IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三恵技研工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ビスタの特許一覧

特許7083998管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造
<>
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図1
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図2
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図3
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図4
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図5
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図6
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図7
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図8
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図9
  • 特許-管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/032 20060101AFI20220607BHJP
   B21D 19/12 20060101ALI20220607BHJP
   B21D 51/16 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
F16L23/032
B21D19/12 Z
B21D51/16 A
B21D51/16 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019074214
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020172959
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596003672
【氏名又は名称】株式会社ビスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶行
(72)【発明者】
【氏名】荒井 秀明
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-144871(JP,A)
【文献】特開昭63-280990(JP,A)
【文献】特開2017-74614(JP,A)
【文献】実開昭56-133914(JP,U)
【文献】特開2020-49520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/032
B21D 19/12
B21D 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ管の端部に設けられる管端部材であって、
フランジ管の管本体の端部に嵌合可能な筒部と、
前記管本体への嵌合側と逆側の前記筒部の端から外方に略直角で折り曲げられて形成された平坦部と、
前記平坦部の外端から前記筒部側に略直角で折り曲げられて形成された延在部と、
前記延在部の先端から前記筒部に近づくように傾斜して延びるテーパ部と、
前記テーパ部の先端から前記筒部と前記平坦部と前記延在部で囲まれる空間内に折り返される折返し部を備え、
前記折返し部の先端が前記テーパ部を外側に付勢するように前記テーパ部に当接することを特徴とする管端部材。
【請求項2】
前記折返し部が前記平坦部に当接するようにして形成されていることを特徴とする請求項1記載の管端部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の管端部材の前記筒部が管本体の少なくとも片側の端部に嵌合され、
前記筒部と前記管本体が嵌合された部分で溶接部によって溶接され、
前記管端部材の前記テーパ部の前記管本体への嵌合側の最も端に位置する端部と前記溶接部とが前記管本体の軸方向に20mm以上離れていることを特徴とするフランジ管。
【請求項4】
自動車に搭載される自動車用部品であることを特徴とする請求項3記載のフランジ管。
【請求項5】
請求項3又は4記載のフランジ管が一方のフランジ管と他方のフランジ管として用いられ、
前記一方のフランジ管に設けられている一の前記管端部材の前記平坦部と、前記他方のフランジ管に設けられている他の前記管端部材の前記平坦部とが互いに当接するように配置され、
前記一の管端部材の前記延在部及び前記テーパ部と前記他の管端部材の前記延在部及び前記テーパ部を覆うようにバンド締結具が取り付けられて締結されることを特徴とするフランジ管のバンド継手構造。
【請求項6】
請求項2記載の管端部材の製造方法であって、
筒状の中間材の端部に形成された渦巻き状に巻き込まれたカール部を押し潰すようにして、前記管端部材の前記平坦部、前記延在部、前記テーパ部及び前記折返し部を形成する工程を備えることを特徴とする管端部材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3の何れかに記載の管端部材の製造方法であって、
筒体を、若しくは板材から形成された筒体を順次プレス成形して、前記平坦部と前記延在部と前記テーパ部と前記折返し部を形成する工程を備えることを特徴とする管端部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の排気部品等として用いられるフランジ管の端部に設けられる管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断面視略山形のバンドでフランジ管を相互に締結するバンド継手構造が知られており、このバンド継手構造で用いられるフランジ管として図9のフランジ管11がある。このフランジ管11は、管本体12と、管本体12の端部に設けられるリング状の環体13を有する。環体13は、フランジを構成し、管本体12の軸方向の外側に配置される平坦面131と、その内側に配置されるテーパ面132を備え、リング状の中間材を切削加工して形成されている切削部材である。そして、環体13の内周面133は管本体12の外周面121と略同一径で形成されて、管本体12の端部の外周面121に一部が重なるようにして外嵌され、テーパ面132の内端周辺が溶接部14で溶接されて管本体12と環体13が固定されている。一方のフランジ管11と他方のフランジ管11は平坦面131・131が互いに当接するように配置され、断面視略山形のバンド14が一方の環体13と他方の環体13を覆うように取り付けられ、バンド締結具14によって締結される。
【0003】
また、別のフランジ管として図10のフランジ管16がある。このフランジ管16は、管本体17の端部に折返し加工を施してフランジ17が形成されているものである。フランジ18は、管本体17の軸方向の外側に配置される平坦部181と、平坦部181から管本体17の軸方向の内側に折り返され、管本体17の外周面171と略平行に延びる延在部182と、延在部182の先端から外周面171に近づくように傾斜して延びるテーパ部183を備える。一方のフランジ管16と他方のフランジ管16は平坦部181・181が互いに当接するように配置され、断面視略山形のバンド締結具19が一方のフランジ18と他方のフランジ18を覆うように取り付けられ、バンド締結具19によって締結される。
【0004】
尚、特許文献1には、略山形のバンドでフランジ管が締結される構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-13733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図9のフランジ管11は、ステンレスのような金属製のブロック材をリング状の中間材として用い、この中間材を切削加工して環体13を形成し、この環体13でフランジを構成するものであるため、材料コストと加工コストが高く、又、加工時間にも非常に時間がかかり、フランジ管の製造効率に劣るという問題がある。更に、ブロック材の切削加工で形成された環体13は、全体に亘って中実の部材であるため、環体13及びフランジ管11の重量が重くなるという問題もある。
【0007】
他方において、図10のフランジ管16は、管本体17の端部に折返し加工を施してフランジ18を形成するものであるため、低コスト、短時間で得ることができるものの、フランジ18の平坦部181、延在部182、テーパ部183で囲まれる部分が完全に中空であるため、平坦部181に求められる精度やテーパ部183に求められる精度を得て、これらの精度を安定して維持することが難しいという別の問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、フランジ管の製造コストの低減、製造効率の向上、軽量化を図ることを可能にすると共に、フランジ管のフランジの平坦部とテーパ部に求められる精度を確実に得て、これらの精度を安定して維持することを可能にするフランジ管の管端部材、この管端部材を備えるフランジ管、及びこのフランジ管のバンド継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の管端部材は、フランジ管の端部に設けられる管端部材であって、フランジ管の管本体の端部に嵌合可能な筒部と、前記管本体への嵌合側と逆側の前記筒部の端から外方に略直角で折り曲げられて形成された平坦部と、前記平坦部の外端から前記筒部側に略直角で折り曲げられて形成された延在部と、前記延在部の先端から前記筒部に近づくように傾斜して延びるテーパ部と、前記テーパ部の先端から前記筒部と前記平坦部と前記延在部で囲まれる空間内に折り返される折返し部を備え、前記折返し部の先端が前記テーパ部を外側に付勢するように前記テーパ部に当接することを特徴とする。
これによれば、フランジ管のフランジの構成部分を切削加工せずに、例えば筒体又は板材をプレス成形で板金加工する等で得ることができることから、フランジ管の製造コストの低減、製造効率の向上を図ることができる。また、ブロック材の切削加工で形成されたフランジのように全体に亘って中実になることがないことから、フランジの構成部分、フランジ管の軽量化を図ることができる。また、平坦部、延在部、テーパ部で囲まれる部分が完全に中空になることなく、当該部分に折返し部が設けられ、折返し部の先端がテーパ部を外側に付勢するようにテーパ部に当接することから、局所的な凹み等を防止して、フランジ管のフランジの平坦部とテーパ部に求められる精度を確実に得、これらの精度を安定して維持することができる。従って、フランジ管のフランジの平坦部の精度向上により、バンド締結具等でフランジ管の平坦部を当接して締結した際に、例えばフランジ管を流れる排気等の気体の漏れを少なくすることが可能となり、フランジ管の平坦部間にリング状等のガスケットの平板部など介在物の平板部を挟んで締結する場合にも同様のメリットが得られる。
【0010】
本発明の管端部材は、前記折返し部が前記平坦部に当接するようにして形成されていることを特徴とする。
これによれば、折返し部が平坦部に当接して設けられ、この状態で折返し部の先端がテーパ部を外側に付勢するようにテーパ部に当接することから、局所的な凹み等を確実に防止して、フランジ管のフランジの平坦部とテーパ部に求められる精度をより確実に得、これらの精度を一層安定して維持することができる。
【0011】
本発明のフランジ管は、本発明の管端部材の前記筒部が管本体の少なくとも片側の端部に嵌合され、前記筒部と前記管本体が嵌合された部分で溶接部によって溶接され、前記管端部材の前記テーパ部の前記管本体への嵌合側の最も端に位置する端部と前記溶接部とが前記管本体の軸方向に20mm以上離れていることを特徴とする。
これによれば、管端部材の平坦部の外面と溶接部を管本体の軸方向に20mm以上離すことにより、溶接による熱の影響がフランジの平坦面を構成する平坦部の外面に及ぶことを抑制、防止し、平坦部の平面度の精度を向上し、必要とされる精度の平坦部の平面度を確実に得ることができる。より好適には、管端部材の平坦部の外面と溶接部を管本体の軸方向に40mm以上離す構成とすると、溶接による熱の影響がフランジの平坦面を構成する平坦部の外面に及ぶことを確実に抑制、防止し、必要とされる高い精度の平坦部の平面度をより確実に得ることができる。また、筒部の長い管端部材を切削加工で形成すると加工時間が長く、製造コストが増加するが、本発明の管端部材は切削加工せずに形成することが可能であることから、低コスト且つ短時間の加工で、平坦部の平面精度の高いフランジ管を得ることができる。
【0012】
本発明のフランジ管は、自動車に搭載される自動車用部品であることを特徴とする。
これによれば、軽量化されたフランジ管を排気管等の自動車用部品として用い、自動車の燃費性能を向上することができる。
【0013】
本発明のフランジ管のバンド継手構造は、本発明のフランジ管が一方のフランジ管と他方のフランジ管として用いられ、前記一方のフランジ管に設けられている一の前記管端部材の前記平坦部と、前記他方のフランジ管に設けられている他の前記管端部材の前記平坦部とが互いに当接するように配置され、前記一の管端部材の前記延在部及び前記テーパ部と前記他の管端部材の前記延在部及び前記テーパ部を覆うようにバンド締結具が取り付けられて締結されることを特徴とする。
これによれば、高い精度の平面度を有する平坦部を相互に当接してバンド締結できるので、フランジ管を相互に隙間ができることを防止、最大限抑制し、バンド締結することができる。従って、更に、フランジ管のテーパ部も高い精度を有することから、必要な強度、安定性、耐久性を有するバンド締結を確実に行うことができる。また、フランジを相互にボルトとナットで締結する場合には締結作業の労力が増加するが、バンド締結により、フランジ管を相互に締結する作業労力、作業時間を少なくすることができ、例えばフランジ管の継手構造を車両に搭載する場合等の作業性が向上する。特に、フランジ管が円筒状である場合には、フランジ管の回転を気にかけずにバンド締結することができ、より一層作業性を高めることができる。
【0014】
本発明の管端部材の製造方法は、本発明の管端部材を製造する方法であって、筒状の中間材の端部に形成された渦巻き状に巻き込まれたカール部を押し潰すようにして、前記管端部材の前記平坦部、前記延在部、前記テーパ部及び前記折返し部を形成する工程を備えることを特徴とする。
これによれば、折返し部の外周面を平坦部に当接させ、折返し部の先端がテーパ部を外側に付勢するようにテーパ部に当接する構造を簡単な工程で確実に成形することができる。
【0015】
本発明の管端部材の製造方法は、本発明の管端部材を製造する方法であって、筒体を、若しくは板材から形成された筒体を順次プレス成形して、前記平坦部と前記延在部と前記テーパ部と前記折返し部を形成する工程を備えることを特徴とする。
これによれば、管端部材をプレス成形して形成することにより、切削加工で管端部材を製造する場合に比し、管端部材及びフランジ管の製造コストを格段に低減、製造効率を非常に高めることができる。特に、管端部材のテーパ部の管本体への嵌合側の最も端に位置する端部と溶接部とを管本体の軸方向に20mm以上離してフランジ管を構成する場合には、プレス成形により、非常に低コスト且つ短時間の加工で、平坦部の平面精度に優れるフランジ管を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フランジ管の製造コストの低減、製造効率の向上、軽量化を図ることができると共に、フランジ管のフランジの平坦部とテーパ部に求められる精度を確実に得て、これらの精度を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は本発明による実施形態の管端部材の斜視図、(b)はその縦断面図、(c)はその平坦部及びテーパ部の周辺を示す部分縦断面図。
図2】(a)は本発明による実施形態のフランジ管の一部の斜視図、(b)はその一部断面正面図、(c)はその管端部材の周辺を示す部分断面図。
図3】(a)は本発明による実施形態のフランジ管のバンド継手構造の斜視図、(b)はその縦断面図。
図4】(a-1)~(c-1)は実施形態の管端部材の製造工程の前半を説明する説明図、(a-2)~(c-2)は(a-1)~(c-1)の各工程を施した管端部材の中間材のフランジ側の端部周辺を示す拡大説明図。
図5】(d-1)~(f-1)は実施形態の管端部材の製造工程の後半を説明する説明図、(d-2)~(f-2)は(d-1)~(f-1)の各工程を施した管端部材の中間材のフランジ側の端部周辺を示す拡大説明図。
図6】(a)~(d)は金属平板から管端部材の中間材を得る製造工程を説明する説明図。
図7】(a)は実施形態のフランジ管を平坦部側から視た図、(b)はそのフランジ管の平坦部の平面度の測定を説明する模式説明図。
図8】実施形態のフランジ管における平坦部と溶接部との間の長さと平坦部の平面度との関係を示すグラフ。
図9】(a)は従来例の切削部材の環体を備えるフランジ管の一部の部分斜視図、(b)はその縦断面図、(c)はその環体の周辺を示す部分縦断面図、(d)は同図(a)のフランジ管のバンド継手構造を示す断面説明図。
図10】(a)は従来例の折返し加工のフランジを備えるフランジ管の一部の部分斜視図、(b)はその縦断面図、(c)はそのフランジの周辺を示す部分縦断面図、(d)は同図(a)のフランジ管のバンド継手構造を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態の管端部材、フランジ管及びフランジ管のバンド継手構造〕
本発明による実施形態の管端部材2は、図1図3に示すように、金属製のフランジ管1の端部に設けられる管端部材2である。本実施形態における管端部材2は、後述する管本体3の両側の端部に嵌合してフランジ管1の両側の端部に設けられるが、管端部材2を管本体3の片側の端部のみに嵌合してフランジ管1の片側の端部のみに設けられる構成としてもよい。尚、フランジ管1、管端部材2、後述するフランジ管1・1のバンド継手構造は、例えば自動車に排気管など自動車に搭載される自動車用部品に用いると良好であるが、水道管など使用可能な範囲で適宜の分野の部品として用いることが可能である。
【0019】
管端部材2は金属製で筒部21を有し、筒部21はフランジ管1の管本体3の端部に嵌合可能に形成されている。本実施形態における筒部21は円筒状に形成され、その内径が円筒状の管本体3の外径より僅かに大きく形成されており、管本体3に外嵌して嵌合可能になっている。管端部材2には、管本体3への嵌合側と逆側に、筒部21の端から外方に略直角で折り曲げられて平坦部22が形成されている。筒部21の軸方向の外側に位置する平坦部22の外面221は平面度の高い平坦面になっており、外面221の平坦面の平面度は、0.1mm以内の高低差とすると好ましく、0.053mm以内の高低差とするとより好ましい。尚、外面221の平坦面の平面度は、0mmに近いことが最も好ましいことから、この平面度は0mm~0.1mm、より好ましくは0mm~0.053mm、又は、0mm超0.1mm以内、より好ましくは0mm超0.053mm以内とするとよい。
【0020】
管端部材2には、平坦部22の外端から筒部21側に略直角で折り曲げられて延在部23が形成され、延在部23の先端から筒部21に近づくように傾斜して延びるテーパ部24が形成されている。更に、管端部材2には、テーパ部24の先端から筒部21と平坦部22と延在部23で囲まれる空間S内に折り返される折返し部25が形成されている。
【0021】
折返し部25は、テーパ部24の先端から空間S側に湾曲して丸められるように形成されており、折返し部25の外周面が、平坦部22に当接する、より好適には筒部21と平坦部22に当接するようにして形成されている。折返し部25は、空間Sに入り込むように設けられ、その先端は、テーパ部24を外側に付勢するようにして当接部251でテーパ部24に当接されている。
【0022】
そして、管端部材2と管本体3で構成されるフランジ管1では、管端部材2の筒部21が金属製の管本体3の端部に外嵌して嵌合され、管本体3の端部と筒部21とが重なった嵌合部分Lが設けられる。管端部材2の筒部21と管本体3は嵌合部分Lに形成される或いは嵌合部分Lを含むように形成される溶接部4によって溶接され接合される。本実施形態では、嵌合部分Lの一部を含むように形成される周状の溶接部4によって筒部21と管本体3が溶接され、溶接作業の労力を低減している。尚、図示例では、筒部21の先端と管本体3とが溶接部4で重ね隅肉溶接されているが、例えば重なった嵌合部分Lの長さ方向のうちの所定幅の領域について周状に貫通溶接して溶接部を設けるなど、筒部21と管本体3は適宜の溶接部で溶接することが可能であり、又、適用する溶接方法は、レーザー溶接、シーム溶接、アーク溶接など適用可能な範囲で適宜である。
【0023】
フランジ管1における筒部21と管本体3とを接合する溶接部4は、平坦部22の外面221の平面度が溶接による熱影響で低下することを回避するため、管端部材2のテーパ部24の管本体3への嵌合側の最も端に位置する端部241から管本体3の軸方向に20mm以上離れた位置に設けることが好ましく、より好適にはテーパ部24の管本体3への嵌合側の最も端に位置する端部241から管本体3の軸方向に40mm以上離れた位置に設けるとよい。この離れた位置関係として、図2に管端部材2のテーパ部24の管本体3への嵌合側の最も端に位置する端部241と溶接部4との離間距離Tを示す。この離間距離Tは管端部材2のテーパ部24の管本体3への嵌合側の最も端に位置する端部241と溶接部4の外面221に最も近い箇所との距離になっている。
【0024】
フランジ管1は、例えば図3に示すバンド継手構造で相互に連結される。図3のバンド継手構造では、フランジ管1が一方のフランジ管1aと他方のフランジ管1bとして用いられ、一方のフランジ管1aに設けられている一の管端部材2aの平坦部22aと、他方のフランジ管1bに設けられている他の管端部材2bの平坦部22bとが互いに当接するように配置され、一の管端部材2aの延在部23a及び折返し部25aで付勢されるテーパ部24aと、他の管端部材2bの延在部23b及び折返し部25bで付勢されるテーパ部24bを覆うように断面視略山形のバンド締結具5が取り付けられて締結されている。バンド締結具5でフランジ管1a、1bが締結されたバンド継手構造では、管本体3aと管端部材2aが溶接部4aで溶接して構成される一方のフランジ管1aと、管本体3bと管端部材2bとが溶接部4bで溶接して構成される他方のフランジ管1bが連通し、連通するフランジ管1a、1b内を排気、水等の適宜の流体が流通することが可能となる。
【0025】
次に、本実施形態の管端部材2を製造する工程例について説明する(図4図5参照)。図4及び図5の製造工程例で管端部材2を製造する際には、円筒形の筒体26mを用いる。筒体26mの素材は例えば鉄、ステンレス、チタン、アルミニウムなど適用可能な適宜の金属材とすることが可能である。そして、断面視略弧状の溝611が円周状に形成されている下型61の上に、筒体26mの下端が溝611の内寄りに配置されるようにして筒体26mを載置し、図の太線矢印で示すように、上型62で筒体26mを下型61側に押し込んでプレス成形し、外方に弧状に湾曲したカール部271mを下端に有する中間材の筒体27mを形成する(図4(a-1)、(a-2)、(b-1)、(b-2)参照)。
【0026】
その後、溝611よりも大径の断面視略弧状の溝631が円周状に形成されている下型63の上に、筒体27mのカール部271mが溝631の内寄りに配置されるようにして筒体27mを載置し、図の太線矢印で示すように、上型64で筒体27mを下型63側に押し込んでプレス成形し、外方に弧状に湾曲して渦巻き状に巻き込まれたカール部281mを下端に有する筒状の中間材である筒体28mを形成する(図4(c-1)、(c-2)、図5(d-1)、(d-2)参照)。
【0027】
その後、下型65の平面の上に端部に形成されたカール部281mを下側にして筒体28mを載置し、上型66を下型65側に押し込んでプレス成形し、管端部材2を形成する。この上型66には、管端部材2の筒部21、テーパ部24、延在部23の外形状に略対応する形状の凹部661が設けられており、図の太線矢印で示すように、筒体28mを凹部661に入り込ませてプレス成形することにより、渦巻き状に巻き込まれたカール部281mを押し潰すようにして管端部材2の平坦部22、延在部23、テーパ部24、折返し部25を形成する(図5(e-1)、(e-2)、(f-1)、(f-2)参照)。渦巻き状に巻き込まれたカール部281mを押し潰すように成形することにより、折返し部25の外周面を平坦部22に当接させ、折返し部25の先端がテーパ部24を外側に付勢するようにテーパ部24に当接する構造を簡単な工程で確実に成形することができる。
【0028】
尚、上記製造工程例では、円筒形の筒体26mを出発材としたが、図6に示すように、板材である金属製の平板291mを下型67と上型68でプレス成形して(図6の太線矢印参照)、鍔を有する有底円筒形の中間材292mを形成し、中間材292mの鍔側と底側を切断線Cで切断して筒体26mを形成し、この筒体26mから上記製造工程例の工程を行って管端部材2を形成するようにしてもよい。この場合も、金属製の平板291mの素材は例えば鉄、ステンレス、チタン、アルミニウムなど適用可能な適宜の金属材とすることが可能である。
【0029】
本実施形態によれば、フランジ管1のフランジの構成部分を平坦部22、延在部23、テーパ部24、折返し部25とし、切削加工せずに、筒体又は板材をプレス成形で板金加工する等で得ることができることから、フランジ管1の製造コストの低減、製造効率の向上を図ることができる。また、管端部材2やフランジ管1では、ブロック材の切削加工で形成されたフランジのようにフランジが全体に亘って中実になることがないことから、フランジの構成部分、フランジ管1の軽量化を図ることができる。尚、管端部材2と同一形状、同一サイズの部材を切削加工で構成した一例では、管端部材2の重量75.91gに対して切削部材は95.48gとなり、約20~21%の重量の軽量化を図ることができる。
【0030】
また、平坦部22、延在部23、テーパ部24で囲まれる部分が完全に中空になることなく、当該部分に折返し部25が設けられ、折返し部25の先端がテーパ部24を外側に付勢するようにテーパ部24に当接することから、局所的な凹み等を防止して、フランジ管1のフランジの平坦部22に求められる平面度等の精度とテーパ部24に求められる角度、許容される傾斜面の歪み等の傾斜面の状態の精度を確実に得、これらの精度を安定して維持することができる。特に、折返し部25を平坦部22に当接させ、より好ましくは、折返し部25を筒部21と平坦部22に当接させることにより、フランジ管1のフランジの平坦部22とテーパ部24に求められる精度をより確実に得、これらの精度を一層安定して維持することができる。
【0031】
また、管端部材2のテーパ部24の管本体3への嵌合側の最も端に位置する端部241と溶接部4を管本体3の軸方向に20mm以上離す構成、より好適には40mm以上離す構成とすることにより、溶接による熱の影響がフランジの平坦面を構成する平坦部22の外面221に及び、平坦部22の外面221が歪むこと等を抑制、防止し、平坦部22の平面度の精度を向上し、必要とされる精度の平坦部22の平面度、或いは平坦部22の外面221の平面度を確実に得ることができる。また、筒部の長い管端部材を切削加工で形成すると加工時間が長く、製造コストが増加するが、管端部材2は切削加工せずにプレス成形で形成することが可能であることから、非常に低コスト且つ短時間の加工で、平坦部22の平面精度に優れるフランジ管1を得ることができる。
【0032】
また、フランジ管1、管端部材2、或いはフランジ管1・1のバンド継手構造を自動車に搭載される自動車用部品として用いる場合には、軽量化されたフランジ管1を排気管等の自動車用部品として用いることができるので、自動車の燃費性能を向上することができる。
【0033】
また、フランジ管1・1のバンド継手構造では、高い精度の平面度を有する平坦部22・22或いは外面221・221を相互に当接してバンド締結できるので、フランジ管1を相互に隙間ができることを防止、最大限抑制し、バンド締結することができる。更に、フランジ管1のテーパ部24も高い精度を有することから、必要な強度、安定性、耐久性を有するバンド締結を確実に行うことができる。また、フランジを相互にボルトとナットで締結する場合にはフランジ相互の穴の位置合わせ等で締結作業の労力が増加するが、バンド締結により、フランジ管1・1を相互に締結する作業労力、作業時間を少なくすることができ、例えばフランジ管1の継手構造を車両に搭載する場合等の作業性が向上する。特に、フランジ管1が円筒状である場合には、フランジ管1の回転を気にかけずにバンド締結することができ、より一層作業性を高めることができる。
【0034】
〔フランジ管の平坦部の平面度の測定結果〕
上記実施形態のフランジ管1の構成において、管端部材2のテーパ部24の管本体3への嵌合側の最も端に位置する端部241と溶接部4との離間距離Tを変更して平坦面22の外面221の平面度を測定した結果を図8に示す。フランジ管1における平坦部22の外面221の平面度は、図7(b)に示すように、筒部21から平坦部22に至る湾曲部と、平坦部22から延在部23に至る湾曲部を除き、任意の断面における平坦部22の外面221の高低差Dを測定すると共に、この高低差Dを図7(a)の平坦部22の外面221の全周に亘って測定した。そして、測定した高低差Dのうち最大の高低差を平面度とした。
【0035】
管端部材2のテーパ部24の管本体3への嵌合側の最も端に位置する端部241と溶接部4との離間距離Tは、0mm、7mm、20mm、40mmに変更して測定を行った。離間距離Tが0mmの場合には、筒部21の軸方向の長さを端部241まで形成して管本体3を嵌合し、溶接部4を形成した。また、離間距離Tが7mm、20mmの場合には、管端部材2の筒部21の軸方向の長さを、離間距離Tが40mmの場合の管端部材2の筒部21の軸方向の長さよりも必要な長さだけ短くした。
【0036】
離間距離Tが0mm、7mm、20mm、40mmの場合のそれぞれにおける測定結果の平面度は0.407mm、0.157mm、0.100mm、0.0530mmであった(図8参照)。フランジ管1・1間の隙間を実用的に許容される範囲に抑える等、フランジ管1やフランジ管1のバンド継手構造の実用性の観点からは、離間距離T:20mm以上、平面度:0.100mm以下の構成とすることが好ましく、離間距離T:40mm以上、平面度:0.0530mm以下の構成とするとより好ましい。また、図8から離間距離Tが7mm未満の場合には、平面度が急激に低下することが分かり、少なくとも離間距離Tは7mm以上とするとよい。
【0037】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0038】
例えば上記実施形態のフランジ管1、管端部材2、管本体3では、円筒状のフランジ管1、管端部材2、管本体3を例に説明したが、フランジ管1、管端部材2、管本体3は適宜の筒形状とすることが可能であり、例えば断面視略楕円形のフランジ管1、管端部材2、管本体3、或いは断面視略レーストラック形のフランジ管1、管端部材2、管本体3、或いは断面視略多角形のフランジ管1、管端部材2、管本体3等とすることが可能である。
【0039】
また、管端部材2は、適宜の円筒形の筒体26mから形成することが可能であるが、筒体26mを溶接管とすると、例えば0.1mmに満たない溶接部の段差が排気漏れ等の原因となる可能性がある、管端部材2を円筒状とする場合に溶接熱で真円度が低下する、溶接管を形成する設備が必要となるというデメリットがあることから、筒体26mは軸方向に継ぎ目のないシームレス管とすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば自動車に搭載される管構造、住宅或いは都市基盤に設置される管構造等に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1、1a、1b…フランジ管 2、2a、2b…管端部材 21…筒部 22、22a、22b…平坦部 221…外面 23、23a、23b…延在部 24、24a、24b…テーパ部 241…端部 25、25a、25b…折返し部 251…当接部 26m、27m、28m…筒体 271m、281m…カール部 291m…平板 292m…中間材 3、3a、3b…管本体 4、4a、4b…溶接部 5…バンド締結具 61、63、65、67…下型 611、631…溝 62、64、66、68…上型 661…凹部 S…筒部と平坦部と延在部で囲まれる空間 L…管本体と筒部が重なった嵌合部分 T…管端部材のテーパ部の管本体への嵌合側の最も端に位置する端部と溶接部との離間距離 C…切断線 D…高低差 11…フランジ管 12…管本体 121…外周面 13…環体 131…平坦面 132…テーパ面 133…内周面 14…溶接部 15…バンド締結具 16…フランジ管 17…管本体 171…外周面 18…フランジ 181…平坦部 182…延在部 183…テーパ部 19…バンド締結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10