(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】そろばん
(51)【国際特許分類】
G06C 1/00 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
G06C1/00 A
(21)【出願番号】P 2021126407
(22)【出願日】2021-08-02
【審査請求日】2021-08-02
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521339991
【氏名又は名称】惣田 外茂次
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】惣田 外茂次
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3152058(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101034298(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101369167(CN,A)
【文献】登録実用新案第3147818(JP,U)
【文献】特開2017-091074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長の長方形状で構成される枠の内側に、横方向に梁を備えると共に、前記梁の横方向に所定間隔を空けて複数本の桁を前記枠の縦方向に取り付け、前記梁の下側に配置される前記桁のそれぞれに4個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、前記梁の上側に配置される前記桁のそれぞれに5個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあり、且つ前記5個の珠の構成として、各1個の珠がそれぞれ数字の1であることを視覚で認識しながら、5個の珠で数字の5が構成されることを目で見、また手で触れながら把握できるような第一の使用方法と、最も梁側に配置される1個の珠が、前記1個の珠が表す数字の1とそれ以外の4個の珠が表す数字の4とを集約した数字の5であることを視覚で認識できることによって、前記4個の珠を目で見、また手で触れることなく、4個の珠を省略した状態で、前記1個の珠だけで数字の5が構成されることを目で見、また手で触れながら把握できるような第二の使用方法との二種類の使用方法を一台のそろばんで使用可能とするために、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる種類の珠で構成してある
と共に、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を、一体的に固定してあることを特徴とするそろばん。
【請求項2】
横長の長方形状で構成される枠の内側に、横方向に梁を備えると共に、前記梁の横方向に所定間隔を空けて複数本の桁を前記枠の縦方向に取り付け、前記梁の下側に配置される前記桁のそれぞれに4個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、前記梁の上側に配置される前記桁のそれぞれに5個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあり、且つ前記5個の珠の構成として、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる種類の珠で構成してあると共に、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を、一体的に固定してあることを特徴とす
るそろばん。
【請求項3】
4個の珠は、鉛直方向に貫通する貫通孔をそれぞれ備え、前記貫通孔に固定用ピンを挿通させることで、前記4個の珠を一体的に固定してあることを特徴とする請求項1又は2に記載のそろばん。
【請求項4】
梁の上側に配置される5個の珠の構成として、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる色の珠で構成してあることを特徴とする請求項
1~3の何れか1項に記載のそろばん。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に幼児や小学校の低学年の子供の学習時の使用に適したそろばんに関する。
【背景技術】
【0002】
数の概念や加減乗除の計算力は日常生活を営む上で基本となるものであり、小学校低学年のうちにしっかりと身につけておく必要がある。しかしながら、数は非常に抽象的なものであるため、それ自体の把握はもとより、数の足し算や引き算を習得することは子供にとって非常に難しいものである。このため古来より数を視覚で把握し易いそろばんを用いた教育が行われてきた。
このような従来のそろばんを示すものとして、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示すような従来のそろばんは、横長の長方形状で構成される枠の内側に、横方向に梁を備えると共に、前記梁の横方向に所定間隔を空けて複数本の桁を前記枠の縦方向に取り付け、前記梁の下側に配置される前記桁のそれぞれに4個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、前記梁の上側に配置される前記桁のそれぞれに1個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあるものが一般的であった。そして、前記4個の珠をいわゆる一珠、前記1個の珠をいわゆる五珠として使用するものが一般的であった。
しかしながらこのような従来のそろばんにおいては、五珠が1個の珠で形成されていることから、特に幼児や小学校低学年の子供にとっては、1個しかない珠がなぜ5という数を表すのか理解できず、そろばんを用いた学習過程の初歩段階において大きなつまずきを与えてしまう場合があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記従来技術の問題を解消し、特に幼児や小学校の低学年の子供に対して数の概念を視覚的に教えることが可能であると共に、数の概念を理解し終えた子供達にとっては、通常のそろばんとしても使用可能で、また、通常のそろばんへの移行が容易となるそろばんの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のそろばんは、横長の長方形状で構成される枠の内側に、横方向に梁を備えると共に、前記梁の横方向に所定間隔を空けて複数本の桁を前記枠の縦方向に取り付け、前記梁の下側に配置される前記桁のそれぞれに4個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、前記梁の上側に配置される前記桁のそれぞれに5個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあり、且つ前記5個の珠の構成として、各1個の珠がそれぞれ数字の1であることを視覚で認識しながら、5個の珠で数字の5が構成されることを目で見、また手で触れながら把握できるような第一の使用方法と、最も梁側に配置される1個の珠が、前記1個の珠が表す数字の1とそれ以外の4個の珠が表す数字の4とを集約した数字の5であることを視覚で認識できることによって、前記4個の珠を目で見、また手で触れることなく、4個の珠を省略した状態で、前記1個の珠だけで数字の5が構成されることを目で見、また手で触れながら把握できるような第二の使用方法との二種類の使用方法を一台のそろばんで使用可能とするために、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる種類の珠で構成してあると共に、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を、一体的に固定してあることを第1の特徴としている。
また、本発明のそろばんは、横長の長方形状で構成される枠の内側に、横方向に梁を備えると共に、前記梁の横方向に所定間隔を空けて複数本の桁を前記枠の縦方向に取り付け、前記梁の下側に配置される前記桁のそれぞれに4個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、前記梁の上側に配置される前記桁のそれぞれに5個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあり、且つ前記5個の珠の構成として、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる種類の珠で構成してあると共に、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を、一体的に固定してあることを第2の特徴としている。
また、本発明のそろばんは、上記第1又は第2の特徴に加えて、4個の珠は、鉛直方向に貫通する貫通孔をそれぞれ備え、前記貫通孔に固定用ピンを挿通させることで、前記4個の珠を一体的に固定してあることを第3の特徴としている。
また、本発明のそろばんは、上記第1~3の何れか1つの特徴に加えて、梁の上側に配置される5個の珠の構成として、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる色の珠で構成してあることを第4の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載のそろばんによれば、梁の下側に配置される桁のそれぞれに4個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、梁の上側に配置される桁のそれぞれに5個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあり、且つ前記5個の珠の構成として、各1個の珠がそれぞれ数字の1であることを視覚で認識しながら、5個の珠で数字の5が構成されることを目で見、また手で触れながら把握できるような第一の使用方法と、最も梁側に配置される1個の珠が、前記1個の珠が表す数字の1とそれ以外の4個の珠が表す数字の4とを集約した数字の5であることを視覚で認識できることによって、前記4個の珠を目で見、また手で触れることなく、4個の珠を省略した状態で、前記1個の珠だけで数字の5が構成されることを目で見、また手で触れながら把握できるような第二の使用方法との二種類の使用方法を一台のそろばんで使用可能とするために、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる種類の珠で構成してあると共に、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を、一体的に固定してあることから、幼児や小学校低学年の子供に数の概念を教える際には、梁の下側に配置される4個の珠が1~4までの数を表し、梁の下側に配置される4個の珠と梁の上側に配置される5個の珠とが加わって5~9までの数を表すことを視覚的に教えることができると共に、1個の珠がいわゆる五珠としての働きを備える珠であることを視覚的に教えることが可能なそろばんとして使用することができる。
更に、数の概念が理解できた幼児や小学校低学年の子供に対しては、異なる種類で構成される1個の珠をいわゆる五珠として使用し、通常のそろばんと同様の使用方法にてそろばんを用いた教育を行うことができる。
以上より、数の概念の教示と加減乗除の計算の教示との一台二役をこなすことが可能なそろばんとすることができる。
加えて、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を一体的に固定してあることで、4個の珠がばらばらに動くことを防止でき、通常のそろばんとして使用する際に使用し易いそろばんとすることができる。
【0008】
また、請求項2に記載のそろばんによれば、梁の下側に配置される桁のそれぞれに4個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、梁の上側に配置される桁のそれぞれに5個の珠を可動自在に挿通させて取り付けてあり、且つ前記5個の珠の構成として、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる種類の珠で構成してあると共に、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を、一体的に固定してあることから、幼児や小学校低学年の子供に数の概念を教える際には、梁の下側に配置される4個の珠が1~4までの数を表し、梁の下側に配置される4個の珠と梁の上側に配置される5個の珠とが加わって5~9までの数を表すことを視覚的に教えることができると共に、1個の珠がいわゆる五珠としての働きを備える珠であることを視覚的に教えることが可能なそろばんとして使用することができる。
更に、数の概念が理解できた幼児や小学校低学年の子供に対しては、異なる種類で構成される1個の珠をいわゆる五珠として使用し、通常のそろばんと同様の使用方法にてそろばんを用いた教育を行うことができる。
以上より、数の概念の教示と加減乗除の計算の教示との一台二役をこなすことが可能なそろばんとすることができる。
加えて、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を一体的に固定してあることで、4個の珠がばらばらに動くことを防止でき、通常のそろばんとして使用する際に使用し易いそろばんとすることができる。
【0009】
また、請求項3に記載のそろばんによれば、上記請求項1又は2に記載の構成による作用効果に加えて、最も梁側に配置される1個の珠を除く4個の珠を一体的に固定してあることで、4個の珠がばらばらに動くことを防止でき、通常のそろばんとして使用する際に使用し易いそろばんとすることができる。
【0010】
また、請求項4に記載のそろばんによれば、上記請求項1~3の何れか1項に記載の構成による作用効果に加えて、梁の上側に配置される5個の珠の構成として、最も梁側に配置される1個の珠を、それ以外の4個の珠とは異なる色の珠で構成することで、数の概念やいわゆる五珠を一段と視覚的に理解し易いそろばんとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るそろばんを示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るそろばんを使用して数の概念を教える過程を模式的に示す図で、(a)は数とそろばんの珠との関係を示す図、(b)は本発明の実施形態に係るそろばんを示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るそろばんを使用して数の概念を教える過程を模式的に示す図で、(a)、(b)は数とそろばんの珠との関係を示す図、(c)は本発明の実施形態に係るそろばんを示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るそろばんを使用して数の足し算を教える過程を模式的に示す図で、(a)は数および足し算とそろばんの珠との関係を示す図、(b)、(c)は本発明の実施形態に係るそろばんを示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るそろばんを使用して数の足し算を教える過程を模式的に示す図で、本発明の実施形態に係るそろばんを示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るそろばんを使用して数の足し算を教える過程を模式的に示す図で、(a)は数および足し算とそろばんの珠との関係を示す図、(b)、(c)は本発明の実施形態に係るそろばんを示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るそろばんを使用して数の足し算を教える過程を模式的に示す図で、(a)は数および足し算とそろばんの珠との関係を示す図、(b)、(c)、(d)は本発明の実施形態に係るそろばんを示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るそろばんの変形例を示す図で、(a)は要部の平面図、(b)は要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係るそろばん及び前記そろばんを使用した数の概念及び数の足し算の教示方法を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
【0013】
まず
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係るそろばんと、前記そろばんを使用した数の概念の教示方法を説明する。
【0014】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るそろばん10は、特に幼児や小学校の低学年の子供の学習時の使用に適したそろばんである。
このそろばん10は、
図1に示すように、横長の長方形状で構成される枠1と、枠1の内側の横方向に取り付けてある梁2と、梁2の横方向に所定間隔を空けて枠1の縦方向に複数本取り付けてある珠の支持棒となる桁3とで基本的な骨格が構成されている。なお、梁2には、汎用されているそろばんと同様に、定位点2aを4つ設けてある。
また、梁2の下側に配置される桁3のそれぞれに4個の珠4(梁2に近いものから順に珠4a、珠4b、珠4c、珠4dとする)を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、梁2の上側に配置される桁3のそれぞれに5個の珠5を可動自在に挿通させて取り付けてある。
更に、梁2の上側に配置される桁3のそれぞれに取り付けられている5個の珠5の構成として、最も梁2側に配置される1個の珠5を、それ以外の4個の珠5とは異なる種類の珠5で構成してある。より具体的には、本実施形態においては、最も梁2側に配置される1個の珠5を、それ以外の4個の珠5とは異なる色の珠5で構成してある。また、本実施形態においては、梁2の下側に配置される桁3のそれぞれに取り付けられる4個の珠4と、梁2の上側に配置される桁3のそれぞれに取り付けられる5個の珠5との形状、大きさ、材質、色は同じ構成としてある。勿論、珠4、珠5の構成は上記に限るものではなく、適宜変更可能である。
但し、少なくとも梁2の上側に配置される桁3のそれぞれに取り付けられている5個の珠5の構成として、最も梁2側に配置される1個の珠5を、それ以外の4個の珠5とは異なる種類の珠5で構成することが必要である。なおここで、「異なる種類」とは、色、形状、大きさ、材質など、どのような性状の違いでも良いが、幼児や小学校の低学年の子供の学習に用いるそろばんにおいては、違いを視覚で容易に把握可能な色とすることが望ましい。
つまり、本発明に係るそろばん10においては、梁2の上側に配置される桁3のそれぞれに取り付けられている5個の珠5の構成として、5個の珠5のそれぞれがいわゆる一珠としての機能を担うと共に、最も梁2側に配置される1個の珠5が、一珠としての機能に加えて、いわゆる五珠5aとしての機能も担う構成としてある。この点が、従来のそろばんには全くなかった、本発明におけるそろばん10が備える極めて顕著な特徴点である。
【0015】
なお、本実施形態においては詳しくは図示していないが、所定形状、所定長さにカットした板状の木片を用いて枠1の上下を構成する一対の枠と、梁2とを形成し、所定長さにカットした一対の棒状の木片を用いて枠1の左右を構成する一対の枠を形成する構成としてある。なお、枠1の上下を構成する一対の枠の長手方向の両端には、枠1の左右を構成する一対の枠を嵌合させるための嵌合用穴(図示しない)とねじ6を通すためのねじ穴(図示しない)を設けてある。更に、枠1の左右を構成する一対の枠の長手方向の両端にはねじ穴(図示しない)を設けてある。また、珠4、珠5、五珠5aについては、汎用されているそろばんの桁、一珠、五珠と同様の形状、大きさで、且つ同様の材料を用いて、珠4、珠5、五珠5aを形成する構成としてある。
そして、そろばん10を構成する全ての部材を所定位置に配置した後に、ねじ6を介して、枠1の上下を構成する一対の枠と、枠1の左右を構成する一対の枠とを螺合することでそろばん10が形成されている。
【0016】
次に、このようなそろばん10を用いて数の概念を教示する際の流れを説明する。
【0017】
まず
図2を参照して、1から9までのそれぞれの数と、それらの数に対応するそろばん10の珠4、珠5の数とが1対1の関係になっている場合の数の概念の教示方法を説明する。
図2(a)を参照して、黒板やテキストなどの二次元の媒体を用いて、1から9までの数とそれに対応するそろばんの珠の数を視覚的に説明する。具体的には、数の1には白塗りの丸で示す珠の1個が対応、数の2には珠の2個が対応というように、数の9まで説明する。
【0018】
その後、
図2(b)を参照して、そろばん10を使用して、最も左側にある定位点2aの位置から右側に向かって一桁毎に順番に、1から9までの数に対応する珠4、珠5を入れていく。具体的には、珠4から使用し、珠4aから珠4dまでの4個の珠を入れて数の1から4までを表示させる。その後、数の5を表示する際には、5個の珠5を用いて5の数を表示させる。その後、6から9までの数を表示する際には、5個の珠5を全て入れた状態にて、残りの数に対応する珠4(珠4aから珠4d)をそれぞれ入れることで6から9までの数を表示させる。
以上により、
図2(b)に示すそろばん10と同様の状態となり、1から9までの数がそろばん10に入った(表示された)状態となる。ここでのポイントは、1から9までのそれぞれの数と、それらの数に対応するそろばん10の珠4、珠5のそれぞれの数とが1対1の関係になっているということである。これにより、幼児や小学校の低学年の子供でも1から9までの数と、それらの数に対応するそろばん10の珠4、珠5の数とを理解しやすい状態とすることが可能となる。
【0019】
次に、
図3を参照して、1から9までのそれぞれの数と、それらの数に対応するそろばん10の珠4、珠5の数とが1対1の関係ではなく、いわゆる五珠を使用する場合の数の概念の教示方法を説明する。
図3(a)を参照して、黒板やテキストなどの二次元の媒体を用いて、1から9までの数とそれに対応するそろばんの珠の数を視覚的に説明する。具体的には、数の1には白塗りの丸で示す珠の1個が対応、数の2には珠の2個が対応というように、9までの数を説明する。この際、5番目のそろばんの珠を白塗りの二重丸で表示する。その後、
図3(b)を参照して、二重丸で表示してあったそろばんの珠よりも上側にある5個の珠(数の5を示す5個の珠)が、1個の黒塗りの珠に集約された図を用いて、二重丸で表示してあったそろばんの珠よりも上側にある5個の珠が、1個の黒塗りの珠に集約された事の説明を行う。具体的には、数の5に対応するそろばんの珠は黒塗りの丸1個であり、数の6に対応するそろばんの珠は黒塗りの丸1個と通常の白塗りの丸1個との2個の丸であるというように説明を行う。この説明を終えると、
図3(a)と
図3(b)とを見比べてもわかるように、二重丸で表示してあったそろばんの珠よりも上側にある5個の珠(数の5を示す5個の珠)が、1個の黒塗りの珠に集約されたことで、1から9までの数をたった5個の珠で表現することが可能となる。よって、人間の眼は5個までの珠を数えなくても一目で認識できることから、5から9までの数のそれぞれに対応する珠を見る際の目の動きが少なくて済み、5から9までの数に対応するそろばん10の珠を一段と視覚的に把握し易くなることがわかる。つまり、一目見るだけで5から9までの数を認識することができる。
ここでのポイントは、1個の黒塗り珠が、実際は5個の珠から構成されていることであり、
図3(a)、
図3(b)を用いて、1個の黒塗り珠が、実際は5個の珠から構成されていることを幼児や小学校低学年の子供が納得いくまで根気よく説明することである。
【0020】
その後、
図3(c)を参照して、最も左側にある定位点2aの位置から右側に向かって一桁毎に順番に、1から9までの数に対応する個数の珠4、珠5を、五珠5aも使用して入れていく。具体的には、4個の珠4(珠4aから珠4d)を使用して1から4までの数を表示させた後、1個の珠5aを入れて数の5を表示させる。その後、6から9までの数を表示する際には、1個の五珠5aと一珠である珠4(珠4aから珠4d)を入れることで6から9までの数を表示させる。
以上により、
図3(c)に示すそろばん10と同様の状態となり、1から9までの数がそろばん10に入った(表示された)状態となる。ここでのポイントは、1から4までのそれぞれの数と、それらの数に対応するそろばん10の珠4の個数とは1対1の関係になっているが、5から9までのそれぞれの数と、それらの数に対応するそろばん10の珠4及び珠5の個数とは1対1の関係にはなっておらず、五珠5aを用いることで5個の珠5が1個の五珠5aで表示されているということである。これにより、幼児や小学校の低学年の子供でも1から9までの数と、それらの数に対応するそろばん10の珠4、珠5の個数とが視覚的に把握し易い状態とすることが可能となる。加えて、本発明のそろばん10においては、珠4、珠5、五珠5aの解説を黒板やテキストなどの二次元の媒体を用いた場合でも、白塗の丸、黒塗りの丸を使用するだけで、そろばん10と同様の説明を行うことができるという点も本発明のポイントとなる点(特徴点)である。
【0021】
次に、
図4~
図7までを参照して、本発明の実施形態に係るそろばん10を用いて足し算を教示する際の流れについて説明する。
【0022】
まず
図4を参照して、そろばん10を用いて9足す9を教示する際(10進法の例)の流れを説明する。
図4(a)を参照して、まずは黒板やテキストなどの二次元の媒体を用いて、そろばん10の珠4、珠5を図式化したものを用いて9足す9の説明を行う。具体的には、5という数が1個の黒塗りの丸に集約されている場合において、黒塗りの丸、白塗りの丸、数字、プラス記号、イコール記号を適宜用いて9足す9を説明する。この際、本実施形態においては、足される数を左側、足す数を右側に表示するものとする。
具体的には、9足す9の場合では、右側に表示される足す数9は、足される数9のうちの1と集合して10になる。よって、足される数が繰り上がりにより10と8とになって、答えは18となる。
【0023】
次に
図4(b)、
図4(c)を参照して、まずはそろばん10にて、五珠5aを使用せずに9足す9を教示する際を説明する。
図4(b)を参照して、左から2つ目の定位点に足される数9、右から2つ目の定位点に足す数9を入れる。具体的には、数の4を表示する4個の珠4と、数の5を表示する5個の珠5とをそれぞれの定位点の位置に入れる。なお、本実施形態においては、便宜的に足される数を左から2つ目の定位点に、足す数を右から2つ目の定位点に入れるものとしたまでであり、珠を入れる桁は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
その後、
図4(c)を参照して、足す数9が足される数9のうちの1個の珠4(珠4d)と集合して10になる。よって、足される数が繰り上がりにより、十の位に珠4の1個(珠4a)が新たに入り、残りの一の位に3個の珠4(珠4aから珠4c)と5個の珠5が残り、答えの18が表示される。
【0024】
次に
図5を参照して、そろばん10にて、五珠5aを使用して9足す9を教示する際を説明する。
図5(a)を参照して、左から2つ目の定位点に足される数9、右から2つ目の定位点に足す数9を入れる。具体的には、4個の珠4(珠4aから珠4d)と、1個の五珠5aとをそれぞれの定位点の位置に入れる。
その後、
図5(b)を参照して、足す数9が足される数9のうちの1個の珠4(珠4d)と集合して10になる。よって、足される数が繰り上がりにより、十の位に1個の珠4(珠4a)が新たに入り、残りの一の位に3個の珠4(珠4aから珠4c)と1個の五珠5aとが残り、答えの18が表示される。
【0025】
次に、
図6を参照して、五珠5aを用いて4足す4をそろばん10にて教示する際(5進法の例)の流れを説明する。
図6(a)を参照して、まずは黒板やテキストなどの二次元の媒体を用いて、そろばん10の珠4、珠5を図式化したものを用いて4足す4の説明を行う。具体的には、5という数が1個の黒塗りの丸に集約されている場合において、黒塗りの丸、白塗りの丸、数字、プラス記号、イコール記号を適宜用いて4足す4を説明する。この際、本実施形態においては、足される数を左側、足す数を右側に表示するものとする。
具体的には、4足す4の場合では、右側に表示される4個の白塗りの丸(数の4に該当)の全てが左側に表示される1個の白塗りの丸(数の1に該当)と集合して5となって1個の黒塗りの丸となる。よって、足される数が5と3とになって、答えは8となる。
【0026】
次に
図6(b)、
図6(c)を参照して、そろばん10にて、五珠5aを使用して4足す4を教示する際を説明する。
図6(b)を参照して、左から2つ目の定位点に足される数4、右から2つ目の定位点に足す数4を入れる。具体的には、珠4aから珠4dまでの4個をそれぞれの定位点の位置に入れる。
その後、
図6(c)を参照して、足す数4が足される数4のうちの1個の珠4(珠4d)と集合して5になる。よって、足される数に1個の五珠5aが新たに入り、残りの一の位に3個の珠4(珠4aから珠4c)が残り、答えの8が表示される。
【0027】
次に、
図7を参照して、五珠5aを用いて6足す7をそろばん10にて教示する際(いわゆる5×2進法の例)の流れを説明する。
図7(a)を参照して、まずは黒板やテキストなどの二次元の媒体を用いて、そろばん10の珠4、珠5を図式化したものを用いて6足す7の説明を行う。具体的には、数の5が1個の黒塗りの丸に集約されている場合において、黒塗りの丸、白塗りの丸、数字、プラス記号、イコール記号を適宜用いて6足す7を説明する。この際、本実施形態においては、足される数を左側、足す数を右側に表示するものとする。
具体的には、6足す7の場合では、右側に表示される足す数7のうちの2個の白塗りの丸が、足される数6のうちの1個の白塗りの丸と集合する。また、右側に表示される足す数7のうちの1個の黒塗りの丸が、足される数6のうちの1個の黒塗りの丸と集合して10になる。以上により、足される数が繰り上がりにより10と3とになって、答えは13となる。
【0028】
次に
図7(b)、
図7(c)を参照して、そろばん10にて、五珠5aを使用して6足す7を教示する際を説明する。
図7(b)を参照して、左から2つ目の定位点に足される数6、右から2つ目の定位点に足す数7を入れる。具体的には、左から2つ目の定位点には1個の珠4(珠4a)と1個の五珠5aを入れ、右から2つ目の定位点には2個の珠4(珠4aと珠4b)と1個の五珠5aを入れる。
その後、
図7(c)を参照して、足す数7のうちの2個の珠4(珠4a、珠4b)が足される数6のうちの1個の珠4と集合して足される数の一の位に新たに珠4b、珠4cが入る。これによって、足される数の一の位には1個の五珠5aと3個の珠4(珠4aから珠4c)が入った状態となって8が表示される。
その後、
図7(d)を参照して、足す数7のうちの1個の五珠5aが足される数6のうちの1個の五珠5aと集合して10になる。よって、足される数が繰り上がりにより、十の位に1個の珠4(珠4a)が新たに入り、残りの一の位に3個の珠4(珠4aから珠4c)が残り、答えの13が表示される。
【0029】
このような構成からなる本発明の実施形態に係るそろばん10は以下の効果を奏する。
【0030】
梁2の下側に配置される桁3のそれぞれに4個の珠4を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、梁2の上側に配置される桁3のそれぞれに5個の珠5を可動自在に挿通させて取り付けてあり、且つ前記5個の珠5の構成として、最も梁2側に配置される1個の珠5を、それ以外の4個の珠とは異なる種類の珠5で構成してあることから、幼児や小学校低学年の子供に数の概念を教える際には、梁2の下側に配置される4個の珠が1~4までの数を表し、梁2の下側に配置される4個の珠4と梁2の上側に配置される5個の珠5とが加わって5~9までの数を表すことを視覚的に教えることができると共に、1個の珠5がいわゆる五珠5aとしての働きを備える珠5であることを視覚的に教えることが可能なそろばんとして使用することができる。
また、数の5を示す5個の珠5が1個の五珠5aに集約されることで、この工夫により6から9までの数を数えることなく、見るだけで認識できることを理解させることができる。
更に、上記の数の概念が理解できた幼児や小学校低学年の子供に対しては、異なる種類で構成される1個の珠5をいわゆる五珠5aとして使用し、通常のそろばんと同様の使用方法にてそろばんを用いた教育を行うことができる。
以上より、数の概念の教示と加減乗除の計算の教示との一台二役をこなすことが可能なそろばん10とすることができる。
加えて、本発明に係るそろばんの使用時期を終えて通常のそろばんへ移行する際にも、予め数の概念を充分に理解できていることで、移行が容易となり、利便性の高いそろばんとすることができる。
【0031】
また、梁2の上側に配置される5個の珠5の構成として、最も梁2側に配置される1個の珠5(五珠5a)を、それ以外の4個の珠5とは異なる色(本実施形態においては緑色)の珠で構成することで、数の概念やいわゆる五珠を一段と視覚的に理解し易いそろばん10とすることができる。
【0032】
次に、
図8を参照して、既述した本発明の実施形態に係るそろばん10の変形例を説明する。
本変形例は、既述した本発明の実施形態に係るそろばん10に対して、梁2の上側に配置される5個の珠5の構成として、最も梁2側に配置される1個の珠5を除く4個の珠5を一体的に固定してある構成としたものである。その他の構成は既述した本発明の実施形態に係るそろばん10と同一であることから、同一部材、同一機能を果たすものには同一番号を付し、以下詳細な説明は省略するものとする。
【0033】
具体的には、
図8に示すように、4個の珠5のそれぞれに、鉛直方向に貫通する貫通孔Kをそれぞれ設け、貫通孔Kに固定用ピン7を挿通させることで、4個の珠5を一体的に固定してある。
なお、本変形例においては、貫通孔Kとして直径1mmの円形の孔を設けると共に、固定用ピン7として直径1mm弱程度のアルミニウム製の細長い丸棒を用いる構成としてある。
勿論、貫通孔K、固定用ピン7の構成(形状、直径、材質等)はこのような構成に限るものではなく、適宜変更可能である。例えば、固定用ピン7としては、弾性力を備える部材を用いる構成としてもよい。
更に、4個の珠5を一体的に固定する方法は、貫通孔Kも設けて貫通孔Kに固定用ピン7を挿通させる構成に限るものではなく、他の方法を用いるものであってもよい。例えば、マウスピースのようにワンタッチで着脱可能な固定用カバーを4個の珠5に装着するような構成としてもよい。
【0034】
このように、梁2の上側に配置される5個の珠5の構成として、最も梁2側に配置される1個の珠5を除く4個の珠5を一体的に固定してある構成とすることで、4個の珠5がばらばらに動くことを防止でき、通常のそろばんとして使用する際に使用し易いそろばん10とすることができる。
更に、4個の珠5のそれぞれに貫通孔Kを設けて貫通孔Kに固定用ピン7を挿通させることで4個の珠5を一体的に固定する構成とすることで、4個の珠5を容易に一体化させて固定することができる。
【0035】
なお、そろばん10の大きさ、形状、色、材質等は、本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のそろばんは、特に幼児や小学校の低学年の子供に対して数の概念を視覚的に教えることが可能であると共に、数の概念を理解し終えた子供達にとっては、通常のそろばんとしても使用可能で、また、通常のそろばんへの移行が容易となるそろばんとすることができることから、そろばんに関連する産業分野において有用であり、産業上の利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0037】
1 枠
2 梁
2a 定位点
3 桁
4 珠
4a 珠
4b 珠
4c 珠
4d 珠
5 珠
5a 五珠
6 ねじ
7 固定用ピン
10 そろばん
K 貫通孔
【要約】
【課題】特に幼児や小学校の低学年の子供に対して数の概念を視覚的に教えることが可能であると共に、数の概念を理解し終えた子供達にとっては、通常のそろばんとしても使用可能で、また、通常のそろばんへの移行が容易となるそろばんの提供を課題とする。
【解決手段】横長の長方形状で構成される枠1の内側に、横方向に梁2を備えると共に、梁2の横方向に所定間隔を空けて複数本の桁3を枠1の縦方向に取り付け、梁2の下側に配置される桁3のそれぞれに4個の珠4を可動自在に挿通させて取り付けてあると共に、梁2の上側に配置される桁3のそれぞれに5個の珠5を可動自在に挿通させて取り付けてあり、且つ5個の珠5の構成として、最も梁2側に配置される1個の珠5を、それ以外の4個の珠5とは異なる種類の珠で構成してあることを特徴とするそろばんである。
【選択図】
図1