(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】冊子用情報記録シート
(51)【国際特許分類】
B42D 25/24 20140101AFI20220607BHJP
B42D 25/435 20140101ALI20220607BHJP
B42D 25/328 20140101ALI20220607BHJP
B42B 5/00 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B42D25/24
B42D25/435
B42D25/328 120
B42B5/00
(21)【出願番号】P 2018130232
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391018341
【氏名又は名称】株式会社NBCメッシュテック
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【氏名又は名称】山本 優
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【氏名又は名称】岩田 康利
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕治
(72)【発明者】
【氏名】藤森 康臣
(72)【発明者】
【氏名】小川 純生
(72)【発明者】
【氏名】藤林 城司
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠人
(72)【発明者】
【氏名】川端下 栄治
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】大石 正三
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205917(JP,A)
【文献】特許第5173085(JP,B1)
【文献】特開2006-212838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42B 2/00- 9/06
B42C 1/00-99/00
B42D 1/00-25/485
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏に開口する網目を有する軟性の網状シート層と、
前記網状シート層を表裏から挟むように重ね合わされて、該網状シート層の網目を介して相互に熱融着される、該網状シート層よりも耐熱温度の低い合成樹脂からなる表裏一対の矩形状基体シート層と、
表裏の前記矩形状基体シート層の表面に夫々設けられ、レーザー光の照射により所望の情報を記録可能なレーザー記録層と、
前記レーザー記録層を覆うように、表裏の前記矩形状基体シート層の各表面上に夫々設けられる保護層と
を備え、
前記網状シート層は、重ね合わされる前記表裏の矩形状基体シート層の略全域に亘って介装される介装部と、該矩形状基体シート層の一側縁から外方に延出される帯状の綴じ代部とを備えてなるものであることを特徴とする冊子用情報記録シート。
【請求項2】
網状シート層は、介装部における網目の開口率が、綴じ代部における網目の開口率に比して大きいものであることを特徴とする請求項1に記載の冊子用情報記録シート。
【請求項3】
網状シート層は、綴じ代部を延出した側縁に沿った縦方向の縦糸と、該縦方向と略直交する方向の横糸とからなる織物であって、
介装部は、単位幅当りの前記縦糸の本数が、綴じ代部に比して少ないものであることを特徴とする請求項2に記載の冊子用情報記録シート。
【請求項4】
網状シート層を構成する縦糸が熱融着糸であると共に、該網状シート層を構成する横糸が、所定割合で配した熱融着糸と液晶ポリマー糸とであることを特徴とする請求項3に記載に冊子用情報記録シート。
【請求項5】
矩形状基体シート層が、PET-Gとポリカーボネートとを含む耐熱PET-Gからなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の冊子用情報記録シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポート等の冊子のページを構成するシートであって、レーザー光により所定情報を記録可能な冊子用情報記録シートに関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートの、個人情報が記録されるページには、高いセキュリティ性が要求されており、近年、レーザー光により該個人情報を記録可能とする構成が提案されている。例えば、特許文献1には、ポリカーボネート(PC)からなる表裏のシートがラミネートされたデータシートと、該表裏のシートの一側部に挟まれて、接着剤により該シートに接着されたアタッチメント部分とを備えたページが開示されている。この従来構成のページは、データシートに、レーザー光により情報を記録できると共に、アタッチメント部分を他のページと綴じ合わせることにより、冊子を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザー光により情報を記録できるページは、上述したように、ポリカーボネート等の合成樹脂からなるシートで構成されている。こうした合成樹脂製のシートは、破断歪みが高く、比較的大きく曲げ変形できることから、パスポート等の冊子に要求される屈曲性を満足することができ得る。
しかしながら、冊子は、使用者がズボンのポケットに入れて携帯することもあり、想定を超える曲げ変形を生じてしまうことがあり得る。さらには、鞄などに入れている場合にも、他の物品などにより大きな曲げ変形を生じてしまうことや、局所的に大きく屈曲してしまうこと等もあり得る。このように大きな曲げ変形を生じた際に、破断歪みを超えると、合成樹脂製のシートが割れてしまい、落としたり、割れた部分でケガする虞もある。特に、パスポートの個人情報を記録したページの場合には、割れて落としてしまうと、該個人情報が不正に使用される虞がある。こうしたことから、破断歪みを超える曲げ変形を生じて割れてしまった場合であっても、冊子から分離しない構成が求められる。
【0005】
本発明は、破断歪みを超える曲げ変形を生じて割れてしまった場合にも、分離せずに、落下を防止し得る冊子用情報記録シートを提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表裏に開口する網目を有する軟性の網状シート層と、前記網状シート層を表裏から挟むように重ね合わされて、該網状シート層の網目を介して相互に熱融着される、該網状シート層よりも耐熱温度の低い合成樹脂からなる表裏一対の矩形状基体シート層と、表裏の前記矩形状基体シート層の表面に夫々設けられ、レーザー光の照射により所望の情報を記録可能なレーザー記録層と、前記レーザー記録層を覆うように、表裏の前記矩形状基体シート層の各表面上に夫々設けられる保護層とを備え、前記網状シート層は、重ね合わされる前記表裏の矩形状基体シート層の略全域に亘って介装される介装部と、該矩形状基体シート層の一側縁から外方に延出される帯状の綴じ代部とを備えてなるものであることを特徴とする冊子用情報記録シートである。
【0007】
ここで、保護層は、レーザー光を透過でき、かつ該レーザー光により影響をほとんど受けないものであることが好適であり、さらに、レーザー記録層に記録された情報を視認可能とする透明なものや透光性を有するものが好適である。
【0008】
かかる構成にあっては、網状シート層の耐熱温度が矩形状基体シート層よりも高いことから、表裏の矩形状基体シート層が熱融着された状態で、網状シート層の形態が維持される。そのため、矩形状基体シート層の破断歪みを超える曲げ変形が生じたことによって、該矩形状基体シート層が割れてしまった場合にも、軟性の網状シート層が破断し難く、該網状シート層によって、矩形状基体シート層の破片が分離してしまうことを防止できる。ここで、網状シートは、その介装部が矩形状基体シートの全域に亘って介装されていることから、該矩形状基体シートのいずれの部位に割れを生じても、破片の分離を防止できる。そして、網状シート層の綴じ代部を綴じ合わせることにより冊子を構成することから、該冊子では、該網状シート層によって前記破片が落ちてしまうことを防止できる。
したがって、本構成によれば、パスポート等に使用された場合に、割れた部位を落とすことで情報が不正使用されてしまうことを、可及的に抑制でき、セキュリティ性を飛躍的に向上できる。さらに、パスポートに限らず、割れた破片が分離しないことから、分離した破片により使用者がケガするという事故を、可及的に抑制できるという優れた利点もある。
【0009】
また、本構成では、軟性の網状シート層を挟んで表裏の矩形状基体シート層が熱融着されたものであることから、該網状シート層によって、曲げ変形における破断歪みが向上する。これにより、本構成の冊子用情報記録シート層は、高い屈曲性を有し、曲げ変形による破断を防止する効果が向上する。そのため、前記のようにズボンのポケットに入れて携帯した場合などによる割れの発生を抑制する効果が向上できる。
【0010】
さらに、本構成は、表裏の矩形状基体シート層を、網状シート層の網目を介して相互に熱融着したものであるから、該矩形状基体シート層相互が強固に接合されると共に、網状シート層も表裏の矩形状基体シート層により強く固定される。そのため、表裏の矩形状基体シート層が剥がれ難く、その間に介装された網状シート部が、矩形状基体シートから剥がれ難い。
【0011】
上述した本発明の冊子用情報記録シートにあって、網状シート層は、介装部における網目の開口率が、綴じ代部における網目の開口率に比して大きいものである構成が提案される。
【0012】
かかる構成にあっては、介装部における網目の開口率が大きいことから、表裏の矩形状基体シート層を相互に熱融着する領域が広く、一層強固に接合することができる。そのため、表裏の矩形状基体シート層と網状シート層とを一層剥がれ難くできる。さらに、破断歪みを超える大きな曲げ変形を生じた場合に、複数に割れてしまうことを抑制でき、破片の分離を防止するという本発明の作用効果が一層安定して発揮され得る。
一方、綴じ代部における網目の開口率が小さいことから、該綴じ代部を高強度化できる。これにより、綴じ代部を綴じ合わせて冊子を構成した場合に、該綴じ代部での破損を防止する効果が向上する。
【0013】
ここで、介装部における網目の開口率としては、60%以上が好適であり、さらには65%以上が好ましい。そして、開口率が大きくなるにつれて、介装部の強度が低下することから、該強度を考慮すれば、80%以下が好適であり、さらには75%以下が好ましい。 一方、綴じ代部における網目の開口率としては、65%以下が好適である。そして、綴じ代部の開口率は、20%以上が好適である。尚、こうした介装部と綴じ代部との夫々の開口率は、前記した好適な開口率の範囲内で、介装部が綴じ代部よりも大きくなるように夫々定められる。
【0014】
上述した本発明の冊子用情報記録シートにあって、網状シート層は、綴じ代部を延出した側縁に沿った縦方向の縦糸と、該縦方向と略直交する方向の横糸とからなる織物であって、介装部は、単位幅当りの前記縦糸の本数が、綴じ代部に比して少ないものである構成が提案される。
【0015】
かかる構成にあっては、介装部の、縦糸の単位幅当りの本数を、綴じ代部に比して少なくすることによって、該介装部の開口率が綴じ代部に比して大きくなっている。
詳述すると、介装部と綴じ代部とは横方向で並設されることから、縦糸が、該介装部と綴じ代部とに夫々配される。介装部と綴じ代部とで縦糸の本数を変えることは比較的容易である一方、横糸は、介装部と綴じ代部とに跨がって配されることから、両者で本数を変えることが難しい。また、横糸は、横方向の引張強度と曲げ強度とを支えるものであることから、介装部と綴じ代部とに跨がって配することにより、該綴じ代部における引張強度と曲げ強度とを安定して発揮できる。そのため、冊子とした状態で、綴じ代部における所望の強度が発揮され得る。こうしたことから、介装部の縦糸の本数を少なくすることにより、綴じ代部が所望の強度を保ちつつ、該介装部の開口率を綴じ代部に比して大きくする構成となる。尚、縦糸の本数を調整することにより、介装部と綴じ代部との夫々で所望の開口率を設定することも可能である。
【0016】
上述した本発明の冊子用情報記録シートにあって、網状シート層を構成する縦糸が熱融着糸であると共に、該網状シート層を構成する横糸が、所定割合で配した熱融着糸と液晶ポリマー糸とである構成が提案される。
【0017】
かかる構成にあっては、縦糸の熱融着糸と横糸の熱融着糸とが交点で熱融着されて、比較的強く接着されることから、縦糸と横糸とのほつれを抑制する効果が向上できる。これにより、網状シート層の引張強度と曲げ強度とが安定して発揮できると共に、網目の形態を安定して保つことができる。
さらに、液晶ポリマー糸は高い強度を有することから、該液晶ポリマー糸を横糸に配することにより、網状シート層の横方向の強度(引張強度と曲げ強度)を向上できる。これにより、冊子とした場合に、綴じ代部での破損を抑制する効果が向上する。
【0018】
上述した本発明の冊子用情報記録シートにあって、矩形状基体シート層が、PET-Gとポリカーボネートとを含む耐熱PET-Gからなるものである構成が提案される。ここで、PET-Gは、シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0019】
矩形状基体シート層を構成する耐熱PET-Gは、PET-Gとポリカーボネート(以下、PCという)とを含むものであり、耐熱温度が一般的なPET-Gよりも高い(PCと同等の耐熱温度である)。本構成の矩形状基体シート層は、耐熱PET-Gの耐熱温度である110~140度の加熱により熱融着することができるから、加熱機能を有する一般的なプレス機を用いることによって比較的容易に熱融着することができる。また、耐熱PET-Gよりも耐熱温度が高く且つ網状シート層に適用可能な素材(前記した熱融着糸や液晶ポリマー糸など)が比較的多いことから、前記した強度などの要求特性を有する網状シート層を比較的容易に得ることができる。換言すれば、綴じ代部の要求特性に合う網状シート層を製造または選択する幅が広がる。
また、耐熱PET-Gからなる矩形状基体シート層は、UV蛍光インキによる印刷、マイクロ文字印刷、OVIインキによる印刷、昇華カラープリントを比較的容易かつ安定して実施可能である。さらには、マスク方式を用いた部分透明化も実施可能である。このように本構成によれば、高セキュリティ化のための様々な手法を容易に適用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冊子用情報記録シートは、上述したように、網状シート層の網目を介して表裏の矩形状基体シート層が熱融着されてなるものであり、該熱融着後も網状シート層の形態が維持されることから、矩形状基体シートの破断歪みを超える曲げ変形により割れてしまった場合にも、該網状シート層によって該矩形状基体シート層の破片の分離を防止できる。これにより、網状シート層の綴じ代部を綴じた冊子では、前記割れにより生じた破片を落としてしまうことを防止できることから、該破片の落下による情報流出を可及的に抑制できる。具体的に言えば、パスポートに使用された場合に、破片を落とすことで個人情報が不正使用されてしまうという問題を、本構成によれば可及的に抑制でき、セキュリティ性を飛躍的に向上できる。
さらに、網状シート層により曲げ変形における破断歪みを向上できることから、高い屈曲性を有し、曲げ変形による破断を防止する効果が向上するため、前記割れの発生を一層防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明にかかる冊子用情報記録シート1の正面図である。
【
図2】冊子用情報記録シート1の断面拡大図である。
【
図3】冊子用情報記録シート1の分解斜視図である。
【
図4】網状シート層11の、(A)介装部21の拡大図と、(B)綴じ代部22の拡大図である。
【
図5】冊子用情報記録シート1の、個人情報57を記録後の正面図である。
【
図7】別例の網状シート層における介装部61の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明にかかる実施形態を添付図面に従って以下に説明する。
本実施例の冊子用情報記録シート1は、
図1に示すように、表面(及び裏面)に所望の情報が印刷される矩形状のページ主体2と、該ページ主体2の一側縁に連成された帯状の綴じ代3とを備えてなる。本実施例では、冊子用情報記録シート1を、個人情報57を印刷するパスポートのページに適用するシートとして例示する(
図5参照)。すなわち、冊子用情報記録シート1を、他のページのシートと重ね合わせて、夫々の綴じ代部を綴じ合わせることにより、パスポートとなる(図示せず)。
【0023】
尚、本実施例にあって、前記綴じ代3を連成するページ主体2の一側縁(
図1中の左側縁)に沿った方向(綴じ代3の長手方向)が縦方向であり、該一側縁に直行する方向が横方向である。
【0024】
図2,3に示すように、冊子用情報記録シート1は、網状シート層11と、該網状シート層11の表裏に重ね合わされた一対の基体シート層12,12と、各基体シート層12,12の表面(重ね合わされた際に外側に位置する外表面)に夫々設けられたレーザー記録層13,13と、各レーザー記録層13を夫々覆う保護層14,14とを備えてなる。そして、基体シート層12は、パスポートのページサイズに合わせた矩形状に形成されており、レーザー記録層13と保護層14とは、基体シート層12の表面(前記外表面)全域を覆うように設けられている。一方、網状シート層11は、表裏の基体シート層12,12に挟まれる矩形状の介装部21と、該基体シート層12の一側縁から外方に延出する帯状の綴じ代部22とから構成される。そして、介装部21は、基体シート層12と略同じ矩形状を成し、表裏の基体シート層12を重ね合わせた全域に亘って介装されている。尚、基体シート層12が、本発明にかかる矩形状基体シート層に相当する。
【0025】
こうした網状シート層11の介装部21、基体シート層12,12、レーザー記録層13,13、および保護層14,14による積層構造により、前記したページ主体2が構成され、網状シート層11の綴じ代部22により、前記した綴じ代3が構成されている。
【0026】
基体シート層12は、耐熱PET-Gからなる極薄厚シート(以下、基体シートという)により構成され、不透明な有色または白色のものが用いられる。本実施例では、白色の耐熱PET-Gからなる基体シートを用いており、約200μmの該基体シートにより前記基体シート層12を構成している。ここで、基体シートには、その外表面(本実施例では、冊子用情報記録シート1の表面に相当)に、パスポートのページとして必要なデザイン図柄やセキュリティ情報などが予め印刷される。セキュリティ情報としては、例えば、UV蛍光インキによる印刷、マイクロ文字印刷、OVI印刷、昇華カラープリントなどのいずれか一又は複数が利用される。こうしたセキュリティ情報は、基体シートが耐熱PET-Gであることから、比較的容易に印刷することが可能である。例えば、本実施例では、
図1,3に示すように、UV蛍光インキにより印刷したセキュリティ図柄51と、マイクロ文字を印刷したセキュリティ図柄52と、昇華カラープリントによるセキュリティ図柄53とが印刷されている。さらに、図示しない背景画像や、国籍や氏名等の記載欄を示す文字54などが印刷される。
【0027】
ここで、本実施例の耐熱PET-Gは、PET-GにPCを配合してなるもの(PET-GとPCとの共重合体)であり、該耐熱PET-Gからなる基体シートには、具体的な製品として、例えば、太平化学製品株式会社の製品(製品番号:CG730M)が用いられる。尚、基体シートの耐熱PET-Gは、後述するレーザー記録層13の耐熱PET-Gと組成が異なり、レーザー光の照射により発色しない。
また、前記のUV蛍光インキによる印刷、マイクロ文字印刷、OVI印刷、および昇華カラープリントは、従来から公知のものを適用できることから、詳細については省略する。
【0028】
前記のレーザー記録層13は、レーザー光の照射により炭化される樹脂フィルムからなるものであり、該樹脂フィルムには、例えば、ポリカーボネート(PC)、耐熱PET-G、ポリ塩化ビニル(PVC)等からなる樹脂フィルムが用いられる。本実施例では、レーザー発色性を有する耐熱PET-Gからなる樹脂フィルム(以下、発色フィルムという)を用いており、約100μmの発色フィルムによりレーザー記録層13が形成される。この発色フィルムの耐熱PET-Gは、レーザー光を吸収するエネルギー吸収剤を含むポリカーボネートと、共重合ポリエステルとを含有した樹脂であり、レーザー光の照射により発色する。そして、かかる発色フィルムからなるレーザー記録層13は、レーザー光が照射されることにより、照射された部位が厚み方向全体に炭化して発色する。これにより、
図5に示すように、国籍や氏名などの個人情報57を印字できる。
ここで、レーザー光は、位相が揃い易く収束性に優れていることから、狭い面積に高密度のエネルギーを集中させて照射できる。そのため、比較的細かい文字や図柄を精度良く印すことができると共に、レーザー記録層13の、レーザー光の照射部位が、その厚み方向で全体的に炭化されることから、該照射部位と非照射部位とのコントラストが高く、文字や図柄を鮮明に印すことができる。特に、レーザー記録層13は、レーザー光により炭化し易い発色フィルムにより構成されることから、該レーザー光の照射により高精度かつ鮮明な文字や図柄を印すことができる。尚、レーザー光には、イットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザー(YAGレーザー)を用いており、ネオジムをドープしたNd:YAGレーザーを適用している。
【0029】
前記の保護層14は、透明な樹脂フィルムからなるものであり、該樹脂フィルムには、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、グリコール変性ポリエステルなどを主成分とする樹脂からなるフィルムが用いられる。本実施例では、耐熱PET-Gを主成分とする透明な樹脂フィルム(以下、保護フィルムという)を用いており、約100μmの保護フィルムにより保護層14が形成される。尚、保護フィルムには、具体的な製品として、例えば、太平化学製品株式会社の製品(製品番号:CG030M-X)が用いられる。この保護フィルムの耐熱PET-Gは、前述したレーザー記録層13の耐熱PET-Gと組成が異なり、レーザー光の照射により発色しない。
【0030】
また、前記の網状シート層11は、表裏に開口する網目を有する網状シートからなるものであり(
図4参照)、該網状シートは、柔軟性と前記した耐熱PET-G製の基体シート層12よりも耐熱温度が高い特性とを有する。この網状シートには、例えば、複数の開口を有する編物シート又は不織布シートなどを適用可能である。本実施例では、ポリアミドを主成分とする熱融着糸(以下、PA融着糸という)41a,41bと液晶ポリマー糸42とによる織物構造(
図4参照)の網状シートを用いている。ここで、本実施例のPA融着糸41a,41bは、線径が約100μmのものを用いており、液晶ポリマー糸42は、繊度が約110dtexのものを用いている。そして、網状シート層11は、基体シート層12(耐熱PET-G)を溶融可能な温度(140~160度)で加熱しても、PA融着糸と液晶ポリマー糸とが溶融しないことから、網状の構造(形態)を維持できる(換言すると、網状シート層11は、基体シート層12よりも耐熱温度が高い)。
さらに、網状シートは、
図2,3に示すように、表裏の基体シート層12間に介装される前記介装部21と、該基体シート層12の一側縁から延出する前記綴じ代部22とを備えており、介装部21と綴じ代部22とにおける網目45の開口率が相互に異なる編物構造となっている(
図4参照)。
【0031】
詳述すると、本実施例の網状シートは、
図4に示すように、PA融着糸41aを配した縦糸と、PA融着糸41bおよび液晶ポリマー糸42を所定割合で配した横糸とを平織りした織物構造からなり、縦糸のPA融着糸41aと横糸のPA融着糸41bとの交点がヒートセット加工により熱融着されている。そして、横糸は、2本のPA融着糸41bと1本の液晶ポリマー糸42とを交互に配するようにして、該PA融着糸41bと液晶ポリマー糸42との比率を2対1としている。また、本実施例では、縦糸(PA融着糸41a)の単位幅(1インチ)当りの本数と横糸(PA融着糸41b,液晶ポリマー糸42)の単位幅(1インチ)当りの本数とを夫々定めており、これら単位幅当りの本数によって網目45の開口率が決まっている。本実施例の場合、横糸(PA融着糸41b,液晶ポリマー糸42)の単位幅当りの本数が、網状シートの全体で同じである一方、縦糸(PA融着糸41a)の単位幅当りの本数が、綴じ代部22に比して介装部21で少なくなっていることから、
図4(A)に示す介装部21では、
図4(B)に示す綴じ代部22に比して開口率が大きい。具体的には、横糸(PA融着糸41b,液晶ポリマー糸42)の単位幅当りの本数を、網状シート全域で40本とし、該横糸を略均等間隔で配している。縦糸(PA融着糸41a)の単位幅当りの本数を、介装部21で40本とし、綴じ代部22で60本とする。そして、介装部21と綴じ代部22とで、夫々の縦糸を略均等間隔で配している。こうした縦糸と横糸との織物構造により、介装部21における網目45の開口サイズが、綴じ代部22における開口サイズよりも大きく、該介装部21の開口率(約70%)が綴じ代部22の開口率(約65%)よりも大きい
(図6参照)。
【0032】
こうした網状シート、基体シート、発色フィルム、および保護フィルムを所定順で重ね合わせて(
図3参照)、所定温度で加熱しながらプレス加工することにより、
図1に示す本実施例の冊子用情報記録シート1を得る。この冊子用情報記録シート1は、前述のように、網状シートからなる網状シート層11、表裏の基体シートからなる基体シート層12,12、発色フィルムからなるレーザー記録層13,13、および保護フィルムからなる保護層14,14を備えた構成となる。そして、基体シートの表面(外表面)に予め印刷された前記デザイン図柄やセキュリティ情報(セキュリティ図柄51~53)が、レーザー記録層13と保護層14とを介して視認可能であると共に、前記したレーザー光を照射することにより、
図5に示すように該レーザー記録層13に所望の個人情報57を印すことができる。本実施例の冊子用情報記録シート1は、その厚みが約750μmである。
【0033】
ここで、冊子用情報記録シート1の製造方法について、以下に説明する。
冊子用情報記録シート1の製造は、主に、基体シートに予め前記セキュリティ図柄51~53などを印す印刷工程と、前記したプレス加工を行うプレス工程と、所定のサイズに整える裁断工程とを順次行う。印刷工程では、前述したように、基体シートの表面(外表面)に所定のデザインやセキュリティ情報(セキュリティ図柄51~53)を印刷する。裁断工程は、プレス加工後に、パスポートに合わせた所定サイズに切断する。こうした印刷工程と裁断工程とは、従来と同様の工程を適用できることから、詳細を省略する。
【0034】
前記プレス工程では、前述したように、網状シート、基体シート、発色フィルム、および保護フィルムを重ね合わせて(
図3参照)、所定温度(例えば、150度)で加熱しつつプレス加工を行う。すなわち、網状シートの表裏両側に、二枚の基体シートを夫々重ね合わせ、さらに、表裏の基体シートを夫々覆うように発色フィルムと保護フィルムとを重ね合わせる。ここで、網状シートは、前記介装部21と綴じ代部22とを備えた構成であり、該介装部21の表裏に、前記基体シート、発色フィルム、および保護フィルムを重ね合わせ、該綴じ代部22には、これらを重ねない(
図2参照)。こうして重ね合わせた状態で、基体シートの耐熱温度に基づいて設定された所定温度(150度)で加熱しつつ、所定圧力によりプレス加工する。このプレス加工により、網状シートの介装部21の表裏に積層された基体シートが、該介装部21の網目45を介して相互に熱融着する。そして、網状シートの表裏両側で夫々重ね合わされた二枚の基体シートが熱融着すると共に、該基体シートと発色フィルムとが熱融着し、該発色フィルムと保護フィルムとが熱融着する。こうして重ね合わせた各シートおよびフィルムが接着されて一体化される。ここで、網状シートの介装部21は、前記のように、開口サイズが比較的大きいことから、表裏の基体シートの熱融着領域も比較的大きくなり、十分な接着強さが得られる。また、プレス加工における所定温度(150度)では、網状シートのPA熱融着糸と液晶ポリマー糸とが溶融しないことから、プレス加工後の状態で、網状シートの構造(平織り構造)が保たれる。
こうしたプレス加工によって、網状シートからなる網状シート層11と、表裏の基体シートからなる基体シート層12,12と、発色フィルムからなるレーザー記録層13,13と、保護フィルムからなる保護層14,14とが形成される。尚、このプレス加工後に前記した裁断工程を行うことにより、ページ主体2の所望サイズに整えられると共に、網状シートの綴じ代部22を所定サイズに切断することにより、綴じ代3が所望サイズに整えられる。
【0035】
本実施例にあっては、上述した製造方法によって、レーザー記録層13に個人情報が記録されていない状態の冊子用情報記録シート1を製造する(
図1)。そして、この冊子用情報記録シート1を、パスポートを構成する他のページと重ね合わせ、該冊子用情報記録シート1の綴じ代3と他のページの綴じ代とを綴じ合わせことにより、パスポートが形成される。ここで、綴じ代3は、前記のように、平織り構造の綴じ代部22により構成されており、網目45の開口率が比較的小さく且つ横糸に高強度の液晶ポリマー糸42を配していることから、綴じ代としての所望の強度と柔軟性とを有している。これにより、ページを捲る取扱性の良さと、高い耐久性とを実現できる。
【0036】
こうしてパスポートを構成した冊子用情報記録シート1のページ主体2には、所定のレーザー照射装置を用いて、レーザー記録層13に個人情報を記録できる。すなわち、前記したNd:YAGレーザーを照射するレーザー照射装置によって、冊子用情報記録シート1の表面上から、レーザー光を照射し、レーザー記録層13の所定位置に、
図5に示すように氏名や国籍などの個人情報57を印字する。ここで、レーザー光は、保護層14を透過して、レーザー記録層13に照射され、該レーザー記録層13の照射部位を炭化する。このレーザー光を、個人情報57の印字パターンに従って照射制御することにより、所望の個人情報57をレーザー記憶層13に正確に印字できる。このようにレーザー記録層13に個人情報57を印字することにより、該個人情報57の示す個人のパスポートとして利用され得る。
【0037】
次に、本実施例の冊子用情報記録シート1の特徴をまとめて説明する。
本実施例の冊子用情報記録シート1にあっては、前述したように、柔軟性を有する網状シート層11の表裏に、基体シート層12,12と、レーザー記録層13,13と、保護層14,14とを重ね合わせたものであり、これら各層が積層されたページ主体2と網状シート層11の綴じ代部22からなる綴じ代3とを備えてなる。そして、ページ主体2は、基体シート層12、レーザー記録層13、および保護層14が極薄厚の樹脂製であることから、曲げ変形可能な硬性シートであり、冊子に必要な所望の屈曲性(曲げ変形可能な性能)を有している。さらに、綴じ代3は、柔軟性を有する網状シート層11の綴じ代部22により構成されていることから、ページを捲り易いという冊子のページに必要な性能を有している。
【0038】
そして、本実施例の構成は、レーザー光の照射により、レーザー記録層13に所定情報を精度良く印字できると共に、該レーザー記録層13に印した情報を改竄不能であることから、高いセキュリティ性を有し、パスポートの個人情報を印すページに好適に用いられ得る。一方、基体シート層12が、耐熱PET-Gにより形成されていることから、UV蛍光インキによるセキュリティ図柄51と、マイクロ文字のセキュリティ図柄52と、昇華カラープリントによるセキュリティ図柄53とを比較的容易かつ安定して印刷することができる。この他に、OVI印刷なども同様に比較的容易かつ安定して行い得る。こうした様々な偽造防止印刷技術を適用できることから、セキュリティ性を一層向上することができるという優れた利点を有する。さらに、耐熱PET-Gの基体シート層12には、予め所定のデザイン図柄を印刷することも容易であることから、様々な仕様のページに応じて所望のデザインや共通情報などを印刷できる。
【0039】
また、網状シート層11は、網目45を有する平織り構造からなり、表裏の基体シート層12,12の全域に亘って介装される介装部21と、前記綴じ代部22と備えてなる。そして、介装部21は、縦糸(PA融着糸41a)の単位幅当りの本数を綴じ代部22よりも少なくして、網目45の開口率を該綴じ代部22よりも大きくしたものであるから、表裏の基体シート層12,12が網目45を介して熱融着によりしっかりと接着され、剥がれ難い。
さらに、網状シート層11の耐熱温度が基体シート層12よりも高いことから、基体シート層12の熱融着後も、介装部21の平織り構造が保たれ得る。こうした網状シート層11の介装部21によって、ページ主体2は、曲げ変形による破断歪みが向上する。そのため、本実施例の冊子用情報記録シート1をパスポートの1ページとした際に、該パスポートをポケットに入れた状態で比較的大きく曲げ変形した場合や、鞄などに入れた状態で局所的に曲げ変形した場合などでも、割れ等の破壊を抑制する効果が向上する。
さらにまた、前記のように、熱融着後も介装部21の平織り構造が保たれることから、ページ主体2を構成する基体シート層12が割れてしまった場合に、該介装部21が切断されずに残り易く、割れた破片が分離してしまうことを、該介装部21によって防止でき得る。そして、分離の防止によって、破片を落としてしまうことを防止できる。ここで、本実施例の冊子用情報記録シート1は、パスポートの個人情報57を記録するページに使用するものであることから、パスポートで使用中にページ主体2が割れた場合にも、割れた破片が分離せずにパスポートと繋がった状態で保たれ得る。これにより、割れた破片を落とすことで、該破片に記録された個人情報が紛失してしまうことを防止できる。さらに、破片が分離しないことから、割れた部位に触れることでケガをしてしまうことも可及的に抑制できる。
このように本実施例の冊子用情報記録シート1は、剥離の発生と曲げ変形による割れの発生とを可及的に抑制することができることに加えて、曲げ変形により割れを生じた場合に、割れた破片が分離してしまうことを防止でき、該破片の落下による個人情報の紛失を可及的に抑制できる。
【0040】
また、網状シート層11の綴じ代部22は、高強度の液晶ポリマー糸42を所定割合で配していることから、横方向の曲げや引張などに対する強度が向上し、綴じ代3が、パスポートとしての所望の強さを耐久性とを発揮し得る。これにより、綴じ合わされたパスポートの状態で、使用中に、綴じ代3が破損してしまうことを可及的に抑制することができる。
尚、液晶ポリマー糸とPA融着糸(熱融着糸)との割合は1:5~5:1の範囲とすることが好適であり、この範囲とすることによって、前記した作用効果を発揮し得る。液晶ポリマー糸の割合がこの範囲よりも低くなると強度が不足する一方、熱融着糸の割合がこの範囲よりも低くなると、目寄れが生じて網状シートの形状を保ち難くなる。
【0041】
本発明にあっては、前述した実施例に限定されるものではなく、前述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。以下に、本発明にかかる別例について例示する。
【0042】
前述した実施例の構成は、網状シート層11、基体シート層12、レーザー記録層13、および保護層14を積層してなるものであるが、これに限らず、さらに別の層を備えた構成であっても良い。例えば、網状シート層11の表裏いずれか一側に、ICインレイ(ICチップ)を埋め込んだフィルムを重ね合わせたインレイ組込層を重ね合わせた構成とすることもできる。このインレイ組込層を構成するフィルムとしては、二枚の耐熱PET-G樹脂フィルムの間にICインレイを挟んだものが適用できる。かかる別例の構成によれば、ICインレイにセキュリティ情報を記憶することによって、一層高いセキュリティ性を有するものとなる。
【0043】
また、前述の実施例の構成では、表裏の基体シート層12が、それぞれ一枚の基体シートにより構成されるものとしたが、これに限らず、複数の基体シートを重ね合わせることにより夫々の基体シート層を構成するものであっても良い。このように複数の基体シートを重ね合わせる構成では、実施例よりも薄厚の基体シートが好適に用いられる。そして、重ね合わせる枚数としては、二枚、三枚、五枚など適宜設定可能である。また、表裏の基体シート層が、同じ枚数の基体シートを重ね合わせる構成に限らず、相互に異なる枚数の基体シートを重ね合わせることも可能であるが、いずれであっても、表裏の基体シート層が同じ厚み(又は、ほぼ同じ厚み)とすることが好適である。このように基体シート層は、一又は複数の基体シートにより構成されるものである。
同様に、保護層14は、一枚の樹脂フィルムからなるものに限らず、複数枚の樹脂フィルムからなるものであっても良い。
【0044】
また、実施例では、基体シート層12を構成する基体シートが、PET-GとPCとの共重合体である耐熱PET―Gからなるものとしたが、これに限らず、PET-G製の極薄フィルムとPC製の極薄フィルムとを積層して一体化してなるものであっても良い。例えば、PET-G製の極薄フィルムの表裏にPC製の極薄フィルムを積層した三菱ケミカル株式会社のもの(製品番号:PG-WHT-HC)を適用することも可能である。
同様に、保護層14を構成する保護フィルムが、PET-G製の極薄フィルムとPC製の極薄フィルムとを積層して一体化してなるものであっても良い。例えば、三菱ケミカル株式会社のもの(製品番号:PG-MCT)を適用することも可能である。
【0045】
また、レーザー記録層と保護層とは、実施例の限らず、他の樹脂製フィルムを適用することも可能である。例えば、レーザー記録層を、PCやPVCからなる発光フィルムにより構成するものとしても良いし、保護層を、PCからなる保護フィルムにより構成するものとしても良い。同様に、基体シート層は、耐熱PET―Gの樹脂製に限らず、PET-G製であっても良い。さらには、基体シート層を、他の樹脂製(PET-G以外の樹脂製)とすることも可能である。
【0046】
また、前述の実施例では、レーザー記録層13を、基体シート層12の全面に設けたものであるが、これに限らず、基体シート層12の一部領域に設けたものであっても良い。すなわち、レーザー光により情報を記録できる領域が限定された構成とすることもできる。
【0047】
また、網状シート層は、実施例に限らず、他の熱融着糸や液晶ポリマー糸を用いた構成であっても良い。ここで、他の熱融着糸としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系やポリエチレンテレフタレートなどの熱融着糸が適用可能である。
さらに、縦糸の単位幅当りの本数や、横糸の単位幅当りの本数は、適宜変更して設定することができる。これら縦糸や横糸の本数は、所望の開口率に合わせて設定変更することが好適である。すなわち、介装部と綴じ代部との各開口率も、適宜変更した設定することが可能である。ここで、単位幅当りの本数としては、介装部で20本以上かつ60本以下とし、綴じ代部で30本以上かつ90本以下とすると共に、該介装部よりも綴じ代部の本数を多くすることが好適である。線径や開口率にもよるが、単位幅当りの本数が前記本数より多くなると、基体シート層が剥離し易くなり、前記本数より少なくなると、網状シートの強度が低下する傾向にある。
さらにまた、熱融着糸の線径は開口率などに合わせて適宜変更して設定することができるが、該線径が50μm以上かつ200μm以下のものが好適に用い得る。ここで、開口率にもよるが、線径が50μm未満であると、強度が低くなり、200μmより大きいと、基体シート同士を熱融着し難く、熱融着しても剥離し易くなる。
【0048】
また、前述の実施例の構成では、網状シートの縦糸と横糸とをそれぞれ略均等間隔で配設したもの(
図4(A)参照)であるが、これに限らず、該間隔は適宜設定変更することが可能である。例えば、
図7に示すように、介装部61の縦糸(PA融着糸41a)を、広い間隔と狭い間隔とで交互に配する構成とすることができる。こうした別例の介装部61では、開口サイズの大きい網目45と小さい網目45とが横方向に交互に並ぶ構造となる。かかる構成にあっても、縦糸の単位幅当りの本数が前記実施例と同じであれば、介装部61の開口率(約70%)も同じとなることから、実施例と同様の作用効果を奏する。尚、こうした別例の網状シートは、例えば、縦糸(PA融着糸41a)を、網状シート全域で単位幅(1インチ)当りの本数を60本とするように形成した後に、介装部61の縦糸を、3本に1本の割合で間引きすることにより、該介装部61を形成できる。
【0049】
また、前述の実施例では、網状シート層11が、平織り構造の網状シートからなるものとしたが、これに限らず、他の織り構造(例えば、綾織りなど)であっても良いし、網目を開口形成した不織布からなるものであっても良い。
【0050】
また、前述の実施例では、基体シート層12にセキュリティ図柄51~53を印刷した構成であるが、この他として、例えば、レーザー記録層13にセキュリティ図柄を印刷する構成とすることも可能である。例えば、レーザー記録層13に、CLI/MLI印刷にやタクタイル印刷などにより、セキュリティ図柄を印刷するものとできる。
【符号の説明】
【0051】
1 冊子用情報記録シート
11 網状シート層
12 基体シート層(矩形状基体シート層)
13 レーザー記録層
14 保護層
21 介装部
22 綴じ代部
41a,41b PA融着糸(熱融着糸)
42 液晶ポリマー糸
45 網目