IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 錦城護謨株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図1
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図2
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図3
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図4
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図5
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図6
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図7
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図8
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図9
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図10
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図11
  • 特許-層別沈下計の設置方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】層別沈下計の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20220607BHJP
   E02D 3/10 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
E02D1/00
E02D3/10 103
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020104520
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021195826
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-04-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)計画書提出日 :令和1年10月30日 計画書提出先 :国土交通省北海道開発局釧路開発建設部 提出した者 :▲辻▼谷建設株式会社 (2)試験日 :令和1年11月7日及び同8日 試験場所 :北海道釧路市鶴野 試験を行った者:錦城護謨株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591159675
【氏名又は名称】錦城護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白神 新一郎
(72)【発明者】
【氏名】榊原 司
(72)【発明者】
【氏名】本間 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】村田 有基
(72)【発明者】
【氏名】川辺 慶司
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-45917(JP,A)
【文献】実開昭61-50123(JP,U)
【文献】特開2002-206230(JP,A)
【文献】特開2002-155526(JP,A)
【文献】中国実用新案第208395798(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って地中に打ち込まれる筒状のケーシングと、出退自在にリールに巻回されたドレーン材とを備えるドレーン材打設装置を用いて地盤に層別沈下計を設置する方法であって、
前記層別沈下計は、
ロッドアセンブリと、
平板部と、前記ロッドアセンブリを前記平板部に対して垂直に支持する支持部とを有するアンカー部材と、
前記ロッドアセンブリが挿入される保護チューブアセンブリと、
を有しており、
前記ロッドアセンブリは、複数のロッドを直列に連結することで構成されており、
前記保護チューブアセンブリは、複数のチューブを直列に連結することで構成されており、
前記方法は、
前記複数のロッドを連結させて前記ロッドアセンブリを組み立てる工程であって、前記ロッドアセンブリは、前記ケーシングの上方から前記ケーシング内に挿入されたロープを用いて吊り下げられる、工程と、
前記複数のチューブを連結させて、前記ロッドアセンブリが挿入されるように前記保護チューブアセンブリを組み立てる工程であって、前記保護チューブアセンブリは前記ドレーン材を用いて吊り下げられる、工程と、
前記ロッドアセンブリの下端部と、前記アンカー部材の前記支持部とを連結する工程と、
前記ケーシングの先端を前記アンカー部材の前記平板部と当接させた状態で、前記平板部を地面に置く工程と、
前記リールから前記ドレーン材を送り出しつつ前記ケーシングを地盤に打ち込んで、所定の深度に前記アンカー部材の前記平板部を配置する工程と、
前記ケーシングを地盤から引き抜く工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記複数のロッドを連結させて前記ロッドアセンブリを組み立てる工程は、
前記ロープの端部を前記ケーシングの先端近傍に配置する工程と、
前記複数のロッドのうちの一本のロッドの端部を前記ロープの端部に繋げる工程と、
前記ロープを引き上げつつ、前記一本のロッドに残りのロッドを連結することで、前記ケーシングに挿入されるように前記ロッドアセンブリを組み立てる工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保護チューブアセンブリを組み立てる工程は、
前記ドレーン材の端部を前記ケーシングの先端近傍に配置する工程と、
前記複数のチューブのうちの一本のチューブの端部を前記ドレーン材の端部に繋げると共に、前記ロッドアセンブリの下端部が前記一本のチューブに挿入されるように前記一本のチューブを配置する工程と、
前記ドレーン材を前記リールに巻き戻しつつ、前記一本のチューブに残りのチューブを連結することで、前記ロッドアセンブリに沿うように前記保護チューブアセンブリを組み立てる工程と、
を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ケーシングを地盤に打ち込んで所定の深度に前記アンカー部材の前記平板部を配置する工程では、前記ケーシングの打ち込み中に、前記アンカー部材に対する前記保護チューブアセンブリの位置は概ね維持される、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記保護チューブアセンブリの下端部を、前記アンカー部材の前記平板部付近に配置する工程と、
前記ケーシングを地盤に打ち込んで所定の深度に前記アンカー部材の前記平板部を配置する工程の後、前記ケーシングを地盤から引き抜く工程の前に、前記保護チューブアセンブリを所定の距離だけ引き上げる工程と、
を含む、請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記平板部の上面には、前記ケーシングに対する前記アンカー部材の前記平板部の位置を規制する規制手段が設けられている、請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記ロープの他端部は前記ロープに張力を与える張力発生装置又は巻上装置に繋がれており、前記ロープは前記張力発生装置又は巻上装置によって操作される、請求項1乃至6の何れかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の沈下を測定するために地中に配置される層別沈下計の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透水性の高い多数のドレーン材を適切な間隔で鉛直方向に沿って軟弱な粘性土地盤に打設して、土中の水を排出するバーチカルドレーン工法は、軟弱地盤の改良に広く使用されている。バーチカルドレーン工法では、ドレーン材の打設後に、地盤に盛土を段階的に施すことで、荷重による排水により地盤の圧密を促進させて地盤強度を増加させることがなされている。
【0003】
バーチカルドレーン工法においては,荷重に対して地盤の沈下を適切に管理することが求められることから、土層別の間隙水圧や沈下量を測定して、それらの測定値に基づいて追加される盛土の量及び圧密完了時期を決定することが行われている。
【0004】
層別沈下量の測定方法の1つとして、所謂レベル測量が知られている。レベル測量では、測定ロッドと、当該測定ロッドが固定されるアンカーとを備える層別沈下計が使用され、アンカーが沈下量を測定する土層の上面に配置される。測定ロッドはアンカーから地上へと延出し、測定ロッドの上端の変位がレベル測定器で測定されることで、対象である土層の沈下量が得られる(非特許文献1の871頁参照)。
【0005】
層別沈下計には、測定対象である土層の上層において測定ロッドが直接圧力を受けることで、アンカーが測定対象の土層に沈み込んで正確な測定が行われない事態を抑制するために、測定ロッドは保護パイプに挿入されている。保護パイプの下端は、測定対象の土層から上方に所定の距離だけ離間して配置されており、測定期間中に上層の影響を受けて保護パイプが沈み込んでも、保護パイプがアンカーに接触して押さないようにされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】地盤調査の方法と解説-二分冊の2 訂正第2刷(発行日:平成26年3月31日 発行:公益社団法人地盤工学会 販売:丸善出版株式会社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような層別沈下計を設置するためには、ボーリングマシンを用いて地盤にボーリング孔を掘削し、そのボーリング孔に層別沈下計を挿入することが行われている。現場にボーリングマシンを設置してボーリングを行うことは、煩雑で施工期間の増加をもたらし、施工コストの点からも好ましくない。
【0008】
ボーリングマシンを用いて層別沈下計を設置する場合、アンカーの大きさがボーリング孔の直径で制限されることから、安定に層別沈下計を設置するために、土層にねじ込まれるスクリューアンカーが広く使用されている。しかしながら、このようなスクリューアンカーを設置する工程も煩雑であり、場合によってはボーリング孔にモルタルを流し込んで安定化させることも行われている。
【0009】
上記のように保護パイプを配置するために、アンカー及び測定ロッドを設置した後にボーリング孔に埋め戻し土を落とし込むことが行われているが、このような作業も煩雑で、工期と施工コストの増加をもたらす。
【0010】
本発明は、これらの問題を解決するものであり、バーチカルドレーン工法の1つであるプラスチックボードドレーン工法の施工現場で用いられるドレーン材打設装置を用いて層別沈下計を設置する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の方法は、鉛直方向に沿って地中に打ち込まれる筒状のケーシングと、出退自在にリールに巻回されたドレーン材とを備えるドレーン材打設装置を用いて地盤に層別沈下計を設置する方法であって、前記層別沈下計は、ロッドアセンブリと、平板部と、前記ロッドアセンブリを前記平板部に対して垂直に支持する支持部とを有するアンカー部材と、前記ロッドアセンブリが挿入される保護チューブアセンブリと、を有しており、前記ロッドアセンブリは、複数のロッドを直列に連結することで構成されており、前記保護チューブアセンブリは、複数のチューブを直列に連結することで構成されており、前記方法は、前記複数のロッドを連結させて前記ロッドアセンブリを組み立てる工程であって、前記ロッドアセンブリは、前記ケーシングの上方から前記ケーシング内に挿入されたロープを用いて吊り下げられる、工程と、前記複数のチューブを連結させて、前記ロッドアセンブリが挿入されるように前記保護チューブアセンブリを組み立てる工程であって、前記保護チューブアセンブリは前記ドレーン材を用いて吊り下げられる、工程と、前記ロッドアセンブリの下端部と、前記アンカー部材の前記支持部とを連結する工程と、前記ケーシングの先端を前記アンカー部材の前記平板部と当接させた状態で、前記平板部を地面に置く工程と、前記リールから前記ドレーン材を送り出しつつ前記ケーシングを地盤に打ち込んで、所定の深度に前記アンカー部材の前記平板部を配置する工程と、前記ケーシングを地盤から引き抜く工程と、を含んでいる。
【0012】
本発明の方法では、前記複数のロッドを連結させて前記ロッドアセンブリを組み立てる工程は、前記ロープの端部を前記ケーシングの先端近傍に配置する工程と、前記複数のロッドのうちの一本のロッドの端部を前記ロープの端部に繋げる工程と、前記ロープを引き上げつつ、前記一本のロッドに残りのロッドを連結することで、前記ケーシングに挿入されるように前記ロッドアセンブリを組み立てる工程と、を含んでよい。
【0013】
本発明の方法では、前記保護チューブアセンブリを組み立てる工程は、前記ドレーン材の端部を前記ケーシングの先端近傍に配置する工程と、前記複数のチューブのうちの一本のチューブの端部を前記ドレーン材の端部に繋げると共に、前記ロッドアセンブリの下端部が前記一本のチューブに挿入されるように前記一本のチューブを配置する工程と、前記ドレーン材を前記リールに巻き戻しつつ、前記一本のチューブに残りのチューブを連結することで、前記ロッドアセンブリに沿うように前記保護チューブアセンブリを組み立てる工程と、を含んでよい。
【0014】
本発明の方法では、前記ケーシングを地盤に打ち込んで所定の深度に前記アンカー部材の前記平板部を配置する工程では、前記ケーシングの打ち込み中に、前記アンカー部材に対する前記保護チューブアセンブリの位置は概ね維持されてよい。
【0015】
本発明の方法は、前記保護チューブアセンブリの下端部を、前記アンカー部材の前記平板部付近に配置する工程と、前記ケーシングを地盤に打ち込んで所定の深度に前記アンカー部材の前記平板部を配置する工程の後、前記ケーシングを地盤から引き抜く工程の前に、前記保護チューブアセンブリを所定の距離だけ引き上げる工程と、を含んでよい。
【0016】
本発明の方法では、前記平板部の上面には、前記ケーシングに対する前記アンカー部材の前記平板部の位置を規制する規制手段が設けられてよい。
【0017】
本発明の方法では、前記ロープの他端部は前記ロープに張力を与える張力発生装置又は巻上装置に繋がれており、前記ロープは前記張力発生装置又は巻上装置によって操作されてよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プラスチックボードドレーン工法の現場において、ドレーン材打設装置を用いて層別沈下計を設置できるので、施工現場にボーリングマシンを設置して地盤にボーリング孔を掘削する必要、更にはボーリング孔を埋め戻す必要がなく、工期の短縮や施工コストの低減が図られる。
【0019】
また、本発明によれば、従来の層別沈下計と比較して大きな平板部を有するように層別沈下計を構成できるので、層別沈下計のアンカーが土圧を受ける面積を増加させて、より安定且つ正確に層別沈下計による測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に基づいて地盤に設置される層別沈下計と、当該層別沈下計の設置に使用される部材等とを示す側面図である。
図2図2は、本発明に基づいて地盤に設置される層別沈下計が備えるロッドアセンブリ及びアンカー部材を示す側面図である。
図3図3は、本発明に基づいて地盤に設置される層別沈下計が備えるアンカー部材の側面図である。
図4図4は、本発明に基づいて地盤に設置される層別沈下計が備えるアンカー部材の平面図である。
図5図5は、本発明に基づいて地盤に設置される層別沈下計が備えるロッドアセンブリを構成するロッドの側面図である。
図6図6は、本発明に基づいて地盤に設置される層別沈下計が備える保護チューブアセンブリを示す側面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態である層別沈下計の設置方法を示す説明図である。
図8図8は、本発明の一実施形態である層別沈下計の設置方法を示す説明図である。
図9図9は、本発明の一実施形態である層別沈下計の設置方法を示す説明図である。
図10図10は、本発明の一実施形態である層別沈下計の設置方法を示す説明図である。
図11図11は、本発明の一実施形態である層別沈下計の設置方法を示す説明図である。
図12図12は、本発明の一実施形態である層別沈下計の設置方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を参照しつつ、本発明を説明する。図1は、本発明に基づいて地盤に設置される層別沈下計1と、層別沈下計1の設置に使用される部材等とを示す側面図である。
【0022】
層別沈下計1は、ロッドアセンブリ2と、ロッドアセンブリ2が連結されるアンカー部材3と、ロッドアセンブリ2が挿入される保護チューブアセンブリ4とを備えている。アンカー部材3は、平板部31と、ロッドアセンブリ2の下端部が連結される支持部32とを有している。支持部32は、ロッドアセンブリ2を平板部31に対して垂直に支持する。
【0023】
本発明では、層別沈下計1は、プラスチックボードドレーン工法においてドレーン材9(図6及び図7等参照)を地盤に打設する作業に使用されるドレーン材打設装置7(図7等参照)を用いて地盤に設置される。ドレーン材打設装置7を用いて層別沈下計1を設置する手順の詳細については後述するが、本発明の特徴の一つは、ロッドアセンブリ2とその周囲にある保護チューブアセンブリ4とが、ドレーン材打設装置7のケーシング71(図1に一点鎖線で示す)内にて組み立てられる点にある。この際、ケーシング71内に上方から通されたロープ8がロッドアセンブリ2の組立てに使用されて、組み立てられたロッドアセンブリ2はロープ8を用いて吊り下げられる。
【0024】
図2は、ロッドアセンブリ2及びアンカー部材3を示す側面図である。図3は、アンカー部材3の側面図であり、図4は、アンカー部材3の平面図である。図5は、ロッドアセンブリ2を構成するロッド21を示す側面図である。
【0025】
アンカー部材3の平板部31は、後述するように、ケーシング71を地盤に打ち込む際にケーシング71内に土砂が進入しないように、ケーシング71の先端に配置された状態にてケーシング71の先端開口を完全に塞ぐ大きさを有する必要がある。図4に示すように本実施形態では平板部31の形状は正方形であるが、本発明の作用効果が得られる限りにおいて、平板部31の形状は限定されず、例えば長方形や円形であってもよい。アンカー部材3は、打込み時に破損しないように鉄などの金属で形成されることが好ましい。
【0026】
アンカー部材3の支持部32は、平板部31の上面に設けられており、平板部31の略中央から上方に延出する支柱33と、支柱33から側方に延出する複数の脚34とを備えている。本実施形態では、支柱33は、平板部31の上面に対して垂直に設けられた正角柱であって、4つの脚34の各々は三角形状に形成されており、支柱33の各角から当該角に最も近い平板部31の隅に向かって延びている。支柱33の先端には、平板部31の上面に対して垂直に雄ねじ部35が突設されている。
【0027】
平板部31の上面には、ケーシング71の先端が平板部31の上面と当接する際及び当接した後において、ケーシング71に対する平板部31又は層別沈下計1の位置を規制する規制手段が設けられている。本実施形態では、規制手段は、支持部32の外側に設けられた4つの矩形の突起36であって、各突起36は、(本実施形態では隅丸四角筒状の)ケーシング71の各側面に対応して設けられており、ケーシング71の先端が平板部31の上面と当接すると、ケーシング71の側面に隣接するように配置されている(図4にて、ケーシング71を一点鎖線で示す)。本発明の作用効果が得られる限りにおいて、突起36の形状や数は限定されない。層別沈下計1の設置においては、ケーシング71と平板部31を最終的に分離させる必要があることから、規制手段は、ケーシング71に平板部31を固定するようには構成されない。
【0028】
図2に示すように、ロッドアセンブリ2は、複数のロッド21を直列に連結して構成される。各ロッド21の一端には、雄ねじ部22がロッド21の長手方向に沿って突設されており、各ロッド21の他端には、雌ねじ部23がロッド21の長手方向に沿って形成されている。あるロッド21の雄ねじ部22は、その直上に位置するロッド21の雌ねじ部23と螺合する。ロッドアセンブリ2において最も下に位置するロッド21の雌ねじ部23は、アンカー部材3の支持部32の雄ねじ部35と螺合する。ロッドアセンブリ2において最も上に位置するロッド21の雄ねじ部22は、吊りナット24と螺合する。吊りナット24は、スイベル25を介してロープ8と繋がれる。スイベル25は、例えば、片シャックル型のスイベルであって、スイベル25のシャックルが吊りナット24のリングと係合する。シャックルに対して旋回自在に設けられたスイベル25のリングには、ロープ8の一端に固定されたシャックルやフックなどの係止手段(図示せず)が係合する。スイベル25は、後述するロッドアセンブリ2の組立て工程などにおいて、ロープ8のねじれを防止するために設けられる。
【0029】
層別沈下計1のアンカー部材3、より具体的にはその平板部31は、測定対象である土層の上面に配置される(図11及び図12参照)。ロッドアセンブリ2は、アンカー部材3から地中を上方に延びて地上に突出し、ロッドアセンブリ2の上端の変位がレベル測定器(図示せず)で測定されることで、測定対象である土層の沈下量が得られる。ロッドアセンブリ2の長さは、アンカー部材3を所定の設定深度に設置した場合に、沈下量測定に適した高さでロッドアセンブリ2が地面から突出するように設定される。
【0030】
アンカー部材3の設定深度に応じてロッドアセンブリ2の長さを適切に変更可能とするために、長さ別に複数のロッド21が予め準備され、設定深度に応じた適切な長さになるように、予め準備されたこれらのロッド21からロッドアセンブリ2を構成するロッド21の組が選択される。例えば、図5に示すように、使用される各ロッド21の長さは、500mm、700mm、及び1000nmから選択される。本発明において、ロッド21の長さは、これらの値に限定されず、ロッド21の長さも3種類に限定されないことは明らかである。なお、ロッド21の長さは、後の説明から理解できるように、ドレーン材打設装置7のケーシング71が待機位置にある場合において、ケーシング71の先端から地表までの距離よりも十分に短いことが求められる。ロッド21を形成する材料には、例えば、鉄等の金属が使用される。
【0031】
図6は、保護チューブアセンブリ4を示す側面図である。保護チューブアセンブリ4は、測定対象である土層の上層においてロッドアセンブリ2が直接圧力を受けることで、アンカー部材3が測定対象の土層に沈み込んで正確な測定が行われない事態を抑制するために設けられる。
【0032】
保護チューブアセンブリ4は、複数のチューブ41が直列に連結されて構成されている。各チューブ41は、継手42を用いて連結されている。本実施形態では、チューブ41の両端には雄ねじ(図示せず)が形成されており、継手42は円筒状に形成されており、その内面には雌ねじ(図示せず)が形成されている。連結される2本のチューブ41の端部が夫々継手42と螺合することでこれらチューブ41は連結される。チューブ41の連結手段は、本実施形態に限定されず、チューブ41間の結合を地中にて保持できる限りにおいて、任意の手段が用いられてよい。チューブ41及び継手42を形成する材料は特に限定されず、例えばチューブ41及び継手42は、塩化ビニールで形成されてよい。
【0033】
後述するように、保護チューブアセンブリ4は、ケーシング71内に上から通されたドレーン材9を用いてケーシング71内にて組み立てられる。完成した保護チューブアセンブリ4はドレーン材9を用いて吊り下げられる。保護チューブアセンブリ4において最上の位置するチューブ41の上端には、ドレーン材9の先端に繋ぐための係合手段が設けられている。本実施形態では、係合手段は、例えば金属製のワイヤー43であって、ワイヤー43の両端は、チューブ41の径方向に離間するようにチューブ41の上端に固定されている。本実施形態では、このように閉じられたワイヤー43の内側に帯体91を通して、帯体91の一端を帯状のドレーン材9の一方の主面に固定し、帯体91の他端を帯状のドレーン材9の他方の主面に固定することで、保護チューブアセンブリ4がドレーン材9に吊り下げられる。本実施形態では、ドレーン材9は、周知である帯状のドレーン材であって、例えば、帯状の樹脂製の芯体と、当該芯体の両側に固定された透水性のフィルターとを備えており、芯体の両側には、ドレーン材9の長さ方向に水路となる複数の溝が形成されている。帯体91のドレーン材9への固定には、例えばステープル(図示せず)が使用される。
【0034】
図7乃至図12は、本発明の一実施形態に基づいて上記の層別沈下計1を地盤に設置する方法を示す説明図である。プラスチックボードドレーン工法で使用されるドレーン材打設装置7は、鉛直方向に沿って移動自在に配置された上述のケーシング71に加えて、例えばクローラーである移動手段と、ドレーン材打設装置7に含まれる各種の機構や手段を制御する制御手段とを有する移動台車72と、ケーシング71を支持するリーダ73と、ケーシング71を上下に駆動する駆動手段であるフリクションローラ群74と、ドレーン材9が巻回されたリール75と、リール75から引き出されたドレーン材9をガイドするガイド機構76とを備えている。本発明において、ドレーン材打設装置7の種類は限定されず、本実施形態のようなフリクションローラ式ではなく、ワイヤー式やチェーン駆動式のドレーン材打設装置が使用されてよい。
【0035】
まず、ドレーン材打設装置7の移動手段が駆動することで、図7に示すように、予め決定された(地表の)打設位置の上方にケーシング71が位置するように、ドレーン材打設装置7が配置される。次に、ドレーン材打設装置7のリール75を駆動して、ドレーン材9の先端部が、地上から離間した待機状態にあるケーシング71の先端(下端)近傍に配置される。待機状態においてケーシング71の先端は、作業員がアクセス可能な高さに配置される。
【0036】
次に、ロープ8(図7乃至図12において破線で示す)が、ケーシング71の上からその内部に挿入されて、その端部がケーシング71の先端近傍に配置される。ロープ8の他方の端部は、ドレーン材打設装置7の付近に設けられており、ロープ8に張力を与える張力発生装置又は巻上装置81に繋がれている。張力発生装置又は巻上装置81を駆動することでロープ8の送り出し又は引き戻しが行われる。張力発生装置又は巻上装置81としては、ウインチやホイストなどの公知の装置が使用される。本発明において張力発生装置又は巻上装置81の設置場所は限定されず、例えば、張力発生装置又は巻上装置81はドレーン材打設装置7に設けられてよく、ロープ8を案内する滑車等の案内手段がドレーン材打設装置7やその周囲に設けられてよい。
【0037】
次に、図8に示すように、一本のロッド21がロープ8の先端に繋がれる。この際、上述したように、ロッド21の上端に吊りナット24が螺合されて、スイベル25に、吊りナット24とロープ8の先端の係止手段とが取り付けられる。次に、必要に応じて張力発生装置又は巻上装置81が操作されて、ロッド21は、その端部が(地上から)作業に適した適当な高さに位置するように配置される。そして、ロープ8に繋がれたロッド21の下に次のロッド21が連結される。
【0038】
その後、ロープ8が引き上げられて、下側にあるロッド21の端部が(地上から)作業に適した高さに位置するように、連結されたロッド21全体が引き上げられる。その後、下側にあるロッド21に次のロッド21を継ぎ足すことと、張力発生装置又は巻上装置81を操作してロープ8を引き上げて、連結された一連のロッド21の下端を作業に適した高さに位置するように配置することが繰り返されることで、ロッドアセンブリ2が組み立てられる。組み立てられたロッドアセンブリ2は、ロープ8を用いてケーシング71内に吊られており、ロッドアセンブリ2の下端はケーシング71の先端付近に配置される。
【0039】
以上のように、ケーシング71の先端の近くで、ロッド21を継ぎ足す作業がなされることから、ロッド21の長さは、ケーシング71が待機位置にある場合において、ケーシング71の先端から地表までの距離よりも、継ぎ足し作業がスムーズに行える程度に短い必要がある。なお、ロッド21の継ぎ足しと、ロープ8の引き上げとは、適宜行われてよく、ロッド21の長さ次第では、複数本のロッド21の継ぎ足しがなされた後に、ロープ8の引き上げが行われて、最下のロッド21の下端が適切な高さに配置されてよい。
【0040】
次に、図9に示すように、保護チューブアセンブリ4の組立てがなされる。まず、上述したようにしてドレーン材9の先端部に一本のチューブ41が繋がれる。次に、ロッドアセンブリ2の下端部にそのチューブ41が挿入され、リール75が操作されて適当な高さだけドレーン材9が引き上げられて、チューブ41の下端が作業に適した適当な高さに位置するようにチューブ41が吊り下げられる。次に、ドレーン材9に繋がれているチューブ41に、上述したようにしてチューブ41が連結される。その後、ドレーン材9を引き上げて継ぎ足されたチューブ41にロッドアセンブリ2が挿入される。次に、最下にあるチューブ41に次のチューブ41が継ぎ足される。ドレーン材9の引き上げとチューブ41の継ぎ足しとが繰り返されることで、ケーシング71内にてロッドアセンブリ2の周囲に保護チューブアセンブリ4が組み立てられる。保護チューブアセンブリ4は、その下端からロッドアセンブリ2の下端が外側に出るように配置される。
【0041】
このようにして、ケーシング71の先端の近くで、チューブ41を継ぎ足す作業がなされることから、チューブ41の長さは、ケーシング71が待機位置にある場合において、ケーシング71の先端から地表までの距離よりも、継ぎ足し作業がスムーズに行える程度に短い必要がある。なお、チューブ41の継ぎ足しとドレーン材9の引き上げとは、適宜行われてよく、チューブ41の長さ次第では、複数本のチューブ41の継ぎ足しがなされた後にドレーン材9の引き上げがなされて、最下のチューブ41の下端が適切な高さに配置されてよい。なお、保護チューブアセンブリ4は同じ長さのチューブ41で構成されてよく、又は、長さが異なる複数の種類のチューブ41で構成されてもよい。
【0042】
保護チューブアセンブリ4の組立てが完了すると、ロッドアセンブリ2の下端とアンカー部材3の平板部31の支持部32とを上述したように結合させることで、ロッドアセンブリ2とアンカー部材3が連結される。その後、図10に示すように、張力発生装置又は巻上装置81が駆動することでロープ8が引き上げられて、アンカー部材3の平板部31にケーシング71の先端が当接する。その際、ケーシング71の先端は、規制手段である突起36の内側に配置されて、ケーシング71に対するアンカー部材3の位置ずれが抑制される。保護チューブアセンブリ4の下端は、アンカー部材3の支持部32と当接する。
【0043】
次に、ドレーン材打設装置7のフリクションローラ群74がケーシング71を待機位置から下降させるように駆動して、アンカー部材3の平板部31が地面に配置される。この際、ロープ8には、張力発生装置又は巻上装置81を用いて張力が与えられて、アンカー部材3の平板部31は、ケーシング71の先端に向かって付勢される。
【0044】
アンカー部材3の平板部31が地面に配置された後、更にフリクションローラ群74が動作することでケーシング71は地盤に打ち込まれる。ケーシング71の下降に伴い、リール75からドレーン材9が送り出され、張力発生装置又は巻上装置81からロープ8が送り出される。ケーシング71の打ち込み中に、アンカー部材3に対する保護チューブアセンブリ4の位置は維持される又は概ね維持されるように、ドレーン材9の送出しが調整される。
【0045】
図11に示すように、計測対象である土層Lの上面に対応する所定の設置深度にアンカー部材3の平板部31が至ると、ケーシング71は停止する。アンカー部材3の設置深度は、公知の方法で予め決定されている。図11は、地上から4番目にある土層Lの上面にアンカー部材3が配置された模様を示している。この状態で、ロッドアセンブリ2の上端側は、所定の高さだけ地表よりも高く配置されている。その後、リール75がドレーン材9を巻き戻すように駆動されて、保護チューブアセンブリ4の下端が、所定の距離だけ平板部31の上面よりも上方に位置するように保護チューブアセンブリ4が引き上げられる。所定の距離は、例えば1乃至2mにされ、沈下量の測定期間中に土層Lの上にある上層の影響を受けて保護チューブアセンブリ4が沈み込んでも、保護チューブアセンブリ4がアンカー部材3に接触して押さないように設定される。保護チューブアセンブリ4の長さは、保護チューブアセンブリ4が所定の距離だけ引き上げられた状態で、保護チューブアセンブリ4の上端が地上よりも高い位置に、且つ、ロッドアセンブリ2の上端よりも十分に低い位置にあるように定められる。
【0046】
保護チューブアセンブリ4が引き上げられた後、ドレーン材打設装置7のフリクションローラ群74がケーシング71を上昇させるように駆動し、ケーシング71の先端は、アンカー部材3の平板部31から離れる。ケーシング71は地盤から引き抜かれて、上記の待機位置に停止する。その後、吊りナット24をロッドアセンブリ2の上端から取り外してロープ8(とスイベル25及び吊りナット24)をロッドアセンブリ2から分離すると共に、帯体91を切断してドレーン材9の端部を保護チューブアセンブリ4の上端から分離することで、層別沈下計1の設置が完了する。ケーシング71を引き抜く際に、土層Lの上層にある土砂がケーシング71が占めていた領域に戻るように移動するので、層別沈下計1は、上述した状態で地盤に埋められる。
【0047】
以上のようにして、本発明の方法に基づいて、層別沈下計1は、プラスチックボードドレーン工法で使用されるドレーン材打設装置7を用いて地中に配置される。本発明の方法によれば、ドレーン材9を打設する施工現場において、ドレーン材打設装置7を流用して層別沈下計1を地中に配置できることから、ボーリング孔を掘削する従来方法と比較して工期の短縮と施工コストの低減が図られる。また、ケーシング71の打込深度と層別沈下計1の設置深度が対応していることから、ドレーン材打設装置7の運転記録システムを用いて、層別沈下計1の設置深度の記録及び管理ができる利点もある。
【0048】
また、本発明では、従来方法のようにボーリング孔を埋め戻すような作業を行うことなく層別沈下計1が設置できるので、工期の短縮や施工コストの低減が図られる。また、アンカー部材3の平板部31の面積を、従来の層別沈下計と比較して大きくできるので、アンカー部材3が土圧を受ける面積を増加させて、より安定且つ正確に層別沈下計1による測定を行うことができる。
【0049】
本発明の効果を損なうことなく、ドレーン材打設装置7を用いて層別沈下計1を設置可能な限りにおいて、上記実施形態の手順又は工程は変更されてよい。例えば、保護チューブアセンブリ4がアンカー部材3の平板部31に対して上記の所定の距離だけ配置された状態でケーシング71が打ち込まれ、ケーシング71の下降中に所定の距離を維持するようにドレーン材9の送り出しがなされることで、ケーシング71の打ち込み後に保護チューブアセンブリ4を引き上ける工程が省略されてよい。
【0050】
また、ロッドアセンブリ2の組立て工程中におけるロープ8の位置やロッドアセンブリ2の中間体の位置、そしてロープ8を引き上げるタイミング等は、ケーシング71に挿入されるようにロッドアセンブリ2が最終的に組み立てられる限りにおいて、適宜変更されてよい。ロッドアセンブリ2が挿入されるように保護チューブアセンブリ4が最終的に組み立てられる限りにおいて、完成されたロッドアセンブリ2の位置も、保護チューブアセンブリ4の組立て工程の前、又はその最中において適宜変更されてよい。保護チューブアセンブリ4の組立て工程中におけるドレーン材9の位置や保護チューブアセンブリ4の中間体の位置、そしてドレーン材9を引き上げるタイミング等は、ロッドアセンブリ2が挿入されるように保護チューブアセンブリ4が最終的に組み立てられる限りにおいて、適宜変更されてよい。
【0051】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 層別沈下計
2 ロッドアセンブリ
21 ロッド
3 アンカー部材
31 平板部
32 支持部
36 突起
4 保護チューブアセンブリ
41 チューブ
7 ドレーン材打設装置
71 ケーシング
75 リール
8 ロープ
81 張力発生装置又は巻上装置
9 ドレーン材
L 土層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12