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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】洋上風力発電機
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20220607BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20220607BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20220607BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20220607BHJP
   B63B 75/00 20200101ALI20220607BHJP
   B63B 21/50 20060101ALI20220607BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
F03D13/25
F03D1/06 A
F03D7/04 B
B63B35/00 T
B63B75/00
B63B21/50 D
B63B35/44 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021026851
(22)【出願日】2021-02-23
【審査請求日】2021-05-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713011201
【氏名又は名称】織田 繁夫
(72)【発明者】
【氏名】織田 繁夫
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-264865(JP,A)
【文献】特開平05-172036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/25
F03D 1/06
F03D 7/04
B63B 35/00
B63B 75/00
B63B 21/50
B63B 35/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上に設置し、中心軸が水平の回転軸に対し直角方向に放射状に取り付けた複数のブレードにより風車体を形成し、前記風車体に風が当たってブレードにが生じることで発生する風車体の回転力を、発電機の駆動軸に伝えることにより発電する洋上風力発電機において、水平の回転軸は海水面の上方に海水面から離れた位置にある台座上に設置した複数のサポートに取り付けた軸受により保持されており、前記水平の回転軸に対して直角方向に放射状に、複数枚のブレードを取り付け、前記回転軸と中心が同じで、かつ前記回転軸の中心から前記ブレードの途中、又は先端までの長さと同じ長さの半径であり外表面を有する円筒形フレームにより、前記ブレードの途中、或いは先端部同士を繋いで形成した風車体であって、かつ前記台座は、前記風車体中心の下方を中心として、海水面上に同心円状に浮かべて配置したフロート、および前記フロート上に設置した複数の支柱によって、海水面の上方に保持された形態とし、かつ前記台座の下方に、基部を海底に固定し、先端部が前記風車体の中央部の下方の位置でかつ先端部を海水面上に突き出したタワーを設置し、前記タワーは当該タワーの先端部に取り付けた、断面が矩形のスライドバーを上向きに設置し、さらに前記スライドバーの断面形状に合致した摺動面を有し、前記スライドバーに合して上下方向に移動可能で、かつ外周部が水平方向に回転可能な留装置を取り付け、前記留装置の外面と前記支柱を複数のロープで繋いだ形態であり、かつ前記フロートの下側水中に、前記フロートに対する取付け角度を固定して、該フロートに対して前方または後方に推進力を有する複数の推進装置を取付けたことにより、前記フロートは前記タワーを中心として海水面上を水平方向に時計回り、又は反時計回りに360度回転可能となり、前記風車体を風に向かう方向、又は風に沿う方向に回転させることが出来ること特徴とする、洋上風力発電機。
【請求項2】
請求項1に記載の留装置は、請求項1に記載のスライドバーの断面形状に合致した摺動面を有するスライドヘッドを有し、前記スライドヘッドは前記スライドバーに合して上下方向に移動可能とし、かつ前記スライドヘッドは外周部に水平方向に回転可能なターニングリングを取り付けており、かつ前記ターニングリングの外面と請求項1に記載の支柱を、請求項1に記載の複数のロープで繋ぎ、合わせて、前記ターニングリングに対し、前記スライドヘッドの外面に押しつけることにより前記ターニングリングの回転方向の動きを停止させるブレーキ装置を取り付けたことにより、請求項1に記載の風車体の回転を停止させることが出来ることを特徴とする、請求項1に記載の洋上風力発電機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の風車体の水平の回転軸に対して垂直方向に放射状に、複数のスポークを取り付け、前記回転軸と中心が同じで、かつ前記回転軸の中心から前記スポークの先端までの長さと同じ半径を有する円形の内フレームにより、前記スポークの先端部同士を繋ぎ、合わせて、前記内フレームの外面に対して垂直方向に放射状に、複数枚のブレードを取り付け、前記回転軸と中心軸が同じで、かつ前記回転軸の中心から前記ブレードの途中、又は先端までの長さと同じ半径であり外表面を有する円筒形外フレームにより、前記ブレードの途中、又は先端同士を繋いで風車体を形成することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の洋上風力発電機。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の発電機の駆動軸対し、発電機の外部に突き出した前記発電機の駆動軸の端部に車輪を取り付け、前記車輪の走行面が、請求項1~3の何れかに記載の風車体のフレームの外表面に接触することを特徴とする、請求項1~3の何れかに記載の洋上風力発電機。
【請求項5】
請求項1~3の何れかに記載の発電機、及び発電機の駆動軸、並びに請求項4に記載の車輪を同一のテーブル上に設置し、前記テーブルは請求項1~4の何れかに記載の台座上にて請求項1~4の何れかに記載の風車体のフレーム向かって移動可能に取り付けられ、かつ前記テーブルに対して前記フレームと相対する側の前記台座上にブラケットを固定し、前記テーブルと前記ブラケットの間にスプリングを取り付けたことにより、前記車輪は前フレームに対して前記スプリングの反発力によって押し付けられることを特徴とする、請求項1~4の何れかに記載の洋上風力発電機。
【請求項6】
洋上に設置し、中心軸が水平の回転軸に対し直角方向に放射状に取り付けた複数のブレードにより風車体を形成し、前記風車体に風が当たってブレードに力が生じることで発生する風車体の回転力を、発電機の駆動軸に伝えることにより発電する洋上風力発電機において、水平の回転軸は海水面の上方に海水面から離れた位置にある台座上に設置した複数のサポートに取り付けた軸受により保持されており、前記水平の回転軸に対して直角方向に放射状に、複数枚のブレードを取り付け、前記回転軸と中心が同じで、かつ前記回転軸の中心から前記ブレードの途中、又は先端までの長さと同じ長さの半径であり外表面を有する円筒形のフレームにより、前記ブレードの途中、或いは先端部同士を繋いで形成した風車体であって、かつ前記台座は、前記風車体中心の下方を中心として、水面上に同心円状に浮かべて配置したフロート、および前記フロート上に設置した複数の支柱によって、海水面の上方に保持された形態とし、かつ前記台座の下方に、下部にウエイトを有する係留浮体を海面上に浮かせた状態で配置し、前記係留浮体の上側に断面が円形の係留ポストを設置し、さらに前記係留ポストの断面形状に合致した摺動面を有する係留リングを、前記係留ポストに対して水平方向に回転可能な状態で取り付け、前記係留リングの外面と前記支柱を複数のロープで繋ぎ、合わせて海底面上に複数のアンカーを設置し、前記係留浮体と前記アンカーを、海水面に対して傾斜した状態の複数のバーによって繋いだ形態とし、かつ前記フロートの下側水中に、前記フロートに対する取付け角度を固定して、該フロートに対して前方または後方にのみ推進力を有する複数の推進装置を取付けることにより、前記フロートは前記係留ポストを中心として海水面上を水平方向に時計回り、又は反時計回りに360度回転可能となり、前記風車体を風に向かう方向、又は風に沿う方向に回転させることが出来ること特徴とする、洋上風力発電機。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の洋上風力発電機において、前記洋上風力発電機は請求項1~6の何れかに記載のスクリューの動作・停止を制御する制御盤を備えているものとし、前記制御盤は前記洋上風力発電機の近傍に設置した風向計によって測定した風向きの信号と、前記洋上風力発電機の近傍に設置した風速計によって測定した風速の信号と、請求項1~6の何れかに記載の係留装置に対して取り付けた係留装置角度計の信号と、請求項1~6の何れかに記載の風車体に対して取り付けた風車体の回転数の信号と、地上の電力系統の運用状態の信号を受信し、それらの信号を用いて前記スクリューの動作・停止を制御することにより、風車体が適切な運転状態に維持できることを特徴とする、請求項1~6の何れかに記載の洋上風力発電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上に設置し電力を発電するために適した洋上風力発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の再生可能エネルギー利用の増加要請に伴い、今後洋上風力発電機の建設が増えることが予想される。洋上は地上に対し風を遮る障害物が少なく、風向き、風速が地上と比べて定常であることから、安定した電力を得られることが期待されている。現在実用化されている洋上風力発電設備は、基本的に陸上で使われている風力発電機の構造を変えず、土地の利用と比較して設置する上での制約が少ない洋上へと移設したものである。
【0003】
大型の風力発電機用として一般に使われている風車は、3枚の長尺のブレードを水平の回転軸の端部に取り付けた水平軸プロペラ型風車と呼ばれる風車であり、回転軸の回転力を発電機の駆動軸に伝えて発電している。この型式の風力発電機は、風力を効率良く回転力に変換するため、および台風等の強風時にブレードの破損を防止するため、風向きに対するブレードの迎え角度を変化させる機能(以降ピッチ制御と記す)や、風車体の受風面を風向きに合わせて回転させる機能(以降回頭制御と記す)、および発電に必要な回転数を得るための増速機*1)等を備えている。それらの付属装置はいずれも付加価値が高く高価であり、これらの装置をコンポーネントとして組み合わせたもの(以降ナセルと記す)の重量増加を招くことが建設費用、メンテナンス費用増加の一つの要因となっていると考えられる。
注*1)風力発電機の風車自体の回転数は1分間で10~20回転程度と遅いので、発電に必要な回転数を得るため回転数を数10倍~100倍に加速する装置。(非特許文研1、68頁参照)
【0004】
こうした現在普及している水平軸プロペラ型風車の課題に対し、風車の回転軸を垂直とし水平方向に回転する風車(直線翌垂直軸型風車、非特許文献1、84頁)を洋上風力発電に適用した提案がある。これは、水面上浮かべた複数のフロートにより風車の回転軸を支え、回転軸の回転力を発電機駆動軸に伝えて発電する構成の洋上風力発電機(特許文研1)である。しかしながら、直線翌垂直軸型風車は、受風面を風向きに合わせる回頭制御が不要となるメリットがある反面、風に押される翼によって回転軸に作用するトルクと、風向きに逆らう方向に動く翼による逆方向のトルクが同時に回転軸に作用するため、前記水平軸プロペラ型風車と比較して十分な出力が得難い特性があると考えられる。
【0005】
プロペラ型の洋上風力発電機において台風等強風発生時の損傷対策に関し、風車体と付属装置をコンポーネント化したナセルを支持するタワーに昇降装置を備え、強風発生時にはナセルを海水面に近い位置に降下させることによる損傷回避(特許文研2)が提案されている。しかしながら、現在ナセル重量が数十トンを超えるものもあるプロペラ型の洋上風力発電機では、ナセルを安全に昇降させ、かつ通常運転時にナセルを安定して支えることが出来る、信頼性の高い昇降装置を実現するのは、技術的に困難を伴うと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2012/035610A1「水上自然エネルギー利用装置及び水上エネルギー利用発電装置集合体」
【文献】特開2007-263077号公報 「洋上風力発電設備」
【非特許文献】
【0007】
【文献】「トコトンやさしい風力発電の本」 B&Tブックス、日刊工業新聞社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題の一つは、現在一般に使われている水平軸プロペラ型風車による風力発電機は、(背景技術)章の0004段落で述べた直線翌垂直軸型風車と比較して1基当たりの発電出力が大きいことが有利である反面、背景技術章の0003段落で述べた通り、ピッチ制御用アクチュエータ、回頭制御用アクチュエータ、増速機等の付属装置を装備する必要があり、これらの付属装置はいずれも付加価値が高く価格が高価であるため、今後の風力発電拡大を図るために技術の改良により価格を抑える必要がある点である。
【0009】
更に発電事業用として用いられる大型風力発電機に要求される機能の一つとして、発生させた電気出力を電力系統に接続し電源として供給する場合には、停電等により電力系統への負荷遮断が発生した際に風車は無負荷状態で増速(いわゆる空回り)するため、その対策が必要である。現在の大型の風力発電機には、無負荷状態となった風車の回転速度を短時間内で減速させる装置(一般に機械的なブレーキと言われるもの)を備えている。
【0010】
従来の風力発電機に取り付けられる各付属装置は以上述べた通り、価格が高価なものが多く、風力発電機自体の価格(いわゆる原価)は一般的に高価であり建設費用が掛かる傾向があるため、風力発電の拡大には不利であった。合わせて発電用設備としての運用においても、各付属装置に対する1年に1回から2回の定期的なメンテナンスが必要となるため、コストが掛る点が経済性の面で不利であった。
【0011】
今後増加が予想される洋上風力発電においては、発電設備の建設および定期的なメンテナンス作業を作業条件が厳しい洋上にて行う必要があり、風力発電機の改良により建設作業やメンテナンス作業の負担を低減し、コストを抑制することが洋上風力発電を増やす上での課題の一つと考えられる。
【0012】
合わせて風力発電機の経済効果を増すために、現在も水平軸プロペラ型風車の風力発電機1基当たりの出力上昇が志向されており、それに伴い風力発電機全体の重量が増してゆくことが予想され、3枚のブレードを取り付けたナセルを、数十メートルを超えるタワーの頂上で回頭制御する現在の風力発電機では、回頭制御も技術的に難しくなってゆくと考えられる。
従って、以上述べた水平軸プロペラ型風車に要求される機能を他の装置で代替えすることにより、風力発電機の構成を簡素化を図り、コスト低減を実現する必要があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施例1による洋上風力発電機は、以下の通り構成される。
台座上に取り付けたサポートにより前記台座の上方に水平方向の軸受けを設置し、この軸受けに対して水平方向の回転軸を取り付け、回転軸の周りに風を受けてを生じるブレードを、回転軸に対し直角方向に放射状に複数枚設置する。さらに回転軸と中心が同じで、かつ中心から前記ブレードの途中、或いは先端までの半径であり外表面を有する円筒形フレームにより、ブレードの途中同士、或いは先端同士を繋いで風車体を形成する。この風車体は、受風面が垂直な水平軸風車である。さらに前記台座は水面上に前記風車体中心の下方を中心として、水面上に同心円状に浮かべて配置したフロート、およびフロート上に設置した支柱を使って水面の上方に保持される。以上の構成により、風車体は水面上に浮いた状態となる。
【0014】
同時に基部を海底面に固定し、先端部が海水面上に垂直に突き出たタワーを設置し、タワーの先端部に矩形断面のスライドバーを取り付ける。スライドバーに対し上下方向に摺動可能なスライドヘッド、およびスライドヘッドに合し外周部が水平方向に回転可能なターニングリングを有する係留装置を、前記スライドバーに挿入する。さらに複数の係留ロープにより前記ターニングリングの外周部と前記フロートに取り付けた支柱を繋ぐ。以上の組合せにより、風車体は水面上に浮かびタワーに繋がれた状態になるため、受風面はタワーを中心として、360度任意の方向に向けることが可能となる。
【0015】
さらに前記フロートの前側および後ろ側の水中にそれぞれのフロートに対する取付け角度が固定された推進装置(以降スクリューと記す)を取付け、このスクリューによりフロートを前進、或いは後進させて、風車体の受風面を上方から見て時計回り、反時計回りに回転させる。以上の構成により受風面を風向きに合わせて任意の方向に向かせる回頭制御が可能となる。これらを組み合わせた風車体により発生させた回転軸の回転力を、直接、或いは増速機を介して発電機の駆動軸に伝えることにより、発電出力を得ることが出来る。
【0016】
本発明の実施例2による洋上風力発電機は、前記係留装置外周部のターニングリングにブレーキシューとブレーキシューを保持し動作させるブレーキアーム、およびシリンダーを取り付ける。ブレーキシューをターニングリングの内側にある前記スライドヘッドに押しつけることによりターニングリングの動きを一時的に停止させる。これにより、不規則に変化する風向きに対して風車体の向きを一定の方向に保ち安定させ、その結果安定した発電出力を得られる。
【0017】
本発明の実施例3による洋上風力発電機は、前記水平方向の回転軸の外側に放射状にスポークを複数取り付け、回転軸と中心が同じで、かつ中心から前記スポークの先端までの半径を有する円形の内フレームにより前記スブレードを取り付け、前記回転軸と中心が同じでかつ中心から前記ブレードの途中、或いは先端までの半径であり外表面を有する円筒形外フレームにより、ブレードの途中同士、或いは先端同士を繋いで風車体を形成する。以上の構成により、風車体受風面のスポークを取り付けた部分で風が素通りし空気抵抗が低下するので、風車体の効率が向上し、風車体で発生する動力による発電効率の向上が期待できる。
【0018】
本発明の実施例4による洋上風力発電機は、前記発電機の駆動軸に車輪を取り付け、この車輪の走行面を前記円筒形フレームの外周部に接触させる。フレームの外周部に接触した車輪の直径を風車体のフレームの直径よりも小さくすることで車輪の回転数はフレームの回転数よりも増加し、発電に必要とされる高回転数を得ることで、有効な発電出力が出来る。
【0019】
本発明の実施例5による洋上風力発電機は、フレームの外周部分に接触させる発電機駆動軸の車輪を、スプリング等を用いてフレームに押しつけることにより、フレームと車輪との接触部の摩擦力が増し、滑りを防ぐことができるので、安定した発電出力が期待できる。
【0020】
本発明の実施例6による洋上風力発電機は、前記風車体中央の下側海面上に係留浮体を置き、係留浮体の下方海中にウエイトを取り付ける。前記係留浮体の上側に断面が円形の係留ポストを上向きに設置し、前記係留ポストの先端部に係留ポストと嵌合し水平方向に回転可能な係留リングを取り付ける。前記係留リングの外周部と、フロートに取り付けた前記支柱を、複数の係留ロープにより繋ぐことにより、前記風車体は係留浮体と一体となり海面上に浮いた状態となる。さらに海底面上に、前記係留浮体の外形寸法よりも広く間隔を開けて複数のアンカーを設置し、海水面に対して傾斜した状態の複数のバーを用いて前記係留浮体と前記アンカーを繋ぐ。この組合せにより係留浮体は潮位や波浪による海水の水位変化に追従しながら同じ位置に留まるので、係留ロープによって係留浮体に繋がれた風車体も同じ位置に留まり、かつ水平方向に回転可能となる。また、フロート8に対するスクリュー14の取付け角度は固定されており、スクリュー14によりフロート8を前方、或いは後方のいずれかに推進することにより、受風面を風向きに合わせて任意の方向に向かせる回頭制御が可能となる。
【0021】
本発明の実施例7による洋上風力発電機は、前記風車体の近傍に風向きを測定する風向計、および風の強さを測定する風速計を設置し、それらの計測機により得られた風向き、風速についての情報を信号として制御盤に逐次伝え、合わせて係留装置の角度、風車体の回転数、地上の電力系統の停電等必要な情報を制御盤に伝え、制御盤内にてこれらの情報を処理し、その結果を用いて前記スクリューの運転、停止操作を行う。これにより風向き、風速、およびその他の必要な運転情報に基づき風力発電機を自動で適切に運転することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施例1による洋上風力発電機は、風車体と発電に必要な付属装置、およびサポート、支柱、等全ての構成要素をフロート上に載せて水面上に浮かべ、フロートに取り付けたスクリューにより風向きに応じて風車体の受風面を回頭させる。従来の風力発電機では、構成要素を収納した結果重量が重くなったナセルをタワー上で水平方向に回転させるため、強力な回頭制御用アクチュエータが必要であったが、本発明では前述の通りこれをフロートに取り付けたスクリューで代替えすることで、風車体やその他の機器の重量が増えても、回頭制御を容易に行うことが可能となる。
また、スクリューのフロートに対する取付け角度は固定されており、フロートを前方、或いは後方推進させるいずれかのスクリューを運転又は停止させるだけで回頭制御が可能となることから、回頭制御ロジックが簡単になる効果も期待できる。
【0023】
さらに本発明の実施例1による洋上風力発電機は、台風等の強風時には風車体の受風面を風向きに沿う方向に回頭させることにより、受風面が正面から強風を受けなくなるので風車体の回転数増大を回避可能であり、かつ風車体の受風面を風向きに沿う方向に回頭させた時に、円筒形フレームの外表面がブレードの風上側の風を遮断することにより強風のブレードへ直撃を遮ることが出来る。従って、従来の風力発電機で必要なブレードのピッチ制御用アクチュエータの機能をフロートに取り付けたスクリューで代替えし、強風時のブレードや発電機の損傷を回避することが可能となる。
【0024】
合わせて本発第の実施例1による洋上風力発電機のブレードは、回転軸への取り付け部と、回転軸と同心円で構成されたフレームへの取り付け部の2か所で保持される構成である。従来の一般的な風力発電機のようにブレードの付根側のみを回転軸に取り付けて保持する構造に対し、風車体の強度がアップし信頼性が向上する。合わせて従来の風力発電機では、ブレードピッチ制御装置の設置スペース上の制約から一般にブレード枚数は3枚であったが、本発明第の実施例1による洋上風力発電機ではブレード枚数を増やすことが可能であるため、出力のアップも期待できる。
【0025】
さらに本発明の実施例1による洋上風力発電機は、発電機の運転停止時や電力系統の停電等による負荷遮断時に発生する発電機の余剰エネルギーを、フロートに取り付けた時計方向に回頭させるスクリューと、反時計方向に回頭するスクリューを一斉に同時に回転させて消費させることで、風車体の空回りによる増速を防ぎ、発電機の損傷を防止することが可能である。これにより、従来の風力発電機で必要な回転軸のブレーキ装置を代替えすることが出来る。
【0026】
以上述べた通り本発明の実施例1による洋上風力発電機では、フロートに取り付けたスクリューにより、従来の風力発電機で必要な回頭制御アクチュエータ、ピッチ制御用アクチュエータ、回転軸のブレーキ装置を代替可能であり、風力発電機の建設コスト、およびメンテナンスコストの低減を図ることが期待出来る。
【0027】
本発明の実施例2による洋上風力発電機は、係留装置外周部に取り付けたターニングリングの水平方向の回転を、必要に応じてブレーキ装置で停止させることにより、風車体に当たる風向きの不規則な変動に対して、風車体の受風面を一定の方向に保持することができ、安定した発電が可能となる。
【0028】
本発明の実施例3による洋上風力発電機は、風車体の回転力に対して寄与が小さい風車体の回転軸近くのブレードを無くし、この部分に当たる風を素通りさせることで、受風面全体として空気抵抗が低下し風の通りが良くなるため、発電効率の向上が期待できる。
【0029】
本発明の実施例4による洋上風力発電機は、発電機の駆動軸に前記円筒形フレームよりも直径が小さな車輪を取り付け、前記車輪の走行面を前記円筒形フレームの外周部に接触させ、風車体の回転に伴い車輪が高速で回転し発電機駆動軸も高速で回転する。車輪の回転数はフレームの直径と車輪の直径の比率で増えるため、従来の風力発電機で一般に使われていた増速機が無くても発電機駆動軸の回転数が発電に必要な回転数が得られ、発電が可能となる。
【0030】
本発明の実施例5による洋上風力発電機は、前記発電機駆動軸に取り付けた車輪を、スプリングにより前記フレームの外表面に押しつけることにより、フレームの外表面と車輪の走行面との間の接触による摩擦力が増して滑りを防止し、安定した発電機出力が期待できる。
【0031】
本発明の実施例6による洋上風力発電機は、設置場所の水深が深く、実施例1の様に基部を海底面下に埋め込んだタワーの設置が困難な場所でも、海底面に設置したアンカーと海面上の係留浮体を繋ぐ複数のポールを海水面に対して傾斜した状態で設置することにより、潮位や波浪による水位の変化に追従しながら、係留浮体を同じ位置に留めることが可能となる。従って、海岸からの距離に対して水深が深い海域が多い傾向の日本の沿岸においても、本発明による洋上風力発電機の設置が可能となる。
【0032】
本発明の実施例7による洋上風力発電機は、常に変化する風向きや風速の情報や、係留装置の角度、風車体の回転数、電力系統の停電といった風力発電機の運転に必要な情報を制御盤が受信し、それらの情報を処理してフロートに取り付けたスクリューの運転・停止操作を行うことにより、風車体の受風面を適切な方向に向ける操作(通常運転時は風車体の受風面を風に向け、台風等の強風時は受風面を風に沿う方向に向ける操作等)や緊急停止操作等必要な運転操作を、自動で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は本発明の実施例1による洋上風力発電機の正面図である。
図2図2は本発明の実施例1による洋上風力発電機の側面図である。
図3図3は本発明の実施例1による洋上風力発電機を上から見た図である。
図4図4は本発明の実施例1による係留装置の鳥瞰図である。
図5図5は本発明の実施例1による係留装置を上から見た図である。
図6図6は本発明の実施例1による係留装置の断面図である。
図7図7は本発明の実施例2による係留装置の鳥瞰図である。
図8図8は本発明の実施例3による洋上風力発電機の正面図である。
図9図9は本発明の実施例3による洋上風力発電機の側面図である。)
図10図10は本発明の実施例1による洋上風力発電機の風の流れを示す図である。(実施例3との違いを比較する目的で記載)
図11図11は本発明の実施例3による洋上風力発電機の風の流れを示す図である。
図12図12は本発明の実施例4による洋上風力発電機の正面図である。
図13図13は本発明の実施例4による洋上風力発電機の側面図である。
図14図14は本発明の実施例5による発電機駆動軸車輪を押付ける装置の鳥瞰図である。
図15図15は本発明の実施例6による洋上風力発電機の正面図である。
図16図16は本発明の実施例6による洋上風力発電機の側面図である。
図17図17は本発明の実施例6による係留浮体の鳥瞰図である。
図18図18は本発明の実施例6による係留浮体を上から見た図である。
図19図19は本発明の実施例6による係留浮体の断面図である。
図20図20は本発明の実施例7によるスクリューの運転・制御を行うための、計測装置、制御対象と信号の流れを示す構成図
図21図21は本発明の実施例7による制御盤内の運転制御のブロック図である。
図22図22は本発明の実施例7による運転制御ロジックのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る洋上風力発電機は、従来の地上での風力発電機に取り付けられていた装置の一部を他の装置で代替えし、かつ風力発電機に必要とされる機能を実現することが可能である。合わせて、洋上風力発電機の設置場所が浅海域のみならず、比較的深い海域においても設置可能である。
【実施例1】
【0035】
図1は実施例1の洋上風力発電機全体の正面図、図2は同じく実施例1の洋上風力発電機全体の側面図を示す。台座1上に取り付けたサポートに2より台座1の上方に水平方向の軸受け3を設置し、軸受け3に対して水平方向の回転軸4を取り付け、回転軸4の周りに風を受けてを発生させるブレード5を回転軸4に対して直角方向に放射状に複数枚設置する。さらに回転軸4と中心が同じで、かつ中心からブレード5の途中、或いは先端までの半径の外表面を有する円筒形フレーム6により、ブレードの途中同士、或いは先端同士を繋いで風車体7を形成する。(図1はフレーム6によりブレード5の先端同士を繋いだ形態を表す。)この風車体7は、受風面が垂直な水平軸風車である。さらに風車体7中央部の下方を中心として、海水面上に同心円状に浮かべて配置したフロート8およびフロート8上に設置した支柱9により、台座1は水面の上方に保持される。以上の構成により、風車体7は水面上に浮かんだ状態となる。
【0036】
同時に、図1および図2に記載したタワー10は、基部を海底面に固定し、先端部は風車体7の中央部の下方の海水面上に垂直に突き出した構造であり、タワー10の先端部にはスライドバー11を設置し、スライドバー11には上下方向に摺動可能で、かつ外周部が水平方向に回転可能な係留装置12を取り付ける。さらに係留装置12外周部と、支柱9を複数の係留ロープ13により繋ぐことにより、フロート8は水面上に浮かんでタワー10に繋げられた状態となるため一定の場所に留まり、かつ水面上にてタワー10を中心に水平方向に回転可能な状態となる。以上の構成により、風車体7はタワー10を中心として、受風面を任意の方向に向けることが可能となる。
【0037】
さらに、フロート8下部の水中に、複数の推進装置14(以降スクリュー14と記す)を取付ける。
図3図2の(A)方向からの矢視図であり、各フロート8に対して前進、および後進の各方向に向けたスクリュー14をフロート8に対する取付け角度を固定し取り付けた状態を示す。図3の(A)矢視図(時計方向に回転)では、スクリューの一部を使い矢印18aの方向に推進する際に、フロート8は時計方向(矢印19aの方向)に回転する状態を示す。同様に、図3の(A)矢視図(反時計方向に回転)では、スクリューの一部を使い矢印18bの方向に推進する際に、フロート8は反時計方向(矢印19bの方向)に回転する状態を示す。以上のようにスクリュー14の一部を使うことにより、フロート8を時計回り、或いは反時計回りに回転させることが出来ので、風向に合わせて風車体7を風向きに合わせて回頭させることが可能である。
【0038】
なお図2では、実施例1において風車体7の回転力から電気エネルギーを得るための構成として、回転軸4と直結した増速機15、および増速機により駆動する発電機16、およびそれらを収納しコンポーネント化したナセル17を形成し、台座1の上方に設置した状態を表している。
【0039】
次に、図4図5図6により実施例1による係留装置12の詳細を説明する。図-4は実施例1に示す係留装置12の鳥瞰図、図5図4の上方(B)から見た矢視図、図6図5の(C)―(C)断面図である。図4図5において、タワー10の先端に設置したスライドバー11は矩形断面であり、スライドバー11に合するスライドヘッド20は上下方向にのみ移動可能である。さらにスライドヘッド20の外側に回転可能なターニングリング21を取り付け、ターニングリング21の外周部に複数のピン22を設置し、ピン22により支柱9との間を留ロープ13で繋ぐ。図6の断面図に示す通り、スライドヘッド20はターニングリング21の水平方向に回転を許容する構造である。以上の構成により留ロープ13、支柱9を介してフロート8はタワー10によって保持されて海面上で水平方向に回転可能となり、かつ海水面の潮位や波浪による水位の変化にも追従可能となる。また留ロープ13は、ピン22を中心として上下方向の回転が許容されるため、フロート8が海面の波浪により斜めに傾いた場合でも動きが許容されるため、風車体7はタワー10に繋がれた状態を維持できる。
【0040】
以上述べた通り、スクリュー14を使って風車体7の回頭を行えば、従来の風力発電機では回頭制御用アクチュエータにより行なっていた、受風面の回頭機能を代替え可能である。さらに従来の風力発電機では、台風等強風時ブレードに過大応力が生じることによる損傷回避や、発電機の回転数増加による損傷の回避は、ブレードのピッチ制御用アクチュエータにより行なっていたが、本発明のスクリュー14による回頭機能使い受風面を風に沿う向きに合わせることで、強風による回転数増加の影響を回避できるので、従来の風力発電機で必要であった、ブレードのピッチ制御用アクチュエータの機能を代替え可能である。
【0041】
さらに従来の風力発電機では、風力発電機運転中に発生する電力系統の負荷遮断や、運転→停止へ移行する際の電力系統からの離脱時には、発電機の一時的な無負荷により生じる風車体の空回りによる回転数増加を回避するため、機械的なブレーキ装置が使われていたが、本発明の実施例1ではその様な場合、スクリュー14を全数一斉に動かすことにより、一時的に余剰となる電気エネルギーを放出させることが出来るので、従来の風力発電機駆動軸のブレーキ装置の機能を代替え可能である。
【実施例2】
【0042】
図7は実施例2を表す図であり、洋上風力発電機の係留装置の実施例を示している。実施例2による係留装置12は、図4に示したものと同様に、タワー10の先端部のスライドバー11に取り付けられたスライドヘッド20と、その外周部のターニングリング21により構成される。図7では、ターニングリング21に取り付けたブレーキシュー23をスライドヘッド20に押しつけることにより、ターニングリング21の回転を一時的に停止させる構成を示している。ブレーキシュー23は、ブレーキシリンダー24とブレーキアーム25との組合せにより、スライドヘッド20に必要に応じて押しつけたり、離したりすることが可能である。ブレーキシュー23をスライドヘッド20に押しつけた時にはターニングリング21の回転が止められ、風車体7の受風面の方向が一定の角度に保持される。これにより、風向きが不規則に変動する場合でも、風車体7を一定方向に保持することが可能となる。


【実施例3】
【0043】
図8は実施例3の洋上風力発電機全体の正面図、図9は同じく実施例の洋上風力発電機全体の側面図である。実施例3は、風車体の回転軸4に対して直角方向に複数のスポーク26を放射状に取り付け、回転軸4と中心が同じで、かつ中心からスポーク26の先端までの半径を有する円形の内フレーム27によりスポーク26の先端同士をつなぐ。更に内フレーム27の外周部に対し風を受けてを発生させる複数のブレード28を放射状に取り付け、回転軸と中心が同じで、かつ中心からブレード28の途中、或いは先端までの半径であり外表面を有する円筒形外フレーム29により、ブレード28の途中、又は先端同士を繋いで風車体30を形成する。(図8円筒形の外フレームを用いて先端同士を繋いだ形態を表している。)
【0044】
実施例3により、発電機駆動軸4を駆動させるための回転力として寄与が小さいと考えられる回転軸4近傍のブレードを無くして風を通過させるための空間とすることにより、図11の風の流れに示す通り受風面の風の通りが良くなり、発電効率向上が期待できる。実施例3の効果を表すために、実施例1による風車体7に対する風の流れ31aを図10に、実施例3による風車体7に対する風の流れ31bを図-11に示す。
【実施例4】
【0045】
図12は、実施例4の洋上風力発電機全体の正面図、図13は同じく実施例4の洋上風力発電機全体の側面図であり、発電機34を実施例1とは異なる形態で設置した実施例である。発電機駆動軸32の先端部に取り付けられた車輪33をフレーム6の外周部と接触させることにより、風車体7の回転に伴って発電機駆動軸32が回転し、発電機34により発電する。発電機駆動軸32の回転数は、風車体7の回転数に対してフレーム6の直径と車輪33の直径の比率で増加する。実施例4により、発電機駆動軸32が風車体7の回転数よりも増加し発電に必要な回転数を得ることで、従来の風力発電機で必要とされていた増幅機を省略することが可能となる。
【実施例5】
【0046】
図14は実施例5の発電機まわりの構成を示す図である。発電機駆動軸32に車輪33を取り付け、発電機34とともにスライドテーブル35上に一体化して設置する。スライドテーブル35はフレーム6に近づく方向に移動可能な状態で台座1上に保持されており、スライドテーブル35に対してフレーム6側と相対する側の台座1上に、スプリング37を取り付けたブラケット36を固定し、スプリング37によりスライドテーブル35をフレーム6の方向へ押しつける。この組合せにより、フレーム6と車輪33との接触部での摩擦力が増加し、滑りが生じにくくなる。これにより発電機駆動軸32の回転が安定し、発電機34により安定した電気出力を得ることが可能となる。
【実施例6】
【0047】
図15は実施例6の洋上風力発電機全体の正面図、図16は同じく実施例6の洋上風力発電機全体の側面図である。本発明による実施例6は、実施例1とは異なる構成による洋上風力発電機を係留する形態を表している。係留浮体38は水面下に釣り棒39およびその下方にウエイト40を取り付けることにより、水面に安定して浮いた状態となっており、係留浮体38の上方に垂直方向に、円形断面の係留ポスト41を取り付け、係留ポスト41に対し水平方向に回転可能な係留リング42を取り付ける。係留リング42の外側と支柱9を複数の係留ロープ13で繋ぐことにより、風車体7は係留ポスト41を中心として、係留浮体38の周りを水平方向に回転可能となる。更に係留浮体38は、外周部に設置したフック43、および上下方向の動きを拘束しないバックルa44を介して、複数のバー45に繋がれる。バー45は海水面に対して傾斜させて海中に設置され、上下方向の動きを拘束しないバックルb48を介してアンカー49に繋がれる。バー45同士は、ステーa46、ステーb47によって接続されることにより一定の間隔を保持し、かつ複数のアンカー49同士も係留浮体の外形寸法よりも広い間隔で海底面上に設置される。複数のバー45は長尺であり、かつフック43、アンカー49との接続部においても、バックルa44、バックルb48により動きが拘束されないことから、係留浮体38は潮位の変化や海面の波浪による水位の変動に追従しながら、一定の場所に留まることが可能となる。
【0048】
次に、図17図18図19により実施例6の係留浮体の詳細を説明する。図17は各部品を取り付けた状態の係留浮体38を示す鳥瞰図、図18図17の上方(D)から見た矢視図、図19図18の(E)―(E)断面図である。図17図18において、係留浮体38の上側に取り付けた係留ポスト41は断面が円形であり、係留ポスト41に対して水平方向に回転可能な係留リング42を取り付ける。係留リング42の外周部に複数のピン22を取り付け、ピン22を介して支柱9との間を係留ロープ13で繋いだ構造とする。さらに図19の断面図に示す通り、係留ポスト41は回転リング42を上下方向に脱落せずに、水平方向に回転可能な状態で保持する。
また、フロート8に対するスクリュー14の取付け角度は固定されており、スクリュー14によりフロート8を前方、或いは後方のいずれかに推進することにより、受風面を風向きに合わせて任意の方向に向かせる回頭制御が可能となる。
【0049】
以上述べた通り実施例6は、風力発電機を設置しようとする場所の水深が深く、実施例1の様に海底面に対して直接タワー10の基部を設定することが困難な場合でも、風力発電機を係留させる組合せとして適用可能であり、浅瀬が少ない日本の沿岸にも風力発電機を設置可能である。
【0050】
図20は実施例7の洋上風力発電機のスクリューの運転・制御を行うための、計測装置、制御対象と信号の流れを示す構成図である。すなわち下部を海底に固定し上方を海面上に突き出した計測用タワー50の上端部に設置した風向計51で風向きを計測し、その情報を風向きの信号52として無線信号で発信し、アンテナ53を設置した制御装置54が受信する。
前記と同様に、計測用タワー50の上端部に設置した風速計55で風速を計測し、その情報を風速の信号56として無線信号で発信し、アンテナ53を設置した制御装置54が受信する。
【0051】
風車体の風向きに対する角度については、係留装置の角度計57で計測し、その情報を係留装置角度の信号58として信号ケーブルを経由して制御盤54が受信する。前記と同様に、風車体の回転数については回転数計59で計測し、その情報を風車体の回転数の信号60として信号ケーブルを経由して制御盤54が受信する。
【0052】
更に図20の中で、地上の電力系統61で停電等運用上の異常が発生した場合、電力系統の停電信号62として通信ケーブルを経由し制御盤54が受信する形態を示している。
【0053】
図21は実施例7において、風向きの信号52、風速の信号56、係留装置角度の信号58、風車体回転数の信号60、および電力系統停電の信号62を用いて、制御盤54内でのスクリューの運転/停止制御を行い、制御盤54からスクリュー14の動作/停止信号63を発信する場合のブロック図の例を示している。
【0054】
図22は実施例7において、制御盤内でのスクリューに対する運転・制御ロジックのフロー図の例を示している。本図は、フローの起点または終点を示す図形64、前記各信号情報のインプットを示す矢印65、および各信号情報を用いた判断を示す図形66、スクリューの動作、または停止を示す図形67を用い、制御ロジックのフローの例を示している。

【産業上の利用可能性】
【0055】
実施例1により風力発電設備に必要とされる機能の一部を、従来のアクチュエータ等使わずに一般の船舶で使われているスクリューで代替えすることにより、洋上風力発電機の建設費用およびメンテナンス費用を低減出来、また実施例4により増速機を無くすことは出来れば、更に費用を低減可能である。合わせて、船舶に係る技術や経験も活かせるので、この産業分野からの洋上風力発電への参画に道が開けると思われる。さらに浅海域に対して適用する着床式(実施例1)のみならず、水深がやや深い海域に適用する浮体式(実施例6)も実施可能と考えられるので、大型ばかりではなく中~小型の洋上風力発電機のへの適用も期待できる。
【符号の説明】
【0056】
63 スクリューの動作/停止信号
64 フローチャート上のフローの起点又は終点を表す図形
65 フローチャート上の信号情報のインプットを表す図形
66 フローチャート上の信号データを用いた判断を表す図形
67 フローチャート上のスクリューの動作または信号を表す図形
【要約】      (修正有)
【課題】現在の風力発電機で必要な、ピッチ制御用アクチュエータ、回頭制御用アクチュエータ、増速機、機械的なブレーキ等各装置は、いずれも付加価値が高く、建設費およびメンテナンス費用が掛かる。風力発電を今後拡大するために、低コストな洋上風力発電機を提供する。
【解決手段】今後増加が予想される洋上風力発電にて、それらの装置が有する機能を他の装置で代替えすることにより、建設費およびメンテナンス費用を低減可能な経済的な風力発電機を提供する。水平の回転軸の周りに、当該回転軸に対して直角方向に放射状に複数枚のブレードを取り付けて風車体7を構成し、前記風車体7をスクリュー14の付いたフロート8により海面上に浮かし、更に海面上に突き出したタワー10により前記フロートを水平方向に回転可能に係留することにより、風車体7の受風面の向きを風向きに合わせて回頭させ、有効な発電出力を得ることを可能とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図18
図19
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図22