(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】ナイロール式メガネ
(51)【国際特許分類】
G02C 1/02 20060101AFI20220607BHJP
G02C 1/04 20060101ALI20220607BHJP
G02C 5/02 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
G02C1/02
G02C1/04
G02C5/02
(21)【出願番号】P 2018098415
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】518180870
【氏名又は名称】中野 比呂史
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】兵井 伊佐男
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-281444(JP,A)
【文献】特開平09-258140(JP,A)
【文献】登録実用新案第3157458(JP,U)
【文献】特開平11-044865(JP,A)
【文献】特開平11-064802(JP,A)
【文献】特開2001-194631(JP,A)
【文献】特開2013-088538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントフレームにナイロン糸などの高張力糸を取付けてレンズを保持するナイロール式メガネにおいて、上記高張力糸はフロントフレームの少なくとも3か所で止着され、レンズ外周に設けた凹溝に高張力糸を嵌めることで該高張力糸に働く張力によってレンズ外周の一部をフロントフレームに当接して所定の位置に保持した
構造とし、
上記フロントフレームは、中央ブリッジ部の両側に滑らかな凸状に湾曲したリム部を形成したバーフレームと、バーフレームの中央部には当り片を有し、上記当り片の上端部と下端部に高張力糸の先端を止着すると共に上記リム部に高張力糸を係止し、そして該高張力糸をレンズ外周凹溝に嵌めてレンズ外周を上記当り片に当接したことを特徴とするナイロール式メガネ。
【請求項2】
当り片の上端部と下端部に高張力糸の先端を止着すると共に、上記リム部の2か所に
設けた穴又は係止片に高張力糸を係止した請求項1記載のナイロール式メガネ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナイロン糸等の高張力糸を備えてレンズを保持することが出来るフレームで、色々なレンズ形状、レンズサイズに対応出来、またレンズの欠けや割れを防止出来るようにしたナイロール式メガネに関するものである。
【背景技術】
【0002】
メガネフレームの1つの型式としてナイロールフレームが多用されている。このナイロールフレームとはナイロン糸(水糸)などの高張力糸にてレンズ半分を保持するフレームであって、例えば一般的に
図6に示しているような形態を成している。同図に示すフレームはあくまでも基本形態であり、実際には色々なデザインが施されて構成されることに成るが、円弧状のハーフリム(イ) の両端に水糸(ロ) の先端を止着し、ハーフリム(イ) と水糸(ロ) によってレンズ(ハ) が保持される。
【0003】
そして、両ハーフリム(イ) 、(イ) はブリッジ(ニ)にて連結され、ハーフリム(イ)、(イ)の外側にはヨロイ(ホ) 、(ホ) が取付けられている。ツル(ヘ)、(ヘ)はこのヨロイ(ホ)、(ホ)に蝶番(ト)、(ト)などの継手を介して折り畳み出来るように取付けられている。
【0004】
このナイロールフレームは両ハーフリム(イ)と水糸(ロ)にてレンズ(ハ)を保持している為に、リング状のフルリムを備えたメガネフレームより重量は軽くなり、特にフロント部が軽くなることで長時間にわたってメガネを掛けていても疲れが少ない。また、レンズ(ハ)の下側半分が水糸(ロ)である為に視界は広くなるといった利点もある。
【0005】
同図に示すナイロールフレームに限るものではないが、円弧状に湾曲したハーフリムの形状が定まると、このハーフリムに嵌って水糸にて保持されるレンズの形状は必然的に定まり、同時にレンズの大きさも定まってしまう。
水糸(ロ)はレンズ外周に形成した凹溝に嵌り、ハーフリム(イ)の内周にも凹溝が設けられ、該レンズ(ハ)とハーフリム(イ)は概略瓢箪形断面の水糸を介して繋がっている。
【0006】
レンズの形状並びに大きさが自由になるフレームとしては、リムを持たない縁なしメガネと称されるものがある。この縁なしメガネはブリッジを介して両レンズを左右対称となるように直接ネジ止めし、またレンズの外側にはヨロイが直接ネジ止めされる。そして、ブリッジのサイズを変えることで両レンズ間の距離も変えることが可能となり、レンズ形状も自由である。
しかし、リムを持たないでレンズに穴を開け、この穴にネジを挿入して直接ネジ止めすることで、ツルを開く際の応力及びフレームが捩られる際の応力は全てレンズに働き、その為にレンズが損傷する虞がある。
【0007】
上記
図6に示すナイロールフレームの場合もハーフリム(イ)とレンズ(ハ)は概略瓢箪形断面の水糸によって互いに連結・固定されている為に、ハーフリム(イ)の変形はそのままレンズ(ハ)に作用し、レンズ(ハ)を損傷する虞がある。
水糸を用いて構成したメガネフレームとしては、例えば特開平9-258141号に係る「ナイロールフレーム」、特開2001-194631号に係る「ナイロールフレーム」など、そしてリムを持たないメガネフレームとしては、例えば特開2002-244083号に係る「縁なしメガネ」、特開2006-58717号に係る「縁なしメガネ」など、色々知られている。
【0008】
【文献】特開平9-258141号に係る「ナイロールフレーム」
【文献】特開2001-194631号に係る「ナイロールフレーム」
【文献】特開2002-244083号に係る「縁なしメガネ」
【文献】特開2006-58717号に係る「縁なしメガネ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、水糸にてレンズを保持するナイロールフレームやリムを用いないでレンズを直接ネジ止めする縁なしメガネに関しては従来から色々知られているが、従来のナイロールフレームや縁なしメガネには上記のごとき問題がある。
本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、レンズ形状が変わっても、またレンズサイズが変更に成っても対応することが出来ると共に、フロントフレームが変形してもレンズの損傷を抑制することが出来るナイロール式メガネを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のナイロール式メガネはフロントフレームとナイロン糸などの高張力糸にてレンズを保持するように構成しているが、前記
図6に示すようなレンズ外周の約1/2を拘束することが出来るハーフリムを持たず、基本的には高張力糸によってレンズを保持している。
しかし、レンズを所定の位置に位置決め・保持する為にフロントフレームを有している。このフロントフレームに高張力糸を少なくとも3か所にて止着し、所定の位置に位置決めされたレンズは高張力糸に働く張力で保持・固定される。
【0011】
レンズはその外周の一部がフロントフレームに当接して位置決めされ、所定の位置に定まったレンズは高張力糸の張力で固定される。その為に、レンズ外周には凹溝が沿設され、この凹溝に高張力糸が嵌ってレンズを拘束している。
ところで、本発明はレンズ外周の一部を当接して位置決めするフロントフレームの形態及び当接箇所は自由であり、また高張力糸のフロントフレームへの止着箇所も限定しない。
【発明の効果】
【0012】
本発明のナイロール式メガネは、フロントフレームの一部にレンズ外周の一部を当接し、この当接したフロントフレームからレンズが離れないように高張力糸によって拘束している。高張力糸はフロントフレームの少なくとも3か所で止着されていて、その為にフロントフレームの一部に外周が当たることでレンズは該フロントフレームに安定して取付けられる。
【0013】
そして、ツルを開く際の曲げモーメントにてフロントフレームは曲げられ、又は捩られても、曲げ応力及び捩れ応力に伴う変形はレンズに作用しない。すなわち、本発明はそのレンズを基本的に高張力糸で保持しているもので、レンズの位置決めの為に一部がフロントフレームに当接している。したがって、フロントフレームの変形に影響されることはなく、その為にレンズの損傷を抑制することが出来る。
レンズの一部がフロントフレームに当接して位置決めされて高張力糸で拘束される為に、レンズの大きさが多少変わっても、またレンズの形状が多少変わっても、同じフロントフレームに取付け出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るナイロール式メガネを示す実施例。
【
図2】本発明のナイロール式メガネを構成する水糸の止着構造。
【
図3】本発明のナイロール式メガネを構成する水糸の他の止着構造。
【
図5】本発明に係るナイロール式メガネを示す他の実施例。
【
図6】従来の一般的なナイロール式メガネを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係るナイロール式メガネを示す実施例であり、片側半分を表している。ナイロール式メガネはフロントフレーム1にレンズ2を取付け、該フロントフレーム1には継手3を介してツル4が折畳み出来るように連結している。
上記フロントフレーム1は1本の連続した線材で構成しているバーフレーム5と概略門形をしたレンズ支えリム部6から成っている。
【0016】
上記バーフレーム5は滑らかな凹状に窪んだ中央ブリッジ部7の両側には滑らかな凸状に湾曲したリム部8,8を連続し、リム部8,8の外側には概略L形に湾曲して後方へ延びるヨロイ部9,9を連続して形成している。上記ツル4,4は該ヨロイ部9,9に継手3,3を介して連結している。
上記レンズ支えリム部6は概略門形を成し、上片10と両当り片11,11を有している。上片10はバーフレーム5の中央ブリッジ部7の下側に固定されている。
【0017】
当り片11はレンズ2の外周に沿って滑らかに湾曲している。同じく、バーフレーム5のリム部8もレンズ外周に沿って滑らかに湾曲している。
該レンズ2の外周は当り片11に当接し、水糸12に作用する張力によってレンズ2はフロントフレーム1に保持されているが、この水糸12は
図2に示すようにフロントフレーム1に取付けられている。
【0018】
上記レンズ支えリム部6の当り片11の上端部と下端部には小さい穴13a,13bが貫通し、この両穴13a,13bに水糸12が挿通して先端が止着される。水糸12の先端には溶融して形成されたボール14a,14bが設けられ、該ボール14a,14bは穴13a,13bを抜けない大きさとしている。
ここで、穴13a,13bに挿通した水糸12の先端を止着する手段として上記ボール14a,14bに限るものではない。
また、リム部8の中央にも対を成して近接した小さい穴15a,15bが貫通し、水糸12はこれら穴15a,15bを挿通している。
【0019】
このように、フロントフレーム1に止着して取付けた水糸12にレンズ2が嵌められ、
図1のようになるが、レンズ2の外周には凹溝16が設けられ、この凹溝16に水糸12が嵌められる。凹溝16に嵌った水糸12には所定の張力が働き、この張力によってレンズ2は当り片11に当接して位置決めされる。
すなわち、ボール14a,14bを設けている水糸12の先端側へレンズ2が引張られて位置決めされる。そして、水糸12がレンズの外周凹溝16に嵌っていることで、レンズ2は当り片11から外れることはなく、同じくリム部8からレンズ2が外れることない。
【0020】
リム部8の中央部に設けた穴15a,15bを水糸12が挿通しているが、該リム部8に引き寄せる力は作用しない為に、レンズ2はリム部8に接触圧が付加されて当接はしない。しかし、水糸12は穴13a,13bを挿通していることでリム部8からレンズ2が外れることはない。勿論、リム部8の内周に当接することは可能であるが、間に僅かな隙間を残して近接状態としてもよい。
【0021】
したがって、当り片11に当接し、リム部8に嵌るレンズ2でれば、レンズ2の大きさ及び形状を変えることも可能である。
水糸12は当り片11の上端部と下端部に設けた穴13a,13bとリム部8に設けた近接した両穴15a,15bの3点で止着されている。同図の穴15a,15bは分離しているが、水糸12をリム部8に係止するもので、1つの穴として機能している。
【0022】
このように、レンズ2はフロントフレーム1に水糸12を介して取付けられる。レンズ2はその外周の一部が当り片11に当接して位置決めされ、レンズ2のその他の部分は水糸12だけで保持されている。したがって、フロントフレーム1が曲げ変形しても、捩れ変形しても、レンズ2に直接影響することはなく、変形に伴って水糸12の張力が僅か変化するに過ぎない。その為に、レンズ2が欠けたり割れたりすることはなく、レンズ2は安定して保持される。
【0023】
図3は水糸12を4点で止着した実施例である。当り片11の上端部と下端部には穴13a,13bが貫通して設けられ、リム部8には2か所に水糸12の係止穴15,17を設けている。該係止穴15は対を成して近接した2個の穴15a,15bを有し、また係止穴17は対を成して近接した2個の穴17a,17bを有している。
そこで、この水糸12にレンズ2が嵌るならば、水糸12に働く張力でレンズ2の外周は当り片11に当接して位置決めされる。
【0024】
図4はリム部8に設けた係止穴15の形態を表している。
(a)は前記
図2、
図3に示した場合であり、対を成して近接した2個の穴15a,15bが互いに分離して設けられている。
(b)に示す係止穴は近接した2個の穴18a,18bを有しているが、該穴18a,18bは閉じておらず開口している。
(c)は、水糸12が係止する係止片9をリム部8に設けている。
図4(a)に示すように互いに独立した穴15a,15bより、(b)に示す開口した穴18a,18b及び係止片19の方が水糸12を係止し易く便利である。
【0025】
図5は水糸がフロントフレーム1に取付けられる別形態を表している。
同図の場合、2本の水糸20,21で構成されている。フロントフレーム1の形態は同じであって、当り片11の上端部と下端部にはそれぞれ小さい穴13a,13bが貫通して設けられ、リム部8の中央には互いに独立した2個の穴15a,15bを貫通して設けている。この実施例では2本の水糸20,21を用いているが、フロントフレーム1の3か所で水糸20,21は止着されている。
【0026】
ところで、水糸20は当り片11の下端部に設けた穴13bとリム部8に設けた穴15bにその先端が挿通している。水糸20の両先端にはボール22b,22bが形成されて、該ボール22b,22bは穴13b,15bから抜けない大きさとしている。また、水糸21の両先端にはボール22a,22aが形成されて、該ボール22a,22aは穴13a,15aから抜けない大きさとしている。
【0027】
レンズ2の外周に形成した凹溝には上記2本の水糸20,21が嵌められるが、これら水糸20,21に作用する張力で、レンズ2の外周は当り片11に当接し、またリム部8にも当接する。
前記
図2、
図3に示す水糸12の止着形態では、レンズ2の外周凹溝に水糸12が嵌るならば、該水糸12に働く張力でレンズ外周は当り片11に当接して位置決めされるが、
図5の場合では水糸20,21によってレンズ2の外周は当り片11とリム部8に当接して位置決めされる。
【0028】
上記実施例で示したフロントフレーム1は、両側にリム部8,8を設けたバーフレーム5とレンズ支えリム部6を中央部に有して構成しているが、このフロントフレーム1の形態はあくまでも1具体例に過ぎない。
フロントフレーム1の形態が如何様であっても、水糸は少なくとも3か所で止着され、レンズ2の外周の一部は水糸に働く張力で、フロントフレーム1に当接して位置決めされる。レンズ2がフロントフレーム1に当接する部分に関しても特に限定はしない。
【符号の説明】
【0029】
1 フロントフレーム
2 レンズ
3 継手
4 ツル
5 バーフレーム
6 レンズ支えリム部
7 中央ブリッジ部
8 リム部
9 ヨロイ部
10 上片
11 当り片
12 水糸
13 穴
14 ボール
15 穴
16 凹溝
17 穴
18 穴
19 係止片
20 水糸
21 水糸
22 ボール