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  • 特許-掃除口継手 図1
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  • 特許-掃除口継手 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-06
(45)【発行日】2022-06-14
(54)【発明の名称】掃除口継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20220607BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20220607BHJP
【FI】
F16L55/00 S
E03C1/12 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017187323
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019060456
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】花木 博章
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115386(JP,A)
【文献】特開2015-200405(JP,A)
【文献】中国実用新案第2583482(CN,Y)
【文献】特開2016-136042(JP,A)
【文献】特開2017-026024(JP,A)
【文献】中国実用新案第202401539(CN,U)
【文献】中国実用新案第202248127(CN,U)
【文献】特開2001-304482(JP,A)
【文献】特開平10-185062(JP,A)
【文献】特開2019-060457(JP,A)
【文献】特開2019-060458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/00
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成され掃除口部を有する継手本体と、前記掃除口部に対してバヨネット方式で装着される蓋体と、前記掃除口部の内周面と前記蓋体の前記掃除口部に挿入する挿入部の外周面との間に設けられる環状の第1シール部材とを備えるマンション等の建物内の排水管の一部に組み込まれる掃除口継手であって、
前記継手本体は、主管部材と、前記主管部材の両端部に設けられたパイプ接続部とを備え、
前記掃除口部は、前記蓋体が挿入される開口部と、内周面に設けられた係合溝を有し、前記主管部材の軸線と直交する方向に延びるように形成され、
前記蓋体は、前記係合溝と係合する係合突起とが外周面に設けられ、前記掃除口部に装着して閉状態としたときに、前記主管部材の内周面に連続するよう湾曲して形成された閉塞板を備え、
前記第1シール部材は、前記係合溝および前記係合突起よりも前記主管部材の中心側に位置し、
前記第1シール部材よりも前記継手本体の中心側の位置において、前記掃除口部の内周面と前記挿入部の外周面との間に設けられる環状の第2シール部材を備え、
前記掃除口部の軸線および前記主管部材の軸線を通る断面で見たときに、前記第1シール部材は、前記パイプ接続部の外周面よりも前記掃除口部の開口部側に配置され、
前記掃除口部の軸線および前記主管部材の軸線を通る断面で見たときに、前記第2シール部材は、前記パイプ接続部の外周面よりも前記主管部材の中心側に配置されていることを特徴とする掃除口継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管の一部に組み込まれる掃除口継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水管の一部に組み込まれる掃除口継手は、円筒状に形成され掃除口部を有する継手本体を備え、蓋体が環状のシール部材を介して掃除口部に着脱可能に装着される。ここで蓋体の掃除口部への着脱作業を簡便に行うために、蓋体を掃除口部に差し込んで捻ることで装着および位置決めが完了するバヨネット方式の蓋体の採用が広がっている。
【0003】
特許文献1には、バヨネット方式の蓋体を備える掃除口継手の一例が開示されている。この掃除口継手では、掃除口部の内周面に複数の略L字状の係合溝が設けられ、蓋体の外周面に複数の係合突起が設けられる。掃除口部に蓋体を装着するときには、係合溝と係合突起との位置を合わせて掃除口部に蓋体を挿入し、蓋体を掃除口部の軸周りに所定角度だけ回転させることで蓋体が固定される。ここでこの掃除口継手においては、掃除口部の内周面に受け面が設けられ、蓋体の外周面に段部が設けられる。そして、掃除口部に蓋体を装着した状態においては、シール部材が掃除口部の受け面と蓋体の段部との間に挟み込まれて掃除口部の軸方向に圧縮されることにより、掃除口部と蓋体との間の止水性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-200405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでマンション等の建物内の排水管では、排水管内の付着物や詰まりを取るために、定期的に高圧洗浄機を用いた洗浄(掃除)が行われる。ここでバヨネット方式の蓋体を備える掃除口継手では、高圧洗浄機の洗浄ノズルから噴射される高圧の洗浄水が、掃除口部の内周面と蓋体の外周面との間の隙間を通ってシール部材に直接当たる構造となっていることから、高圧洗浄時において、高圧の洗浄水がシール部材を乗り越えて掃除口部から漏れる場合があった。
【0006】
本発明の目的は、掃除口部に装着される蓋体の止水性能を高め、高圧洗浄時に掃除口部から水漏れすることを防止する掃除口継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の掃除口継手は、円筒状に形成され掃除口部を有する継手本体と、前記掃除口部に対してバヨネット方式で装着される蓋体と、前記掃除口部の内周面と前記蓋体の前記掃除口部に挿入する挿入部の外周面との間に設けられる環状のシール部材とを備える掃除口継手であって、前記掃除口部は、前記継手本体の中心側の端部に形成された円周状の段部を有し、前記蓋体は、前記挿入部の前記継手本体の中心側の端部の外周に形成された弾性フランジ部を有し、前記弾性フランジ部は、前記段部の前記継手本体の中心側に位置することを特徴とする。
【0008】
また本発明の掃除口継手は、前記弾性フランジ部がゴム板により形成されていることを特徴とする。
【0009】
また本発明の掃除口継手は、円筒状に形成され掃除口部を有する継手本体と、前記掃除口部に対してバヨネット方式で装着される蓋体と、前記掃除口部の内周面と前記蓋体の前記掃除口部に挿入する挿入部の外周面との間に設けられる環状の第1シール部材とを備える掃除口継手であって、前記第1シール部材よりも前記継手本体の中心側の位置において、前記掃除口部の内周面と、前記挿入部の外周面との間に設けられる環状の第2シール部材を備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明の掃除口継手は、前記挿入部の外周面が前記第1シール部材よりも前記継手本体の中心側の位置において、前記掃除口部の内周面側に突出していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、掃除口部に装着される蓋体の止水性能を高め、高圧洗浄時に掃除口部から水漏れすることを防止する掃除口継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係る掃除口継手の斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係る掃除口継手の縦断面図である。
図3】第1の実施の形態に係る掃除口継手の縦断面図の一部を拡大した図である。
図4】第2の実施の形態に係る掃除口継手の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態に係る掃除口継手について説明する。 図1は第1の実施の形態に係る掃除口継手の斜視図であり、図2は掃除口継手の縦断面図であり、図3は掃除口継手の縦断面図の一部を拡大した図である。掃除口継手10は、排水管の一部に組み込まれるもので、円筒状に形成される継手本体11と、継手本体11に形成されている掃除口部13に対してバヨネット方式で装着される蓋体20と、掃除口部13の内周面と蓋体20の掃除口部13に挿入する挿入筒部(挿入部)21の外周面との間に設けられる環状のシール部材(止水用Oリング)30とを備えている。
【0014】
継手本体11は、主管部材12と、主管部材12の両端部に設けられ排水管を構成するパイプ(図示せず)が接続させるパイプ接続部12p,12pを備えている。この実施の形態では、主管部材12は、一方のパイプ接続部12pと他方のパイプ接続部12pとが直線的に接続されるストレート形状をなしているが、主管部材12は湾曲または屈曲していてもよい。
【0015】
掃除口部13は、継手本体11の軸線L1方向に対して直交する方向(軸線L2方向)に延びるように主管部材12に形成されている。掃除口部13の主管部材12から離間した側の先端部13aの内周面には、掃除口部13の管路の内径が拡大された被係合部14が形成されている。被係合部14には、掃除口部13の周方向に間隔を空けて複数の係合溝15(本実施の形態においては3個)が形成されている。また被係合部14の主管部材12側には軸線L2方向に直交する受け面16が形成されている。更に掃除口部13の主管部材12側の端部には円周状の段部17が形成されている。
【0016】
係合溝15は、掃除口部13の先端部13aに開口した開口部と、開口部から掃除口部13の軸線L2方向に平行に主管部材12側に向かって延びる導入溝と、導入溝の主管部材12側の端部から主管部材12の周方向に沿って延びる摺動溝とを備えている。摺動溝は、導入溝側から主管部材12に漸次近づくよう傾斜して形成されている。
【0017】
蓋体20は、挿入筒部21、係合部22、フランジ部23、閉塞板24及び弾性フランジ部25を備えている。挿入筒部21は、円筒状をなし掃除口部13の管路の内径よりもわずかに小さい外径を有している。係合部22は、挿入筒部21よりも外周側に拡径した円筒状をなしている。係合部22の外周面には、周方向に間隔を空けて、係合溝15と同数の係合突起(図示せず、本実施の形態においては3個)が形成されている。係合突起は、係合部22の周方向に沿った幅が、係合溝15に挿入可能な寸法で形成されている。なお、掃除口部13の被係合部14に形成された係合溝15と、蓋体20の係合部22に形成された係合突起が掃除口部13に対して蓋体20を装着するバヨネットを構成する。
【0018】
閉塞板24は、蓋体20を掃除口部13に装着して閉状態としたときに、主管部材12の内周面に連続するよう湾曲して形成されている。弾性フランジ部25は、ゴム板により形成され挿入筒部21の主管部材12の中心側の端部の外周に取り付けられている。弾性フランジ部25は、蓋体20を掃除口部13に装着して閉状態としたときに、段部17の主管部材12の中心側に位置する。
【0019】
蓋体20の挿入筒部21の内側には、蓋体20を開閉する際に作業者が掴むための摘まみ部26が設けられている。また蓋体20は、フランジ部23の挿入筒部21の中心軸を挟んで対向する位置に工具係合溝27を備えている。
【0020】
掃除口継手10の掃除口部13に蓋体20を装着するには、掃除口部13の受け面16と係合部22の主管部材12側の面との間にシール部材30を介在させた状態で、蓋体20に形成された係合突起を係合溝15の位置に合わせ、挿入筒部21を掃除口部13内に押し込み係合部22を掃除口部13の被係合部14に係合させる。この場合に弾性フランジ部25の外径は、掃除口部13の管路の内径より大きいが、蓋体20の挿入筒部21を掃除口部13内に押し込むことにより、弾性フランジ部25が撓んで掃除口部13の管路を通過し段部17の主管部材12の中心側に移動する。
【0021】
そして作業者が摘まみ部26を把持して蓋体20を掃除口部13の軸線L2回りに回転させることにより、蓋体20が掃除口部13に対してバヨネット方式で装着される。この場合にシール部材30が掃除口部13の受け面16と蓋体20係合部22の主管部材12側の面との間に挟み込まれて掃除口部13の軸方向(軸線L2方向)に圧縮されることにより、掃除口部13と蓋体20との間の止水性が確保される。
【0022】
蓋体20を閉状態とすると、蓋体20の閉塞板24が、主管部材12の内周面に連続し、主管部材12内に突出しないように構成されている。これにより、掃除口継手10の蓋体20の部分で、汚水が溜まったり主管部材12内の排水の流れに損失を与えるのを防止することができる。
【0023】
蓋体20を掃除口部13から取り外すには、作業者が摘まみ部26を把持して蓋体20を上記とは反対方向に回転させ、蓋体20を掃除口部13から引き抜くことにより、蓋体20が掃除口部13から取り外される。
【0024】
高圧洗浄機によって掃除口継手10が接続されている排水管の洗浄を行うときには、先端に洗浄ノズルが設けられた高圧洗浄ホースが排水管内に挿入される。洗浄ノズルは、例えば高圧洗浄ホースに対して軸周りに回転可能とされており、元圧が15~30MPaの高圧の洗浄水を排水管の内面に対して回転しながら噴射する。
【0025】
掃除口継手10においては、蓋体20の弾性フランジ部25が段部17の主管部材12の中心側に位置するため、高圧洗浄時に段部17の軸線L1に直交する面と弾性フランジ部25の外縁部との間を通過した洗浄水は段部17の軸線L1に平行な面で受けられて減速され、掃除口部13の内周面と蓋体20の外周面との間の隙間を通ってシール部材30に到達する。
【0026】
即ちシール部材30に到達した洗浄水の水圧は小さくなっているため、洗浄水がシール部材30を乗り越えることがなく、掃除口部13の内側面と蓋20の外周面との間の止水性能を高め掃除口部13からの水漏れを防止することができる。したがって、バヨネット方式の蓋20であっても、高圧洗浄機を用いて排水管を洗浄するときの水漏れを防止することができる。
【0027】
次に第2の実施の形態に係る掃除口継手について説明する。図4は第2の実施の形態に係る掃除口継手の縦断面図である。第2の実施の形態に係る掃除口継手40は、第1の実施の形態に係る掃除口継手10における、掃除口部13に装着される蓋体20の止水構造を2つのシール部材を用いるものに変更したものであり、その他の点については、第1の実施の形態に係る掃除口継手10と同一の構成を有する。従って第2の実施の形態に係る掃除口継手40は、第1の実施の形態に係る掃除口継手10の構成と同一の構成に、第1の実施の形態の掃除口継手10の構成に付した符号と同一の符号を付して説明を行う。
【0028】
掃除口継手40は、挿入筒部21の外周面のシール部材30よりも主管部材12の中心側にシール部材(Oリング)32を配置する円周状の凹部28を備えている。ここで挿入筒部21の外周面は、シール部材30よりも主管部材12の中心側の位置において、掃除口部13の内周面側に突出していない。
【0029】
掃除口継手40の掃除口部13に蓋体20を装着するには、掃除口部13の受け面16と係合部22の主管部材12側の面との間にシール部材30を介在させ、凹部28にシール部材32を配置した状態で、蓋体20に形成された係合突起を係合溝15の位置に合わせる。そして挿入筒部21を掃除口部13内に挿入し、蓋体20を掃除口部13の軸線L2回りに回転させることにより、蓋体20が掃除口部13に対してバヨネット方式で装着される。
【0030】
この場合にシール部材30が掃除口部13の受け面16と蓋体20の係合部22の主管部材12側の面との間に挟み込まれて掃除口部13の軸方向に圧縮され、更にシール部材32が掃除口部13の内周面に接触することにより、掃除口部13と蓋体20との間の止水性が確保される。
【0031】
高圧洗浄機によって掃除口継手40が接続されている排水管の洗浄を行うときには、先端に洗浄ノズルが設けられた高圧洗浄ホースが排水管内に挿入され高圧の洗浄水を排水管の内面に対して回転しながら噴射する。挿入筒部21の外周面と掃除口部13の内周面との間の隙間に向かって噴射された洗浄水は、シール部材32と掃除口部13の内周面との間を通過する際に減速され、減速された洗浄水が掃除口部13の内周面と蓋体20の外周面との間の隙間を通ってシール部材30に到達する。
【0032】
即ちシール部材30に到達した洗浄水の水圧は小さくなっているため、洗浄水がシール部材30を乗り越えることがなく、掃除口部13の内側面と蓋20の外周面との間の止水性能を高め掃除口部13からの水漏れを防止することができる。したがって、バヨネット方式の蓋20であっても、高圧洗浄機を用いて排水管を洗浄するときの水漏れを防止することができる。
【0033】
なお、第2の実施の形態においては、シール部材32としてOリングを用いているが、Oリングに代えて環状のパッキンまたは環状のゴム板などを用いてもよい。また第2の実施の形態においては、蓋体20の挿入筒部21の外周面のシール部材30よりも主管部材12の中心側にシール部材32を配置する円周状の凹部28を備えているが、掃除口部13の内周面のシール部材30よりも主管部材12の中心側にシール部材32を配置する円周状の凹部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10,40…掃除口継手、11…継手本体、12…主管部材、13…掃除口部、14…被係合部、17…段部、20…蓋体、21…挿入筒部、22…係合部、23…フランジ部、24…閉塞板、25…弾性フランジ部、30,32…シール部材
図1
図2
図3
図4