(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】豆腐類連続製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 11/45 20210101AFI20220607BHJP
【FI】
A23L11/45 A
(21)【出願番号】P 2020198886
(22)【出願日】2020-11-30
(62)【分割の表示】P 2016254815の分割
【原出願日】2016-12-28
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591162631
【氏名又は名称】株式会社高井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】高井 東一郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 正秀
(72)【発明者】
【氏名】長田 宏治
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-227092(JP,A)
【文献】特開2011-167145(JP,A)
【文献】特開2008-029246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/00-70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温豆乳に凝固剤を添加して、固液混合物であるおぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物とするとともに適宜粗壊する凝固装置と、
前記おぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物に含まれる「ゆ」を取り除き、前記おぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物よりも固形分濃度が濃い固液混合物である濃厚な豆乳凝固物を得る水取り装置と、
前記凝固装置から前記水取り装置へ前記おぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物を供給するための第一の送り装置と、
前記水取り装置で得られた濃厚な豆乳凝固物を受けるホッパーと、
前記ホッパーに貯留された濃厚な豆乳凝固物を分配装置に供給するための第二の送り装置と、
成型装置入口側に設けられ、前記成型装置下布上に前記濃厚な豆乳凝固物を均等に連続的に分配する前記分配装置と、
前記濃厚な豆乳凝固物を圧密して豆腐類に成型する前記成型装置を備え、
前記水取り装置を経て得られた豆乳凝固物が貯留
される前記ホッパーよりも上方に前記分配装置が設けられるとともに、前記凝固装置、前記水取り装置、前記成型装置が平坦な動線となるように略水平に配されることを特徴とする豆
腐類連続製造装置。
【請求項2】
前記水取り装置を経て得られた濃厚な豆乳凝固物を受ける前記ホッパーが、前記成型装置入口側に備わる前記分配装置の受け入れ高さよりも下方の位置にあり、前記第二の送り装置には定量ポンプを使用して、下方にある濃厚な豆乳凝固物を上方にある前記分配装置へポンプアップして供給することを特徴とする請求項1に記載の豆腐類連続製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐類連続製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凝固装置からの豆乳凝固物の全量(薄い固形分濃度である固液混合物)は適宜受けタンクに貯められ、落差によって又はポンプ(定量ポンプ)によって、水取り装置へ送られ、適当量の「ゆ」(ホエー、しみず、離水、とも言う。)が除かれる。得られたまだ「ゆ」を含んでいる濃厚な豆乳凝固物は、その後、成型装置入口側にある分配装置に落差によって供給され、その分配装置で成型装置下布の上に均等に分配され、成型装置でプレス・成型されることで豆腐類が得られる。
【0003】
図1~3は、このような従来の豆腐類の連続製造装置を示す一例である。
図1は従来の豆腐類の連続製造装置を示す側面図である。
図1は、成型装置Mdの上部に凝固装置Cを一体に配置することで、凝固容器Cc、ホッパーH、水取り装置Wr、分配装置Dに高低差をつけた豆腐類の連続製造装置90である。この配置構成により、凝固装置Cによって凝固させた豆乳凝固物(薄い固液混合物)t1を、落差によって成型装置Mdへ移送させる。すなわち、供給工程Suにおいて、凝固容器Ccから排出された豆乳凝固物t1はその自重によって、スロープsl1を介してホッパーHに供給され、ホッパーHから水取り装置Wrに落差によって供給された後、「ゆ」(ホエー)t2が分離される。分離した適度に「ゆ」を含んだ濃厚な凝固物t3は、スロープsl2を介して分配装置Dに供給されることにより、後工程の分配成型工程DMに入る。「ゆ」を含んだ濃厚な凝固物t3は分配装置Dによってスロープsl4を介して成型装置Mdの濾過布(下布)f3上に分配され、その後成型装置Mdで成型される。
図2は従来の豆腐類の連続製造装置の異なる一形態を示す側面図である。
図1と同じく成型装置Mdの上部に凝固装置Cを配置することで、凝固容器Ccから排出された豆乳凝固物t1は、その自重によりスロープsl3を介して後工程に送られる。しかし
図1とは異なり本形態の豆腐類の連続製造装置91では、豆乳凝固物t1はホッパーHを介さず、直接水取り装置に供給される。その後の工程は
図1と同じである。このように各装置の形態、サイズ、配置に応じて豆乳凝固物t1をホッパーHで受ける工程は省略され、直接水取り装置に送られる場合もある。
図1、
図2に示した装置では凝固装置Cを成型装置Mdの上部に載置するので、装置の配置に必要なスペースが小さくなり平面上でみた場合には省スペースを実現できる点がメリットと言える。しかし立体的に配置するため、天井高さが必要となる。また装置が2階建てとなるため作業の際に昇り降りする労力が増す。そのため製品調整上必要な水取り装置調整がおろそかになりやすい。さらに装置の掃除がしにくく、かつ装置の洗浄の際には上から洗浄飛沫が周囲に飛散しやすいため不衛生になりやすいというデメリットがある。
図3は従来の豆腐類の連続製造装置の別の一形態を示す側面図である。本形態の豆腐類の連続製造装置92では、
図1や
図2とは異なり、供給工程Suと分配工程DMとは並列に配置される。すなわち成型装置Mdの上部に凝固装置Cを配置せず、成型装置Mdと凝固装置Cとは互いに独立して並列に配置される。高低差による移送が困難であるため、豆乳凝固物の移送にはポンプPが用いられる。ポンプPを用いるため、凝固装置Cと成型装置Mdとは必ずしも並置される必要はないが、一般的に床に配置されるため並列(略水平)となる。
図3において、凝固容器Ccから排出された豆乳凝固物t1は、スロープsl1を介してホッパーH内に供給される。ホッパーHは、モータmと撹拌羽根sbからなる撹拌装置sを備えており、豆乳凝固物t1はホッパーH内で撹拌装置sにより撹拌された後、ホッパーH内に連結された配管pi1を通って、ポンプPによってpi2を通って水取り装置Wrに豆乳凝固物(薄い固液混合物)t1を定量的に送り込む。水取り装置Wr上の豆乳凝固物t1は、「ゆ」t2が取り除かれ、分離した「ゆ」を含んだ濃厚な凝固物t3はスロープsl2を介して分配装置Dに移送された後、分配装置Dによってスロープsl4(その上流側に、図示しない上流堰が別途あってもよいが、その上流堰を兼ねてもよい。)を介して成型装置Mdの濾過布上に分配され、成型される。
図3の装置は、
図1、
図2に示した装置とは異なり、凝固装置Cと成型装置Mdとを並置する。従って凝固装置を床置きするため凝固調整がしやすい点はメリットである。また落差式と異なり、ポンプPによって水取り装置に豆乳凝固物(薄い固液混合物)を定量的に送り込むので、安定した水切り状態になるメリットもある。しかし平面上で見たときにはスペースが必要な点がデメリットである。また水取り装置が上方にあるため、
図1や
図2に示した装置同様のデメリットが生じる。例えば装置の洗浄の際には上方から洗浄飛沫が周囲に飛散しやすいため不衛生になりやすい。また足場がないためかえって掃除がしにくく、水取り装置の調整も行いにくく、水取り装置調整もおろそかになりやすい。加えて、薄いおぼろ状の凝固物をポンプアップするのに大きな容量のポンプが必要になり、消費電力も多くなる。またポンプが高価となるため装置も高価となる。
【0004】
特許文献1は、2階建ての凝固成型装置が開示され、金網ドラム回転式の水取り装置がプレス部に対して高所に位置することが開示されている。特許文献2は
図1に「とうふ供給装置」(本願でいう「分配装置」)が開示され、
図5~7に上下無端コンベアを備えた成型装置が開示されている。特許文献3は
図1に上下無端コンベアを備えた成型装置が開示されている。特許文献4は
図1に上下無端コンベアを備えた成型装置が開示されている。特許文献5は凝固機から成型装置へ、豆乳凝固物全量を盛り込む装置・方法が開示され、
図16(a)には本願の
図3と同じ形態が記載され、
図16(b)には本願の
図2と同じ形態が記載されている。
図9には下布を水取りベルトに用い、その水取り部を高所に位置する形態が開示されている。
図19~20には各種分配手段が開示されている。なお
図8の「固液混合物」は本願で言う水取り前の薄い豆乳凝固物と同じものであり、同じく「豆乳凝固物」は本願で言う水取り後の濃い豆乳凝固物と同じものである。
特許文献6は、パイプラインにスパイラル上の部分を設けた豆乳凝固熟成装置を成型装置上部に設置して立体的に配置した形態が記載されている。
図1、
図4は豆乳がスパイラル状部分進むことで豆乳をおぼろ状(綿状の凝固物と「ゆ」が混在した状態。本願で言う「おぼろ状の薄い豆乳凝固物」に相当する。)に熟成凝固させ、おぼろ状ないしはプリン状凝固物を崩した粒状なしは小塊状の豆乳凝固物を、パイプライン出口から排出し、水取り装置を介して「ゆ」を除いて、濃厚な豆乳凝固物を、上下濾布ベルトを備えた連続成型装置(ないしは型箱と空気コンプレッサのバッチ式工程)へ送る装置が開示されている。特許文献6では
図1に水取装置MSが高い位置に図示されており、本発明において従来例として示した
図2、
図3と類似した形態のみが記載されている。
特許文献7は基台に垂直姿勢で固定される豆腐類用バッチ式凝固装置が開示されており、各凝固容器の下方から豆乳凝固物排出手段を介して後工程の成型工程へ豆乳凝固物を排出する。後工程の成型工程は図示されていないが、連続成型装置の豆乳凝固物の受けタンクに供給したり、該受けタンクを介さずに豆乳凝固物と「ゆ」(ホエー)を分離する水取機に直接供給したりすることが開示されている。また全量盛り込み方式では、豆乳凝固物の受けタンクや水取機は介さずに、分配装置のホッパーに直接供給して分配装置によって下布上に豆乳凝固物を均等に分配することや、分配装置を介さずに連続成型装置の下布上へ直接供給することが開示されている。特許文献7では明細書0016段落、0019段落に水取り装置に関する記載があるが、水取り装置の位置(高さ)に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭50‐89996号公報
【文献】実開昭50‐134388号公報
【文献】特公昭52‐5583号公報
【文献】特公昭53‐39507号公報
【文献】特開2010‐227092号公報
【文献】特開2011‐167145号公報
【文献】特開2014‐132902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、水取り装置が高所にある場合や製造装置が2階建ての場合、オペレーターの高所作業が伴う危険があり、洗浄しにくく不衛生になりやすく、洗浄中は熱い洗浄薬液が上方から飛散する危険性もあり、衛生面、作業性に問題があった。また、製造作業中に階段を繰り返し往復する労力を必要とし、スペースが狭いことで作業がしづらい環境となっていた。そのためオペレーターが離職しやすく労働力不足が生じており、負担のかかる作業を少しでも軽減できる装置が求められている。
【0007】
また従来の技術では高所に水取り装置がある場合、落差(重力)を利用して移送するため、豆乳凝固物の濃淡や粒度にバラツキが起きやすかった。また水取り装置が高所にあると目視しにくい高さのため、水取り具合を小まめに調整しにくく、製品調整上、重要な水取り工程の管理が不足がちであった。また落差によって豆乳凝固物に空気を噛み込んで、油揚の表皮を薄くしたり、中身の組織が不均一になったりする場合もあり、そのため製品品質が不安定になりロスになる一因にもなっていた。豆腐生地(硬い木綿豆腐)の場合、空気を噛み込み過ぎると水槽やボイル槽で豆腐が浮くというトラブルに陥ることもあった。一般に、原料の大豆品質、大豆浸漬、粉砕、煮沸、分離などの豆乳の製造条件、豆乳濃度や温度、凝固剤種類や添加量や凝固撹拌条件などの凝固条件、その他消泡剤などの品質改良剤の影響などによって、凝固粒子の状態が変化・変動し、それに伴って水切り具合が変化・変動し、成型工程で得られる豆腐生地の水分含量や結着力に影響し、油揚等の最終製品の品質に多少なりとも影響する。そのためオペレーターが常に水切り状態を監視し、微調整を行う必要がある。従来は高所のため監視の目が行き届きにくく、微調整も十分になされていないケースが多かった。
【0008】
また固形分濃度が薄い豆乳凝固物をポンプで送る際や前後の各バランスタンク等で受ける際に「ゆ」(ホエー)と豆乳凝固物が分離しやすく、撹拌機を備える必要があり、撹拌機が無い場合には製品品質のムラに繋がる恐れもあった。撹拌機の羽根には長時間の生産中、豆乳凝固物由来の付着物が増えて、衛生的にも製品品質的にも好ましくなく、撹拌羽根は無いか、できるだけシンプルな構造が好ましかった。
【0009】
このような背景から最近では、
図1や
図2に示した2階建ての製造装置や、
図3に示した水取り装置が高所にある製造装置のような、配置の際にスペースを取らない製造装置よりも、衛生面、作業性、製品品質を向上させた、オペレーターに優しい製造装置が求められている。すなわち配置スペースが必要となったとしても、ラインの機長が長く、直線ラインで、作業の際に歩くのに上下する必要が無く、平坦な同線で、作業性がよくなるメリットの方がユーザーに求められる傾向がある。またこのような製造装置にすることで負担のかかる作業が軽減され、最終的にオペレーターの長期雇用や人員不足の解消が期待される。
【0010】
そこで本発明の目的は、従来生じていた高所に水取り装置が設置されていることによる洗浄の煩わしさを解消し、落差(重力)を利用していたことによる豆乳凝固物の濃淡や粒度にバラツキを低減させることにある。また高所に水取り装置が設置されていることによる水取り状態の目視の困難性を解消し、水取り具合の調整を容易とする豆腐類製造装置を提供することにある。さらに従来水取り装置が高所にあることで上り下りする必要があった作業者の動線の作業性を改善し、上方から洗浄薬液等が落ちる危険性を減少させ、より安全な作業が可能な豆腐類製造装置を提供することを可能とする。
また本発明の目的は、分配装置に供給される段階で豆乳凝固物の「ゆ」(ホエー)と凝固物が分離しやすくムラになりやすかった、従来法と比較して、成型装置に均等に分配でき、均質な豆腐類に成型しやすくした豆腐類製造装置を提供することにある。場合によっては、各タンクの撹拌装置も省くことができ、装置コストや消費電力が安価になり、かつ、器壁付着物(時々脱落して、その部分が不良製品になる場合がある)も減らすことができ、製品品質が安定しやすくなった豆腐類製造装置を提供することも可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の豆腐類連続製造装置は、温豆乳に凝固剤を添加して、固液混合物であるおぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物とするとともに適宜粗壊する凝固装置と、前記おぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物に含まれる「ゆ」を取り除き、前記おぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物よりも固形分濃度が濃い固液混合物である濃厚な豆乳凝固物を得る水取り装置と、前記凝固装置から前記水取り装置へ前記おぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物を供給するための第一の送り装置と、前記水取り装置で得られた濃厚な豆乳凝固物を受けるホッパーと、前記ホッパーに貯留された濃厚な豆乳凝固物を分配装置に供給するための第二の送り装置と、成型装置入口側に設けられ、前記成型装置下布上に前記濃厚な豆乳凝固物を均等に連続的に分配する前記分配装置と、前記濃厚な豆乳凝固物を圧密して豆腐類に成型する前記成型装置を備え、前記水取り装置を経て得られた豆乳凝固物が貯留させる前記ホッパーよりも上方に前記分配装置が設けられるとともに、前記凝固装置、前記水取り装置、前記成型装置が平坦な動線となるように略水平に配されることを特徴とする。
また、本発明の豆腐類連続製造装置では水取り装置を経て得られた濃厚な豆乳凝固物を受ける前記ホッパーが、前記成型装置入口側に備わる前記分配装置の受け入れ高さよりも下方の位置にあり、前記第二の送り装置には定量ポンプを使用して、下方にある濃厚な豆乳凝固物を上方にある前記分配装置へポンプアップして供給することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、凝固装置から移送され、水取り装置経ておぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状豆乳凝固物に含まれる「ゆ」を取り除いて得られた濃厚な豆乳凝固物が貯留されるホッパーから分配装置への移送にポンプを採用することにより、従来の高低差を利用した豆乳凝固物の移送を行う装置とは異なり、作業者の平坦な動線を実現し、作業性・安全性が向上するとともに、従来では高所に設置される凝固装置や水取り装置を洗浄する洗浄液の下方への飛散とといったリスクも取り除かれることとなる。
また、水取り装置を経て得られた濃厚な豆乳凝固物を定量ポンプにより分配装置へ移送することにより、高低差を利用した従来の装置と比較し、気泡の抱き込みを抑制し、中身組織の不均一を防止し不良製品の発生量を低減するため、品質向上とロス抑制・歩留まり向上という効果も得られることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば凝固装置、水取り装置、および成型装置を略水平に配置し、移送ポンプを用いて豆乳凝固物を移送することにより、水取り装置を高所ではなく床に配置することが可能となる。水取り装置が低い位置に設置されているため洗浄しやすく、落差(重力)を利用するよりも豆乳凝固物の濃淡や粒度や流量にバラツキ、豆乳凝固物への空気の噛み込みが起きにくい。また水取り状態を目視しやすく、水取り具合の調整がしやすくなる。また水取り装置が高所にないため、上り下りする必要がなく水平動線で作業性がよくなり、上方から洗浄薬液が飛散する危険性もなく、より安全な作業が可能になる。
また薄い豆乳凝固物を送液する従来の場合は、ポンプ前後のタンクで「ゆ」(ホエー)と凝固物が分離しやすくムラになりやすかったが、水取り装置を介して「ゆ」を除いた後に、濃厚な豆乳凝固物をポンプによる移送工程に送る場合は、ポンプ前後の受タンクで分離しにくく、ムラなく送液することができ、成型装置に均等に分配でき、均質な豆腐類に成型しやすくなる。場合によっては、各タンクの撹拌装置も省くことができ、装置コストや消費電力が安価になり、かつ、器壁付着物(時々脱落して、その部分が不良製品になる場合がある)も減らすことができ、製品品質が安定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】従来のホッパーを備えていない豆腐類連続製造装置を示す図である。
【
図3】従来の定量ポンプを備えた豆腐類連続製造装置を示す図である。
【
図4】本発明の一実施の形態の豆腐類連続製造装置を示す図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の豆腐類連続製造装置を示す図である。
【
図6】本発明の一実施の形態の豆腐類連続製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(本発明の第1の実施の形態)
【0016】
図4は、本発明の豆腐類連続製造装置100を模式的に示した側面図である。本実施の形態の豆腐類連続製造装置100は、基台(工場床)Baに載せられた、温豆乳に凝固剤を添加して豆乳を凝固するための凝固装置Cと、凝固装置Cから排出された固液混合物であるおぼろ状の豆乳凝固物に含まれる「ゆ」を取り除くための水取り装置Wrと、水取り装置Wrによって「ゆ」を取り除いた前記おぼろ状の豆乳凝固物よりも固形分濃度が濃い濃厚な豆乳凝固物(固形分濃度が高い固液混合物)を成型装置入口側に連続的に供給するためのポンプ(定量ポンプ)Pと、成型装置Mdの下布f2上に均等に分配するための分配装置Dと、濃厚な豆乳凝固物を成型するための成型装置Mdを備え、
図4に示すように、凝固装置C、水取り装置Wr、ポンプP、分配装置D、成型装置Mdの順に配置される(
図4)。凝固装置Cは基台(Cb1、Cb2)に、水取り装置Wrは基台Wbに、そして成型装置Mdは基台Mbに載置されて、床(配置面)からの高さが調節される。凝固装置Cと水取り装置Wrと成型装置Mdとは略水平に配置されることで作業の際に上下する必要が無い平坦な動線とする。また凝固装置Cと水取り装置Wrと成型装置Mdとは直線的に配置され、直線的な動線となる。
【0017】
本実施の形態の豆腐類連続製造装置100は、豆乳凝固物の移送にポンプPが用いられ、供給工程Suの凝固装置Cと分配成型工程DMの成型装置Mdとは互いに独立して配置される。 一般的には凝固装置Cと水取り装置Wrと移送にポンプPと成型装置Mdは基台(工場床)Baに配置されるため、凝固装置Cと成型装置Mdとは略水平に並置される。
図4において、凝固装置Ccから排出された豆乳凝固物t1は、スロープsl1を介して水取り装置Wrに送り込む。水取り装置Wr上の豆乳凝固物t1ないしはt3は、スロープsl2を伝って「ゆ」t2が取り除かれ、分離した「ゆ」を除かれた濃厚な凝固物t3はホッパーH内に供給される。ホッパーHは、図示しないが、モータmと撹拌羽根sbからなる撹拌装置sを備えていてもよく、豆乳凝固物t3はホッパーH内で撹拌装置sにより撹拌された後、ホッパーH内に連結された配管pi1を通って、ポンプPによって配管pi2を通って濃厚な豆乳凝固物t3を分配用タンクtに定量的に送り込む。分配用タンクtに定量的に送り込まれた濃厚な豆乳凝固物は、分配装置Dによって成型装置Md入口側の下側濾過布f2上に均一に分配され、成型される。
【0018】
本発明では、対象製品は固形分濃度が薄いおぼろ状の豆乳凝固物または軟らかいプリン状凝固物を壊して成型する製品であることが好ましい。例えば木綿豆腐生地、特に硬い木綿豆腐である堅豆腐やExtra FirmTofu(固形分15~35%wt)や油揚げ生地、厚揚げ生地、生揚げ生地、凍り豆腐生地、がんもどき生地、その他これらの冷凍製品等の二次加工食品のための豆腐生地類等で固形分15~35%wtになることが好ましい。最も好ましい対象としては寿司揚げ、薄揚げ、厚揚げ等の油揚げ生地などが挙げられる。本発明ではこれらの中間的な製品や最終的な製品を豆腐類と称する。
【0019】
本発明の凝固装置Cの前工程は特に限定しない。例えば用いる豆乳は事前に脱気されたり、殺菌処理されたり、各種添加剤(消泡剤、副資材、副原材料)を添加した豆乳などが用いられる。凝固剤としては塩化マグネシウム(苦汁、粗製海水塩化マグネシウム、乳化苦汁も含む)や塩化カルシウムや硫酸カルシウムなどが用いられ、副資材としてはトランスグルタミナーゼや澱粉等が用いられる。これらの凝固剤や副資材は、水で溶かすか又は食品用溶媒(食用油)中に乳化・分散させるなどにより液状にして豆乳中に添加できるものであれば、いずれの市販品でも良い。
【0020】
凝固装置Cは
図4に示すような各バケットが基台Cb1を周回するラウンド式バッチ式凝固装置の他、各バケットが基台Cb1に固定されたバッチ式凝固装置でもよく、後に記載する連続式凝固装置であっても良く、特に限定はされない。例えばバッチ式凝固装置の場合、固液混合物を受けるための凝固容器Cc(バランスタンク、凝固バケット)が備わり、凝固容器Cc内には固液混合物を粗壊処理するための粗壊装置が設けてある。バッチ式凝固装置Cの凝固容器Ccは上部が円筒又は四角形状で下部が半球状底部となって連続したもの、すなわち円筒状の上部と半球状の底部を持った形状が好ましい。上方の側壁や蓋には開口部や通気口等の通気手段があっても良い。凝固容器Cc内部を清浄に保ち、かつ内圧維持を容易にするために、凝固容器の開口を上方からほぼ閉塞する蓋を備えることが好ましい。
凝固装置Cが連続式凝固装置の場合、配管中を通過させることで凝固させるパイプ凝固装置やインライン凝固装置、その他ベルト式凝固装置などが考えられる。装置の一例としては舟形凝固装置などがある。舟形凝固装置の場合、舟形槽の途中で一旦底を迫り上がる形状として底を乗り越すことで壊す、固定機構が備わる。また連続式凝固装置の他の例としては、配管中を通過させることで凝固させる装置(パイプ凝固装置)であっても良い。パイプ凝固装置の場合、豆乳に凝固剤を混合させるために、豆乳タンクに連結した豆乳送り定量ポンプと、凝固剤タンクに連結した凝固剤送り定量ポンプと、インライン型混合撹拌装置とが備わっており、それらが連結されている。なおその他、連続式凝固装置は金属ベルト式凝固装置や樹脂・ゴム製ベルト式凝固装置などによって凝固させる装置であっても良く特に限定はされない。粗壊装置も特に限定はされず、例えば熟成中のバケット内に設けられ、例えば金網や格子状の容器や、筒状体に金網を設けるタイプ、スクリューや羽を設けるタイプ、多数の孔を有する板を設けるタイプ、モータによりスクリュー形状のものが回転するタイプ、くし歯型のものが回転するタイプ、泡立器型のものが回転するタイプ、のこぎり型のものが回転するタイプ、スクリュー型やくし歯型のものが上下動するタイプ等が使用される。
【0021】
水取り装置Wr(水取りドラム、水取りベルト)は、供給工程Suの凝固容器Ccの後工程に位置し、凝固容器Ccから供給される豆乳凝固物t1から「ゆ」t2を分離して、適度に「ゆ」が含まれる濃厚な豆乳凝固物(固液混合物)t3を生成し、多少の「ゆ」が含まれる濃厚な豆乳凝固物t3だけを分配装置D(成型装置Mdの受け入れ側)に供給するための濾過装置であれば、特に限定しない。水取り装置Wrには水取りドラムや水取りベルトなどが存在するが、水取ドラムとしては、螺旋状送り板を設けた筒状金網を回転駆動させるタイプがあり、水取ベルトとしては短い無端ベルトを駆動するタイプがある。水取ベルトは、
図4に示すように、濾過布fと駆動ローラdrと従動ローラfrとを備え、これらによって傾斜部(斜面部)が形成され、駆動ローラdrによって回転駆動することで豆乳凝固物と「ゆ」(ホエー、しみず、離水、とも言う。)が分離される。この単独構成の水取り装置を介した供給方法は、「ゆ」が予め除かれるので圧搾・成型が容易である。
傾斜部(斜面部)は
図4に示すように斜面部の下方に、ドレンパンdpが配され、「ゆ」切りした「ゆ」を排液するための排水口op1が配されている。また傾斜部は第1の傾斜部と、第2の傾斜部から構成されていてもよい。第2の傾斜部も第1の傾斜部と同様に、ドレンパンと排水口が設けられる(不図示)。
水取り装置Wrには洗浄装置が配されても良く、洗浄装置は、主に生産中や洗浄時に使用(装置を使用した後に使用)され、高圧洗浄ノズルから噴き出す高圧水などによってコンベアの濾過布fに残留する豆乳凝固物を洗い流して、濾過布fの目詰まり防止のために使用される。なお、図示はしないが、水取り装置Wrはスクレーパ等の掻き取り手段が配されたものでも良い。
【0022】
ホッパーHは、
図4に示すように水取り装置WrとポンプPとの間に位置し、水取り装置Wrから送られてくる適度に「ゆ」が含まれる濃厚な豆乳凝固物t3をいったん受けて、ポンプPによって豆乳凝固物t3の量を調節して分配装置Dへ供給するために使用される。ホッパーHの形状は特に拘らない。
【0023】
ポンプは粗い固形物も傷めずに供給できるタイプのポンプが好ましい。ポンプの例としては、ロータリーポンプ、チュービングポンプ(ホースポンプ)、ギヤポンプ、サインポンプや、モーノポンプ、スクリューポンプ、ベーンポンプ、モノフレックスポンプ等が考えられ、連続式の容積式と言われる定量ポンプが最も好ましい。濃い豆乳凝固物をできるだけそのままに崩さずに送液する場合は、構造上、剪断力や摩擦熱が発生しにくい低速回転のポンプが望ましい。その他構造上、低脈動で定量性があって、吸い込み側口径や吐出側口径ともに大口径(1インチ以上、好ましくは1.5~5インチ)で、凝固物が細かく砕かれすぎないように、凝固物を供給する際に回転数を可能な限り小さくできる大型定量ポンプ(モータ容量は比較的小さくてもよい)が好ましい。バッチ式ではダイヤフラム式ポンプ、プランジャーポンプ、ピストンポンプ、シリンジポンプ等を用いても良い。またこれらの多連型で、アキュームレーター等を備えるなど、脈動を抑えた構成のポンプを前記連続式ポンプの代わりに用いてもよい。なお連続式の容積式定量ポンプの流量をPID制御するための流量計を備えていても良い。また豆乳を凝固装置に送るための豆乳用ポンプの場合、後工程の連続凝固装置やバッチ式凝固装置と連動または同調するよう自動制御されてもよく、低脈動の定量ポンプを設けることが好ましい。定量的なポンプに替えて、バケットコンベアやパイプコンベアや水車式揚上装置等であってもよい。
なお、各バケットには一定量の豆乳を計量するようにタイマー制御やフロート式等のレベルセンサによる制御を設けることが望ましい。その豆乳供給に用いるポンプは上記のような定量性のあるポンプ以外に、遠心式ポンプを用いてもよい。また、製品が油揚である場合、それらのポンプ手前に、空気を所定量豆乳に混入するエア注入装置を備えていてもよく、油揚の表皮や中身の組織を均一に綺麗にすることも適宜組み合わせてもよい。
【0024】
分配装置Dは成型装置Mdの上端部に載設される。分配装置Dは分配装置用タンクtと分配装置用供給装置sとからなる。分配装置用タンクtには、タンクt内部の「ゆ」を含んだ濃厚な凝固物t3を往復又は回転撹拌するための撹拌用モータm1が具設され、分配装置用タンク底部には、撹拌された「ゆ」を含んだ濃厚な凝固物t3を成型装置Mdの下側コンベアc2に供給するための分配装置用供給装置sが備わり、分配装置用タンク底部と一体となっている。この分配装置用供給装置sは、下方側コンベアc2の幅方向に回転軸を有する溝付回転ロータによって、撹拌された「ゆ」を適度に含んだ濃厚な豆乳凝固物t3を均等に排出・供給する。
【0025】
成型装置Mdは、基台Mbの長手方向に沿うように無端状の上側コンベアc1と無端状の下側コンベアc2とが配され、更にそれぞれの外周に無端状の濾布を備えて、各々が同調して駆動する連続式成型装置が好ましい。成型装置としてはバッチ式成型装置などや、連続成型装置と型枠によるバッチ式連続成型装置などが考えられる。
上側コンベアc1と下側コンベアc2は、鋼鉄、ステンレスもしくはチタンなどの金属製素材のコンベアである。例えば、SUS304やSUS316のようなステンレス等の金属が用いられる。上側コンベアc1と下側コンベアc2ともに、剛性のあるプレート板がチェーン上に所定間隔をおいて配されたプレートコンベア(「キャタピラ」式コンベア、キャタピラは登録商標)である。上側の濾布、下側の濾布はフッ素やポリエステルやポリプロピレンなどの樹脂製モノフィラメント糸からなる濾布などである。
またプレートコンベアは、断面が凹状に構成されるものでも良い。
上側コンベアc1は、上側の無端状の濾過布f1が支持しており、駆動ローラ(駆動プーリ)dr1と、従動ローラ(従動プーリ)fr1によって濾過布(濾布)f1を回転させる。従動ローラfr1は、濾過布(濾布)f1の回転が伝わることにより、駆動ローラdr1に従動して周回する。
下側コンベアc2も同様であり、下側コンベアc2によって下側の無端状の濾過布f2が支持される。濾過布f2は駆動ローラdr2と、従動ローラfr2の外周に巻かれ、駆動ローラdr2によって周回する。
濾過布f1,f2は、輪状にした幅広の形態で、固液混合物Kを捕捉して、「ゆ」を脱水するためのものであり、無端ベルト(エンドレスベルト)として構成され、例えば、フッ素樹脂製モノフィラメント(線径0.1~1.0mm)の平織りで、織り込む前に熱処理(防縮処理)を行ったものである。目開きは10~300メッシュで、20~80メッシュが好ましい。豆腐・油揚げ生地類の連続成型装置の脱水・成型用濾布であれば、糸の材質、織り方、2次加工処理など特に限定しない。
成型装置には、分配装置Dから供給される「ゆ」を含んだ濃厚な凝固物t3を均すための均し装置が設けられる(不図示)。均し装置は、例えばシリンダによって平板を上下動させる構造や左右往復する構造とし、下側コンベアc2と一対の側方側コンベア又は固定側壁によって形成された凹状の搬送路に収まる形態の均し装置である。
【0026】
(本実施の形態の製造方法)
次に、本実施の形態の豆腐類連続製造装置の水取り装置100を使用して豆腐類を製造する場合を説明する。
【0027】
バッチ式凝固装置装置による凝固方法は、まず一旦凝固容器Cc(バランスタンク、凝固バケット)に固液混合物を受けて、その凝固容器Ccに粗壊装置を設けることで凝固容器内で粗壊処理を行う。バケット凝固装置等(バケットないしは型箱)は簡潔移動で循環しており、豆乳計量、凝固撹拌、熟成、(壊し)、反転、(盛り込み)などの一連の動作が1バケット単位で処理される。一形態として、バケット反転時に、一旦、豆乳凝固物を豆乳凝固物タンクに受ける場合もある。バッチ式の場合は熟成中のバケットで、丸棒を格子状にしたものや粗いパンチング板を上下往復したり、スクリュー羽根を回転させながら上下して壊す粗壊装置を設けたりする。またバケット反転時に粗い金網上に落として砕く方法もある。粗壊装置を使用することで、「ゆ」切りした豆乳凝固物は比較的均一なブロックの豆腐になり、後工程での自然脱水工程や圧搾プレス工程における「ゆ」(ホエー)の脱水速度や豆腐・油揚生地の厚さを平均化させ、水分を均等にすることができる。このように適宜粗壊され凝固容器Ccから排出された豆乳凝固物t1(固形分濃度が薄い固液混合物)は、スロープsl1を介して水取り装置Wrへ送られる。
【0028】
連続式凝固装置による凝固方法の例としては、配管中を通過させることで凝固させる方法(パイプ凝固方法、インライン凝固方法)や、樋式凝固装置などによって凝固させる方式などが考えられる。
連続式凝固装置による凝固工程の場合においても、凝固剤入り豆乳を連続的に送る配管出口を、直接水取り装置上方に位置させ、豆乳を供給する形態が考えられる。また配管出口で、一旦、豆乳凝固物タンクに受けてから容積式定量ポンプで水取り装置に豆乳凝固物を注いでいく形態でも良い。
【0029】
水取り装置Wrのコンベアcの濾過布f上に供給された豆乳凝固物t1は、無孔のシュート(図示しない。前後位置可変。)を介して、駆動ローラdrによって回転する濾過布f上で「ゆ」切りされながらホッパーHへ搬送される。濾過布f上で「ゆ」切りされた「ゆ」t2はドレンパンdp内に受け、ドレンパンdpの下部に備えられた排出口op1から排出される。水取り装置Wrは傾斜(斜面)を利用して水切りを行うため、分離された「ゆ」の落下点が定まり、ドレンパンdp上に受けやすくなるとともに、豆乳凝固物t1の搬送に必要な消費電力を抑えられることができる。
無端濾布ベルト式の水取り装置Wrにおいては、固形分濃度が薄い豆乳凝固物t1を10~300メッシュの濾布面でろ過して、「ゆ」t2と濃厚な豆乳凝固物t3に分離する。概ね「ゆ」は元の豆乳量の1~90%、好ましくは20~60%の量を除き、成型装置で上下の無端濾布とそれを支持・案内するプレス板の間に挟むように圧搾成型する際に、残りの「ゆ」を分離して、豆乳固形分濃度2~10%wtから、固形分15~35%wtの豆腐類(油揚生地、堅豆腐、Extra Firm Tofu等)を製造する。「ゆ」を除く量は、標準的な油揚生地の場合豆乳固形分は2~5%wt、最終生地固形分は15~35%wtで、途中の水取り装置で20~60%(対豆乳量)、または、成型装置で60~20%(対豆乳量)を除くのが普通である。濾布ベルトの場合、回転数やその濾布ベルト上に薄いおぼろ状の豆乳凝固物を注ぐときの前記無孔シュートの前後位置やシュート幅、注ぐノズルの向きや形状などや、駆動ローラdrの回転数によって微調整して、最適な水切り状態に微調整する。
その他の水取り装置としては、従来からある、10~300メッシュの筒状SUS製金網で、内側にその補強枠と、らせん状の送り羽根を備えた水取ドラムという形態でもよい。水取ドラムの場合、回転数や金網のメッシュを変えて、水切り具合を微調整する。またシュート上で、エッチングや電子ビームによって微細な穴を多数備えた板又は上記SUS製金網などを組み込んだ固定のシュート上に、固形分濃度が薄い豆乳凝固物t1を流して水取りを行うような形態であってもよい。
スロープsl2は、ベルト式水取り装置の場合に使用され、濃厚な豆乳凝固物t3を掻き落とす掻き取り板を兼用してもよく、またその濃厚な豆乳凝固物を分配装置のホッパー内に案内して伝わらせながら流れ落とす際のシュートとして使用される。
【0030】
ホッパーHの投入口に供給された「ゆ」を含んだ濃厚な豆乳凝固物t3はホッパーの投入口より入れられ、そのままホッパー底部の排出口opから排出される。濃厚な豆乳凝固物t3は定量ポンプPによって供給量が調節されながら上方にある分配装置Dへ供給される。
【0031】
定量ポンプPは、濃厚な豆乳凝固物t3が細かく砕かれすぎないようにし、また気泡を抱き込みにくくするために、回転数を可能な限り小さくして送る。そのため大型で低脈動で低回転の、連続式容積式定量ポンプによって濃厚な豆乳凝固物t3を供給する。また配管pi1,pi2を通る際に濃厚な豆乳凝固物t3中の粗い固形物を傷めずに分配装置Dへ送るために、配管pi1の吸い込み側口径や、配管pi2の吐出側口径が大口径(1インチ以上、好ましくは1.5~5インチ、より好ましくは1.5~3.0インチ)の定量ポンプを使用して濃い豆乳凝固物t3を移送する。またホッパーHを定量ポンプPの前工程に配置したことを効果的に利用し、かつ濃厚な豆乳凝固物t3を傷めずに分配装置Dへ送るために、PID制御用流量計によって濃厚な豆乳凝固物t3の流量を制御しながら供給する。なお、濃厚な豆乳凝固物t3はその粘性から、落差や送液の際に、気泡を抱き込みやすく、気泡が抜けにくいため、気泡が多く混入した濃厚な豆乳凝固物をそのまま成型すると、生地中に気泡が多く含む生地になりやすく、見栄えも悪くなる。また油揚の場合、皮や中身の不均一、油吸いなどの原因にもなり得るので、気泡の抱き込みに注意が必要である。従来のように水取り装置から得られた濃厚な豆乳凝固物をシュートで自然落下させて分配装置ホッパーに落とし込むやり方では気泡が混入しやすく、油揚の表皮を部分的に薄くしたり、中身組織を不均一にしてロスに繋がる場合もあり、また硬い木綿豆腐が空気を噛んで水やお湯で浮いてトラブルになる場合もあるため、本発明のように、濃厚な豆乳凝固物t3を定量的ポンプに分配装置に送液して、分配装置ホッパーの内壁に沿うように流入させるか、液面下に流入させるようにすることによって気泡の抱き込みを抑制でき、品質向上とロス抑制・歩留り向上が図られる。
【0032】
分配装置Dの分配装置用タンクtは、配管pi2の排出口から排出された「ゆ」を適度に含んだ濃厚な豆乳凝固物t3を受けていったん貯留する。分配装置用タンクtは分配装置用供給装置sで下側コンベアc2の濾過布f2上にスロープsl4を介して均一に豆乳凝固物t3を分配させる。
スロープsl4は、従来、分配装置(幅広の溝付ロータが回転する方式で容積式定量ポンプとも言える)から成型装置下布の上に、濃厚な豆乳凝固物を泡立てず飛び散らないように、伝わらせて落とし(自然落差式)、均等な分配を補助・案内するためのシュートとして使用される。シュートを流れ落ちる豆乳凝固物の凝固粒子の大きさや状態を目視できるので、製品調整時の目安となり、また裏漏れしないように堰を兼ねることができる。図示しないが、成型装置は入口側の下布上には、濃厚な豆乳凝固物が漏れないように、上流側や両側面に固定堰が設けられる。スロープsl4は、その固定堰を兼ねるようにしてもよい。
成型装置Mdの下側コンベアc2は、前方の従動ローラfr2と後方の駆動ローラdr2とによって回転する無端状コンベアであり、下側コンベアc2の回転に伴って下側コンベアc2の外周に巻かれた無端状の濾過布f2も回転する。同様に、上側コンベアc1は、前方の従動ローラfr1と後方の駆動ローラdr1とによって回転する無端状コンベアであり、上側コンベアc1の回転に伴って上側コンベアc1の外周に巻かれた無端状の濾過布f1も回転する。駆動手段(不図示)を介して駆動ローラdr2およびdr1を回転駆動させると、
図4の矢印a方向に濾過布f2およびf1が進行し、「ゆ」を含んだ濃厚な豆乳凝固物t3を成型しながら搬送する。「ゆ」を適度に含んだ濃厚な豆乳凝固物t3は成型されるとともに、同調・同期して駆動する上側コンベアc1と下側コンベアc2の所定の隙間から、上下の濾過布f1,f2を介して余分な水ないし「ゆ」が排出される。このようにして、下側コンベアc2と同調して外周を回転する濾過布f2と、上側コンベアc1と同調して回転する濾過布f1の間で、濃厚な豆乳凝固物t3を圧搾・成型させる。
なお成型装置Mdに供給された後の豆腐類は、切断機、フライヤー、ボイル殺菌装置、冷却機、冷凍フリーザー、包装機などが備わる次の製造工程ラインで加工される。
図4に示すように、例えば成型装置Md上を矢印a方向に運搬され、濾過布f2と濾過布f1の間で圧搾・成型された濃厚な豆乳凝固物t3は、第一切断装置Cd1の第一切断刃bによって帯状に切断された豆腐Tとなり、その後第二切断装置Cd2によって1丁単位の豆腐Tに成型される。
【0033】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の豆腐類の連続製造装置101を模式的に示した側面図である。本実施の形態の豆腐類連続ライン101は、基台(工場床)Baに配置された、温豆乳に凝固剤を添加して豆乳を凝固するための凝固装置Cと、凝固装置Cから供給される豆乳凝固物t1を受けて貯留するためのホッパーH1と、水取り装置Wrへ供給するための定量ポンプP1(第一の送り装置)と、凝固装置から排出された固液混合物であるおぼろ状の豆乳凝固物に含まれる「ゆ」を取り除くための水取り装置(水取り装置)Wrと、水取り装置によって「ゆ」を取り除いたおぼろ状の豆乳凝固物よりも濃厚な豆乳凝固物(固形分濃度が濃い固液混合物)t3を受けて貯留するための下方にあるホッパーH2と、濃厚な豆乳凝固物t3を上方にある成型装置入口側に連続的に供給するためのポンプP2(第二の送り装置)と、成型装置Mdの下布f2上に均等に分配するための分配装置Dと、濃厚な豆乳凝固物を成型するための成型装置Mdを備え、
図5に示すように、凝固装置Md、ホッパーH1、定量ポンプP1、水取り装置Wr、ホッパーH2、ポンプP2、分配装置D、成型装置Mdの順に配置される(
図5)。凝固装置Cは基台Cbに、水取り装置Wrは基台Wbに、そして成型装置Mdは基台Mbに載置されて、床(配置面)からの高さが調節される。第1の実施の形態と同じく、凝固装置Cと水取り装置Wrと成型装置Mdとは作業の際に上下する必要が無い平坦な動線となるよう配置され、また直線的な動線となるように配置される。
【0034】
第2の実施の形態の豆腐類の連続製造装置101は、凝固装置Cの直後の工程に水取り装置Wrを配置せず、いったんホッパーH1に豆乳凝固物(薄い固液混合物)t1を受けた後、定量ポンプP1によって水取り装置Wrへ供給する。その他は実施例1と同様である。ホッパーH1があることによって凝固容器Cから排出された豆乳凝固物t1の供給量を調節して水取り装置Wrへ供給することが可能となる。ホッパーH1とその定量ポンプP1とで豆乳凝固物(薄い固液分離物)t1の供給量を調節し、ホッパーH2とその定量ポンプP2とによって濃厚な豆乳凝固物t3の上方への供給量を調節することができるため、製造工程ごとにより細かく供給量をコントロールすることが可能となる。 ホッパーH1(凝固装置後、水取り装置の前のホッパー)は水取り前の豆乳凝固物t1が投入されるため大容量のものが使用され、また分離を防ぐための撹拌機が必要とされる。定量ポンプP1(凝固装置後、水取り装置の前のホッパー)は、能力が大きい大型ポンプが使用される。ホッパーH2は、豆乳凝固物を水取りした分、容量は小さいホッパーで良く、撹拌装置の有無は問わない。定量ポンプP2は定量ポンプP1と同じ機種でも回転数を落としてゆっくり動かす(凝固粒子を細かく崩さないため)ので、ポンプ軸封シールの寿命も延び、メンテナンス費用が下がる。また回転数を下げなくともポンプサイズを小さくすることもできるので、装置コストが下がり、消費電力も削減できる。 ポンプP2(第二の送り装置)としては、ロータリーポンプ・モーノポンプ・バイデルポンプ・ベーンポンプ・ギヤポンプ・チュービングポンプなどの連続式容積式ポンプや、断続的なシリンジポンプ・ダイヤフラムポンプなどの断続的容積式ポンプが好ましく、バケットコンベア・パイプコンベア・スクリューコンベアなどの揚上コンベアや水車式揚上装置などであってもよい。遠心式ポンプは豆乳凝固物を細かく砕きやすいので避けた方が良い。
【0035】
本実施例では自然落差によらず、定量ポンプを用いて定流量で豆乳凝固物を送液するので、バランスを調整され、泡立ちや泡噛みを抑えて、連続して安定した生産、稼働になり、製品品質のバラツキを軽減できる。また下方から上方へ供給することによって、空気溜まりがなく、吸い込んだ気泡もスムーズに吐き出しやすく、噛み込んだ空気を細かく分散させてしまうようなことも抑制できる。
【0036】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態の豆腐類の連続製造装置102を模式的に示した側面図である。本実施の形態の豆腐類連続ライン102は、基台(工場床)Baに載せられた、温豆乳に凝固剤を添加して豆乳を凝固するための凝固装置Cと、凝固装置Cから供給される豆乳凝固物t1を受けて貯留するためのホッパーH1(撹拌装置あり)と、水取り装置Wrへ供給するための定量ポンプP1(第一の送り装置)と、凝固装置から排出されたおぼろ状の豆乳凝固物に含まれる「ゆ」を取り除くための水取り装置(水取り装置)Wrと、水取り装置によって「ゆ」を取り除いたおぼろ状の豆乳凝固物よりも濃厚な豆乳凝固物t3を受けて貯留するためのホッパーH2(撹拌装置なし)と、下方にある濃厚な豆乳凝固物t3を上方にある成型装置入口側に連続的に揚上(ポンプアップ)して供給するためのポンプ(定量ポンプ)P2と、成型装置Md下布上に直接に注いで均等に分配するための分配装置Dと、濃厚な豆乳凝固物t3を成型するための成型装置Mdを備え、
図6に示すように、凝固装置C、ホッパーH1、定量ポンプP1、水取り装置Wr、ホッパーH2(撹拌装置なし)、ポンプP2、分配装置D、成型装置Mdの順に配置され、分配装置Dは往復移動式ノズル(首振りノズル)Nを備え、かつ配管pi4の先端と連結している。凝固装置Cは基台Cbに、水取り装置Wrは基台Wbに、そして成型装置Mdは基台Mbに載置されて、床(配置面)からの高さが調節される。他の実施の形態と同じく、凝固装置Cと水取り装置Wrと成型装置Mdとは作業の際に上下する必要が無い平坦な動線となるよう配置され、また直線的な動線となるように配置される。
【0037】
第3の実施の形態の豆腐類の連続製造装置102は、凝固装置Cから排出される豆乳凝固物t1をいったんホッパーH1に受けて、定量ポンプP1(第一の送り装置)によって水取り装置Wrへ供給する点は、第2の実施の形態と同じであるが、水取り装置Wrで「ゆ」切りされた濃厚な豆乳凝固物t3を撹拌装置のないホッパーH2によって受けるとともに、濃厚な豆乳凝固物t3の凝固粒子をできるだけそのまま崩さないように、先端が移動するノズル状となった移動式ノズルNを備えた分配装置Dによってゆっくりとした首振り動作によって、下布f2上に溜まった濃厚な豆乳凝固物t3の液面下ないしは液面上に近い高さにて流入させて泡立ち・泡噛みを抑えるように成型装置Mdの濾過布f2上に分配する。ノズルをシュートなどに沿わせて、下布f2上に流入させるようにしてもよい。
また移動式ノズルNを先端に備えた分配装置Dが配管pi4と連結し、移動式ノズルNが連続成型装置Mdの入口側の濾過布f2上で首を振りながら、濃厚な豆乳凝固物t3を供給するため、成型装置入口側の濾過布f2上に連続的に均等に分配することが可能となる。
【0038】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態に合わせて、ホッパーH(H1,H2)、ポンプ(P1,P2)、分配装置Dの種類、配置、形態などを適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
90,91,92 従来の豆腐類の連続製造装置、
100,101,102 豆腐類の連続製造装置、
a 運搬方向を示す矢印、
Ba 基台(豆腐類の連続製造装置が配置される工場の床)、
C 凝固装置、
Cc 凝固容器、
Cb,Cb1,Cb2 基台(凝固装置の基台)、
Cd1 切断装置、
Cd2 切断装置、
c コンベア(水取り装置用コンベア、水取り装置用コンベア)、
c1 上側コンベア、
c2 下側コンベア、
D 分配装置、
DM 分配成型工程、
dp ドレンパン、
dr 駆動ローラ(水取り装置用駆動ローラ、水取り装置用駆動プーリ)、
dr1 上側駆動ローラ(上側駆動プーリ)、
dr2 下側駆動ローラ(下側駆動プーリ)、
f 水取り装置の濾布又はスクリーン、
f1 上側濾過布(上側濾布)、
f2 下側濾過布(上側濾布)、
fr 従動ローラ(水取り装置用従動ローラ、水取り装置用従動プーリ)、
fr1 上側従動ローラ(上側従動プーリ)、
fr2 下側従動ローラ(下側従動プーリ)、
H1,H2 ホッパー、
Md 成型装置、
Mb 基台(成型装置の基台)、
m1 モータ、
N 移動式ノズル
op,op1 排出口、
P1 ポンプ(第一の送り装置)、
P2 ポンプ(第二の送り装置)、
pi1,pi2,pi3,pi4 配管、
Su 供給工程、
s 分配装置用供給装置、
sl1,sl2,sl3,sl4 スロープ、
T 豆腐、
t 分配装置用タンク、
t1 (水取り前の)豆乳凝固物、
t2 「ゆ」、
t3 (水取り後の)濃厚な豆乳凝固物、
Wr 水取り装置、
Wb 基台(水取り装置用基台)