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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】誘導標示およびその敷設方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/553 20160101AFI20220607BHJP
【FI】
E01F9/553
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018140835
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020016103
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】510106452
【氏名又は名称】NPO法人まちの案内推進ネット
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光生
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-007340(JP,A)
【文献】登録実用新案第3148930(JP,U)
【文献】登録実用新案第3110479(JP,U)
【文献】登録実用新案第3102796(JP,U)
【文献】特開2013-108338(JP,A)
【文献】特開2007-170100(JP,A)
【文献】特開平10-292327(JP,A)
【文献】特開2005-054452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内あるいは施設外の通路に敷設される誘導標示であって、
前記通路を移動する視覚障害者を所定の方向に誘導するための突起を有する複数の視覚障害者誘導用ブロックと、
前記通路の移動に制約を有する移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導するための誘導ラインとを備え、
前記視覚障害者誘導用ブロックは、前記通路に沿って連続的に並びながら敷設され、
前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、前記視覚障害者誘導用ブロックに視認可能な態様で一体的に設けられていることを特徴とする誘導標示。
【請求項2】
前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの前記突起以外の表面、あるいは前記突起の側面に設けられている請求項1に記載の誘導標示。
【請求項3】
前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、所定間隔ごとに複数設けられている請求項1または請求項2に記載の誘導表示。
【請求項4】
前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に直交する幅方向に複数設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の誘導表示。
【請求項5】
前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に直交する幅方向の一方側に片寄った状態で設けられている請求項1から請求項4のいずれかに記載の誘導表示。
【請求項6】
前記誘導ラインは、前記誘導ラインによる誘導先の方向を指示する形状に形成されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の誘導表示。
【請求項7】
前記誘導ラインによる誘導先に関する情報を表示する誘導補助表示が設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の誘導標示。
【請求項8】
前記誘導ラインおよび/または前記誘導補助表示は、前記誘導ラインによる誘導先の方向を指示する形状に形成されている請求項7に記載の誘導標示。
【請求項9】
施設内あるいは施設外の通路に敷設される誘導標示の敷設方法であって、
前記通路を移動する視覚障害者を所定の方向に誘導するための突起を有する複数の視覚障害者誘導用ブロックを、前記通路に沿って連続的に並べながら敷設したあと、
前記通路の移動に制約を有する移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導するための誘導ラインを、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、前記視覚障害者誘導用ブロックに視認可能な態様で一体的に設けることを特徴とする誘導表示の敷設方法。
【請求項10】
施設内あるいは施設外の通路に敷設される誘導標示の敷設方法であって、
前記通路の移動に制約を有する移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導するための誘導ラインを、前記通路を移動する視覚障害者を所定の方向に誘導するための突起を有する複数の視覚障害者誘導用ブロックであって、前記通路に沿って連続的に並びながら敷設された前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、前記視覚障害者誘導用ブロックに視認可能な態様で一体的に設けることを特徴とする誘導表示の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設内あるいは施設外の通路に敷設され、前記通路の移動に制約を有する移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導するための誘導標示およびその敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駅等の施設において、車椅子利用者など下肢に障害を持つ者、高齢者、妊婦、傷病者、その介助同行者、ベビーカー利用者、荷物が多いあるいは重い旅行者等(以下、移動制約者という)が所定の通路を移動する際、通路の階段等による段差が障害となって、通路を移動することが困難な場合があった
【0003】
そこで、近年、通常の通路に並行して、段差を解消するスロープやエレベータ等の設備(以下、バリアフリー設備という)を設置することにより、段差をなくした移動制約者用の経路(以下、バリアフリー経路という)を設けることが行われている。
【0004】
しかしながら、スロープやエレベータ等のバリアフリー設備は、階段等の設備に比べて大規模な設備になることから、設置スペースを確保するために通常の通路から離れた場所に設けられることも多く、バリアフリー設備を利用する移動制約者にとって所在がわかりにくいという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決する手段として、バリアフリー経路上の通路に誘導ラインを設け、該誘導ラインにより移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導することも考えられる。ところが、一般に駅等の施設の通路は、表面の形状、材質、色彩が一様ではないため、誘導ラインを通路に画一的に設けることが困難であった。また、仮に誘導ラインを通路に設けたとしても、表面の形状、材質、色彩の相違により、誘導ラインが認識しづらい箇所も生じるなどして、バリアフリー経路を認識することが困難な場合もあった。
【0006】
一方、従来から、通路を移動する視覚障害者を所定の方向に誘導する視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)が知られている。この視覚障害者誘導用ブロックは、上面に複数の線状の突起(移動方向を示すための突起)や点状の突起(注意を喚起する位置を示すための突起)を有する黄色い矩形のシート状部材であり、通路に沿って連続的に並んで敷設されている。これにより、視覚障害者は、白杖等を介してブロック上面の突起を知覚することにより、移動方向や注意を喚起する位置を認識することができる(特許文献1参照)。
【0007】
この視覚障害者誘導用ブロックは、全国に広く普及しており、例えば駅のホーム、歩道、地下道等の通路で見られ、改札口、券売機前、階段前、エレベータ前、乗降車位置等まで延びるように敷設されている。また、この視覚障害者誘導用ブロックは、ホームの線路側の縁部や、通路の中央近く等の非常に目立つ場所に敷設されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実用新案登録第3208457号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この視覚障害者誘導用ブロックは、あくまでも移動方向や注意を喚起すべき位置を示すに過ぎないものであり、その誘導先までも示すものではものでないため、移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導することは困難であった。
【0010】
具体的に説明すると、誘導用ブロックが直線状に並んでいる場所において、移動制約者は誘導用ブロックをどちらの方向に辿ればバリアフリー設備を利用することができるのかが全くわからなかった。また、誘導用ブロックが分岐している場所においても、移動制約者はどの誘導用ブロックを辿ればバリアフリー設備を利用することができるのかが全くわからなかった。
【0011】
このように、移動制約者は、視覚障害者誘導用ブロックをそのまま辿ろうとしても、その先でバリアフリー設備を利用することができるのかどうかがわからないため、結局、施設内外で右往左往したり、駅員や通行人に尋ねたりすることとなり、最終的には階段を使用しなければ出口に出れないといった事態が生じたり、車いす利用者にあっては、動けなくなって戻らなくてはならない事態が生じていた。
【0012】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、移動制約者を所定のバリアフリー経路に沿って簡単かつ確実に誘導することができる誘導標示を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、施設内あるいは施設外の通路に敷設される誘導標示であって、前記通路を移動する視覚障害者を所定の方向に誘導するための突起を有する複数の視覚障害者誘導用ブロックと、前記通路の移動に制約を有する移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導するための誘導ラインとを備え、前記視覚障害者誘導用ブロックは、前記通路に沿って連続的に並びながら敷設され、前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、前記視覚障害者誘導用ブロックに視認可能な態様で一体的に設けられていることを特徴とする。
【0014】
これによれば、誘導ラインが、視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、視覚障害者誘導用ブロックに視認可能な態様で一体的に設けられているため、視覚障害者誘導用ブロックのインフラを活用しながら、誘導ラインにより移動制約者を所定のバリアフリー経路に沿って簡単かつ確実に誘導することができる。
【0015】
また、前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの前記突起以外の表面、あるいは前記突起の側面に設けられてもよい。これによれば、誘導ラインが移動制約者を含む歩行者の靴底等に接触して摩耗することを軽減することができる。
【0016】
また、前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、所定間隔ごとに複数設けられてもよい。これによれば、誘導ラインを設ける箇所が少なくなるため、コストを削減することができる。
【0017】
また、前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に直交する幅方向に複数設けられてもよい。これによれば、幅方向に設けられた各誘導ラインの色彩または形状等を互いに変えることによって、各誘導ラインを異なるバリアフリー経路に対応させることができる。
【0018】
また、前記誘導ラインは、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に直交する幅方向の一方側に片寄った状態で設けられてもよい。これによれば、例えば、移動制約者から見て誘導ラインが視覚障害者誘導用ブロックの右側に片寄っている場合には、施設内に向かっていることを示す一方、移動制約者から見て誘導ラインが視覚障害者誘導用ブロックの左側に片寄っている場合には、施設外に向かっていることを示すことができる。
【0019】
また、前記誘導ラインによる誘導先に関する情報を表示する誘導補助表示が設けられてもよい。これによれば、移動制約者は、誘導補助表示を確認することにより、誘導ラインによる誘導先に関する情報を容易に認識することができる。
【0020】
また、前記誘導ラインおよび/または前記誘導補助表示は、前記誘導ラインによる誘導先の方向を指示する形状に形成されてもよい。これによれば、誘導ラインによる誘導先の方向を直観的に認識することができる。
【0021】
また、本発明に係る誘導表示の敷設方法は、施設内あるいは施設外の通路に敷設される誘導標示の敷設方法であって、前記通路を移動する視覚障害者を所定の方向に誘導するための突起を有する複数の視覚障害者誘導用ブロックを、前記通路に沿って連続的に並べながら敷設したあと、前記通路の移動に制約を有する移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導するための誘導ラインを、前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、前記視覚障害者誘導用ブロックに視認可能な態様で一体的に設けることを特徴とする。これによれば、施設内あるいは施設外の通路において視覚障害者誘導用ブロックと誘導表示を同時に構成することができる。
【0022】
また、本発明に係る誘導表示の敷設方法は、施設内あるいは施設外の通路に敷設される誘導標示の敷設方法であって、前記通路の移動に制約を有する移動制約者をバリアフリー経路に沿って誘導するための誘導ラインを、前記通路を移動する視覚障害者を所定の方向に誘導するための突起を有する複数の視覚障害者誘導用ブロックであって、前記通路に沿って連続的に並びながら敷設された前記視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、前記視覚障害者誘導用ブロックに視認可能な態様で一体的に設けることを特徴とする。これによれば、既設の視覚障害者誘導用ブロックに誘導ラインを設けるため、コストを抑えながら誘導表示を構成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、誘導ラインが、視覚障害者誘導用ブロックの敷設方向に沿って、視覚障害者誘導用ブロックに視認可能な態様で一体的に設けられているため、視覚障害者誘導用ブロックのインフラを活用しながら、誘導ラインにより移動制約者を所定のバリアフリー経路に沿って簡単かつ確実に誘導することができる。
【0024】
すなわち、視覚障害者誘導用ブロックは、駅等の施設内外の様々な箇所において、通路の目立つ箇所に敷設されているところ、そのような視覚障害者用誘導ブロックに誘導ラインが設けられているため、移動制約者は誘導ラインによりバリアフリー経路を容易に認識することができ、誘導ラインを見ながらバリアフリー経路を辿ることにより目的の誘導先に簡単かつ確実に到達することが可能となる。
【0025】
また、視覚障害者用誘導ブロックは、通常、規定の線状または点状の突起が表面に設けられ、互いに同じ形状、材質、色彩のものからなるため、誘導ラインを視覚障害者用ブロックに画一的に設けることができるとともに、誘導ラインのメンテナンスも容易に行うことができる。
【0026】
さらに、視覚障害者誘導用ブロックの敷設後においても誘導ラインを視覚障害者誘導用ブロックに簡単かつ確実に設けることができる。
【0027】
而して、視覚障害者誘導用ブロックというすでに全国的に普及しているインフラを活用することによって、視覚障害者のみならず移動制約者も利用可能なユニバーサルデザイン(UD)化が実現され、視覚障害者誘導用ブロックの価値を大きく向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る誘導標示を示す平面図である。
図2図1の誘導標示を示す断面図である。
図3】誘導補助表示を示す平面図である。
図4図1の誘導標示の使用方法を説明するための施設の斜視図である。
図5図4の施設の場所Aの拡大平面図である。
図6図4の施設の場所Bの拡大平面図である。
図7図4の施設の場所Cの拡大平面図である。
図8図4の施設の場所Dの拡大平面図である。
図9】他の実施形態に係る誘導標示を示す断面図である。
図10】他の実施形態に係る誘導表示を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明に係る誘導標示の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
本誘導標示1は、施設内あるいは施設外の通路に敷設される誘導標示であって、通路を移動する視覚障害者を所定の方向に誘導するための視覚障害者誘導用ブロック2と、通路の移動に制約を有する移動制約者をバリアフリー径路に沿って誘導するための誘導ライン3と、誘導ライン3の近傍に設けられた誘導補助表示4とを備える。
【0031】
なお、「移動制約者」とは、車椅子利用者など下肢に障害を持つ者、階段利用を避ける高齢者、妊婦、傷病者、その介助同行者、ベビーカー利用者、荷物が多いあるいは重い旅行者等、通路の移動に制約を有する者をいう。また、視覚障害者誘導用ブロックが敷設される方向を「敷設方向」といい、敷設方向に直交する方向を「幅方向」という。
【0032】
前記視覚障害者誘導用ブロック2は、図1に示すように、いわゆる視覚障害者用の点字ブロックと呼ばれるものであって、例えばJIS規格による縦300mm、横300mmの正方形の薄板状に形成され、黄色に着色された樹脂から構成される。なお、視覚障害者用誘導ブロック2の形状、色、材質はこれらに限定されるものではなく、その他の形状、色、材質から構成されてもよい。
【0033】
また、前記視覚障害者誘導用ブロック2は、図2に示すように、表面21に複数の突起22が設けられている。具体的には、この視覚障害者誘導用ブロックは、図2(a)に示すように、表面21に線状の突起22aが形成され、視覚障害者を敷設方向に誘導する誘導用のブロックと、図2(b)に示すように、表面21に点状の突起22bが形成され、視覚障害者に注意を警告を喚起する警告用のブロックとの2種類のブロックがあり、これら誘導用のブロックと警告用のブロックが組み合わさって通路に沿って連続的に並びながら敷設されることにより、視覚障害者を所定の方向に誘導し得るものとなされている。
【0034】
前記誘導ライン3は、バリアフリー経路上の視覚障害者誘導用ブロック2の敷設方向に沿って、視覚障害者誘導用ブロック2に視認可能な態様で一体的に設けられている。本実施形態では、誘導ライン3は、視覚障害者誘導用ブロック2の色彩(黄色)とは異なる色彩(青色)であって、図1に示すように、各視覚障害者誘導用ブロック2の表面21における幅方向の左側縁部に設けられることによって、バリアフリー経路上の視覚障害者誘導用ブロック2の敷設方向に沿って連続した直線状の青色のラインを構成する。なお、バリアフリー経路以外の通路に存在する視覚障害者誘導用ブロック2には誘導ライン3が設けられない。
【0035】
このように誘導ライン3が、視覚障害者誘導用ブロック2の敷設方向に沿って、視覚障害者誘導用ブロック2に視認可能な態様で一体的に設けられるため、視覚障害者誘導用ブロック2というインフラを利用しながら、誘導ライン3により移動制約者を所定のバリアフリー径路に沿って簡単かつ確実に誘導することができる。
【0036】
すなわち、視覚障害者誘導用ブロック2は、駅等の施設内外の様々な箇所において、通路の目立つ箇所に敷設されているところ、そのような視覚障害者用誘導ブロック2に誘導ライン3が設けられているため、移動制約者は誘導ライン3によりバリアフリー経路を容易に認識することができ、誘導ライン3を見ながらバリアフリー経路を辿ることにより目的の誘導先に簡単かつ確実に到達することが可能となる。
【0037】
また、視覚障害者用誘導ブロック2は、本実施形態のようにJIS規格等の規定の線状または点状の突起が表面に設けられ、互いに同じ形状、材質、色彩のものからなるため、誘導ラインを視覚障害者用ブロック2に画一的に設けることができるとともに、誘導ライン3のメンテナンスも容易に行うことができる。
【0038】
また、視覚障害者誘導用ブロック2の敷設後においても、誘導ライン3を視覚障害者誘導用ブロック2に簡単かつ確実に設けることができる。
【0039】
また、本実施形態では、前記誘導ライン3は、視覚障害者誘導用ブロックの色彩(黄色)とは異なる色彩(青色)に着色されているため、誘導ライン3が黄色の視覚障害者誘導用ブロック2を背景に映えて見えることで、移動制約者は誘導ライン3をより簡単かつ確実に視認することができる。
【0040】
また、前記誘導ライン3は、視覚障害者誘導用ブロック2の幅方向の一方側に片寄った状態で設けられている。これによれば、移動制約者Uから見て誘導ライン3が視覚障害者誘導用ブロック2の右側に片寄っている場合には、施設内に向かっていることを示す一方、移動制約者Uから見て誘導ライン3が視覚障害者誘導用ブロック2の左側に片寄っている場合には、施設外に向かっていることを示すことができる。
【0041】
また、日本語を解さない外国人観光客の移動制約者に対しても比較的容易にバリアフリー経路に沿って誘導することができる。さらに、天井等に設けられている数多くの標識を確認しなくても直観的にバリアフリー経路を認識することができる。
【0042】
前記誘導補助表示4は、誘導ライン3による誘導先に関する情報を表示するものであって、図3に示すように、誘導ライン3による誘導先の方向(図3では左方向)を指示する矢羽根形状に形成され、車椅子利用者等のアイコン41や、誘導先に関する文字(出口/EXIT、番号、JR線/JR Lineなど)42が表示されている。また、誘導補助表示4は、対応する誘導ライン3と同一の色彩(青色)に着色されている。
【0043】
このように、誘導補助表示4が誘導ライン3による誘導先の方向を指示する形状に形成されるため、移動制約者は誘導補助表示4を確認することにより、誘導先の方向を直感的に認識することができる。
【0044】
また、誘導補助表示4がアイコン41により対象者を表示し、文字42により誘導先を表示するため、移動制約者は誘導補助表示4を確認することにより誘導先に関する情報を容易に認識することができる。
【0045】
さらに、誘導補助表示4が対応する誘導ライン3と同一の色彩で表示されるため、移動制約者は確認した誘導補助表示4がどの誘導ライン3に対応するのか直感的に認識することができる。
【0046】
なお、前記誘導補助表示4は、図3(a)に示すように、誘導先が改札外の施設である場合は、内側を塗りつぶすとともに、内側に表示されるアイコン41や文字42を抜き文字(白抜きや色抜き)にすることが挙げられる。例えば、図3(a)の上段に示す誘導補助表示4は、車椅子利用者等の移動制約者を対象とし、誘導先が改札外のバリアフリーな出口であることを表す。また、図3(a)の中段に示す誘導補助表示4は、車椅子利用者等の移動制約者を対象とし、誘導先が改札外のバリアフリーな2番出口であることを表す。また、図3(c)の下段に示す誘導表示4は、誘導先がJR線で改札外であることを表す。
【0047】
一方、図3(b)に示すように、誘導先が改札内の施設である場合は、内側を縁取るとともに、内側に表示されるアイコン41や文字42を塗りつぶすことが挙げられる。例えば、図3(b)に示す前記誘導補助表示4は、車椅子利用者等の移動制約者を対象とし、誘導先が改札内の東西線ホームTであることを表す。
【0048】
これらのアイコン41や文字42により、移動制約者は、誘導先が改札外の施設であるのか、改札内の施設であるのかを直感的に認識することができる。
【0049】
次に、誘導標示1の敷設方法について説明する。
【0050】
まず、前記突起22を有する複数の視覚障害者誘導用ブロック2を、通路に沿って連続的に並べながら敷設する。
【0051】
次に、前記誘導ライン3を、視覚障害者誘導用ブロック2の敷設方向に沿って、視覚障害者誘導用ブロック2に視認可能な態様で一体的に設ける。このとき視覚障害者誘導用ブロック2に誘導ライン3を設ける方法としては、視覚障害者誘導用ブロック2の表面21に誘導ライン3を塗布する方法や、視覚障害者誘導用ブロック2の表面21に別材の誘導ライン3を貼着する方法などが挙げられる。
【0052】
これによれば、誘導表示1を敷設現場の状況に応じて簡単かつ確実に構成することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、視覚障害者誘導用ブロック2は、新たに敷設するものとしたが、既に敷設されたものを利用してもよい。
【0054】
次に、誘導標示1の使用方法について図4図8を参照しつつ説明する。
【0055】
なお、図4は、東西線ホームTと南北線ホームNを有する某地下駅の内部を表し、西改札口G1と東改札口G2が地下1階、東西線ホームTが地下2階、南北線ホームNが地下3階に配置されている。
【0056】
まず、代表的な移動制約者である車椅子利用者U1が地下2階の東西線ホームTの東側の場所Aで降車し、地上の出入口あるいは地下3階の南北線ホームNに向かう場合について説明する。なお、図4に示すように、東西線ホームTのエレベータEV1は、階段の裏側に設けられており、場所Aから死角となっている。
【0057】
車椅子利用者U1は、図5に示すように、東西線ホームの場所Aに敷設された誘導ライン3が東西方向に延びていることと、誘導ライン3に沿って設けられた誘導補助表示4を確認し、誘導ライン3に沿って設けられた誘導補助表示4のうち、一方の誘導補助表示4aにより誘導ライン3の誘導先の方向が西方向であることと、誘導先が改札外の出口であることを認識し、他方の誘導補助表示4bにより同じ誘導ライン3の誘導先の方向が西方向であることと、誘導先が改札内の南北線ホームNであることを認識する。
【0058】
次に、車椅子利用者U1は、場所Aから誘導ライン3に沿って東西線ホームTを西方向に移動して、東西線ホームTの西側のエレベータEV1に到達して、該エレベータEV1を利用することにより一つ上の地下1階に上る。
【0059】
次に、車椅子利用者U1は、地下1階でエレベータEV1を降りて、該エレベータEV1から誘導ライン3に沿って東方向に移動した後、北方向に移動して、西改札口G1内の場所Bに到達する。この場所Bにおいて、図6に示すように、車椅子利用者U1は、誘導ライン3が西方向の西改札側に延びておらず、東方向に延びていることを確認して、西改札口G1を経由するルートがバリアフリー径路ではなく、東方向に向かうルートがバリアフリー径路であることを認識する。
【0060】
次に、車椅子利用者U1は、西改札口G1内の場所Bから誘導ライン3に沿って東西方向の通路を東方向に移動した後、南方向に移動して、東改札口G2内の場所Cに到達する。この場所Cにおいて、図7に示すように、車椅子利用者U1は、誘導ライン3が東方向の東改札口G2側に延びていることを確認して、東改札口G2を経由するルートが出入口に到達するバリアフリー径路であることを認識する。また、車椅子利用者U1は、誘導ライン3が南北線ホームNに降りる階段の隣で南方向に延びていることを確認して、別に設けられた案内板等により南方向に向かうルートが南北線ホームNに到達するバリアフリー径路であることを認識する。
【0061】
次に、図4の地下駅の出入口に向かう場合、車椅子利用者U1は、東改札口G2内の場所Dから東改札側に延びる誘導ライン3に沿って東方向に移動した後、東改札口G2外の場所Dに到達する。この場所Dにおいて、図8に示すように、車椅子利用者U1は、誘導ライン3が南方向に延びておらず、北方向に延びていることを確認して、南方向に向かうルートが出入口に到達するバリアフリー径路ではなく、北方向に向かうルートが出入口に到達するバリアフリー径路であることを認識する。
【0062】
その後、車椅子利用者U1は、場所Eから誘導ライン3に沿って北方向に移動した後、北側に設けられたエレベータEV2を利用することにより、地上の出入口に上る。
【0063】
一方、図4の地下駅の南北線ホームNに向かう場合、車椅子利用者U1は、東改札口G2内の場所Cから南方向に延びる誘導ライン3に沿って南方向に移動した後、エレベータEV3に到達して、該エレベータEV3を利用することにより一つの下の地下2階に下る。
【0064】
次に、車椅子利用者U1は、地下2階でエレベータEV3を降りて、該エレベータEV3から誘導ライン3に沿って南方向と西方向に移動した後、エレベータEV4に到達して、該エレベータEV4を利用することにより地下3階に下る。
【0065】
その後、車椅子利用者U1は、地下3階でエレベータEV4を降りて、エレベータEV4から誘導ライン3に沿って北方向に移動して、南北線ホームNの中央付近に到達する。
【0066】
次に、移動制約者である車椅子利用者U2が地上の出入口から入り、地下2階の東西線ホームTの東側の場所Aに向かう場合について説明する。
【0067】
車椅子利用者U2は、地上の出入口から北東のエレベータEV2を利用することにより一つ下の地下1階に下る。
【0068】
次に、車椅子利用者U2は、地下1階でエレベータEV2を降りて、該エレベータEV2から誘導ライン3に沿って南方向に移動して、東改札口G2外の場所Dに到達する。この場所Dにおいて、図8に示すように、車椅子利用者U1は、誘導ライン3が南方向ではなく、西方向の東改札口G2側に延びていることを確認して、東改札口G2を経由するルートがバリアフリー径路であることを認識する。
【0069】
次に、車椅子利用者U2は、場所Dから誘導ライン3に沿って西方向に移動して、東改札口G2内の場所Cに到達する。ここで、図7に示すように、車椅子利用者U2は、場所Dに敷設された誘導ライン3が北側と南側に延びていることと、北側に延びる誘導ライン3に沿って設けられた誘導補助表示4を確認して、北方向に延びる誘導ライン3が東西線ホームTに到達するバリアフリー経路であることを認識する。
【0070】
次に、車椅子利用者U2は、場所Cから北側に延びる誘導ライン3に沿って通路を北方向に移動した後、西方向に移動して、西改札口G1内の場所Bに到達する。ここで、図6に示すように、車椅子利用者U2は、場所Bに敷設された誘導ライン3が西方向ではなく、南方向に延びていることと、南方向に延びる誘導ライン3に沿って設けられた誘導補助表示4を確認して、南方向に延びる誘導ライン3が東西線ホームTに到達するバリアフリー経路であることを認識する。
【0071】
次に、車椅子利用者U2は、場所Bから南方向に延びる誘導ライン3に沿って通路を南方向に移動した後、西方向に移動して、エレベータEV1に到達して、該エレベータEV1を利用することにより一つ下の地下2階に下る。
【0072】
その後、車椅子利用者U2は、地下2階でエレベータEV1を降りれば、東西線ホームTに到達する。
【0073】
次に、本発明に係る誘導標示の他の実施形態について図10を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0074】
図10(a)に示す誘導ライン3は、視覚障害者誘導用ブロック2の表面における1個の突起22aを囲む態様で設けられている。
【0075】
図10(b)の誘導ライン3は、視覚障害者誘導用ブロック2の2個の突起22aの間に設けられている。
【0076】
また、図10(c)(d)に示す誘導ライン3は、視覚障害者誘導用ブロック2の敷設方向に直交する幅方向に2本設けられている。このうち、図10(c)に示す誘導ライン3は、互いに同一の色彩で着色されている。一方、図10(d)に示す誘導ライン3は、互いに異なる色彩で着色されている。このように、幅方向に設けられた各誘導ライン3の色彩を互いに変えたり、あるいは形状を互いに変えることによって、各誘導ライン3を異なるバリアフリー経路に対応させることができる。なお、図10(c)(d)において、誘導ライン3が幅方向に2本設けられている場合について説明したが、誘導ライン3が幅方向に3本以上設けられてもよい。
【0077】
また、図10(e)(f)に示す誘導ライン3は、視覚障害者誘導用ブロック2の敷設方向に沿って、所定間隔ごとに複数設けられている。これによれば、誘導ライン3を設ける箇所が少なくなるため、コストを削減することができる。このうち、図10(e)に示す各誘導ライン3は、矢羽根形状に形成されているため、誘導ライン3の誘導先の方向をより直観的に認識することができる。
【0078】
また、前記誘導ライン3は、本実施形態のように視覚障害者誘導用ブロック2の突起22以外の表面21に設けられてもよいし、図9に示すように、視覚障害者誘導用ブロック2の突起22の側面220に設けられてもよい。これによれば、誘導ライン3が移動制約者を含む歩行者の靴底等と接触して摩耗することを軽減することができる。
【0079】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…誘導標示
2…視覚障害者誘導用ブロック
21…表面
22…突起
220…側面
3…誘導ライン
4…誘導補助表示
41…アイコン
42…文字
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10