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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】集砂装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/18 20060101AFI20220607BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20220607BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
B01D21/18 K
B01D21/24 G
B01D21/24 M
B01D21/30 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018077446
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019181390
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245388(JP,A)
【文献】特開2010-036151(JP,A)
【文献】特開平7-100305(JP,A)
【文献】特開平9-75792(JP,A)
【文献】特開2008-126145(JP,A)
【文献】特開2000-334217(JP,A)
【文献】特開2003-205285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00 - 21/34
E03F 1/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂池の底面を沈砂池内水流方向に分割して複数の領域を形成するとともに各領域にノズルヘッダーを設け、給水ポンプから供給される、3kg/cm 未満の低圧力水を各領域のノズルヘッダーのノズルから領域ごとに順次噴射させて前記沈砂池の底面に堆積している土砂をトラフに洗い流し、そのトラフからさらに集砂ピットまで流す集砂装置において、
前記沈砂池は、当該沈砂池内水流方向に直交する方向に設けられた側壁と前記集砂ピットとの間に設けられ、前記集砂ピットに向けて下り傾斜する集砂ピット傾斜面を有し、
前記沈砂池内水流方向に分割された前記複数の領域のうち、前記集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーの端部の少なくとも1個のノズルを、前記集砂ピット傾斜面に臨ませたことを特徴とする集砂装置。
【請求項2】
請求項1記載の集砂装置において、
前記沈砂池内水流方向において前記集砂ピット傾斜面下流側に位置する前記沈砂池の底面を前記沈砂池内水流方向に分割した前記複数の領域のうち、前記集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーの上流側端部の少なくとも1個のノズルを前記集砂ピット傾斜面に臨ませたことを特徴とする集砂装置。
【請求項3】
請求項1記載の集砂装置において、
前記沈砂池内水流方向において前記集砂ピット傾斜面の上流側に位置する前記沈砂池の底面を前記沈砂池内水流方向に分割した前記複数の領域のうち、前記集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーの下流側端部の少なくとも1個のノズルを前記集砂ピット傾斜面に臨ませたことを特徴とする集砂装置。
【請求項4】
請求項1記載の集砂装置において、
前記沈砂池内水流方向における前記集砂ピット傾斜面の上流側と下流側の両側に位置する前記沈砂池の底面を前記沈砂池内水流方向に各々分割し、前記集砂ピット傾斜面の上流側及び下流側で各々分割した前記複数の領域のうち、前記集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーのそれぞれの端部の少なくとも1個のノズルを前記集砂ピット傾斜面に臨ませたことを特徴とする集砂装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理設備の沈砂池に沈殿した土砂を低圧集砂方法により沈砂池に設けた集砂ピットに集める集砂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沈砂池に沈殿した土砂を揚砂ポンプにより水と共に汲み上げて汚水沈砂池に移送する初期の除砂装置は、高圧集砂方式の除砂装置であり、沈砂池の側壁に沿って設けた多数のノズルから3kg/cmを超える高圧力水を噴射して沈砂池の底面に堆積した土砂を攪乱し、ポンプピットに設けた揚砂ポンプにより水と共に汲み上げるものであった。
【0003】
高圧力方式の除砂装置は高圧ポンプを用いるので、設備コストおよび運転コストが高く、除砂能率が低い、悪臭が発生して近隣に迷惑がかかるなどの問題があったため、これに代わり、低圧力水を用いる低圧集砂方式の集砂装置が、特許文献1に開示された。この低圧集砂方式の集砂装置は、沈砂池内の水を排出した状態(排水状態)で沈砂池の側壁に沿って設けた多数のノズルから3kg/cm2未満の低圧力水を吐出して沈砂池の底面に堆積した土砂をトラフに洗い流し、そのトラフを経て沈砂池の底部に設けた集砂ピットに集めるものである。集砂ピットに集められた土砂は、集砂ピットに設置した揚砂ポンプにより水と共に汲み上げて汚水沈砂池に移送される。
【0004】
沈砂池の側壁に沿って設けたノズルに水を供給する給水ポンプと集砂ピットから土砂を汲み上げる揚砂ポンプの負荷を軽減して、給水ポンプと揚砂ポンプに小型ポンプの使用を可能にするため、沈砂池の底面を集砂ピットおよび集砂ピットと側壁の間の傾斜面(集砂ピット傾斜面)以外の部分において沈砂池内水流方向に等分して面積が等しい複数の領域を形成し、各領域に母管に多数のノズルを所定の間隔をもって取付けてなるノズルヘッダーを沈砂池の側壁に沿って設置し、給水ポンプからの水を集砂弁の制御を介して各ノズルヘッダーに順次所定時間ずつ供給するようになった(特許文献2)。
【0005】
この集砂装置においては、ノズルヘッダーの製造コストおよび取付コストの低減化のため、等数のノズルを有する等長のノズルヘッダーが、いずれも等面積の領域に設置されている。(特許文献2の図11)
【0006】
給水ポンプには、吐出量が2m3/分のものが使用されている。そして、吐出量が0.15m3/分のノズルを用いる場合は、一つのノズルヘッダーに取付け可能なノズル数は、最大13個である。しかし、ノズルヘッダーに取付けた全てのノズルから均等に水を吐出させるためには、ノズルの数が偶数でなければならないので、取付け可能な最大数は12である。一方、沈砂池の底面への上記吐出量のノズルの土砂排除効率を高めるためには、ノズルヘッダーのノズルの取付間隔は400~500mmが適当である。従って、ノズルヘッダーの全長は最大で6mとなる。
【0007】
たとえば、図9に示すように、全長が18000mmの沈砂池の底面を複数の等面積の領域に区分し、各領域に6m以内の可及的に長いノズルヘッダーを設置する場合は、沈砂池1の両側の側壁Wa,Wbから沈砂池1の底部中央に設けられている集砂ピット傾斜面3の幅寸法を1200mmとすると、集砂ピット傾斜面3の上流側及び下流側の残長はそれぞれ8400mmであるから、従来は、沈砂池の底面全体では、集砂ピット傾斜面3の上流側及び下流側の両側においてそれぞれ2個ずつ、合計8個の等面積の領域B1~B8を形成し、1領域の長さを4200mmとしていた。
【0008】
したがって、一つの領域に設置可能なノズルヘッダーNHの長さは最大で4200mmで、そのノズルヘッダーの最大ノズル数が8個となる。つまり、従来は、全長18mの沈砂池は8領域に区分され、長さ4200mm、ノズル数8個のノズルヘッダーを8個(NH1~NH8)設置していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3315489号公報
【文献】特開2011‐245388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、先行技術における沈砂池では、その底面を集砂ピット傾斜面3の両側において全て等面積の複数の領域を形成していたので、ノズルヘッダーの設置数、従って、集砂弁の使用数も多くなるため、設備コストおよび保守コストが高くつくという問題があった。
【0011】
また、高圧集砂方式の集砂装置においては、ポンプピットが沈砂池内水流方向の中央に設けられることは殆どなく、中央よりも下流側などに設けられることが普通であった。しかし、多数のノズルから3kg/cm未満の低圧力水を吐出して沈砂池の底面に堆積した土砂を洗い流す低圧集砂方式の集砂装置においては、集砂能率を高めるため、全ての領域が等長・等面積であることが望まれたので、既設の高圧集砂方式の集砂装置を低圧集砂方式の集砂装置に切り換える場合には、沈砂池の底面に傾斜面を形成するとともに、ポンプピットを埋没させ、沈砂池内水流方向の中央に集砂ピットを新たに造る工事が必要となるという厄介な問題がある。
【0012】
また、低圧集砂方式の集砂装置においては、集砂開始当初は多量の土砂が集砂ピット傾斜面に集まりやすいので、集砂ピット傾斜面から土砂を集砂ピットに洗い流すために、ノズルヘッダーとは異なる個別のノズル(集砂ノズル)を設置することが必要であった。さらに、トラフの上端部には各領域からトラフに流れ込む土砂を集砂ピット方向に流すための個別のノズル(集砂ノズル)、および集砂ピットに集められた土砂を攪拌して揚砂ポンプに吸入されやすくするための個別のノズル(攪拌ノズル)が設置される。
したがって、沈砂池全体のノズルヘッダーおよび個別のノズルの設置数が多くなり、それぞれに対応する集砂弁が設けられるので、設置コストおよび保守コストの節減効果は限定的であった。
【0013】
上記の点に鑑み、特許文献2の図11に、沈砂池の底面の長手方向中央に集砂ピットおよび集砂ピット傾斜面を設け、その沈砂池の底面を集砂ピット傾斜面を含めて沈砂池の長さ方向に等分割して複数の等面積の領域を形成するとともに、各領域に等長のノズルヘッダーを設置し、一つのノズルヘッダーは集砂ピット傾斜面を跨いで設置するようにした集砂装置が開示された。
この集砂装置においては、集砂ピット傾斜面の個別のノズル(集砂ノズル)の設置を不要にすることができるという特長を有する。
【0014】
しかし、この集砂装置は、ポンプピットが沈砂池の底面の長手方向中央以外の位置に設置されている高圧集砂方式の集砂装置を低圧集砂方式の集砂装置に切り換える場合には、多額の改造コストがかかる、ポンプピットの上流側と下流側に等面積の領域がない場合には適用できない、などの問題がある。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ノズルヘッダーおよび集砂用ノズルの設置数の削減効果ならびに設置コストおよび保守コストの節減効果が得られる集砂装置を提供することを目的とする。
本発明は、また、高圧集砂方式の集砂装置のポンプピットの設置位置が沈砂池内水流方向のどこにあっても(沈砂池の底面が集砂ピット傾斜面の上流側と下流側において等しくない場合にも)、最小限の改造費用で低圧集砂方式の集砂装置に変更可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するため、沈砂池の底面を沈砂池内水流方向に分割して複数の領域を形成するとともに各領域にノズルヘッダーを設け、給水ポンプから供給される低圧力水を各領域のノズルヘッダーのノズルから領域ごとに順次噴射させて沈砂池の底面に堆積している土砂をトラフに洗い流し、そのトラフからさらに集砂ピットまで流す集砂装置において、集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーの端部の少なくとも1個のノズルを集砂ピット傾斜面に臨ませたことを特徴とする。
【0017】
集砂ピット傾斜面の下流側において集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーの上流側端部の少なくとも1個のノズルを集砂ピット傾斜面に臨ませることができる。
また、集砂ピット傾斜面の上流側において集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーの下流側端部の少なくとも1個のノズルを集砂ピット傾斜面に臨ませることができる。
さらに、集砂ピット傾斜面の上流側と下流側の両側において集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーのそれぞれの端部の少なくとも1個のノズルを集砂ピット傾斜面に臨ませることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、集砂ピット傾斜面に隣接する領域のノズルヘッダーの端部の少なくとも1個のノズルを集砂ピット傾斜面に臨ませたので、集砂ピット傾斜面に個別の集砂ノズルを設けなくても、集砂ピット傾斜面に堆積した土砂を除去することができる。したがって、設置コストおよび保守コストの削減が可能である。
また、全ての領域およびノズルヘッダーは必ずしも等長でなくてもよく、集砂ピットの設置位置の制約を受けずに設置可能であるから、既設の高圧集砂方式の集砂装置を低圧集砂方式の集砂装置に切り換える場合に、集砂ピットの新設工事が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】沈砂池を含む雨水処理設備の縦断面図である。
図2図1のX-Xの範囲の天井壁を省略し、ノズルヘッダーの一部を切除して示す平面図である。
図3図2のY-Y線断面図である。
図4図2のZ-Zの範囲の一部を省略した詳細平面図である。
図5図4のZ1-Z1線断面図である。
図6図4のZ2-Z2線断面図である。
図7】集砂ピット傾斜面に対するノズルヘッダーの位置関係の一例を示す平面図である。
図8】集砂ピット傾斜面に対するノズルヘッダーの位置関係の他の例を示す平面図である。
図9】集砂ピット傾斜面に対するノズルヘッダーの位置関係のさらに他の例を示す平面図である。
図10】従来の沈砂池の領域の分布とノズルヘッダーの設置状態の一例を示す平面図である。
図11】従来の沈砂池の領域の分布とノズルヘッダーの設置状態の他例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1において、1は下水処理設備であり、側壁Wa,Wb(図2参照)の間に形成された沈砂池2とポンプ井3とを有する。沈砂池2は図外の下水管から雨水や汚水等の下水が集められる流入渠4に接続されている。流入渠4の下流側端部には、流入渠4から沈砂池2への下水の流入の許容又は阻止を行なうためのダム装置5が設置され、そのダム装置5の下流側で、沈砂池2の上流側端部の直前に夾雑物捕捉用スクリーン6が設置されている。
【0021】
低圧集砂を行うために、沈砂池2の底面2aの沈砂池内水流方向の任意の位置に集砂ピット7が形成されているとともに、沈砂池の底面2aの幅方向中央には沈砂池の上流側端部および下流側端部から集砂ピット7まで下り傾斜する主トラフ(本発明に言うトラフに相当する。)8aが形成されている。沈砂池の底面2aは側壁Wa,Wbの下端部から主トラフ8aに向けて下り傾斜されている。さらに、沈砂池の底面に側壁Wa,Wbの近傍から主トラフ8aまで沈砂池内水流方向に直角な方向に平行に延びる多数の小トラフ8bが形成されている。そして、側壁Wa,Wbの下端部から集砂ピット7まで下り傾斜する集砂ピット傾斜面8cが形成されている。
【0022】
ポンプ井3には、排水ポンプP1と、滞留水ポンプを兼ねる給水ポンプP2とが設置され、集砂ピット7内に揚砂ポンプP3が設置されている。図1のFは、沈砂池2の下流側端部に設置されているろ過機である。
【0023】
沈砂池2の底面2aには、主トラフ8aの両側のそれぞれにおいて底面2aを沈砂池内水流方向に分割して、複数の、沈砂池全体では偶数の領域が形成されている。図2および図7の例では沈砂池内水流方向に3分割され、沈砂池全体では6個の領域B1~B6が形成されている。しかし、沈砂池2の規模、または幅によっては、主トラフ8aが一方の側壁に寄った位置に形成される場合もある。その場合は、沈砂池全体の領域は奇数になることもある。
【0024】
主トラフ8aの上端部には集砂ノズル9aが設置され、集砂ピット7には主トラフ8aを経て集められた土砂を撹拌するためのノズル9b(9b1,9b2の総括符号)が設置されている。また、各領域B1~B6の側壁Wa,Wbの近傍に、ノズルヘッダーNH1~NH6が設置されている。ノズルヘッダーNH1~NH6は、図示を省略されているが、分岐管を有する母管に吐出量が0.15m3/分のノズル9cが複数個、400~500mmの等間隔に取り付けて構成されている。
【0025】
従来の低圧集砂方式の集砂装置においては、集砂ピット7の設置位置は沈砂池内水流方向の中央であったが、本発明においては、集砂ピット7の設置位置は沈砂池内水流方向の任意の位置である。既設の高圧集砂方式の集砂装置を低圧集砂方式に変更する場合は、揚砂ポンプが設置されていたポンプピットを集砂ピット7として利用することができるので、集砂ピット7および集砂ピット傾斜面8cの設置位置は、図7および図8に示すように沈砂池内水流方向の中央でないことが多いし、図9に示すようにほぼ中央の場合もある。
【0026】
本発明の実施の形態は、集砂ピット7および集砂ピット傾斜面8cに隣接する領域に設置されるノズルヘッダーの一端部に設けてあるノズルを集砂ピット傾斜面8cに臨ませている点に特徴がある。このようなノズルヘッダーの設置態様には、図7図9に例示するものがあり得る。
【0027】
図7に示す例は、集砂ピット7および集砂ピット傾斜面8cにその下流側において隣接する領域B5、B6に設置されるノズルヘッダーNH5,NH6の一端部である左側端部に設けてある少なくとも1個のノズルを、集砂ピット傾斜面8cに臨ませた例である。
【0028】
図7の沈砂池の領域B1~B6は等面積であるが、領域B1,B2と領域B5,B6の間に集砂ピット7および集砂ピット傾斜面8cが設けられている。すなわち、図7の例では、ノズルヘッダーNH1~NH4およびノズルヘッダーNH5,NH6はそれぞれ等長であるが、ノズルヘッダーNH5,NH6はノズルヘッダーNH1~NH4よりも若干長い。
【0029】
このように、ノズルヘッダーを、その一端部のノズルを集砂ピット傾斜面8cに臨ませて取付ける場合は、そのノズルヘッダーが設置されている領域、図7の場合は領域B5,B6から集砂を開始する。すなわち、ノズルヘッダーNH5,NH6から噴射を開始する。
【0030】
沈砂池2の底面の土砂堆積量が特に多い場合は、集砂開始当初に比較的多量の土砂が集砂ピット傾斜面8cに流れ込むことがあるが、ノズルヘッダーNH5,NH6の一端部のノズルが集砂ピット傾斜面8cに臨んでいるので、集砂ピット傾斜面8cの土砂の集砂ピット7への流入が促進される。したがって、集砂ピット傾斜面8cに個別の集砂ノズルを設けることを省くことができる。
【0031】
図8に示す例は、集砂ピット7および集砂ピット傾斜面8cの沈砂池における設置位置が図3の場合とほぼ同様であるが、集砂ピット7の上流側に隣接する領域B1,B2に設置されるノズルヘッダーNH1,NH2の一端部に設けてある少なくとも1個のノズルを、集砂ピット傾斜面8cに臨ませた例である。
【0032】
この例においては、図7の場合と同様に、ノズルを集砂ピット傾斜面8cに臨ませてあるノズルヘッダーNH1,NH2が設けられている領域B1,B2から集砂が開始される。その後は、領域B3,B4と領域B5,B6から順次集砂されるが、いずれを先にするかは任意である。
【0033】
図8に示す例においても、集砂ピット傾斜面8cに個別の集砂ノズルを設けなくても、集砂ピット傾斜面8cの土砂を集砂ピット7へ流入させることができる。
【0034】
図9に示す例は、集砂ピット7および集砂ピット傾斜面8cが沈砂池のほぼ中央に存在する場合に適用される実施の形態であり、集砂ピット7および集砂ピット傾斜面8cの両側に隣接する領域B1,B2、B5,B6に設置されるノズルヘッダーNH1,NH2、NH5,NH6のそれぞれの一端部に設けてある少なくとも1個のノズルを、集砂ピット傾斜面8cに臨ませた例である。
【0035】
図9に示す例においても、集砂ピット傾斜面8cに個別の集砂ノズルを設けなくても、集砂ピット傾斜面8cの土砂を集砂ピット7へ円滑に流入させることができる。
【0036】
図3に例示するように、ポンプ井3の給水ポンプP2からの水を前記各ノズル9a,9b,9cに供給したり、その供給を止めたりするための集砂弁群VG1,VG2、すなわち、トラフ用集砂弁Va1,Va2,Va3と、各ノズルヘッダー用集砂弁Vb1~Vb6と、土砂撹拌ノズル用集砂弁Vcとが備えられている。図7に例示するように、沈砂池の底面が6領域(B1~B6)に区分されている場合は、ノズルヘッダー用集砂弁Vbが6個(Vb1~Vb6)用いられる。各集砂弁は、従来の集砂弁と同様に、流量調整弁と切換弁を直結してなっている。
【0037】
集砂弁群VG1,VG2、すなわち、トラフ用集砂弁Va1,Va2,Va3と、各ノズルヘッダー用集砂弁Vb1~Vb6、土砂撹拌ノズル用集砂弁Vcは、集砂装置の図示されていない制御装置の集砂弁制御回路により所定の順序で開動作又は閉動作を駆動されるように構成されている。
【0038】
制御装置による各集砂弁の制御内容は、特許文献2,3に記載されているものと同様であるので、その記載をここに引用して、詳細な説明を割愛する。
【0039】
上述したように、集砂ピット傾斜面8cには集砂ノズルが設けられないが、トラフ8aおよび集砂ピット傾斜面8cから集砂ピット7内に流入する土砂の揚砂ポンプP3による吸引排除能率を向上させるため、攪拌ノズル9b1,9b2が図4,5に示すように取付けられている。一方の攪拌ノズル9b1は2個が揚砂ポンプP3の互いに反対側に、それぞれの噴射水が揚砂ポンプP3の吸い込み口の右側の至近位置を通過するように設けられ、他方の攪拌ノズル9b2は2個が揚砂ポンプP3の互いに反対側に、かつ揚砂ポンプP3を中心とする円上で攪拌ノズル9b1からの時計方向に離れた位置に、それぞれの攪拌ノズル9b1の噴射水が揚砂ポンプP3の吸い込まれる直前の位置に向けて噴射されるように設けられている。
【0040】
このような攪拌ノズル9b1,9b2の配置によって攪拌ノズル9b1,9b2からの噴射により、集砂ピットに流入した土砂が揚砂ポンプP3の吸い込み口の周囲で図4においては反時計方向の渦流を発生しながら、揚砂ポンプP3に吸い込まれる。
【0041】
また、攪拌ノズル9b1,9b2は、図5,6に示すように、それぞれの噴射口が揚砂ポンプP3の吸い込み口10よりも所要距離h1,h2だけ高い位置に設けられている。ノズル噴射口が揚砂ポンプP3の吸い込み口よりも高い位置に設けられていることにより、攪拌ノズル9b1,9b2から気泡が噴出されても、その気泡が揚砂ポンプP3の吸い込み口から吸い込まれる量を減らすことができるので、揚砂ポンプP3が空気たまりにより通水不能を生じるエアロックを防止することができる。つまり、除砂効率が向上する。このような攪拌ノズル9b1,9b2の配置態様による除砂効率の向上は、集砂ピット傾斜面8cに集砂ノズルが設けられず、ノズルヘッダーの端部のノズルからの噴射水のみでは集砂ピット傾斜面8cから集砂ピット7への土砂の流入に勢いがない場合に、とくに有効である。
【符号の説明】
【0042】
2 沈砂池
2a 沈砂池の底面
3 ポンプ井
P1 給水ポンプ
7 集砂ピット
P3 揚砂ポンプ
8a トラフ
8c 集砂ピット傾斜面
9a,9b 集砂ノズル
B1~B6 領域
NH1~NH6 ノズルヘッダー
9c ノズルヘッダーのノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11