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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】フォークリフトおよび荷役システム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220607BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021039913
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-106346(JP,A)
【文献】特開2020-181434(JP,A)
【文献】特開2020-170237(JP,A)
【文献】特開2020-205044(JP,A)
【文献】特開2020-090381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業場において荷役作業を行うフォークリフトであって、
車体と、
前記車体の前方を含む画像を撮影して画像データを生成する画像データ生成部と、
前記画像データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、前記車体の走行ルートの安全性の程度を示す安全性スコアを生成するように機械学習された学習モデル部と、
前記画像データを前記学習モデル部に入力することで前記学習モデル部から前記安全性スコアを取得する処理部と、
走行中に所定のメロディーを出力する音声出力部と、
前記メロディーの出力状態を調整する音声制御部と、
自己位置の推定を行う位置推定部と、
前記作業場における前記安全性スコアの分布を示す環境マップを生成するマップ生成部と、を備え、
前記マップ生成部は、
前記処理部から取得した前記安全性スコアを現在スコアとし、前記環境マップ内の前記自己位置における前記安全性スコアを過去スコアとし、前記現在スコアと前記過去スコアとを比較して安全性の低い方の前記安全性スコアを前記音声制御部に出力し、
前記音声制御部は、
前記マップ生成部から取得した前記安全性スコアに基づいて、前記メロディーの前記出力状態を調整する
ことを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
前記マップ生成部は、前記安全性スコアを前記音声制御部に出力した後に、前記現在スコアを用いて前記過去スコアを更新することを特徴とする
ことを特徴とする請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
前記音声制御部の制御下で、前記メロディーよりも音量の大きい警報音を出力する警報音出力部を備え、
前記音声制御部は、前記安全性スコアが所定の閾値よりも小さい場合、前記音声出力部に前記メロディーを出力させる代わりに、前記警報音出力部に前記警報音を出力させることを特徴とする請求項1または2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
管理装置と、前記管理装置の管理下で作業場において荷役作業を行う複数のフォークリフトと、を備える荷役システムであって、
前記フォークリフトは、
車体と、
前記車体の前方を含む画像を撮影して画像データを生成する画像データ生成部と、
前記画像データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、前記車体の走行ルートの安全性の程度を示す安全性スコアを生成するように機械学習された学習モデル部と、
前記画像データを前記学習モデル部に入力することで前記学習モデル部から前記安全性スコアを取得する処理部と、
走行中に所定のメロディーを出力する音声出力部と、
前記メロディーの出力状態を調整する音声制御部と、
自己位置の推定を行う位置推定部と、を備え、
前記管理装置は、
前記フォークリフトから前記安全性スコアおよび前記自己位置を取得するための通信部と、
前記作業場における前記安全性スコアの分布を示す環境マップを生成するマップ生成部と、を備え、
前記マップ生成部は、
前記フォークリフトから取得した前記安全性スコアを現在スコアとし、前記環境マップ内の前記フォークリフトの前記自己位置における前記安全性スコアを過去スコアとし、前記現在スコアと前記過去スコアとを比較して安全性の低い方の前記安全性スコアを前記フォークリフトの前記音声制御部に送信し、
前記音声制御部は、
前記マップ生成部から取得した前記安全性スコアに基づいて、前記メロディーの前記出力状態を調整する
ことを特徴とする荷役システム。
【請求項5】
前記処理部は、前記学習モデル部に入力した前記画像データに前記学習モデル部から取得した前記安全性スコアを関連付けた、安全性スコア付きの画像データを前記管理装置に送信し、
前記管理装置は、
前記安全性スコア付きの画像データを収集して学習用データを生成する収集部と、
前記学習用データに基づく機械学習を行い、前記学習モデル部に含まれる前記パラメータを更新するための更新データを生成し、前記更新データを前記学習モデル部に送信するパラメータ更新部と、
を備え、
前記学習モデル部は、前記更新データに基づいて前記パラメータを更新することを特徴とする請求項4に記載の荷役システム。
【請求項6】
前記マップ生成部は、前記安全性スコアを前記音声制御部に送信した後に、前記現在スコアを用いて前記過去スコアを更新することを特徴とする
ことを特徴とする請求項4または5に記載の荷役システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトおよび荷役システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、作業場にいる作業者に注意を促す目的で、メロディーを出力しながら走行するフォークリフトが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のフォークリフトは、車体の前方を撮影して画像データを生成する画像データ生成部と、画像データに基づいて走行ルートの安全性の程度を示す安全性スコアを生成する学習モデル部とを備え、安全性スコアに応じてメロディーの出力状態を調整する。
【0003】
上記フォークリフトは、例えば、画像データにおいて走行ルート上に作業者がいる場合、安全性が低いと判断して小さい数値パラメータの安全性スコアを生成する。このため、作業者が頻繁に作業している領域では、常に小さい数値パラメータの安全性スコアが生成されることが好ましい。
【0004】
しかしながら、画像データ生成部の撮影手段が撮影しているタイミングで作業者が死角領域(例えば、ラックや荷物に隠れて撮影手段から見えない領域)にいる場合、上記フォークリフトは、作業者がいないのと同様の安全性スコアを生成してしまう。その結果、作業者への注意を促すことができないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2019-219523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、作業者が死角領域にいるときでも作業者への注意を促すことが可能なフォークリフトおよび荷役システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、
作業場において荷役作業を行うフォークリフトであって、
車体と、
前記車体の前方を含む画像を撮影して画像データを生成する画像データ生成部と、
前記画像データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、前記車体の走行ルートの安全性の程度を示す安全性スコアを生成するように機械学習された学習モデル部と、
前記画像データを前記学習モデル部に入力することで前記学習モデル部から前記安全性スコアを取得する処理部と、
走行中に所定のメロディーを出力する音声出力部と、
前記メロディーの出力状態を調整する音声制御部と、
自己位置の推定を行う位置推定部と、
前記作業場における前記安全性スコアの分布を示す環境マップを生成するマップ生成部と、を備え、
前記マップ生成部は、
前記処理部から取得した前記安全性スコアを現在スコアとし、前記環境マップ内の前記自己位置における前記安全性スコアを過去スコアとし、前記現在スコアと前記過去スコアとを比較して安全性の低い方の前記安全性スコアを前記音声制御部に出力し、
前記音声制御部は、
前記マップ生成部から取得した前記安全性スコアに基づいて、前記メロディーの前記出力状態を調整することを特徴とする。
【0008】
この構成では、画像データに基づいてリアルタイムで生成された安全性スコアを現在スコアとし、環境マップ内の自己位置における安全性スコアを過去スコアとし、安全性の低い方の安全性スコアに基づいてメロディーの出力状態を調整する。例えば、作業者が頻繁に作業している領域において作業者が死角領域に入った場合、現在スコアよりも過去スコアの方が安全性の低いスコア(小さい数値パラメータのスコア)となる。したがって、この構成によれば、死角領域にいる作業者に対しても適切に注意を促すことが可能となる。
【0009】
上記フォークリフトにおいて、
前記マップ生成部は、前記安全性スコアを前記音声制御部に出力した後に、前記現在スコアを用いて前記過去スコアを更新するよう構成できる。
【0010】
上記フォークリフトにおいて、
前記音声制御部の制御下で、前記メロディーよりも音量の大きい警報音を出力する警報音出力部を備え、
前記音声制御部は、前記安全性スコアが所定の閾値よりも小さい場合、前記音声出力部に前記メロディーを出力させる代わりに、前記警報音出力部に前記警報音を出力させるよう構成できる。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る荷役システムは、
管理装置と、前記管理装置の管理下で作業場において荷役作業を行う複数のフォークリフトと、を備える荷役システムであって、
前記フォークリフトは、
車体と、
前記車体の前方を含む画像を撮影して画像データを生成する画像データ生成部と、
前記画像データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、前記車体の走行ルートの安全性の程度を示す安全性スコアを生成するように機械学習された学習モデル部と、
前記画像データを前記学習モデル部に入力することで前記学習モデル部から前記安全性スコアを取得する処理部と、
走行中に所定のメロディーを出力する音声出力部と、
前記メロディーの出力状態を調整する音声制御部と、
自己位置の推定を行う位置推定部と、を備え、
前記管理装置は、
前記フォークリフトから前記安全性スコアおよび前記自己位置を取得するための通信部と、
前記作業場における前記安全性スコアの分布を示す環境マップを生成するマップ生成部と、を備え、
前記マップ生成部は、
前記フォークリフトから取得した前記安全性スコアを現在スコアとし、前記環境マップ内の前記フォークリフトの前記自己位置における前記安全性スコアを過去スコアとし、前記現在スコアと前記過去スコアとを比較して安全性の低い方の前記安全性スコアを前記フォークリフトの前記音声制御部に送信し、
前記音声制御部は、
前記マップ生成部から取得した前記安全性スコアに基づいて、前記メロディーの前記出力状態を調整することを特徴とする。
【0012】
上記荷役システムにおいて、
前記処理部は、前記学習モデル部に入力した前記画像データに前記学習モデル部から取得した前記安全性スコアを関連付けた、安全性スコア付きの画像データを前記管理装置に送信し、
前記管理装置は、
前記安全性スコア付きの画像データを収集して学習用データを生成する収集部と、
前記学習用データに基づく機械学習を行い、前記学習モデル部に含まれる前記パラメータを更新するための更新データを生成し、前記更新データを前記学習モデル部に送信するパラメータ更新部と、
を備え、
前記学習モデル部は、前記更新データに基づいて前記パラメータを更新するよう構成できる。
【0013】
上記荷役システムにおいて、
前記マップ生成部は、前記安全性スコアを前記音声制御部に送信した後に、前記現在スコアを用いて前記過去スコアを更新するよう構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業者が死角領域にいるときでも作業者への注意を促すことが可能なフォークリフトおよび荷役システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る荷役システムのブロック図である。
図2】第1実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
図3】第1実施形態に係る荷役システムの平面図である。
図4】(A)第1実施形態に係る管理装置に表示されるモデル図である。(B)第1実施形態に係るフォークリフトのマップ生成部で生成されるモデル図(環境マップ)である。
図5】第2実施形態に係る荷役システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフォークリフトおよび荷役システムの実施形態について説明する。
【0017】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係る荷役システム1Aのブロック図を示す。荷役システム1Aは、管理装置100Aと、複数台のレーザー誘導方式の無人フォークリフト200A(本発明の「フォークリフト」に相当)とを備える。
【0018】
管理装置100Aは、通信部101と、統括制御部102と、表示部103とを備える。管理装置100Aは、図3に示すように、無人フォークリフト200Aが走行する作業場2(本実施形態では、複数のラック3を有する倉庫)の外に設けてもよいし、作業場2の中に設けてもよい。
【0019】
通信部101は、管理装置100Aに予め登録された無人フォークリフト200Aと無線通信を行うよう構成されている。
【0020】
統括制御部102は、無人フォークリフト200Aの走行および荷役作業を管理するよう構成されている。例えば、統括制御部102は、無人フォークリフト200Aの荷役作業のスケジュールを作成するとともに荷役作業を円滑に行うための走行ルートを決定する。統括制御部102は、通信部101を介して走行ルートを無人フォークリフト200Aに通知する。
【0021】
表示部103は、例えば、液晶ディスプレイで構成されている。表示部103には、無人フォークリフト200Aの走行情報および荷役作業情報が表示される。図4(A)に示すように、表示部103は、作業場2のモデル図M1を表示し、モデル図M1において無人フォークリフト200Aの現在地Ma、走行ルートRa等を走行情報として表示してもよい。
【0022】
無人フォークリフト200Aは、管理装置100Aの管理下で走行および荷役作業を行うよう構成されている。図2に示すように、無人フォークリフト200Aは、車体210と、荷役装置211と、車体210の上部に設けられたレーザースキャナ212とを備える。荷役装置211は、車体210の前後に水平移動可能に設けられたマストと、マストに昇降可能に設けられたフォークとを含む。
【0023】
図3に示すように、レーザースキャナ212は、レーザー光源を回転させながら周囲にレーザーLを投光し、作業場2内に配置された複数の反射板4からの反射光L’を検出する。レーザースキャナ212の演算部は、反射板4の位置を所定のマップ上で記憶しており、三角測量の原理に基づいて車体210の現在地(自己位置)を算出する。このようにして、無人フォークリフト200Aは、車体210の現在地に関する現在地情報を取得しながら、通知された走行ルートに従って走行する。
【0024】
再び図1を参照して、無人フォークリフト200Aは、音声出力部201と、警報音出力部202と、画像データ生成部203と、学習モデル部204と、処理部205と、位置推定部206と、マップ生成部207と、音声制御部208とを備える。
【0025】
音声出力部201は、例えば、少なくとも1つのスピーカーで構成され、音声制御部208の制御下で車体210の走行中に所定のメロディーを出力する。なお、出力するメロディーは音声制御部208に記憶されている。
【0026】
警報音出力部202は、例えば、少なくとも1つのスピーカーで構成され、音声制御部208の制御下でメロディーよりも音量の大きい警報音を出力する。また、車体210の前部に障害物センサが設けられている場合、障害物センサが車体210の前方に存在する障害物(例えば、走行ルート上に置かれた荷物)を検出した際に、警報音出力部202が警報音を出力してもよい。
【0027】
画像データ生成部203は、撮影手段および画像処理手段を含むよう構成されている。撮影手段は、車体210の前方を含む画像(静止画および/または動画)を撮影し、画像処理手段に出力する。画像処理手段は、当該画像に基づいて、学習モデル部204に入力可能な画像データを生成する。
【0028】
学習モデル部204は、画像データ生成部203で生成された画像データが入力されると、所定のパラメータを有するニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、走行ルートの安全性の程度を示す安全性スコアを生成するように機械学習された学習済みモデルである。
【0029】
学習済みモデルの機械学習では、上記のとおりニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、教師データを大量に入力する。教師データは、作業場2内の走行ルートを撮影した画像データに所定の安全性スコアを紐付けしたデータを含む。安全性スコアとしては、数値パラメータ(本実施形態では、1~5の数値パラメータ)を用いる。数値パラメータの設定は、人またはコンピュータが行う。例えば、ラック3の近くを走行し、かつ走行ルート上に人がいる場合は、安全性が低いと判断して小さい数値パラメータを設定する。一方で、人がいない場合は、安全性が高いと判断して大きい数値パラメータを設定する。画像データが示す走行ルートの状況と安全性の程度との間には、相関関係等の一定の関係が存在することを推認できる。
【0030】
処理部205は、画像データ生成部203から取得した画像データを学習モデル部204に入力することで、学習モデル部204から安全性スコアを取得するよう構成されている。処理部205は、取得した安全性スコアをマップ生成部207に出力する。また、処理部205は、学習モデル部204に入力した画像データに学習モデル部204から取得した安全性スコアを関連付けて、安全性スコア付きの画像データを生成し、当該安全性スコア付きの画像データを管理装置100Aに送信してもよい。
【0031】
位置推定部206は、車体210の現在地(自己位置)を認識し、車体210の現在地に関する現在地情報を取得するよう構成されている。本実施形態では、位置推定部206は、レーザースキャナ212およびその演算部に相当する。位置推定部206は、取得した現在地情報をマップ生成部207に出力する。
【0032】
マップ生成部207は、作業場2における安全性スコアの分布を示す環境マップを記憶および生成するよう構成されている。図4(B)に示すように、環境マップは、所定の領域ごとに安全性スコアが関連付けされている作業場2のモデル図M2である。安全性スコアは、後述するように適宜更新される。
【0033】
マップ生成部207は、処理部205から安全性スコアが入力され、かつ位置推定部206から現在地情報(自己位置)が入力されると、処理部205から取得した安全性スコアを現在スコアとし、環境マップ内の自己位置における安全性スコアを過去スコアとし、現在スコアと過去スコアとを比較する。マップ生成部207は、比較した後、安全性の低い方の安全性スコア(小さい数値パラメータの安全性スコア)を音声制御部208に出力する。
【0034】
マップ生成部207は、安全性スコアを音声制御部208に出力した後に、現在スコアを用いて過去スコアを更新するよう構成されている。更新方法として、マップ生成部207は、現在スコアを単純に過去スコアに置き換えてもよいし、少なくとも1回分の過去スコアと現在スコアとの平均値を算出して過去スコアを当該平均値と置き換えてもよい。
【0035】
処理部205、マップ生成部207および音声制御部208は、例えば、少なくとも1つのマイコンで構成され、マイコンのCPUが所定のプログラムを実行すること等によって処理部205、マップ生成部207および音声制御部208の各種機能が実現される。
【0036】
音声制御部208は、マップ生成部207から取得した安全性スコアに応じて、メロディーおよび警報音の出力状態を調整するよう構成されている。音声制御部208は、表1に示すような、安全性スコアとメロディーおよび警報音の出力状態との関係が規定されたデータを記憶している。
【0037】
【表1】
【0038】
安全性スコアの数値パラメータが5~2の範囲では、音声制御部208は、安全性スコアの数値パラメータが小さくなる(安全性が低くなる)につれて、メロディーの音量が大きくなるように、メロディーの出力状態を調整する。
【0039】
安全性スコアの数値パラメータが1の場合、音声制御部208は、音声出力部201にメロディーの出力を停止させる一方、警報音出力部202に警報音を出力させる。なお、音声制御部208は、メロディーの出力を停止させるかわりに、メロディーの音量を音量4よりも減少させた状態で警報音出力部202に警報音を出力させてもよい。
【0040】
音声制御部208は、安全性スコアの数値パラメータが大きくなる(安全性が高くなる)方向にメロディーを変化させる場合、頻繁にメロディーの出力状態が変化するのを防ぐために、前回の出力状態の調整から所定時間(例えば、数秒間)経過した後に変化させてもよい。
【0041】
上記のとおり、本実施形態に係る無人フォークリフト200Aでは、画像データに基づいてリアルタイムで生成された安全性スコアを現在スコアとし、環境マップ内の自己位置における安全性スコアを過去スコアとし、安全性の低い方の安全性スコアに基づいてメロディーの出力状態を調整する。
【0042】
例えば、作業者が頻繁に作業している領域において作業者が死角領域に入った場合、現在スコアよりも過去スコアの方が安全性の低いスコア(小さい数値パラメータのスコア)となるため、無人フォークリフト200Aは、過去スコアに基づいてメロディーの出力状態を調整する。したがって、本実施形態に係る無人フォークリフト200Aによれば、死角領域(例えば、ラックや荷物に隠れて撮影手段から見えない領域)にいる作業者に対しても適切に注意を促すことが可能となる。
【0043】
[第2実施形態]
図5に、本発明の第2実施形態に係る荷役システム1Bのブロック図を示す。荷役システム1Bは、管理装置100Bと、複数台のレーザー誘導方式の無人フォークリフト200Bとを備える。無人フォークリフト200Bは、マップ生成部207を備えていないことを除いて第1実施形態と共通する。
【0044】
管理装置100Bは、複数台の無人フォークリフト200Bの走行および荷役作業を管理する。管理装置100Bは、マップ生成部104、収集部105、およびパラメータ更新部106を備えることを除いて第1実施形態と共通する。
【0045】
マップ生成部104は、第1実施形態の無人フォークリフト200Aが備えるマップ生成部207と同じ構成である。すなわち、マップ生成部104は、無人フォークリフト200Bから安全性スコアおよび現在地情報(自己位置)が入力されると、無人フォークリフト200Bから取得した安全性スコアを現在スコアとし、環境マップ内の自己位置における安全性スコアを過去スコアとし、現在スコアと過去スコアとを比較する。マップ生成部104は、比較した後、安全性の低い方の安全性スコア(小さい数値パラメータの安全性スコア)を無人フォークリフト200Bの音声制御部208に送信する。
【0046】
収集部105は、無人フォークリフト200Bから安全性スコア付きの画像データを収集し、当該安全性スコア付きの画像データに基づいてパラメータ更新部106に入力可能な学習用データを生成するよう構成されている。
【0047】
また、収集部105は、無人フォークリフト200Bから画像データ(画像データ生成部203で生成された安全性スコアが付いていない画像データ)を収集し、当該画像データに安全性スコアを紐付けした学習用データを生成してもよい。この場合、学習用データは、第1実施形態の教師データと同様にして生成することができる。すなわち、収集部105は、安全性スコアとして数値パラメータ(本実施形態では、1~5の数値パラメータ)を用いるとともに、個々の画像データに対して安全性スコアを設定する。例えば、ラック3の近くを走行し、かつ走行ルート上に人がいる場合は、安全性が低いと判断して小さい数値パラメータを設定する。一方で、人がいない場合は、安全性が高いと判断して大きい数値パラメータを設定する。画像データが示す走行ルートの状況と安全性の程度との間には、相関関係等の一定の関係が存在することを推認できる。
【0048】
パラメータ更新部106は、無人フォークリフト200Bの学習モデル部204に含まれる機械学習アルゴリズムのパラメータ(例えば、ニューラルネットワークの重み付けのパラメータ)を更新するための更新データを生成する。パラメータ更新部106は、更新データを生成するために、ニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、学習用データに基づく機械学習を行う。パラメータ更新部106は、生成した更新データを、通信部101を介して複数台の無人フォークリフト200Bに送信する。
【0049】
無人フォークリフト200Bの学習モデル部204は、受信した更新データに基づいて機械学習アルゴリズムのパラメータを更新する。これにより、学習モデル部204は、更新されたパラメータを有する機械学習アルゴリズムに基づいて、安全性スコアを生成することができる。
【0050】
[変形例]
以上、本発明に係るフォークリフトおよび荷役システムの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0051】
本発明のフォークリフトは、車体と、車体の前方を含む画像を撮影して画像データを生成する画像データ生成部と、画像データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、車体の走行ルートの安全性の程度を示す安全性スコアを生成するように機械学習された学習モデル部と、画像データを学習モデル部に入力することで学習モデル部から安全性スコアを取得する処理部と、走行中に所定のメロディーを出力する音声出力部と、メロディーの出力状態を調整する音声制御部と、自己位置の推定を行う位置推定部と、作業場における安全性スコアの分布を示す環境マップを生成するマップ生成部と、を備え、マップ生成部は、処理部から取得した安全性スコアを現在スコアとし、環境マップ内の自己位置における安全性スコアを過去スコアとし、現在スコアと過去スコアとを比較して安全性の低い方の安全性スコアを音声制御部に出力し、音声制御部は、マップ生成部から取得した安全性スコアに基づいて、メロディーの出力状態を調整するのであれば適宜構成を変更できる。
【0052】
本発明のフォークリフトは、レーザー誘導方式の無人フォークリフトに限定されるものではなく、別の方式の無人フォークリフトでもよいし、有人運転と無人運転とを切り替え可能な有人無人フォークリフトでもよい。
【0053】
本発明のフォークリフトは、自律走行機構を備えることが好ましい。自律走行機構は、例えば、レーザー誘導機構またはSLAM誘導機構を含む。レーザー誘導機構は、上記実施形態で示したように、レーザースキャナと壁等に設けられた反射体とを用いて特定した自己位置および姿勢(姿勢角)に基づいて自律走行するための機構である。SLAM誘導機構は、自己位置の推定および環境地図の作成を行うSLAMにより特定した自己位置および姿勢に基づいて自律走行するための機構である。
【0054】
第1実施形態では、安全性スコアの数値パラメータを1~5の範囲で設定しているが、当該範囲は適宜変更できる。また、音声制御部208は、安全性スコアの数値パラメータが小さくなるにつれてメロディーの音量が大きくなるようにメロディーの出力状態を調整しているが、音量に加えて、または音量の代わりに、メロディーの再生速度等を変更してもよい。
【0055】
第2実施形態に係る収集部105およびパラメータ更新部106は、管理装置100Bではなく、無人フォークリフト200Bに備えられていてもよい。しかしながら、大量のデータを取得できるという観点からは、管理装置100Bが収集部105およびパラメータ更新部106を備えることが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
1A、1B 荷役システム
2 作業場
3 ラック
4 反射板
100A、100B 管理装置
101 通信部
102 統括制御部
103 表示部
104 マップ生成部
105 収集部
106 パラメータ更新部
200A、200B 無人フォークリフト
201 音声出力部
202 警報音出力部
203 画像データ生成部
204 学習モデル部
205 処理部
206 位置推定部
207 マップ生成部
208 音声制御部
210 車体
211 荷役装置
212 レーザースキャナ
【要約】
【課題】作業者が死角領域にいるときでも作業者への注意を促すことが可能なフォークリフトを提供する。
【解決手段】画像データ生成部203と、安全性スコアを生成する学習モデル部204と、学習モデル部204から安全性スコアを取得する処理部205と、メロディーを出力する音声出力部201と、メロディーの出力状態を調整する音声制御部208と、自己位置の推定を行う位置推定部206と、安全性スコアの分布を示す環境マップを生成するマップ生成部207とを備え、マップ生成部207は、処理部205から取得した安全性スコアを現在スコアとし、環境マップ内の自己位置における安全性スコアを過去スコアとし、両者を比較して安全性の低い方の安全性スコアを音声制御部208に出力し、音声制御部208は、マップ生成部207から取得した安全性スコアに基づいて、メロディーの出力状態を調整することを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5