Y座標の位置(第二画像からの変換画像)を三角マークで示している。
【0102】
2つのカメラからの被写体への角度は、水平方向に約5度ずれているが、
図8に示すように、座標変換により、ケース2の第二画像からの変換画像のピクセル座標位置は、概ねケース1の第一画像のピクセル座標位置と一致することが確認された。
【0103】
また、ケース1とケース3の比較では、2つのカメラからの被写体への角度は水平方向に約9度ずれているが、ケース3の座標変換により概ねケース1の座標と一致することが確認された。
【0104】
ケース1とケース4の比較では、2つのカメラからの被写体への角度は水平方向に約18度ずれており、ケース4の座標変換の結果は、ケース1の座標と高い水準で一致しているものの、一部ずれが確認された。しかしながら、実用上は十分であることが確認された。
【0105】
ケース1とケース5の比較では、2つのカメラからの被写体への角度は水平方向に約34度ずれており、ケース5の座標変換の結果は、ケース1の座標とは少し離れている部分が見られ、概ね一致しているとは言えないものの、実用上は十分であることが確認された。
【0106】
ケース1とケース7の比較では、2つのカメラからの被写体への角度は水平方向に約34度、さらに垂直方向に約9度ずれている。ケース7の座標変換の結果は、ケース1の座標とは離れている部分が見受けられたものの、実用上は問題ないことが確認された。
【0107】
ケース4とケース6の比較では、2つのカメラからの被写体への水平方向位置は同じ場所であり、垂直方向に約9度ずれている。ケース6の座標変換結果は、ケース4の座標と概ね一致していることが確認された。
【0108】
ケース5とケース7の比較では、2つのカメラからの被写体への水平方向位置は同じ場所であり、垂直方向に約9度ずれている。ケース7の座標変換の結果は、ケース5の座標と概ね一致していることが確認された。
【0109】
次いで、各ポイント間の
図7中のX方向の2点間の距離の比較の検証結果について
図9を参照して説明する。
【0110】
ケース1とケース2の各ポイント間距離の比較結果は、
図9に示すように、ケース1(第一画像)の各ポイント間距離の値と、ケース2の座標変換後の値(第二画像からの変換画像)の各ポイント間距離の値は、概ね同じであるが、画像の水平方向中央部のポイント間(A3-A2、B3-B2、C3-C2)の距離の値は、極めて近い値であることが確認できた。したがって、2台のカメラの被写体に対する水平方向角度のずれが約5度では、熱間圧延板の上面に見られる反射光領域の圧延方向の長さ評価において、座標変換を行っても問題ないと考えられる。また、画像中央位置に反射光領域の映像を映しだして評価を行うことが望ましいと考えられる。
【0111】
ケース1とケース3の各ポイント間距離の比較結果は、ケース1とケース2の比較結果と同様に、概ね同じであり、画像の水平方向中央部のポイント間(A3-A2、B3-B2、C3-C2)の距離の値は極めて近い値であることが確認できた。したがって、2台のカメラの被写体に対する水平方向角度のずれが約9度では、反射光領域の圧延方向の長さ評価において、座標変換を行っても問題ないと考えられる。また、画像中央位置に反射光領域の映像を映しだすのが望ましいと考えられる。
【0112】
ケース1とケース4の各ポイント間距離の比較結果は、画像の水平方向中央部のポイント間(A3-A2、B3-B2、C3-C2)の距離の値は、近い値であることが確認できた。しかし、画像の両端のポイント間距離は、値の乖離が存在していることが確認できた。したがって、2台のカメラの被写体に対する水平方向角度のずれが約18度では、反射光領域の圧延方向の長さ評価では、画像の水平方向中央部のポイント間距離については、座標変換を行っても問題ないと考えられる。また、画像の両端に映るポイント間の距離については、反射光領域の圧延方向の長さ評価には可能であれば使用せずにおくことが望ましいと考えられる。
【0113】
ケース1とケース5の各ポイント間距離の比較結果では、画像の水平方向中央部のポイント間距離(B3-B2)の値は、近い値であることが確認できた。しかし、A3-A2間距離とC3-C2間距離は若干一致していないように見られ、さらに、画像の両端のポイント間距離は、値が乖離していることが確認できた。したがって、2台のカメラの被写体に対する水平方向角度のずれが約34度では、反射光領域の圧延方向の長さ評価では、実用上は十分であるものの、可能であればこの座標変換の適用は避けた方が良いと考えられる。
【0114】
ケース1とケース7の各ポイント間距離の比較結果では、画像の水平方向中央部のポイント間距離(B3-B2、C3-C2)の値は、近い値であることが確認できた。しかし、A3-A2間距離は若干一致していないように見られ、さらに、画像の両端のポイント間距離は、値が乖離していることが確認できた。したがって、2台のカメラの被写体に対する水平方向角度のずれが約34度で、且つ、垂直方向のずれが約9度では、反射光領域の圧延方向の長さ評価では、実用上は十分であるものの、可能であればこの座標変換の適用は避けた方が良いと考えられる。
【0115】
ケース4とケース6の各ポイント間距離の比較結果では、どれも概ね近い値であることが確認できた。しかし、画像の両端のポイント間距離は、若干値が一致していないことが確認できた。したがって、垂直方向にずれが約9度ある場合、反射光領域の圧延方向の長さ評価において、座標変換を行っても問題ないと考えられるが、画像中央位置に、反射光領域の映像を映しだして評価を行うことが望ましいと考えられる。
【0116】
ケース5とケース7の各ポイント間距離の比較結果では、どれも概ね近い値であることが確認できた。しかし、画像の両端のポイント間距離は、若干値が一致していないことが確認できた。したがって、ケース4とケース6の各ポイント間距離の比較結果と同様に、垂直方向にずれが約9度あり、この場合、反射光領域の圧延方向の長さ評価において、座標変換を行っても問題ないと考えられるが、画像中央位置に、反射光領域の映像を映しだして評価を行うことが望ましいと考えられる。
【0117】
以上の検証結果をまとめると以下の表1のようになる。
【0118】
【0119】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0120】
上述した本実施例の金属帯板1の板形状判断装置は、第一カメラ61a,62a,63a,64aと第二カメラ61b,62b,63b,64bとの少なくとも2個があり、反射光領域1A,1Bを異なる角度から同時に撮影するように、金属帯板1の板幅方向の端部よりも外側に設けられ、画像処理計算機80は、第二カメラ61b,62b,63b,64bから得られる第二画像情報を第一カメラ61a,62a,63a,64aから得られる第一画像情報と同一座標の変換画像情報に変換し、第一画像情報での反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置と変換画像情報での反射光領域1Bの上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置とから、選択した前記第一画像あるいは前記変換画像のピクセル位置を実際の反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線として推定する。
【0121】
第一カメラ61a,62a,63a,64aと第二カメラ61b,62b,63b,64bは異なる角度から反射光領域1A,1Bを撮影しているので、どちらかのカメラが障害物に影響されずに反射光領域1A,1Bを撮影している可能性が高い。しかし、異なる角度からの撮影は画像上同じ位置でも異なる部分が映っているので、第二画像情報を第一画像情報の座標に合わせる処理をすることにより、画像上は同じ位置にあるものは同じ部分が映っていると見なせるため、障害物があってもなくても、実際の反射光領域1A,1Bを高い確度で推定できるので、金属帯板1の板形状に対応した情報を高い確度で判断できることになる。
【0122】
また、画像処理計算機80は、第一画像情報が示す反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置と変換画像情報が示す反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置とが異なる場合、第一画像情報と変換画像情報に基づいて、反射光領域1A,1Bのうち金属帯板1の圧延方向に対する上流側境界線として最も上流側にあるピクセル位置を上流側境界線に採用し、反射光領域1A,1Bのうち金属帯板圧延方向の下流側境界線として最も下流側にあるピクセル位置を下流側境界線に採用するため、障害物で反射光領域1A,1Bが分断等されていることに惑わされず、実際の反射光領域1A,1Bの前記境界線の位置である可能性が最も高い、反射光領域1A,1Bの前記境界線の位置を推定することができる。
【0123】
更に、変換画像情報を算出するため、第一画像情報及び第二画像情報に共通する箇所であって、反射光領域1Aを囲む4つの特定箇所P1,P2,P3,P4を設定可能になっており、画像処理計算機80は、4つの特定箇所P1,P2,P3,P4の位置を正規化の基準点として座標変換し、この正規化した座標を介して第二画像情報から変換画像情報を算出することで、異なる角度から撮影した画像情報に対し、実際の装置等の同じ部分が画像情報において同じ位置となるように変換した画像情報とができ、2者の画像情報から反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置の違いを判断し易くなり、選択した前記第一画像あるいは前記変換画像から、実際の反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置を推定し易い、との効果が得られる。
【0124】
また、金属帯板1の板幅方向に延びる軸を有し、金属帯板1を上方に持ち上げるルーパー71,72,73,74を更に備えることにより、棒状や帯状の特定形状の光源が備わっていない建屋の中であっても、建屋に照明さえ備わっていれば、持ち上げられた金属帯板1には、ルーパー71,72,73,74に沿った帯状の反射光が生じるため、本発明の効果を得るのにより適した画像を得やすい、との効果が得られる。
【0125】
更に、ルーパー71,72,73,74の軸方向の中間位置と第一カメラ61a,62a,63a,64aと第二カメラ61b,62b,63b,64bとを設ける位置を含む平面において、中間位置から第一カメラ61a,62a,63a,64aまで延ばした線と中間位置から第二カメラ61b,62b,63b,64bまで延ばした線とがなす角度は34度以内であることで、第一画像情報と変換画像情報とがそれぞれ示す各位置が、実用上問題なく、かつ高い精度で互いに一致するので、撮影角度の違いによる画像情報上の位置の違いの影響を小さくでき、より適切な反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置を選択し推定できる。
【0126】
また、前記角度は9度以内であることにより、撮影角度の違いによる画像情報上の位置の違いの影響をより小さくできるため、より適切な反射光領域1A,1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線の位置を選択、推定することができるようになる。
【0127】
更に、画像処理計算機80は、例えば指標情報として、金属帯板1の板幅方向毎に、反射光領域1A,1Bを金属帯板1の板幅方向に複数に分割し、分割した各々の区域における、金属帯板1の板幅方向毎に、反射光領域1A,1Bの上流側と下流側との境界線間の圧延方向の長さの平均値を算出し、金属帯板1の板幅方向の前記分割区域毎の板幅方向での中心位置をx=xi(i:分割区域番号)とし、前記指標情報をYとしたときに、Y= C0’+C1’×x+C2’×(2x2-1)+C4’×(8x4-8x2+1)で表されるチェビシェフ多項式に代入して、前記分割区域の数(分割区域の数がNの場合、i=1~N、但しN≧4)の前記数式から、チェビシェフ多項式の係数(C0’、C1’、C2’、C4’)を求め、0次成分係数(C0’)、1次成分係数(C1’)、2次成分係数(C2’)、および4次成分係数(C4’)のうちいずれか1つ以上の前記成分係数を算出し、金属帯板1の板形状の傾向に対応した成分を前記成分係数から取得することで、板形状の傾向に対応した成分を一次成分、二次成分、四次成分と分けて考えられるので、板形状の修正制御に対する対応が取り易い、との効果が得られる。
【0128】
また、第一カメラ61a,62a,63a,64aは第一カメラ61a,62a,63a,64aが取得する第一画像の画像中心位置に反射光領域1Aの少なくとも一部がくるように配置され、かつ第二カメラ61b,62b,63b,64bは第二カメラ61b,62b,63b,64bが取得する第二画像の画像中心位置に反射光領域1Bの少なくとも一部がくるように配置されていることにより、反射光領域1A,1Bの評価の際に座標変換後の圧延方向の2点間の長さの評価も高い精度で行うことができる。
【0129】
更に、金属帯板1の板形状判断装置を備え、連続して設けられた複数段のF1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50の間に、ルーパー71,72,73,74が設置されている連続圧延設備100によれば、金属帯板1の板形状をより目標の板形状となるように操業することができる。
【0130】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【符号の説明】
【0131】
1…金属帯板
1A,1B…反射光領域
10…F1スタンド(圧延機)
11,21,31,41,51…圧下シリンダ
12,22,32,42,52…荷重検出器
20…F2スタンド(圧延機)
30…F3スタンド(圧延機)
40…F4スタンド(圧延機)
50…F5スタンド(圧延機)
55…ハウジング
61a,62a,63a,64a…第一カメラ
61b,62b,63b,64b…第二カメラ
71,72,73,74…ルーパー(ロール)
80…画像処理計算機(画像処理部)
82…制御装置
85…モニタ
90…通信線
100…連続圧延設備
【要約】
【課題】不定常な障害物が現れても、金属帯板からの帯状の反射光を適切に捉える金属帯板の板形状判断装置、連続圧延設備、および判断方法を提供する。
【解決手段】第一カメラ61a-64aと第二カメラ61b-64bとの少なくとも2個があり、反射光領域1Aを異なる角度から同時に撮影するように、金属帯板1の板幅方向の端部よりも外側に設けられ、画像処理計算機80は、第二カメラから得られる第二画像情報を第一カメラから得られる第一画像情報と同一座標の変換画像情報に変換し、第一画像情報での反射光領域1Aの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置と変換画像情報での反射光領域1Bの圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置とから、選択した前記第一画像あるいは前記変換画像の前記ピクセル位置を実際の反射光領域の圧延方向に対する上流側または下流側の境界線を示すピクセル位置として推定する。
【選択図】
図1