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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】医療用トレイ
(51)【国際特許分類】
   A61B 50/33 20160101AFI20220607BHJP
【FI】
A61B50/33
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017176153
(22)【出願日】2017-09-13
(65)【公開番号】P2019050942
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-06-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 史雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 遼介
(72)【発明者】
【氏名】岡村 真純
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-111412(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105877847(CN,A)
【文献】特開2015-098360(JP,A)
【文献】特開2005-287796(JP,A)
【文献】特開2012-071046(JP,A)
【文献】国際公開第2016/177927(WO,A1)
【文献】特開2011-68359(JP,A)
【文献】登録実用新案第3196779(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 50/33
A61J 1/00
B65D 1/00 ー 90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、
前記底部の外周に沿って設けられた側壁部と、
前記底部に配置された補強部材と、を備え、
前記底部は、前記補強部材が配置されていない状態で、前記側壁部よりも柔軟であり、
前記底部は、前記補強部材を変形又は移動させることにより、前記底部を挟んで対向する前記側壁部が接触するように折り畳み可能であり、
前記補強部材は、前記底部よりも硬く、かつ、前記底部の外表面または内表面に配置される板状部材を有し、
前記板状部材は、前記補強部材を前記補強部材に形成された折り目に沿って折り畳むことで前記板状部材の一部同士が重なり合うように折り畳み可能である、医療用トレイ。
【請求項2】
前記板状部材は、前記底部の外表面に配置されており、
前記板状部材の一部は、前記底部の外表面および/または前記側壁部の外表面に固定されている、請求項1に記載の医療用トレイ。
【請求項3】
底部と、
前記底部の外周に沿って設けられた側壁部と、
前記底部に配置された補強部材と、を備え、
前記底部は、前記補強部材が配置されていない状態で、前記側壁部よりも柔軟であり、
前記底部は、前記補強部材を変形又は移動させることにより、前記底部を挟んで対向する前記側壁部が接触するように折り畳み可能であり、
前記補強部材は、複数の線状部材と、前記複数の線状部材に囲まれた間隙部と、を含み、
前記補強部材は、前記底部の外表面側に配置されており、前記側壁部が折り畳まれる際、前記間隙部が折り畳み方向と交差する方向に伸びるように変形する、医療用トレイ。
【請求項4】
前記間隙部は、前記側壁部を折り畳む前の状態において、非平行に配置された前記複数の線状部材により菱形の形状を形成する、請求項3に記載の医療用トレイ。
【請求項5】
前記複数の線状部材は、前記底部に固定されている、請求項3または請求項4に記載の医療用トレイ。
【請求項6】
前記底部および前記側壁部に囲まれた2つ以上の収容空間を有し、
前記収容空間を形成する少なくとも一組の前記側壁部が折り畳まれた状態で提供される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医療用トレイ。
【請求項7】
前記底部に形成された孔部と、前記孔部を封止するとともに前記底部から取り外し可能なシール部材と、を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の医療用トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
手術や診断等に用いられる医療器具や衣類等は、専用の医療用トレイに収容された状態で医療現場へ搬送される。医師や看護師等の医療従事者は、手術や診断に際し、医療用トレイから各種物品を取り出して使用する。
【0003】
使用済みの医療器具や医療用トレイ等の医療廃棄物は、医療廃棄物用の容器に投棄される。一般的に、医療廃棄物用の容器の処分(廃棄)に掛かるコストは、容器単位で決められている。そのため、医療廃棄物の処分コストを削減するためには、一つの医療廃棄物用の容器に可能な限り多くの医療廃棄物を収容させることが望ましい。例えば、カテーテル等の医療器具を使用した手技では、一度の手技で発生する医療廃棄物の量が比較的多くなるため、医療廃棄物の処分コストの増加に伴う医療経済性の低下が課題となる。
【0004】
下記特許文献1には、収容空間を形成する底部および側壁部を備え、収容空間から物品を取り出した状態で底部を折り畳んでコンパクトにできる医療用トレイが開示されている。この医療用トレイは、底部を折り目(リブ)に沿って二つ折りにして重ねることにより、廃棄時の底部の面積(広さ)を小さくすることができる。そのため、特許文献1に記載の医療用トレイは、その廃棄時に、医療廃棄物用の容器により多く収容させることができる。それにより、病院等の医療機関は、医療廃棄物の処分コストの削減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2011/108297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の医療用トレイは、底部を折り畳んで重ね合わせる構造を備えるため、折り畳んだ状態においても底部が一定の広さを維持する。そのため、上記医療用トレイは、廃棄時の小型化の面において、更なる改善の余地があると言える。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、廃棄時によりコンパクトにすることができ、かつ、収容対象となる物品を安定した状態で保管できる医療用トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る医療用トレイは、底部と、前記底部の外周に沿って設けられた側壁部と、前記底部に配置された補強部材と、を備え、前記底部は、前記補強部材が配置されていない状態で、前記側壁部よりも柔軟であり、前記底部は、前記補強部材を変形又は移動させることにより、前記底部を挟んで対向する前記側壁部が接触するように折り畳み可能であり、前記補強部材は、前記底部よりも硬く、かつ、前記底部の外表面または内表面に配置される板状部材を有し、前記板状部材は、前記補強部材を前記補強部材に形成された折り目に沿って折り畳むことで前記板状部材の一部同士が重なり合うように折り畳み可能である。
【発明の効果】
【0009】
上記の医療用トレイは、底部から物品を取り出した状態で、補強部材を変形又は移動させることにより、側壁部が接触する方向に沿って底部を平面状に折り畳むことができる。そのため、医療用トレイは、廃棄する際、その形状をよりコンパクトにすることができる。また、補強部材は、医療用トレイに物品が収容された状態では、物品の重みで底部が不用意な形状に変形するのを防止する。そのため、医療用トレイは、収容対象となる物品を安定した状態で保管でき、物品の製品品質を好適に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る医療器具セットおよび医療用トレイを示す斜視図である。
図2図2(A)は、物品が取り出された状態の医療用トレイを示す斜視図であり、図2(B)は、物品が取り出された状態の医療用トレイを示す平面図である。
図3図3(A)は、側壁部および底部が折り畳まれる際の医療用トレイを示す斜視図であり、図3(B)は、側壁部および底部が折り畳まれる際の医療用トレイを示す平面図である。
図4図4(A)は、側壁部および底部が折り畳まれた状態の医療用トレイを示す斜視図であり、図4(B)は、側壁部および底部が折り畳まれた状態の医療用トレイを示す平面図である。
図5図2(A)の矢印5A-5A線で示す医療用トレイの底部および補強部材の部分断面図である。
図6】第1実施形態の変形例1に係る医療用トレイを示す斜視図である。
図7】第1実施形態の変形例2に係る医療用トレイを示す斜視図である。
図8】第2実施形態に係る医療用トレイを示す斜視図である。
図9図8の矢印9A-9A線で示す医療用トレイの底部および補強部材の部分断面図である。
図10図10(A)、図10(B)、および図10(C)は、図8の矢印10A方向から視た医療用トレイの正面図であり、側壁部および底部が折り畳まれる際の様子を概略的に示す図である。
図11】第3実施形態に係る医療用トレイを示す斜視図である。
図12図11の矢印12A-12A線で示す医療用トレイの底部および補強部材の断面図である。
図13】側壁部および底部が折り畳まれる際の医療用トレイを示す斜視図である。
図14】側壁部および底部が折り畳まれた状態の医療用トレイを示す斜視図である。
図15】第4実施形態に係る医療用トレイを示す斜視図である。
図16図15の矢印16A-16A線で示す医療用トレイの底部および補強部材の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
図1には、本実施形態に係る医療器具セット10および医療用トレイ100を示しており、図2図5には、医療用トレイ100を示している。
【0013】
図1に示すように、医療器具セット10は、例えば、手術室等の医療現場において各種の医療行為を実施する際に使用される複数の物品210、220、230と、各物品210、220、230を収容および保管可能な医療用トレイ100と、を備えている。
【0014】
物品は、例えば、ガウン210、ドレープ220、各種の医療器具(例えば、シリンジ、針具、メス等)が収容されたケース230である。なお、一つの医療器具セット10に収容および保管する物品の種類や個数等は特に限定されない。例えば、医療用トレイ100の各収容空間110、120は、カテーテル、ガイドワイヤ、イントロデューサー等を収容することも可能である。
【0015】
図1に示すように、ガウン210やドレープ220は、例えば、医療用トレイ100の側壁部141、145に載せることができる。ケース230やその他の医療器具等は、例えば、収容空間110、120に配置することができる。また、医療器具セット10は、未使用の状態で保管や運搬する場合、所定の包装袋(例えば、ピール袋および布袋等)に入れてパッケージングすることができる。
【0016】
次に、医療用トレイ100について説明する。
【0017】
図2(A)および図2(B)には、各物品210、220、230を取り出した状態の医療用トレイ100を示している。なお、図2(A)および図2(B)に示す医療用トレイ100は、後述する各側壁部143、144、146、147が折り畳まれていない状態を示している。
【0018】
医療用トレイ100は、第1底部131と、第1底部131の外周に沿って設けられた複数の側壁部141、142、143、144と、第1底部131に配置された補強部材160と、を備えている。
【0019】
第1底部131と各側壁部141、142、143、144(以下、それぞれの側壁部を第1側壁部141、第2側壁部142、第3側壁部143、第4側壁部144とする)とにより囲まれた空間は、物品等を収容可能な第1収容空間110を形成する。
【0020】
また、医療用トレイ100は、第1側壁部141を隔てて第1収容空間110と仕切られた第2収容空間120を備える。第2収容空間120は、第2底部132と各側壁部141、145、146、147(以下、それぞれの側壁部を第5側壁部145、第6側壁部146、第7側壁部147とする)とにより囲まれた空間で形成される。第2収容空間120は、第1収容空間110と同様に、物品等を収容可能である。
【0021】
第1底部131は、補強部材160が配置されていない状態では、第1収容空間110を形成する各側壁部141、142、143、144よりも柔軟である。そのため、後述するように、補強部材160を第1底部131から取り外した状態では、第1底部131は、第1収容空間110の体積を小さくするように変形可能である(図3および図4を参照)。より具体的には、第1底部131は、補強部材160を第1収容空間110の外部へ移動させることにより、第1底部131を挟んで対向する一組(一対)の側壁部141、142が互いに接触するように折り畳み可能である。
【0022】
上述したように、医療用トレイ100の各側壁部141、142、143、144は、補強部材160を移動させた状態における第1底部131よりも変形し難い(硬い)。そのため、例えば、医療用トレイ100は、各側壁部141、142、143、144に物品210、220等を載せた際に、各物品210、220等の重みで各側壁部141、142、143、144がつぶれるように変形するのを防止できる。
【0023】
なお、本明細書における柔軟性の大小関係は、例えば、異なる樹脂材料の比較においてはビッカーズ硬度(JIS R1610:2003)に基づいて比較でき、異なる金属材料の比較においてはビッカーズ硬度(JIS Z2244:2009又はJIS Z2251:2009)に基づいて規定できる。また、樹脂材料と金属材料との柔軟性の大小関係は、例えば、上述の一方を基準として双方を測定し、比較することで規定できる。なお、柔軟性の大小関係は、例えば、同じ樹脂材料の比較においては、各部材の厚みに基づいて規定できる。
【0024】
第1底部131は、図2(B)に示すように、平面視において、略矩形形状(長方形)を有している。第1側壁部141および第2側壁部142は、第1底部131の長辺に沿うように配置している。また、第3側壁部143および第4側壁部144は、第1底部131の短辺に沿うように配置している。
【0025】
第1底部131を間に挟んで対向する一組の側壁部141、142は、略同一の平面形状を有している。各側壁部141、142は、各側壁部141、142の正面視(例えば、第1収容空間110の内側からの正面視)において、略矩形形状を有している。また、各側壁部141、142は、図2(B)に示すように、第1底部131を折り畳む方向の外力が付与されていない状態では、平面視において略直線状をなすように立設している。
【0026】
第1底部131を間に挟んで対向する一組の側壁部143、144は、略同一の平面形状を有している。各側壁部143、144は、各側壁部143、144の正面視において、略矩形形状を有している。また、各側壁部143、144は、図2(B)に示すように、第1底部131を折り畳む方向の外力が付与されていない状態では、平面視において略直線状をなすように立設している。
【0027】
第1底部131は、平面視において矩形形状(長方形)を有している。ただし、第1底部131の形状は、収容空間110を形成可能であれば特に限定されない。例えば、第1底部131は、折り畳む前の状態で、円形や楕円形、菱形や台形等の形状を有していてもよい。なお、第1底部131が円形や楕円形等で形成されており、第1側壁部141および第2側壁部142をそれぞれの間に頂点を挟んで配置された一つの辺で定義することができない場合、各側壁部141、142は、例えば、第1底部131を間に挟んで対向する側壁部の任意の領域(範囲)で定義することができる。
【0028】
図2(A)および図3(A)に示すように、第3側壁部143は、所定の折り目143aを有している。折り目143aは、第1側壁部141に第2側壁部142を接触させるように近付けて第1底部131を折り畳む際に、第3側壁部143の折り畳みの起点を形成する(図3(A)および図3(B)を参照)。医療用トレイ100の使用者(例えば、医師や看護師等)は、第1底部131を折り畳む際、折り目143aを起点にして第3側壁部143を折り畳むことにより、医療用トレイ100の第1底部131を円滑に折り畳むことができる。
【0029】
なお、折り目143aは、例えば、第3側壁部143の一部の肉厚を第3側壁部143の他の部分の肉厚よりも小さくして折り曲げの起点を形成し易くした部分で形成できる。また、折り目143aは、第3側壁部143の折り畳みの起点を形成することが可能であればよく、例えば、第3側壁部143側から第1収容空間110側に突出したリブ状のラインで形成してもよい。
【0030】
第4側壁部144は、第3側壁部143と同様に、折り畳みの起点を形成する折り目144aを有している。
【0031】
各側壁部143、144に形成される折り目143a、144aは、第1底部131を折り畳む際に、各側壁部143、144に折り畳みの起点を形成することが可能な限り、位置、形状、個数、具体的な構造等は特に限定されない。ただし、各折り目143a、144aは、第1底部131の円滑な折り曲げを可能にするために、例えば、各側壁部143、144の高さと略同一の高さで、各側壁部143、144の長手方向(延在方向)の略中心位置に一つずつ形成することが好ましい。
【0032】
また、各折り目143a、144aは、例えば、図3(A)および図3(B)に示すように、各側壁部143、144を第1収容空間110の内側へ折り曲げるように折り曲げ方向を規定するように形成することができる。ただし、各折り目143a、144aは、各側壁部143、144を第1収容空間110の外側へ折り曲げるように折り曲げ方向を規定するように形成してもよい。このように各側壁部143、144の折り曲げ方向を規定するように各折り目143a、144aを形成することにより、医療用トレイ100は、第1底部131が折り畳まれた際、第1側壁部141と第2側壁部142が重なり合うように折り畳まれるため、折り畳まれた状態の形状がよりコンパクトになる。
【0033】
第1底部131は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等で形成できる。また、第1底部131とともに第1収容空間110を形成する各側壁部141、142、143、144は、例えば、上記と同様の材料、または、上記よりも硬質の材料で形成できる。
【0034】
各側壁部141、142、143、144は、第1底部131と同様の材料で形成される場合、例えば、第1底部131よりも大きな肉厚を有するように形成することができる。このように各側壁部141、142、143、144を形成することにより、各側壁部141、142、143、144は、第1底部131から補強部材160を移動させた状態で、第1底部131よりも変形し難くなる(柔軟性が低くなる)。
【0035】
医療用トレイ100は、図2(A)および図2(B)に示すように、第1底部131に形成された孔部171と、孔部171を封止するとともに第1底部131から取り外し可能なシール部材173と、を有している。
【0036】
医療用トレイ100は、例えば、医療現場において、第1収容空間110から物品を取り出し、かつ、補強部材160を取り出した状態で、使用済みや未使用の医療器具(カテーテル等)を所定の液体(例えば、生理食塩水)に浸漬した状態で保管する容器として利用することができる。その際、使用者は、例えば、液体を第1収容空間110に収容することができる。
【0037】
シール部材173は、第1底部131の孔部171を覆って配置された状態においては、孔部171から液体が排出されるのを防止する。使用者は、第1収容空間110に収容させた液体を排出する際、シール部材173を取り外すことにより、第1底部131に形成した孔部171を介して液体を第1収容空間110から排出することができる。
【0038】
なお、孔部171の形状、孔部171を形成する位置、個数等は、第1底部131の折り畳みを阻害することがない限り、特に限定されない。ただし、孔部171は、図2(B)に示すように、第1底部131の平面視において、第1底部131の中心位置付近に形成することが好ましい。医療用トレイ100は、孔部171が上記のような位置に形成されることにより、液体を排出する際に、第1底部131の四隅側から第1底部131の中心位置付近に向けて短距離で液体が移動し易くなるため、液体をより一層円滑に排出することが可能になる。
【0039】
図5に示すように、シール部材173は、例えば、孔部171を第1底部131の内表面131a側から覆うフィルム状の部材で形成することができる。シール部材173の材質は特に限定されないが、例えば、公知の樹脂製フィルムで形成することができる。また、シール部材173は、例えば、粘着剤、接着剤や融着等の公知の方法で第1底部131に取り外し可能に固定することができる。なお、シール部材173は、フィルム状の部材に限定されず、例えば、孔部171に脱着可能な栓状の部材等で形成することも可能である。
【0040】
図2(A)、図2(B)、および図5に示すように、補強部材160は、第1底部131の内表面131aに配置される板状部材により構成している。
【0041】
補強部材160は、第1底部131よりも硬い部材で構成できる。なお、硬い部材とは、例えば、補強部材160の材質自体が第1底部131よりも硬い材質で構成されていること、補強部材160が第1底部131と同質の材料で構成されている場合、補強部材160の厚みが大きかったり、補強部材160に補強体(後述する線状部材561等)が含まれていたりすることにより、補強部材160が第1底部131よりも硬い物性を備えることが含まれる。
【0042】
補強部材160は、図2(B)に示すように、平面視した際に、第1底部131よりも一回り小さな略矩形形状(長方形)の板状部材で構成している。使用者等は、医療用トレイ100を折り畳む際などに、手指等で補強部材160を把持することにより、第1底部131から補強部材160を移動させて、第1収容空間110から補強部材160を取り出すことができる。
【0043】
また、本実施形態においては、第1底部131の平面視の形状が略矩形形状であるため、補強部材160も同様に平面視の形状を略矩形形状に形成している。ただし、補強部材160は、第1底部131と相似形状で形成されている必要はない。補強部材160は、例えば、第1底部131に物品230等を収容した状態(図1を参照)で、第1底部131に不用意な変形(第1底部131の撓み等の変形)が生じるのを抑制し得るように、第1底部131の一定の範囲(面積)を覆うように形成されていればよい。例えば、第1底部131が矩形形状で形成される場合、補強部材160は第1底部131の一定の範囲を覆うように配置される円形や楕円形の形状であってもよい。また、例えば、第1底部131が円形形状で形成される場合、補強部材160は第1底部131の一定の範囲を覆うように配置される矩形形状等であってもよい。
【0044】
補強部材160を構成する板状部材には、例えば、後述する補強部材460と同様に、補強部材160自体を重ね合わせて折り畳むことを可能にする折り目461aを形成してもよい(図10(B)および図10(C)を参照)。
【0045】
第1底部131、各側壁部141、142、143、144、補強部材160の柔軟性の大小関係は、各側壁部141、142、143、144よりも第1底部131が柔軟であり、かつ、補強部材160よりも第1底部131が柔軟であれば、特に限定されない。つまり、補強部材160と各側壁部141、142、143、144との間の柔軟性の大小関係については特に制限はない。
【0046】
補強部材(板状部材)160は、例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等により形成することができる。また、補強部材160の厚みは特に限定されないが、例えば、0.6mm~3.0mmで形成することができる。
【0047】
なお、医療用トレイ100は、例えば、第1底部131に補強部材160が配置されている状態において、補強部材160を仮固定する仮固定部を有していてもよい。医療用トレイ100は、仮固定部を有することにより、補強部材160が不用意に位置ずれ等するのを防止することができる。仮固定部は、例えば、補強部材160を第1底部131や各側壁部141、142、143、144等に固定する接着性を備えるテープ等で形成することができる。
【0048】
本実施形態に係る医療用トレイ100は、前述したように、第1側壁部141により第1収容空間110から仕切られた第2収容空間120を形成するように構成している(図2(A)を参照)。第2収容空間120は、第2底部132と、複数の側壁部141、145、146、147とにより形成される。
【0049】
第2底部132は、第1底部131と実質的に同様の構造(形状、材質、柔軟性)を有するように構成できる。また、第5側壁部145は第2側壁部142と実質的に同様の構造を有するように構成できる。また、第6側壁部146は第3側壁部143と実質的に同様の構造を有するように構成できる。また、第7側壁部147は第4側壁部144と実質的に同様の構造を有するように構成できる。そのため、本実施形態では、第2収容空間120を形成する各部(底部および側壁部)の説明は省略する。
【0050】
医療用トレイ100は、例えば、第2底部132に第1底部131と同様に補強部材160を配置することが可能である。また、医療用トレイ100は、例えば、第2底部132に孔部171およびシール部材173を配置することも可能である。
【0051】
医療用トレイ100を構成する各底部131、132および各側壁部141、142、143、144、145、146、147は、例えば、樹脂材料で形成される場合、公知の樹脂成形方法により一体的に形成することができる。また、医療用トレイ100を構成する各底部131、132および各側壁部141、142、143、144、145、146、147は、例えば、医療用トレイ100の内部を外部から視認できるように、透明や半透明に形成してもよい。
【0052】
次に、図2図4を参照して、医療用トレイ100の使用例を説明する。
【0053】
図1に示すように、医療用トレイ100は、所定の手技等の実施に際して、各物品210、220、230を保管および収容した状態、つまり医療器具セット10を構成した状態で準備することができる。医療器具セット10を運搬等する際、医療用トレイ100の第1底部131には補強部材160が配置される。そのため、医療用トレイ100は、第1収容空間110に収容された物品230の重みで第1底部131が撓んで変形するのを防止できる。
【0054】
図2(A)および図2(B)に示すように、使用者は、手技の実施に際して、医療用トレイ100に保管および収容された各物品210、220、230を取り出す。使用者は、各物品210、220、230を医療用トレイ100から取り出した後、手技前に補強部材160を第1底部131から移動させて、第1収容空間110の外部へ取り出す。
【0055】
使用者は、医療用トレイ100から各物品210、220、230を取り出した状態で、医療用トレイ100の第1収容空間110に生理食塩水等の液体を供給する。使用者は、手技の進行に応じて、カテーテル等の医療器具を第1収容空間110に収容した液体に浸漬させた状態で保管することができる。使用者は、第1収容空間110に収容した液体を排出させる際、医療用トレイ100の第1底部131に配置されたシール部材173を取り外す。第1収容空間110に収容された液体は、孔部171を通じて第1収容空間110から排出される。
【0056】
使用者は、医療用トレイ100を廃棄する際、図3(A)および図3(B)に示すように、第1底部131を間に挟んで対向する第1側壁部141と第2側壁部142を接触させるようにして折り畳む。使用者は、例えば、第2側壁部142の外表面を第1側壁部141側に押圧して、第2側壁部142を第1側壁部141に近付ける。この際、第3側壁部143に形成された折り目143aは、第3側壁部143に折り曲げの起点を形成し、第4側壁部144に形成された折り目144aは、第4側壁部144に折り曲げの起点を形成する。
【0057】
なお、第1底部131を折り畳む際、使用者は、例えば、第1側壁部141を第2側壁部142に近付けるように第1側壁部141の外表面を押圧してもよいし、第1側壁部141と第2側壁部142の両方を同時に押圧して、各側壁部141、142を相対的に接近させるようにしてもよい。
【0058】
使用者は、図4(A)および図4(B)に示すように、第1側壁部141と第2側壁部142を十分に近付けることにより、第1底部131を折り畳むことができる。第1側壁部141と第2側壁部142は、両者が対向した状態で重なるように配置されることにより、所定の折り畳み部150を形成する。
【0059】
図4(A)および図4(B)に示すように、医療用トレイ100の第1収容空間110は、第1底部131が折り畳まれることにより、医療用トレイ100から消失する(物品を収容するための十分な体積が存在しない状態に変形する)。したがって、医療用トレイ100は小型化され、第1底部131が折り畳まれる前よりもコンパクトになる。
【0060】
なお、医療用トレイ100は、例えば、第1底部131が折り畳まれた状態を維持(折り畳み部150が形成された状態を維持)するために、第1側壁部141に対して第2側壁部142を固定する固定部を有するように構成してもよい。固定部としては、例えば、医療用トレイ100とは別部材で構成されたクリップ、医療用トレイ100に一体的に形成された嵌合部(例えば、凹凸形状の嵌合式で機械的に各側壁部141、142の固定を行うもの)、接着剤、接着性を備えるテープ等を用いることができる。
【0061】
また、使用者は、必要に応じて第1底部131と同様に第2底部132を折り畳むことにより、医療用トレイ100から第2収容空間120を消失させることができる。使用者は、第2収容空間120を消失させることにより、医療用トレイ100をより一層小型化することができる。
【0062】
なお、上記の医療用トレイ100の使用例では、使用者は、手技前に第1収容空間110の外部に補強部材160を取り出している。しかし、使用者は、手技後で、かつ、第1収容空間110に収容された液体を排出する前に、第1収容空間110の外部に補強部材160を取り出してもよい。
【0063】
次に、本実施形態に係る医療用トレイ100の作用効果を説明する。
【0064】
上述したように、本実施形態に係る医療用トレイ100は、第1底部131と、第1底部131の外周に沿って設けられた側壁部141、142と、第1底部131に配置された補強部材160と、を備えている。そして、第1底部131は、補強部材160が配置されていない状態で、各側壁部141、142よりも柔軟であり、かつ、第1底部131は、補強部材160を移動させることにより、第1底部131を挟んで対向する側壁部141、142が接触するように折り畳み可能である。
【0065】
上記のように構成した医療用トレイ100は、第1底部131から物品230を取り出した状態で、補強部材160を移動させることにより、各側壁部141、142同士が接触する方向に沿って第1底部131を平面状に折り畳むことができる。そのため、医療用トレイ100は、廃棄する際、その形状をよりコンパクトにすることができる。また、補強部材160は、医療用トレイ100に物品230が収容された状態では、物品230の重みで第1底部131が不用意な形状に変形するのを防止する。そのため、医療用トレイ100は、物品230を安定した状態で保管でき、物品230の製品品質を好適に維持できる。
【0066】
また、医療用トレイ100の補強部材160は、第1底部131よりも硬く、かつ、第1底部131の内表面131aに配置される板状部材を有している。そのため、補強部材160は、第1底部131の内表面131aに配置された状態で、第1底部131が不用意な形状に変形するのを防止できる。さらに、補強部材160は、第1底部131から取り出す簡単な作業により医療用トレイ100から取り外すことができる。そのため、使用者は、医療用トレイ100を折り畳む作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0067】
また、医療用トレイ100は、第1底部131に形成された孔部171と、孔部171を封止するとともに第1底部131から取り外し可能なシール部材173と、を有している。そのため、医療用トレイ100は、物品230を第1収容空間110から取り出した状態で、第1収容空間110に液体を収容することができる。また、医療用トレイ100は、第1収容空間110から液体を排出する際、シール部材173を第1底部131から取り外す簡単な作業で液体を容易に排出することができる。
【0068】
<変形例>
次に、上述した第1実施形態の変形例を説明する。なお、変形例において特に言及しない構成や部材、医療器具セットおよび医療用トレイの使用手順等については、前述した実施形態と同様のものとすることができ、その説明を適宜省略する。
【0069】
図6には、変形例1に係る医療器具セット20を示している。
【0070】
図6に示すように、医療器具セット20は、例えば、第1収容空間110を形成していない状態で使用者等に提供される。つまり、医療器具セット20は、第1収容空間110を形成する一組の側壁部143、144が折り畳まれた状態で提供される。
【0071】
医療器具セット20は、二つの収容空間110、120のうちの少なくとも一つの収容空間110が消失したコンパクトな状態で提供される。そのため、医療器具セット20は、使用者への提供時に医療用トレイ100の体積が大きくなるのを防止できる。
【0072】
使用者は、医療現場において、一組の側壁部143、144の折り畳みを解除して、第1収容空間110を形成することにより、二つの収容空間110、120を利用することが可能になる。使用者は、例えば、手技の内容や手技の進行等に応じて、各収容空間110、120に異なる医療器具を分けて保管することができる。そのため、医療器具セット20は、医療用トレイ100の利便性を損なうことなく、より小型にパッケージングした状態で使用者等へ提供することができる。
【0073】
なお、医療用トレイ100は、医療器具セット20を提供する段階において、第1底部131が折り畳まれた状態を維持するための所定の固定部(クリップ、嵌合部、接着剤、接着性を備えるテープ等)を有するように構成することができる。
【0074】
図7には、変形例2に係る医療用トレイ300を示している。
【0075】
医療用トレイ300は、各側壁部143、144を折り畳んでいない状態で、一つの収容空間110を形成するように構成している。このように、医療用トレイ300は、少なくとも一つの収容空間110を形成するように底部131および各側壁部141、142が形成されていればよい。つまり、医療用トレイ300は、前述した実施形態のように二つの収容空間を形成する構造に限定されることはない。なお、医療用トレイは、例えば、三つ以上の収容空間を形成するように、複数の底部および複数の側壁部を備えるように構成することも可能である。
【0076】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る医療用トレイ400を説明する。なお、第2実施形態において特に言及しない構成や部材、医療用トレイ400の使用手順等については、前述した実施形態と同様のものとすることができ、その説明を適宜省略する。
【0077】
前述した第1実施形態に係る医療用トレイ100は、補強部材(板状部材)160が第1底部131の内表面131aに配置されるように構成していた(図5を参照)。一方、第2実施形態に係る医療用トレイ400は、図8および図9に示すように、補強部材(板状部材)460が第1底部131の外表面131bに配置されるように構成している。
【0078】
図8に示すように、補強部材460は、第1底部131の外表面131bに沿って配置される本体部461と、第2側壁部142の外表面に固定された固定部462と、を有している。
【0079】
補強部材460は、板状部材で構成している。図8図9図10(A)に示す状態においては、補強部材460の本体部461は、第1底部131を外表面131b側から支持することにより、第1底部131が不用意に変形するのを防止する。また、補強部材460の本体部461は、第1底部131の外表面131bを覆って保護することにより、第1底部131が運搬時等に破損するのを防止する。
【0080】
一方、図10(B)に示すように、補強部材460の本体部461を第1底部131の外表面131bから移動させて、第1底部131の外表面131bと補強部材460の本体部461とが重ならないように配置されると、補強部材460による第1底部131の補強が解除される。医療用トレイ400は、補強部材460の本体部461が上記のように配置された状態で、第1底部131を折り畳むことができる。
【0081】
また、補強部材460は、補強部材460の一部同士が重なり合うように折り畳み可能に構成している。具体的には、図10(B)に示すように、補強部材460は、折り畳み前の状態の延在方向の所定位置に、補強部材460の本体部461を折り畳み可能にする複数の折り目461aが形成されている。そのため、図10(C)に示すように、補強部材460は、本体部461が第1底部131から移動した状態で、折り目に沿って折り畳むことができる。医療用トレイ400は、補強部材460を折り畳むことにより、補強部材460により廃棄時の体積が大きくなるのを防止できる。
【0082】
なお、折り目461aは、例えば、前述した実施形態の折り目143a、144a(図3(A)を参照)と同様に、補強部材460の折り畳みの起点を形成する構造や形状のものを採用することができる。
【0083】
補強部材460の材質は、例えば、第1実施形態で説明した補強部材160と同様の材質のものを用いることができる。また、補強部材460の形状、厚み、大きさ等は、第1底部131の外表面131b側で第1底部131の変形を抑制可能な限り特に限定されず、適宜変更することが可能である。
【0084】
補強部材460と第2側壁部142とを固定する方法は、例えば、補強部材460と第2側壁部142の材質を考慮して適宜選択することができる。固定方法としては、例えば、接着や融着を採用することができる。
【0085】
補強部材460を第1底部131や第2側壁部142に固定する固定位置や固定する範囲等は、補強部材460の本体部461を第1底部131の外表面131bから移動させることが可能な限り、特に限定されない。例えば、補強部材460は、第1底部131の外表面131bに一部を固定してもよいし、第1底部131および第2側壁部142に固定してもよい。
【0086】
また、補強部材460は、医療用トレイ400が二つの収容空間110、120を備えるように形成される場合、各底部131、132に配置してもよいし、第2底部132のみに配置してもよい。
【0087】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る医療用トレイ500を説明する。なお、第3実施形態において特に言及しない構成や部材、医療用トレイ500の使用手順等については、前述した各実施形態と同様のものとすることができ、その説明は適宜省略する。
【0088】
第1実施形態に係る医療用トレイ100は補強部材160が第1底部131の内表面131aに配置される板状部材で構成しており(図5を参照)、第2実施形態に係る医療用トレイ400は補強部材460が第1底部131の外表面131bに配置される板状部材で構成していた(図9を参照)。一方、第3実施形態に係る医療用トレイ500は、図11および図12に示すように、補強部材560が複数の線状部材561と、複数の線状部材561に囲まれた間隙部563とにより構成されている。
【0089】
医療用トレイ500の第1底部531は、図12に示すように、線状部材561が配置される空間部533を有している。また、第1底部531は、空間部533を形成するように第1底部531の厚み方向に重ねて配置された第1底部材531aおよび第2底部材531bを有している。
【0090】
補強部材560は、第1底部531の外表面側に配置している。なお、第1底部531の外表面側とは、第1収容空間110に臨む表面(第1底部材531aの内表面)と反対側の面側を意味する(図12を参照)。例えば、本実施形態のように第1底部531が層状に重ねられた複数の底部材531a、531bにより構成される場合、各部材531a、531bの間に形成される空間部533に配置された補強部材560は、第1底部531の外表面側に配置されたものに含むことができる。
【0091】
図12に示すように、第1底部材531aと第2底部材531bは、例えば、後述する線状部材561の変形に追従して第1底部531が円滑に変形し得るように、予め所定の撓みを形成している。なお、各底部材531a、531bの撓みの具体的な形状等は、第1底部331の変形を許容し得る限り、特に限定されない。また、第1底部材531aと第2底部材531bの間に形成される空間部533の厚み(図12の上下方向の寸法)も、線状部材561を配置可能な限り、特に限定されない。
【0092】
第1底部材531aと第2底部材531bは、例えば、前述した第1底部131(図5を参照)と同様の材料で形成できる。
【0093】
線状部材561は、例えば、第1底部531に固定することができる。本実施形態のように、第1底部531が層状に重ねて配置された二つの底部材531a、531bで構成されている場合、例えば、線状部材561は、第1底部材531aの外表面および第2底部材531bの内表面の少なくとも一方に固定することができる。また、線状部材561は、各底部材531a、531bに対して図12に示す断面における周方向の全周が固定されると、後述する線状部材561の円滑な変形を妨げる可能性がある。そのため、線状部材561は、例えば、線状部材561において第1底部材531aの外表面に臨む一部のみ、および/または線状部材561において第2底部材531bの内表面に臨む一部のみを固定することができる。
【0094】
また、第1底部531が一つの部材で構成されている場合(図5等を参照)、線状部材561は第1底部531の外表面に沿わせて配置することができる。この場合、線状部材561は、例えば、第1底部531の外表面に固定することができる。
【0095】
図11を参照して、線状部材561の第1側壁部141側に配置された端部561a(複数の線状部材561の各々の端部561a)は、例えば、第1側壁部141に対して固定することができる。一方、線状部材561の第2側壁部142側に配置された端部(複数の線状部材561の各々の端部。図示省略。)は、例えば、第2側壁部142に対して固定しないように配置できる。このように各線状部材561を配置することにより、図13に示すように、第2側壁部142を第1側壁部141に接触させるように変形させる際に、線状部材561は、第2側壁部142に対して固定されていない端部561b側が第1底部131の折り畳み方向と交差する方向(図中の矢印a方向)に押し広げられるように変形する。それにより、線状部材561は、第1側壁部141に固定された端部561a側が第1側壁部141に支持されて、間隙部563が第1底部531の折り畳み方向と交差する方向(図中の矢印a方向)に容易かつ円滑に広がるように変形する。
【0096】
線状部材561は、例えば、円形の断面形状を有する線材で形成することができる。また、線状部材561は、第1底部531よりも硬い材料で形成することができる。そのような材料として、線状部材561は、例えば、SUS、Ni-Ti等で形成することができる。なお、線状部材561の断面形状、外径(線状部材561が円形断面を有する場合)、線状部材561の個数等は特に限定されない。
【0097】
図11に示すように、補強部材560の間隙部563は、第3側壁部143および第4側壁部144を折り畳む前の状態において、非平行に配置された線状部材561により、菱形の形状を形成している。なお、間隙部563は、第1底部531の平面視において菱形を形成している。
【0098】
線状部材561は、複数の線状部材561が所定のパターンを形成するように一部同士が重なり合うように配置している。図11に示すように、複数の線状部材561は、例えば、第1底部531が折り畳まれていない状態において、平面視において一部が格子状を形成するように配置されている。なお、複数の線状部材561の具体的な配置形状(平面視におけるパターン)は、特に限定されない。
【0099】
複数の線状部材561は、例えば、第1底部531が折り畳まれていない状態では、格子状の部分に所定の角度θ1を形成するように配置することができる。
【0100】
補強部材560は、図13に示すように、第3側壁部143および第4側壁部144が折り畳まれる際、間隙部563が折り畳み方向と交差する方向(図中の矢印a方向)に伸びるように変形する。この際、線状部材561は、第1底部531の変形に追従して変形する。そのため、使用者は、第2側壁部142を第1側壁部141に接触させるように押圧することで、図11から図13に示す状態に、そして、図13から図14に示す状態に医療用トレイ500を変形させることができる。
【0101】
医療用トレイ500は、第1底部531が折り畳まれると、線状部材561が形成する格子状の部分の角度θ2が第3側壁部143および第4側壁部144を折り畳む前に形成されていた格子状の部分の角度θ1よりも大きくなる。
【0102】
本実施形態のように、補強部材560に線状部材561が含まれる場合、第3側壁部143と第4側壁部144の両方を第1収容空間110の内側に折り畳むように変形させると、線状部材561同士が第1収容空間110で干渉する可能性がある。それにより、医療用トレイ500は、線状部材561を円滑に変形させることが難しくなる。そのため、第3側壁部143は、例えば、図12および図14に示すように、第1収容空間110の外側に張り出すように変形させることが好ましい。
【0103】
また、図11に示すように、例えば、医療用トレイ500の第1底部531に孔部171およびシール部材173を設ける場合、孔部171およびシール部材173は、補強部材560の変形を妨げることのないように、補強部材560から所定の距離だけ位置をずらした場所に配置することが好ましい。
【0104】
また、図11に示すように医療用トレイ500は、第1底部531のみに補強部材560が配置しているが、例えば、第2底部132にも第1底部531と同様に補強部材560を配置することが可能であるし、第2底部132のみに補強部材560を配置することも可能である。
【0105】
以上のように、本実施形態に係る医療用トレイ500は、補強部材560が複数の線状部材561と、複数の線状部材561に囲まれた間隙部563と、を含んでいる。そして、補強部材560は、第1底部531の外表面側に配置されており、第3側壁部143および第4側壁部144が折り畳まれる際、間隙部563が折り畳み方向と交差する方向に伸びるように変形する。
【0106】
上記のように構成した医療用トレイ500は、第3側壁部143および第4側壁部144が折り畳まれる前の状態では、第1底部531の不用意な変形を補強部材560の線状部材561により好適に防止することができる。また、医療用トレイ500は、第3側壁部143および第4側壁部144が折り畳まれる際、間隙部563が折り畳み方向と交差する方向に伸びるように変形することで、第1底部531の変形に追従させて補強部材560を円滑に変形させることができる。そのため、医療用トレイ500は、廃棄時にコンパクトな状態に変形することができる。
【0107】
また、補強部材560の間隙部563は、第3側壁部143および第4側壁部144を折り畳む前の状態において、非平行に配置された線状部材561により菱形の形状を形成する。そのため、医療用トレイ500は、第3側壁部143および第4側壁部144が折り畳まれる際、線状部材561とともに間隙部563が広がるように変形する。それにより、医療用トレイ500は、第3側壁部143および第4側壁部144を円滑に折り畳むことができる。
【0108】
また、線状部材561は、第1底部531に固定されている。そのため、線状部材561は、第1底部531の変形に追従して容易に変形できる。
【0109】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る医療用トレイ600を説明する。なお、第4実施形態において特に言及しない構成や部材、医療用トレイ600の使用手順等については、前述した各実施形態と同様のものとすることができ、その説明を適宜省略する。
【0110】
前述した第1~第3実施形態に係る医療用トレイは、医療用トレイの底部を補強する補強部材が、底部を構成する部材とは別部材(例えば、板状部材や線状部材等)で構成していた。一方、第4実施形態に係る医療用トレイ600は、図15および図16に示すように、第1底部631が補強部材660と一体的に構成されている。
【0111】
具体的には、図15および図16に示すように、医療用トレイ600は、各側壁部141、l42、143、144に外周が囲まれた第1底部631を形成する補強部材660を有している。
【0112】
本実施形態に係る補強部材660は、第1底部631を挟んで対向する第1側壁部141および第2側壁部142が接触する方向に折り畳み可能である。また、補強部材660は、第1側壁部141および第2側壁部142が接触する方向(図15に示す矢印A1方向)と比較して、第1底部631の厚み方向(図15および図16に示す矢印A2方向)に変形し難い。
【0113】
上記のような物性を備える補強部材660は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等からなるフィルムで構成することができる。なお、補強部材660は、例えば、上記の各材質で構成されたフィルムを層状に重ねて構成することも可能である。
【0114】
上記に例示した材料の中でも、第1底部631に載せた物品の重みに耐え得る補強性、および、第1側壁部141および第2側壁部142の変形に追従した容易な変形を考慮した場合、補強部材660は、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなる単層のフィルムで構成することが好ましい。
【0115】
また、補強部材660は、ポリエチレンテレフタレートからなる単層のフィルムで構成する場合、例えば、0.1mm~0.3mmの厚みで構成することができる。このような厚みで補強部材660を形成した場合、補強部材660は、第1底部631を好適に補強することができ、かつ、第1底部631の変形に追従した円滑な変形を実現することが可能になる。
【0116】
なお、図15に示すように、本実施形態に係る医療用トレイ600は、第1底部631および第2底部632の両方の底部が補強部材660により形成されているが、例えば、第1底部631および第2底部632の一方のみを補強部材660で形成することも可能である。
【0117】
また、各側壁部141、142、143、144、145、146、147は、補強部材660と同一の材料で形成してもよいし、補強部材660とは異なる材料で形成してもよい。
【0118】
以上のように、本実施形態に係る医療用トレイ600は、複数の側壁部141、142、143、144と、各側壁部141、142、143、144に外周が囲まれた第1底部631を形成する補強部材660と、を有している。そして、補強部材660は、第1底部631を挟んで対向する第1側壁部141および第2側壁部142が接触する方向に折り畳み可能であり、かつ、第1側壁部141および第2側壁部142が接触する方向と比較して、第1底部631の厚み方向に変形し難い。
【0119】
上記のように構成した医療用トレイ600は、第1底部631を形成する補強部材660により、第1底部631に載せた物品の重みで第1底部631が不用意に変形するのを防止できる。また、第1底部631と補強部材660が同一の材料で構成されているため、医療用トレイ600の部品点数を削減することができる。そのため、医療用トレイ600は、製造作業が容易になり、また製造コストの低減を図ることができる。
【0120】
また、医療用トレイ600の補強部材660は、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムで構成されている。そして、補強部材660を構成するポリエチレンテレフタレートからなるフィルムは、0.1mm~0.3mmの厚みを構成している。そのため、補強部材660は、第1底部631を好適に補強することができ、かつ、第1底部131の変形に追従した円滑な変形を実現することが可能になる。
【0121】
以上、実施形態および変形例を通じて本発明に係る医療用トレイを説明したが、本発明は実施形態および変形例で説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0122】
例えば、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態に示した各構成(例えば、補強部材の構成)は、一つの医療用トレイに組み合わせて適用することが可能である。例えば、医療用トレイが一つの収容空間を形成するように構成されている場合、一つの底部に各実施形態で説明した補強部材のうち任意の複数のものを組み合わせて適用することが可能である。また、例えば、医療用トレイが複数の収容空間を形成するように構成されている場合、各収容空間を形成する底部ごとに各実施形態で説明した補強部材のうちの任意のものを適用することが可能である。
【0123】
また、第1実施形態の変形例1および変形例2で示した構成を、他の実施形態で説明した各医療用トレイに組み込むことが可能である。また、第1実施形態以外の他の実施形態では、医療器具セット(医療用トレイと物品との組み合わせ)の例示を省略したが、第1実施形態と同様に、他の実施形態で説明した医療用トレイは医療器具セットの構成部材として適用することが可能である。
【符号の説明】
【0124】
10、20 医療器具セット、
100 医療用トレイ、
110 第1収容空間(収容空間)、
120 第2収容空間(収容空間)、
131 第1底部(底部)、
131a 第1底部の内表面、
131b 第1底部の外表面、
132 第2底部(底部)、
141 第1側壁部(側壁部)、
142 第2側壁部(側壁部)、
143 第3側壁部(側壁部)、
143a 第3側壁部の側壁部の折り目、
144 第4側壁部(側壁部)、
144a 第4側壁部の側壁部の折り目、
145 第5側壁部(側壁部)、
146 第6側壁部(側壁部)、
147 第7側壁部(側壁部)、
150 折り畳み部、
160 補強部材(板状部材)、
171 孔部、
173 シール部材、
210、220、230 物品、
300 医療用トレイ、
400 医療用トレイ、
460 補強部材(板状部材)、
461 補強部材の本体部、
461a 補強部材の折り目、
462 補強部材の固定部、
500 医療用トレイ、
531 第1底部(底部)、
531a 第1底部材、
531b 第2底部材、
533 空間部、
560 補強部材、
561 線状部材、
561a 線状部材の端部、
563 間隙部、
600 医療用トレイ、
631 第1底部(底部)、
632 第2底部(底部)、
660 補強部材。
図1
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図16