(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】中性子線測定装置、及び中性子線測定方法
(51)【国際特許分類】
G01T 3/06 20060101AFI20220607BHJP
G01T 1/29 20060101ALI20220607BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20220607BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20220607BHJP
G21K 5/08 20060101ALN20220607BHJP
【FI】
G01T3/06
G01T1/29 B
G21K5/02 N
A61N5/10 H
G21K5/08 N
G21K5/08 C
(21)【出願番号】P 2018076357
(22)【出願日】2018-04-11
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502437894
【氏名又は名称】学校法人大阪医科薬科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 清崇
(72)【発明者】
【氏名】秋田 和彦
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/136990(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/042916(WO,A1)
【文献】特開平04-194621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 3/06
G01T 1/29
G21K 5/02
A61N 5/10
G21K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットへの荷電粒子線の照射によって発生した中性子線の量を測定する中性子線測定装置であって、
前記中性子線を検出する検出部からの検出結果を取得する検出結果取得部と、
前記検出結果取得部で取得された前記検出結果に基づいて、前記中性子線の量を算出する算出部と、を備え、
前記検出結果取得部は、
熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ前記中性子線の量を検出する第1の検出部からの第1の検出結果、及び前記熱中性子線がカットされた前記中性子線の量を検出する第2の検出部からの第2の検出結果と、を取得し、
前記算出部は、前記中性子線に含まれる前記熱中性子線の量を算出
し、
前記熱中性子線をカットするフィルタを着脱可能であって、前記フィルタが外された状態では前記第1の検出部として検出を行い、前記フィルタが取り付けられた状態では前記第2の検出部として検出を行う第1の検出器と、
前記熱中性子線及び前記熱外中性子線を含んだ前記中性子線の量を検出する第3の検出部として検出を行い、前記第1の検出器とは別体として設けられた第2の検出器と、を更に備え、備え、
前記検出結果取得部は、
前記第1の検出器から前記フィルタが外された状態で行われる前記ターゲットへの前記荷電粒子線の第1の照射の時に、前記第1の検出部からの前記第1の検出結果、及び前記第3の検出部からの第3の検出結果を取得し、
前記第1の検出器に前記フィルタが取り付けられた状態で行われる前記ターゲットへの前記荷電粒子線の第2の照射の時に、前記第2の検出部からの前記第2の検出結果、及び前記第3の検出部からの前記第3の検出結果を取得し、
算出部は、
前記第1の照射時の前記第1の検出結果と、前記第2の照射時の前記第2の検出結果との差分を算出し、
前記第1の照射時の前記第3の検出結果と、前記第2の照射時の前記第3の検出結果と、の比に基づき、前記差分を補正して前記熱中性子の量を算出する、中性子線測定装置。
【請求項2】
各タイミングにおける前記熱中性子線の量と前記熱外中性子線の量との比率を記憶する記憶部と、
第1のタイミングにおける前記比率と第2のタイミングにおける前記比率の変化に基づいて異常判定を行う判定部と、を備える、
請求項1に記載の中性子線測定装置。
【請求項3】
ターゲットへの荷電粒子線の照射によって発生した中性子線の量を測定する中性子線測定方法であって、
熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ前記中性子線の量を検出した第1の検出結果を取得する第1の検出結果取得工程と、
前記熱中性子線がカットされた前記中性子線の量を検出した第2の検出結果を取得する第2の検出結果取得工程と、
前記第1の検出結果及び前記第2の検出結果に基づいて、前記中性子線に含まれる前記熱中性子線の量を算出する算出工程と、を備え
、
前記熱中性子線をカットするフィルタを着脱可能であって、前記フィルタが外された状態では前記第1の検出結果取得工程を行い、前記フィルタが取り付けられた状態では前記第2の検出結果取得工程を行う第1の検出器と、
前記熱中性子線及び前記熱外中性子線を含んだ前記中性子線の量を検出する第3の検出結果取得工程を行い、前記第1の検出器とは別体として設けられた第2の検出器と、を用い、
前記第1の検出器から前記フィルタが外された状態で行われる前記ターゲットへの前記荷電粒子線の第1の照射の時に、前記第1の検出結果取得工程で検出された前記第1の検出結果、及び前記第3の検出結果取得工程で検出された第3の検出結果を取得し、
前記第1の検出器に前記フィルタが取り付けられた状態で行われる前記ターゲットへの前記荷電粒子線の第2の照射の時に、前記第2の検出結果取得工程で検出された前記第2の検出結果、及び前記第3の検出結果取得工程で検出された前記第3の検出結果を取得し、
算出工程では、
前記第1の照射時の前記第1の検出結果と、前記第2の照射時の前記第2の検出結果との差分を算出し、
前記第1の照射時の前記第3の検出結果と、前記第2の照射時の前記第3の検出結果と、の比に基づき、前記差分を補正して前記熱中性子の量を算出する、中性子線測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線測定装置、及び中性子線測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中性子線を用いて治療が行われる技術がある。例えば、中性子線を照射してがん細胞を死滅させる中性子捕捉療法として、ホウ素化合物を用いたホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)が知られている。ホウ素中性子捕捉療法では、がん細胞に予め取り込ませておいたホウ素に中性子線を照射し、これにより生じる重荷電粒子の飛散によってがん細胞を選択的に破壊する。
【0003】
このように治療に用いられる中性子線の量を測定するために、例えば特許文献1に示される中性子線測定装置が用いられる。特許文献1に示される中性子線測定装置は、検出部で中性子線を検出し、当該検出結果に基づいて中性子線の量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ターゲットに荷電粒子線を照射して中性子線を発生させた場合、当該中性子線は、熱中性子と熱外中性子の双方を含んでいる。治療においては熱中性子が用いられるため、熱中性子の量を把握することが求められる。しかしながら、上述の中性子線測定装置は、熱中性子と熱外中性子を区別することなく測定しているため、熱中性子をより正確に測定することが求められていた。
【0006】
従って、本発明は、中性子線に含まれる熱中性子の量の測定精度を向上できる中性子線測定装置、及び中性子線測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る中性子線測定装置は、ターゲットへの荷電粒子線の照射によって発生した中性子線の量を測定する中性子線測定装置であって、中性子線を検出する検出部からの検出結果を取得する検出結果取得部と、検出結果取得部で取得された検出結果に基づいて、中性子線の量を算出する算出部と、を備え、検出結果取得部は、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出する第1の検出部からの第1の検出結果、及び熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出する第2の検出部からの第2の検出結果と、を取得し、算出部は、中性子線に含まれる熱中性子線の量を算出する。
【0008】
本発明に係る中性子線測定装置は、中性子線を検出する検出部からの検出結果を取得する検出結果取得部と、検出結果取得部で取得された検出結果に基づいて、中性子線の量を算出する算出部と、を備える。ここで、検出結果取得部は、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出する第1の検出部からの第1の検出結果を取得する。それに加えて、検出結果取得部は、熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出する第2の検出部からの第2の検出結果と、を取得する。このように第2の検出結果は、熱中性子線がカットされた状態の中性子線の量を示しているため、第1の検出結果と第2の検出結果との差分は、中性子線に含まれる熱中性子線の量を示している。従って、算出部は、第1の検出結果及び第2の検出結果に基づいて、中性子線に含まれる熱中性子線の量を算出する。以上により、中性子線に含まれる熱中性子の量の測定精度を向上できる。
【0009】
中性子線測定装置は、熱中性子線をカットするフィルタを着脱可能であって、フィルタが外された状態では第1の検出部として検出を行い、フィルタが取り付けられた状態では第2の検出部として検出を行う第1の検出器と、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出する第3の検出部として検出を行い、第1の検出器とは別体として設けられた第2の検出器と、を備え、検出結果取得部は、第1の検出器からフィルタが外された状態で行われるターゲットへの荷電粒子線の第1の照射の時に、第1の検出部からの第1の検出結果、及び第3の検出部からの第3の検出結果を取得し、第1の検出器にフィルタが取り付けられた状態で行われるターゲットへの荷電粒子線の第2の照射の時に、第2の検出部からの第2の検出結果、及び第3の検出部からの第3の検出結果を取得し、算出部は、第1の照射時の第1の検出結果と、第2の照射時の第2の検出結果との差分を算出し、第1の照射時の第3の検出結果と、第2の照射時の第3の検出結果と、の比に基づき、差分を補正して熱中性子の量を算出してよい。このように、第1の検出器に対してフィルタを着脱し、且つ、第1の照射及び第2の照射を行うことにより、第1の検出部と第2の検出部とを一つの検出器で兼用することができる。ここで、第1の照射と第2の照射とで、ターゲットから発生する中性子線の照射量自体が変化する場合がある。しかしながら、このような場合であっても、第1の検出器とは別体の第2の検出器にて、第1の照射時と第2の照射時に、ターゲットから発生する中性子線の照射量を第3の検出結果として検出する。また、算出部は、第1の照射時の第3の検出結果と、第2の照射時の第3の検出結果と、の比に基づき、第1の照射時の第1の検出結果と、第2の照射時の第2の検出結果との差分を補正して熱中性子の量を算出する。これにより、算出部は、ターゲットから発生する中性子線の照射量自体の変化を考慮して補正を行った上で、熱中性子の量を算出できる。
【0010】
中性子線測定装置は、各タイミングにおける熱中性子線の量と熱外中性子線の量との比率を記憶する記憶部と、第1のタイミングにおける比率と第2のタイミングにおける比率の変化に基づいて異常判定を行う判定部と、を備えてよい。これにより、判定部は、熱中性子線の量と熱外中性子線の量の比率は所定の範囲に収まっていることを監視することができ、且つ、異常が生じたことを検知することができる。
【0011】
本発明に係る中性子線測定方法は、ターゲットへの荷電粒子線の照射によって発生した中性子線の量を測定する中性子線測定方法であって、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出した第1の検出結果を取得する第1の検出結果取得工程と、熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出した第2の検出結果を取得する第2の検出結果取得工程と、第1の検出結果及び第2の検出結果に基づいて、中性子線に含まれる熱中性子線の量を算出する算出工程と、を備える。
【0012】
本発明に係る中性子線測定方法によれば、上述の中性子線測定装置と同様な作用・効果を得ることができる。
【0013】
中性子線測定方法は、第1の検出結果取得工程では、ターゲットへの荷電粒子線の第1の照射の時に、検出器が中性子線の量を検出し、第2の検出結果取得工程では、ターゲットへの荷電粒子線の第2の照射の時に、熱中性子線をカットするフィルタを取り付けた状態の検出器が中性子線の量を検出してよい。このように、検出器に対してフィルタを着脱し、且つ、第1の照射及び第2の照射を行うことにより、第1の検出結果と第2の検出結果を一つの検出器で得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中性子線に含まれる熱中性子の量の測定精度を向上できる中性子線測定装置、及び中性子線測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る中性子線測定装置の測定対象となる中性子線を発生する中性子捕捉療法装置を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る中性子線測定装置のブロック図である。
【
図3】
図2に示す中性子線測定装置の具体的な構成を示す概略構成図である。
【
図4】本実施形態に係る中性子線測定方法の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明の実施形態に係る中性子線測定装置の測定対象となる中性子線を発生する中性子捕捉療法装置の概要について
図1を参照しつつ説明する。
図1に示される中性子捕捉療法装置1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1では、例えばホウ素(
10B)が投与された患者(被照射体)50の腫瘍に中性子線Nを照射する。
【0018】
中性子捕捉療法装置1は、加速器2を備えている。加速器2は、陰イオン等の荷電粒子を加速して、荷電粒子線Rを出射する。加速器2は、例えばサイクロトロンによって構成される。本実施形態において、荷電粒子線Rは陰イオンから電荷を剥ぎ取って生成した陽子ビームである。この加速器2は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Rを生成する。なお、加速器は、サイクロトロンに限られず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロン、ライナック、静電加速器などであってもよい。
【0019】
加速器2から出射された荷電粒子線Rは、中性子線生成部Mへ送られる。中性子線生成部Mは、ビームダクト9とターゲット10とからなる。加速器2から出射された荷電粒子線Rは、ビームダクト9を通り、ビームダクト9の端部に配置されたターゲット10へ向かって進行する。このビームダクト9に沿って複数の四極電磁石4、及び走査電磁石6が設けられている。複数の四極電磁石4は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Rのビーム軸調整を行うものである。
【0020】
走査電磁石6は、荷電粒子線Rを走査し、ターゲット10に対する荷電粒子線Rの照射制御を行うものである。この走査電磁石6は、荷電粒子線Rのターゲット10に対する照射位置を制御する。
【0021】
中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線Rをターゲット10に照射することにより中性子線Nを発生させ、患者50に向かって中性子線Nを出射する。中性子捕捉療法装置1は、ターゲット10、遮蔽体8、減速材39、コリメータ20を備えている。
【0022】
ターゲット10は、荷電粒子線Rの照射を受けて中性子線Nを生成するものである。ターゲット10は、荷電粒子線が照射されることで中性子線を発生させる材質によって形成される固体形状の部材である。具体的に、ターゲット10は、例えば、ベリリウム(Be)やリチウム(Li)、タンタル(Ta)、タングステン(W)により形成され、例えば直径160mmの円板状の固体形状をなしている。なお、ターゲット10は、円板状に限らず、他の形状であってもよい。
【0023】
ターゲット10には、冷却部材120が接続されている。冷却部材120は、例えば、ターゲット10と接触する接触面に複数の溝を有し、当該溝に冷却流体を流すことによって、ターゲット10を冷却する。
【0024】
減速材39は、ターゲット10で生成された中性子線Nを減速させる(中性子線Nのエネルギーを低下させる)ものである。減速材39は、中性子線Nに含まれる速中性子を主に減速させる層39Aと、中性子線Nに含まれる熱外中性子を主に減速させる層39Bと、からなる積層構造を有していてよい。
【0025】
遮蔽体8は、発生させた中性子線N、及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等を外部へ放出されないよう遮蔽するものである。遮蔽体8は、減速材39を囲むように設けられている。遮蔽体8の上部及び下部は、減速材39より荷電粒子線Rの上流側に延在している。
【0026】
コリメータ20は、中性子線Nの照射野を整形するものであり、中性子線Nが通過する開口20aを有する。コリメータ20は、例えば中央に開口20aを有するブロック状の部材である。
【0027】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る中性子線測定装置100の詳細な構成について説明する。中性子線測定装置100は、ターゲット10への荷電粒子線Rの照射によって発生した中性子線Nの量を測定する測定装置である。ここで、ターゲット10で発生した中性子線Nは、熱中性子線及び熱外中性子線を含んでいる。なお、熱中性子と熱外中性子とは、中性子が有するエネルギー(すなわち速度)によって区別される。例えば、「熱中性子:0<エネルギー≦0.5eV」、「熱外中性子:0.5eV<エネルギー<10keV」、「高速中性子:10keV<エネルギー」熱中性子。なお、熱中性子線及び熱外中性子線が混合されている状態の中性子線を「混合中性子線」と称する場合がある。なお、本実施形態の説明において「中性子線を検出する」と称した場合は、混合中性子線を検出するのか熱中性子線を検出するのかを特に区別していないものとする。「混合中性子線を検出する」と称した場合は、熱中性子線及び熱外中性子線を検出することを示すものとする。「熱中性子線を検出する」と称した場合は、混合中性子線のうち、特に熱中性子線を検出することを示すものとする。ただし、熱中性子線を検出する場合は、測定対象の大半が熱中性子線であればよく、誤差の範囲内で熱外中性子線や他の帯域の中性子線を含んでもよい。また、中性子線などの「量を検出する」「量を測定する」と称した場合の「量」とは、中性子の個数(カウント数)を示していてよい。中性子の個数を示す物理量としてフルエンス(n/cm
2)を用いてよい。フルエンスは、所定の単位面積あたりに通過した中性子の総和を示す。なお、中性子の個数は検出器の感度にも影響されるものである。
【0028】
中性子線測定装置100は、混合中性子線の中の熱中性子線を精度よく測定できるものである。
図2に示すように、中性子線測定装置100は、第1の検出器11と、第2の検出器12と、制御部30と、を備える。
【0029】
第1の検出器11は、中性子線の量を検出する機器である。第1の検出器11は、主に、制御部30が熱中性子線の量を算出するための検出結果を得るための検出器である。第1の検出器11は、検出結果を制御部30へ出力する。第1の検出器11の具体的な構成の例については後述する。本実施形態においては、第1の検出器11は、熱中性子線をカットするフィルタ13を着脱可能である。従って、第1の検出器11は、フィルタ13が外された状態では、混合中性子線の量を検出する。第1の検出器は、フィルタ13が取り付けられた状態では、当該フィルタ13によって熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出する。フィルタ13によって熱中性子線がカットされた中性子線は、大半(例えば99%以上)が熱外中性子線である。フィルタ13として、熱中性子線を遮蔽し且つ、熱外中性子線を透過させる部材を採用すればよく、例えばカドミウムフィルタ、フッ化リチウムフィルタ、ガドリニウムフィルタ、ボロンフィルタなどを採用してよい。カドミウムフィルタは、熱中性子線をほぼ100%カットすることができる。
【0030】
なお、第1の検出器11は機器としては1つの構成要素であるが、フィルタ13の着脱前後では検出対象を異なった物とすることができるので、機能的には2つの検出部を備えている。従って、
図2(a)に示すような、フィルタ13が外された状態の第1の検出器11は、混合中性子線(熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線)の量を検出する第1の検出部16として機能する。
図2(b)に示すような、フィルタ13が取り付けられた状態の第1の検出器11は、熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出する第2の検出部17として機能する。
【0031】
第2の検出器12は、中性子線の量を検出する機器である。第2の検出器12は、主に、ターゲット10が発生する中性子線の全体の照射量を把握するための検出器である。第2の検出器12は、検出結果を制御部30へ出力する。第2の検出器12の具体的な構成の例については後述する。第2の検出器12は、第1の検出器11とは別体の機器として設けられている。第2の検出器12は、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出する第3の検出部18として機能する。
【0032】
制御部30は、中性子線測定装置100全体の制御を行う。制御部30は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。ユーザインターフェースは、液晶やスピーカなどの出力器、及び、キーボードやタッチパネルやマイクなどの入力器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する制御部30の機能を実現する。制御部30では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部30は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0033】
制御部30は、検出結果取得部31と、算出部32と、判定部33と、記憶部34と、を備える。
【0034】
検出結果取得部31は、検出部16,17,18(すなわち検出器11,12)からの検出結果を取得する。検出結果取得部31は、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出する第1の検出部16からの第1の検出結果と、熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出する第2の検出部17からの第2の検出結果と、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出する第3の検出部18からの第3の検出結果と、を取得する。
【0035】
ここで、測定時においては、第1の検出器11は、フィルタ13を取り外した状態での検出と、フィルタ13を取り付けた状態での検出と、の2回の検出を行う。従って、第1の検出器11からフィルタ13が外された状態で行われるターゲット10への荷電粒子線Rの照射を「第1の照射」と称する。第1の検出器11にフィルタ13が取り付けられた状態で行われるターゲット10への荷電粒子線Rの照射を「第2の照射」と称する。
【0036】
検出結果取得部31は、第1の照射の時に、フィルタ13が外された第1の検出器11、すなわち第1の検出部16からの第1の検出結果、及び第2の検出器12、すなわち第3の検出部18からの第3の検出結果を取得する。検出結果取得部31は、第2の照射の時に、フィルタ13が取り付けられた第1の検出器11、すなわち第2の検出部17からの第2の検出結果、及び第2の検出器12、すなわち第3の検出部18からの第3の検出結果を取得する。
【0037】
算出部32は、検出結果取得部31で取得された検出結果に基づいて、中性子線の量を算出する。算出部32は、検出結果取得部31で取得された第1の検出結果及び第2の検出結果に基づいて、中性子線に含まれる熱中性子線の量を算出する。前述のように、第1の検出結果は、熱中性子線及び熱外中性子線の双方を含む中性子線の量を示している。第2の検出結果は、熱中性子がカットされた中性子線の量を示している。従って、算出部32は、第1の照射時の第1の検出結果と、第2の照射時の第2の検出結果との差分を算出する。これにより、算出部32は、このような差分に基づいて演算を行うことにより、中性子線に含まれる熱中性子線の量を算出できる。
【0038】
ここで、上述の様に算出部32による算出は、第1の照射及び第2の照射の2回の照射による検出結果に基づいてなされる。従って、第1の照射と第2の照射との間で、ターゲット10が発生する中性子線の照射量自体が異なっていた場合、第1の照射時に中性子線に含まれる熱中性子線の量と、第2の照射時に中性子線に含まれる熱中性子線の量と、の間には差が生じる。一方、第3の検出部18を構成する第2の検出器12は、第1の照射及び第2の照射の両方において、ターゲット10が発生する中性子線の照射量自体を測定している。すなわち、算出部32は、第3の検出部18からの第3の検出結果を参照することで、第1の照射と第2の照射との間において、ターゲット10が発生する中性子線の照射量がどの程度異なっているかを把握することができる。具体的には、算出部32は、第1の照射時の第3の検出結果と、第2の照射時の第3の検出結果と、の比を算出することで、第1の照射と第2の照射との間において、ターゲット10が発生する中性子線の照射量がどの程度異なっているかを把握する。従って、算出部32は、第1の照射時の第3の検出結果と、第2の照射時の第3の検出結果と、の比に基づき、第1の照射時の第1の検出結果と、第2の照射時の第2の検出結果との差分を補正して熱中性子の量を算出する。これにより、算出部32は、補正された熱中性子線の量を算出可能である。算出部32は、算出結果をモニタ等の表示部に表示することができる。
【0039】
算出部32は、上述の様に熱中性子線の量を把握することができるため、熱外中性子線の量を把握することができる。従って、算出部32は、熱中性子線の量と熱外中性子線の量との比率を算出することができる。算出部32は、算出した比率を記憶部34へ送信する。上述の様な測定及び演算は、中性子捕捉療法装置1の点検などの際に各タイミングで繰り返し行われる。従って、記憶部34は、各タイミングにおける熱中性子線の量と熱外中性子線の量との比率を記憶する。
【0040】
判定部33は、記憶部34に記憶された熱中性子線の量と熱外中性子線の量との比率に基づいて異常判定を行うことができる。すなわち、ターゲット10が発生する中性子線は、異常がなければ、当該中性子線の中に含まれる熱中性子線と熱外中性子線との間の比率にそれほど大きな変動はないものであるため、当該比率に大きく変動がある場合は、何かしらの異常が生じていると判断することができる。判定部33は、任意のあるタイミング(第1のタイミング)における比率と任意の他のタイミング(第2のタイミング)における比率の変化に基づいて、異常判定を行う。なお、判定部33は、中性子捕捉療法装置1及び中性子線測定装置100の少なくともいずれかに異常があることを判定することができるが、どちらに異常があるかまでは検知を行うことができない。よって、判定部33が異常判定を行ったときに、別途の異常判定機構を用いて異常箇所の特定がなされてもよい。
【0041】
なお、判定部33は、上述する異常判定のみならず、各種異常判定を行ってよい。例えば、第1の照射時と第2の照射時における中性子線全体の照射量、すなわち第3の検出部18を構成する第2の検出器12の検出値が異なる場合があるものとする。仮に、中性子捕捉療法装置1が第1の照射と第2の照射とで同じ照射量とする予定であったにも関わらず、各照射における第2の検出器12の検出が異なっている場合、中性子捕捉療法装置1及び中性子線測定装置100のいずれが異常状態にある。従って、判定部33は、当該異常を判定してよい。例えば、制御部30は、第1の照射時に予定されている照射量、及び第2の照射時に予定されている照射量を取得する。算出部32は、第1の照射で予定された照射量と第2の照射で予定された照射量との比を算出する。照射が行われた後、算出部32は、第1の照射時と第2の照射時の実際の測定に係る照射量の比を算出する。判定部33は、予定された照射量の比と、実際の照射量の比を比較し、両者の差異が所定の許容値(例えば3%)以上である場合は異常であると判定してよい。このような異常判定がなされなかった場合に、算出部32は、第1の照射時の第1の検出結果と、第2の照射時の第2の検出結果との差分を補正して熱中性子の量を算出する。なお、上述の様な演算に用いるため、記憶部34は、各照射時に予定されている予定照射量の値を記憶してよい。また、記憶部34が予定照射量を記憶して蓄積しておくことで、判定部33が蓄積された当該記憶データを照会しながら測定値を監視することで、異常を検知することができる。例えば、ある予定照射量に設定した時の熱中性子の測定値が、過去に同程度の予定照射量で照射がなされたときの測定値から大きく異なる場合、判定部33は、異常判定を行うことができる。
【0042】
図3を参照して、中性子線測定装置100の具体的構成の一例について説明する。第1の検出器11は、シンチレータ41Aと、シンチレータ41Aが先端に設けられた光ファイバ42Aと、光ファイバ42Aから伝達された光を検出する光検出器43Aと、を備える。光検出器43Aによる検出結果は、電気ケーブル44Aを介して測定装置46に入力される。測定装置46は、第1の検出器11からの検出結果を所定の測定値に変換した上で、制御部30へ送信する。制御部30は、当該測定値を第1の検出器11からの検出結果として取得する。なお、制御部30は、第1の検出器11からの検出結果を直接受信し、測定装置46が行う処理を内部で行ってよい。
【0043】
シンチレータ41Aは、入射した中性子線を光に変換する蛍光体である。シンチレータ41は、コリメータ20の開口20aと対向する位置であって、開口20aから出射された中性子線と接触可能な位置に配置される。シンチレータ41Aは、入射した中性子線の線量に応じて内部結晶が励起状態となり、シンチレーション光を発生させる。従って、制御部30は、シンチレータ41Aで発生した光に基づいて中性子線の量を算出することができる。シンチレータ41には、フィルタ13を着脱可能な機構が設けられている。フィルタ13は、シンチレータ41を覆うように設けられる。なお、第1の検出器11として、シンチレーション検出器以外に、イオンチェンバー、ガスチェンバー、半導体検出器や比例係数管等を採用してもよい。なお、フィルタ13は、構造上の理由からシンチレータ41を完全に覆わないものであってもよい。この場合、微量の熱中性子がシンチレータ41に入り込むが、算出部32は、このような微量の熱中性子分を補正して演算する機能を有してよい。
【0044】
第2の検出器12は、第1の検出器11のシンチレータ41A、光ファイバ42A、及び光検出器43Aと同趣旨のシンチレータ41B、光ファイバ42B、及び光検出器43Bを有する。第2の検出器12は、シンチレータ41Bにフィルタ13が取り付けられない点以外は、第1の検出器11と同趣旨の構成を有する。
【0045】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る中性子線測定方法の処理内容について説明する。
図4の処理は、制御部30の各構成要素によって実行される処理である。なお、中性子線測定方法の内容は
図4に示す例に限定されるものではない。
【0046】
まず、1回目の測定は、第1の検出器11にフィルタ13が取り付けられない状態にて行われる。中性子捕捉療法装置1は、当該状態にてターゲット10へ荷電粒子線を照射する(第1の照射)。第1の検出器11は、熱中性子線及び熱外中性子線を含む中性子線の量を検出する。第1の照射時には、第1の検出器11は、第1の検出部16として第1の検出結果を制御部30へ送信する。これによって、検出結果取得部31は、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出した第1の検出結果を取得する第1の検出結果取得工程を実行する(ステップS10)。すなわち、第1の検出結果取得工程S10では、ターゲット10への荷電粒子線の第1の照射の時に、第1の検出器11が中性子線の量を検出する。第1の照射時には、第2の検出器12は、第3の検出部18として第3の検出結果を制御部30へ送信する。従って、検出結果取得部31は、第1の照射時の第3の検出結果も取得する。
【0047】
次に、2回目の測定は、第1の検出器11にフィルタ13が取り付けられた状態にて行われる。中性子捕捉療法装置1は、当該状態にてターゲット10へ荷電粒子線を照射する(第2の照射)。第1の検出器11は、熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出する。第2の照射時には、第1の検出器11は、第2の検出部17として第2の検出結果を制御部30へ送信する。これによって、検出結果取得部31は、熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出した第2の検出結果を取得する第2の検出結果取得工程を実行する(ステップS20)。第2の検出結果取得工程S20では、ターゲット10への荷電粒子線の第2の照射の時に、熱中性子線をカットするフィルタ13を取り付けた状態の第1の検出器11が中性子線の量を検出する。第2の照射時には、第2の検出器12は、第3の検出部18として第3の検出結果を制御部30へ送信する。従って、検出結果取得部31は、第2の照射時の第3の検出結果も取得する。
【0048】
次に、算出部32は、第1の検出結果取得工程S10で取得された第1の検出結果及び第2の検出結果取得工程S20で取得された第2の検出結果に基づいて、中性子線に含まれる熱中性子線の量を算出する算出工程を実行する(ステップS30)。算出工程S30では、算出部32は、第1の検出結果取得工程S10で取得された第1の検出結果と第2の検出結果取得工程S20で取得された第2の検出結果との差分を算出することで、熱中性子線の量を算出する。
【0049】
次に、算出部32は、第1の検出結果取得工程S10で取得された第3の検出結果及び第2の検出結果取得工程S20で取得された第3の検出結果の比較を行うことで、第1の照射時と第2の照射時における中性子線の照射量の違いを把握する比較工程を実行する(ステップS40)。比較工程S40では、算出部32は、第1の照射時の第3の検出結果と、第2の照射時の第3の検出結果と、の比を算出する。
【0050】
次に、算出部32は、比較工程S40で算出された第1の照射時の第3の検出結果と、第2の照射時の第3の検出結果と、の比に基づき、第1の照射時の第1の検出結果と、第2の照射時の第2の検出結果との差分を補正して熱中性子の量を算出する補正工程を実行する(ステップS50)。これにより、算出部32は、第1の照射時と第2の照射時の中性子線の照射量の違いを考慮して補正された熱中性子線の量を算出できる。以上により、
図4に示す処理が終了する。
【0051】
次に、本実施形態に係る中性子線測定装置100及び中性子線測定方法の作用・効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係る中性子線測定装置100は、中性子線を検出する検出部16,17,18からの検出結果を取得する検出結果取得部31と、検出結果取得部31で取得された検出結果に基づいて、中性子線の量を算出する算出部32と、を備える。ここで、検出結果取得部31は、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出する第1の検出部16からの第1の検出結果を取得する。それに加えて、検出結果取得部31は、熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出する第2の検出部17からの第2の検出結果と、を取得する。このように第2の検出結果は、熱中性子線がカットされた状態の中性子線の量を示しているため、第1の検出結果と第2の検出結果との差分は、中性子線に含まれる熱中性子線の量を示している。従って、算出部32は、第1の検出結果及び第2の検出結果に基づいて、中性子線に含まれる熱中性子線の量を算出する。以上により、中性子線に含まれる熱中性子の量の測定精度を向上できる。
【0053】
中性子線測定装置100は、熱中性子線をカットするフィルタ13を着脱可能であって、フィルタ13が外された状態では第1の検出部16として検出を行い、フィルタ13が取り付けられた状態では第2の検出部17として検出を行う第1の検出器11と、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出する第3の検出部18として検出を行い、第1の検出器11とは別体として設けられた第2の検出器12と、を備え、検出結果取得部31は、第1の検出器11からフィルタ13が外された状態で行われるターゲット10への荷電粒子線の第1の照射の時に、第1の検出部16からの第1の検出結果、及び第3の検出部18からの第3の検出結果を取得し、第1の検出器11にフィルタ13が取り付けられた状態で行われるターゲット10への荷電粒子線の第2の照射の時に、第2の検出部17からの第2の検出結果、及び第3の検出部18からの第3の検出結果を取得し、算出部32は、第1の照射時の第1の検出結果と、第2の照射時の第2の検出結果との差分を算出し、第1の照射時の第3の検出結果と、第2の照射時の第3の検出結果と、の比に基づき、差分を補正して熱中性子の量を算出してよい。このように、第1の検出器11に対してフィルタ13を着脱し、且つ、第1の照射及び第2の照射を行うことにより、第1の検出部16と第2の検出部17とを一つの検出器11で兼用することができる。ここで、第1の照射と第2の照射とで、ターゲット10から発生する中性子線の照射量自体が変化する場合がある。しかしながら、このような場合であっても、第1の検出器11とは別体の第2の検出器12にて、第1の照射時と第2の照射時に、ターゲット10から発生する中性子線の照射量を第3の検出結果として検出する。また、算出部32は、第1の照射時の第3の検出結果と、第2の照射時の第3の検出結果と、の比に基づき、第1の照射時の第1の検出結果と、第2の照射時の第2の検出結果との差分を補正して熱中性子の量を算出する。これにより、算出部32は、ターゲット10から発生する中性子線の照射量自体の変化を考慮して補正を行った上で、熱中性子の量を算出できる。
【0054】
中性子線測定装置100は、各タイミングにおける熱中性子線の量と熱外中性子線の量との比率を記憶する記憶部34と、第1のタイミングにおける比率と第2のタイミングにおける比率の変化に基づいて異常判定を行う判定部33と、を備えてよい。これにより、判定部33は、熱中性子線の量と熱外中性子線の量の比率は所定の範囲に収まっていることを監視することができ、且つ、異常が生じたことを検知することができる。
【0055】
本実施形態に係る中性子線測定方法は、ターゲット10への荷電粒子線の照射によって発生した中性子線の量を測定する中性子線測定方法であって、熱中性子線及び熱外中性子線を含んだ中性子線の量を検出した第1の検出結果を取得する第1の検出結果取得工程S10と、熱中性子線がカットされた中性子線の量を検出した第2の検出結果を取得する第2の検出結果取得工程S20と、第1の検出結果及び第2の検出結果に基づいて、中性子線に含まれる熱中性子線の量を算出する算出工程S30と、を備える。
【0056】
本発明に係る中性子線測定方法によれば、上述の中性子線測定装置100と同様な作用・効果を得ることができる。
【0057】
中性子線測定方法は、第1の検出結果取得工程S10では、ターゲット10への荷電粒子線の第1の照射の時に、第1の検出器11が中性子線の量を検出し、第2の検出結果取得工程S20では、ターゲット10への荷電粒子線の第2の照射の時に、熱中性子線をカットするフィルタを取り付けた状態の第1の検出器11が中性子線の量を検出してよい。このように、第1の検出器11に対してフィルタ13を着脱し、且つ、第1の照射及び第2の照射を行うことにより、第1の検出結果と第2の検出結果を一つの第1の検出器11で得ることができる。
【0058】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
例えば、上述の実施形態では、第1の検出部16と第2の検出部17を一つの第1の検出器11によって兼用していた。これに代えて、第1の検出部16として機能する一つの検出器を設け、第2の検出部17として機能する一つの検出器を設けてよい。この場合は、1回の照射で第1の検出結果及び第2の検出結果を同時に取得することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…中性子捕捉療法装置、10…ターゲット、11…第1の検出器、12…第2の検出器、13…フィルタ、16…第1の検出部、17…第2の検出部、18…第3の検出部、31…検出結果取得部、32…算出部、33…判定部、34…記憶部、100…中性子線測定装置。