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  • 特許-軽油の性状改善方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】軽油の性状改善方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 25/02 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
C10G25/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018038723
(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2019151761
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(73)【特許権者】
【識別番号】301044565
【氏名又は名称】株式会社ホージュン
(72)【発明者】
【氏名】小松 秀和
(72)【発明者】
【氏名】和田 智史
(72)【発明者】
【氏名】萩原 貴子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健一
(72)【発明者】
【氏名】皆瀬 慎
(72)【発明者】
【氏名】早川 崇之
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-109820(JP,A)
【文献】特開昭52-033654(JP,A)
【文献】特許第0004671(JP,C1)
【文献】特開平04-183794(JP,A)
【文献】特開平11-179202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0150780(US,A1)
【文献】石田文彦 他,明治期における石油製油技術の発展,技術と文明,13巻、2号,日本,2003年,1-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 25/00
B01J 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性白土を空気流通下で、温度80℃以上250℃以下、かつ3時間以上10時間以下で熱処理する酸性白土の熱処理工程と、
軽油槽において、軽油1000mlに対し、前記酸性白土の熱処理工程で得られた熱処理白土を、30g以上150g以下で添加する添加工程と、
前記軽油槽の温度を15℃以上50℃以下に保ち、前記熱処理白土と前記軽油との接触時間が2時間以上72時間以下で接触処理する接触処理工程と、
前記軽油槽を遮光する工程と、
有する軽油の性状改善方法。
【請求項2】
前記請求項1の軽油の性状改善方法において、
前記軽油槽における前記軽油の液面との空間部分を、窒素、アルゴン、二酸化炭素、ブタンおよびフルオロハイドロカーボン類などから選択された一種以上で置換する置換工程、
を付設した軽油の性状改善方法。
【請求項3】
酸性白土を空気流通下で、温度80℃以上250℃以下、かつ3時間以上10時間以下で熱処理する酸性白土の熱処理工程と、
軽油槽において、軽油1000mlに対し、前記酸性白土の熱処理工程で得られた熱処理白土を、30g以上150g以下で添加する添加工程と、
前記軽油槽の温度15℃以上50℃以下に保ち、前記熱処理白土と前記軽油との接触時間が2時間以上72時間以下で接触処理する接触処理工程と、
前記軽油槽における前記軽油の液面との空間部分を、窒素、アルゴン、二酸化炭素、ブタンおよびフルオロハイドロカーボン類などから選択された一種以上で置換する置換工程と、
を有する軽油の性状改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽油の性状改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽油は沸点範囲がおよそ170~370℃の炭化水素成分で構成されており、着火性向上(セタン化向上)に有効なパラフィンのほか、ナフテン、単環芳香族化合物、2環芳香族及び3環以上の芳香族化合物が含まれている。軽油中の芳香族化合物が増加するとパティキュレート(微小粒子状物質)の排出量が増加する可能性があるとも言われており、特に2環以上の多環芳香族化合物がパティキュレート生成に関与する傾向がみられるといわれている(非特許文献1)。
【0003】
排出ガスのクリーン化の観点から、軽油中の多環芳香族化合物の削減が求められており、これに対応する技術として、メタンを主成分とする天然ガスを改質反応で一酸化炭素と水素を含む合成ガス(syngas)に変換し、これをフィッシャー・トロプシュ(FT)反応で増炭することによって、芳香族や硫黄分をほとんど含まない軽油等の中間留分を合成するジーティーエル(GTL(gas to liquid))プラント技術の開発も行われてきている(非特許文献2)。しかし、GTLプラントは天然ガス田の近傍で比較的大規模なプラントを設置する必要があるほか、従来の原油由来の中間留分の処理には適用できない難しさがある。
【0004】
市販軽油の中には比較的無色透明のものから、淡黄色や淡黄緑色など呈するものもある。このように呈色する軽油は主に波長380以上780nm以下の範囲での紫外・可視光線の吸収と関係がある。一般的に、ベンゼン環を複数持っている多環芳香族化合物は共役二重結合を有することで紫外・可視領域の光を吸収し、さらに電子の共役系が大きくなるとその吸収波長は長波長側にシフトする。たとえば、ナフタレン(2環)の主な吸収波長は245~285nmなのに対し、アントラセン(3環)の主な吸収波長は300~380nm、フェナントレン(3環)は260~380nm、ピレン(4環)は250nm~380nm、ナフタセン(4環)は300nm~500nmとなっている。このように、芳香族が紫外可視光吸収を示すことを応用して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)における芳香族の検出に紫外吸収検出器が用いられている(非特許文献3)。このような知見から、市販軽油の中で淡黄色や淡黄緑色を呈するものにあっては、多環芳香族を含む可能性があるものと思われる。
【0005】
軽油中の多環芳香族化合物を除去する方法としては、軽油を水素化精製処理して芳香族化合物を低減させる軽油留分の製造方法(特許文献1)が開示されている。また、軽油を脱色する方法としては、着色した軽油留分を活性炭と接触させて着色原因物質を吸着除去する方法(特許文献2)、蛍光色などの着色がない軽油基材を製造する方法(特許文献3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-251091号公報
【文献】特開平6-136370号公報
【文献】特開2009-57404号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】石油学会誌,42(6),365-375(1999)
【文献】Petrotech、25(8)、590-595(2002)
【文献】J.Jpn.Petrol.Inst.,Vol.59(6),311-316(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし上記の先行技術は、多環芳香族化合物または着色成分どちらか一方を除去対象とする処理技術であり、両者を同時に除去することは考慮されていない。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、原油由来の軽油に関し芳香族化合物及び呈色物質を同時に低減する軽油の性状改善技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述されている目的を達成するための手段1は、
最初に、空気が自由に出入りする環境において、酸性白土を温度80℃以上~250℃以下となるように制御し、かつ3時間以上~10時間以下となるように熱処理する工程を有する。
また、軽油槽において、軽油1000mlに対し、上述の酸性白土の熱処理工程で得られた熱処理白土を、30g以上~150g以下となるように添加する工程を有する。
前述の軽油槽の温度を15℃以上~50℃以下に保ちつつ、前述の熱処理白土と前述の軽油との接触時間が2時間以上~72時間以内で接触させる工程を有する。
なおかつ、前述の軽油槽に光がかからないように遮光する工程を有する。
上述のように、軽油槽が空気中であっても、上述の特に遮光工程を備えることで、従来困難であった吸光度積分値と呈色を目標通り下げたり減少させたりすることが可能であり、軽油の性状を改善させることできる。
また、上述されている目的を達成するための手段2は、
前述の手段1の工程に加え、前述の軽油槽における軽油の液面上の空間部分を、窒素、アルゴン、二酸化炭素、ブタンや、フルオロハイドロカーボン類などから選択された一種以上で置換する工程を有する。これらの工程、すなわち遮光工程と、不活性ガス等の置換工程との両工程を備えることで、組み合わせによって、吸光度積分値や呈色の著しい改善をさせることが可能となる軽油の性状を改善させることができる方法とすることが可能となる。
さらに、上述されている目的を達成するための手段3は、
準備段階として、まず、空気が自由に出入りする環境において、酸性白土を温度80℃以上~250℃以下となるように温度制御し、かつ3時間以上~10時間以下の間で熱処理する工程を有する。
また、軽油槽において、軽油1000mlに対し、上述の酸性白土の熱処理工程で得られた熱処理白土を、30g以上~150g以下となるように添加する工程を有する。
上述の軽油槽の温度を15℃以上~50℃以下の範囲に保ち、前述の熱処理白土と前述の軽油との接触時間が2時間以上~72時間以内となる間で接触させる工程を有する。
上述の軽油槽における軽油液面上の空間部分を、窒素、アルゴン、二酸化炭素、ブタンや、フルオロハイドロカーボン類などから選択された一種以上で置換充填する工程を有する。
これら遮光工程のない場合であっても、不活性ガス等の置換工程を備えることで、組み合わせによっては、吸光度積分値や呈色の著しい改善をさせることが可能となる軽油の性状改善方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば軽油中の多環芳香族化合物を除去することができ、さらに呈色を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明の技術内容をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0013】
(処理対象軽油)
処理対象の軽油に特に制限はない。すなわち、軽油のJIS規格(JIS K 2204)による特1号、1号、2号、3号及び特3号軽油に対し、好ましく用いることができる。特に高沸点成分が多く、呈色する傾向が強いと思われる1号軽油に対し好ましく用いることができる。
【0014】
(酸性白土)
酸性白土のSi/Alモル比(ケイバン比)は3以上7以下、比表面積は特に限定されないが、20以上200m2/g以下のものを好ましく用いることができる。
【0015】
(酸性白土の熱処理条件)
酸性白土は、空気流通下で熱処理して水分等吸着物質を除去することで活性化することができる。酸性白土を空気流通下で熱処理して熱処理白土を得るときの温度は80℃以上250℃以下が好ましく、120℃以上230℃以下がより好ましく、130℃以上200℃以下が最も好ましい。この範囲未満では酸性白土中に水分が残留する傾向があり活性不十分な面がある。またこの範囲を超過すると酸性白土の構造が変化して軽油に対する性状改善効果が低下する傾向がある。また、前記熱処理の時間は3時間以上10時間以下が好ましく、4時間以上8時間以下がより好ましく、5時間以上6時間以下が最も好ましい。この範囲未満では熱処理白土と軽油との接触が十分に行われない傾向がある。熱処理時間は生産性の観点から6時間以下に抑えることが実用的である。
【0016】
(軽油槽への熱処理白土の添加量)
軽油槽への熱処理白土の添加量は軽油1000mlに対して30g以上150g以下が好ましく、60g以上130g以下がより好ましく、80g以上110g以下が最も好ましい。この範囲未満では十分な性状改善効果が得られない傾向がある。この範囲を超過すると、性状改善効果が頭打ちとなり不経済な面がある。
【0017】
(軽油槽)
軽油と酸性白土を接触処理するときに用いる軽油槽は内部に光が透過しないように遮光されていることが好ましい。しかしながら、軽油槽の遮光が不完全な場合、軽油槽空間部分は不活性ガスまたは非酸化性ガスで置換することが好ましい。さらに、軽油槽が遮光されていることに加え、軽油槽空間部分は不活性ガスまたは非酸化性ガスで置換することも好ましい。不活性ガスまたは非酸化性ガスには二酸化炭素、アルゴン、窒素、ブタン及びハイドロフルオロカーボン類を好ましく、二酸化炭素、アルゴン、窒素及びハイドロフルオロカーボン類より好ましく、二酸化炭素、アルゴン及びハイドロフルオロカーボン類を最も好ましく用いることができる。これらの非酸化性ガスは一種単独で用いることができるほか、二種以上を任意の割合で混合することができる。
【0018】
(軽油槽の温度及び接触処理時間)
軽油槽の温度は15℃以上50℃以下が好ましく、17℃以上40℃以下がより好ましく、20℃以上30℃以下が最も好ましい。接触処理時間は2時間以上72時間以下が好ましく、6時間以上60時間以下がより好ましく、12時間以上48時間以下が最も好ましい。また、図1のように軽油槽内を攪拌することは、熱処理白土と軽油との接触が促進されるので好ましい。
【実施例
【0019】
以下に実施例を示し、本発明をより詳細に開示する。また、これらの実施例及び比較例は表1及び表2に概要をまとめた。しかしながら、実施例等は本発明の本質を説明するためのものであり、これらによって本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。
【0020】
<軽油の性状改善評価方法>
軽油の性状改善評価は紫外可視吸収スペクトルにより行う。紫外可視吸収スペクトルは、光の波長(nm)と吸光度の関係で表され、吸光度が減少するほど無色に近づくことを意味する。本発明では、波長360nm以上780nm以下の吸光度の積分値を単に吸光度積分値と呼び、前記吸光度積分値を性状改善の指標とする。なお、吸光度は無次元量なので吸光度積分値の単位はnmとなる。軽油の吸光度積分値が30nm未満であれば、見た目ではほぼ無色である。従って、以下の実施例および比較例における軽油の性状改善評価は、吸光度積分値が30未満を適、30以上を否とする。
【0021】
<実施例1>
処理対象の軽油には市販のJIS1号軽油の中から黄色に呈色していたものを用いた。前記軽油について紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、吸光度積分値は52.9nmであった。処理剤の酸性白土は空気中80℃で10時間熱処理することで熱処理白土1を得た。次に図1の装置を用い遮光された軽油槽内に前記軽油1000mlとともに熱処理白土1を150g加え、前記軽油槽の空間部分を窒素で置換した。次に前記軽油槽を40℃に保ち槽内を2時間攪拌して軽油と熱処理白土1を接触処理したところ、軽油はほぼ無色に性状改善された。処理前及び処理後の軽油の紫外可視吸収スペクトルを図2に示す。吸光度積分値は52.9nmから27.8nmに減少した。このように可視領域の吸光度が減少して無色に近くなり、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。なお、実施例2以降は、実施例1と同様に吸光度積分値を算出し性状改善評価を行った。
【0022】
<実施例2>
酸性白土を空気中120℃で8時間熱処理することで熱処理白土2を得た。次に遮光された軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土2を130g加え、前記軽油槽の空間部分をブタンで置換した。次に前記軽油槽を30℃に保ち槽内を12時間攪拌して軽油と熱処理白土2を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は25.6nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0023】
<実施例3>
酸性白土を空気中200℃で5時間熱処理することで熱処理白土3を得た。次に遮光された軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土3を80g加え、前記軽油槽の空間部分を置換せず空気のままとした。次に室温(20℃)において前記軽油槽内を6時間攪拌して軽油と熱処理白土3を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は27.0nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0024】
<実施例4>
酸性白土を空気中130℃で6時間熱処理することで熱処理白土4を得た。次に遮光された軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土4を110g加え、前記軽油槽の空間部分を二酸化炭素で置換した。次に室温(17℃)において前記軽油槽内を48時間攪拌して軽油と熱処理白土4を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は25.8nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0025】
<実施例5>
酸性白土を空気中230℃で4時間熱処理することで熱処理白土5を得た。次に遮光された軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土5を60g加え、前記軽油槽の空間部分をアルゴンで置換した。次に前記軽油槽を15℃に保ち槽内を60時間攪拌して軽油と熱処理白土5を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は27.5nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0026】
<実施例6>
酸性白土を空気中250℃で3時間熱処理することで熱処理白土6を得た。次に遮光された軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土3を30g加え、前記軽油槽の空間部分をジフルオロメタンで置換した。次に前記軽油槽を50℃に保ち槽内を72時間攪拌して軽油と熱処理白土6を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は29.1nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0027】
<実施例7>
酸性白土を空気中180℃で5時間熱処理することで熱処理白土7を得た。次に透明な軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土7を140g加え、前記軽油槽の空間部分を二酸化炭素で置換した。次に前記軽油槽を16℃に保ち槽内を72時間攪拌して軽油と熱処理白土7を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は27.1nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0028】
<実施例8>
酸性白土を空気中160℃で5時間熱処理することで熱処理白土8を得た。次に透明な軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土8を120g加え、前記軽油槽の空間部分をジフルオロメタンで置換した。次に室温(22℃)において前記軽油槽内を36時間攪拌して軽油と熱処理白土8を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は27.4nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0029】
<実施例9>
酸性白土を空気中140℃で6時間熱処理することで熱処理白土9を得た。次に透明な軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土9を100g加え、前記軽油槽の空間部分をアルゴンで置換した。次に前記軽油槽を25℃に保ち槽内を24時間攪拌して軽油と熱処理白土9を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は27.8nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0030】
<実施例10>
酸性白土を空気中220℃で4時間熱処理することで熱処理白土10を得た。次に透明な軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土10を90g加え、前記軽油槽の空間部分をブタンで置換した。次に室温(18℃)において前記軽油槽内を60時間攪拌して軽油と熱処理白土10を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は27.2nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0031】
<実施例11>
酸性白土を空気中110℃で8時間熱処理することで熱処理白土11を得た。次に透明な軽油槽内に実施例1と同じ市販軽油1000mlとともに熱処理白土11を50g加え、前記軽油槽の空間部分を窒素で置換した。次に30℃において前記軽油槽内を8時間攪拌して軽油と熱処理白土11を接触処理したところ、軽油の呈色は減少し、吸光度積分値は29.4nmに減少した。よって、本実施例による軽油の性状改善評価は適であった。
【0032】
<比較例1>
実施例3において、透明な軽油槽を用いた以外は同条件で熱処理白土3と軽油との接触処理を行った。処理後の軽油は黄色味を帯びており、吸光度積分値は42.7nmであった。よって、軽油の性状改善評価は否であった。本比較例は、軽油槽空間部分が空気である場合、軽油槽を遮光しないと十分な性状改善効果が得られないことを示す例である。
【0033】
<比較例2>
実施例2において、熱処理白土と軽油との接触時間を1時間とした以外は同条件で熱処理白土2と軽油との接触処理を行った。処理後の軽油の呈色は黄色味を帯びており、吸光度積分値は35.5nmであった。よって、性状改善評価は否であった。本比較例は、熱処理白土と軽油との接触時間が好適な範囲を満たさない場合には、所望の性状改善効果が得られないことを示す例である。
【0034】
<比較例3>
実施例3において、熱処理白土と軽油との接触時間を1時間とした以外は同条件で熱処理白土3と軽油との接触処理を行った。処理後の軽油の呈色は黄色味を帯びており、吸光度積分値は36.2nmであった。よって性状改善評価は否であった。本比較例は、軽油槽空間部分のガスが空気であって遮光された軽油槽を用いた場合でも熱処理白土と軽油との接触時間が好適な範囲を満たさない場合には、所望の性状改善効果が得られないことを示す例である。
【0035】
<比較例4>
実施例4において、熱処理白土の添加量を10gとした以外は同条件で熱処理白土4と軽油との接触処理を行った。処理後の軽油の呈色は黄色味を帯びており、吸光度積分値は37.5nmであった。よって性状改善評価は否であった。本比較例は、熱処理白土の添加量が好適な範囲を満たさない場合には、所望の性状改善効果が得られないことを示す例である。
【0036】
<比較例5>
実施例5において、軽油槽の温度を5℃に保持した以外は同条件で熱処理白土5と軽油との接触処理を行った。処理後の軽油の呈色は黄色味を帯びており、吸光度積分値は33.1nmであった。よって性状改善評価は否であった。本比較例は、軽油槽の温度が好適な範囲を満たさない場合には、所望の性状改善効果が得られないことを示す例である。
【0037】
<比較例6>
酸性白土を空気中50℃で5時間熱処理することで熱処理白土106を得た。実施例3において、熱処理白土3の代わりに熱処理白土106を用いて軽油との接触処理を行った。処理後の軽油の呈色は黄色味を帯びており、吸光度積分値は37.4nmであった。よって性状改善評価は否であった。本比較例は、酸性白土の熱処理温度が好適な範囲を満たさない場合には、所望の性状改善効果が得られないことを示す例である。
【0038】
<比較例7>
酸性白土を空気中130℃で1時間熱処理することで熱処理白土107を得た。実施例4において、熱処理白土4の代わりに熱処理白土107を用いて軽油との接触処理を行った。処理後の軽油の呈色は黄色味を帯びており、吸光度積分値は34.9nmであった。よって性状改善評価は否であった。本比較例は、酸性白土の熱処理時間が好適な範囲を満たさない場合には、所望の性状改善効果が得られないことを示す例である。
【0039】
<比較例8>
酸性白土を空気中380℃で5時間熱処理することで熱処理白土108を得た。実施例8において、熱処理白土8の代わりに熱処理白土108を用いて軽油との接触処理を行った。処理後の軽油の呈色は黄色味を帯びており、吸光度積分値は39.0nmであった。よって性状改善評価は否であった。本比較例は、酸性白土の熱処理温度が好適な範囲を超過した場合には、所望の性状改善効果が得られないことを示す例である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
酸性白土を熱処理して得られる熱処理白土と軽油を接触処理することにより、多環芳香族化合物及び呈色が少ない性状に優れた軽油を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】軽油と酸性白土を接触処理する形態
図2】未処理軽油と性状改善された処理済み軽油の紫外可視吸収スペクトル
【符号の説明】
【0042】
1 軽油槽
2 処理対象軽油
3 酸性白土
4 攪拌手段
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
図1
図2